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心臓血管外科・診療内容

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診療科 血液内科 ( 専門医取得コース ) 到達目標 血液悪性腫瘍 出血性疾患 凝固異常症の診断から治療管理を含めた血液疾患一般臨床を豊富に経験し 血液専門医取得を目指す 研修日数 週 4 日 6 ヶ月 ~12 ヶ月 期間定員対象評価実技診療知識 1 年若干名専門医取得前の医師業務内容やサマリの確認

CCU で扱っている疾患としては 心筋梗塞を含む冠動脈疾患 重症心不全 致死性不整脈 大動脈疾患 肺血栓塞栓症 劇症型心筋炎など あらゆる循環器救急疾患に 24 時間対応できる体制を整えており 内訳としては ( 図 2) に示すように心筋梗塞を含む冠動脈疾患 急性大動脈解離を含む血管疾患 心不全など

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TAVIを受ける 患者さんへ

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佐賀県肺がん地域連携パス様式 1 ( 臨床情報台帳 1) 患者様情報 氏名 性別 男性 女性 生年月日 住所 M T S H 西暦 電話番号 年月日 ( ) - 氏名 ( キーパーソンに ) 続柄居住地電話番号備考 ( ) - 家族構成 ( ) - ( ) - ( ) - ( ) - 担当医情報 医

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循環器内科後期研修プログラム 1 循環器内科の概要和歌山県立医大附属病院での基準病床数は循環器内科 45 床 ( 内 CCU5 床 ) であり 冠動脈疾患をはじめ 心不全 不整脈 心筋症 弁膜症 血管疾患などの循環器疾患全般を担当しています 外来 入院患者さんに対してはまず Physical Exa

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3) 適切な薬物療法ができる 4) 支持的関係を確立し 個人精神療法を適切に用い 集団精神療法を学ぶ 5) 心理社会的療法 精神科リハビリテーションを行い 早期に地域に復帰させる方法を学ぶ 10. 気分障害 : 2) 病歴を聴取し 精神症状を把握し 病型の把握 診断 鑑別診断ができる 3) 人格特徴

01 表紙

障害程度等級表 心臓機能障害 1 級 心臓の機能の障害により 自己の身辺の日常生活活動が極度に制限されるもの 2 級 - 3 級 心臓の機能の障害により 家庭内での日常生活活動が著しく制限されるもの 4 級 心臓の機能の障害により 社会での日常生活活動が著しく制限されるもの

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種の評価基準により分類示の包括侵襲性指行為の看護師が行う医行為の範囲に関する基本的な考え方 ( たたき台 ) 指示のレベル : 指示の包括性 (1) 実施する医行為の内容 実施時期について多少の判断は伴うが 指示内容と医行為が1 対 1で対応するもの 指示内容 実施時期ともに個別具体的であるもの 例

胸痛の鑑別診断持続時間である程度の鑑別ができる 数秒から1 分期外収縮筋 骨格系の痛み 心因性 30 分以内 狭心症食道痙攣 逆流性食道炎 30 分以上 急性心筋梗塞 解離性大動脈瘤 肺塞栓症 急性心膜炎自然気胸 胸膜炎胃 十二指腸潰瘍 胆嚢炎 胆石症帯状疱疹 急性心筋梗塞の心電図変化 R P T

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U 開腹手術 があります で行う腎部分切除術の際には 側腹部を約 腎部分切除術 でも切除する方法はほぼ同様ですが 腹部に があります これら 開腹手術 ロボット支援腹腔鏡下腎部分切除術を受けられる方へ 腎腫瘍の治療法 腎腫瘍に対する手術療法には 腎臓全体を摘出するU 腎摘除術 Uと腫瘍とその周囲の腎

後期臨床研修プログラム 鹿児島大学病院心臓血管内科 心臓血管内科 研修指導者名 大石充宮田昌明桶谷直也池田義之髙崎州亜湯淺敏典 田中 ( 窪田 ) 佳代子窪薗琢郎内匠拓朗赤崎雄一樋口公嗣 メッセージ 鹿児島大学心臓血管内科 生命の源である循環をとおして患者と向き合う心臓血管内科は 医師として患者を全

高齢者に対する心臓大血管手術のはなし パス術も体外循環装置を用いずに心臓を拍動させたままで行うオフポンプバイパス術を中心に行っています また カテーテルで大動脈弁に人工弁を装着する経カテーテル的大動脈弁置換術 (TAVI)( 図 1) も 来年よりいよいよ始めることとなりました しかし これらの低侵

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透析看護の基本知識項目チェック確認確認終了 腎不全の病態と治療方法腎不全腎臓の構造と働き急性腎不全と慢性腎不全の病態腎不全の原疾患の病態慢性腎不全の病期と治療方法血液透析の特色腹膜透析の特色腎不全の特色 透析療法の仕組み血液透析の原理ダイアライザーの種類 適応 選択透析液供給装置の機能透析液の組成抗

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目次 1 評価報告書の位置づけ 目的 1 ページ 2 死亡事例の詳細と医学的評価 ア ) 臨床経過の概要 1 事例 1 ページ 2 既往歴 1 ページ 3 手術までの経過概要 1 ページ 年 8 月 30 日の手術経過概要 2 ページ 5 心停止後の処置経過概要 3 ページ 6 同意書

岸和田徳洲会病院 当院では以下の研究に協力し情報を提供しております この研究は 国が定めた指針に基づき 対象となる患者さまのお一人ずつから直接同意を得るかわりに 研究の目的を含む研究の実施についての情報を公開しています 研究結果は学会等で発表されることがありますが その際も個人を特定する情報は公表し

2) 抄読会への参加 発表 4) 優良歯科医講習会に参加 1 本会 ( 月 1 回開催 ) に参加し 歯学日本歯科放射線学会教育委員会主催領域の知識や情報を獲得するとともエックス線優良歯科医講習会に参加に 論文作成法について学ぶ し 撮影原理 解剖 診断の基礎を学 2 発表経験を通して プロダクトの

様式 51 腫瘍脊椎骨全摘術の施設基準に係る届出書添付書類 1 標榜診療科 ( 施設基準に係る標榜科名を記入すること ) 2 常勤の整形外科の医師の氏名 (2 名以上 ) 常勤医師の氏名 3 脊椎手術を術者として 300 以上実施した経験を有する常勤の整形外科の医師の氏名等 (1 名以上 ) 常勤医

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心臓血管外科カリキュラム Ⅰ. 目的と特徴心臓血管外科は心臓 大血管及び末梢血管など循環器系疾患の外科的治療を行う診療科です 循環器は全身の酸素 栄養供給に欠くべからざるシステムであり 生体の恒常性維持において 非常に重要な役割をはたしています その異常は生命にとって致命的な状態となり 様々な疾患 病態をきたします 心臓血管外科が対象にする患者さんは小児から成人さらに老人までにおよび その対象疾患や治療内容も先天性心疾患 心臓弁膜症 虚血性心疾患 胸部 腹部大動脈瘤 大動脈解離 閉塞性動脈硬化症 深部静脈血栓症 下肢静脈瘤 リンパ浮腫など多岐にわたります さらに 多くの疾患が 循環器科 外科 小児科などと共同して治療に当たるため 広範な疾患の病態を理解し治療することができます 近年の少子化により 先天性心疾患の治療の重要性はますますたかまっており また高齢化社会に伴う冠動脈疾患 大動脈疾患の増加にともない 心臓血管外科の必要性はますますたかまっています このような社会環境において 循環器疾患を理解し その病態 治療方法を学び習得することは心臓血管外科専門医を目指す方のみならず 一般臨床医にとっても非常に重要になってきています 心臓血管外科研修では このように多岐にわたる循環器疾患の症状 病態 治療法 ( 手術及び内科的な循環管理 ) を理解し 実行することを目的としています Ⅱ. 研修責任者 北川哲也教授 ( 心臓血管外科専門医 日本胸部外科学会認定医 指導医 日本外科学会専門医 指導医 日本循環器学会専門医 脈管専門医 ) Ⅲ. 運営指導体制および指導医数教授 1 名 准教授 1 名 助教 3 名 医員 1 名 日本外科学会指導医 1 名 日本胸部外科学会指導医 1 名 日本外科学会専門医 6 名 心臓血管外科専門医が4 名 研修医 1 名につき 1 人の指導医が選任され 入院患者の診療を共同で行います 指導医講習会受講者数は5 名です Ⅳ. 臨床実績手術件数は 年間約 250 例 心カテーテル 血管造影は 年間約 50 例で 診療内容は 先天性心疾患 心臓弁膜症 虚血性心疾患 胸部 腹部大動脈瘤 大動脈解離 閉塞性動脈硬化症 深部静脈血栓症 下肢静脈瘤 リンパ浮腫と多岐にわたります Off pump 冠動

脈バイパス術や弁形成術 大動脈瘤に対するステントグラフト治療など 低侵襲化と患者 の QOL 向上を目指した手術を行う一方 重症虚血下肢に対する自家細胞移植による血管新 生療法など先進技術の開発にも取り組んでいます Ⅴ. 研修目標心臓血管外科におけるカリキュラムの到達目標 Ⅰ. 基本的診察法一般目標 : 病態の正確な把握ができるよう 全身にわたる診察を系統的に実施し 記載できる また それらを適切に行うために 正常と異常の循環生理 心機能に関する知識を深める 行動目標 : 1. 主訴 現病歴に応じた適切な問診ができる 2. 問診の結果から疾患群の想定ができる 3. 疾患の内容 程度から 外来 入院診療および手術適応を決定できる 4. 薬剤の適切な使用および取扱いのための処方箋を書くことができる 5. 心臓疾患 ( 先天性心疾患 弁膜症 冠動脈疾患 ) の診察 6. 動脈疾患 ( 動脈瘤 臓器虚血 虚血肢 ) の診察 7. 静脈 リンパ管疾患の診察 8. 紹介状を適切に書くことができる Ⅱ. 検査法一般目標 : 病態と臨床経過を把握し 医療面接と身体診察から得られた情報をもとに必要な検査を自ら実施し 結果を解釈できる 行動目標 : 循環系に関する以下の検査法の実践 ( 基本検査 ) 1. 心電図 :12 誘導心電図 負荷心電図 ホルター心電図 2. 動脈血液ガス分析 3. 単純 X 線検査 4.CT 5. 超音波検査 : 経胸壁心エコー, 経食道心エコー, 血管エコー検査その他 6.MRI 7. 虚血肢無侵襲的循環動態評価法 :ABI, トレッドミル検査, 脈波検査 ( 特殊検査 ) 1. 心臓血管造影法 2. 心臓血管カテーテル検査法

3. 核医学検査 : 心筋シンチグラム 肺換気 血流シンチグラム RI アンギオグラ フィー 腎シンチグラム 4. サーモグラフィ Ⅲ. 経験すべき基本的手技 処置一般目標 : 循環管理 心肺蘇生に必要な基本的手技を修得する 行動目標 : 1. 動脈ライン確保 2. 中心静脈カテーテル留置 : 内頚静脈 鎖骨下静脈 大腿静脈 3. 血管造影 :Seldinger 法 4. 心カテーテル法 :Swan-Ganz カテーテル留置 5. 薬物的または電気的除細動 6. 心マッサージ : 成人 小児 乳児 7. 一時的心臓ペーシング 8. 胸腔ドレナージ 9. 心嚢ドレナージ 10.IABP,PCPS 等の補助循環 Ⅳ. 術前 術中 術後管理一般目標 : 術前から術後に至る循環管理を習得し 実施できるようになる 行動目標 : 1. 検査 治療行為に対してインフォームドコンセントができる 2. 術前の循環管理に関連する薬物投与の継続 中止を指示できる 3. 心臓血管手術に必要な特殊医療機材を準備できる 4. 人工心肺理論と血液浄化治療の意義 適応を理解する 5. 術後各種循環モニターの装着と正常 異常を把握できる 6. 各種循環作動薬を適切に使用できる 7. 術後出血 感染症などの合併症に対する適切な対処と治療計画ができる 8. 心臓リハビリテーションを計画し実践できる Ⅴ. 経験すべき疾患と手術一般目標 : 心臓 血管疾患に対し適切な術式を選択し その術者または助手を務めることができる 行動目標 : ( 経験すべき疾患 ) 心不全

冠動脈疾患 ( 狭心症 心筋梗塞 ) 弁膜症 ( 僧帽弁膜症 大動脈弁膜症 ) 先天性心疾患 主要な頻脈性 徐脈性不整脈 大動脈瘤 動脈解離 閉塞性動脈疾患 ( 閉塞性動脈硬化症 Buerger 病他 ) 静脈疾患 ( 下肢静脈瘤 深部静脈血栓症 ) 肺塞栓症 リンパ浮腫 心 血管外傷 ( 経験すべき手術手技 ) 開胸術 ( 胸骨正中切開 後側方開胸 ) 及び閉胸 大血管及び末梢血管へのアプローチと剥離 人工心肺カニュレーション 冠動脈バイパス術 (On-pump Off-pump) 弁置換 弁形成術 先天性心疾患手術 ( 姑息 根治術 ) ペースメーカー植え込み 交換術 人工血管置換術 バイパス術 大動脈瘤に対するステントグラフト内挿術 血管形成術 ( 血栓内膜除去 PTA ステント治療) 静脈瘤手術 ( 高位結紮 硬化療法 ストリッピング ) Ⅵ. 研修内容徳島大学病院心臓血管外科では 先天性心疾患 心臓弁膜症 虚血性心疾患 胸部 腹部大動脈瘤 解離性大動脈瘤 閉塞性動脈硬化症 深部静脈血栓症 下肢静脈瘤 リンパ浮腫など小児から老人にいたるまでバランス良く研修することができます 最初の目標は 心臓血管外科領域の診察法 検査法を通して病態を適切に理解し 治療方法や治療計画を策定できるようにすることを目標とします 次に その策定した治療計画を実践し その術前 術後管理を通して患者管理を理解し実践します 治療全体を通しての診療システム 保険制度などを理解することも目標としています また 患者の生活の質 (QOL) やインフォームド コンセントなどへの配慮も目標とします 外来では 問診 診察 様々な検査計画 画像データなどによる系統的な診断能力の獲

得を目標とします 病棟では 指導医とともに主治医として 適切な治療計画を策定し 術前後での患者の全身管理を行うと伴に 患者さん 家族に対して正しく正確な情報を伝えながら治療に参画します また血管造影 冠動脈造影 心室造影などカテーテル検査手技等の技術を習得し 適切に実施できることを目標とします 手術では ドレナージ ライン確保等の基本的手術手技 また疾患の種類および患者の状態に応じた安全で確実な治療計画の策定ができることを目標とします また 手術によって起こりうる偶発症や合併症について理解しその予防策および対策に関しても理解することも目標とします このように 本カリキュラムは一般外科医として必要最低限度の循環器科疾患の知識と治療法を身につけるとともに 心臓血管外科医としての初期研修が行えるように配慮しています Ⅶ. 研修スケジュール 各種心臓血管外科患者を担当する 受け持ち患者の検査 治療には責任をもってあたり 症例検討会 教授回診では 症例提示を行います 病棟回診 : 月曜日 ~ 金曜日午前 教授回診 : 火曜日 午前 手術 : 月曜日 水曜日 木曜日 ( 不定期 ) 術前カンファレンス : 木曜日 午前 術後カンファレンス : 月曜日 午前 抄読会 : 水曜日 午前 Ⅷ. 評価法研修責任者と指導医が研修態度 症例提示 患者さん 家族 スタッフへの対応 知識 技術の習得度などを総合的に評価し 研修終了時にフィードバックをします 最終的評価はオンライン臨床研修評価システム (EPOC) を用いて行います