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宅建 賃貸 2018 年度賃貸過去問から学ぶ 賃貸借 借地借家法 レジュメ VU18404

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土地建物等の譲渡損失は 同じ年の他の土地建物等の譲渡益から差し引くことができます 差し引き後に残った譲渡益については 下記の < 計算式 2> の計算を行います なお 譲渡益から引ききれずに残ってしまった譲渡損失は 原則として 土地建物等の譲渡所得以外のその年の所得から差し引くこと ( 損益通算 )

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9 定期借地実務マニュアル

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1: とは 居住者の配偶者でその居住者と生計を一にするもの ( 青色事業専従者等に該当する者を除く ) のうち 合計所得金額 ( 2) が 38 万円以下である者 2: 合計所得金額とは 総所得金額 ( 3) と分離短期譲渡所得 分離長期譲渡所得 申告分離課税の上場株式等に係る配当所得の金額 申告分

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日南町定期借地権付

Unit1 権利能力等, 制限行為能力者 ( 未成年 ) 1 未成年者が婚姻をしたときは, その未成年者は, 婚姻後にした法律行為を未成年であることを理由として取り消すことはできない (H エ ) 2 未成年者が法定代理人の同意を得ないで贈与を受けた場合において, その贈与契約が負担付の

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配偶者居住権の相続税評価額について 2018/12/28 田口税理士事務所 平成 30 年の民法改正により 配偶者の居住権を保護するために配偶者居住権が新設されましたが 相続税の評価にどう影響させるかについて 今回の税制改正大綱に記載されています まず 前提となる配偶者居住権について 説明します 1

頭書 ⑷ 借主及び緊急連絡先 借主氏名 法人の場合 ( 商号 ) 個人の場合 ( 氏名 ) 担当者氏名 緊急連絡先 ( 自宅 ) ( 携帯 ) 頭書 ⑸ 貸主及び管理業者 貸主 氏名 管理業者 商号又は名称 所在地 TEL ( ) 賃貸不動産管理業協会会員番号 賃貸不動産管理業協会の会員である場合に

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1 A 所有の土地について A が B に B が C に売り渡し A から B へ B から C へそれぞれ所有権移転登記がなされた C が移転登記を受ける際に AB 間の売買契約が B の詐欺に基づくものであることを知らなかった場合で 当該登記の後に A により AB 間の売買契約が取り消された

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記所公信力 : 登記には公信力はない 登記の調査 借家権の場合 建物の引渡しがあれば第三者に対抗できる 登記事項証明書 : 誰でも 登記所の窓口請求だけでなく 郵送やオンラインによる請求も可 登記官の職氏名 職印の押印あり 登記事項要約書 : 管轄の登記所の窓口請求のみ 職印の押印等なし 不動産の調

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ことも認められています 施行日前 ( 平成 26 年 3 月 31 日以前 ) にリース契約を締結し リース資産の引渡しを行ったリース取引についてこの特例により賃貸借処理を行っている場合には 旧税率の 5% が適用されます 3. 資産の貸付け に関する経過措置指定日の前日 ( 平成 25 年 9 月

平成22年9月2日

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1 納税義務者ご本人が窓口に来られる場合 3 申請者欄に ご本人の住所 ( 運転免許証等の本人確認書類で確認できる住所 ) 氏名 連絡先電話番号をご記入ください ( 使者欄はご記入不要です ) 4 証明 閲覧の対象となる固定資産の納税義務者が ご本人である場合は 申請者に同じ のチェックボックス (

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経 [2] 証券投資信託の償還 解約等の取扱い 平成 20 年度税制改正によって 株式投資信託等の終了 一部の解約等により交付を受ける金銭の額 ( 公募株式投資信託等は全額 公募株式投資信託等以外は一定の金額 ) は 譲渡所得等に係る収入金額とみなすこととされてきました これが平成 25 年度税制改

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下では特別償却と対比するため 特別控除については 特に断らない限り特定の機械や設備等の資産を取得した場合を前提として説明することとします 特別控除 内容 個別の制度例 特定の機械や設備等の資産を取得して事業の用に供したときや 特定の費用を支出したときなどに 取得価額や支出した費用の額等 一定割合 の

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計算式 1 1 建物の価額 ( 固定資産税評価額 ) =2 長期居住権付所有権の価額 +3 長期居住権の価額 2 長期居住権付所有権の価額 ( 注 1) =1 固定資産税評価額 法定耐用年数 ( 経過年数 + 存続年数 ( 注 3)) 法定耐用年数 ( 注 2) 経過年数 ライプニッツ係数 ( 注

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2 譲渡禁止特約の効力改正前は 譲渡禁止特約を付した場合は債権の譲渡はできない ( ただし 特約の存在を知らない第三者等には対抗できない ) とされていましたが 改正法では このような特約があっても債権の譲渡は効力を妨げられないことを明記しました ( 466Ⅱ 1) ただし 3に記載するとおり 債務

売買, 消費貸借, 定型約款などの契約に関するルールの見直し 2020 年 4 月 1 日から 売買, 消費貸借, 定型約款などの契約に関する民法のルールが変わります 2017 年 5 月に成立した 民法の一部を改正する法律 が 2020 年 4 月 1 日から施行されます この改正では, 契約に関

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平成 28 年度試験問題より抜粋: 択一 式

結する際の妨げとなり得るところであったまた 近 ア 旧法下の判例法理 時は いわゆる再エネ案件において 太陽光発電設 旧法下における判例においては 対抗要件を具備 備の設置を目的として20 年を超える期間にわたり第 した不動産賃貸借の目的たる不動産が譲渡された 三者の土地を使用する事例が多く 旧法第

住宅取得等資金贈与の非課税特例 教育資金一括贈与の非課税特例 結婚 子育て資金贈与の非課税特例 相続時精算課税制度 贈与者 贈与年の 1 月 1 日現在で 60 歳以上の父母または祖父母 受贈者 贈与者の直系卑属 ( 子 孫 ひ孫等 ) で贈与の年の 1 月 1 日現在 20 歳以上 受贈年の合計所

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とを条件とし かつ本事業譲渡の対価全額の支払と引き換えに 譲渡人の費用負担の下に 譲渡資産を譲受人に引き渡すものとする 2. 前項に基づく譲渡資産の引渡により 当該引渡の時点で 譲渡資産に係る譲渡人の全ての権利 権限 及び地位が譲受人に譲渡され 移転するものとする 第 5 条 ( 譲渡人の善管注意義

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[2] のれんの発生原因 企業 ( または事業 ) を合併 買収する場合のは 買収される企業 ( または買収される事業 ) のおよびを 時価で評価することが前提となります またやに計上されていない特許権などの法律上の権利や顧客口座などの無形についても その金額が合理的に算定できる場合は 当該無形に配

項目 でんさいの譲渡 ( 手形の裏書に相当 ) でんさいを譲渡する場合は 当該でんさいを保証していただく取扱いになります ( 手形の裏書に相当 ) すなわち 債務者が支払えなかった場合には ( 支払不能 *4) でんさいを譲渡したお客様は 債権者に対して 支払義務を負うことになります 債権者利用限定

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に含まれるノウハウ コンセプト アイディアその他の知的財産権は すべて乙に帰属するに同意する 2 乙は 本契約第 5 条の秘密保持契約および第 6 条の競業避止義務に違反しない限度で 本件成果物 自他およびこれに含まれるノウハウ コンセプトまたはアイディア等を 甲以外の第三者に対する本件業務と同一ま

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第47回 事業用賃貸借契約について

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2 リース会計に関する論点の整理注釈 38によると 借地権 ( 借地借家法の適用のないものを含む ) は 我が国では非償却の無形資産として扱う場合が多く 無形資産 ( 又は土地に準ずる資産 ) に該当するのか リースに該当するのかについてはその内容を踏まえて検討が必要であるとしている しかし 借地権

[2] 財務上の影響 自己株式を 取得 した場合には 通常の有価証券の Ⅰ. 株主資本 ように資産に計上することはせず 株主との間の資本取 1. 資本金 引と考え その取得原価をもって純資産の部の株主資本 2. 資本剰余金 (1) 資本準備金 から控除します そのため 貸借対照表上の表示は金額 (2

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2. 減損損失の計上過程 [1] 資産のグルーピング 減損会計は 企業が投資をした固定資産 ( 有形固定資産のほか のれん等の無形固定資産なども含む ) を適用対象としますが 通常 固定資産は他の固定資産と相互に関連して収益やキャッシュ フロー ( 以下 CF) を生み出すものと考えられます こうし

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きる ( 改正前民法 436 条 ) 1 改正法と同じ 2 前項の債権を有する連帯債務者が相殺を援用しない間は その連帯債務者の負担部分についてのみ他の連帯債務者が相殺を援用することができる 本条は 負担部分の限度で 他の連帯債務者が債権者に対して債務の履行を拒むことができると規定したものであり 判

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LEC 東京リーガルマインド 複製 頒布を禁じます 平成 30 年度不動産鑑定士論文式試験 ズバリ的中 民法 問題 1 (50 点 ) 一戸建て住宅 ( 以下 甲建物 という ) を所有するAは Bとの間で 甲建物を代金 1,000 万円でAがBに売却する旨の契約 ( 以下 本件売買契約 という )

務の返済が不可能になった状態 と定義されている 商事裁判所法では以下の 3 種類の破産が規定されている 真実の破産 (real bankruptcy): 一般的に健全な経営をしており 正式な帳簿を作成し 浪費をしていなかったが 資産に明白な損失が生じた場合 怠慢による破産 (bankruptcy b

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Q12 建物が 滅失 した場合は 借家契約が終了すると聞いたのですが本当ですか 建物の 滅失 とは どのような状態をいうのですか Q13 水害で賃借していた建物が壊れてしまい このまま住める状態ではないため 賃貸借契約を解除して引っ越しをすることにしました この場合 敷金を返還してもらうことはできる

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504 特定事業等に係る外国人の入国 在留諸申請優先処理事業 1. 特例を設ける趣旨外国人研究者等海外からの頭脳流入の拡大により経済活性化を図る地域において 当該地域における特定事業等に係る外国人の受入れにあたり 当該外国人の入国 在留諸申請を優先的に処理する措置を講じることにより 当該地域における

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13. 平成 29 年 4 月に中古住宅とその敷地を取得した場合 当該敷地の取得に係る不動産取得税の税額から 1/2 に相当する額が減額される 14. 家屋の改築により家屋の取得とみなされた場合 当該改築により増加した価格を課税標準として不動産 取得税が課税される 15. 不動産取得税は 相続 贈与

法人税における役員特有の取扱いには 主に次のようなものがあります この取扱いは みなし役 員も対象となります 項目 役員給与 損金算入制限 過大役員給与 特有の取扱い 定期同額給与 ( 注 1) や事前確定届出給与 ( 注 2) など一定のもの以外は損金不算入 実質基準 ( 職務内容 収益状況など

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第26回 知的財産権審判部☆インド特許法の基礎☆

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ViewPoint 営 借地権の法務に関する基礎知識 堂本隆部東京室 借地権とは 建物の所有を目的とする土地の賃借権または地上権をいいます 他人が所有する土地に建物を建てる場合 その所有者である地主との間で土地賃貸借契約を締結するとき発生する権利 あるいは 地上権の設定を受けるときに発生する権利が借地権です 地上権とは 工作物や竹木を所有するため他人の土地を使用する権利であり 建物所有を目的に地上権の設定を受けると 地上権者は他人の土地を建物所有のために支配することができ 誰に対しても地上権の主張ができ 地上権登記を請求することもできます このように地上権は物権という強力な権利ですから 土地を利用しようとする者は地主に対して弱い立場にあるという実状の中で 建物所有目的で地上権が設定されることはまれです 今回は 借地権の中でも土地の賃借権に絞り その基本事項を説明します 1. 借地権に関する法律 [1] 借地権に関する新法と旧法 借地権に関する法律は 賃貸借一般に関する民法 601 条から 621 条のほかに 借地借家法があります 借地借家法は 借地法 建物保護法と借家法を廃止し 建物所有目的の土地賃貸借や建物賃貸借の定めを統合して制定され 平成 4 年 8 月 1 日に施行されました 借地借家法を新法 借地法 建物保護法及び借家法を旧法ということがあります [2] 旧借地権への新法 旧法の適用 借地借家法の施行によって借地法は廃止されたことから 借地法の下で設定された借地権にも原則として新法が適用されますが 借地契約にとって重要な借地の更新などについては従前の例によるとされ 旧法の定めが適用されます 借地借家法が施行され 26 年過しましたが 旧法下の借地権は多数存続しています 旧法下の借地権は 更新後も旧法下の借地権のまま存続していますから 借地法が廃止されたとはいえ その定めは今でも旧法下の借地関係を規律しています 1

2. 新法と旧法との借地期間の相違 新法と旧法は 借地権の存続期間が異なります 旧法では堅固非堅固で区分して堅固な建物は 30 年以上 非堅固な建物は 20 年以上でしたが 新法では建物の種別にかかわらず一律 とされました そして 更新後の存続期間も 新法と旧法で期間が異なるだけでなく 新法では 最初の更新と2 回目以降の更新とで期間を異にして定めています 旧借地関係 新借地関係 期間の定めなし ( 注 1) 期間の定めあり ( 注 2) 期間の定めなし 期間の定めあり ( 注 2) 存続期間 堅固な建物 ( 注 3) 非堅固な建物 ( 注 4) 60 年 30 年 20 年以上 30 年 更新後の期間 堅固な建物 ( 注 3) 非堅固な建物 ( 注 4) 30 年 20 年 20 年以上 最初の更新 20 年 2 回目以降の更新 10 年 最初の更新 20 年以上 2 回目以降の更新 10 年以上 注 1: 旧借地関係で 期間の定めなし の場合 期間満了前に建物が朽廃したとき借地権は消滅 注 2: 契約で最低限の期間より短い期間を定めた場合 期間の定めなし とされる 注 3: 鉄骨鉄筋コンクリート造 鉄筋コンクリート造 重量鉄骨造などをいう 注 4: 木造 軽量鉄骨造などをいう 3. 定期借地権 定期借地権とは 借地借家法によって創設された借地権です 契約で定めた期限が到来すると 借地関係が更新することなく終了する借地権で 3つの類型があります ( 次ページ表 ) 一般定期借地権は 利用目的に制限がありませんが 存続期間が 50 年以上とされています 事業用定期借地権は 郊外型レストランやショッピングセンター フランチャイズ店などの店舗目的が典型例ですが 存続期間が 10 年以上 30 年未満のものと 50 年未満の2つのタイプがあります 建物譲渡特約付借地権は 借地権を消滅させるために 過した日に建物を相当の対価で地主に譲渡する特約を結んだものです 2

普通借地権 定期借地権 一般定期借地権事業用定期借地権建物譲渡特約付借地権 利用目的限定なし限定なし 事業用建物 ( 住宅を除く ) の所有に限定 限定なし 存続期間 50 年以上 50 年未満 10 年以上 30 年未満 契約の方式など 方式に関して特に定めはない 書面により 次の 3 つの特約を定める 1 契約の更新がない 2 建物築造による存続期間の延長がない 3 建物買取請求をしない 公正証書によって締結する 左記 123 の特約を定める 借地権を消滅させるため 借地権設定後 過した日に建物を相当の対価で地主に譲渡する旨定めるもの 建物の売買予約の仮登記がなされる 借地契約の終了 契約期間の満了によるが 法定更新がある 更新拒絶には正当事由が必要 契約期間の満了により終了し 更新はない ただし 再契約をすることはできる 建物の地主への譲渡により 終了する 4. 借地権の対抗力 地主が土地を第三者に売却した場合 所有権を取得した第三者は 借地人に対して建物を収去して土地を明け渡すよう請求することができますが 借地人が借地権登記をしていれば 借地人は 第三者に対して借地権を主張することができます しかし 賃貸借契約で土地を借りた借地人には 貸し主である地主に対して借地権登記は請求できないとされ 地主に借地権登記の義務はありません 借地権登記は利用されないことから 地主が土地を第三者に売却すると借地人の地位が覆ることとなるので その地位の安定を図るため 借地権者が所有している建物を登記している場合 借地権は第三者に主張できるとされています これを借地権の対抗力といいます 借地権が対抗力を有するためには 建物の存在が必要であり 借地上の建物登記の名義人は借地人本人でなければなりません なお 建物が滅失しても 明認方法による対抗力が認められています これは新法で設けられたもので 滅失した建物を特定するために必要な事項 滅失した日 建物を新たに築造する旨を借地権者がその土地上の見やすい場所に掲示するときは 滅失の日から2 年間は 借地権を対抗できます 5. 借地権の譲渡と転貸 借地人が建物を譲渡するとき 借地権の譲渡か借地の転貸が伴います ただ 借地権の譲渡や借地の転貸をするには 地主の承諾が必要です ところで 借地権を譲渡しようとしても地主の承諾が得られないと借地人は第三者に建物を譲渡で 3

きませんし 建物抵当権を実行して建物が競落されても 地主が承諾しなければ競落人は土地を使用できないといった不都合が生じます そこで 第三者あるいは建物の競落人が賃借権を取得しても地主に不利となるおそれがないにもかかわらず 地主の承諾を得られないときは 借地人や借地上の建物の競落人の申立によって 裁判所が 承諾に代わる許可を与えることができるとされています 借地の転貸の場合にも 同じように 借地人は裁判所の許可を申し立てることができます 借地権の譲渡 建物の譲渡 借地権の転貸 建物の譲渡 借地人 建物譲受人 借地人 建物譲受人 地主 地主 親子間での借地の転貸と住宅ローン 親が借地人で借地上の建物の建替えにあたって子供に建物を建てさせるとき 地主の承諾を得て 借地の転貸をすることがあります このとき 一般的に 金融機関の融資の取り扱いとして 建物登記は子供単独の名義ではなく 親との共同名義が求められます これは 転借人である子供の単独名義だと 借地権者の建物登記がないため借地権の対抗力が生じないとされることを回避するためです 6. 借地契約の更新と正当事由 借地期間が満了したとき 定期借地権では借地契約は終了しますが 普通借地権では借地契約を更新することができます この更新には 合意更新と法定更新があります [1] 合意更新 合意更新をすると 地主と借地人との間で 土地の賃貸借契約を更新して今後も継続することが確認され 同時に 更新料が支払われたり 更新後の賃貸期間や賃料が取り決められたりします [2] 法定更新 法定更新とは 借地人の更新請求 あるいは土地の継続使用によって 更新とみなされるものです すなわち 建物がある場合に 借地人が更新請求をすれば 地主の承諾がなくとも更新したものとみなされます これに対して 地主は正当事由がある場合に限って 異議を述べることができます また 旧法下の借地権では 借地人が土地の使用を継続するときも更新したものとみなされ 地主はこれに対して正当事由がある場合に限って異議を述べることができます ただし 建物がなければ 地主の異議に正当事由は必要ありません 新法下の借地権では 土地の継続使用で更新とみなされる 4

のは建物がある場合に限られ これに対する地主の異議は正当事由がある場合に限られます 正当事由の考慮要素 新法では 旧法下の判例を整理して 正当事由の判断にあたり次の事情を考慮すると定めました 基本的要素 : 地主および借地人 ( 転借人を含む ) 双方が 土地の使用を必要とする事情 補完的要素 1 借地に関する従前の緯 : 借地契約成立当時の事情 権利金の有無 地代額の多寡 地代の滞納状況 2 土地の利用状況 : 借地上の建物の有無 建物の種類や構造 建物の利用状況 3 立退料その他財産上の給付 7. 地代の増減額請求 済事情の変化などで地代が不相当となった場合 地主は地代の増額請求を 借地人は地代の減額請求をすることができます 地代の増減額請求をすることができる事情としては 土地に対する租税公課の増減 地価の上昇下落 済事情の変動 近傍類似の土地の地代との比較で不相当となった場合などです ただ 一定の期間 地代を増額しない旨の特約があれば その特約に従って地主はその期間 地代の増額請求をすることができません 地代の増減額について協議が調わないときは 当事者は まず調停を申立てなければならず 調停不成立のときに増減額請求の訴えを提起します なお 裁判が成立するまでの間は 増額請求を受けた借地人は相当と認める地代を支払えば足り 減額請求を受けた地主は相当と認める地代の支払いを請求することができます そして 裁判で確定した地代との差額は年 1 割の利息を付して精算します 内容は 2018 年 9 月 21 日時点の情報に基づいて作成されたものです 本情報は 法律 会計 税務などの一般的な説明です 個別具体的な法律上 会計上 税務上等の判断や対策などについては専門家 ( 弁護士 公認会計士 税理士など ) にごください また 本情報の全部または一部を無断で複写 複製 ( コピー ) することは著作権法上での例外を除き 禁じられています みずほ総合研究所部東京室 03-3591-7077 / 大阪室 06-6226-1701 https://www.mizuho-ri.co.jp/service/membership/advice/ 5