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手指中節骨頚部骨折に対する治療経験 桐林俊彰 1), 下小野田一騎 1,2) 3), 大澤裕行 1) 了德寺大学 附属船堀整形外科 了德寺大学 健康科学部医学教育センター 2) 3) 了德寺大学 健康科学部整復医療 トレーナー学科 要旨今回, 我々は初回整復後に再転位を生じた右小指中節骨頚部骨折に対し再整復を行い, 背側からのアルフェンス ポリキャストを織り交ぜたシーネ固定を用い経過観察したところ, 良好な結果を得た症例を経験したため報告する. 症例は16 歳, 男子. 平成 28 年 1 月 29 日, バスケットボールにてパスを受けそこない右小指にボールがぶつかり受傷. 受傷後 1 週間経過したが腫脹が軽減せず, 右小指の運動制限を認めたため, 船堀整形外科に来院した. 初診時 XPで骨折の掌側凸変形を認めたため, 近位骨片に合わせるように指を屈曲して整復し, 屈曲位を保持するためMP 関節 PIP 関節 DIP 関節を良肢位とし, 環指と共に掌側よりシーネ固定を行った. 初回整復 1 週間後のXPで再転位を認めたため再整復を行い, 掌側凸方向へ転位している近位骨片へ遠位骨片を整復するようMP PIP DIP 関節を最大屈曲位とし, 背側よりシーネ固定を行った. 固定範囲は指尖から前腕遠位とした. 再整復 4 週間後まで指関節を最大屈曲位での固定を行い, 再整復 4 週間後のXPで仮骨を確認し, バディテープのみの固定へ変更し積極的な指のリハビリテーションを行った. 受傷 8 週後 ( 再整復 7 週間後 ) のXP 画像で骨癒合を認め, 回旋変形もなく受傷 10 週後のMP PIP DIP 関節可動域は屈曲健側対比 100%, 伸展健側対比 100%,MP PIP DIP 関節の疼痛も認めなかった.XPで仮骨を確認後, 最低限の固定への早期変更をすることにより, 日常生活動作もリハビリの一貫として行ったことが良好な可動域の確保に繋がったと考える. キーワード : 中節骨頚部骨折, 背側型シーネ Conservative treatment of the middle phalangeal neck fracture using dorsal splint immobilization: a case report Toshiaki Kiribayashi 1), Kazuki Shimoonoda 1,2), Hiroyuki Osawa 3) Ryotokuji University, Funabori Clinic of Orthopaedic 1) Center for Medical Education, Faculty of Health Sciences, Ryotokuji University 2) Department of Judotherapy and Sports Medicine, Faculty of Health Sciences, Ryotokuji University 3) Abstract Middle phalanx fractures are common injuries, but middle phalangeal neck fracture is an unusual injury. Phalangeal neck fracture occurs almost exclusively in children. Middle phalangeal neck fracture is an uncommon fracture of the hand that is often difficult to treat. We report on fixation of the middle phalangeal neck fracture of a 16-year-old man. X-rays showed fracture of the middle phalangeal neck fracture. The man with fracture of the middle phalangeal neck was managed with palmar splint immobilization after closed bone reduction. After 1 week, 9

X-rays showed the displacement of the fracture. Re-reduction was done, and the middle phalangeal neck fracture was managed with dorsal splint immobilization. After 7 weeks from re-reduction, X-rays showed bone union. As a result, a good range of motion was preserved. We consider that the dorsal splint immobilization had been a reliable form of treating fractures of the middle phalangeal neck fracture. Keywords : middle phalangeal neck fracture, dorsal splint immobilization Ⅰ. はじめに手指中節骨頚部骨折は日常診療において遭遇する骨折の一つであり, 屈筋腱の作用によって再転位することが多く, また腱の癒着によって指の可動域制限を残し易い骨折である. 今回, 我々は初回整復後に再転位を生じた右小指中節骨頚部骨折に対し再整復を行い, 背側からのアルフェンス ポリキャストを織り交ぜたシーネ固定を用い経過観察したところ, 良好な結果を得たので報告する. Ⅱ. 対象 方法症例は16 歳, 男子. 平成 28 年 1 月 29 日バスケットボールにてパスを受けそこない, 右小指にボールがぶつかり受傷. 受傷後 1 週間経過したが腫脹が軽減せず, 右小指の運動制限を認めたため, 船堀整形外科に来院した. 初診時, 右小指 PIP 関節部に圧痛と腫脹を認めた. 初診時 XPで中節骨頚部骨折を認め ( 図 1), 掌側凸変形を認めたため, 骨長軸上に牽引をかけながら遠位骨片を近位骨片に合わせるように指を屈曲して整復をし, 屈曲位を保持するためMP PIP DIP 関節を良肢位とし, 環指と共に掌側よりシーネ固定を行った ( 図 2). 整復後のXPで, 骨折部の良好な整復位を確認した ( 図 3). 初回整復 1 週間後のXPで再転位を認めた ( 図 4) ため, 再整復を行い, 固定肢位を掌側凸方向へ転位している近位骨片へ遠位骨片を整復できるようMP PIP DIP 関節を最大屈曲位とし, 背側よりシーネ固定を行った ( 図 5). 再整復後のXPでは骨折部の良好な整復位を確認した ( 図 6). 固定範囲は指尖から前腕遠位とした. 再整復 4 週間後まで指関節を最大屈曲位での固定を行い, 再整復 4 週間後のXPで仮骨を確認し, バディテープのみの固定へ変更し, 積極的な手指のリハビリテーションを行った. 図 1. 初診時 XP 右小指中節骨頚部骨折を認め, 掌側凸変形を認めた. 10

図 2. 初回整復後の固定図 良肢位で掌側よりシーネ固定を行った. 固定肢位は DIP PIP MP 関節良肢位, 固定範囲は指尖 ~ 手関 節遠位とした. 図 3. 初回整復後の XP 初回整復後シーネ固定後 XP 撮影を行い, 骨折部の良好な整復位を確認した ( 部分 ). 図 4. 初回整復 1 週間後の XP 初回整復後シーネ固定後 XP 撮影を行い, 骨折部の再転位を認めた ( 部分 ). 11

図 5. 再整復後の固定 良肢位で背側よりシーネ固定を行った. 固定肢位は DIP PIP MP 関節最大屈曲位, 固定範囲は手指 ~ 前腕遠位で行った. 図 6. 再整復後の XP 再整復後シーネ固定後 XP 撮影を行い, 良好な整復位を確認した ( 部分 ). 図 7. 受傷 8 週後 ( 再整復 7 週間後 ) の XP 受傷 8 週後 ( 再整復 7 週間後 ) の XP を行い, 骨癒合を認めた. 12

Ⅲ. 結果固定期間は計 5 週間とし, 受傷 8 週後 ( 再整復 7 週間後 ) のXP 画像で, 骨癒合を認め ( 図 7), 回旋変形もなく受傷 10 週後のMP PIP DIP 関節可動域は屈曲健側対比 100%, 伸展健側対比 100%,MP PIP DIP 関節の疼痛も認めなかった. Ⅳ. 考察手指中節骨骨折は日常診療においてよく遭遇する骨折の一つであり, 屈筋腱の作用によって再転位をすることが多く, また腱の癒着によって指の可動域制限を残し易い骨折である. 手指中節骨骨折では, 骨折部が浅指屈筋腱よりも近位或いは遠位に存在するかによって逆方向の変形を示す. 骨折部が屈筋腱よりも近位の場合, 背側凸の変形を示し, 遠位の場合は掌側凸の変形を示す 1). 特に頚部骨折では骨頭の背側転位をきたし, しばしば徒手整復困難で手術が必要となる 2). 中節骨骨折は基節骨骨折に比し頻度が少なく, 頚部骨折は中節骨骨折の中でもまれな骨折である 3). 今回, 我々は初回整復後に再転位を生じた中節骨頚部骨折に対し, 再整復を行い, 背側からのシーネ固定で良好な結果を得た. 初回整復後はDIP PIP MP 関節の良肢位固定とし手関節固定をしなかったため, 屈筋腱等の作用により, 再転位を藼起した. そこで再整復後, 整復位保持のままDIP PIP MP 関節を最大屈曲位とし屈筋腱を弛緩させ, 手関節を含めた固定としたことで, 屈筋腱の作用による再転位を防止することができたと思われる. 岡村らは中節骨基部掌側凸骨折に対し,PIP 関節を最大屈曲させる骨折部圧迫固定法を行い, 良好な経過を得たと報告している 4). また, 澁澤らは, 指節骨頚部の骨折 7 例に対し徒手整復後,PIP DIP 関節屈曲位で固定を行い良好な結果を得たことを報告している. 指節骨頚部は骨端線から遠位であるため, リモデリングはあまり期待できないため初回整復 適切な固定法の重要性を述べている 5). 大西らは小児の指節骨骨折に対し可及的屈曲位での握り肢位固定を行い, 良好な結果を得たと報告している 6,7). 今回, 再転位しないようXP 撮影や清拭の際の屈曲位の保持を慎重に行った結果, 再転位せず骨の治癒に至った. 再整復後, 最大屈曲位での固定を4 週間行った結果, 固定除去後の1,2 週間は屈曲拘縮が認められ腱の癒着も考えられたが,3 週間後から通常の屈伸運動が可能となった.XPで仮骨を確認後, 最低限の固定への早期変更をすることにより, 日常生活動作もリハビリの一貫として行えたのが可動域の確保に繋がったと考える. Ⅴ. 結語 1. 我々は初回整復後に再転位を生じた右小指中節骨頚部骨折に対し再整復を行い, 背側からのアルフェンス ポリキャストを織り交ぜたシーネ固定を用い, 良好な整復位を保持出来た症例を経験した. 2. ギプス固定期間は計 5 週間であり, 受傷 8 週後 ( 再整復 7 週間後 ) のXP 画像では骨癒合を認め, 回旋変形もなく受傷 10 週後のMP PIP DIP 関節可動域は屈曲健側対比 100%, 伸展健側対比 100%,MP PIP DIP 関節の疼痛も認めなかった. 3. 再整復 4 週間後のXPで仮骨を確認後, 最低限の固定への早期変更をすることにより, 日常生活動作もリハビリの一貫として行ったことが良好な可動域の確保に繋がったと考える. Ⅵ. 引用文献 1) 全国柔道整復学校協会 (2011) 柔道整復学 理論編, 南江堂, 東京.256. 2) 津下健哉 (2011) 手の外科の実際, 南江堂, 東京.156. 13

3) 柳橋和仁, 森谷浩治, 坪川直人ほか (2016) 手指中節骨骨折の特徴. 日本手外科学会雑誌.32(5), 800-801. 4) 岡村智明, 林泰京, 松本揚 (2015)PIP 関節掌側板付着部裂離骨折に対して骨折部圧迫固定法を実施した使用経験. 了德寺大学紀要. 9, 43-47. 5) 澁澤一行, 後藤渉, 中島一郎ほか (2009) 指節骨骨折の保存治療経験 ~ 小児の指節骨頸部骨折を中心に ~. Kitakanto Med J. 59(3), 286-287. 6) 大西信樹, 磯部ひろみ (2006) 小児の指節骨骨折に対する保存的治療の工夫. 日本手の外科学会雑誌. 23(6), 1059 7) 大西信樹, 増田武志 (2006) 小児の指節骨骨折に対する握り肢位固定による保存的治療. 北海道整形外科外傷研究会会誌. 22, 32-36 ( 平成 28 年 11 月 21 日稿 ) 査読終了日平成 29 年 1 月 11 日 14