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などの極端現象も含め 気候変動による影響を評価している さらに AR4 は 長期的な展望として 適応策と緩和策のどちらも その一方だけではすべての気候変動の影響を防ぐことができないが 両者は互いに補完し合い 気候変動のリスクを大きく低減することが可能であることは 確信度が高い とし 最も厳しい緩和努

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Transcription:

Vol. 12 No.341 2007 年 11 月 12 日 ( 月 ) IPCC 第 27 回総会 気候変動に関する政府間パネル 2007 年 11 月 12 日 -17 日 IPCC( 気候変動に関する政府間パネル ) 第 27 回総会 (IPCC-27) が スペイン バレンシア Museo de las Cienciasで本日開幕し IPCC 第 4 次評価報告書 (AR4) についての審議完了をめざした会合が開始される IPCC 第 27 回総会では AR4 統合報告書 (Synthesis Report:SYR) について SYR 政策決定者向け要約 (SPM) の承認 (approve) 及びSYR 本編 (Longer Report) の採択 (adopt) をめざす また 今後のIPCCのありかたやIPCC2008-2010 年事業及び予算 IPCC 議長団及びタスクフォース議長団のメンバーについて議論し IPCC 国別温室効果ガス (GHG) インベントリに関するタスクフォースや シナリオに関する今後の作業 気候変動 水に関する技術文書 温暖化の影響と気候分析のためのデータ及びシナリオサポートに関するタスクグループ (TGICA) やアウトリーチ活動などの進捗状況について報告が行われる ---------------------------------------------------------------------------------------------- Earth Negotiations Bulletin <enb@iisd.org> 執筆 編集 :Radoslav Dimitrov Ph.D. María Gutiérrez Ph.D. Kati Kulovesi Miquel Muñoz Ph.D. Lisa Schipper Ph.D デジタル編集:Vanessa Goad 編集:Pamela S. Chasek Ph.D. pam@iisd.org The IISD Reporting Services 責任者 :Langston James Kimo Goree VI kimo@iisd.org ENB Sustaining Donors( 継続寄贈者 ) は下記の通りです : 英国政府 ( 国際開発省 (DFID) 経由 ) アメリカ合衆国政府 ( 国務省 海洋国際環境科学局経由 ) カナダ政府 (CIDA) デンマーク外務省 ドイツ政府 ( 連邦環境省 BMU 連邦開発協力省 BMZ 経由 ) オランダ外務省 欧州委員会 (DG-ENV) イタリア環境領土省自然保護局 2007 年のENB 全般に対する支援は 下記の政府 機関から提供されています スイス連邦環境局 (FOEN) ノルウェー外務省および環境省 オーストラリア政府 オーストリア連邦農林 環境 治水省 スウェーデン環境省 ニュージーランド外務貿易省 SWAN International 日本国環境省 ( 地球環境戦略研究機関 IGES 経由 ) および経済産業省 ( 地球産業文化研究所 GISPRI 経由 ) ENBのフランス語訳はInternational Organization of the Francophonie (IOF) 及びフランス外務省 スペイン語訳はスペイン環境省が支援しています 日本語の翻訳は地球産業文化研究所 (GISPRI) が行っています ENBに掲載される意見は執筆者のものであり 必ずしもIISDや他の支援者 支援団体の意見を反映したものではありません ENBの抜粋 引用は 適切な学術的引用とともに 非営利の出版物にのみ可とします ENBおよびレポーティングサービスに関するお問い合わせはIISDレポーティングサービス責任者までkimo@iisd.org TEL +1-646-536-7556 住所 300 East 56th St. Apt 11A New York NY 10022 USA. IPCC 第 27 回総会 ENBチーム連絡先 :e-mail at lisa@iisd.org 1

IPCC のこれまでの経緯 1988 年 IPCCは世界気象機関 (WMO) 及び国連環境計画 (UNEP) により設立された IPCC 設立の目的は 人為的な気候変動に伴うリスクを理解するため 科学 技術 社会経済に関する情報を評価することである IPCCが独自に新たな研究を実施することも気候関連データのモニタリングを実施することもないが IPCCはすでに公表され 査読を受けた科学技術文献に基づき評価を行う IPCC 事務局はスイス ジュネーブに設置され WMO 及びUNEPの職員が配属されている 現在 IPCCには3つの作業部会がある : 第 1 作業部会 (WGI) は自然科学的根拠 : 第 2 作業部会 (WGII) は影響 適応 脆弱性 : 第 3 作業部会 (WGIII) は気候変動の緩和策をそれぞれ取上げている また IPCCには国別温室効果ガス (GHG) インベントリに関するタスクフォースがある このタスクフォースでは IPCCの国別温室効果ガスインベントリプログラム (National Greenhouse Gas Inventories Programme: 略称 NGGIP) を監督する NGGIPの目的は 各国別にGHG 排出量 吸収量を算定し 報告書を作成するため 国際的に合意された方法論やソフトウェアを開発 改良し IPCC 参加各国及び UNFCCC 署名国がこれを利用するよう促進することである IPCC 議長団はIPCCが選出した30 名の委員から構成され IPCCの作業の計画 調整 進捗状況のモニタリングを実施する上で IPCC 議長を補佐する IPCCは発足以来 一連の評価報告書や特別報告書 技術文書 ( テクニカルペーパー ) を作成し 専門家や政府から幅広く査読を受けた上で 政策決定者や一般市民を含めた国際社会に対し気候変動に関する科学情報を提供してきた こうしたIPCCの情報は国連気候変動枠組条約 (UNFCCC) の下での交渉や各国 各地域の政策枠組み形成においても重要な役割を果たしてきた IPCCは 1990 年に第 1 次評価報告書を 1995 年に第 2 次評価報告書を作成し 気候変動に関わる初期の総合評価作業を完了した 2001 年に完成したIPCC 第 3 次評価報告書 (TAR) は 政策にまつわる気候変動の科学的 技術的 社会経済的側面を取り上げ 地域レベル 世界レベルで 1995 年以降の知見に焦点を当てた TARは IPCCの3 作業部会の各部会からの総合評価 つまり各作業部会からの報告書の政策決定者向け要約 (SPM) と技術要約 (TS) 統合報告書(SYR) で構成されている IPCCが特別報告書として作成したレポートには次のものがある IPCC 第 23 回総会 ( エチオピア アジスアベベ 2005 年 4 月 8 日 ) で受諾された (accepted) オゾン層保護と地球気候系に関する特別報告書 IPCC 第 24 回総会 ( カナダ モントリオール 2006 年 9 月 26-28 日 ) で受諾された (accepted)co2 回収 貯 2

留 (CCS) に関する特別報告などである IPCC 国別温室効果ガス (GHG) インベントリのためのガイドラインは 1994 年に初めて発表され 1996 年に改訂版が作成された また 2000 年 2003 年に IPCC は1996 年改訂版ガイドラインを補足するグッドプラクティスガイダンス報告書を承認し 2006 年 IPCCガイドラインが2006 年に承認された (approved) AR4( 第 4 次評価報告書 ): IPCC 第 18 回総会 ( 英国 ロンドン 2001 年 9 月 24-29 日 ) で総合評価報告書を継続して作成することを決定し その後の会合で 次期報告書の作成時期や詳細について討議し 2007 年末までにAR4を完成させることで合意した 各作業部会の報告書の概要については 第 21 回総会 ( フランス パリ 2003 年 2 月 ) で受諾された (accepted) 同年行われた2 回のスコーピング会合 ( モロッコ マラケシュ 4 月 : ドイツ ポツダム 9 月 ) でAR4の概要や評価対象範囲が定まり 執筆陣も集められた AR4は各作業部会からの報告書をそれぞれまとめた3 本立てとなっている 各作業部会の報告書は 基礎的な評価報告書 技術要約 (TS) エグゼクティブサマリー 政策決定者向け要約(SPM) から構成され それぞれ徹底した査読プロセスを経ている 査読のプロセスは 通常 専門家による一次査読 専門家と政府による二次査読 政府による三次査読という3 段階で行われる 上記の3つの作業部会の報告書に加え 各作業部会のSPMと同様 AR4の統合報告書 (SYR) 全体のSPMが作成され IPCC により一行ごとの承認を受けた (approved) AR4の綿密な作成過程には 2500 名以上の専門家による査読者 800 名の執筆陣 450 名の代表執筆者 (LA) 130ヶ国の政府が参加した 第 1 作業部会 (WGI) の第 10 回会合が2007 年 1 月 29 日 -2 月 1 日までフランス パリで行われた 第 2 作業部会 (WGII) 第 8 回会合は ベルギー ブリュッセルで4 月 2 日 -6 日に行われた 第 3 作業部会 (WGIII) 第 9 回会合は タイ バンコクで4 月 30 日 -5 月 3 日に行われた 2007 年タイ バンコクで開催された IPCC 第 26 回総会で5 月 4 日 SPM 基本報告 技術要約(TS) を含めた各作業部会の報告書が受諾され (accepted) 3 作業部会すべての活動が受諾された (accepted) AR4 統合報告書 (SYR):2004 年 4 月に行われたIPCC 議長団第 31 回会合でのAR4 SYRスコーピングプロセス開始を受けて IPCC 第 22 回総会 ( インド ニューデリー 2004 年 11 月 9-11 日 ) では SYRで取り上げるべきトピックの概略が決定された また IPCC 議長団第 35 回会合で SYRの中核となる代表執筆者 (LA) チームと査読編集者 (RE) メンバーが合意され (agreeed) 同メンバー表がIPCC 第 25 回総会 ( モーリシャス ポートルイス 2006 年 4 月 26 日 -28 日 ) に提出された AR4 SYRは 2001 年の第 3 次評価報告書 (TAR) 発表以降の科学の進歩に基づき 気候変動の原因と影響 対応策やその他 政策に係わる諸側面の関係性を網羅的に扱い AR4の最終的な成果物 3

としてとりまとめたものである SYRのコア執筆者チームは 全作業部会の代表執筆者 (LA) で構成される SYRは2007 年 5 月から10 月にかけて 専門家や政府関係者 関連機関などの査読を受けている SYRは6つのトピックを中心に構成されている トピック1では 観測されている気候変動とそれが人類および自然系に及ぼす影響がとりあげられる トピック2は観測された変化の要因をまとめ トピック3 は様々なシナリオにもとづき短期的 長期的な気候変動とその影響について議論している トピック4は適応と緩和策を取り上げ 持続可能な開発との関係を地球規模および地域レベルで考察している トピック5は 長期的な展望として 特にUNFCCCの目的や規定に則り 持続可能な開発との関連で 適応と緩和に関する科学的 社会経済的側面をとりあげている そして トピック6で確実な知見と重要な不確実性に焦点をあてる SYR( 統合報告書 ) のSPMは SYR 本体 (Longer Report) に係わる最も重要な局面に着目している 会合間のハイライト IPCCの各種会合 :IPCC 第 26 回総会以降 その他のIPCCの活動に関していくつか会合が開催された 2007 年 8 月 6-8 日には カナダ ヴィクトリアで気候変動 水に関する技術文書の代表執筆者会合が行われた 同会合の目的は 技術文書に対して専門家査読者から寄せられた1600 件のコメントや各国政府から寄せられた700 件のコメントを受けて執筆者が修正点をとりまとめることだった 2007 年 11 月 9 日 WGII 技術支援ユニットに新たな技術文書の草稿が提出され 2007 年 11 月 26 日から12 月 24 日までを最終レビュー期間として各国政府からの意見を受け付けている 2007 年 9 月 19-21 日 オランダ Noordwijkerhoutで 第 25 回 第 26 回 IPCC 総会での決定により 新シナリオに関する専門家会合が開催された 会合の目的は 気候変動 影響 脆弱性 適応 緩和に関する新たな排出シナリオの策定であった 本会合の成果としては 初期のEarthシステムモデル計算に使用する一連の 代表的な濃度経路 (Representative Concentration Pathways)( ベンチマークシナリオ ) 案 新たな統合シナリオの策定に向けた今後の調整作業や組織 連絡事項などの計画 発展途上国および経済移行国からの専門家の参加拡大計画 会合報告書などがある UNFCCC 補助機関 : 2007 年 5 月 7-16 日 ドイツ ボンで 第 26 回 UNFCCC 補助機関会合が開催され 京都議定書の附属書 I 国の更なる約束に関するアドホックワーキンググループ第 3 回会合 (AWG 3) ならびにUNFCCCの実施強化による気候変動への長期協力活動に関するダイアログ ( 条約の対話 ) の第 3 回ワークショップも同時開催された 会議では 2007 年 12 月 3-14 日に開催される第 13 回 UNFCCC 4

締約国会議 (COP 13) 京都議定書第 3 回締約国会合 (COP/MOP 3) を進展させるための技術的な諸問題が数多く取り上げられた ウィーン気候変動対話 : 2007 年 8 月 27-31 日 第 4 回 AWG 及び条約の対話の第 4 回ワークショップがオーストリア ウィーンで開催された AWG 4では 附属書 I 国の緩和ポテンシャルの分析と今後可能な排出削減幅について重点的に討議され 特にIPCC 第 3 作業部会 (WGIII) の主要な知見の一部について言及した結論書が採択された すなわち IPCCのこれまでのシナリオ評価にまとめられた最低水準での大気中 CO2 濃度安定化に向けて 今後 10-15 年に世界全体の温室効果ガス排出量のピークを迎えさせ 21 世紀半ばまでに2000 年水準から排出量を半減させるという目標を含めるものである さらに AWGの結論として 大気中 CO2 濃度安定化の最低水準の実現のため 2020 年までに附属書 I 国が 1990 年比 25-40% の排出量を削減しなければならないことになるとの認識も盛り込まれた UNFCCC の対話ワークショップでは COP 13で報告予定の対話の成果以後の次のステップに関する議論が開始された 気候変動に関するハイレベル協議 :2007 年 9 月 24 日 国連本部の国連総会で 将来はわれわれの手に : 気候変動というリーダーの課題への取り組み と題された特別会合が開催された 世界 150ヶ国の代表 80 名の国家元首 政府代表が参加した会合では 特に 2050 年までにGHG 排出量を半減 気温上昇 2 目標 先進国における更なる排出削減といった点が強調された ノーベル賞 :2007 年 10 月 12 日 米国ゴア前副大統領とIPCCが2007 年度のノーベル平和賞を共同受賞した ノルウェー ノーベル賞委員会は 人為的な気候変動に対する知識の確立と普及 およびそうした変化に対応するために必要な施策の基盤づくりのための努力 を授賞理由に挙げた 2007 年 12 月 10 日 ノルウェー オスロでノーベル賞授賞式が行われる NEDO からの委託により GISPRI 仮訳 5