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〔問 1〕 Aは自己所有の建物をBに賃貸した

A は 全ての遺産を社会福祉施設に寄付すると遺言に書き残し死亡した A には 配偶者 B と B との間の子 C と D がある C と D 以外にも A と B との子 E もいたが E は A が死亡する前にすでに死亡しており E の子 F が残されている また A には 内妻 G との子 (

20 第 2 章 遺留分減殺請求権の行使 遺留分侵害行為の特定 () 遺言遺言のうち 相続分の指定 相続させる遺言 包括遺贈 特定遺贈 が遺留分を侵害する行為です (2) 生前贈与生前贈与のうち 相続開始前 年間になされた贈与 遺留分権利者に損害を与えることを知ってなされた贈与 特別受益 不相当な対

〔問 1〕 抵当権に関する次の記述のうち,民法の規定によれば,誤っているものはどれか

〔問 1〕 A所有の土地が,AからB,BからCへと売り渡され,移転登記も完了している

配偶者の居住権を長期的に保護するための方策 ( 配偶者居住権 ) 1. 見直しのポイント 配偶者が相続開始時に居住していた所有の建物を対象として, 終身又は一定期間, 配偶者に建物の使用を認めることを内容とする法定の権利 ( 配偶者居住権 ) を新設する 1 遺産分割における選択肢の一つとして 2

Unit1 権利能力等, 制限行為能力者 ( 未成年 ) 1 未成年者が婚姻をしたときは, その未成年者は, 婚姻後にした法律行為を未成年であることを理由として取り消すことはできない (H エ ) 2 未成年者が法定代理人の同意を得ないで贈与を受けた場合において, その贈与契約が負担付の

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相続法改正(要綱案)の概要

1 特別受益の持戻し免除条項 現在の親は, ある程度以上の資産があると, 余裕からも, また, 相続税対策を考えることからも, 子に生前贈与する傾向がありますが, 子にした生前贈与や遺言書で子に 相続させた 財産について, 持戻しを免除する気持ちがあるのか否かの意思の表明をしない場合が極めて多く,

民法 ( 相続関係 ) 部会資料 26-1 民法 ( 相続関係 ) 等の改正に関する要綱案 ( 案 ) 第 1 配偶者の居住権を保護するための方策 1 配偶者の居住権を短期的に保護するための方策配偶者の居住権を短期的に保護するための方策として, 次のような規律を設けるものとする ⑴ 居住建物について

1 A 所有の土地について A が B に B が C に売り渡し A から B へ B から C へそれぞれ所有権移転登記がなされた C が移転登記を受ける際に AB 間の売買契約が B の詐欺に基づくものであることを知らなかった場合で 当該登記の後に A により AB 間の売買契約が取り消された

き一 修正申告 1 から同 ( 四 ) まで又は同 2 から同 ( 四 ) までの事由が生じた場合には 当該居住者 ( その相続人を含む ) は それぞれ次の 及び に定める日から4 月以内に 当該譲渡の日の属する年分の所得税についての修正申告書を提出し かつ 当該期限内に当該申告書の提出により納付

第 5 章遺留分 161 が相続を放棄すれば 遺留分減殺請求に応じなくて済む可能性がある 解 説 1 特別受益とその評価時点遺留分算定の基礎となる財産については 民法 1044 条が903 条を準用することから 相続開始 1 年前であるか否かを問わず また 損害を加えることの認識の有無を問わず 特別

52 第 1 章親族第 1 親族一般 554) 遺贈はいつでも撤回ができるとする民法 1022 条も準用されます ( 最判昭 民集 判時 ) 死因贈与においても 遺贈と同様に贈与者の最終意思が尊重されるためです なお この撤回権は 贈与者本人のみが行使で

平成 21 年 4 月 19 日 おいじたくあんしんネットレジュメ 不動産登記と相続 司法書士石川亮 1. 不動産登記法改正 1. オンライン申請の導入 ( 不登法 18 条 ) ( ア ) 不動産登記法が改正され 条文上原則オンライン申請となった ( イ ) オンライン申請促進のため登録免許税が軽

2018 年 ( 平成 30 年 )7 月に, 相続法制の見直しを内容とする 民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律 と, 法務局において遺言書を保管するサービスを行うこと等を内容とする 法務局における遺言書の保管等に関する法律 が成立しました 民法には, 人が死亡した場合に, その人 ( 被相

配偶者居住権の相続税評価額について 2018/12/28 田口税理士事務所 平成 30 年の民法改正により 配偶者の居住権を保護するために配偶者居住権が新設されましたが 相続税の評価にどう影響させるかについて 今回の税制改正大綱に記載されています まず 前提となる配偶者居住権について 説明します 1

2. 制度の概要 この制度は 非上場株式等の相続税 贈与税の納税猶予制度 とは異なり 自社株式に相当する出資持分の承継の取り扱いではなく 医療法人の出資者等が出資持分を放棄した場合に係る税負担を最終的に免除することにより 持分なし医療法人 に移行を促進する制度です 具体的には 持分なし医療法人 への

の消滅の申入れをした日から6か月を経過する日 とすることとした そして, この規律については, 配偶者が放棄した場合だけでなく, 相続分の指定により配偶者の相続分がないものとされた場合など, 配偶者が遺産分割の手続に関与することができない場合にも適用することとしている 具体的には, 例えば, 配偶者

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相続税 贈与税の基本がよくわかる! 誰が相続人になるの? 税額はどのようにして求めるの? 土地 建物の評価はどうするの? 住宅取得資金の贈与は最大 3,000 万円が非課税に? 教育資金や結婚 子育て資金の贈与は非課税に? 新しくできる配偶者居住権ってどんなもの? etc.

税金の時効 税務では 時効のことを更正 決定処分の期間制限 = 除斥期間 といいます その概要は 以下の通りです 1. 国税側の除斥期間 ( 通則法 70) 1 期限内申告書を提出している場合の所得税 相続税 消費税 税額の増額更正 決定処分の可能期間 : 法定申告期限から 3 年 2 無申告の場合

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遺者であったが 事情があって遺贈の放棄をした 民法 986 条の規定によれば 受遺者は 遺言者の死亡後 いつでも 遺贈の放棄をすることができ 遺贈の放棄は 遺言者死亡のときに遡ってその効力を生じるとされているから 前所有者から請求人に対する本件各不動産の所有権移転の事実は無かったものであり 請求人は

配偶者の税額軽減特例の有利な受け方 配偶者がいる場合の 相続税の具体的な計算例は以下の通りです 1. 設例 自宅 預貯金等の相続財産の遺産額 =2 億円 法定相続人 = 配偶者 + 子 2 人の合計 3 人 実際の遺産分割は 法定相続分の通りとする 未成年者控除 外国税額控除 生命保険金の非課税枠金

Asakura ミニマムテキスト 2 所有権保存登記の抹消 (1) 申請人 所有権登記名義人が単独で申請する (2) 添付情報 a 登記識別情報 所有権登記名義人の登記識別情報が必要 b 印鑑証明書 所有権登記名義人が単独で申請するが, 真意で申請したことを確認するために必要

そこで、X男は、八年前にY女が出した離婚届は民法742条に該当し、無効だと裁判を起こした

不動産登記法(各論Ⅰ)

2. 改正の趣旨 背景 (1) 問題となっていたケース < 親族図 > 前提条件 1. 父 母 ( 死亡 ) 父の財産 :50 億円 ( すべて現金 ) 財産は 父 子 孫の順に相続する ( 各相続時の法定相続人は 1 名 ) 2. 子 子の妻 ( 死亡 ) 父及び子の相続における相次相続控除は考慮

(3) 生前贈与子のため また 第三者のためになされた生前贈与は 原則的には完全に有効であるが ある制限に服する 必然相続人が存しない場合は 遺産全部は自由処分できるが 存する場合は それらの遺留分を尊重しなければならない 何人も 遺言で与えることができる以上の物を生前に与えることはできない ( 民

民法 ( 債権関係 ) の改正における経過措置に関して 現段階で検討中の基本的な方針 及び経過措置案の骨子は 概ね以下のとおりである ( 定型約款に関するものを除く ) 第 1 民法総則 ( 時効を除く ) の規定の改正に関する経過措置 民法総則 ( 時効を除く ) における改正後の規定 ( 部会資

の実現が認められているもの意思表示を重要な要素とし 意思に基づいて 意思どおり法律効果が発生するもの 2 法律行為の種類 () 契約対立する 2 個以上の意思表示が合致して成立する法律行為 ex 売買契約など (2) 単独行為ひとつの意思表示だけの法律行為 相手方のある単独行為 ex 取消し 追認

経 ViewPoint 営相談 相続時における小規模宅地等の特例の改正 谷口敬三相談部東京相談室 小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例 ( 以下 小規模宅地等の特例 ) は 一定の要件を満たす宅地等 ( 特定事業用等宅地等 特定居住用宅地等 貸付事業用宅地等 ) につ

2 譲渡禁止特約の効力改正前は 譲渡禁止特約を付した場合は債権の譲渡はできない ( ただし 特約の存在を知らない第三者等には対抗できない ) とされていましたが 改正法では このような特約があっても債権の譲渡は効力を妨げられないことを明記しました ( 466Ⅱ 1) ただし 3に記載するとおり 債務

平成16年6月6日 AがXに対して、全財産を包括的に遺贈した

H 沖縄会レジュメ税務

きる ( 改正前民法 436 条 ) 1 改正法と同じ 2 前項の債権を有する連帯債務者が相殺を援用しない間は その連帯債務者の負担部分についてのみ他の連帯債務者が相殺を援用することができる 本条は 負担部分の限度で 他の連帯債務者が債権者に対して債務の履行を拒むことができると規定したものであり 判

ウ譲渡人について倒産手続の開始決定があった場合エ債務者の債務不履行の場合 (3) 譲渡禁止特約付債権の差押え 転付命令による債権の移転 2 債権譲渡の対抗要件 ( 民法第 467 条 ) (1) 総論及び第三者対抗要件の見直し (2) 債務者対抗要件 ( 権利行使要件 ) の見直し (3) 対抗要件

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50 第2章 特別受益 1 住宅購入資金の特別受益該当性 住宅購入資金の援助は 一般的には 生計の基礎として役立つよう な財産上の給付として 生計の資本としての贈与 民903① に該当 するといえます 本事例(1) (2)のように 1000万円もの臨時的な高 額援助は 通常は相続分の前渡しとして 特

Microsoft Word - 第65号 二世帯住宅と小規模宅地等の特例

5 根抵当権者の会社分割 61 根抵当権者の会社分割 Ⅰ ケース概要甲野銀行は 乙野商事に対する融資取引の担保として乙野商事所有の土地につき根抵当権の設定を受けていたが その後 丙川銀行を承継会社とする吸収分割が行われた 今般 当該確定前の根抵当権について 他の事由により登記を行うこととなったため

7 平成 28 年 10 月 3 日 処分庁は 法第 73 条の2 第 1 項及び条例第 43 条第 1 項の規定により 本件不動産の取得について審査請求人に対し 本件処分を行った 8 平成 28 年 11 月 25 日 審査請求人は 審査庁に対し 本件処分の取消しを求める審査請求を行った 第 4

12. 小規模宅地等の特例の見直し 1. 改正のポイント (3) 適用時期平成 30 年 4 月 1 日以後に相続又は遺贈により取得する宅地等に係る相続税について適用される ただし (2)1 の改正について 平成 30 年 3 月 31 日においての別居親族の要件を満たしていた宅地等を平成 32 年

五有価証券 ( 証券取引法第二条第一項に規定する有価証券又は同条第二項の規定により有価証券とみなされる権利をいう ) を取得させる行為 ( 代理又は媒介に該当するもの並びに同条第十七項に規定する有価証券先物取引 ( 第十号において 有価証券先物取引 という ) 及び同条第二十一項に規定する有価証券先

13. 平成 29 年 4 月に中古住宅とその敷地を取得した場合 当該敷地の取得に係る不動産取得税の税額から 1/2 に相当する額が減額される 14. 家屋の改築により家屋の取得とみなされた場合 当該改築により増加した価格を課税標準として不動産 取得税が課税される 15. 不動産取得税は 相続 贈与

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実務の視点Ⅴ(18).indd

海外財産の相続 : 事例研究 ~ 米国の財産の相続手続き ( 第 4 回 ) 三輪壮一氏三菱 UFJ 信託銀行株式会社リテール受託業務部海外相続相談グループ米国税理士 これまで 海外に財産を保有する場合の 海外相続リスク の存在 特にプロベイト手続き等の相続手続きの煩雑さについて 米国の例を基に説明

平成 29 年度下半期における相続に関する相談状況について 平成 30 年 5 月 28 日静岡市駿河区稲川一丁目 1 番 1 号静岡県司法書士会会長杉山陽一静岡県司法書士会では 平成 14 年から15 年以上に亘り 面談及び電話による無料相談を実施してまいりました ( 平成 17 年からは 司法書

経 ViewPoint 営相談 借地権の法務に関する基礎知識 堂本隆相談部東京相談室 借地権とは 建物の所有を目的とする土地の賃借権または地上権をいいます 他人が所有する土地に建物を建てる場合 その所有者である地主との間で土地賃貸借契約を締結するとき発生する権利 あるいは 地上権の

第 1 民法第 536 条第 1 項の削除の是非民法第 536 条第 1 項については 同項を削除するという案が示されているが ( 中間試案第 12 1) 同項を維持すべきであるという考え方もある ( 中間試案第 12 1 の ( 注 ) 参照 ) 同項の削除の是非について どのように考えるか 中間

ことも認められています 施行日前 ( 平成 26 年 3 月 31 日以前 ) にリース契約を締結し リース資産の引渡しを行ったリース取引についてこの特例により賃貸借処理を行っている場合には 旧税率の 5% が適用されます 3. 資産の貸付け に関する経過措置指定日の前日 ( 平成 25 年 9 月

保証契約とは しゅさいむしゃ が 保証契約 とは, 借金の返済や代金の支払などの債務を負う 主債務者 その債務の支払をしない場合に, 主債務者に代わって支払をする義務を負うことを約束する契約をいいます なお, 連帯保証契約 とは, 保証契約の一種ですが, 主債務者に財産があるかどうかにかかわらず,

第 2 章契約の成立と有効性 1 契約の成立 赤字は講座紹介コメントです 1, 契約の成立 (1) 契約の成立要件 契約は, 申し込みの意思表示と承諾の意思表示の合致によって成立する (2) 合致の程度実は論文でも重要だったりする論点を再確認できます 内心において合致していれば, 外形において合致し

相続税・贈与税の基礎と近年の改正点

1/12 三豊市若者定住促進 地域経済活性化事業補助金交付要綱 三豊市若者定住促進 地域経済活性化事業補助金交付要綱平成 24 年 7 月 10 日告示第 256 号改正平成 26 年 3 月 20 日告示第 46 号平成 26 年 3 月 31 日告示第 88 号平成 27 年 3 月 31 日告

措置法第 69 条の 4(( 小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例 )) 関係 ( 被相続人等の居住の用に供されていた宅地等の範囲 ) 69 の 4-7 措置法第 69 条の 4 第 1 項に規定する被相続人等の居住の用に供されていた宅地等 ( 以下 69 の 4-8 までにおいて 居

【自動車保険単位】

税法入門コース 相続税 学習スケジュール 回数学習テーマ内容 第 1 回 第 2 回 第 3 回 第 4 回 第 4 回 第 1 章 第 2 章 第 2 章 第 3 章 第 4 章 第 4 章 第 5 章 テーマ 1 相続税 贈与税とは? テーマ 2 用語の説明 テーマ 1 相続人となれる人は? テ

配偶者居住権が新設され 夫 ( 妻 ) の死後も配偶者は自宅に住めるようになります 配偶者が 被相続人の相続開始時において被相続人所有の住居に居住していた場合 原則としてその配偶者の死亡時まで住み続けることができる 居住権 が新設されました 配偶者は 被相続人の自宅の 居住権 を相続すれば 引き続き

昭和 29 年 7 月に法務大臣から法制審議会に対し, 民法に改正を加える必要があるとすれば, その要綱を示されたい との諮問がされ, まず, 民法の 第 4 編親族 の改正について検討がされた その後, 昭和 35 年から 第 5 編相続 についても検討がされたが, ここでは, 全面的な改正には相

である 12 遺留分とは 遺言の内容にかかわらず一定の相続人が確実に受け取ることができる一定の 割合のことである 直系尊属のみが相続人である場合は 被相続人の財産の 1/3 その 他の場合には 被相続人の財産の 1/2 である ただし 兄弟姉妹には遺留分はない 13 相続の放棄は 被相続人の生前に行

遺留分 遺留分とは 一定の親族 ( 配偶者 子 親等直系尊属 ) に残しておかなければならない遺産の割合です 特に遺言を作成する場合は 遺留分に注意する必要があります なお 遺留分を侵害された相続人には 遺留分に相当する部分の取り戻しを請求 ( 遺留分減殺請求 ) することが認められています [2]

東京リーガルマインド 無断複製 頒布を禁じます 不動産登記法 一所有権保存 1 74 条 1 項 1 号保存 申請書 1 不登 74 条 1 項 1 号前段 登記の目的 所有者 所有権保存 市 町 丁目 番 号 A 添付書類住所証明情報 (A の住民票の写し ) 代理権限証明情報 (A の委任状 )

A. 受贈者に一定の債務を負担させることを条件に 財産を贈与することを 負担付贈与 といいます 本ケースでは 夫は1 妻の住宅ローン債務を引き受ける代わりに 2 妻の自宅の所有権持分を取得する ( 持分の贈与を受ける 以下持分と記載 ) ことになります したがって 夫は1と2を合わせ 妻から負担付贈

民法 ( 相続関係 ) 部会資料 14 今後の検討の方向性について 第 1 配偶者の居住権を保護するための方策 1 配偶者の居住権を短期的に保護するための方策 ⑴ パブリックコメントの結果の概要短期居住権に関する規律のうち, 遺産分割が行われる場合の規律については, 一部反対意見 ( 判例で認められ

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第 5 章 N

土地の譲渡に対する課税 農地に限らず 土地を売却し 譲渡益が発生すると その譲渡益に対して所得税又は法人税などが課税される 個人 ( 所得税 ) 税額 = 譲渡所得金額 15%( ) 譲渡所得金額 = 譲渡収入金額 - ( 取得費 + 譲渡費用 ) 取得後 5 年以内に土地を売却した場合の税率は30

宅地建物取引主任者資格試験対策

相続税計算 例 不動産等の評価財産の課税評価額が 4 億 8 千万円 生命保険金の受取額が 2 千万円 現金 預金等が 4 千万円 ローン等の債務及び葬式費用等が 3 千万円である場合の相続税を計算します 相続人は妻と 2 人の子供の 3 人です ( 評価額を計算するには専門知識を要します 必ず概算

中間試案後に追加された民法 ( 相続関係 ) 等の改正に関する試案 ( 追加試案 ) の補足説明 目次 はじめに... 2 第 2 遺産分割に関する見直し等 配偶者保護のための方策 ( 持戻し免除の意思表示の推定規定 ) 仮払い制度等の創設 要件明確化 ⑴ 家

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借地権及び法定地上権の評価 ( 競売編 ) 出典 : 株式会社判例タイムズ出版 別冊判例タイムズ第 30 号 借地権の評価 第 1 意義 借地権とは 建物所有を目的とする地上権又は土地の賃借権をいう ( 借地法 1 条 借地 借家法 2 条 1 号 ) 第 2 評価方法 借地権の評価は 建付地価格に

2. 二世帯住宅と特定居住用宅地等 [1] 区分所有なし : 外階段 / 親族が取得する場合 Q. 被相続人 A が所有する宅地の上に A の所有する建物があり 1 階に A が居住し 2 階に子 B とその家族が居住しています ( 建物内部では行き来ができない構造 ) A と B は別生計です こ

(1) 相続税の納税猶予制度の概要 項目 納税猶予対象資産 ( 特定事業用資産 ) 納税猶予額 被相続人の要件 内容 被相続人の事業 ( 不動産貸付事業等を除く ) の用に供されていた次の資産 1 土地 ( 面積 400 m2までの部分に限る ) 2 建物 ( 床面積 800 m2までの部分に限る


務の返済が不可能になった状態 と定義されている 商事裁判所法では以下の 3 種類の破産が規定されている 真実の破産 (real bankruptcy): 一般的に健全な経営をしており 正式な帳簿を作成し 浪費をしていなかったが 資産に明白な損失が生じた場合 怠慢による破産 (bankruptcy b

[2] 株式の場合 (1) 発行会社以外に譲渡した場合株式の譲渡による譲渡所得は 上記の 不動産の場合 と同様に 譲渡収入から取得費および譲渡費用を控除した金額とされます (2) 発行会社に譲渡した場合株式を発行会社に譲渡した場合は 一定の場合を除いて 売却価格を 資本金等の払戻し と 留保利益の分

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1 可分債権そもそも債権という意義ですが 債権とは 特定の者に対して何らかの行為や給付 (= 給付とは 貸付金の返済や売掛代金の支払い等 ) を請求する権利 を言います 可分債権とは 同一の債務者に同一内容の債権者が複数いる場合 ( 即ち 共有の債権者 ) に各債権者が単独で自らの権利割合分を単独で

経 ViewPoint 営相談 不動産登記手続きの放置事例と解決のための基礎知識 篠原徹旨相談部東京相談室 不動産登記には対象不動産の現況と権利関係が反映されますが 権利関係の登記申請を怠っても国から罰則を受けることはありません そのため 権利変動が生じても登記申請をせずに放置され

る権利が移転するものとする 2 甲 -2 案 ( 受遺者等が金銭債務の全部又は一部の支払に代えて現物での返還を求めた場合には, 受遺者等が指定する現物での返還の適否を裁判所が判断するという考え方 ) 1 甲-1 案 1に同じ 2 1の請求を受けた受遺者又は受贈者は, その請求者に対し,1の金銭債務の

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2,606 円 B2,703 万 2,606 円 C2,641 万 4,735.5 円 D2,637 万 5,221.5 円であると主張した そこで共同相続人等は平成 12 年 5 月 30 日 争いのある部分につき引き続き協議を行い 協議が調わない場合共同口座をいったん解約し Y が解約金を預かり

ご契約のしおり・約款 指定代理請求特約

- 2 - 二一の遺言書は 法務省令で定める様式に従って作成した無封のものでなければならないものとすること (第四条第二項関係)三一の申請は 遺言者の住所地若しくは本籍地又は遺言者が所有する不動産の所在地を管轄する遺言書保管所(遺言者の作成した他の遺言書が現に遺言書保管所に保管されている場合にあって

マイナス金利の導入に伴って生ずる契約解釈上の問題に対する考え方の整理

契約をするとき 契約書に貼る印紙税不動産取引で取り交わす契約書は 印紙税の対象となります 具体的には 不動産の売買契約書や建物の建築請負契約書 土地賃貸借契約書 ローン借入時の金銭消費貸借契約書等がこれに当たります 印紙税の額は 契約書に記載された金額によって決定されます 原則として 収入印紙を課税

特別障害者一人につき 75 万円を所得から控除することができます 障害者控除は 扶養控除の適用がない16 歳未満の扶養親族を有する場合においても適用されます ⑶ 心身障害者扶養共済掛金の控除 P128 条例の規定により地方公共団体が実施するいわゆる心身障害者扶養共済制度による契約で一定の要件を備えて

第 5 相続財産 ( 財産の種類 調査方法 ) (17 頁 ) 1 積極財産 2 消極財産 3 地位の承継 4 遺産目録の作成第 6 遺言 遺言執行 (21 頁 ) 1 遺言 2 遺言の執行図解遺言執行の流れ (23 頁 ) 第 7 遺留分 (24 頁 ) 1 遺留分権利者と割合 2 遺留分減殺第

144 第 2 章宅地等の評価第 3 個別事情のある宅地の評価 このような過小宅地を評価する場合 財産評価基本通達における原則評価 ( 奥行価格補正率や奥行長大補正率等 ) のみでは上記の要因が十分に考慮されているとは言い難く 市場価値である時価と大きく乖離しているケースが見受けられます よって 本

( 図表 2) 民法と相続税法における取り扱いの差異 民法 相続税法 法定相続人に含める養子の数 何人でも相続人になれる 実子がいる場合 :1 名まで 実子がない場合 :2 名まで 相続の放棄 相続人の数に入れない 相続税の総額の計算上は法定相続人の数に含める 贈与財産 特別受益として持戻し ( 財

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法第 20 条は, 有期契約労働者の労働条件が期間の定めがあることにより無期契約労働者の労働条件と相違する場合, その相違は, 職務の内容 ( 労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度をいう 以下同じ ), 当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して, 有期契約労働者にとって不合

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民法 2 物権 ( 第 3 版 ) (22114-7) 補遺相続法改正と物権法 2019 年 1 月 1 2018 年相続法の改正案が国会を通過し ( 平成 30 年法律 72 号 ), 一部を除き 2019 年 7 月に施行される予定である 相続法の改正により, 配偶者 ( 短期 ) 居住権の創設 (2020 年 4 月施行 ), 自筆証書遺言の簡易化 (2019 年 1 月施行 ), 遺留分を遺留分減殺請求による現物返還から遺留分侵害額請求による金銭請求に変えたことなど重要な改正が幾つか行われている 本書では, 債権法改正 を先取りして執筆されているが, 執筆時点では未だ立法には至らず議論の段階に止まった 相続法の改正 を考慮していない そこで, 以下では, 相続法の改正との関係で物権法に関する幾つかの重要な論点を補完して解説することとする 2 共同相続での権利の承継の対抗要件 (257 頁 ) Case10-18 -1 (1)A の法定相続人は子 BC の 2 人であったが,A は, 自己の所有する甲土地を B に相続させる と遺言をしていた ところが,C は, 相続を原因として BC の持分を 2 分の 1 とする ( 共同 ) 相続登記をしたうえで, 自己の持分を第三者 D に売却し, 持分移転登記を了した (2)(1) とは異なり,A が遺言で相続分を B が 3 分の 2,C が 3 分の 1 と指定した場合に,C は (1) と同様の相続登記をしたうえで, 自己の持分 2 分の 1 を第三者 E に売却し, 持分移転登記を了した 以上の (1)(2) で,B は甲土地全部の所有権者であると主張して,D に対して持分の移転登記を請求できるか (1) では, 現行法では, 本書の 257 頁以下で記述したように,B は,D に対して甲土地の所有権の移転登記を請求できる つまり, 相続させる遺言による権利取得は, 指定相続分と同じだから, 第三者対抗要件を必要としないと解されていた ( 最判平 14 6 10 判時 1791 号 59 頁 ) しかし, 新法では, 新 899 条の 2 第 1 項は, 相続による権利の承継は, 遺産の分割によるものかどうかにかかわらず, 次条及び第 901 条の規定により算定した相続分 注 法定相続分 を超える部分については, 登記, 登録その他の対抗要件を備えなければ, 第三者に対抗することができない と規定している つまり, 相続させる遺言によって権利取得した B も, 法定相続分によって権利取得した甲土地の持分 2 分の 1 以上の権利取得を第三者に対抗するには, 登記が必要となる その結果, 登記をしていない B は,D に対して法定相続分を超える甲土地の 2 分の 1 の持分について持分移転登記請求をすることはできない つまり, 相続させる遺言 ( 新法では, 特定財産承継遺言 とネーミングされている 新 1014 条 2 項 遺産分割の方法の指定として遺産に属する特定の財産を共同相続人の一人又は数人に承継させる旨の遺言 ( 以下, 特定財産承継遺言 という ) ) - 1 -

でも, 法定相続分以上の権利取得には登記が必要となった (2) でも, 現行法では,E は C の指定相続分 3 分の 1 を取得するに止まる ( 最判平 5 7 19 家月 46 巻 5 号 23 頁 ) しかし, 新法では, 登記をしていない B は,D に対して法定相続分である甲土地の 2 分の 1 の持分についてだけ所有権を対抗できることになるから, 持分割合を B が 3 分の 2,E が 3 分の 2 とする更正登記を求めることはできないことになる 以上は, 現行法でも不動産に関する取引の安全という視点からは問題が多いと批判されていたことも考慮して法改正したと説明されている 改正によって, 理論的には, 法定相続分の範囲で,C が D や E に共有持分を移転することは, 無権利者からの物権変動とは解されないことになったものと考えられる ただし, 相続の放棄による物権変動は以上の例外で, 登記を具備する必要はないと考えられている 確かに, 相続を放棄した相続人以外の共同相続人は, 放棄によって放棄者に帰属した相続分を取得する しかし, 相続放棄すれば, 放棄者は初めから相続人とならなかったものとみなされ (939 条 ), しかも, 遡及効を制限する規定も存在しない さらに, 相続放棄の期間は 3 ヶ月と限定されている (915 条 1 項 ) しかも, 相続の放棄は権利の承継ではなく権利を失う意思表示であり, 加えて, 相続放棄では主に問題となる第三者は相続放棄した相続人の債権者に限られていることから ( 相続を放棄した相続人の債権者は, 放棄者の固有財産を責任財産と考えるべきである ), 法改正の対象とはならず, 相続放棄の結果を登記する必要はないと考えられている つまり, 相続法の改正後も現行法と変わりはない ( 本書の 253 頁以下を参照 ) 3 遺言執行者がある場合の相続人の行為の効果 Case10-18 -2 (1)A は, 自己所有の甲不動産を, 法定相続人ではない D に遺贈することとし,E を遺言執行者に選任した A の死亡後,A の唯一の法定相続 B が甲不動産につき相続を原因とする登記をした上で,C に売却した 遺言執行者 E は,C に対して, 甲不動産の所有権移転登記の抹消登記の請求が可能か (2) 以上の例で,A には G1 からの借財があり,B も G2 から借財があった G1,G2 は, 甲不動産に対して差押えができるか? (1) 現行法では, 遺言執行者がある場合には, 相続人は, 相続財産の処分その他遺言の執行を妨げるべき行為をすることができない とする民法 1013 条の解釈として, B の甲不動産の処分は絶対無効と解されている ( 大判昭 5 6 16 民集 9 巻 550 頁, 最判昭 62 4 23 民集 41 巻 3 号 474 頁 ) しかし, 新法では, 新 1013 条は,1 項は現行法 1013 条と同じだが,2 項で, 前項の規定に違反してした行為は, 無効とする ただし, これをもって善意の第三者に対抗することができない と規定している したがって, 新法では, 善意の C に対しては, 遺言執行者 E も甲不動産の所有権移転の登記の抹消登記を請求できない ( 遺言執行者に関しては, 第 7 巻 ) - 2 -

(2) 現行法では,(2) に関する最高裁判例は存在しない しかし, 新法では, 新 1013 条 3 項は, 前二項の規定は, 相続人の債権者 ( 相続債権者を含む ) が相続財産についてその権利を行使することを妨げない と規定している だから, 新法では, 被相続人 A の債権者 ( 相続債権者 )G 1, 相続人 B の債権者 G 2 のいずれも相続財産に対する執行 (G 2 に関しては,B の法定相続分だが, このケースでは,B は単独相続人 ) が可能である その結果,D が甲不動産を取得するには,G 1,G 2 の差押えより先に, 移転登記を受けるほかない (1) の第三者 C,(2) の G 1,G 2 にとっては,A の遺言の内容を知ることも, 遺言執行が指示されていることを知るのも困難である その結果が, 新 1013 条 2 項,3 項だということになる だから, ある意味では, 遺産の共有という性質を重視した上で, 一定の程度までは, 取引の安全に配慮したのが, 改正法の内容だと考えることもできる 4 配偶者居住権 ( 長期 ) (1) 相続法の改正では, 生存 ( した ) 配偶者の権利に対する配慮が幾つかされている その背景は, 高齢社会では, 被相続人の死亡時の年齢の高齢化と同時に, 子の相続年齢も高齢化し, 子の生活保障より, 生存配偶者の生活が重要となると考えられているからである その具体策として,(ⅰ) 配偶者の短期居住権, 居住権,(ⅱ) 持戻し免除の推定,(ⅲ) 特別の寄与の制度などが実現された ただし, 物権法との関係で重要なのは, 配偶者居住権の対抗要件であるが, 以下では,(ⅱ)(ⅲ) についても, 簡単に解説する (2) 持戻し免除の推定 ( 新 903 条 4 項 ) Case 1 1970 年に結婚した AB 夫婦には子が 2 人いたが, 夫 A は 2018 年に死亡した A の遺産は,AB が A 死亡まで同居していた居住用の土地 建物 ( 甲土地 建物, 評価額 3000 万円 ), その他の不動産 ( 乙土地, 評価額 3000 万円 ), 預貯金 3000 万円だった A は,2017 年に甲土地 建物を妻 B に贈与していた ( または,A は遺言で, 妻 B に甲土地 建物を遺贈していた ) 確かに,A から贈与があったときでも (, 遺贈の場合も ),B は甲建物を取得する ただし, 現行法では, 甲建物は ( 被相続人 A の持戻し免除の意思表示がなければ,903 条 3 項 ), 遺産分割で相続財産に持ち戻される (903 条 1 項 ) 生前の重要な贈与は, 相続の前倒しだと評価するのが, 相続人間の公平 平等に合致すると考えられるからである その結果, 相続時の A の財産 ( 乙土地 3000 万円 + 預貯金 3000 万円 =)6000 万円に B の特別受益として甲土地 建物 (3000 万円 ) を加えた 9000 万円が遺産分割の対象となる その際に,B の法定相続分は 2 分の 1(4500 万円 ) だから,B は甲土地 建物 (3000 万円 )+1500 万円 =4500 万円を取得するに止まる しかし, 新法では, 新 903 条 4 項で, 婚姻期間が 20 年以上の夫婦の一方である被相続人が, 他の一方に対し, その居住の用に供する建物又はその敷地について遺贈又は贈与 - 3 -

をしたときは, 当該被相続人は, その遺贈又は贈与について第 1 項の規定を適用しない旨の意思を表示したものと推定する と規定された したがって, 被相続人 A が特別受益としての扱いをしないという意思表示をしていない限りは,B は, 甲土地 建物 (3000 万円 ) 以外に,6000 万円の 2 分の 1 =3000 万円の合計 6000 万円を遺産分割で取得することになる (3) 特別の寄与 ( 新 1050 条 ) Case 1-2 AB は夫婦だが, 夫 A に高齢の父親 F がいて, 妻 B が長年にわたって, 献身的に F を介護していた F が死亡した場合に,B は F の相続財産から介護に対する報酬を受けることができるか 現行法 (904 条の 2) では,F の相続人 A が 被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした ときは,A は 寄与分 として,F の遺産から金銭的な対価を取得できる可能性がある しかし,A の妻 B は,F の法定相続人ではないから, 寄与分を受けることができない が, 現実には F( 被相続人 ) の子 A( 相続人 ) の妻 B が, 夫の両親の介護をすることがしばしばである そこで, 新 1050 条 1 項では, 被相続人に対して無償で療養看護その他の労務の提供をしたことにより被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした被相続人の親族 ( 相続人, 相続の放棄をした者及び第 891 条の規定に該当し又は廃除によってその相続権を失った者を除く 以下この条において 特別寄与者 という ) は, 相続の開始後, 相続人に対し, 特別寄与者の寄与に応じた額の金銭 ( 以下この条において 特別寄与料 という ) の支払を請求することができる と規定した その結果,F の相続人ではないが親族の B は, 特別寄与料を請求することができると認められた (4) 配偶者 ( 短期 ) 居住権 ( 新 1028 条以下 ) Case 2 AB は夫婦だったが,A は遺言をすることなく死亡した AB は,A が死亡するまで甲建物に同居していた A の遺産としては, 甲建物 ( 評価額 3000 万円 ) と預貯金 3000 万円があった 共同相続人は,AB の子 CD である 1 まず, 遺産分割が終了するまでは,B は甲建物に無償で居住できることが規定された ( 配偶者短期居住権, 新 1037 条 1 項 ) これまでも判例 ( 最判平 8 12 17 民集 50 巻 10 号 2778 頁 ) は, 被相続人と同居する相続人については, 相続開始時を始期とし, 遺産分割時を終期とする使用貸借契約が成立するというのが被相続人の通常の意思であると推認して, 同居していた相続人の居住権を保護してきた 今回の改正は, 以上の判例を同居者が配偶者の場合には, 被相続人の意思を推認することなく, 明文で居住権を認めたものと考えられる だから, 配偶者短期居住権の法的性質は, 比喩的な説明をするとすれ - 4 -

ば, 持戻し免除の意思表示の推定される 法定 (= 法律で規定された ) 遺贈 であると考えられる ただし, これは, 遺産分割でABが居住していた建物の帰属が決定するまでの暫定的な生存配偶者 Bの居住の保護である 2 そこで, 今ひとつ, 新法では,(ⅰ) 遺産分割で被相続人 Aと同居していた配偶者 B が配偶者居住権を取得するとされたとき, 又は,(ⅱ) 配偶者居住権がAからBへの遺贈の目的とされたときには, 配偶者 Bは死亡するまで, 甲土地建物を無償で使用できるとされた ( 配偶者居住権, 新 1028 条 1 項 ) さらに, 遺産分割の審判で,(ⅰ) 共同相続人間で配偶者居住権の合意があるか, 又は,(ⅱ) 生存配偶者 Bが配偶者居住権の取得を希望する旨を申し出た場合において, 居住建物の所有者の受ける不利益の程度を考慮してもなお配偶者の生活を維持するために, 特に認める必要があると認められるときは, 同様に, 生存配偶者 Bの居住権が認められる ( 新 1029 条 ) ただし, 配偶者居住権は生存配偶者 Bの居住を確保する趣旨で法によって特に認められた権利であるので, この権利を他人に譲渡することはできない ( 新 1032 条 2 項 ) さらに, 建物所有者 ( 例えば, 遺産分割で甲建物を取得したC) の承諾がある場合には, 生存配偶者 Bが第三者に建物の使用収益させることを認めているが, これは,Bが施設に入るなどの事情の変更がある場合に対応するための措置にすぎない Case 2 で, 甲土地建物の配偶者居住権が 500 万円と評価されたときは,Bの相続分は2 分の1 だから, 遺産分割で,Bは配偶者居住権 500 万円 + 預金 2500 万円 =3000 万円を取得することが可能となる ( 現行法で,Bに甲土地建物(3000 万円 ) を取得させると,Bには他に相続財産を取得する余地はなく, 生活に困窮する可能性がある ) さらに, 新 903 条 4 項 ( 婚姻期間 20 年以上の配偶者に対する贈与, 遺贈では, 持戻し免除の推定がされる規定 ) は, 配偶者居住権の贈与, 遺贈にも適用される だから,Case 2 で, Aが遺言でBに配偶者居住権を遺贈していたときは,Bは, 配偶者居住権 (500 万円 ) 以外に,2500 万円 +3000 万円の相続財産 (5500 万円 ) の法定相続分 2 分の1 =2750 万円を取得することになる だから, 配偶者居住権は, 遺産分割の当事者の合意, 贈与, 遺言によるとき以外で, 配偶者が配偶者居住権を希望したときに成立するのは, 新法では, 一種の 法定遺贈 が規定されたからだと考えるべきであろう 3 Case 2 で, 遺産分割の結果として, 子 Cが甲土地建物を取得することになった場合は,C はBに対して配偶者居住権の設定の登記を申請する義務を負う ( 新 1031 条 1 項, BCの共同申請 ただし, 配偶者居住権の登記義務の履行を命じる遺産分割の審判がされれば, 配偶者 Bは単独で配偶者居住権の登記の申請が可能である ) その上で, 不動産賃借権の対抗力に関する民法 605 条, 新 605 条の 4( 登記を具備した賃借人の妨害の停止の請求権などを定めた規定 ) が, 配偶者相続権の設定の登記を備えた場合に準用される ( 新 1031 条 2 項 ) 以上 - 5 -