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33 NCCN Guidelines Version NCCN Clinical Practice Guidelines in Oncology (NCCN Guidelines ) (NCCN 腫瘍学臨床診療ガイドライン ) 非ホジキンリンパ腫 2015 年第 2 版 NCCN.or

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福島県のがん死亡の年次推移 福島県におけるがん死亡数は 女とも増加傾向にある ( 表 12) 一方 は 女とも減少傾向にあり 全国とほとんど同じ傾向にある 2012 年の全のを全国と比較すると 性では高く 女性では低くなっている 別にみると 性では膵臓 女性では大腸 膵臓 子宮でわずかな増加がみられ

第1分野 摂食嚥下リハビリテーションの全体像 1 総 論 2 摂食嚥下のリハビリテー 椿原彰夫 ション総論 Lecturer 川崎医療福祉大学学長 学 習目標 Learning Goals Chapter 1 摂食嚥下とその障害の概念が理解できる 摂食嚥下障害の治療目的がわかる 急性期 回復期 生活

06: 耳鼻咽喉 頭頸部外科コース 1. 耳鼻咽喉 頭頸部外科コースの概説このコースでは 聴器 平衡器 鼻 副鼻腔 口腔 咽頭 喉頭 気管 食道および唾液腺 甲状腺を含む臨床解剖 生理を知り これら器官の疾患の診断および治療法についての概念を習得することにあるが さらにこれら疾患と他臓器疾患との関連

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1981 年 男 全部位 C00-C , , , , ,086.5 口腔 咽頭 C00-C

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口腔がん登録 Q&A Ver /11/21 用語 定義に関する Q&A Q1.本調査に関する各用語の定義を教えてください 下記の図表を参照してください 各用語の定義等について 口腔内 口唇 口腔 顎骨中心性 UICCの Lip & Oral cavity 顎骨中心性) 舌 可動部 上顎

10 第 章 頭頸部の骨 chapter 10 Ⅰ 1 頭蓋冠 頭蓋底 頭蓋腔 図10-3 頭蓋 cranium 脳頭蓋の天蓋部は前頭骨 頭頂骨 後頭骨 側頭骨か 頭部の骨格は 15 種 23 個の多くの骨が複雑に連結し らなり 脳を保護する半球型の頭蓋冠を構成する 一方 ており これらの骨をまとめ

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potato voice( 熱いポテトを食べている時のような特徴的な声 ) があります また 同側のリンパ節腫脹を多く認めます 1) 咽後膿瘍 : 小児に多くみられる疾患で 80% が 5 歳以下です 小児の場合はリンパ節炎からの波及であることが多いといわれています 一方で 成人の場合は免疫不全の患

カラーでわかる 顎口腔機能にかかわる解剖学 前頭骨 頭頂骨 前頭骨 側頭骨 頰骨弓 眼窩 蝶形骨大翼 後頭骨下顎窩 外耳孔 鼻腔 頰骨 下顎頭 上顎骨 筋突起 乳様突起 下顎骨 オトガイ隆起 舌骨 A 頭蓋骨正面 B 頭蓋骨側面 頭頂骨 頭頂骨 鋤骨 上顎骨 口蓋骨後鼻孔蝶形骨底部 頰骨弓 後頭骨

10038 W36-1 ワークショップ 36 関節リウマチの病因 病態 2 4 月 27 日 ( 金 ) 15:10-16:10 1 第 5 会場ホール棟 5 階 ホール B5(2) P2-203 ポスタービューイング 2 多発性筋炎 皮膚筋炎 2 4 月 27 日 ( 金 ) 12:4

本研究の目的は, 方形回内筋の浅頭と深頭の形態と両頭への前骨間神経の神経支配のパターンを明らかにすることである < 対象と方法 > 本研究には東京医科歯科大学解剖実習体 26 体 46 側 ( 男性 7 名, 女性 19 名, 平均年齢 76.7 歳 ) を使用した 観察には実体顕微鏡を用いた 方形

1. 来院経路別件数 非紹介 30 他疾患経過 10 自主受診観察 紹介 20 他施設紹介 合計 患者数 割合 12.1% 15.7% 72.2% 100.0% 27.8% 72.2% 100.0% 来院経路別がん登録患者数 がん患者がどのような経路によって自施設を受診し

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院内がん登録における発見経緯 来院経路 発見経緯がん発見のきっかけとなったもの 例 ) ; を受けた ; 職場の健康診断または人間ドックを受けた 他疾患で経過観察中 ; 別の病気で受診中に偶然 がん を発見した ; 解剖により がん が見つかった 来院経路 がん と診断された時に その受診をするきっ

が 6 例 頸部後発転移を認めたものが 1 例であった (Table 2) 60 分値の DUR 値から同様に治療後の経過をみると 腫瘍消失と判定した症例の再発 転移ともに認めないものの DUR 値は 2.86 原発巣再発を認めたものは 3.00 頸部後発転移を認めたものは 3.48 であった 腫瘍

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2015/04/06 ( 月 ) 人体解剖学総論 A 基本事項 A-2 医の倫理 *3 生と死に関わる倫理的問題を説明できる C-2-1) 身体の部位と方向用語 *1 身体の部位を解剖学的に区別できる *2 身体の方向用語を正確に用いることができる 近藤信太郎 2015/04/06 ( 月 ) 骨格

表 1. 罹患数, 罹患割合 (%), 粗罹患率, 年齢調整罹患率および累積罹患率 ; 部位別, 性別 A. 上皮内がんを除く ; 部位別, 性別 B. 上皮内がんを含む 表 2. 年齢階級別罹患数, 罹患割合 (%); 部位別, 性別 A. 上皮内がんを除く B. 上皮内がんを含む 表 3. 年齢

ヒト慢性根尖性歯周炎のbasic fibroblast growth factor とそのreceptor

かかわらず 軟骨組織や関節包が烏口突起と鎖骨の間に存在したものを烏口鎖骨関節と定義する それらの出現頻度は0.04~30.0% とされ 研究手法によりその頻度には相違がみられる しかしながら 我々は骨の肥厚や軟骨組織が存在しないにも関わらず 烏口突起と鎖骨の間に烏口鎖骨靭帯と筋膜で囲まれた小さな空隙

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研究協力施設における検討例 病理解剖症例 80 代男性 東京逓信病院症例 1 検討の概要ルギローシスとして矛盾しない ( 図 1) 臨床診断 慢性壊死性肺アスペルギルス症 臨床経過概要 30 年前より糖尿病で当院通院 12 年前に狭心症で CABG 施行 2 年前にも肺炎で入院したが 1 年前に慢性

7. 脊髄腫瘍 : 専門とするがん : グループ指定により対応しているがん : 診療を実施していないがん 別紙 に入力したが反映されています 治療の実施 ( : 実施可 / : 実施不可 ) / 昨年の ( / ) 集学的治療 標準的治療の提供体制 : : グループ指定により対応 ( 地域がん診療病

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32 子宮頸癌 子宮体癌 卵巣癌での進行期分類の相違点 進行期分類の相違点 結果 考察 1 子宮頚癌ではリンパ節転移の有無を病期判定に用いない 子宮頚癌では0 期とⅠa 期では上皮内に癌がとどまっているため リンパ節転移は一般に起こらないが それ以上進行するとリンパ節転移が出現する しかし 治療方法

科目科目区分 単位数 (1 単位当た りの時間 ) 必修 選択 区分 開講時期 授業形態 病理病態学 専門基礎科目 病気と治療 2 単位 (30 時間 ) 必修 1 年次 通年 講義 演習 科目担当者科目責任者 : 黒田雅彦担当教員 : 井上理恵 佐藤栄一 松本哲哉 長尾俊孝 後藤明彦 河合隆 森安

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5. 死亡 (1) 死因順位の推移 ( 人口 10 万対 ) 順位年次 佐世保市長崎県全国 死因率死因率死因率 24 悪性新生物 悪性新生物 悪性新生物 悪性新生物 悪性新生物 悪性新生物 位 26 悪性新生物 350


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10,000 L 30,000 50,000 L 30,000 50,000 L 図 1 白血球増加の主な初期対応 表 1 好中球増加 ( 好中球 >8,000/μL) の疾患 1 CML 2 / G CSF 太字は頻度の高い疾患 32

日本医科大学医学会雑誌第5巻第2号

1. ストーマ外来 の問い合わせ窓口 1 ストーマ外来が設定されている ( はい / ) 上記外来の名称 対象となるストーマの種類 7 ストーマ外来の説明が掲載されているページのと は 手入力せずにホームページからコピーしてください 他施設でがんの診療を受けている または 診療を受けていた患者さんを

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身体障害者診断書 意見書 ( 聴覚 平衡 音声 言語又はそしゃく機能障害用 ) 総括表 氏名 年月日生 ( ) 歳 男女 住所 1 障害名 ( 部位を明記 ) 2 原因となった 交通 労災 その他の事故 戦傷 戦災 疾病 外傷名 自然災害 疾病 先天性 その他 ( ) 3 4 疾病 外傷発生年月日年

8 整形外科 骨肉腫 9 脳神経外科 8 0 皮膚科 皮膚腫瘍 初発中枢神経系原発悪性リンパ腫 神経膠腫 脳腫瘍 膠芽腫 頭蓋内原発胚細胞腫 膠芽腫 小児神経膠腫 /4 別紙 5( 臨床試験 治験 )

付表 食道癌登録数 ( 自施設初回治療 癌腫 ): 施設 UICC-TNM 分類治療前ステージ別付表 食道癌登録数 ( 自施設初回治療 癌腫 原発巣切除 ): 施設 UICC-TNM 分類術後病理学的ステージ別付表 食道癌登録数 ( 自施設初回治療 癌腫 UIC

4. 膵腫瘤存在診断 A) 確診 1 粋の明らかな異常エコー域 ( 注 ) 2 粋の異常エコー域が以下のいずれかの所見を伴うもの a) 尾側膵管の拡張 b) 膵内または膵領域の胆管の狭窄ないし閉塞 c) 膵の限局性腫大 B) 疑診 1 膵の異常エコー域 2 膵領域の異常エコー域 3 膵の限局性腫大

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D. 感染症 E. 溶血性貧血 F. ( 骨 ) 髄外造血 G. 膠原 ( 血管 ) 病 H. 脾損傷 I. その他 1. サルコイドーシス約 60% に脾腫 造影により 2~3cm 大の多発性結節性病変 石灰化を伴う壊死巣 2. 血液透析充実性脾病変 A. 悪性腫瘍 1. リンパ腫 ( ホジキン病


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目 次 統計の説明 部位( 中分類 ) 別男女別腫瘍数 1 部位別腫瘍数 < 総数グラフ> 2 部位別腫瘍数 < 男性グラフ> 3 部位別腫瘍数 < 女性グラフ> 4 部位( 中分類 ) 別年齢階層別腫瘍数 5 部位( 中分類 ) 別来院経路別腫瘍数 6 来院経路別腫瘍数 <グラフ> 7 部位( 中

院内がん登録について 院内がん登録とは がん ( 悪性腫瘍 ) の診断 治療 予後に関する情報を収集 整理 蓄積し 集計 解析をすることです 登録により収集された情報は 以下の目的に使用されます 診療支援 研修のための資料 がんに関する統計資料 予後調査 生存率の計測このほかにも 島根県地域がん登録

院内がん登録について 院内がん登録とは がん ( 悪性腫瘍 ) の診断 治療 予後に関する情報を収集 整理 蓄積し 集計 解析をすることです 登録により収集された情報は 以下の目的に使用されます 診療支援 研修のための資料 がんに関する統計資料 予後調査 生存率の計測このほかにも 島根県地域がん登録

顎下腺 舌下腺 ) の腫脹と疼痛で発症し そのほか倦怠感や食欲低下などを訴えます 潜伏期間は一般的に 16~18 日で 唾液腺腫脹の 7 日前から腫脹後 8 日後まで唾液にウイルスが排泄され 分離できます これらの症状を認めない不顕性感染も約 30% に認めます 合併症は 表 1 に示すように 無菌

超音波からのメッセージ第 43 話 ( 予習資料 ) 腹部エコーの見るべき所見 脾臓とリンパ節の病変 第 8 期 腹部エコーの見るべき所見 の今回は 脾臓とリンパ節の病変 がテーマ です 脾臓 リンパ節ともにその走査のコツからお話しします それぞれの見るべき所見と は 資料には keyword しか

付表 登録数 : 施設 部位別 総数 1 総数 口腔咽頭 食道 胃 結腸 直腸 ( 大腸 ) 肝臓 胆嚢胆管 膵臓 喉頭 肺 骨軟部 皮膚 乳房

口腔がん はじめに 口腔がんとは 口の中とくちびるにできる がん のことです 口腔がんには舌や歯肉や頬のように口の中の表面を覆っている粘膜に発生するものと口の中に唾液を分泌している唾液腺 ( 耳下腺を除く ) に発生するものが含まれます いずれの場合でも口の中に できもの や しばらく治らない傷や荒

5 月 25 日 2 口 腔 咽 頭 唾 液 腺 の 疾 患 2 GIO: 口 腔 咽 頭 唾 液 腺 の 疾 患 を 理 解 する SBO: 1. 急 性 慢 性 炎 症 性 疾 患 を 説 明 できる 2. 扁 桃 の 疾 患 を 説 明 できる 3. 病 巣 感 染 症 を 説 明 できる 4

180204がん撲滅VER2資料用

院内がん登録とは?

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付表 登録数 : 施設 部位別 総数 1 総数 口腔咽頭 食道 胃 結腸 直腸 ( 大腸 ) 肝臓 胆嚢胆管 膵臓 喉頭 肺 骨軟部 皮膚 乳房 全体

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がん登録実務について

A 2010 年山梨県がん罹患数 ( 全体 )( 件 ) ( 上皮内がんを除く ) 罹患数 ( 全部位 ) 5,6 6 男性 :3,339 女性 :2,327 * 祖父江班モニタリング集計表から作成 * 集計による主ながんを表示

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付表 食道癌登録数 ( 自施設初回治療 癌腫 ): 施設 UICC-TNM 分類治療前ステージ別付表 食道癌登録数 ( 自施設初回治療 癌腫 原発巣切除 ): 施設 UICC-TNM 分類術後病理学的ステージ別付表 食道癌登録数 ( 自施設初回治療 癌腫 UIC

原発不明がん はじめに がんが最初に発生した場所を 原発部位 その病巣を 原発巣 と呼びます また 原発巣のがん細胞が リンパの流れや血液の流れを介して別の場所に生着した結果つくられる病巣を 転移巣 と呼びます 通常は がんがどこから発生しているのかがはっきりしている場合が多いので その原発部位によ

第 7 章 腎 泌尿器領域 (a) : すべての専門医が到達すべき知識 技術 (b) : すべての専門医が, さらに高度の専門性を獲得するために到達すべき知識 技術 (c) : 該当する領域において, 専門医が到達すべき知識 技術 (d) : 該当する領域において, 専門医がさらに高度の専門性を獲得

00467TNM悪性腫瘍の分類日本語版第7版

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4 月 20 日 2 胃癌の内視鏡診断と治療 GIO: 胃癌の内視鏡診断と内視鏡治療について理解する SBO: 1. 胃癌の肉眼的分類を列記できる 2. 胃癌の内視鏡的診断を説明できる 3. 内視鏡治療の適応基準とその根拠を理解する 4. 内視鏡治療の方法 合併症を理解する 4 月 27 日 1 胃

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院内がん登録とは?

 診療対象

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画像診断で頸部リンパ節転移を強く疑ったが組織学的に否定された舌癌の1例

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診療科 血液内科 ( 専門医取得コース ) 到達目標 血液悪性腫瘍 出血性疾患 凝固異常症の診断から治療管理を含めた血液疾患一般臨床を豊富に経験し 血液専門医取得を目指す 研修日数 週 4 日 6 ヶ月 ~12 ヶ月 期間定員対象評価実技診療知識 1 年若干名専門医取得前の医師業務内容やサマリの確認

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Transcription:

歯学科 4 年生講義, 口腔生命科学各論 II, 歯科放射線学 舌下 顎下 頸部の疾患の画像診断担当 : 林孝文口腔領域に発生した炎症や腫瘍は しばしば蜂窩織炎やリンパ節転移といった病態で頸部へ進展する場合があり 歯顎顔面口腔領域の診療医は 頸部についても口腔領域と同様に解剖学的事項を熟知する必要がある 解剖学的には 口腔は気道消化管の最上部に位置し 中咽頭とは有郭乳頭 扁桃柱 軟口蓋により区別される ここには 舌の前方 3 分の 2 が含まれ 上方は口蓋 上顎歯槽突起 上顎歯 外側は頬 後方は口蓋舌弓 口蓋咽頭弓 下方は口底 下顎歯槽突起 下顎歯 前方には口唇が存在している 口腔の表面全体は粘膜上皮に覆われており 小唾液腺がその下に広く分布している 粘膜上皮は扁平上皮癌の発生母地となり 小唾液腺からは良性 悪性の唾液腺腫瘍が発生しうる 口腔は 口腔粘膜領域と 舌下隙 顎下隙の 3 領域に大別できる 画像上確認すべき隙としては, 頬隙 buccal space, buccinator space (BS), 咀嚼筋隙 masticator space (MS), 翼突下顎隙 pterygomandiular space (PMS), 舌下隙 sublingual space (SLS), 顎下隙 submandibular space (SMS), 傍咽頭隙 parapharyngeal space (PPS), 咽頭後隙 retropharyngeal space (RPS), 耳下腺隙 parotid space (PS), 頸動脈隙 carotid space(cs) などがある 頬隙は, 内側で頬筋, 外側で大 小頬骨筋などの表情筋に境界され, 後方で咬筋や下顎骨, 内 外側翼突筋や耳下腺に接する 舌下隙は舌の下方で顎舌骨筋の上内側, オトガイ舌筋 オトガイ舌骨筋の外側に位置し, 前方は下顎骨で境界され, 舌下腺とその導管, 顎下腺の一部と顎下腺導管, 舌骨舌筋, 舌神経 舌下神経, 舌動脈 静脈などが含まれる 後端部では顎下隙との間に筋膜の境界が存在せず, 舌下隙に生じた病変は容易に顎下隙に波及する 顎下隙は顎舌骨筋の後外側, 舌骨の上方に位置し, 顎下腺, 顎二腹筋前腹, 舌下神経, 顔面動脈 静脈, 顎下リンパ節などが含まれる 後端部では舌下隙や傍咽頭隙との間に筋膜の境界が存在しない 傍咽頭隙は顔面深部に位置し, 周囲に重要な多数の隙が接しており, 偏位状態から病変の由来を推定しうる 前外側に接するのは咀嚼筋隙であり, 咬筋, 側頭筋, 内側 外側翼突筋, 下歯槽神経 動脈 静脈, 下顎枝などが含まれる この中にあり, 下顎枝と内側 外側翼突筋との間の領域が翼突下顎隙である 後外側に接するのは耳下腺隙であり, 耳下腺, 顔面神経, 下顎後静脈, 外頸動脈, 耳下腺リンパ節などが含まれる 後方に接するのは頸動脈隙であり, 頸動脈鞘に包まれた頸動脈, 内頸静脈, 舌咽 迷走 副 舌下神経, 交感神経叢, リンパ節などが含まれるが, 頸動脈分岐部よりも上方では頸動脈鞘は不完全もしくは欠如する 後内側に接するのは咽頭後隙であり, 主にリンパ節が含まれる 外側咽頭後リンパ節 (Rouviere リンパ節 ) は口腔領域からの転移が認められる場合がある 頸部のリンパ節には 顎下リンパ節 オトガイ下リンパ節 深頸リンパ節外側群として 1

上 中 下内深頸リンパ節 副神経リンパ節 鎖骨上窩リンパ節が 正中群としては喉頭前リンパ節 気管前リンパ節 咽頭後リンパ節などがあり さらに耳下腺リンパ節や浅頸部の前頸静脈リンパ節 外頸静脈リンパ節などが存在する 口腔 頸部ともに 主として炎症や腫瘍に対して画像診断が行われるが その最大の目的は病変の深部への進展範囲の把握であり 軟組織を横断像で解剖学的な情報を得られる CT や I 超音波検査(US) が頻用される 炎症 ( 感染性 ) の場合には造影 CT が異物や石灰化物 歯や顎骨との関係や膿瘍の状態を把握するのに有用だが 顎骨骨髄内の炎症の広がりの評価において I は CT よりも優れている 腫瘍の検出には I が優れているが 進展範囲の正確な評価のために経静脈的造影が多くの症例で必要となる また石灰化の有無や隣接する顎骨の吸収破壊を詳細に評価するために CT の併用が必要となる場合が多い 歯の金属修復物によるアーチファクトは CT I いずれも問題となる US は 唾液腺疾患や頸部リンパ節など 皮膚や粘膜面に近い限局した範囲の病変の検出に威力を発揮するが 視野が限定され画像の客観性に劣るという欠点を有するため 低コストや簡便性といった長所を生かして CT や I をバックアップするような活用法が望ましい 頸部リンパ節については I CT US いずれも触診で検出し得ない転移リンパ節の診断に有用性が認められている 画像診断で確認すべき解剖構造 a. 骨組織 : 舌骨, 上顎洞, 下顎骨 N, 上顎骨 X, 下顎管 MC, 下顎枝 b. 筋肉 : 顎二腹筋前腹 ADM, 頬筋 BM, 口角下制筋 DAO, オトガイ舌筋, オトガイ舌骨筋 GHM, 舌骨舌筋 HGM, 舌骨下帯状筋 ( 胸骨舌骨筋 胸骨甲状筋 甲状舌骨筋 ) ISM, 上唇鼻翼挙筋 LAN, 口角挙筋 LAO, 頭長筋, 頸長筋 LCO, 上唇挙筋 LLS, 外側翼突筋 LPM, 口蓋帆挙筋 LVP, オトガイ筋 MEM, 顎舌骨筋 MHM, 咬筋, 内側翼突筋, 大頬骨筋 MZM, 鼻筋 口輪筋 NM/OOM, 顎二腹筋後腹 PDM, 広頸筋 PM, 胸鎖乳突筋, 茎突舌筋 SGM, 甲状軟骨 TC, 側頭筋 TM, 口蓋帆張筋 TVP c. 血管 : 上行咽頭動脈 APA, 総頸動脈 CCA, 外頸動脈 ECA, 外頸静脈 EJV, 顔面動脈 FA, 顔面静脈 FV, 内頸動脈 ICA, 内頸静脈 IJV, 内顎動脈 I, 舌動脈 LA, 下顎後静脈 RMV d. 隙 : 頬隙 BS, 頸動脈隙 CS, 咀嚼筋隙 MS, 翼突下顎隙 PMS, 傍咽頭隙 PPS, 耳下腺隙 PS, 舌下隙 SLS, 顎下隙 SMS e. 唾液腺 : 耳下腺, 舌下腺, 顎下腺 f. リンパ節 : 中内深頸リンパ節 MIJN, 上内深頸リンパ節 SIJN, 顎下リンパ節 SMLN g. その他の解剖構造 : 頬脂肪体 BF, 喉頭蓋, 耳管咽頭口 ETO, 下鼻甲介 INC, 外側咽頭陥凹 (Rosenmüller 窩 )LPR, 舌中隔 LS, 中咽頭, 舌 OT, 耳下腺導管 PD, 口蓋扁桃 PT, 上頸神経節 SCG, 粘膜下脂肪層 SFL, 軟口蓋, 耳管隆起 TT 2

3 LPM TM INC TT TVP MZM ETO LPR LVP RMV ECA I LLS LAN LPM TM INC TT TVP MZM ETO LPR LVP RMV ECA I LLS LAN LPM TM INC TT TVP MZM ETO LPR LVP ECA I LLS LAN RMV LPM TM INC TT TVP MZM ETO LPR LVP ECA I LLS LAN RMV 下鼻道レベルの造影 CT 水平断像 T1 強調 水平断像 MZM FV PD APA LLS LAO NM/OOM MZM FV PD APA LLS LAO NM/OOM PD FV MZM APA LLS LAO NM/OOM PD FV MZM APA LLS LAO NM/OOM 上顎洞底レベルの造影 CT 水平断像 T1 強調 水平断像 FV OT X PT LAO FV OT X PT LAO OT X PT FV LAO OT X PT FV LAO 上顎歯槽突起レベルの造影 CT 水平断像 T1 強調 水平断像

4 N SFL N SFL N SFL N SFL 下顎歯槽突起レベルの造影 CT 水平断像 T1 強調 水平断像 N LS LA N LS LA N LS N LS 口底レベルの造影 CT 水平断像 T1 強調 水平断像 N MHM GHM MEM LCO N MHM GHM MEM LCO N GHM MEM LCO MHM N GHM MEM LCO MHM 顎下レベルの造影 CT 水平断像 T1 強調 水平断像

N N ADM ADM PM ISM PM ISM オトガイ下レベルの造影 CT 水平断像 T1 強調 水平断像 BS MS PMS PS CS 上顎歯槽突起レベルの T1 強調 I 水平断像 SLS SMS CS 口底レベルの T1 強調 I 水平断像 5

MS PMS P P S SMS T1 強調 I 冠状断像 講義で呈示する予定の疾患について 嚢胞性病変: ガマ腫, 類皮 類表皮嚢胞, 甲状舌管嚢胞, 鰓嚢胞, 粉瘤 先天性 発育性病変: 血管腫, リンパ管腫, 異所性甲状腺 良性腫瘍: 神経鞘腫, 脂肪腫, 傍神経節腫 リンパ節の疾患: リンパ節炎, リンパ節転移 6

リンパ節の疾患 1) リンパ節の構造リンパ節は免疫反応の場として また生体内を循環するリンパ球の移動路として 生体防御に重要な役割を有している リンパ節は通常 扁平な楕円体の形態であり リンパ門 (hilum) と呼ばれる陥凹を有する 主に膠原線維からなる被膜に包まれ 内部は被膜に近い皮質と門に近い髄質とに大別される さらに実質部分は リンパ球が密集したリンパ髄と疎な網目状構造のリンパ洞に大別され リンパ髄は皮質では小節を 髄質では髄索を構成している 数本から数十本の輸入リンパ管が被膜を貫き リンパ洞へと合流する リンパ洞には被膜直下の辺縁洞 髄索の間に広がる髄洞とその間の中間洞がある リンパ液はこれらを灌流してリンパ門へと向かう リンパ門からは 1 本から数本の輸出リンパ管が出ており リンパ節に分布する血管や神経も主としてこの門を経由する 2) 頸部リンパ節の解剖 ( 分類 ) 頸部リンパ節の分類は わが国では頭頸部癌取扱規約 (2012 年 6 月 ) あるいは日本癌治療学会リンパ節規約 (2002 年 10 月 ) が用いられることが多い また 頸部郭清範囲を基本としたレベル分類 (AJCC Cancer Staging Manual 8th Ed., 2017) も用いられている 7

頸部リンパ節の分類 1. オトガイ下 顎下リンパ節 a. オトガイ下リンパ節広頸筋と顎舌骨筋の間で下顎骨 舌骨 顎二腹筋に囲まれた部位のリンパ節 b. 顎下リンパ節広頸筋と顎舌骨筋の間で下顎骨と顎二腹筋の前腹と後腹に囲まれた部位のリンパ節 2. 深頸リンパ節 - 外側群 - a. 上内深頸リンパ節 / 上内頸静脈リンパ節顎二腹筋の後腹の高さで内頸静脈周囲に存在するリンパ節 ( 上限は顎二腹筋後腹の後端 ) b. 中内深頸リンパ節 / 中内頸静脈リンパ節肩甲舌骨筋上腹の高さで内頸静脈周囲に存在するリンパ節 c. 下内深頸リンパ節 / 下内頸静脈リンパ節肩甲舌骨筋下腹の高さで内頸静脈周囲に存在するリンパ節 d. 副神経リンパ節副神経に沿ったリンパ節で 僧帽筋前縁より前方にある上方では内頸静脈リンパ節と区別ができない ( その場合は内頸静脈リンパ節とする ) e. 鎖骨上窩リンパ節頸横静脈に沿うリンパ節であり 大 小鎖骨上窩にある 3. 深頸リンパ節 - 正中群 - [ 前群 ] a. 喉頭前リンパ節 b. 甲状腺周囲リンパ節 c. 気管前リンパ節 d. 頸部気管傍リンパ節 [ 後群 ] a. 咽頭後リンパ節 b. 頸部食道傍リンパ節 4. 耳下腺リンパ節 a. 浅耳下腺リンパ節 b. 深耳下腺リンパ節 5. 浅頸リンパ節 a. 前頸静脈リンパ節 b. 外頸静脈リンパ節 レベル分類と頸部リンパ節分類の対応 Level I A オトガイ下リンパ節 Level I B 顎下リンパ節 Level II A 上内深頸 / 上内頸静脈リンパ節 ( 前方 ) Level II B 上内深頸 / 上内頸静脈リンパ節 ( 後方 ) Level III 中内深頸 / 中内頸静脈リンパ節 Level IV 下内深頸 / 下内頸静脈リンパ節 Level V A 副神経リンパ節 Level V B 鎖骨上窩リンパ節 8

癌治療学会リンパ節規約による頸部リンパ節分類 レベル分類 9

3) 頸部リンパ節の疾患臨床的に最も代表的な病的所見は リンパ節腫脹である リンパ節腫脹は その発生機序から炎症性 ( 感染性 反応性 ) と腫瘍性に大別できる 画像診断のみでこれらを確実に鑑別することは困難だが 結核性リンパ節炎や転移リンパ節では 内部に石灰化が生じる場合があり 画像診断上有益な情報となる 1. 炎症性 ( 感染性 反応性 ) 急性化膿性 亜急性壊死性 伝染性単核球症 その他のウィルス感染症 猫引っかき病 トキソプラズマ症 梅毒性 結核性 薬剤性 自己免疫性( 関節リウマチ 全身性エリテマトーデスなど ) サルコイドーシス 2. 腫瘍性 悪性リンパ腫 白血病 悪性腫瘍のリンパ節転移 3. その他 内分泌疾患 脂質代謝異常 IgG4 関連疾患 4) 頸部リンパ節の画像診断リンパ節疾患に対する画像診断としては CT I 超音波検査( 以下 US) PET などが利用されている CT I US ともに 非転移リンパ節は扁平な楕円体の形態を呈し リンパ門が認められる場合が多い リンパ節の実質部分は 造影 CT や造影 I では筋と同程度からやや強い程度に造影され T2 強調 画像では比較的高信号を呈し US ではほぼ均一な低エコーとして描出される リンパ門は CT I US ともに 周囲と連続性のある脂肪組織あるいは結合組織様の構造として認められる 一般に画像上 短径 ( リンパ節を楕円体に模した場合の三軸径のうち最短のもの )10 mm 以上のリンパ節は 病的腫大像と判断されている 炎症性腫脹では リンパ門や楕円形の形態を残しつつ腫大する場合が多いのに対し 腫瘍性腫脹 ( 転移を含めて ) では リンパ門が消失し全体の形態が球体に近くなる場合が多い 特に内部が不均一化したり 周囲との境界が不明瞭となった場合には 転移リンパ節の可能性が高いとされている ただし 壊死性リンパ節炎や結核性リンパ節炎では転移リンパ節類似の所見を呈する場合がある点には注意が必要である また 悪性リンパ腫によるリンパ節腫脹では内部が均一な場合が多いが 不均一な場合もある 2018.11.30 版 10