学会分類 201 の目的 日本摂食嚥下リハビリテーション学会嚥下調整食分類 201 と病態別使い分け 日本には米国の National Dysphagia Diet(2002) のような統一された嚥下調整食の段階が存在せず 地域や施設毎に多くの名称や段階がある 急性期病院から回復期病院 病院から施設 在宅への連携が普及しているが 統一基準や統一名称がないことは 摂食嚥下障害者および関係者に不利益になる 国内の病院 施設 在宅医療および福祉関係者が共通して使用できることを目的とし 嚥下調整食 とろみについて段階分類を設定した 物性値と医学的効果についての研究の蓄積が少なく 物性に関する測定を行える機関は少ないため 物性値の記載はない 1 とろみ 学会分類 201( とろみ ) 早見表 段階 1 段階 2 段階 薄いとろみ 中間のとろみ 濃いとろみ 英語表記 Mildly thick Moderately thick Extremely thick drink するという表現が適切明らかにとろみがあることを感明らかにとろみがついていて, なとろみの程度 口に入れるとじ, 且つ drink するという表現まとまりが良い 口腔内に広がる 液体の種類 が適切なとろみの程度 送り込むのに力が必要 性状の説明味や温度によっては, とろみが口腔内での動態はゆっくりで, スプーンで eat するという表 ( 飲んだとき ) ついていることがあまり気になすぐには広がらない 舌の上で現が適切なとろみの程度 らない場合もある 飲み込む際まとめやすい ストローで吸うストローで吸うことは困難 に大きな力を要しない のは抵抗がある スプーンを傾けるとすっと流れスプーンを傾けるととろとろと スプーンを傾けても, 形状があ 性状の説明 ( 見たとき ) おちる フォークの歯の間から素早く流れ落ちる カップを傾 け, 流れ出た後には, うっすらと跡が残る程度の付着 流れる フォークの歯の間からる程度保たれ, 流れにくい ゆっくりと流れ落ちる フォークの歯の間から流れでカップを傾け, 流れ出た後にない カップを傾けても流れ出は, 全体にコーテイングしたよない ( ゆっくりと塊となって落ちうに付着 る ) 粘度 (mpa s) 50-150 150-00 00-500 LST 値 (mm) 6-4 2-6 0-2 粘度 コーンプレート (E) 型回転粘度計を用い 測定温度 20 ずり速度 50sec-1 における粘度測定結果 LST 値 ラインスプレッドテスト用プラスチック測定板を用いて直径 0mm の金属製リングに試料を 20ml 注入し 0 秒後にリングを持ち上げ 60 秒後に試料の広がり距離を 6 点測定しその平均値を LST 値とする 注 1 LST 値と粘性値は完全には相関しない そのため特に境界値付近においては注意が必要である 注 2 ニュートン流体では LST 値が高く出る傾向があるため注意が必要である とろみ 段階の特徴 薄いとろみ 中間のとろみほどのとろみの程度がなくても誤嚥しない症例 ( 嚥下障害がより軽度の症例 ) とろみの程度が軽いため コンプライアンスに優れる 粘度測定 中間のとろみ 中間のとろみとは 脳卒中後の嚥下障害などで基本的にまず試されるとろみの程度を想定している B 型粘度計 濃いとろみ 重度の嚥下障害の症例を対象としたとろみの程度である 中間のとろみで誤嚥のリスクがある症例でも 安全に飲める可能性がある 5 ローターが円錐平板型なので ローターに接するサンプルのいずれの部分もずり速度 ( 速度 / 距離 ) が一様なる E 型粘度計 6 1
Line Spread Test(LST) LST 測定版はサラヤ ( 株 ) 公式通販サイトから購入 http://www.saraya.com/news /2014/094168.html?utm_sour ce=saraya&utm_medium=rss 大宿茂 桑村圭一 : 簡易粘度測定法 Line spread test の有用性, 日本摂食 嚥下リハビリテーション学会雑誌,2006.. 中村愛美. 吉田智. 岩品有香. 大宿茂. 鈴木靖志 : とろみ調整食品で調製した粘稠液状食品の Line Spread Teat 一部改変法による評価, 日摂食嚥下リハ会誌.2009. 中村愛美. 吉田智. 岩品有香. 大宿茂. 鈴木靖志 : とろみ 指標食材の物性解析,Line Spread Test 法による とろみ の分類の適応と限界, 日摂食嚥下リハ会誌.2012. 7 LST 測定の注意 1 この LST 値は キサンタンガムをベースとしたとろみ調整食品で水にとろみ付けした試料から検討した値である 2 キサンタンガムと挙動の異なるとろみ調整食品によりとろみ付けしたものや 学会分類 201( 食事 ) のコード 2-1 に該当するミキサーをかけた食品などでは検討を行っていない 溶質 ( とろみ調食 ) 溶媒 ( 液 ) が異なれば数値も異なる 4 極端に高いとろみは測定できない 5 バリウム溶液 (VF 造影剤 ) は LST 数値が大きくなる ( 比重が大きい?) 8 食事 ポイント (1) 名称は 日本摂食 嚥下リハビリテーション学会嚥下調整食分類 201 とし 略称として 学会分類 201 と表記 分類に嚥下調整食を用いている これは基本的に食事として提供することを想定した名称 重度の機能障害にも対応するもの ( コード 0) は 食事場面での利用ではなく 訓練場面における導入目的であると考え 名称を嚥下訓練食品とする コード番号 = 改善過程 ( ないし重症度 ) に対応した食事 と考えず 個々の症例で適切な食形態を選んだうえで 連携の共通言語として本分類を利用することができる 形態 性状について 平易な日本語での表記を行っている 食形態の日本語から想起するイメージについては個人差が大きいため 学会分類では多くの文献を参照し 最大公約数的表現になっている ポイント (2) 咀嚼とは 食べ物を噛み切り ( 咬断 ) 噛み砕き ( 粉砕 ) すりつぶし ( 臼磨 ) を行いながら唾液と混ぜ合わせ 嚥下しうる形態 すなわち食塊を形成する過程をいう 咀嚼能力 という用語は, 歯や補綴物を利用する場合だけでなく 上下顎の歯槽堤 ( 歯茎 ) や舌と口蓋間で押しつぶす能力も含めた広い意味で用いられている ポイント () 咀嚼能力の必要がないものでも 食塊の形状調整能力や 食塊の保持能力あるいは食塊の送り込み能力は必要であり 厳密には 咀嚼能力 ではないが 必要な咀嚼能力 の欄の ( ) 内に記載 表を参照 歯槽堤 ( 歯茎 ) より硬い物をつぶせる 口蓋 高い咀嚼能力があっても嚥下ができない場合 ( ワレンベルグ症候群 ) や 咀嚼能力は低くてもかなりのものを嚥下できる場合 ( 末端肥大症で反対咬合や開咬の場合 ) もある 表の 必要な咀嚼能力 は その能力があれば嚥下が可能ということではないことに留意する 2
均質 不均質 学会分類 201 の全体像 0j 0t は嚥下訓練食品 1j 以下は嚥下調整食 j:jelly= ゼリー t:thick= とろみ 丸飲み可能 食塊形成 食塊保持能力 押しつぶす能力 学会分類 201 コード名称形態目的 特色主食の例必要な咀嚼能力他の分類との対応嚥下均質で, 付着性 凝集性 硬重度の症例に対する評価 訓練用 少嚥下食ピラミッドL0 さに配慮したゼリー離水が量をすくってそのまま丸のみ可能 残 j 訓練食品 ( 若干の送り込み能力 ) 嚥下困難者用食品少なく, スライス状にすくうこ留した場合にも吸引が容易 蛋白質 j 許可基準 Ⅰ とが可能なもの含有量が少ない 0 均質で, 付着性 凝集性 硬嚥下重度の症例に対する評価 訓練用 少さに配慮したとろみ水 ( 原則嚥下食ピラミッドL 量ずつ飲むことを想定 ゼリー丸呑み t 訓練食品的には, 中間のとろみあるい ( 若干の送り込み能力 ) の一部で誤嚥したりゼリーが口中で溶けてし t は濃いとろみのどちらかが適 ( とろみ水 ) まう場合 蛋白質含有量が少ない している ) 口腔外で既に適切な食塊状となってい嚥下食ピラミッドL1 嚥下均質で, 付着性, 凝集性, 硬る ( 少量をすくってそのまま丸のみ可おもゆゼリー, ミキ L2 ( 若干の食塊保持と送り 1 j 調整食さ 離水に配慮したゼリー 能 ) 送り込む際に多少意識して口蓋サー粥のゼリーな嚥下困難者用食品込み能力 ) 1j プリン ムース状のもの に舌を押しつける必要がある ど許可基準 Ⅱ UDF 区 0jに比し表面のざらつきあり 分 4( ゼリー状 ) ピューレ ペースト ミキサー食など均質でなめらかで, べ粒がなく, 付着性 ( 下顎と舌の運動による 1 たつかず, まとまりやすいもの低いペースト状食塊形成能力および嚥下の スプーンですくって食べのおもゆや粥食塊保持能力 ) 嚥下食ピラミッドL 口腔内の簡単な操作で食塊状となるもることが可能なもの えん下困難者用食 2 調整食の ( 咽頭では残留, 誤嚥をしにくいようピューレ ペースト ミキサー品許可基準 Ⅱ Ⅲ 2 に配慮したもの ) やや不均質 ( 粒が食などで, べたつかずまとま ( 下顎と舌の運動によるUDF 区分 4 ある ) でもやわら 2 りやすいもので不均質なもの食塊形成能力およびかく, 離水もなく付も含む スプーンですくって食塊保持能力 ) 着性も低い粥類食べることが可能なもの 形はあるが, 押しつぶしが容舌と口蓋間で押しつぶしが可能なもの 易, 食塊形成や移送が容易, 押しつぶしや送り込みの口腔操作を嚥下食ピラミッドL4 嚥下調整食離水に配慮した粥舌と口蓋間の押しつぶ 咽頭でばらけず嚥下しやす要し ( あるいそれらの機能を賦活し ), 高齢者ソフト食 などし能力以上いように配慮されたもの かつ誤嚥のリスク軽減に配慮がなされ UDF 区分 多量の離水がない ているもの 誤嚥と窒息のリスクを配慮して素材と硬さ ばらけやすさ 貼りつき調理方法を選んだもの 歯がなくても嚥下食ピラミッドL4 嚥下調整食やすさなどのないもの 上下の歯槽提間の押し 4 対応可能だが, 上下の歯槽提間で押し軟飯 全粥など高齢者ソフト食 4 箸やスプーンで切れるやわらつぶし能力以上つぶすあるいはすりつぶすことが必要 UDF 区分 1 2 かさ で舌と口蓋間で押しつぶすことは困難 嚥下訓練食品 0j 1 水分が多い丸飲み可能ゼリー 2 均質で 付着性が低く 凝集性が高く やわらかく 離水が少ないゼリー 蛋白質は少ない 嚥下訓練食品 0t 1 とろみの程度としては 原則的に中間のとろみあるいは濃いとろみのどちらかが適している 2 蛋白質は少ない 嚥下時の圧バランスが不十分 ( 咽頭部の圧形成が不足 食道入口部の開大が不足 ) で残留や誤嚥をしやすいなど 嚥下可能な食塊の範囲も限られている人にも適用可能である 15 16 当然のことですがゼリーを嚥下閾まで咀嚼すると とろみ になることに留意する 嚥下調整食 1j 1 既に食塊状となっているゼリー プリン ムース状の食品 2 咀嚼に関連する能力は不要 蛋白質が多いものも含む ゼリーであっても硬さがあればコード1jではなくコードとなる 4コード1jの食品の中には かき混ぜるとコード2-1となるものもある 5 市販ゼリー 卵豆腐 おもゆゼリー ミキサー粥ゼリーなど 17 18
嚥下調整食 2( ピューレ ペースト ミキサーなど ) 1スプーンですくって 口腔内の簡単な操作により食塊にまとめられるもの 2 一般にはミキサー食 ピューレ食 ペースト食などと呼ばれていることが多い ゼリーに比べ流動速度は遅い 4 均質なものは2-1 不均質なもの ( 粒がある ) は2-2 嚥下調整食 ( ソフト食 やわらか食 ) 1コード2よりも硬さ等の物性の幅が広い 2 形はあるが 舌と口蓋間で押しつぶせる食品で やわらか食 ソフト食などといわれていることが多い つなぎを加えてある軟らかいハンバーグ煮込みや 大根や瓜の軟らかい煮込みなどで汁にもトロミがついたものなども含まれる 19 20 嚥下調整食 4( 軟菜食 移行食 ) 1 嚥下機能および咀嚼能力の軽度低下のある人を想定している 2 上下の歯槽堤 ( 歯茎 ) 間の押しつぶし能力以上は必要で 舌と口蓋間での押しつぶしだけでは困難である 具に配慮された和洋中の煮込み料理 シチューなど 刻み食にあんかけしたものはどの段階? 充分にやわらかいものを小さく刻んだりほぐしたりしたものに 中間のとろみあるいは濃いとろみ程度のあんをかけたものは コード あるいは 4 に該当する 1 舌と口蓋で押しつぶすことができるものはコード 2 上下の歯茎で押しつぶすことができるものはコード 4 21 22 ドリンクゼリー ゼリー飲料 ( ドリンクゼリー ) は, サラサラの液体よりも誤嚥しにくい 現時点では ゼリー飲料について 形状の計測方法やその難易度についての知見が蓄積されていないため 難易度としては うすいとろみ に近いものとして扱われている 実際のゼリー飲料の物性は多様である ゼリーに近い とろみに近い 2 粥 コード主食の例特色 1j 2-1 2-2 おもゆゼリー ミキサー粥のゼリー 粒がなく付着性の低いペースト状のおもゆや粥 やや不均質でも軟らかく離水もなく付着性も低い粥類 離水に配慮した粥など 4 軟飯 全粥など 粥をミキサーにかけただけの調理では時間と共に粘度が増し いわゆる 糊状 となってしまい コード 2 に適した食品にはならない アミラーゼなどで処理することによって時間と共に粘度が増したり 付着性が高くなったりしないように調整することができる 主食の例としては, 水分がサラサラの液体でないように配慮した ( アミラーゼで処理 ) 分粥,5 分粥, 全粥などである 粥はアミラーゼ処理が必要という内容になっている アミラーゼ処理をしていない粥はコード 4 になる 24 4
全粥は摂取している途中で分解される 気付いてますか? 患者の唾液が茶碗の全粥に添加されるので 唾液中のアミラーゼが澱粉を分解し 全粥は液状になる これが誤嚥の大きな原因になる! あらかじめアミラーゼで分解し とろみ調整食品でトロミを付けるかゲル化剤でゼリーにする 酵素を添加して分解 25 26 嚥下調整食は 嚥下調整食の病態別使い分け 1 障害された嚥下機能を代償する 2 病態別に使い分けることが大切 28 嚥下病態の類型化 口腔残留の検査食間比較 送り込み障害 口腔残留と誤嚥 (90 症例の解析から ) 認知障害 嚥下反射遅延 口腔残留が原因と考えられる誤嚥 咽頭残留 29 0 5
嚥下反射惹起時間の検査食間比較 右に行くほど食道側で嚥下反射惹起 喉頭蓋谷残留の検査食間比較 嚥下反射遅延と誤嚥 (90 症例の解析から ) 咽頭残留と誤嚥 (1) (90 症例の解析から ) 嚥下反射遅延が原因と考えられる誤嚥 梨状窩残留の検査食間比較 1 2 咽頭残留と誤嚥 (2) (90 症例の解析から ) 咽頭残留が原因と考えられる誤嚥 まとめ 1 認知障害 刺激が強く美味しい食物 2 送り込み障害食塊を圧力で送り込めないので 重力を利用して落下させている 流動が速い食品で代償する 嚥下反射遅延咽頭の感覚が障害されているために 嚥下反射が遅れる 嚥下反射が惹起された時に食塊が食道側に位置するほど誤嚥しやすくなる 流動が遅い食品で代償し 嚥下反射惹起時の食塊がより口腔側に位置するようにする 流動の早いゼリーなどは適さない 4 咽頭残留咽頭圧減弱 喉頭挙上不全 輪状咽頭筋機能 ( 開大 ) 不全などに起因し 食塊が咽頭に残留する 丸飲みゼリーは喉頭に落下しやすく適さない 2 回目以降の嚥下が早く惹起されるケース 狭窄部を通過しやすい食品 ( 薄いとみ等 ) で代償する 2 回目以降の嚥下が遅いケース 誤嚥防止を優先するために 粘度 付着性が高めの食品 ( 中間 ~ 濃いとろみ等 ) で代償する 4 6