相続税対応策と土地活用 ~ これだけは押さえておきたい ~ ラジオ NIKKEI 公開録音土地活用セミナー 2014 年 7 月 26 日 税理士奥村眞吾

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Ⅰ ワンルームマンション経営と節税 税務署 確定申告 税金還付 20 万 ~30 万円 ワンルーム家賃収入ローン元利返済サラリーマンマンション A 氏 1 戸所有月 70,000 円月 60,000 円 銀行 年 30,000 円 月 8,000 円 固定資産税 管理会社 1 ワンルームマンション投

相続税の節税対策としての生前贈与 相続税 贈与税はともに相手に渡る財産の金額に対して累進的な税率により税金がかかりま す そこで 相続税の税率よりも低い税率で贈与をすれば 相続税の節税になります 下の 図で相続税と贈与税税率を確認して下さい 贈与税は 相続税に比べ 基礎控除額が低く さらに税率が高く

Microsoft Word - 第53号 相続税、贈与税に関する税制改正大綱の内容

第 5 章 N

相続税・贈与税の基礎と近年の改正点

相続対策としての土地有効活用

Microsoft Word - 第67号 来年からの贈与税改正と相続時精算課税を選択する際の注意点

相続税計算 例 不動産等の評価財産の課税評価額が 4 億 8 千万円 生命保険金の受取額が 2 千万円 現金 預金等が 4 千万円 ローン等の債務及び葬式費用等が 3 千万円である場合の相続税を計算します 相続人は妻と 2 人の子供の 3 人です ( 評価額を計算するには専門知識を要します 必ず概算

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(1) 相続税の納税猶予制度の概要 項目 納税猶予対象資産 ( 特定事業用資産 ) 納税猶予額 被相続人の要件 内容 被相続人の事業 ( 不動産貸付事業等を除く ) の用に供されていた次の資産 1 土地 ( 面積 400 m2までの部分に限る ) 2 建物 ( 床面積 800 m2までの部分に限る

2015 年 1 月いよいよ施行! 相続税増税の影響と対策 Part 1 相続税はどう変わる? 影響は? Part 2 相続税の負担を軽減するには?

平成 25 年度税制改正解説相続税 ~ 基礎控除の引き下げ 税率構造の見直し等 法定相続人の数と基礎控除法定相続人の数と基礎控除 法定相続人の数 1 人 2 人 3 人 4 人 5 人 60,000 千円 70,000 千円 80,000 千円 90,000 千円 100,000 千円 36,000

税法入門コース 相続税 学習スケジュール 回数学習テーマ内容 第 1 回 第 2 回 第 3 回 第 4 回 第 4 回 第 1 章 第 2 章 第 2 章 第 3 章 第 4 章 第 4 章 第 5 章 テーマ 1 相続税 贈与税とは? テーマ 2 用語の説明 テーマ 1 相続人となれる人は? テ

2 税額控除等の計算 ( 単位 : 円 ) 項目対象者計算過程金額 答案用紙 Chapter2 問題 3 課税価格の計算 Ⅰ 相続人及び受遺者の相続税の課税価格の計算 1 分割財産価額の計算 ( 単位 : 千円 ) 2 みなし取得財産価額の計算 ( 単位 : 千円 ) 取得者財産の種類計算過程金額

[2] 税率構造の見直し 相続税の税率構造が現行の6 段階から8 段階に変更されるとともに 最高税率が 50% から 55% に引き上げられることとなりました ただし 各法定相続人の取得金額が2 億円以下の場合の税率は と変わりありません この改正は 平成 27 年 1 月 1 日以後に相続または遺

相続人の居住用または事業用の宅地については2 割または5 割評価にするという小規模宅地等の評価減の特例があるが 平成 22 年度税制改正により 原則として申告期限まで居住または事業を継続していなければ適用が認められなくなっている 今回 基礎控除額が引き下げられることと合わせ 都市部の独居老人が亡くな

目 次 最近における相続税の課税割合 負担割合及び税収の推移 1 地価公示価格指数と基礎控除(58 年 =100) の推移 2 最近における相続税の税率構造の推移 3 小規模宅地等の課税の特例の推移 4 相続税負担の推移( 東京都区部のケース ) 5 ( 補足資料 ) 相続税の概要 6 相続税の仕組

13. 平成 29 年 4 月に中古住宅とその敷地を取得した場合 当該敷地の取得に係る不動産取得税の税額から 1/2 に相当する額が減額される 14. 家屋の改築により家屋の取得とみなされた場合 当該改築により増加した価格を課税標準として不動産 取得税が課税される 15. 不動産取得税は 相続 贈与

2011年税制改正のポイント

資産運用として考える アパート・マンション経営

暦年課税の贈与を毎年する人のデータ 暦年課税の贈与は 現金を贈与するのか不動産を贈与するのかで違ってきます 土地は路線価方式または倍率方式で評価し建物は固定資産税評価額で評価しますので 現金での贈与の場合よりも税率は低くなります ただし不動産の贈与では 土地や建物の贈与または共有持分の贈与になります

おき 太郎様 Inheritance Report 相続診断書 税理士法人おき会計 平成 28 年 7 月 20 日作成

未成年者控除 障害者控除の見直し 未成年者控除 障害者控除 6 万円 20 歳に達するまでの年数 6 万円 ( 特別障害者 :12 万円 ) 85 歳に達するまでの年数 10 万円 20 歳に達するまでの年数 10 万円 ( 特別障害者 :20 万円 ) 85 歳に達するまでの年数 小規模宅地等につ

自宅の他に賃貸マンションと駐車場を所有している人のデータ 自宅の他に賃貸マンションと駐車場を所有している人の 法定相続人の数と相続財産および債務のデータから相続税を試算します 賃貸マンションについては全室が賃貸用かどうか 駐車場については舗装がしてあるかどうかで評価額が違ってくることがあります また

である 12 遺留分とは 遺言の内容にかかわらず一定の相続人が確実に受け取ることができる一定の 割合のことである 直系尊属のみが相続人である場合は 被相続人の財産の 1/3 その 他の場合には 被相続人の財産の 1/2 である ただし 兄弟姉妹には遺留分はない 13 相続の放棄は 被相続人の生前に行

(2) 父母 ( 祖父母 ) から子 ( 孫 ) への住宅取得等資金の贈不 父母 ( 祖父母 ) など直系尊属から その子 ( 孫 ) へ居住用の家屋の新築 取得または増改築のための金銭 ( 住宅取得等資金 ) を贈不した場合 表の通りの金額について贈不税が非課税となります また 贈不税の基礎控除

資産運用として考える アパート・マンション経営

コピー又は web からダウンロードしてご使用ください 答案用紙 Chapter1 問題 1 個人とみなされる納税義務者 Ⅰ 相続人及び受遺者の相続税の課税価格の計算 1 遺贈財産価額の計算 ( 単位 : 千円 ) 取得者財産の種類計算過程金額 2 生前贈与加算される贈与財産の額の計算 ( 単位 :

土地の譲渡に対する課税 農地に限らず 土地を売却し 譲渡益が発生すると その譲渡益に対して所得税又は法人税などが課税される 個人 ( 所得税 ) 税額 = 譲渡所得金額 15%( ) 譲渡所得金額 = 譲渡収入金額 - ( 取得費 + 譲渡費用 ) 取得後 5 年以内に土地を売却した場合の税率は30

テキスト編 第 1 章相続税 贈与税とはなにか 目次 1 相続税が課税される理由 1 2 どれくらいの遺産がある場合 相続税は課税されるか 2 3 贈与税が課税される理由 3 4 相続税と贈与税の関係 4 第 2 章相続人と相続分 1 相続人と相続順位 5 2 相続の承認と放棄 14 3 相続人の相

ラリーマン 相続税の申告は? 45 相続税の申告はどのようにすればよいのでしょうか 相続が開始したことを知った日 ( 通常は被相続人が死亡した日 ) の翌日から 10 か月以内に 被相続人の住所 地の所轄税務署に申告し 相続税を納付する必要があります 申告書を提出する人が 2 名以上いる場合は 共同

スライド 1

貸家建付地 貸家建付地とは 自分名義の土地に自分名義の建物を建設してその建物を他人に貸しているものです ( 財基通 26) 借家人には法律上の借家権が発生し 地主は立退料を支払わないと自由に土地建物を処分できません( 借地借家法 28) 貸家建付地の典型例は アパート マンションです このため 相続

一戸建ての自宅を所有している人のデータ 東京都内やその近郊など路線価の高い宅地に一戸建ての自宅を所有し その他に預貯金や有価証券を保有している人の相続税シミュレーションになります 路線価が高いと自宅の敷地の面積が広くなくても その宅地の評価額は高額になりますので この宅地に対して小規模宅地等の特例が

東京太郎様 Inheritance Report 相続診断書 弁護士法人 税理士法人リーガル東京 平成 30 年 8 月 20 日作成

住宅取得等資金贈与の非課税特例 教育資金一括贈与の非課税特例 結婚 子育て資金贈与の非課税特例 相続時精算課税制度 贈与者 贈与年の 1 月 1 日現在で 60 歳以上の父母または祖父母 受贈者 贈与者の直系卑属 ( 子 孫 ひ孫等 ) で贈与の年の 1 月 1 日現在 20 歳以上 受贈年の合計所

原稿4.xls

配偶者がいる人の一次相続と二次相続のデータ 被相続人に配偶者がいる一次相続と 配偶者がいない二次相続の相続税シミュレーションを行います 配偶者の税額軽減は その節税効果が大きいために一次相続で相続税を大幅に減額することができますが 次の二次相続では想定外の相続税が発生することがあります 配偶者がいる

配偶者の税額軽減特例の有利な受け方 配偶者がいる場合の 相続税の具体的な計算例は以下の通りです 1. 設例 自宅 預貯金等の相続財産の遺産額 =2 億円 法定相続人 = 配偶者 + 子 2 人の合計 3 人 実際の遺産分割は 法定相続分の通りとする 未成年者控除 外国税額控除 生命保険金の非課税枠金

[2] 株式の場合 (1) 発行会社以外に譲渡した場合株式の譲渡による譲渡所得は 上記の 不動産の場合 と同様に 譲渡収入から取得費および譲渡費用を控除した金額とされます (2) 発行会社に譲渡した場合株式を発行会社に譲渡した場合は 一定の場合を除いて 売却価格を 資本金等の払戻し と 留保利益の分

Microsoft Word - 第58号 二世帯住宅の敷地にかかる小規模宅地等の特例

契約をするとき 契約書に貼る印紙税不動産取引で取り交わす契約書は 印紙税の対象となります 具体的には 不動産の売買契約書や建物の建築請負契約書 土地賃貸借契約書 ローン借入時の金銭消費貸借契約書等がこれに当たります 印紙税の額は 契約書に記載された金額によって決定されます 原則として 収入印紙を課税

所得税確定申告セミナー

5 適用手続 ⑴ 相続時精算課税の適用を受けようとする受贈者は 贈与を受けた財産に係る贈与税の申告期間内に 相続時精算課税選択届出書 ( 贈与者ごとに作成が必要 ) を贈与税の申告書に添付して 納税地の所轄税務署長に提出する ( 相法 21の92) なお 提出された当該届出書は撤回することができない

基本資料1-平成25年税制改正ポイント(表紙).pdf

税制改正を踏まえた生前贈与方法の検討<訂正版>

住宅取得等資金の贈与に係る贈与税の非課税制度の改正

舟子さん 先生 娘の笹江は明るいところはいいのですが お財布を忘れて買い物に行ってしまうようなおっちょこちょいで でも私もこれから歳を取っていくし 今のうちにアパート経営を笹江に任せて 身軽になりたいと思っているのです 笹江さん お母さんったら お財布忘れては余計よ 先生 わが家の相続税がいくらかか

土地建物等の譲渡損失は 同じ年の他の土地建物等の譲渡益から差し引くことができます 差し引き後に残った譲渡益については 下記の < 計算式 2> の計算を行います なお 譲渡益から引ききれずに残ってしまった譲渡損失は 原則として 土地建物等の譲渡所得以外のその年の所得から差し引くこと ( 損益通算 )

平成16年版 真島のわかる社労士

相続税 贈与税の基本がよくわかる! 誰が相続人になるの? 税額はどのようにして求めるの? 土地 建物の評価はどうするの? 住宅取得資金の贈与は最大 3,000 万円が非課税に? 教育資金や結婚 子育て資金の贈与は非課税に? 新しくできる配偶者居住権ってどんなもの? etc.

N 譲渡所得は 売却した土地や借地権 建物などの所有期間によって 長期譲渡所得 と 短期譲渡所得 に分けられ それぞれに定められた税率を乗じて税額を計算します この長期と短期の区分は 土地や借地権 建物などの場合は 売却した資産が 譲渡した年の1 月 1 日における所有期間が5 年以下のとき 短期譲

相続税に関するチェックリスト

N 譲渡所得は 売却した土地や借地権 建物などの所有期間によって 長期譲渡所得 と 短期譲渡所得 に分けられ それぞれに定められた税率を乗じて税額を計算します この長期と短期の区分は 土地や借地権 建物などの場合は 売却した資産が 譲渡した年の1 月 1 日における所有期間が5 年以下のとき 短期譲

相続財産の評価P64~75

#210★祝7500【H30税法対策】「登録免許税ほか」優先暗記30【宅建動画の渋谷会】佐伯竜PDF

例えば毎年 子供 2 人に対し110 万円づつ贈与し続けるのであれば 10 年間で2,200 万円の財産を無税で子供に移すことができます 贈与税の基礎控除額を上手く活用する方法だけでも 計画的に行うことがどれだけ大切なのかご理解いただけると思います とにかく財産を所有している人が高齢になればなるほど

Microsoft Word - 平成15年税制改正(2).doc

この特例は居住期間が短期間でも その家屋がその人の日常の生活状況などから 生活の本拠として居住しているものであれば適用が受けられます ただし 次のような場合には 適用はありません 1 居住用財産の特例の適用を受けるためのみの目的で入居した場合 2 自己の居住用家屋の新築期間中や改築期間中だけの仮住い

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平成19年度分から

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やさしい税金教室

なぜ法人化するのか? 所得税 住民税 事業税 社会保険 医療費が高い! それは 所得 (= 収入 - 経費 ) が高いからです すべてにかかわります 特に所得税は超過累進税率です 住民税 :10% 事業税 ( 不動産 ):5% どういう場合に法人化するのか? 相続税対策が終わった場合 相続税が発生し

3.相続時精算課税の適用を受ける場合編

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税金のいろいろ所得税の計算の税金サラリーマン20 生活の税金株式の税金事業の税金不動産の税金贈与の税金相続の税金(2) 適用を受けるための主な要件 取得又は増改築等をした日から6か月以内に居住すること 住宅の床面積が50m 2 以上で取得又は増改築後の家屋の床面積の1/2 以上が居住用であること 中

第 1 問次の関連業法とコンプライアンスに関する各文章 ( 問 1~ 問 10) を読んで 正しいもの または適切なものには〇を 誤っているものまたは不適切なものには を 解答用紙に 記入しなさい ( 各 1 点 ) ( 問 1) 弁護士資格を有しない相続診断士が 事件性のある法律相談を無償で行うこ

1.一般の贈与の場合(暦年課税)編

2. 二世帯住宅と特定居住用宅地等 [1] 区分所有なし : 外階段 / 親族が取得する場合 Q. 被相続人 A が所有する宅地の上に A の所有する建物があり 1 階に A が居住し 2 階に子 B とその家族が居住しています ( 建物内部では行き来ができない構造 ) A と B は別生計です こ

A. 受贈者に一定の債務を負担させることを条件に 財産を贈与することを 負担付贈与 といいます 本ケースでは 夫は1 妻の住宅ローン債務を引き受ける代わりに 2 妻の自宅の所有権持分を取得する ( 持分の贈与を受ける 以下持分と記載 ) ことになります したがって 夫は1と2を合わせ 妻から負担付贈

相続税を計算してみましょう!

2011年度税制改正大綱(相続・贈与税)

小規模宅地等の評価減の特例 1. 概要 居住用や事業用宅地を相続した場合 小規模とされる一定面積までを 50%~80% 評価減できる特例があります ( 措置法 69 条の 4) 区分宅地の区分事業や居住の見込減額割合対象面積 1 号特例特定事業用等宅地等 1 親族が相続して事業を継続 80% 400

⑷ 納税猶予の打ち切り P. 49 Q. 納税猶予の対象の農地を売却する場合 納税猶予が打ち切られてしまうのですか ⑸ 市町村合併と納税猶予 P. 54 Q.B 町が平成 3 年 1 月 1 日現在特定市であるA 市に合併される場合 旧 B 町の農地等は生産緑地の指定を受けていないと納税猶予の特例は


課税遺産総額 = 各人の課税価格 ( ア ) の合計額 - 遺産に係る基礎控除額ウ相続税の総額の計算 1 課税遺産総額を法定相続人が法定相続分に応じて取得したものと仮定し 各人ごとの取得金額を計算する 2 1に税率をかけ 各人の税額を合計する (= 相続税の総額 ) エ各人の相続税額の計算相続税の総

(2) みなし相続財産ものか13 第1 章12 2 課税される 相続財産 の範囲 海外にある財産も課税対象となる 贈与税の暦年課税適用財産も 3 年以内は課税対象となる 葬式費用 墓地や墓碑 仏壇 仏具等は非課税 相続税の課税対象となる相続財産は (1) 被相続人が亡くなったときに所有していた財産

野村資本市場研究所|顕著に現れた相続税制改正の影響-課税対象者は8割増、課税割合は過去最高の8%へ-(PDF)

平成 22 年 12 月 7 日 資料 ( 資産課税 )

4. 平成 27 年度税制改正の概要 (1) 住宅の取得に関わる税制 登録免許税 不動産取得税 改正項目ヘ ーシ 改正内容 所有権保存登記 所有権移転登記 所有権の信託 抵当権設定の登記の軽減措置 税率の軽減措置 宅地評価土地の課税標準の軽減措置 軽減税率の適用期限を平成 27 年 3

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各年の住宅ローン控除額の算出 所得税から控除しきれない額は住民税からも控除 当該年分の住宅ローン控除額から当該年分の所得税額 ( 住宅ローン控除の適用がないものとした場合の所得税額 ) を控除した際に 残額がある場合については 翌年度分の個人住民税において 当該残額に相当する額が 以下の控除限度額の

平成 31 年度住宅関連税制改正の概要 ( 一社 ) 住宅生産団体連合会 平成 31 年 3 月 (1) 住宅ローン減税の拡充 ( 所得税 個人住民税 ) 消費税率 10% が適用される住宅取得等をして 2019 年 10 月 1 日から 2020 年 12 月 31 日までの間にその者の居住の用に

図表 2 住宅ローン減税の拡充 消費税率が 5% の場合 消費税率が 8% または 10% の 場合 適用期間 ~2014 年 3 月 2014 年 4 月 ~2017 年末 最大控除額 (10 年間合計 ) 200 万円 (20 万円 10 年間 ) 400 万円 (40 万円 10 年間 ) 控

上級相続診断士練習問題 < 注意事項 > 1 試験問題用紙は 問題用紙と解答用紙からなっています 解答はすべて解答用紙に記入してください 2 試験問題用紙は 問題用紙と解答からなっています 解答はすべて解答用紙に記入してください 3 問題数 (= 解答数 ) は合計 45 問です 本試験は試験時間

( 図表 1-2) 課税割合 ( 課税対象被相続人数 / 被相続人全体 100(%) ( 注 ) 財務省公表資料による こうした中で 多くの相続税納税者にとって評価額が高額で相続税納税上の負担増が大きい一定の小 規模宅地については 課税強化への影響を緩和するため 相続税強化が行われた 2015 年に

1.修正申告書を作成する場合の共通の手順編

Microsoft Word - 第65号 二世帯住宅と小規模宅地等の特例

1 増税時代の相続対策と資産承継 平成 26 年 4 月 27 日 ( 日 ) 浦和相続サポートセンター ヤマト税理士法人税理士 CFP 北村喜久則

注 1 認定住宅とは 認定長期優良住宅及び認定低炭素住宅をいう 注 2 平成 26 年 4 月から平成 29 年 12 月までの欄の金額は 認定住宅の対価の額又は費用の額に含まれる消費税等の税率が 8% 又は 10% である場合の金額であり それ以外の場合における借入限度額は 3,000 万円とする

給与所得控除額の改正前後の比較 改正前 改正後 給与等の収入金額給与所得控除額給与等の収入金額給与所得控除額 180 万円以下 収入金額 40% 65 万円に満たない場合は 65 万円 180 万円以下 収入金額 40%-10 万円 55 万円に満たない場合は 55 万円 180 万円超 360 万

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3.相続時精算課税の適用を受ける場合編

平成29年 住宅リフォーム税制の手引き 本編_概要

3. 住宅税制 消費税率の引上げに伴う一時の税負担の増加による影響を平準化し 及び緩和する観 点から 住宅税利について以下のとおり所要の措置を講じます 住宅ローン減税を平成 26 年 1 月 1 日から平成 29 年末まで 4 年間延長し その期間のうち平成 26 年 4 月 1 日から平成 29

法人会の税制改正に関する提言の主な実現事項 ( 速報版 ) 本年 1 月 29 日に 平成 25 年度税制改正大綱 が閣議決定されました 平成 25 年度税制改正では 成長と富の創出 の実現に向けた税制上の措置が講じられるともに 社会保障と税の一体改革 を着実に実施するため 所得税 資産税についても

住宅ローンアドバイザー会報 12 月号 住宅購入後にかかる税金にはどんなものがある? 質問住宅を購入しようと思っていますが 負担しきれないほどの税金を負担することにならないか心配です 住宅購入後に必要となる税金を教えてください 回答住宅購入後にかかる税金には 固定資産税 都市計画税があります 固定資

このうち 申告納税額がある方 ( 納税人員 ) は640 万 8 千人で は41 兆 4,298 億円 申告納税額は3 兆 2,037 億円となっており 平成 28 年分と比較すると 人数 (+0.6%) (+ 3.4%) 及び申告納税額 (+4.6%) はいずれも増加しました 所得者区分別の状況イ

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相続税対応策と土地活用 ~ これだけは押さえておきたい ~ ラジオ NIKKEI 公開録音土地活用セミナー 2014 年 7 月 26 日 税理士奥村眞吾 http://www.okumura.ne.jp

Ⅰ 相続税 贈与税の大改正 1. 来年から相続税の基礎控除の引下げ 相続税の基礎控除を 5,000 万円 +1,000 万円 法定相続人の数 から 3,000 万円 +600 万円 法定相続人の数 に引き下げ 相続税の再分配機能の回復を図ることとされ 遺産額から差し 引いて税負担を軽減できる基礎控除額が 40% 削減されることになります 平成 26 年 12 月 31 日まで ( 定額控除 ) ( 法定相続人比例控除 ) 5,000 万円 +1,000 万円 法定相続人の数 平成 27 年より ( 定額控除 ) ( 法定相続人比例控除 ) 3,000 万円 +600 万円 法定相続人の数 改正後 相続財産 課税遺産総額 5,000 万円 +1,000 万円 法定相続人数 課税遺産総額 基礎控除 改正後 3,000 万円 +600 万円 法定相続人数 基礎控除 は 定額控除部分の 5,000 万円に 法定相続人 1 人当たり 1,000 万円を加算した金額が控除できますが 改正後は 定額部分が 3,000 万円 法定相続人 1 人当たりの部分が 600 万円に引き下げられます したがって 夫婦と子 2 人の標準世帯で夫が亡くなり 妻と子 2 人が遺産を相続する場合 であれば 8,000 万円 (5,000 万円 +1,000 万円 3 人 ) まで相続税はかかりませんでしたが 平成 27 年からは 相続税がかからないのは 4,800 万円 (3,000 万円 +600 万円 3 人 ) までとなります もっとも 妻が相続する場合は 配偶者の軽減措置がありますので 従来同様 課税遺産総額が 1 億 6,000 万円までなら相続税はかかりません 1

夫が亡くなり 相続人は妻と子 2 人の場合 改正後 (H27 年 1 月 ~) 遺産 1 億円 課税対象 2,000 万円 基礎控除 5,000 万円 + 1,000 万円 3 =8,000 万円 4 割圧縮 課税対象 5,200 万円 基礎控除 3,000 万円 + 600 万円 3 =4,800 万円 法定相続人分で割る 妻 1/2 2,600 万円子 1/4 1,300 万円子 1/4 1,300 万円 630 万円 相続税の総額 税金はかからない は 100 万円なので 215 万円の増税 妻は配偶者控除があるので を反映して税額を計算 各相続人に適用される控除 315 万円 ( 実子際 2 の人納分付 ) 税額 改正で新たに相続税の負担が生じる場合とは? 相続人の区分 平成 27 年から 相続人が妻 ( 配偶者 ) と子 2 人の場合 相続人が子 2 人の場合 8,000 万円超 7,000 万円超 4,800 万円超 4,200 万円超 相続税がかかる 妻 ( 配偶者 ) と子 2 人が相続する場合は? 遺産の課税価格 の税額 改正後の税額 増税額 7,000 万円 0 112.5 万円 112.5 万円 1 億円 100 万円 315 万円 215 万円 3 億円 2,300 万円 2,860 万円 560 万円 5 億円 5,850 万円 6,555 万円 705 万円 10 億円 1 億 6,650 万円 1 億 7,810 万円 1,160 万円 2

2. 相続税の構造の改正 ( 最高 50% から 55% に ) 平成 27 年から 相続税の最高を 50% から 55% に引き上げられるとともに 構造は 6 段階から 8 段階となります 法定相続分に応ずる取得金額が 5,000 万円超 1 億円以下のは 従前同様 30% と変わりありませんが 改正後は 2 億円以下の金額は 40% 3 億円以下が 45% 6 億円以下が 50% 6 億円超が 55% と 課税強化が図られています 相続税の構造法定相続分に応ずる取得金額 平成 27 年から 1,000 万円以下の金額 10% 同左 3,000 万円 15% 5,000 万円 20% 1 億円 30% 3 億円 40% 3 億円超の金額 50% 2 億円以下の金額 40% 3 億円 45% 6 億円 50% 6 億円超の金額 55% 相続税の速算表 平成 27 年から 法定相続人に応ずる取得金額 (%) 控除額 ( 万円 ) 法定相続人に応ずる取得金額 (%) 控除額 ( 万円 ) 1,000 万円以下 10 1,000 万円以下 10 3,000 万円以下 15 50 3,000 万円以下 15 50 5,000 万円以下 20 200 5,000 万円以下 20 200 10,000 万円以下 30 700 10,000 万円以下 30 700 30,000 万円以下 40 1,700 20,000 万円以下 40 1,700 30,000 万円超 50 4,700 30,000 万円超 45 2,700 60,000 万円超 50 4,200 60,000 万円超 55 7,200 3

3. 贈与税のの見直し 若年世代への早期資産移転をより一層推進する観点から 相続の見直しと併せて 若年世代を受贈者とする贈与税の構造が見直されることになりました 相続との兼ね合いから 贈与税の最高は 50% から 55% に引き上げられます 相続時精算課税制度の対象とならない暦年課税の贈与財産に係る贈与税の構造について 次の改正が行われます 20 歳以上の者が直系尊属から贈与を受けた場合のが緩和され 1,000 万円以下の金額に対する 40% が 30% に 1,000 万円超の金額に対する 50% が 1,500 万円以下の 40% に 3,000 万円以下 45% 4,500 万円以下 50% に緩和され 4,500 万円超が 55% と細分化されました また この 20 歳以上の者が直系尊属から贈与を受けた場合の とは別に 一般の贈与 が設けられ 贈与税に二種類のが設けられることになりました (1)20 歳以上の者が直系尊属から贈与を受けた財産に係る贈与税の構造 20 歳以上の者が直系尊属 ( 父母 祖父母 養父母等 ) から贈与を受けた財産に係る贈与税の構造については 生前贈与による財産の有効活用を図る観点から 次のように緩和されました 改正後 基礎控除及び基礎控除及び配偶者控除後の課税価格配偶者控除後の課税価格 200 万円以下の金額 10% 同左 300 万円 15% 400 万円以下の金額 15% 400 万円 20% 600 万円 20% 600 万円 30% 1,000 万円 30% 1,000 万円 40% 1,500 万円 40% - 3,000 万円 45% 1,000 万円超の金額 50% 4,500 万円 50% - 4,500 万円超の金額 55% (2) 上記 (1) 以外の贈与財産に係る贈与税の構造 上記 (1) 以外の贈与財産に係る贈与税の構造については 相続税の最高の引上げ に合わせ 次のように改められました 4

基礎控除及び配偶者控除後の課税価格 200 万円以下の金額 10% 300 万円 15% 400 万円 20% 同左 600 万円 30% 1,000 万円 40% 改正後 基礎控除及び配偶者控除後の課税価格 - 1,500 万円以下の金額 45% 1,000 万円超の金額 50% 3,000 万円 50% - 3,000 万円超の金額 55% 上記 (1) と (2) の贈与がある場合は それぞれの金額に応じてあん分計算をすること になります 贈与税の速算表 1 20 歳以上の者が直系尊属から贈与を受けた場合の贈与税の速算表 基礎控除及び配偶者控除後の課税価格 (%) 控除額 ( 万円 ) 基礎控除及び配偶者控除後の課税価格 改正後 (%) 控除額 ( 万円 ) 200 万円以下 10 200 万円以下 10 300 万円以下 15 10 400 万円以下 15 10 400 万円以下 20 25 600 万円以下 20 30 600 万円以下 30 65 1,000 万円以下 30 90 1,000 万円以下 40 125 1,500 万円以下 40 190 1,000 万円超 50 225 3,000 万円以下 45 265 2 上記 1 以外の一般の贈与税の速算表 基礎控除及び配偶者控除後の課税価格 (%) 控除額 ( 万円 ) 4,500 万円以下 50 415 4,500 万円超 55 640 基礎控除及び配偶者控除後の課税価格 改正後 (%) 控除額 ( 万円 ) 200 万円以下 10 200 万円以下 10 300 万円以下 15 10 300 万円以下 15 10 400 万円以下 20 25 400 万円以下 20 25 600 万円以下 30 65 600 万円以下 30 65 1,000 万円以下 40 125 1,000 万円以下 40 125 1,000 万円超 50 225 1,500 万円以下 45 175 3,000 万円以下 50 250 4,500 万円超 55 400 5

4. 相続時精算課税制度の適用要件の見直し (1) の相続時精算課税制度の適用要件 相続時精算課税制度とは 65 歳以上の親から 20 歳以上の子に対して行う生前贈与で その 際に納めた贈与税を 親が亡くなった際に納める相続税額から控除するというものです この 相続時精算課税制度の贈与税の特別控除 ( 非課税枠 ) は 2,500 万円とされています 適用対象者 贈与者は満 65 歳以上の親 受贈者は満 20 歳以上の子である推定相続人 贈与税額 ( 贈与を受けた財産の価額 -2,500 万円 ) 20%( 一律 ) (2) 平成 27 年からの相続時精算課税制度の適用要件若年世代への資産の早期移転を促進する観点から 相続時精算課税制度について 受贈者に 20 歳以上の孫 ( 20 歳以上の子である推定相続人のみ ) を追加するとともに 贈与者の年齢要件を 60 歳以上 ( 65 歳以上 ) に引き下げることとされます 平成 27 年から 受贈者 20 歳以上の子である推定相続人 20 歳以上の子である推定相続人または 20 歳以上の孫 贈与者 65 歳以上の親 ( 父または母 ) 60 歳以上の 2 親等以内の直系尊属 ( 父母または祖父母 ) 6

5. 小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例の見直し 小規模宅地等の相続税の課税価格算入額の計算式 ( 特例適用による減額 ) 小規模宅地等の特例適用宅地の相続税評価額 200 m2 ( または 240 m2 400 m2 ) までの部分の特例適用対象宅地面積 = 宅地の通常の -A 評価額 (A) その宅地の面積 減額割合 利用形態別の減額割合及び特例対象面積 宅地等上限面積軽減割合 事業用 居住用 事業継続 400 m2 80% 不動産貸付 200 m2 50% 居住継続 240 m2 80% 居住用宅地の適用対象面積の見直し 特定居住用宅地等に係る特例の適用対象面積を 330 m2 ( 240 m2 ) までの部分に拡充しま す 改正案 上限 240 m2 330 m2 減額割合 上限面積 H27.1 以降 特定居住用宅地 80% 240 m2 特定事業用宅地 80% 400 m2 不動産貸付用宅地 50% 200 m2 330 m2 変わらず 変わらず 7

Ⅱ 使いやすくなった相続時精算課税制度を利用する 20 歳以上の子が 65 歳以上の親 ( 父又は母 ) から受ける贈与について 贈与時に軽減された贈 与税を納付し 相続時に相続税で精算する制度が 暦年課税による従来の制度との選択性です 平成 27 年からは親だけでなく 祖父母からの贈与にも適用されます ( 贈与者 ) ( 受贈者 ) 65 歳以上の 20 歳以上の 親 子 ( 課税の仕方 ) 従来の贈与税制度 相続時精算課税制度 なお 贈与時の非課税枠は 累積で 2,500 万円を限度として 複数年にわたって使用すること ができます また 非課税枠を超える部分については 一律 20% ので課税されます 注意点!! 贈与者 受贈者の年齢は 贈与を受けた年の 1 月 1 日の満年齢により判定します 相続時精算課税制度 を選択した場合の税額の求め方 贈与時の税額計算 贈与財産 の合計額 2,500 万円 - 20% = 贈与税 ( 非課税枠 ) (1) 住宅取得資金贈与に係る相続時精算課税制度住宅の取得又は増改築に充てる資金を贈与により取得した場合には 65 歳未満の親 ( 父又は母 ) からの贈与についても 相続時精算課税制度を選択できる特例があります なお この場合の非課税枠は 2,500 万円に 1,000 万円 ( 省エネ等住宅 その他は 500 万円 ) を上乗せした 3,500 万円とされています 相続時精算課税制度 一般の場合 と 住宅取得資金贈与の場合 の比較 相続時精算課税制度一般の場合住宅取得資金贈与の場合 年齢制限 贈与者 65 歳以上の親親 ( 年齢制限なし ) 受贈者 20 歳以上の子 非課税枠 2,500 万円 3,500 万円 ( または 3,000 万円 ) 適用期間恒久的措置平成 26 年中 8

Ⅲ 今後の資産運用と相続税対策 (1) アパートを建てると なぜ相続税対策になるのか相続税額を減らすポイントは 相続財産を減らすことですが 相続財産の量を減らすことができないのであれば その評価額を引き下げる方法を考えることです そうすれば 相続財産の価格は減少します あるいは 借入金などの債務を増やして 全体として債務控除を利用して 相続財産を減少させることができます この両方のメリットを活かした方法が アパート経営なのです ( 対策 ) ( その結果 ) ( そのメリット ) アパート経営 1 財産の評価額が下がる 2 借入金などで債務が増加する 相続財産が少なくなる 土地は 有効利用しないと 相続税をはじめ 固定資産税や都市計画税などの税負担に耐え られなくなります 将来も 遊休地のままで持ちつづけるのであれば 今 いくら安くても 売却した方が次世代のためになります 財産は 活用できてこそ価値がでるものです 1 アパートを建てると 評価額が下がる訳は? 土地は 遊休地としてそのままにしておくより アパートなどを建てて利用する方が相続評価額が下がります その訳は その土地が 貸し家建付地 となるためで 更地としての評価額から 借地権割合 借家権割合 賃貸割合 が差し引かれるからです 土地は 都会地の場合 一般に 路線価 で評価されますが 建物の場合は 市役所などが発行する 固定資産税評価額 を基本にして評価します 通常 固定資産税評価額 は 実際にかかった建築代金の 60% くらいが目安になります さらに この建物をアパートや貸家にすると 貸家評価 になり 自家用家屋の評価額より 借家権割合 賃貸割合 のぶんだけ評価額が下がります アパートやその敷地を相続した場合の相続評価の仕方 ( 区分 ) アパート ( 貸家 ) 固定資産 税額評価 1.0 = 借家権 賃貸 アパートやマン 1 - ションは 通常 割合 割合 100% 貸家建付地 自用地の 評価額 借家権借家権賃貸アパートやマン 1- ションは 通常割合割合割合 100% 9

コラム 借地権割合 借家権割合 賃貸割合 とは? 借地権割合 地域によってまちまち だいたい 50%~70% が目安 借家権割合 通常 30% 賃貸割合 相続時に賃貸されている各独立部分の床面積の合計 その家屋の各独立部分の床面積の合計 2 アパートを建てると相続税対策になる理由このように 遊休地にアパートを建てると 土地 建物ともに 相続税評価額が引き下げられますので それだけ相続財産の評価額が引き下げることになります したがって 土地を有効に活用した上 なおかつ 相続財産の評価額を引き下げる効果もあるわけです 3 アパートを建てると どれだけ評価額が下がるか 評価額 1 億円の遊休地にアパートを建てると? 路線価評価額 1 億円の遊休地を所有 この土地に 1 億 5,000 万円のアパートを 自己資金 1,000 万円 銀行からの借入金 1 億 4,000 万円で建てると? ( 遊休地 ) 建築代金 1 億 5000 万円 1 億円貸家建付地 借地権割合 60% 借地権割合 30% 賃貸割合 100% アパートの固定資産税評価額 9,000 万円 (=1 億 5,000 万円 60%) 計算 ( 区 分 ) 1 建物 ( アパート ) の相続税評価額 ( 固定資産税評価額 ) ( 借家権割合 )( 賃借割合 ) ( 相続税評価額 ) 9,000 万円 (1-30% 100%) =6,300 万円 アパート 2 土地 ( 貸家建付地 ) の相続税評価額 ( 路線価 ) ( 借地権割合 )( 借家権割合 )( 賃貸割合 ) 土地 +)1 億円 (1-60% 30% 100%)=8,200 万円 =1 億 4,500 万円 3 差引課税価格 銀行からの借入金を債務控除する (1+2) ( 銀行からの借入金 ) ( 差引課税価格 ) 1 億 4,500 万円 - 1 億 4,000 万円 = 500 万円 10

計算結果の判定メリット : 何もしないでおくと 1 億円の評価であった財産が なんと 500 万円になります これでおわかりのように アパートを建てるということは 土地の評価減を行うための最も有効な手段だといえます デメリット : このデメリットは たった一つです 銀行借入金を返せるだけの家賃収入が見込めるかどうかということです もっとも 借入金によらず 自前の資金でアパートを建てるなら リスクはありません ただし 借入金で建てようが 自前の資金で建てようが 相続税対策の効果は変わりません (2) 固定資産税 都市計画税対策にもなるアパート経営 1 固定資産税の課税方法は 固定資産税は 毎年 1 月 1 日現在の土地や家屋を持っている人に対して課税されます は 1.4% で 土地や家屋の毎年の固定資産税評価額に対して課税されます ただし 市街地区域内の土地や家屋には 別途 0.3% を上限とする都市計画税が課税され 固定資産税と併せて納めることになっています ( 税額 ) 固定資産税 ( 課税標準 ) = 固定資産税評価額 ( 標準 ) 1.4%( 最高 2.1%) 土地の固定資産税は 3 年毎に評価の見直しが行われますが 宅地の評価は その宅地が住宅用地かそうでないかによって 大きく税負担が異なります 住宅用地は わかりやすくいえば その土地の上に家を建てて 誰かが住めば その土地は 住宅用地 になります 一戸建て住宅はもちろんのこと 分譲マンションの敷地やアパート 寮や社宅の敷地も住宅用地になります 住宅用地は 固定資産税が減額される!! 住宅用地には 更に税額が下がる課税標準の特例が設けられています 区分税額の軽減額 固定資産税 6 分の 1 に軽減 11 戸当り 200 m2以下の小規模な住宅用地 都市計画税 3 分の 1 に軽減 固定資産税 3 分の 1 に軽減 21 戸当り 200 m2を超える一般の住宅用地の場合 都市計画税 3 分の 2 に軽減 家屋の床面積の 10 倍までが限度 11

例えば 1,000 m2の土地に 6 室のアパートを建てると? 1,000 m2の土地に 6 室のアパートを建てると 1 戸当り床面積が 200 m2以下の敷地だから 1,000 m2 6 室 =166.67 m2<200 m2敷地全体の固定資産税は 6 分の1になる 2 相続時精算課税制度の応用 ( 賃貸住宅を建てて生前贈与を考える ) 相続税対策の必要性にせまられている資産家の A(67 才 ) は以下の所有地に 8,000 万円 の賃貸住宅を建設して長男の B(35 才 ) に相続時精算課税制度を利用して生前贈与をすす められています どのようなしくみなのか教えて下さい アパート 1 億円 (300 m2 ) 土地の相続税評価額 1 億円 (300 m2 ) 建物価額 8,000 万円 ( 全額 預金取崩し ) 借地権割合 60% 借家権割合 30% 賃貸割合 100% A 氏は 67 才で相続税対策をする年ではまだ余裕があります また 8,000 万円のアパート建設 資金も銀行借入金に頼らず 自己資金で調達出来るということから相続時精算課税を選択する と有利になると考えられます (1) 従来からのオーソドックスな手法遊休地にアパートを建てると 土地 建物ともに 相続税評価額が引き下げられますので それだけ相続財産が減少することになります したがって 土地を有効活用した上 相続税対策 固定資産税対策にも効果があるわけです 土地は 遊休地としてそのままにしておくより アパートなどを建てて利用するとなぜ相続税評価額が下がるのかといえば その土地が遊休地から 貸家建付地 となるためで 更地としての評価額から 借地権割合 借家権割合 賃貸割合 が差し引かれるからです 土地は 都市周辺の場合 一般に 路線価 で評価されますが 建物の場合は 市役所などが発行する 固定資産税評価額 を基本にして評価します 通常 建物の 固定資産税評価額 は実際にかかった建築代金の 60% くらいが目安になります さらに この建物をアパートや貸家にすると 貸家評価 になり 自家用家屋の評価額より 借家権割合 賃貸割合 の分だけ評価額が下がります 12

次のようになります アパートやその敷地を相続した場合の財産評価方法 アパートアパート ( 貸家 ) 貸家建付地 評価額 = 建物の固定資産税評価額 (1- 借家権割合 賃貸割合 ( 通常は 100%)) 評価額 = 自用地の評価額 (1- 借地権割合 借家権割合 賃貸割合 ( 通常は 100%)) 設例では次のようになります アパート 8,000 万円 建物 ( アパート ) の相続税評価額 ( 固定資産税評価額 ) ( 借家権割合 )( 賃貸割合 ) ( 相続税評価額 ) 8,000 万円 0.6 (1-30% 100%)= 3,360 万円 自用地価額 1 億円 土地 ( 貸家建付地 ) の相続税評価額 ( 路線価 ) ( 借地権割合 )( 借家権割合 )( 賃貸割合 ) ( 相続税評価額 ) 1 億円 (1-60% 30% 100%)= 8,200 万円 上記のようにアパートを経営してまもなく相続が発生すると 更地 1 億円 建物 3,360 万円 ( 貸家評価 ) アパート 土地 8,200 万円 ( 貸家建付地 ) 借入金又は 預金の減少 8,000 万円 3,560 万円 このように 遊休地 更地のままで保有していると 相続税評価額 1 億円であったものが 8,000 万円のアパートを建てることによって 3,560 万円の相続税評価額になり 何と 6,500 万円もの評価差額が生じます 但し アパート建設後 ほどなく相続が発生するとは限りません もしこのアパートの収益が良く オーナーが 20 年も 30 年も長生きしたらどうでしょうか アパートから生じる収益は全てオーナーのものとなり 相続税対策どころか逆に新たな相続財産を創ってしまうことにもなりかねません (2) 相続時精算課税制度を使ったアパート建設 前述のような 8,000 万円のアパートを建設して アパートが貸家に該当することになれば その建物のみを子 (20 才以上 ) に相続時精算課税制度を選択して贈与します 13

アパート 親 アパート 子 親 親 相続時精算課税制度を選択した子が納める贈与税額の計算 ( 建築価額 ) ( 借家権割合 )( 賃貸割合 )( アパート ( 貸家 ) の相続税評価額 ) 8,000 万円 0.6 (1-30% 100%)= 3,360 万円 固定資産税評価額 ( 特別控除 ) 3,360 万円 - 2,500 万円 = 860 万円 ( 贈与 )( 納める贈与税額 ) 860 万円 20% = 172 万円 この計算のように親が 8,000 万円で建てたアパートを子が 172 万円の贈与税を納めるだけで子の所有建物になります その後 親との間で子が地代を払わない土地の使用貸借契約書 ( 但し 土地の固定資産税は負担 ) を締結することになります 設例では建物のみの贈与になっていますが その敷地の贈与も可能です ただ地価下落傾向が続いている間は控えた方が得です 贈与時点の時価で相続財産に取り入れられるからです いずれにしても わずかな贈与税を支払うことにより 1 贈与以降 アパートの家賃収入は全て子のものになり 親への蓄積を止めることができる 2 子は家賃収入を貯めることによって 相続税の納税資金の確保ができる (3) 賃貸住宅を建てて子に贈与する時の注意点 1 建物完成後すぐ実行しないあくまでも親の名義で登記完了後 入居者が生活しアパート経営事業を開始してからの建物贈与にしないと 建設資金の贈与とみなされる恐れがあります 2 負担付贈与にしないこと設例では 自己資金で賃貸住宅の建設を行うということで問題がありませんが 全額あるいは一部 借入金によっている場合に気を付けねばならないのは 借入金を子に負担させてはいけません 負担付贈与があった場合には 贈与された財産の評価額から 負担額を差し引いた価額に相当する財産の贈与があったものとして取扱われます この場合 不動産等を負担付贈与により取得した場合には その財産は相続税評価額には 14

よらず その取得時における通常の取引価額 ( 時価 ) によって評価することとされています 設例のように建築してまもなく贈与したのであれば その建築価額が通常の取引価額ということになります 以上のことから もし建築資金の一部を借入金によっているなら 借入金はあくまでも親の債務として残すこと 又 当該建物に担保等が付されているなら 担保の付け替えも考えるべきでしょう 次に入居者から預っている敷金 保証金です 敷金 保証金は契約解約等の際には返金しなければなりませんから家主からすれば債務です これを子に建物を贈与する際 引き継がせると負担付贈与に該当する恐れがあります したがって 贈与時に精算してしまうか 当初の入居者からは 敷金 保証金をとらないか 何らかの方法を考えなくてはなりません (4) 相続時精算課税制度のメリット デメリット [ メリット ] 1 将来値上がりする財産を贈与した場合相続時精算課税制度は 生前贈与した時点の時価が相続税を精算する際に取り込まれます したがって贈与時点より相続時点の方が値上がった場合でも 贈与時点の時価で相続税が計算される 2 オーナー会社の持株贈与による移転贈与税が高いので親の持株が相続時まで譲れない そのため高齢オーナーに代わって 子が実質経営者であるにもかかわらず 保有株式なきオーナー経営者である場合が多い ところが相続時精算課税制度を利用すれば 20% の生前贈与の概算払いだけで 社会的にも実質オーナー経営者として地位を高めることが出来 配当の受取りも親でなく子に入るようになる 3 収益物件を生前贈与することによって親の財産形成を阻止することができる収益が期待できる財産を いつまでも親の元に存置しておくと 親の財産がそれだけ増大し 親の所得税 地方税も累進課税で負担がふくらむ それを生前に子に移転しておくことで 親にたまる財産が子に行くので相続税対策になる 4 相続税があまり心配でない人も利用できる住宅取得資金贈与の相続時精算課税制度では従来の贈与額 550 万円に比べて 3,500 万円という非課税枠を使うことによって 子が住宅ローンを負担することなくマイホームを取得することができ ゆとりある生活がエンジョイできる 5 遺産分割で紛争が生じないようにできる遺言書を書くという以外に 死後の自分表示ができなかったのに比べ 20% の相続税の前払いをすることによって 親が生きている間に 子に財産分割ができる 15

[ デメリット ] 1 生前贈与した財産が値下がったとき贈与時の時価が高い自社株 仮に評価が 5 億円の株式を 1 億円の贈与税を払って子に贈与したとします しかし何年後かに贈与者である親が亡くなった時点では 世の中も変わり その会社は債務超過で明日でも倒産しかねなく株価評価がゼロになっている場合でも 相続財産に合算する自社株は 5 億円です 会社がなくなってしまっても 5 億円プラスされ 納税資金にも問題が生じることになります 2 生前に財産を贈与してほしいと要求される従来は贈与税負担が大きいので 子が親に生前もっとくれと要求することが少なかったのですが 贈与税も 20% となると 生前に親から 10 億円贈与を受けるのに そのうち 2 億円現金で受け取ることによって 納税の心配はいりません 不肖の子供を持つ親にとって悩みが増えるかもしれません さらには兄弟姉妹間で 生前贈与の分どり合戦が繰り広がる恐れがあり 親の死後 相続財産でもめたのが 生前でもめるようになる危険があります 3 基礎控除 ( 毎年 110 万円 ) を放棄することになる従来の贈与税は受贈者 1 人 1 年間に 110 万円の基礎控除があります 相続時精算課税制度は 2,500 万円の特別控除がありますが 相続時には生前贈与分の財産は贈与時の時価で相続財産に合算されます しかし生前に受けた 2,500 万円の特別控除はなくなり 5,000 万円 + 1,000 万円 法定相続人数の相続税の基礎控除だけとなります ところが従来の贈与税を適用すると 相続発生前 3 年以内の贈与は別にして毎年 110 万円の基礎控除を有効に使い切ることになります 従来の贈与税のは 10%~50% の累進ですが 基礎控除後 200 万円までのは 10% です 例えば 310 万円を贈与すると 310 万円 -110 万円 =200 万円 200 万円 10%=20 万円となり 310 万円の贈与で 20 万円の贈与税となります 仮に子や孫あわせて年間 10 人に計 3,100 万円の贈与をすると 200 万円の贈与税になり それを 10 年間続けると 3 億 1,000 万円贈与して贈与税額は累計で 2,000 万円となります からすると 6% 強で済むことになり 相続時には合算されません つまり毎年 1 人 110 万円の基礎控除もバカにならないということです 4 新制度下の贈与財産は物納できない従来の贈与制度では 相続開始 3 年以内の贈与財産は相続財産に加算されますが 物納の申請は可能です また その贈与財産により取得した財産も物納対象となります しかし 相続時精算課税制度で生前贈与した財産は 贈与時の時価で相続財産に合算されますが 物納の対象とはなり得ません 16