船舶事故調査報告書 平成 26 年 9 月 4 日 運輸安全委員会 ( 海事専門部会 ) 議決 委 員 横山鐵男 ( 部会長 ) 委 員 庄司邦昭 委 員 根本美奈 事故種類発生日時発生場所事故調査の経過事実情報船種船名 総トン数船舶番号 船舶所有者等 L B D 船質機関 出力 進水等乗組員等に関

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おお航海士 Aは 22 時 00 分ごろ福岡県宗像市大島東方沖で船長から 船橋当直を引き継ぎ レーダー 1 台を 6 海里 (M) レンジとして 電 子海図表示装置及び GPS プロッターを 12M レンジとしてそれぞれ 作動させ 操舵スタンド後方に立って単独で操船に当たった 本船は 航海士 A が

船舶事故調査報告書 平成 30 年 12 月 19 日運輸安全委員会 ( 海事専門部会 ) 議決委員佐藤雄二 ( 部会長 ) 委員田村兼吉委員岡本満喜子 事故種類発生日時発生場所事故の概要事故調査の経過 衝突 平成 29 年 12 月 23 日 19 時 15 分ごろ 京浜港東京第 2 区 晴海信号

台風による外国船の 走錨衝突事故防止に向けて 平成 24 年 9 月 6 日 運輸安全委員会事務局横浜事務所

MI 船舶インシデント調査報告書 ( 地方事務所事案 ) 横浜事務所 1 引船第二十一管洋運航不能 ( 絡索 ) 2 漁船末廣丸運航不能 ( 機関損傷 ) 3 貨物船鹿児島エキスプレス運航不能 ( 機関損傷 ) 神戸事務所 4 貨物船東翔丸運航不能 ( 船体傾斜 ) 5 ヨット朝鳥運航

船舶事故調査報告書 平成 25 年 8 月 22 日 運輸安全委員会 ( 海事部会 ) 議決 委員長 後藤昇弘 委 員 横山鐵男 ( 部会長 ) 委 員 庄司邦昭 委 員 石川敏行 委 員 根本美奈 事故種類発生日時発生場所船舶事故の概要事故調査の経過事実情報船種船名船籍港総トン数 IMO 番号船舶

本船は 船長が1 人で船橋当直につき 主機を回転数毎分約 1,2 00( 出力約 20%) とし 約 5ノットの対地速力で 早岐港南東方沖を手動操舵により南南東進中 11 時 07 分ごろ主機が突然停止した 機関長は 温度計測の目的で機関室出入口の垂直はしごを降りていたところ ふだんと違う同室の音を

その他の事項 約 200 であり 船首の作業灯がついていて 船長が投錨する旨を指 示したので 機関室に移動して発電機を起動し いつでも主機を中立 運転にできるように準備した後 自室に戻った 航海士 A は 20 時 00 分ごろ本船が減速していることに気付いて 昇橋したところ 船長から船位が分からな

船尾部の便所 スパンカーマスト及び操舵室上部が脱落した 大浦丸は 左舷船首部 のハンドレールに曲損を 前部マストに折損を 船底部に破口及び擦過痕をそれぞれ 生じた < 原因 > 本事故は 洲埼北西方沖において 大浦丸が北進中 第五育丸が漂泊して釣り中 両船長が見張りを適切に行っていなかったため 両船

その他の事項 という ) を乗せ ウェイクボーダーをけん.. 引して遊走する目的で 平成 30 年 8 月 13 日 14 時 00 分ごろ土庄町室埼北東方にある砂浜 ( 以下 本件砂浜 という ) を出発した 船長は 自らが操船し 操縦者 同乗者 E の順にウェイクボードに 搭乗させ 本件砂浜北東

Japan Transport Safety Board 1 コンテナ船 ACX CRYSTAL ミサイル駆逐艦 USS FITZGERALD 衝突事故 運輸安全委員会令和元年 8 月

MA 船舶事故調査報告書 平成 23 年 9 月 30 日 運輸安全委員会

免許登録日平成 26 年 7 月 3 日免許証交付日平成 26 年 7 月 3 日 ( 平成 31 年 7 月 2 日まで有効 ) 釣り客 A 男性 54 歳釣り客 B 男性 51 歳釣り客 C 男性 74 歳死傷者等重傷 3 人 ( 釣り客 A 釣り客 B 及び釣り客 C) 損傷 なし 気象 海象

操舵室 船室 本件倉庫の通気口 本件倉庫 船尾側 写真 1 本船本船は 船長ほか甲板員 1 人が乗り組み コンベンション協会が企画する地域興し企画の目的で 参加者 11 人及び知人 1 人を乗せ 船体中央部にある船室の各窓を閉めてエアコンを運転し 18 時 40 分ごろ檮原川津賀ダム上流の北岸の係留

MA 船舶事故調査報告書 平成 24 年 4 月 27 日 運輸安全委員会 Japan Transport Safety Board

( 東京事案 ) 1 貨物船 MAY STAR 漁船明神丸衝突及び貨物船 MAY STAR 乗揚 2 旅客船 DANS PENTA 1 乗揚 3 釣船うしお丸転覆 4 貨物船第七住力丸漁船大業丸衝突 5 油送船第八豊栄丸乗組員死亡 ( 地方事務所事案 ) 函館事務所 6 漁船西山丸転覆 7 遊漁船第

資料 8 平成 28 年 7 月 25 日 海外のスマートフォンを用いた航海支援アプリについて 海上技術安全研究所 1. 概要現在 スマートフォンを用いたナビゲーション支援アプリは 自動車をはじめ 歩行者用 公共交通機関の乗り継ぎ案内等多くの交通機関を対象として様々な機能に対応している ここでは 海

裁決録

船舶プロダクト検討について 背景 船舶の情報はユーザーの注目が高く その情報は主に AIS( 後述 ) や衛星画像 ログ情報等から得られる そして海象 気象情報との連携や統計情報等の大量データから得られる情報等から新しい価値の創出も期待できる このことからコアサービスから提供するプロダクト検討の一環

同船は沈没した NIKKEI TIGER に死傷者はなく また 船体に大きな損傷はなかった < 原因 > 本事故は 夜間 金華山東方沖 930km 付近において NIKKEI TIGER が北東進中 堀栄丸が南南西進中 両船の進路が交差する態勢で接近する状況となった際 NIKKEI TIGER が左

平成 30 年度 網代浜海水浴場流況調査 報告書 平成 30 年 7 月調査 第九管区海上保安本部

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索 引 北 海 道 襟裳岬 5255(T) 5256(T) 本州北西岸 角島 5257(T)- 柴山港 282- 能登半島 5258(T)- 舳倉島 283- 能代港 5259(T) 本州東岸 八戸港 5260(T) 5261(T)- 相馬港 5262(T)- 塩屋埼 5263(T)- 小名浜港 5

船舶事故調査報告書 船種船名 LNG 船 PUTERI NILAM SATU IMO 番号 総トン数 94,446トン 船種船名 LPG 船 SAKURA HARMONY IMO 番号 総トン数 2,997トン 事故種類衝突発生日時平成 25 年 1 月 10 日 1

船舶事故調査報告書 船種船名コンテナ船 WAN HAI 162 I M O 番号 総トン数 13,246 トン 船種船名漁船第七盛南丸 漁船登録番号 OS 総トン数 9.7 トン 船種船名漁船第八盛南丸 漁船登録番号 OS 総トン数 9.7 トン 事故種類衝突

( 東京事案 ) 1 旅客船龍宮城乗組員死亡 2 プレジャーボートかいきょう丸プレジャーボートこくら丸衝突 3 遊漁船しぶさき10 号沈没 4 遊漁船はなぶさ釣り客負傷 5 モーターボートKaiser 衝突 ( 係船杭 ) 6 漁船若栄丸小型兼用船福寿丸衝突 7 遊漁船一福丸モーターボート可奈丸衝突

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平成 27 年度 新潟県たにはま海水浴場流況調査 報告書 平成 27 年 6 月調査 第九管区海上保安本部

目 次 はじめに 1 1 立入検査の状況 2 2 命令に係る事項 3 3 その他輸送の安全に重大な関係を有する事項 (1) 船舶事故等の発生状況 6 (2) 船種別事故等の発生状況 7 (3) 主な指導内容 9

( 東京事案 ) 1 貨物船 MAY STAR 漁船明神丸衝突及び貨物船 MAY STAR 乗揚 2 旅客船 DANS PENTA 1 乗揚 3 釣船うしお丸転覆 4 貨物船第七住力丸漁船大業丸衝突 5 油送船第八豊栄丸乗組員死亡 ( 地方事務所事案 ) 函館事務所 6 漁船西山丸転覆 7 遊漁船第

船舶事故等調査報告書 ( 軽微 ) 1 船舶事故計 96 件 2 船舶インシデント計 26 件 合計 122 件 平成 21 年 12 月 18 日 運輸安全委員会

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金沢地方気象台対象地域石川県 平成 30 年台風第 21 号に関する石川県気象速報 目 次 1 気象概況 2 気象の状況 3 気象官署と地域気象観測所の極値更新状況 4 特別警報 警報 注意報 気象情報等の発表状況 5 石川県の被害状況等 6 金沢地方気象台の対応状況等 平成 30 年 9 月 7

( 東京事案 ) 1 モーターボート建友爆発 2 貨物船 AQUAMARINE 漁船平新丸衝突 ( 地方事務所事案 ) 函館事務所 3 漁船第五十一萬漁丸火災 4 漁船第 18 勝丸火災 5 プレジャーボート第十八栄海丸乗揚 6 漁船第六十八廣洋丸衝突 ( 消波ブロック ) 7 漁船第五十五富丸衝突

既存の船舶に関する情報 1

( 東京事案 ) 1 交通船フレッシュありかわ乗揚 2 モーターボート涼乗船者負傷 3 貨物船新賢和丸貨物船第八昭和丸衝突 4 貨物船大航丸乗揚 5 漁船大康丸漁船宮島丸衝突 ( 地方事務所事案 ) 函館事務所 6 漁船第六十三潮丸乗組員死亡 7 貨物船阿州山丸火災 8 漁船第 18 太平丸乗組員死

平成 27 年共同研究の成果について ポイント 以下 1~3 については 平成 27 年 7 月 ~11 月の動向です 1 北極海航路を横断した船舶の航行数 北極海航路( ロシア側 ) を横断した船舶は24 航行 ( 前年は31 航行 ) 前年の航行数はノルウェーの研究機関 CHNLの分析結果 2

国土技術政策総合研究所 研究資料

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工事 海難防止のための五か条 一見張りは常時 適切に 目視のほか レーダーや AIS 等を使用霧などで視界不良時は 見張りを増員無理な回航は 居眠りの原因 一航法を守り 早目の避航 海上衝突予防法等に定められた航法や灯火等ルール遵守避航は 早めに かつ 大幅に 一最新の気象情報を入手 刻々と変化する

索 引 北 海 道 浦河港 22- 十勝港 5007(T)- 小樽港 5008(T) 本州北西岸 大社港 23- 能代港 24 本州東岸 鹿島港 20 本州南岸 潮岬 5009(T) 四 国 室戸岬 25- 高知港 5010(T) 瀬戸内海 和歌山下津港 26- 明石海峡 5011(T)- 三原瀬戸

公益財団法人海難審判 船舶事故調査協会 平成 23 年海審第 7 号 カーフェリーありあけ遭難事件 言渡年月日平成 25 年 6 月 20 日 審 判 所海難審判所 ( 小寺俊秋, 松浦数雄, 片山哲三 ) 理 事 官桒原和栄 受 審 人 A 職 名ありあけ船長 海技免許一級海技士 ( 航海 ) 補

ホームページ等のご案内 の情報提供 来島海峡航路を航行する船舶に対して 来島海峡航路に関する様々な情報 ( 巨大船の航路入航予定 潮流 気象現況 航路の航行制限 海難の状況など ) を 無線放送 インターネット ホームページ 一般電話を通じてリアルタイムに提供しています 来島海峡を安全に航行するため

( 東京事案 ) 1 旅客フェリー万葉船体傾斜 2 旅客船第三あんえい号旅客負傷 3 旅客船第三十八あんえい号旅客負傷 ( 地方事務所事案 ) 函館事務所 4 漁船第五十五漁信丸乗揚 5 漁船善宝丸乗組員死亡 6 漁船保栄丸衝突 ( 防波堤 ) 仙台事務所 7 漁船漁栄丸プレジャーボート第五カサイ丸

船舶事故等調査報告書 ( 軽微 ) 1 船舶事故計 96 件 2 船舶インシデント計 26 件 合計 122 件 平成 21 年 12 月 18 日 運輸安全委員会

( 東京事案 ) 1 コンテナ船 SONG CHENG 乗揚 2 漁船第八浦郷丸火災 ( 地方事務所事案 ) 函館事務所 3 漁船日正丸転覆仙台事務所 4 モーターボート三王丸転覆 5 モーターボートムスタング乗組員行方不明横浜事務所 6 モーターボート Ever Free Ⅱ 同乗者負傷 7 漁船

なお 本件に関してご不明な点は 以下の部署にお問い合わせください 一般財団法人日本海事協会 (ClassNK) 本部管理センター別館船体部 EEDI 部門 住所 : 東京都千代田区紀尾井町 3-3( 郵便番号 ) Tel.: Fax:

伏木富山港における大型クルーズ船受入機能強化等 基盤整備調査 調査成果報告書 別添 3 調査主体 富山県 対象地域 富山県高岡市 対象となる基盤整備分野 港湾. 調査の背景と目的伏木富山港は 平成 3 年 月に日本海側拠点港の 外航クルーズ ( 背後観光地クルーズ ) に選定されたほか その他の機能

平成4年第二審第14号

1 概要 (1) 資料作成の目的 3 月 1 日から 2 日にかけて 急速に発達した低気圧の影響により 静岡県では 暴風となった所があった この影響で 強風に伴う人的被害や住家の一部損壊などの被害が発生した このときの気象資料をとりまとめる目的で本資料を作成した 本資料は 3 月 2 日 22 時現

2 気象 地震 10 概 況 平 均 気 温 降 水 量 横浜地方気象台主要気象状況 横浜地方気象台月別降水量 日照時間変化図 平均気温 降水量分布図 平成 21 年 (2009 年 ) の月別累年順位更新表 ( 横浜 ) 23

別紙第 1 職員の給与 ( 海事職給料表の導入等 ) に関する報告 本委員会は 船舶に乗り組む職員 ( 以下 船舶乗組員 という ) の給与について 昨年 10 月 9 日の職員の給与に関する報告でも言及したとおり 勤務の特殊性から見直す必要があると考え 検討を重ねてきた その結果は 次のとおりであ

津波警報等の留意事項津波警報等の利用にあたっては 以下の点に留意する必要があります 沿岸に近い海域で大きな地震が発生した場合 津波警報等の発表が津波の襲来に間に合わない場合があります 沿岸部で大きな揺れを感じた場合は 津波警報等の発表を待たず 直ちに避難行動を起こす必要があります 津波警報等は 最新

< F2D A8E678BA692E88E9696B D2E6A7464>

( 東京事案 ) 1 ケミカルタンカー青鷹沈没 2 油タンカー PACIFIC POLARIS 衝突 ( 桟橋 ) 3 旅客船第十一天竜丸転覆 ( 地方事務所事案 ) 函館事務所 4 貨物船 SAKHISLAND 引船たていわ丸衝突 5 漁船第十五漁徳丸乗組員死亡 6 漁船第三恵丸乗組員死亡仙台事務

2 気象 地震 10 概 況 平 均 気 温 降 水 量 横浜地方気象台主要気象状況 横浜地方気象台月別降水量 日照時間変化図 平均気温 降水量分布図 横浜地方気象台月別累年順位更新表 横浜地方気象台冬日 夏日 真夏

側のCO₂ルーム バラストタンク等に浸水したため 右舷傾斜が生じて上甲板の右舷側が没水した状態になったことによりハッチカバー 出入口等から船体内部への浸水量が増加するとともに 風浪を受けて復原力を喪失して横転し 更に浸水量が増加して沈没したことにより発生したものと考えられる MING GUANGが波

6) その他 :1 月公表で追加 ( 本官 ) 政府調達協定対象 1-3 工 事 名 : 大阪港北港南地区航路 (-16m) 附帯施設護岸 (1) 基礎等工事 ( 第 2 工区 ) 2) 工事場所 : 大阪市此花区夢洲東地先 3) 工 期 : 約 9 ヶ月 4) 工事概要 : 基礎工 1 式 被覆工

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平成16年6月25日の大雨(気象速報)

港則法 海上交通安全法改正に伴う AIS の目的地入力について >JP FNB >JP TYO >JP CHB >JP KWS >JP ANE >JP YOK >JP KZU >JP YOS 第三管区海上保安本部

1 気象状況 (1) 概況 2 月 28 日から 3 月 1 日にかけて 低気圧が急速に発達しながら日本海を北東に進んだ このため 福井県内では 2 月 28 日夜から 3 月 1 日夜遅くかけて強風となり 最大風速は 福井で西南西 14.9m/s(1 日 08 時 12 分 ) 敦賀で北西 16.

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5 ii) 実燃費方式 (499GT 貨物船 749GT 貨物船 5000kl 積みタンカー以外の船舶 ) (a) 新造船 6 申請船の CO2 排出量 (EEDI 値から求めた CO2 排出量 ) と比較船 (1990~2010 年に建造され かつ 航路及び船の大きさが申請船と同等のものに限る )

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海の安全情報 1 海の安全情報 インターネットホームページ 仙崎海上保安部のホームページの中に 海の安全情報がリンクされ 気象 海象のほか 港の工事 海難などの海上交通に関 する様々な安全情報を提供しています

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( 東京事案 ) 1 ダイビング船スタイル乗船者死亡 2 油送船第十七永進丸ケミカルタンカー COSMO BUSAN 衝突 3 ケミカルタンカー錦陽丸引船かいりゅう台船 千 2 衝突 ( 地方事務所事案 ) 函館事務所 4 貨物船りゅうえい乗揚 5 漁船進正丸乗組員死亡 6 漁船第十八のぞみ丸転覆

台風経路図 9 月 5 日 09 時温帯低気圧に変わる 9 月 4 日 14 時頃兵庫県神戸市付近に上陸 9 月 4 日 12 時頃徳島県南部に上陸 8 月 28 日 09 時南鳥島近海で台風第 21 号発生 -2-

1. 船舶事故の概要報告書 1 ページ 旅客フェリーさんふらわあだいせつは 船長ほか22 人が乗り組み 旅客 71 人を乗せ 車両等 160 台を積載し 北海道苫小牧市苫小牧港に向けて茨城県大洗港を出港し 苫小牧港南方沖を北進中 平成 27 年 7 月 31 日 17 時 10 分ごろ第 2 甲板で

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関門海峡海上交通センター利用の手引き Ⅰ はじめに 1 Ⅱ 関門海峡海上交通センターの業務概要 1 Ⅲ 適用される主要航行ルール 2 Ⅳ 通信 5 1 通信チャンネル 2 通信言語 Ⅴ 航海計画及び船位通報 5 1 航路通報 2 位置通報 3 情報提供可能海域と船舶交通流の監視 Ⅵ VHF 無線電話

裁決録

国土技術政策総合研究所 研究資料

をガス専焼モードとして運転していたところ ガス燃料管のガスリークディテクタがガス濃度上昇の信号を発し LNGの蒸発ガスの燃焼が停止して主ボイラが失火したので 蒸気消費量を減少させようとして2 台のタービン発電機のうちの1 台の負荷をディーゼル発電機に移行させたが 1 台のタービン発電機の気中遮断器を


P&I 保険 とは 船舶の運航に不可欠 船舶の運航に伴って生じる船主の法律上 契約上の責任を対象とする 賠償責任保険 です 例えば 船舶の運航中に港湾 漁業施設などの船舶以外の財物に与えた損害 および 費用をてん補します 非営利での運営 船舶の運航に欠かせない P&I 保険は 非営利で運営される組合

平成22年度 マハゼ稚仔魚の生息環境調査

国土技術政策総合研究所 研究資料

3.5.2 海鷹丸の走錨限界について林敏史 萩田隆一 小池義夫 喜多澤彰 関屋千絵子東京海洋大学海洋科学部練習船 ( 東京都港区港南 4-5-7) Report on the limit of dredging anchor of UMITAKA-MARU Toshifumi HA

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海洋汚染の現状とその防止対策 海上保安庁警備救難部刑事課環境防災課 海上保安庁では 我が国の四方を取り巻く海を美しく保つため 未来に残そう青い海 をスローガンに 巡視船や航空機により我が国周辺海域における油 有害液体物質 廃棄物等による海洋汚染の監視取締りを実施するとともに 海上保安協力員等の民間ボ

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file://c: \homepage \103 \kaiho \103kaiho \sinkoukyo \menjyou.htm 1/6 ページ 2007/01/ 資料 3 号 ( 会報 97 号 2005 年 1 月の記事再掲 ) 内航貨物船乗組み制度の見直し( 資格制度 部門間兼務等 ) と商

風力発電インデックスの算出方法について 1. 風力発電インデックスについて風力発電インデックスは 気象庁 GPV(RSM) 1 局地気象モデル 2 (ANEMOS:LAWEPS-1 次領域モデル ) マスコンモデル 3 により 1km メッシュの地上高 70m における 24 時間の毎時風速を予測し

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宮城県災害時気象資料平成 30 年台風第 24 号による暴風と大雨 ( 平成 30 年 9 月 29 日 ~10 月 1 日 ) 平成 30 年 10 月 3 日仙台管区気象台 < 概況 > 9 月 21 日 21 時にマリアナ諸島で発生した台風第 24 号は 25 日 00 時にはフィリピンの東で

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本検討の位置づけ H27 親委員会 H27E2E H27E2E これまでの検討で不足している部分 1

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日向灘 佐伯市で震度 2 を観測 8 日 08 時 33 分に日向灘で発生した M3.9 の地震 ( 深さ 31km) により 佐伯市 愛媛県西予市 高知県宿毛市などで震度 2 を観測したほか 大分県 宮崎県 愛媛県および高知県で震度 1 を観測しました ( 図 1) 今回の地震の震源付近 ( 図

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船舶事故調査報告書 平成 26 年 9 月 4 日 運輸安全委員会 ( 海事専門部会 ) 議決 委 員 横山鐵男 ( 部会長 ) 委 員 庄司邦昭 委 員 根本美奈 事故種類発生日時発生場所事故調査の経過事実情報船種船名 総トン数船舶番号 船舶所有者等 L B D 船質機関 出力 進水等乗組員等に関する情報死傷者等損傷 乗揚 平成 25 年 12 月 10 日 04 時 10 分ごろ くしもとおお和歌山県串本町大島北方沖かしの串本町所在の樫野埼灯台から真方位 335 2.5 海里 (M) 付近 ( 概位北緯 33 30.6 東経 135 50.4 ) 平成 25 年 12 月 11 日 本事故の調査を担当する主管調査官 ( 神戸事務所 ) ほか1 人の地方事故調査官を指名した 原因関係者から意見聴取を行った ウースンホ A 引船 303 WOOSUN HO( 大韓民国籍 ) 318トン 7522863(IMO 番号 ) CHOYANG SHIPPING CO.,LTD 30.75m(Lr) 9.50m 4.46m 鋼ディーゼル機関 2,353kW 1976 年 1 月 1 日ウースンホ B 引船 301 WOOSUN HO( 大韓民国籍 ) 160トン 8824464(IMO 番号 ) CHOYANG SHIPPING CO.,LTD 27.79m(Lr) 9.00m 3.23m 鋼ディーゼル機関 2,501kW(1,177kW 1,324k W) 1989 年 1 月 17 日ケイエスシースーパー C 台船 K S C -SUPER70( 大韓民国籍 ) 4,750トンなし DONGAH GEOLOGICAL ENGINEERING CO., LTD 70.00m 30.00m 4.50m 鋼機関なし 1996 年 1 月 ( 建造 ) A 船長 A( 大韓民国籍 ) 男性 56 歳二級航海士 ( 大韓民国発給 ) 交付年月日 2011 年 8 月 17 日 (2016 年 8 月 16 日まで有効 ) B 船長 B( 大韓民国籍 ) 男性 60 歳三級航海士 ( 大韓民国発給 ) なし A なし B 全損 交付年月日 2012 年 11 月 9 日 (2017 年 11 月 8 日まで有効 ) - 1 -

C 全損事故の経過 B 船は 船長 B 航海士 Bほか3 人が乗り組み C 船に長さ約 30 0mのえい航索を取り A 船をC 船に左舷着けさせて支援する態勢とし B 船の船尾からC 船の船尾まで約 330mの引船列 ( 以下 B 船引船列 という ) として約 4~5ノット (kn) の速力 ( 対地速力 いずしおの以下同じ ) により 静岡県伊豆半島南方沖から和歌山県串本町潮岬南方沖に向けて直航するため 西南西進していた 船長 Bは 平成 25 年 12 月 9 日 13 時 00 分ごろ 大島東方沖で沿岸波浪 24 時間予想図を見て波が高くなることを知り 船長 Aと協議の上 串本町串本港東方沖に避泊することにし 針路を右に転じて北西進した 船長 Bは 14 時 40 分ごろ 大島北方の水深約 30m 底質砂の場所において C 船の後部に備えた重量約 8tの右舷ストックアンカーを投下し 錨に接続した直径 48mm の鋼製ワイヤロープを延ばして長さ約 250mとした後 B 船をC 船に右舷着けして機関を止めて錨泊を始めた 船長 Bは 航海士 Bと共に走錨の監視に当たり 停泊当直に就いていたところ 次第に波浪による上下動が大きくなり 10 日 03 時 2 0 分ごろ レーダーを見ていた航海士 Bが 約 2~3kn の速力で走錨していることを認めたので 航海士 B 及び機関長 BをC 船に移乗させ 重量約 8tの左舷ストックアンカーを投下させ ワイヤロープを約 150m 延ばさせた 船長 Bは 走錨が続いていることを知って乗揚の危険を感じ A 船及びB 船を全速力後進としたが 走錨を止めることができず 04 時 10 分ごろ 樫野埼灯台から真方位 335 2.5M 付近において C 船が浅所に乗り揚げた A 船は 係船索を切断して直ちにC 船から離脱したが B 船は 船底部に衝撃を感じて右舷機が停止し 係船索を放して左舷機のみで離脱したものの 圧流され 浅所に乗り揚げた 船長 Bは 04 時 40 分ごろ海上保安部に本事故の発生を通報し 07 時 50 分ごろ 機関室に浸水したことから 救助の要請を行い 海上保安庁のヘリコプターにB 船の乗組員全員が救助された ( 付図 1 B 船の航行経路図 付図 2 B 船引船列えい航状況 付図 3 B 船の航行経路図 ( 拡大 ) 付表 1 B 船のAIS 記録 ( 抜粋 ) 参照 ) 気象 海象 (1) 気象 1 B 船乗組員の観測値天気雨 風向南南東 風力 10 視程約 5M 2 気象観測値 a 本事故発生場所の西南西方約 10km に位置する潮岬地域 - 2 -

その他の事項 気象観測所の本事故当日の観測値は 次のとおりであった 時刻降水量 10 分間平均最大瞬間気温風速風速 ( 時 : 分 ) (mm) 風向風向 ( ) (m/s) (m/s) 03:20 0.5 南南東 10.8 南南東 19.5 16.8 03:30 0.0 南南東 10.8 南南東 17.4 16.9 03:40 0.0 南 10.9 南 20.5 16.8 03:50 0.5 南 11.1 南 24.0 16.8 04:00 0.5 南 10.6 南南東 20.0 17.0 04:10 2.5 南 13.1 南 22.5 16.3 b 気象警報 注意報の発表状況 名古屋地方気象台では 12 月 8 日 23 時 30 分に東海海域に海上風警報を 9 日 05 時 30 分に海上強風警報を 同日 11 時 45 分に次第に南の風が強まり 最大風速は40kn (20m/s) に達する見込みをそれぞれ発表し 本事故当時も継続していた (2) 海象 1 潮汐下げ潮の末期 2 B 船乗組員の観測波向南南東波高約 3~4m 3 全国港湾海洋波浪情報網 ( ナウファス ) による波浪観測値潮岬 ( 本事故発生場所の南西方約 11km) における本事故当日の波浪観測値 ( 波高 ) は 次のとおりであった 時刻平均波有義波 1/10 波最高波波向 ( 時 : 分 ) 波高 (m) 波高 (m) 波高 (m) 波高 (m) ( ) 12 月 10 日 03:20 2.37 3.56 4.43 5.97 184 03:40 2.29 3.76 4.93 7.02 196 04:00 2.37 3.90 4.94 6.75 192 有義波 とは ある地点で連続する波を観測したとき 波高の高い方から順に全体の1/3の個数の波を選び これらの波高及び周期を平均したものをいう 1/3 最大波ともいう C 船は 高さ約 60m 直径約 2m 1 本の重さ約 120t の杭打ち機 3 本などで総重量約 2,300tの土壌改良工事用の設備を備えており 風の影響が極めて大きい特殊な台船であった C 船は 国内の土木会社から 国内の仲介業者を経て大韓民国の土 木建設業者に売却され B 船引船列の運航会社が えい航作業を行っていた おまえざき B 船引船列は 静岡県御前崎市御前埼 潮岬 九州南方沖を経る約 950Mの航程を平均速力 4.5kn で航行し 約 9 日間の予定で大韓 - 3 -

分析乗組員等の関与船体 機関等の関与気象 海象の関与判明した事項の解析原因参考 プザン民国釜山港に向かっており B 船の喫水が 船首約 3.0m 船尾約 3.3m C 船の喫水が船首尾共に約 2.3mであった B 船は B 船引船列の運航会社が作成したえい航計画に基づき 1 1 月 27 日にB 船単独でC 船のえい航を開始したものの 浦賀水道航 路南口で強風のため えい航ができなくなり タグボート1 隻の支援を受けて千葉県千葉港に引き返し B 船引船列の運航会社がA 船を大韓民国から呼び寄せ B 船引船列を構成し 12 月 6 日に千葉港を出港した 船長 Bは これまでに建造中の船体ブロックを積載した台船を大韓 民国から瀬戸内海を経由して日本国内の造船所に幾度もえい航した経 験があったが C 船のような特殊な台船をえい航するのは初めてであった B 船引船列は えい航計画において 潮岬以東における避泊地として伊勢湾を選定していたが 潮岬南方沖に向けて西南西進中 荒天を 避ける際 船長 Bが これまでえい航した台船と同じように運航すればよいと思い 航程が長い伊勢湾には向かわず 最も近い大島北方沖に避泊することにした 船長 Bは 海図及び水路誌を保有していたものの 大島北方の避泊地の状況 風向による影響を事前に検討していなかった C 船の前船舶所有者及び仲介業者は B 船引船列の運航会社がこれ までにC 船のような特殊な台船をえい航した経験がなかったことから B 船引船列の運航会社に対し 次の事項を助言していた 1 荒天時の避泊が容易となるよう 陸岸に沿う針路とすること 2 C 船の航行が可能な限界は 風速 10m/s 波高 2mであること A 不明 B あり C なし A なし B なし C あり A あり B あり C あり B 船引船列は 荒天を避ける際 船長 Bが これまでえい航した台船と同じように運航すればよいと思い 大島北方沖に錨泊していたことから 風力 6の南風及び有義波高約 4mの波を南南東から受け 北方に圧流され B 船及びC 船が浅所に乗り揚げたものと考えられる 本事故は 夜間 B 船引船列が 荒天を避ける際 船長 Bが これ までえい航した台船と同じように運航すればよいと思い 大島北方沖に錨泊していたため 風力 6の南風及び有義波高約 4mの波を南南東から受け 北方に圧流され B 船及びC 船が浅所に乗り揚げたことにより発生したものと考えられる 今後の同種事故等の再発防止に役立つ事項として 次のことが考えられる - 4 -

風の影響が極めて大きい台船をえい航する際 以下の事項に留意する必要がある 1 天候の悪化が予想される場合には えい航計画で予定した避泊地に早期に入ること 2 えい航計画中の避泊地に容易に入ることができるよう 陸岸に沿う針路とすること 3 冬季における日本近海の気象状況を考慮し 気象情報を前広に確認すること 4 えい航経験が豊富な運航会社等の助言を十分に考慮してえい航作業を行うこと 付図 1 B 船の航行経路図 - 5 -

付図 2 B 船引船列えい航状況 付図 3 B 船の航行経路図 ( 拡大 ) 付表 1 B 船の AIS 記録 ( 抜粋 ) 時刻 北 緯 東 経 船首方位 対地針路 対地速力 ( 時 : 分 : 秒 ) ( - - ) ( - - ) ( ) ( ) (kn) 2013/12/9 13:00:10 33-28-13.7 135-57-43.3-253 5.6 14:00:51 33-29-46.7 135-51-29.5-286 3.0 14:41:52 33-29-27.3 135-50-44.0-237 0.2 2013/12/10 3:19:33 33-29-38.4 135-50-39.9-319 2.6 3:20:12 33-29-39.4 135-50-39.1-327 1.8 3:30:12 33-29-58.0 135-50-32.8-352 1.9 3:40:13 33-30-13.4 135-50-26.0-348 2.2 3:50:52 33-30-31.7 135-50-22.7-027 0.8 4:00:23 33-30-33.2 135-50-25.9-255 1.5 4:09:52 33-30-39.6 135-50-28.0-020 0.4-6 -