国土技術政策総合研究所 研究資料

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平成 29 年 12 月 1 日水管理 国土保全局 全国の中小河川の緊急点検の結果を踏まえ 中小河川緊急治水対策プロジェクト をとりまとめました ~ 全国の中小河川で透過型砂防堰堤の整備 河道の掘削 水位計の設置を進めます ~ 全国の中小河川の緊急点検により抽出した箇所において 林野庁とも連携し 中

砂防堰堤設計計算 透過型砂防堰堤

 


1. 湖内堆砂対策施設の見直し 1.2 ストックヤード施設計画 ストックヤードの平面配置は 既往模型実験結果による分派堰内の流速分布より 死水域となる左岸トラップ堰の上流に配置し 貯砂ダムから取水した洪水流を放流水路でストックヤード内に導水する方式とした ストックヤード底面標高は 土木研究所の実験結

砂防事業設計要領 平成 29 年 4 月 岐阜県県土整備部砂防課

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砂防えん堤設計計算

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平成 29 年 7 月九州北部豪雨における流木被害 137 今回の九州北部における豪雨は 線状降水帯 と呼ばれる積乱雲の集合体が長時間にわたって狭い範囲に停滞したことによるものである この線状降水帯による記録的な大雨によって 図 1 に示す筑後川の支流河川の山間部の各所で斜面崩壊や土石流が発生し 大

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【参考資料】中小河川に関する河道計画の技術基準について

近畿地方整備局 資料配付 配布日時 平成 23 年 9 月 8 日 17 時 30 分 件名土砂災害防止法に基づく土砂災害緊急情報について 概 要 土砂災害防止法に基づく 土砂災害緊急情報をお知らせします 本日 夕方から雨が予想されており 今後の降雨の状況により 河道閉塞部分での越流が始まり 土石流

図-2 土砂移動発生箇所 国土地理院の判読結果 4による 図-3 傾斜区分と土砂移動発生箇所 国土地理院の判読結果 4に よる の関係 根谷川 AMeDAS三入観測点 太田川 可部東地区 広島市安佐北区 八木地区 緑井地区 広島市安佐南区 地質区分 産業技術総合研究所シームレス地質図より関 図-4

表 を基本として 渓床勾配の区分に応じて 流木災害対策を中心とする配置計画の目安を示したものが図 である 治山事業においては 発生区域から堆積区域に至るまで 多様な渓流生態系の保全に留意しながら 森林整備と治山施設整備を可能な限り一体として実施していくよう留意する 図 6.1

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4. 堆砂

溶結凝灰岩を含む火砕流堆積物からなっている 特にカルデラ内壁の西側では 地震による強い震動により 大規模な斜面崩壊 ( 阿蘇大橋地区 ) や中 ~ 小規模の斜面崩壊 ( 南阿蘇村立野地区 阿蘇市三久保地区など ) が多数発生している これらの崩壊土砂は崩壊地内および下部に堆積しており 一部は地震時に

Q3 現在の川幅で 源泉に影響を与えないように河床を掘削し さらに堤防を幅の小さいパラペット ( 胸壁 ) で嵩上げするなどの河道改修を行えないのですか? A3 河床掘削やパラペット ( 胸壁 ) による堤防嵩上げは技術的 制度的に困難です [ 河床掘削について ] 県では 温泉旅館の廃業補償を行っ

7 章問題解答 7-1 予習 1. 長方形断面であるため, 断面積 A と潤辺 S は, 水深 h, 水路幅 B を用い以下で表される A = Bh, S = B + 2h 径深 R の算定式に代入すると以下のようになる A Bh h R = = = S B + 2 h 1+ 2( h B) 分母の

道路橋の耐震設計における鉄筋コンクリート橋脚の水平力 - 水平変位関係の計算例 (H24 版対応 ) ( 社 ) 日本道路協会 橋梁委員会 耐震設計小委員会 平成 24 年 5 月

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資料 -5 第 5 回岩木川魚がすみやすい川づくり検討委員会現地説明資料 平成 28 年 12 月 2 日 東北地方整備局青森河川国道事務所

2.2 既存文献調査に基づく流木災害の特性 調査方法流木災害の被災地に関する現地調査報告や 流木災害の発生事象に関する研究成果を収集し 発生源の自然条件 ( 地質 地況 林況等 ) 崩壊面積等を整理するとともに それらと流木災害の被害状況との関係を分析した 事例数 :1965 年 ~20

(6) 災害原因荒廃渓流の源頭部にある0 次谷の崩壊は 尾根付近から発生している 尾根部は山腹斜面に比べ傾斜が緩やかであるが 記録的な集中豪雨 (24 時間雨量 312.5mm( 平成 30 年 7 月 6 日 6 時 ~ 平成 30 年 7 月 7 日 6 時まで ) 累積雨量 519.5mm(

目次 1. はじめに. 十勝川流域の特徴 -1 十勝川流域の気象 河川の特徴 1 流域の気象の特徴 十勝川の特徴 - 地形的な特徴 - 地質的な特徴. 平成 年 月出水の概要 -1 豪雨の概要 - 被害の概要 1 出水による被害状況 砂防設備の被害状況 - 砂防設備の

第 5 章ソフト事業関係関係 指定地 指定地ほかほか 災害情報の収集 提供及び提供及び維持管理 第 1 節ソフト事業関係 1. 砂防基礎調査と土砂災害警戒区域等の指定 砂防事業においては 堰堤の計画または砂防全体計画の作成時に施設効果を見込んで特別警戒区域の見直しを行い 工事完了後所定の手続きを経て

土木学会論文集 F6( 安全問題 ),Vol. 72, No. 2, I_139-I_144, 年 7 月に長野県南木曽町で発生した 土石流の解析的検討 山本遼哉 1 豊田政史 2 1 学生会員信州大学大学院総合理工学研究科修士課程 ( 長野県長野市若里 4-

平成29年7月九州北部豪雨の概要 7月5日から6日にかけて 停滞した梅雨前線に暖かく 湿った空気が流れ込んだ影響等により 線状降水帯 が形成 維持され 同じ場所に猛烈な雨を継続して 降らせたことから 九州北部地方で記録的な大雨と なった 朝倉では 降り始めから10数時間のうちに500ミリを 超える豪

水理学Ⅱ及び同演習

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土砂災害対策の強化に向けて 提言 平成 26 年 7 月 土砂災害対策の強化に向けた検討会

iric を用いた土石流解析 エンジニアリング本部防災 環境解析部水圏解析グループ田中春樹 1. はじめに降雨による斜面崩壊には 大きく分けて深層崩壊と表層崩壊の二種類ある 深層崩壊とは長期間の降雨により土壌中に雨水が蓄積し 基盤上までの土層が崩壊する現象である 一方 表層崩壊とは降雨強度が大きい場

第 7 章砂防 第 1 節 砂防の概要 秋田県は 北に白神山地の二ツ森や藤里駒ヶ岳 東に奥羽山脈の八幡平や秋田駒ヶ岳 南に鳥海山など 1,000~2,000m 級の山々に三方を囲まれています これらを水源とする米代川 雄物川 子吉川などの上流域は 荒廃地が多く 土砂の発生源となっています また 本県

~ 二次的な被害を防止する ~ 第 6 節 1 図 御嶽山における降灰後の土石流に関するシミュレーション計算結果 平成 26 年 9 月の御嶽山噴火後 土砂災害防止法に基づく緊急調査が国土交通省により実施され 降灰後の土石流に関するシミュレーション結果が公表された これにより関係市町村は

3. 市街化調整区域における土地利用の調整に関し必要な事項 区域毎の面積 ( 単位 : m2 ) 区域名 市街化区域 市街化調整区域 合計 ( 別紙 ) 用途区分別面積は 市町村の農業振興地域整備計画で定められている用途区分別の面積を記入すること 土地利用調整区域毎に市街化区域と市街化調整区域それぞ

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2 図微小要素の流体の流入出 方向の断面の流体の流入出の収支断面 Ⅰ から微小要素に流入出する流体の流量 Q 断面 Ⅰ は 以下のように定式化できる Q 断面 Ⅰ 流量 密度 流速 断面 Ⅰ の面積 微小要素の断面 Ⅰ から だけ移動した断面 Ⅱ を流入出する流体の流量 Q 断面 Ⅱ は以下のように

第 7 章砂防第 1 節砂防の概要 秋田県は 北に白神山地の二ツ森や藤里駒ケ岳 東に奥羽山脈の八幡平や秋田駒ヶ岳 南に鳥海山など 1,000~2,000m 級の山々に三方を囲まれています これらを水源とする米代川 雄物川 子吉川などの上流域は 荒廃地が多く 土砂の発生源となっています また 本県の地

( 対象区域 ) 第 5 地区計画の対象区域は 工業団地 ( 国母工業団地 南部工業団地 機械金属工業団地 ファッション工業団地 ( アリア ディ フィレンツェ ) をいう 以下同じ ) の区域内及び隣接地又は近接地 ( おおむね工業団地から500メートル以内 ) とする ( 区域の設定 ) 第 6

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微分方程式による現象記述と解きかた

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土砂災害 とは? 土砂の移動 が人命や資産 公共施設など 人間社会 に 被害 を及ぼす事象 土石流 山腹や渓床を構成する土砂石礫の一部が長雨や集中豪雨などによって水と一体となり 一気に下流へ押し流される現象 20~40km/h という速度で一瞬のうちに人家や畑などを壊滅させてしまう 地すべり 斜面の

大阪市再開発地区計画にかかる

利水補給

1. 市街化調整区域における地区計画ガイドライン策定の目的市街化調整区域は 市街化を抑制すべき区域であるとともに 豊かな自然環境を育成 保全すべき区域である そのため 都市計画法において開発行為や建築行為が厳しく制限されている 本市都市計画マスタープランにおいても 将来都市構造の基本的な考え方の一つ

立体切断⑹-2回切り

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2011年度 東京工大・数学

国土技術政策総合研究所 研究資料

の洪水調節計画は 河川整備基本方針レベルの洪水から決められており ダムによる洪水調節効果を発揮する 遊水地案 は 遊水地の洪水調節計画は大戸川の河川整備計画レベルの洪水から決めることを想定しており 遊水地による洪水調節効果が完全には発揮されないことがある 瀬田川新堰案 は 瀬田川新堰の洪水調節計画は

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他機関より収集するものとする また 自然公園法等による法的規制についても調べるものとする (3) 現地調査 1) 現地調査計画策定受注者は 事前調査の成果を踏まえ 設計図書に示された調査区域に対して 調査計画を検討 策定するものとする 2) 現地調査受注者は 現地調査計画に基づき調査地に赴き 調査を

2. 急流河川の現状と課題 2.1 急流河川の特徴 急流河川では 洪水時の流れが速く 転石や土砂を多く含んだ洪水流の強大なエネルギー により 平均年最大流量程度の中小洪水でも 河岸侵食や護岸の被災が生じる また 澪筋 の変化が激しく流路が固定していないため どの地点においても被災を受ける恐れがある

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平成 29 年 7 月 20 日滝川タイムライン検討会気象台資料 気象庁札幌管区気象台 Sapporo Regional Headquarters Japan Meteorological Agency 大雨警報 ( 浸水害 ) 洪水警報の基準改正 表面雨量指数の活用による大雨警報 ( 浸水害 )

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PowerPoint プレゼンテーション

宅地造成費の金額表

土砂災害対策の3 本柱 1 1. 施設整備に関する取組み ハード整備の重点化 2 施設の効果 3,4 火山噴火に対応した施設整備 5 火山噴火に対する緊急対応 6 2. ソフト対策に関する取組み 的確な避難勧告の発令 7 土砂災害に関する認識の向上に係わる取組み 8 ソフト対策の事例 9 3. 流砂

日野川流域の土砂動態

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NMM-DDAによる弾塑性解析 およびその適用に関する研究

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本文/扉1

プログラム


平成20年5月 協会創立50年の歩み 海の安全と環境保全を目指して 友國八郎 海上保安庁 長官 岩崎貞二 日本船主協会 会長 前川弘幸 JF全国漁業協同組合連合会 代表理事会長 服部郁弘 日本船長協会 会長 森本靖之 日本船舶機関士協会 会長 大内博文 航海訓練所 練習船船長 竹本孝弘 第二管区海上保安本部長 梅田宜弘

Program

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日本内科学会雑誌第96巻第11号

座標軸以外の直線のまわりの回転体の体積 ( バウムクーヘン分割公式 ) の問題の解答 立体の体積の求め方 図 1 の立体の体積 V を求める方法を考えてみる 図 1 図 1 のように 軸の から までの長さを 等分する そして とおく とすると となる 図 1 のように のときの 軸に垂直な平面 に

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目 次 桂川本川 桂川 ( 上 ) 雑水川 七谷川 犬飼川 法貴谷川 千々川 東所川 園部川 天神川 陣田川

速度規制の目的と現状 警察庁交通局 1

重ねるハザードマップ 大雨が降ったときに危険な場所を知る 浸水のおそれがある場所 土砂災害の危険がある場所 通行止めになるおそれがある道路 が 1 つの地図上で 分かります 土石流による道路寸断のイメージ 事前通行規制区間のイメージ 道路冠水想定箇所のイメージ 浸水のイメージ 洪水時に浸水のおそれが

学識経験者による評価の反映客観性を確保するために 学識経験者から学術的な観点からの評価をいただき これを反映する 評価は 中立性を確保するために日本学術会議に依頼した 詳細は別紙 -2 のとおり : 現時点の検証の進め方であり 検証作業が進む中で変更することがあり得る - 2 -

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部分供給については 例えば 以下の3パターンが考えられる ( 別紙 1 参照 ) パターン1: 区域において一般電気事業者であった小売電気事業者 ( 又は他の小売電気事業者 ) が一定量のベース供給を行い 他の小売電気事業者 ( 又は区域において一般電気事業者であった小売電気事業者 ) がを行う供給

i-Construction型工事の概要 (素案)

Transcription:

第 3 節土石流 流木処理計画 土石流 流木処理計画は 計画基準点等において 計画規模の土石流 および土 砂とともに流出する流木等を合理的かつ効果的に処理するよう土石流危険渓流ごと に策定するものである 解説土石流 流木処理計画は 計画で扱う土砂量を 砂防設備等 ( 以後 土石流 流木対策施設と呼ぶ ) による計画捕捉量 ( 計画捕捉土砂量 計画捕捉流木量 ) 計画堆積量 ( 計画堆積土砂量 計画堆積流木量 ) 計画発生( 流出 ) 抑制量 ( 計画土石流発生 ( 流出 ) 抑制量 計画流木発生抑制量 ) によって処理する計画である なお 河川砂防技術基準計画編施設配置等計画編における用語と本指針における用語の対比を表 -4に示す 表 -4 河川砂防技術基準計画編施設配置等計画編と本指針の用語の対比 本指針 - 土石流 流木処理計画 河川砂防技術基準計画編施設配置等計画編 土砂生産抑制計画 土砂流送制御計画 - 流木対策計画 : 土石流 流木処理計画に含まれる : 土砂生産抑制計画 土砂流送制御計画に含まれる 38

3.1 土石流 流木処理計画の策定の基本 土石流 流木処理計画の策定にあたっては計画で扱う土砂 流木量等 土砂移動の形態 地形 保全対象等を考慮して 土石流および土砂とともに流出する流木等を合理的かつ効果的に処理するよう土石流 流木対策施設を配置する なお 本指針 2.5.2.1 において 下流に災害等の問題を生じさせない土砂量で 土石流導流工により流下させることができる土砂量を計画流下許容土砂量とした場合は流出土砂の粒径等を十分考慮し 土石流導流工内の堆積によって氾濫等が生じないようにしなければならない 解説 土石流 流木処理計画は 本指針 4.3.1.1 を参考に 計画規模の土石流 および土 砂とともに流出する流木等の計画流出量 (V ) 計画流下許容量 (W ) 土石流 流木 対策施設の計画捕捉量 ( X ) 計画堆積量 (Y ) 計画発生 ( 流出 ) 抑制量 ( Z ) との 間に 式 (24) を満足するように策定する なお 式 (24) は 河川砂防技術基 準計画編に示されている考え方に準じて 土石流 流木対策として新しく作成したも のである V W X Y Z 0 (24) なお VW,, XYZ,, は次式によりそれぞれ算出する V V V (25) d d W W W (26) d X X X (27) d Y Y Y (28) Z Z Z (29) d ここで V d : 計画流出土砂量 (m 3 ) V : 計画流出流木量 (m 3 ) W d : 計画流下許 容土砂量 (m 3 ) W : 計画流下許容流木量 (m 3 ) X : 計画捕捉土砂量 (m 3 ) X : 計 画捕捉流木量 (m 3 ) Y d : 計画堆積土砂量 (m 3 ) Y : 計画堆積流木量 (m 3 ) 画土石流発生 ( 流出 ) 抑制量 (m 3 ) Z : 計画流木発生抑制量 (m 3 ) である d Z : 計 d 39

3.2 計画捕捉量 計画捕捉量は 土石流 流木対策施設により 計画規模の土石流 および土砂と ともに流出する流木等を捕捉させる量である 計画捕捉量は計画捕捉土砂量と計画捕 捉流木量の和とする 解説透過型砂防堰堤においては 現渓床勾配の平面と計画堆砂勾配の平面とで囲まれた空間 ( 図 -13に示す網掛けの空間) とする 不透過型 部分透過型砂防堰堤においては 平常時堆砂勾配の平面と計画堆砂勾配の平面とで囲まれた空間 ( 図 -13に示す網掛けの空間 ) とする 計画堆砂勾配は 一般に既往実績等により 土石流 流木対策施設を配置する地点の現渓床勾配の 1/2 から 2/3 倍とする ただし 計画規模の土石流 および土砂とともに流出する流木が 流下区間の勾配の下限値である 1/6 の勾配より急な勾配では堆積しないと考えられるため 計画堆砂勾配は 1/6 の勾配 ( tan ) を上限とする 平常時堆砂勾配は 既往実績を基に現渓床勾配の 1/2 を上限とする また 地質条件 ( 例えば マサ土やシラス等 ) により計画堆砂勾配及び平常時堆砂勾配が緩勾配になることが知られている場合は既往実績によって地域別に決定する 土石流により一時的に急勾配で堆積した土砂は その後の流水の状況によっては 長期間でも必ずしも再侵食されないことを踏まえ 計画捕捉量は 図 -13に示す容量を除石 ( 流木の除去を含む ) により確保しなければならない なお 除石の考え方については本指針第 5 節を参照されたい 計画捕捉量の考え方は 図 -13に示す通りである 40

透過型の場合 計画捕捉量 計画堆砂勾配 (θp) 現渓床勾配 (θo) 部分透過型の場合 計画堆砂勾配 (θp) 計画捕捉量 平常時堆砂勾配 (θn) 現渓床勾配 (θo) 常時土砂が堆積する空間 不透過型の場合 計画捕捉量 計画堆砂勾配 (θp) 平常時堆砂勾配 (θn) 現渓床勾配 (θo) 図 -13 計画捕捉量の考え方 41

3.2.1 計画捕捉土砂量 計画捕捉土砂量は 計画規模の土石流 および土砂とともに流出する流木等のう ち 土石流 流木対策施設により捕捉させる土砂量である 解説計画捕捉土砂量は 透過型砂防堰堤では現渓床勾配の平面と計画堆砂勾配の平面とで囲まれた空間 不透過型及び部分透過型砂防堰堤では平常時堆砂勾配の平面と計画堆砂勾配の平面とで囲まれた空間のうち 除石によって確保される空間 ( 図 -13に示す網掛けの空間 ) で捕捉させる土砂量である 42

3.2.2 計画捕捉流木量 計画捕捉流木量は 計画規模の土石流 および土砂とともに流出する流木等のう ち 土石流 流木対策施設により捕捉させる流木量である 解説 (1) 透過型及び部分透過型砂防堰堤の計画捕捉流木量 透過型及び部分透過型砂防堰堤の計画捕捉流木量は 式 (30) により算出する 透過型及び部分透過型砂防堰堤の計画捕捉流木量 X K X (30) 1 1 ここで X : 土石流 流木対策施設の計画捕捉量 (m 3 ) X 1 : 本堰堤の計画捕捉流木 量 (m 3 ) K 1 : 計画捕捉量に対する流木容積率 ( 計画捕捉量に占める計画流木捕捉量 の割合 ) である 透過型及び部分透過型砂防堰堤の K 1 は 本堰堤に流入が想定される計画流出量に 対する流木容積率 ( K 0 ) とする ( K 0 については本項 (2) を参照 ) これは 透過型 及び部分透過型砂防堰堤の場合 土石流中の土石または流木を選択的に捕捉すること なく 同時に捕捉すると考えられるためである 部分透過型砂防堰堤の透過部の高さが低い場合 不透過部では生じた湛水により流 木を捕捉できない可能性がある このため 透過部の計画捕捉流木量と不透過部の計 画堆積流木量の合計が計画捕捉量を上回る場合 部分透過型砂防堰堤が流木を捕捉 堆積させる量は透過部の捕捉量に相当する値を上限とする 図 -14 透過型砂防堰堤の流木容積率 43

(2) 不透過型砂防堰堤の計画捕捉流木量不透過型砂防堰堤の計画捕捉流木量は 式 (31-1) と式 (31-2) から求められる値のうち 小さい方の値とする 式 (31-1) は本堰堤の計画地点に流入が想定される計画流出量に占める計画流出流木量の割合から 式 (31-2) は本堰堤の計画捕捉量に占める計画捕捉流木量の割合から計画捕捉流木量を求める方法である 不透過型砂防堰堤の計画捕捉流木量 X 1 K 0 X 1 (31-1) X 1 K 1 X (31-2) ここで X : 土石流 流木対策施設の計画捕捉量 (m 3 ) X 1 : 本堰堤の計画捕捉流 木量 (m 3 ) K 0 : 本堰堤に流入が想定される計画流出量に対する流木容積率 α: 本 堰堤からの流木の流出率 (0.5 程度 ) K 1 : 計画捕捉量に対する流木容積率である ( 対 象渓流において捕捉事例がない場合は K 1 =2% としてよい ) なお K 0 は 本堰 堤の計画地点より上流の砂防堰堤等によって土砂 流木の発生抑制や捕捉等が見込ま れる場合は その量を差し引いて求めるものとする 不透過型砂防堰堤からの流木の流出について 一定の条件のもとでの実験 18 ) では 土石流の先頭部に集中して流下してきた流木が全体の半分程度 不透過型砂防堰堤か ら流出する傾向があると報告されており参考となる なお 流木の流出は 土石流の 流下形態 砂防堰堤周辺の渓床勾配 堆砂地の形状など多くの要因に関係する複雑な 現象であることから メカニズムの解明には さらなる流木の流出実態に関するデー タの蓄積が必要である 44

両者のうち小さい方を計画捕捉流木量 (X1 ) とする 計画堆積流木量 (Y1 ) についても同様に算出する 1 2 計画捕捉量 (X ) に土石流の流木容積率 (K0 ) をかけた量の半分 K0 X (1-α) ( 流木流出率 α=0.5) 計画捕捉量 (X ) の2% 分 K1 X (K1 =2%) 土石流の流木容積率 が低いため 1 の方法で算出される場合 (K0 <4%) 計画捕捉流木量 (X1 ): 0.5 K0X 計画堆積流木量 (Y1 ):0.5 K0Y 一部の流木が流出 土石流の流木容積率 (K0 ) 計画捕捉量 (X ) 計画堆積量 (Y ) 土石流の流木容積率 が高いため2の方法で算出される場合 (K0 4%) 計画捕捉流木量 (X1 ): 0.02X 計画堆積流木量 (Y1 ):0.02Y 一部の流木が流出 土石流の流木容積率 (K0 ) 計画捕捉量 (X ) 計画堆積量 (Y ) 流木を全て捕捉し 下流への流出を防ぐには透過構造を有する施設が必要となる 土石流の流木容積率 (K0 ): 本堰堤に流入が想定される計画流出量に対する流木容積率 K0 =V/V 図 - 15 不透過型砂防堰堤の計画捕捉流木量のイメージ ( 砂防堰堤 1 基の計画 の例 ) なお 土石流 流木対策施設の計画地点に流入する計画流出流木量から計画捕捉流木量 計画堆積流木量 計画流木発生抑制量の和を差し引いた値が0 以下となった場合 当該土石流 流木対策施設の計画捕捉流木量は 0 とする また 土石流 流木対策施設の計画地点に流入する計画流出流木量から計画捕捉流木量 計画堆積流木量 計画流木発生抑制量の和を差し引いた値が0 以上の場合 当該土石流 流木対策施設は計画流木発生抑制量 計画堆積流木量 計画捕捉流木量の順で計上する 45

流木処理計画は 本堰堤で捕捉することを原則とするが 地形条件等の制限から 副堰堤等に流木止めを設置する場合は 式 (32) により計画捕捉流木量を算出する 副堰堤の計画捕捉流木量 ( 副堰堤等に流木止めを設置する場合に限る ) X 2 A Ra (32)( 参考を参照 ) ここで X X X (33) 1 2 X 2 : 副堰堤の計画捕捉流木量 (m 3 ) とする ~~( 参考 ) 掃流区間の計画捕捉流木量 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 掃流区間に設ける流木捕捉工の場合 流木については堆積状況が多様であるため 流木止めにより捕捉される流木の量は 計画上は流木が ( 一層で ) 全てを覆いつくす ものとして算出する 一方 捕捉される流木の投影面積は 流木の平均長さ ( L a ) 流木の平均直径 ( R a ) の合計により算出される これらより 計画捕捉流木量を捕捉するために必要な流木止め上流の堆砂地または 湛水池の面積 ( A ) は 次式により推定する (34) A L R a a このとき 堆砂地または湛水池に堆積する流木実立積 ( V c ) は下記の式である た だし V c Vc A R a は流木実立積のことで 実 は空隙を含まない流木のみの体積を意味する (35) 掃流区域においては流木は土砂と分離して流水の表面を流下すると考えられるの で 不透過型砂防堰堤の流木捕捉効果は無いものとする ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 46

3.3 計画堆積量 計画堆積量は 土石流 流木対策施設により 計画規模の土石流 および土砂とともに流出する流木等を堆積させる量である 計画堆積量は計画堆積土砂量と計画堆積流木量の和とする 計画堆積量は 除石計画に基づいた除石により確保される空間である 解説計画堆積量は 土石流 流木対策施設によって異なる 不透過型 部分透過型砂防堰堤においては 現渓床勾配の平面と平常時堆砂勾配の平面との間で囲まれる空間のうち 除石により確保される空間 ( 図 -16に示す灰色部の空間) とする 土石流堆積工においては 本指針 4.3.4 を参照のこと 計画堆積量は 平常時の流水により堆積が進むことがあるため 土石流 流木処理計画において必要とする容量を除石 ( 流木の除去を含む ) 等により確保しなければならない なお 除石の考え方については本指針第 5 節を参照されたい 不透過型 部分透過型砂防堰堤における計画堆積量の考え方は 図 -16に示す通りである 47

部分透過型の場合 常時土砂が堆積する空間の最上面 ( 除石により これ以上堆砂が進行しない面 ) 計画堆積量 計画堆砂勾配 (θp) 平常時堆砂勾配 (θn) 現渓床勾配 (θo) 常時土砂が堆積する空間 不透過型の場合 常時土砂が堆積する空間の最上面 ( 除石により これ以上堆砂が進行しない面 ) 計画堆積量 計画堆砂勾配 (θp) 平常時堆砂勾配 (θn) 現渓床勾配 (θo) 常時土砂が堆積する空間 図 -16 計画堆積量の考え方 48

3.3.1 計画堆積土砂量 計画堆積土砂量は 計画規模の土石流 および土砂とともに流出する流木等のう ち 土石流 流木対策施設により堆積させる土砂量である 解説計画堆積土砂量は 現渓床勾配の平面と平常時堆砂勾配の平面との間で囲まれる空間のうち 除石によって確保される空間 ( 図 -16に示す灰色部の空間) で堆積させる土砂量である 49

3.3.2 計画堆積流木量 計画堆積流木量は 計画規模の土石流 および土砂とともに流出する流木等のう ち 土石流 流木対策施設により堆積させる流木量である 解説計画堆積流木量を求める方法は 基本的には 3.2.2 の計画捕捉流木量を求める方法と同一である 具体的には以下のとおりとする (1) 部分透過型砂防堰堤の計画堆積流木量部分透過型砂防堰堤の計画堆積流木量は式 (36) により算出する 部分透過型砂防堰堤の計画堆積流木量 Y 1 K 1 Y (36) ここで Y : 土石流 流木対策施設の計画堆積量 (m 3 ) Y 1 : 本堰堤の計画堆積流木 量 (m 3 ) K 1 : 計画堆積量に対する流木容積率である K 1 の値については 3.2.2 の計画捕捉流木量に準じるものとする (2) 不透過型砂防堰堤の計画堆積流木量 不透過型砂防堰堤の計画堆積流木量は 3.2.2 の計画捕捉流木量と同様に式 (37-1) と式 (37-2) から求められる計画堆積流木量のうち 小さい方の値とする 不透過型砂防堰堤の計画堆積流木量 Y 1 K0 Y 1 (37-1) Y 1 K 1 Y (37-2) ここで Y : 土石流 流木対策施設の計画堆積量 (m 3 ) Y 1 : 本堰堤の計画堆積流木 量 (m 3 ) : 本堰堤からの流木の流出率 K 0 : 本堰堤で流入が想定される計画流出 量に対する流木容積率 K 1 : 計画堆積量に対する流木容積率である と K 1 の値 については 3.2.2 の計画捕捉流木量に準じるものとする 50

なお 土石流 流木対策施設の計画に流入する計画流出流木量から計画捕捉流木量 計画堆積流木量 計画流木発生抑制量の和を差し引いた値が0 以下となった場合 当該土石流 流木対策施設の計画堆積流木量は 0 とする また 土石流 流木対策施設の計画地点に流入する計画流出流木量から計画捕捉流木量 計画堆積流木量 計画流木発生抑制量の和を差し引いた値が0 以上の場合 当該土石流 流木対策施設は計画流木発生抑制量 計画堆積流木量 計画捕捉流木量の順で計上する 51

3.4 計画発生 ( 流出 ) 抑制量 計画発生 ( 流出 ) 抑制量は 土石流 流木対策施設により 計画規模の土石流およ び土砂とともに流出する流木等の流出量を減少させる量である 計画発生 ( 流出 ) 抑 制量は計画土石流発生 ( 流出 ) 抑制量と計画流木発生抑制量の和とする 解説計画発生 ( 流出 ) 抑制量は計画流出量 ( 計画流出土砂量 計画流出流木量 ) を評価している区間に存在する移動可能渓床堆積土砂量 崩壊可能土砂量 流出流木量を対象とする 52

3.4.1 計画土石流発生 ( 流出 ) 抑制量 計画土石流発生 ( 流出 ) 抑制量は土石流 流木対策施設により 計画規模の土石 流 の流出量を減少させる土砂量である 解説計画土石流発生 ( 流出 ) 抑制量は計画堆砂勾配の平面と現渓床が交わる地点から堰堤までの区間 ( 図 - 17に示す斜線部 ) 移動可能渓床堆積土砂が存在する場合に計上する 土石流抑制工の場合 計画土石流発生計画発生 ( 流出 ) 抑制量 図 - 17(1) 計画土石流発生 ( 流出 ) 抑制量の考え方 53

土石流 流木捕捉工の場合 透過型の場合 計画土石流発生 ( 流出 ) 抑制量 計画堆砂勾配 (θp) 現渓床勾配 (θo) 部分透過型の場合 計画堆砂勾配 (θp) 計画土石流発生 ( 流出 ) 抑制量 平常時堆砂勾配 (θn) 現渓床勾配 (θo) 常時土砂が堆積する空間 不透過型の場合 計画堆砂勾配 (θp) 計画土石流発生 ( 流出 ) 抑制量 平常時堆砂勾配 (θn) 現渓床勾配 (θo) 図 -17(2) 計画土石流発生 ( 流出 ) 抑制量の考え方 54

3.4.2 計画流木発生抑制量 計画流木発生抑制量は土石流 流木対策施設により 計画規模の土石流 および 土砂とともに流出する流木の減少量である 解説計画流木発生抑制量は 計画流出流木量を評価している区間に存在する流出流木量を対象とする 計画流木発生抑制量は 平常時堆砂勾配の平面と現渓床が交わる地点から堰堤までの区間に存在する倒木 流木等の量について 計上することができる 土石流 流木対策施設の計画地点に流入する計画流出流木量から計画捕捉流木量 計画堆積流木量 計画流木発生抑制量の和を差し引いた値が0 以下となった場合 当該土石流 流木対策施設の計画流木発生抑制量は 0 とする また 土石流 流木対策施設の計画地点に流入する計画流出流木量から計画捕捉流木量 計画堆積流木量 計画流木発生抑制量の和を差し引いた値が0 以上の場合 当該土石流 流木対策施設は計画流木発生抑制量を計上した上で 計画堆積流木量 計画捕捉流木量の順で計上する 55