kampo 3 prescriptions and 30 principle herbs さて 今日からは漢方処方の話をしよう よろしくお願いします 僕が説明するのは たったの 3 処方にする どんな意味があるかというと 治療法のところを思い出してほしいんだ ええと 汗 吐 下 和 温 清 消 補 でした そう ここであげた 3 処方 表 4 というのは そういうことなんだ 吐法は現代ではやらないから あとの 7 法だね 葛根湯とか 補中益気湯とか と てもよく使う処方が入っていません ね 当帰芍薬散も大黄甘草湯もな い だい じょう き とう し もつ とう 大 承 気 湯 四 物 湯 という処 方は 記憶にありません これらは基本的な処方だからね 君のいう補中益気湯なんかは 四君 子湯の応用編なんだよ 四君子湯が わかれば理解できる あとも同様さ 表4 漢方の基本3処方 方法 汗 吐 らしい方法だし よく使うので 2 桂枝湯 麻黄湯 該当なし 下 大承気湯 和 小柴胡湯 温 人参湯 清 黄連解毒湯 白虎加人参湯 消 了解しました では始めよう 汗法はとくに漢方 取り上げる処方 補 気 半夏厚朴湯 血 桂枝茯苓丸 水 五苓散 気 四君子湯 血 四物湯 水 六味丸 処方あげよう 桂枝湯 けい し とう 桂枝湯が大切だというのは先生のご説明でわかりましたが 実際に私はま だ使ったことがありません
4 重要処方 汗法の代表① 桂枝湯 桂枝湯の生薬レシピ 芍 薬 生姜 甘草 大棗.5 2.0 たときの風邪の初期 感冒 頭痛 神経痛 関節 筋肉リウマチ 神経衰弱 注 生薬の構成は 主に医療用漢方エキスメーカーで一番ラインナップの多い ツムラ のものに 揃えてあるが 各メーカー間で 使用量あるいは使用生薬そのものに若干の違いがある とく に 朮 は蒼朮と白朮とで各社に違いがあることが多いが これについては筆者がベターと思 うほうを採用した 注 2 効果効能は 医療用漢方エキスメーカー各社のそれを編集して載せている 古い病名 症候名 および症状の表現も散見されるが これはすべて実際の漢方薬添付文書にある文言なので そ のまま掲げている 注 3 いずれにせよ 各漢方薬を使用する場合はそれぞれの添付文書を参照のこと うん しょっぱなから恐縮だが じつは桂枝湯はあまり使われることがな いんだ ええっ では なぜそんな 人気のない 処方を筆頭にもってきたの ですか 僕も これを使うのは年に数えるほどしかないんだけど 桂枝湯は これ ぞ頻用処方である葛根湯をはじめとする 多くの漢方処方の母体となる処 方なんだ 多くの漢方処方は桂枝湯を骨格として組み立てられているんだよ 桂枝湯をデフォルメして作られた漢方処方は数知れないね というわけで 漢方をやる以上 桂枝湯の理解は避けて通れないのですね 逆にいうと 桂枝湯をしっかり理解しておけば 漢方の理解はスムーズに 進むから ここは少しくどいくらいに説明しておくよ 了解しました 漢方処方と治療 効果 効能 自然発汗があって 微熱 悪寒するものの次の諸症 体力が衰え 3章 桂皮
42 しょうかんろん 桂枝湯は その出典の 傷寒論 3 にこう紹介されている 頭痛があり 項がこわばり 風に当たると寒気がし 発熱し 汗が出て 鼻がグスグスと 鳴り 吐気のするもので 手首の橈骨動脈を触れると 浅い位置で緩やかに 触知できるものには桂枝湯を投与せよ とある かぜのひき始めに使えそうな処方ですね 漢方では 感冒を外から襲ってきた邪にやられた状態 と考えるんだ 風 邪のひき始めにはゾクっと悪寒がするが これを風邪とか寒邪にやられたと するんだね 考え方が原始的ですね まあね ウイルスとか細菌が感染症の原因だとわかったのがわずか 00 年 くらい前のことだからね 漢方は病気を こういう 風寒の邪にやられた という考え方でとらえ 治療もしてきて これでほぼ間に合っているのだか ら 漢方をやるんだったら ぜひこういう考え方に慣れてほしいね 寒邪にやられたから これを汗で吹き飛ばす というのが漢方の考え方な んですね ところで 桂枝湯は汗法の処方なんですよね そうだよ 桂枝湯は冒頭にあげたように 5 つの生薬からなる 漢方処方を 理解するには 第 章でも話したとおり 何からできているか が大事だね どれがどういうふうに作用するのですか では ひとつひとつの生薬を見ていくよ 桂皮 けい ひ 桂皮は クスノキ科ケイの木から採った樹皮の部分だね だから桂皮とい うんだが まあシナモンだね 樹皮を剥いで乾燥させ 細かく切ったものだ これが桂枝湯の主役だから 主薬と言うんだね シャレじゃないよ Note 2000年ほど前に中国で書かれた医学書 現在の感冒 インフルエンザのような疾患の診 3 断 治療法が書かれている 現在用いられる漢方処方の多くが 歴史上初めてこの本に登 場する 現在も漢方のバイブル的存在で 多くの漢方医はこれを必読の書としている
重要生薬 43 桂皮の作用 体を温める 温経散寒という ①止痛 散寒止痛という 3章 その結果として ②発汗 散寒解表という ③利尿 2 精神安定 あれ そういえば桂枝湯は 桂皮湯 じゃないですよね 桂 不思議だろう けい し 昔は桂枝 つまりケイの枝を用いていたらしいけれども 現在は皮を用いることが多いんだ 味 香り 作用が強くて安定しているか ららしい 桂枝 は 桂皮 の間違いだ という説もあるよ 桂枝茯苓丸 柴胡桂枝乾姜湯なんかでもそうですか エキスではそうだね でも中国の中医学では 現在でも桂枝と桂皮を使い 分けることもあるよ 桂皮には体を温める作用がある 温めて寒を蹴散らす さんかん から散寒作用というね 桂皮は 現代医学的には体温を上げるんだ シナモンティーなどを飲むと 血行がよくなって 身体が温まりますね グラム単位で摂ると発汗作用をもつようになる つまり 体温を上昇させ ることで 侵入したウイルスなどを死滅させるんだね だから せっかくの このプロセスを 解熱剤なんかで邪魔してはいけないね ウイルスが消滅すれば自然と体温は下がりますね このとき放熱する手段 として発汗するんですね この一連の作用を 古人は 寒邪を汗で吹き飛ば す と捉えたのですか おそらくそうだろう 原始的な考え方だけれども すごい観察力だよね かいひょう ちなみにこの温めて発汗させる作用を解表というんだ このほかに 桂皮の 温める作用を利用すれば 温めて取れるような痛みを解除できる だから冷えて頭痛がするものによい と 傷寒論 に書いてあるんですね 漢方処方と治療 はい 枝湯という名前はどうしてついたんですか
44 うん 腰痛 胃痛 月経痛 神経痛などを改善する力もあるよ 後で出て あんちゅうさん とう き し ぎゃく か ご しゅ ゆ しょうきょうとう けい し か じゅつ ぶ とう くる安 中 散 当帰四 逆 加呉茱萸 生 姜 湯 桂枝加 朮 附湯などにも桂皮が入る けれど よい応用例だといえるね 鎮痛効果はどの程度なんですか 一般の鎮痛剤には及ばない でも NSAIDs で胃が荒れたりする人にはよ いかもしれないね このほか 桂皮には精神安定作用や利尿作用もあるんだ けど ここではややこしくなるし 後の処方の解説で出てくるから そこで 触れることにしよう 温経散寒 散寒止痛 読んでいると意味は取れます 温経って何でしょうか 温経というのは 気血の流れを温める というくらいの意味だね 生姜 しょうきょう 生 姜はショウガのことですか 当たり しょうきょう と読むけどね 本来 生ショウガを使うべき なんだけど いまは乾燥させたものが用いられている 桂皮と同じく ピリ ピリと辛いよ 辛いものを食べると暖まって 汗が噴き出すこともありますね ひょっと して 辛い生薬は身体を温め その作用が強くなると発汗させるのですか そのとおり 漢方では本来 生薬の効果を味によって分類していたんだ が 辛いものは温めるんだ 桂皮も生姜もカレーに入っているけれど スパ イスの中にも そういうものが多くて 生薬になっているものも多いよ 漢方のお話でカレーが出てくるとは思いませんでした 生姜は 桂枝湯には桂皮の発汗作用を補うために入れてあるんだよ 生姜 だけでは たぶん発汗までには至らないな カレーは健康食だといいますよね ショウガにも発汗作用だけではなくて いろいろ作用があるんですか 生のショウガには 胃を温めて嘔気を止める作用もあるんだ 半夏厚朴湯 茯苓飲なんかにはこういう目的で入れてあるね 乾燥した生姜にするとこれ