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154 MEDICAL IMAGING TECHNOLOGY Vol.23 No.3 May 2005 特集論文 / IHE による標準化医療情報システムの実現 IHE の世界動向と CyberRad の取り組み World Trend of Integrating the Healthcare Enterprise (IHE) and Demonstration in CyberRad 2005 安藤裕 * Yutaka ANDO 要旨 IHE は, 日本語で言うと医療連携のための情報統合化プロジェクトである.1999 年に北米で発足し, 世界的な活動となっている.IHE の活動は, 部門間の情報連携をいかに行うかに注目し, 業務のワークフローを調べそれに合致するシステム構築を可能とする方法である. 活動には, 部門連携をどのように行うかを定めた, 統合プロファイルとテクニカルフレームワークの作成, 接続性テスト ( コネクタソンと呼ばれる ) をすることとその結果の公表やデモなど, ユーザーへの広報活動などが含まれている. 日本で行われている IHE の活動も, このような流れに呼応し, ユーザーへの展示会開催と広報活動が行われている.2005 年 4 月に行われた CyberRad 2005 を例にして, 情報統合化プロジェクトの一端を解説する. キーワード : 医療連携のための情報統合化プロジェクト, ガイドツアー,CyberRad, 広報活動 IHE initiated the project from 1999 at the North America. Then the activity of IHE spread over the world. The activity includes the development of the integration profile, the technical framework, the connectathon and the demonstration. In Japan, IHE-Japan started the demonstration in concert with IHEinternational. For the example, the publicity activity at the CyberRad 2005 is explained. Key words: IHE, Guide tour, CyberRad, Public relation Med Imag Tech 23(3): 154-160, 2005 1. はじめに IHE 1~3 は, 日本語で言うと医療連携のための情報統合化プロジェクトである.1999 年に北米で発足し, 世界的な規模で活動が行われている.IHE の活動は, 部門間の情報連携をいかに行うかに注目し, 業務のワークフローを調べそれに合致するシステム構築を可能とする方法である. 基本的には, 新しく規格を作成することを目的とはせずに, 既存の規格である HL7 や DICOM をどのように使用して, 部門間連携を行うか定めている.IHE 活動には, 文書類 ( 部門連携 * 放射線医学総合研究所重粒子医科学センター医療情報室 263-8555 千葉市稲毛区穴川 4-9-1 :Medical Information Processing Office, Research Center for Charged Particle Therapy, National Institute of Radiological Sciences. e-mail: ando_y@nirs.go.jp 論文受付 :2005 年 5 月 2 日最終稿受付 :2005 年 5 月 23 日 をどのように行うかを定めた統合プロファイルと, 既存の規格をどのように用いて統合プロファイルを実現するかを示したテクニカルフレームワーク ) の作成, 接続性テスト ( コネクタソンと呼ばれる ) をすることとその結果の公表やデモ, ユーザーへの広報活動などが含まれている. IHE は, 北米から世界各地に広がりを示しつつあり, ヨーロッパやアジアでも積極的に活動が行われている. これらの活動には統合プロファイルの作成やコネクタソンの実施などが含まれる. また, 日本で行われている IHE の活動も, このような流れに呼応し, 統合プロファイルの提案やユーザーへの展示会開催と広報活動が行われている. 日本で行われているユーザー向けの広報活動としては,CyberRad で行われるテーマ展示がもっとも重要なイベントの 1 つである. 本論

Med Imag Tech Vol.23 No.3 May 2005 155 文では, これらのIHEの世界的な動向とCyberRad の展示の概要を述べる. 2. 世界の IHE 活動 1) アメリカの医療 IT バブルブッシュ大統領は,2004 年 1 月に healthcare IT infrastructure を改善する方針を打ち出し,electronic health record (EHR) が大きな関心事になった. 大統領は, コンピュータによる医療記録は, 危険な医療事故を避けることができ, 医療コストを下げ, 医療の質を向上させる と 2004 年の年頭教書で述べている. このような状況で, アメリカの HIMSS (Healthcare information and management systems society: 医療情報管理システム学会 ) では, 電子カルテ (EHR) や IHE が注目され取り巻く環境が劇的に変化しているようである. アメリカにおいて,IHE の活動を推進しているのは,HIMSS と RSNA(Radiological Society of North America: 北米放射線学会 ) である. これらの 2 つの組織は,1999 年に IHE を作り, スポンサーとなっている. 2)RSNA 2004 における IHE 2004 年の RSNA( 北米放射線学会 ) 4 は, アメリカのイリノイ州シカゴの McCormic Place で 2004 年 11 月 28 日から 12 月 3 日まで開催された. Fig. 1 に示すように 2004 年 RSNA における IHE の展示では,the Quality CONNECATION -IHE brings it all together というようなキャッチフレーズでデモを行っていた. デモ会場は, ポスター展示や InfoRad 会場の一番入り口に近い場所で, いわば一等地であった. ここでは,(1)Virtual Electronic Medical Record,(2)Image Acquisition and PACS,(3)Post-processing Workstation,(4) Reading Room の 4 つの項目について短いビデオを使いながら, 説明員が説明する形式であった. また, 今年の新しいトピックスは,PDI(Portable Data for Imaging) であった.CD の媒体を使用して, 機器展示のブースで画像を媒体に記録したり, 逆に CD からデータを読み出して表示したりするデモであった. 機器展示場の PDI のデモを行うところには, 共通の看板がおかれていた (Fig. 2 参照 ). IHE を使用することによりシステムをより効率的に接続でき, また Workflow に合ったシステムを導入できることを示していた. 配布していた CD の内容には差があった.IHE のPDIプロフィールでは, 最低限として,DICOM- DIR によるディレクトリ情報とDICOM 形式のオブジェクト ( 画像やレポートなど ) を記録する. 追加機能で,WEB Browser で JPEG 画像を表示する機能や専用の画像表示プログラムをCDに書き込み,DICOM Viewer がインストールされていない一般のパソコンでも画像をうまく表示できるような CD もあった.10 年くらい前に日本で提唱していたIS &C( 可搬型光磁気ディスクを用いた医療情報ファイリングシステム ) の概念を想起するデモであった. 3)HIMSS 2005 における IHE 病院情報管理システム学会 (Hospital Information Management System Society: HIMSS) 5 は, 2005 年 2 月 13 日から 17 日までアメリカ ダラスの Convention Center で開かれた. このイベントは, 全米の病院情報システム関連の展示会と教育講演からなっている.HIMSS とは, 日本でいえばモダンホスピタルショウに教育セッション Fig. 1 The IHE demonstration at the RSNA 2004. Fig. 2 The PDI (Portable Data for Imaging) logo panel was used for the PDI demonstration in the exhibition.

156 Med Imag Tech Vol.23 No.3 May 2005 Fig. 3 The IHE demonstration at the HIMSS 2005. を足したようなイベントである. アメリカで始まった IHE は, この HIMSS と RSNA の 2 つの団体に支えられて発展してきたものである. HIMSS 2005 における IHE のデモは 2 つのブースからなり,IHE Interoperability Showcases: Delivering Interoperability in the Real World と銘打ち, (1)Ambulatory Care Showcase,(2)Cross-Enterprise Showcase となっていた. 昨年と比べて, 洗練されたデモであり, 今年の特色は,XDS(Cross Enterprise Document Sharing) を用いて, 個人の電子健康手帳を実現するコンセプトであった. 施設間をまたいで健康情報や患者情報を相互に, 参照することが可能となっている. アメリカでは,RHIO(Regional Health Information Organization: 地域保健情報機構 ) の考想があり, 電子カルテの機能である EHR と RHIO が発達すると NHIN(National Health Information Network) が実現すると考えられている. 3.CyberRad 2005 における取り組みこのようなアメリカから始まった IHE の活動は, 世界的な広がりを見せている. ヨーロッパでもデモやコネクタソンが行われ, またアジア ( 韓国, 中国, 台湾など ) でも同様の活動がある. さて日本の活動としては,IHE-J(IHE 日本 ) 6 が 2001 年に結成され, 日本医学放射線学会, 日本放射線技術学会, 日本医療情報学会, 日本画像医療システム工業会, 日本保健医療福祉情報システム工業会, 日本医療情報システム開発センターの 6 者が中心となり活動を行っている. CyberRad で行われる IHE の展示は, もっとも大きなイベントであり, 日本医学放射線学会, 日本放射線技術学会と日本画像医療システム工業 会の 3 者が行う学術展示である.CyberRad 7 は, JRC( 日本医学放射線学会, 日本放射線技術学会と日本画像医療システム工業会の 3 者が同時に行う学術大会と機器展示の総称 ) 8 の下に行われている. この CyberRad 2005 は,2005 年 4 月 8 ~ 10 日, 横浜のパシフィコ横浜で開催された. この CyberRad には, テーマ展示, チュートリアルと一般展示がある. テーマ展示では, 放射線部門をモデルとし他の部門 ( 診察室 検査部門 医事部門など ) と, どのように連携して情報のやり取りを行うかについてデモを行った. 部門間の接続に IHE を用いることにより, 業務のワークフローを標準化して簡単に接続することができ, 電子カルテや PACS の構築が容易になるかを示した. 1) テーマ展示のデモ今回のデモでは,IHE の提唱している 14 種類の統合プロフィールのうち, 通常業務運用 (scheduled workflow), 患者情報の整合性保持 (Patient Information Reconciliation), 画像表示の一貫性確保 (Consistent Presentation of Images), 画像 数値を含むレポート (Simple Image and Numeric Report), 最近 IHE のプロフィールとして追加された画像用可搬型書類 PDI(Portable Data for Imaging: CD-R などの媒体に画像データを保存して, 別のシステムでも読み込み, 表示, 画像出力ができる ) のデモを行った (Fig. 4). IT の発達により,X 線画像や CT,MRI, 超音波, 核医学などの画像情報と画像レポート情報は,PACS という枠を超えて, 医療情報へ統合されていく. 部門別の情報を結合する技術が確立されることにより, 電子カルテがより現実的なものとなろう.

Med Imag Tech Vol.23 No.3 May 2005 157 2) テーマ展示チュートリアル JRC2005 では, テーマ展示の内容を補完するためにチュートリアル 9 を行っている.IHE の活動内容 ( コネクタソン, デモ, 委員会活動 ) や, IHE の成果物である統合プロフィール, テクニカルフレームワークなどの概要の解説を行っている. 3) 情報統合化プロジェクトのプロフィール情報統合化プロジェクトでは, 臨床現場の実際の業務ワークフローをプロフィールとして定義しており, このプロフィールを実現するための詳細な方法が, テクニカルフレームワークにて定められている. プロフィールでは情報を発するものをアクター (Actor) と表現し, アクターからまたはアクターへ情報を送ることをトランザクション (Transaction) と定義している. 2004 年 12 月現在, 放射線科領域では,14 のプロフィール (Integration Profile) 10, 11 が定義されている. このプロフィールは, それぞれ, (1)Scheduled Workflow,(2)Patient Information Reconciliation,(3)Consistent Presentation of Images, (4)Presentation of Group Procedures,(5)Access to Radiology Information,(6)Key Image Note,(7) Simple Image and Numeric Report,(8)Basic Security,(9)Charge Posting,(10)Post-Processing Workflow,(11)Reporting Workflow,(12)Evidence Documents,(13)Nuclear Medicine Image, (14) Portable Data for Imaging の 14 種類である. これらのプロフィールの詳細についてはIHE-J 渉外委員会編の IHE 入門 11 を参照されたい. ここでは, 簡単に説明する. 1 通常業務運用 scheduled workflow: 登録, オーダ, 予約, 画像撮影, 完了通知など通常業務の流れ全般を処理する. 2 患者情報の整合性保持 Patient Information Reconciliation: 患者氏名の変更や予約されていないオーダの取り扱いを可能とする. 3 画像表示の一貫性確保 Consistent Presentation of Images: ハードコピー ( フィルム ) およびソフトコピー ( モニター ) の濃淡値および表示状態を統一性のある方法で処理し, 見え方を同じにする. 4 複数オーダ一括処理 Presentation of Group Fig. 4 The IHE demonstration at the CyberRad 2005. Procedures: 複数の検査を一括して画像収集し, 読影のときには細分化して読影する. その後依頼元から参照するときには, 一連の画像検査として認識される. 5 放射線部門情報へのアクセス Access to Radiology Information: 放射線部門の外側から首尾一貫した画像とレポートへのアクセスが可能となる. 6キー画像ノート Key Image Notes: とくに重要なキー画像を指示したり, キー画像にコメントを付加できる機能. 7 画像に数値を含むレポート Simple Image and Numeric Report: 読影レポートに画像とリンクし, 必要に応じ計測値 ( サイズなど ) も含む機能. 8 基本安全性 Basic Security: 患者情報の保護, 情報の整合性の保持と取り扱い者の情報管理説明責任を提供する機能. 9 課金情報通知 Charge Posting: 部門のスケジュール管理システムから, 料金処理部門へ患者情報, 料金情報や保険情報を交換する機能. 10 画像の後処理 Post-Processing Workflow: 画像撮影後, 採取画像を処理してたとえば 3D 再合成など画像処理を行い, 新たに画像を作成する場合の画像処理の段取りを管理する機能. 11レポート作成ワークフロー Reporting Workflow: レポート作成に関する読影, ディクテーション, 確認, 改訂などの業務を管理し, レポートの状態を追跡する機能. 12エビデンス文書 Evidence Documents: 画像観察, 測定, 結果や検査の詳細などを記録する機能で,SWF と PPW のプロフィールとともに管理される.

158 Med Imag Tech Vol.23 No.3 May 2005 13 核医学画像 Nuclear Medicine Image: 放射線画像のうち核医学画像は, 特殊なため他の CT や MRI などとは区別して, 新しい統合プロフィールが作成された. これは, デモのために作成されたもので,2005 年に変更される可能性がある. 14 画像情報のための可搬型データPortable Data for Imaging: 画像情報を CD-R に記録して, 他の医療機関へ情報を伝達したり, 患者に手渡す用途に使用する. 画像だけでなく, 読影レポートも記録できる. また, データを他の医療機関で読み出すときには, 患者のカルテ番号を変更する機能を有する. 以上, 統合プロフィールの概念図を Fig. 5 に示す. 4) テーマ展示 CyberRad のテーマは, 複数部門システムの わ を考える- IHE で実現する e-hospital( 標準的電子カルテと PACS)- であった. デモは 30 分間のガイド付きのプレゼンテーションで, ガ Fig. 5 The concept of the integration profile in the radiology department. イド役の担当者が, 病院内の診察室,X 線受付, X 線検査室, 放射線読影室などを模擬して, 検査オーダを入力したり, 検査受付を行ったり, 検査後の画像の参照を行ったりする. このような場合に IHE により円滑な情報のやりとりができることを示すことが目的である. デモのシナリオ 12 は Table 1 に示すように4 種類を作成した. (1) シナリオ A 肝硬変の既往のある患者が一過性の意識消失発作を起こし,IHE 病院を受診する. 通常の予約業務およびオーダの発行, 検査の実施を行う. また, 読影レポートの作成と診察でのレポート参照を行う. IHE 病院に来院した患者は, 診察室で画像検査 ( 腹部エコー ) のオーダがされる. 患者は放射線科受付に行き, その後, 超音波検査が施行され, 画像が保存される. これらの検査の進行状況が, 診察室のオーダ端末から逐次参照可能である. 画像診断医が画像を表示端末に表示する. レポートに貼り付ける画像を選択, 転送する. 画像を見ながら, 所見 診断などを入力して, レポートを完成させる. 診察室で医師は画像検査の結果を見て, 患者に説明する. また, 読影レポートを表示する. (2) シナリオ B CD-R に画像, 読影報告書などを記録し, 大学病院, 癌専門病院, 一般開業医などで画像情報をやり取りし共有し, 有効活用する例である. 慶友大学病院を受診し, パシフィコがんセンターを紹介される. 慶友大学病院の画像情報を CD に保存する. フィルムと CD の画像をサーバに保存する. 次に, パシフィコがんセンターの画像情報を CD に保存する. 患者さんは, 自宅で自分の Table 1 The list of the scenario of the IHE demonstration (SWF: Scheduled workflow, SINR: Simple Image and Numeric Report, ARI: Access to Radiology Information, PDI: Portable Data for Imaging, PIR: Patient Information Reconciliation, CPI: Consistent Presentation of Image). 名前概要 シナリオ A 通常の予約業務およびオーダの発行, 検査の実施を行う. また, 読影レポートの作成と診察でのレポート参照を行う.(SWF, SINR, ARI) シナリオ B CD-Rに画像, 読影報告書などを記録し, 大学病院, 癌専門病院, 一般開業医などで画像情報を有効活用する例.(PDI) シナリオ C 救急患者が氏名不詳で受診し, 検査後に身元が判明し, 正しい氏名が表示されるようになる. (SWF, PIR) シナリオ D 救急外来に, 激しい腹痛を訴える患者さんが来院し, 腹部単純 X 線撮影 ( 正面, 立位臥位 ) を行い, 撮影画像をサーバに送る. 読影医は, 画像を観察し,Free air がよく見える表示条件に変更し, 表示条件を修正する例である.(SWF, CPI)

Med Imag Tech Vol.23 No.3 May 2005 159 画像を表示できる. さらに, パシフィコがんセンターの画像情報を IHE クリックで見ることが可能. (3) シナリオ C 救急患者が氏名不詳で受診し, 検査後に身元が判明し, 正しい氏名が表示されるようになる. 意識のない患者が救急外来に運び込まれ, 氏名不詳にて受け付け, 検査がオーダされた. 検査終了後, 患者の名前や生年月日など患者基本情報が正しく入力され, この正しい患者情報が病院情報システムに入力されると, 他のシステム ( 放射線情報システムや PACS など ) でも正しい情報を知ることができるようになる. (4) シナリオ D 急性腹症の患者に腹部 X 線検査がオーダされ, その画像に最適な表示条件が保存される. 次に, 画像を表示した場合に, この表示条件を用いて表示することにより, 画像表示の一貫性が確保される. 救急外来に, 激しい腹痛を訴える患者が来院した. 外来担当医 ( 依頼医 ) は画像検査として, 腹部単純 X 線撮影をオーダした. 患者は撮影室に行き, 技師は腹部単純 X 線撮影を行い, 腹部条件で画像をサーバに送る. 読影医は, 画像を観察し,Free Air 条件に変更した正面立位の腹部 X 線画像の Presentation state を保存する. 依頼医は画像をモニタで見て, 消化管穿孔を診断し患者に説明する. さらに, フィルム出力された画像もモニタと同じように見えることを示す. Table 2 The list of the CyberRad themes of from 2002 to 2005. Year Theme 2002 Toward to E-Hospital - Barrier free integration of interdepartmental image information - 2003 e-hospital 2003 - Barrier free integration of interdepartmental medical information - 2004 Shortest way to e-hospital Introduction of standard EMR and PACS 2005 Coordination in Multi-department Realization of e-hospital (standard EMR and PACS) Table 3 The number of attendees at the CyberRad. Date Attendee Questionnaire 2003 4,866 58 2004 2,808 178 2005 4,268 142 5) アンケート結果 CyberRad では,IHE のデモを 2002 年より行っており,2005 年で 4 回目となる (Table 2).Table 3 に来場者数を示す.Table 4 に示すように, 来場者に対するアンケート調査では,IHE に対して理解できたかという質問では IHE のプロフィールが 60% と低かったが, 他は 80 ~ 90% で理解されていた.IHE に対する理解度は, 全体として,8 割程度と考えられる. 今後これらの人々以外の CyberRad の会場に来ない人たちに対するさらなる広報活動が求められていると考えられる. 4. まとめ IHE が普及すると部門システムが連携して, 情報のやり取りが簡単となり, 病院内の情報システムを 1 つの統合的なシステムに再生することができる. ひいては, 電子化された情報が複数の部署で共有され, より効率的な医療資源の提供やより高度の医療の普及に役立つと思われる. 現在は, やっと IHE の認識が高まり, 今までのバラバラで十分に機能していなかった部門システムを相互に接続することが可能となりつつある. 部門連携を円滑かつ効率的に行う解決策の 1 つが IHE である. IHE の問題点は, 日本としての活動戦略の未成熟,IHE-J の態勢の弱さ, マンパワーの不足, 資金の不足などである. 本特集により IHE 活動を理解されて, 今後の IHE 活動に積極的に関与できる方々が増えることを祈っている. Table 4 The results of the questionnaires in the CyberRad 2005. Questionnaire (%) Good Bad or Equivocal 1) Theme demonstration 78.7 14.7 2) Tutorial 64.7 23.7 3) Public application 54.3 29.2 IHE Multi-Vender System 92.5 7.5 Concept of IHE 84.9 15.1 Merit for HIS 90.6 9.4 Importance of workflow & technical framework 81.1 18.9 Profiles 59.6 40.4 Scenario of Demo 80.8 19.2

160 Med Imag Tech Vol.23 No.3 May 2005 文献 1 Moore SM:Using the IHE scheduled work flow integration profile to drive modality efficiency. Radiographics 23(2): 523-529, 2003 Mar-Apr 2 Flanders AE, Carrino JA:Understanding DICOM and IHE. Semin Roentgenol 38(3): 270-281, 2003 Jul 3 Boochever SS:HIS/RIS/PACS integration: getting to the gold standard. Radiol Manage 26(3): 16-24, quiz 25-27, 2004 May-Jun 4 RSNA (Radiological Society of North America) http:// www.rsna.org/ihe/index.shtml 5 HIMSS (Healthcare Information and Management Systems Society) http://www.himss.org/templates/index.asp 6 IHE-J http://www.jira-net.or.jp/ihe-j/ 7 CyberRad http://www.rad.med.keio.ac.jp/pub/cyberrad/ 8 JRC 日本ラジオロジー協会 http://www.j-rc.org/ 9 CyberRad チュートリアルの講演内容 http://www.rad. med.keio.ac.jp/pub/cb2003/ 10 Channin DS: Integrating the Healthcare Enterprise: a primer. Part 2. Seven brides for seven brothers: the IHE integration profiles,radiographics 21(5): 1343-1350, 2001 Sep-Oct 11 IHE-J 渉外委員会編 :IHE 入門. 篠原出版新社,2005, 04 12 デモのシナリオ.http://www.rad.med.keio.ac.jp/pub/ CB2003/CB03_scenario_v10.txt Yutaka Ando Yutaka Ando graduated the school of medicine, Keio University at 1976. He received the medical doctor from Keio University at 1984. From 1978 to 2004, he belonged to the Department of Radiology, Keio University and was an assistant professor. He is a head of the Medical Information Processing Office in the National Institute of Radiological Sciences. He is specialized in the radiological information system and radiation oncology. He researches on the tele-radiology system, PACS and the electronic storage of medical images. He is a member of the Japan Radiological Society (the vice-chairperson of the Committee of electronic informatics science), the Japanese Society for Therapeutic Radiology and Oncology, the Japanese Society of Nuclear Medicine, the Japan Association of Medical Informatics (councilor), the chairperson of the committee of the CyberRad of the JRC. * * *