ドイツ 1. ドイツの概要 (1) 人口等の動向 基礎情報 面積 :357,021 平方キロメートル人口 :82,400,996 人 (2007) 政体 : 連邦共和制首都 : ベルリン言語 : ドイツ語宗教 : キリスト教 ( プロテスタント )34% キリスト教 ( カトリック )34% 少子高

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問 2 次の文中のの部分を選択肢の中の適切な語句で埋め 完全な文章とせよ なお 本問は平成 28 年厚生労働白書を参照している A とは 地域の事情に応じて高齢者が 可能な限り 住み慣れた地域で B に応じ自立した日常生活を営むことができるよう 医療 介護 介護予防 C 及び自立した日常生活の支援が

まちの新しい介護保険について 1. 制度のしくみについて 東温市 ( 保険者 ) 制度を運営し 介護サービスを整備します 要介護認定を行います 保険料を徴収し 保険証を交付します 東温市地域包括支援センター ( 東温市社会福祉協議会内 ) ~ 高齢者への総合的な支援 ( 包括的支援事業 )~ 介護予

第28回介護福祉士国家試験 試験問題「社会の理解」

高齢者を取り巻く状況 将来人口 本市の総人口は 今後も減少傾向で推移し 平成32年 2020年 には41,191人程度にまで減少し 高齢 者人口については 平成31年 2019年 をピークに減少に転じ 平成32年 2020年 には15,554人程度 になるものと見込まれます 人 第6期 第7期 第8

Microsoft Word - 3

くらしのおてつだいH30 本文.indd


スライド 1

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第 2 章高齢者を取り巻く現状 1 人口の推移 ( 文章は更新予定 ) 本市の総人口は 今後 ほぼ横ばいで推移する見込みです 高齢者数は 増加基調で推移し 2025 年には 41,621 人 高齢化率は 22.0% となる見込みです 特に 平成 27 年以降は 後期高齢者数が大幅に増加する見通しです

政策課題分析シリーズ15(本文2)

第1章 計画の基本的考え方 態を改善して地域社会への参加等を通じ 生きがいや役割を持てるようにすることが 重要です 4 住まい 持ち家や賃貸住宅だけでなく 有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅など 多様な形態の住まいを含みます 生活の基盤である住まいは 高齢者のプライバシー と尊厳が十分に守ら

2 社会保障 2.1 社会保障 2.2 医療保険 2.3 年金保険 2.4 介護保険 2.5 労災保険 2.6 雇用保険 介護保険は社会保険を構成する 1 つです 介護保険制度の仕組みや給付について説明していきます 介護保険制度 介護保険制度は 高齢者の介護を社会全体で支えるための制度


ドイツの民間医療保険及び民間医療保険会社の状況(1)-2015年度結果-

各論第 3 章介護保険 保健福祉サービスの充実

社会保障給付の規模 伸びと経済との関係 (2) 年金 平成 16 年年金制度改革において 少子化 高齢化の進展や平均寿命の伸び等に応じて給付水準を調整する マクロ経済スライド の導入により年金給付額の伸びはの伸びとほぼ同程度に収まる ( ) マクロ経済スライド の導入により年金給付額の伸びは 1.6

介護保険制度改正の全体図 2 総合事業のあり方の検討における基本的な考え方本市における総合事業のあり方を検討するに当たりましては 現在 予防給付として介護保険サービスを受けている対象者の状況や 本市におけるボランティア NPO 等の社会資源の状況などを踏まえるとともに 以下の事項に留意しながら検討を

別紙2

第3章 指導・監査等の実施

PowerPoint プレゼンテーション

諸外国における介護施設の機能分化等に関する調査 (3) 保健医療サービスデンマークの医療は 5 つのレギオナが提供している 医療費は税金を財源としており 原則として無料である 15 歳以上の住民は 医療制度のうちグループ 1 又はグループ 2 の何れかを選択する (15 歳未満の者は親が属するグルー


Ⅰ-9_(資料9)_月額包括報酬の日割り請求にかかる適用_

月額報酬対象サービス月途中の事由 区分変更( 要介護 1~ 要介護 5の間 要支援 Ⅰ 要支援 Ⅱ) 小規模多機能型居宅介護介護予防小規模多機能型居宅介護複合型サービス ( 看護小規模多機能型居宅介護 ) 区分変更( 要介護 要支援 ) サービス事業所の変更( 同一サービス種類のみ ) 事業( 指定

小規模多機能型居宅介護介護予防小規模多機能型居宅介護複合型サービス ( 看護小規模多機能型居宅介護 ) 区分変更( 要介護 1~ 要介護 5の間 要支援 Ⅰ 要支援変更日 区分変更( 要介護 要支援 ) サービス事業所の変更( 同一サービス種類のみ ) 事業( 指定有効期間 ) 事業所指定効力停止の

平成 28 年度介護保険事業状況報告 ( 年報 ) のポイント 1 第 1 号被保険者数 (28 年 3 月末現在 ) (29 年 3 月末現在 ) 3,382 万人 3,440 万人 ( 対前年度 +59 万人 +1.7% 増 ) ( 単位 : 万人 ) 3,500 3,000 2,500 2,0

Ⅰ-9_(資料9)_月額包括報酬の日割り請求にかかる適用_

介護保険事業状況報告 ( 全国計 ) 第 1 表第 1 号被保険者のいる世帯数 ( 単位 : 世帯 ) 前年度末現在当年度中増当年度中減当年度末現在 23,856,459 1,319, ,241 24,261,177 第 2 表第 1 号被保険者数 ( 単位 : 人 ) 年齢区分 前年度

月額報酬対象サービス月途中の事由 区分変更( 要介護 1~ 要介護 5の間 要支援 Ⅰ 要支援 Ⅱ) 小規模多機能型居宅介護介護予防小規模多機能型居宅介護複合型サービス ( 看護小規模多機能型居宅介護 ) 区分変更( 要介護 要支援 ) サービス事業所の変更( 同一サービス種類のみ ) 事業( 指定

Microsoft PowerPoint - H27県集団指導(宮古島市)

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居宅介護支援事業者向け説明会

2 3

からだの不自由な人たちのために

計画の今後の方向性

06 参考資料1 平成30年度介護報酬改定における各サービス毎の改定事項について

小規模多機能型居宅介護 介護予防小規模多機能 区分変更 ( 要介護 1~ 要介護 5 の間 要支援 Ⅰ 要支援 Ⅱ) 型居宅介護く ) 区分変更 ( 要介護 要支援 ) サービス提供日 サービス事業所の変更 ( 同一サービス種類のみ ) ( 通い 訪問又は宿泊 ) 事業 ( 指定有効期間 ) 受給資

<4D F736F F F696E74202D20332E8CFA90B6984A93AD8FC E18F8A93BE8D8297EE8ED293998F5A82DC82A B68A888E B8E968BC682CC8D6C82A695FB B8CDD8AB B83685D>

特別養護老人ホーム 優雅 社会福祉法人 桜寿会 ( 特別養護老人ホーム優雅 ) 福島県南会津郡南会津町田島字北下原 111 番 TEL: FAX: ( 郡山オフィス ) 福島県郡山市菜根一丁目 22 番 10 号 T

平成30年度介護報酬改定における各サービス毎の改定事項について

( 参考 ) 平成 29 年度予算編成にあたっての財務大臣 厚生労働大臣の合意事項 ( 平成 29 年 12 月 19 日大臣折衝事項の別紙 ) < 医療制度改革 > 別紙 (1) 高額療養費制度の見直し 1 現役並み所得者 - 外来上限特例の上限額を 44,400 円から 57,600 円に引き上

8_月額包括報酬の日割り請求にかかる適用について

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01 表紙 雛形(都道府県、市町村、関係団体)介護保険計画課

ドイツの民間医療保険及び民間医療保険会社の状況(1)-2016年結果-

地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律(第7次地方分権一括法)の概要

議案第49号-医療福祉費支給に関する条例の一部改正【確定】

Microsoft PowerPoint - 資料8-3_ユースケース資料.pptx

平成18年度

3 高齢者 介護保険を取り巻く現状 1 人口 高齢化率本市は高齢化率が 45% を超えており 本計画の最終年度である 2020( 平成 32) 年度には 高齢化率 48.0% 2025( 平成 37) 年度には高齢化率 49.7% まで増加することが推計されます また 2018( 平成 30) 年以

障害厚生年金 厚生年金に加入している間に初診日 ( 障害のもととなった病気やけがで初めて医者にかかった日 ) がある病気やけがによって 65 歳になるまでの間に 厚生年金保険法で定める障害の状態になったときに 受給要件を満たしていれば支給される年金です なお 障害厚生年金に該当する状態よりも軽い障害

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PowerPoint プレゼンテーション

Microsoft Word - 介護保険最新情報vol.556表紙

(2) 保険料の算定に関する基本的な方針 1 保険料負担の水準保険料負担の水準については 計画の対象期間である3 年間を通じ おおむね財政の均衡を確保することが可能となるよう 保険料を算定します したがって 人口の高齢化が進展する中では 保険給付が増大することに伴い 保険料負担が増大することは 避け

Microsoft Word - 調査結果

Microsoft Word 厚生労働省事務連絡(システム変更に係る参考資料その9)送付版

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栃木県高齢者居住安定確保計画 ( 二期計画 ) 概要版 1 計画の目的と背景 高齢化が急速に進行する中 平成 24 年 3 月に県土整備部と保健福祉部が連携のもと高齢者の居住の安定確保に関する法律に基づく 栃木県高齢者居住安定確保計画 ( 以下 現計画 という ) を策定し 高齢者が安心して快適に暮

地域包括ケアシステムの構築について 団塊の世代が 75 歳以上となる 2025 年を目途に 重度な要介護状態となっても住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けることができるよう 医療 介護 予防 住まい 生活支援が包括的に確保される体制 ( 地域包括ケアシステム ) の構築を実現 今後

スライド 1

○○○の課題と検討

01 公的年金の受給状況

別表 有料老人ホームの類型及び表示事項 類型介護付有料老人ホーム ( 一般型特定施設入居者生活介護 ) 介護付有料老人ホーム ( 外部サービス利用型特定施設入居者生活介護 ) 住宅型有料老人ホーム ( 注 ) 健康型有料老人ホーム ( 注 ) 類型の説明介護等のサービスが付いた高齢者向けの居住施設で

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Microsoft PowerPoint - 資料3 地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための関係法律の整備に.pptx

平成24年度 団塊の世代の意識に関する調査 経済状況に関する事項

しぶや高齢者のしおり

改定事項 基本報酬 1 入居者の医療ニーズへの対応 2 生活機能向上連携加算の創設 3 機能訓練指導員の確保の促進 4 若年性認知症入居者受入加算の創設 5 口腔衛生管理の充実 6 栄養改善の取組の推進 7 短期利用特定施設入居者生活介護の利用者数の上限の見直し 8 身体的拘束等の適正化 9 運営推

平成17年度社会福祉法人多花楽会事業計画(案)

区西北部圏域 豊島区 北区 板橋区 練馬区 1,000百万円未満 500百人未満 居住系 在宅 51% 在宅 71% 居住系 13% 大 中 施設 19% 施設 36% 凡例 円グラフの大きさ 小 東京都 1,000百万円以上 10,000百万円未満 10,000百万円以上 500百人以上 1,00

北多摩南部圏域 東京都 武蔵野市 三鷹市 府中市 調布市 施設 36% 小金井市 狛江市 凡例 円グラフの大きさ 1,百万円未満 延べ 5百人未満 施設 居住系 1% 在宅 51% 在宅 71% 居住系 13% 大 中 小 1,百万円以上 1,百万円未満 1,百万円以上 5百人以上 1,百人未満 1

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長期家族介護者援護金 2 補償の内容 (1) 療養補償負傷又は疾病が治ゆするまでの間 必要な治療を行い 又は療養の費用を支給します 療養の範囲は次に掲げるもので 認定された傷病又は疾病の療養上相当と認められるものに限ります ア診察イ薬剤又は治療材料の支給ウ処置 手術その他治療エ居宅における療養上の管

健康保険とは?[ 健康保険組合 ] 健康保険に加入する人は?[ 被保険者 / 被扶養者 ] 保険証が交付されます [ 保険証 ] 保険料を納めます [ 標準報酬月額 / 保険料率 ] いろいろな保険給付 [ 保険給付 ] 病気やけがをしたとき [ 療養の給付 / 入院時食事療養費 ] 医療費が高額に

同一建物に居住する利用者の減算 特別地域加算 前年度の 1 月あたりの平均実利用者数の分かる書類 ( 地域に関する状況 ) 1 訪問看護ステーション ( 規模に関する状況 ) 前年度の 1 月あたりの平均延訪問回数の分かる書類 13 訪問看護 2 病院又は診療所 3 定期巡回 随時対応サービス連携

2 経口移行加算の充実 経口移行加算については 経管栄養により食事を摂取している入所者の摂食 嚥 下機能を踏まえた経口移行支援を充実させる 経口移行加算 (1 日につき ) 28 単位 (1 日につき ) 28 単位 算定要件等 ( 変更点のみ ) 経口移行計画に従い 医師の指示を受けた管理栄養士又

特定健康診査等実施計画 ( 第 3 期 ) ベルシステム 24 健康保険組合 平成 30 年 3 月 1 日 ( 最終更新日 : 平成 30 年 7 月 27 日 )

人口構造の変化 1

スライド 1

資 _ 図表 37-1 人口動態 二次医療圏市区町村人口 人口密度 2025 年総人口 2040 年総人口 年総人口増減率 年総人口増減率 2015 年 人口 2025 年 人口 2040 年 人口 年 人口増減率 年 人口増減率 全国

資料 4 医療等に関する個人情報 の範囲について 検討事項 医療等分野において情報の利活用と保護を推進する観点から 医療等に関する個人情報 の範囲をどのように定めるべきか 個別法の対象となる個人情報としては まずは 医療機関などにおいて取り扱われる個人情報が考えられるが そのほかに 介護関係 保健関

総合事業に係る Q&A 国 注意事項 備考欄には厚生労働省が作成した Q&A の参照先を記載しています 1 介護予防 日常生活支援総合事業ガイドライン案についての Q&A 9 月 30 日版 2 総合事業ガイドライン案に係る追加質問項目について ( 平成 26 年 11 月 10 日全国介護保険担当

(2) 高齢者の福祉 ア 要支援 要介護認定者数の推移 介護保険制度が始まった平成 12 年度と平成 24 年度と比較すると 65 歳以上の第 1 号被保険者のうち 要介護者又は要支援者と認定された人は 平成 12 年度末では約 247 万 1 千人であったのが 平成 24 年度末には約 545 万

表紙 雛形(都道府県、市町村、関係団体)介護保険計画課

10 生活保護の医療扶助について 生活保護制度では 困窮のため最低限度の生活を維持することのできない者に対して 医療扶助として医療を提供 医療扶助の対象者 生活保護受給者は 国民健康保険の被保険者から除外されているため ほとんどの生活保護受給者の医療費はその全額全額を医療扶助で負担医療扶助で負担 た

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○国民健康保険税について

Microsoft Word (全文)障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく自立支援給付と介護保険制度との適用関係等について

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スライド 1

【最終版】医療経営学会議配付資料 pptx

資料1 短時間労働者への私学共済の適用拡大について

高齢者サービスのしおり

⑵ 外来年間合算の支給額計算の基礎となる合算対象額は 基準日において 同一保険者の同一世帯に属しているか否かにより判断されます ( 例 ) 下記の事例の場合 基準日において 甲と乙が同一世帯であれば 3 と 4 は合算できるが 甲と乙が別世帯であれば 3 と 4 は合算できない 基準日保険者である

時効特例給付制度の概要 制度の概要 厚生年金保険の保険給付及び国民年金の給付に係る時効の特例等に関する法律 ( 平成 19 年 7 月 6 日施行 ) に基づき 年金記録の訂正がなされた上で年金が裁定された場合には 5 年で時効消滅する部分について 時効特例給付として給付を行うこととされた 法施行前

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相続財産の評価P64~75

Transcription:

ドイツ 1. ドイツの概要 (1) 人口等の動向 基礎情報 面積 :357,021 平方キロメートル人口 :82,400,996 人 (2007) 政体 : 連邦共和制首都 : ベルリン言語 : ドイツ語宗教 : キリスト教 ( プロテスタント )34% キリスト教 ( カトリック )34% 少子高齢化 高齢者人口 :16,314,320 人 [ 高齢化率 19.8%] (2007) 平均寿命 :78.95 歳 [ 男性 75.96 歳 女性 82.11 歳 ] (2007) 合計特殊出生率 :1.40 (2007) 医療サービスと医療費 人口 1,000 人当たり医師数 :3.4 人 (2004) 人口 1,000 人当たり看護師数 :9.6 人 (2004) 1 人当たり年間保健支出額 :2,852 ユーロ (2003) 米ドル購買力指数換算 3,005 ドル 保健医療支出対 GDP 比 :10.9% (2003) OECD Health Data 2006 他各種資料より作成 ドイツは 国土面積約 36 万 km 2 人口約 8,240 万人を有する連邦共和国である 平均寿命は 78.95 歳 ( 男性 75.96 歳 女性 82.11 歳 ) で 世界的な長寿国である 2007 年の 65 歳以上の高齢者数は約 1,631 万人 ( 高齢化率 19.8%) である 高齢化率は 1950 年に 9.7% から上昇を続け 1979 年の 15.7% をピークに 1998 年までほぼ横這いであったが 最近になって再び上昇傾向にある -26-

諸外国における介護施設の機能分化等に関する調査 (2) 地方自治制度の概要ドイツの公共セクターは 16 の連邦州 (Bundesland) によって構成されている 各州は国家的な機能 ( 立法権 司法権 行政権 ) を有している 16 の連邦州のうち ベルリン ブレーメン ブレーマーハーフェンは都市単独で連邦州として認められており 都市州 (Stadtstaat) と呼ばれる 都市州には 区 (Stadtbezirk) という自治単位が設けられ 住民の直接選挙で選ばれる区議会がある また 都市州以外の連邦州は 県 (Regierungsbezirk) 郡(Landkreis) 独立市(Kreisfreie Stadt; 日本の政令指定都市に相当 ) 市町村連合(Kommunalverband; 日本の広域事務組合に相当 ) 市町村(Gemeinde) 無市町村地区(Gemeindefreies Gebiet) から構成される 図表 3-1-1 地方自治体の事務区分 内容任意的自治事務社会福祉施設の設置管理 公営交通 公営企業経営 文化 余暇 スポーツ施設設備の設置管理 企業誘致 病院運営管理等義務的自治事務上下水道 廃水処理 廃棄物処理 都市計画 小中学校建設 運営管理 消防業務 道路建設管理 保健 葬儀 幼稚園の確保 地方自治体選挙の実施等指示による義務的事務道路交通監視 建築確認 営業監督 住民登録 住宅建設等委託事務戸籍登録業務 パスポート 身分証明書の発行 国勢調査 州 連邦 ヨーロッパ議会選挙 就学児童の登録 保健所 家畜衛生所 教育費助成金や生活扶助及び社会保険などに関する協力等 また 郡は 個々の市町村の処理能力を超える事務事業の処理 ( 例. 道路建設 広域文化行政 環境保護 警察及び公共の安全 上下水道 廃棄物処理 公共交通 教育及び高等教育 消防 救急 社会扶助等 ) について権限を持つ自治組織としての側面と 州の下級行政官庁として市町村及び市町村小連合の監督機関としての側面を併せ持っている 図表 3-1-2 地方自治体の構成 -27- 医療経済研究機構

(3) 保健医療サービス保健医療サービスは 社会法典 (SGB;Sozialgesetzbuch) 中の第 5 編 公的医療保険 (GKV; Gesetzliche Krankenversicherung) に基づき わが国と同じく社会保険制度に基づき提供されている 国民の約 9 割が公的医療保険に加入し 約 1 割は民間医療保険に加入しているが 無保険者も若干存在している 公的医療保険の保険者は 連邦 州及び地方自治体から独立した公法人である 疾病金庫 (Krankenkasse) であり 最近の統合再編を経て 2005 年時点で 267 の疾病金庫がある (4) 介護サービスドイツでは 1994 年 5 月に 介護保険法 (Pflegeversicherrungsgesetz) が公布され この法律に基づいた在宅介護サービスは 1995 年 4 月に 施設介護サービスは 1996 年 7 月から開始している これは 高齢者のみというように年齢で限定されたものではなく 要介護状態の者に対して現物 現金が給付される制度である ドイツの介護保険は医療保険の下にあり 公的医療保険の保険者 ( 疾病金庫 ) が公的介護保険の保険者 ( 介護金庫 (Pflegekasse)) を兼ね 民間医療保険の被保険者は民間介護保険への加入が義務付けられている 図表 3-1-3 ドイツにおける公的介護保険の被保険者数 受給者数の推移 1996~2004 ( 単位 : 千人 ) 被保険者数 受給者数 在宅 施設 1996 72,264 1,547 1,162 385 1997 71,693 1,660 1,198 462 1998 71,458 1,738 1,227 511 1999 71,545 1,826 1,280 546 2000 71,338 1,822 1,261 561 2001 70,013 1,840 1,262 578 2002 70,844 1,889 1,289 600 2003 70,457 1,895 1,281 614 2004 70,293 1,925 1,297 629 ( 資料 ) 医療経済研究機構 2006 ドイツ医療関連データ集, p.60-28-

諸外国における介護施設の機能分化等に関する調査 ドイツの介護保険は 現金給付が制度化されており 現金給付と現物給付の両方かいずれかで各介護区分の上限まで給付される また 現物給付と現金給付を同時に選択することが可能である 近年では この現物給付と現金給付のミックス型の給付を希望する者が増加している 介護保険給付は 医療サービス機構 (MDK;Medizinischer Dienst der Krankenversicherung) による要介護判定 ( 要介護度 : 要介護 Ⅰ~Ⅲの 3 段階 ) に基づき給付される サービスの利用については 利用者及び家族の希望に基づき 介護金庫が選択肢を提示し決定される なお 市町村は入所 入居調整等には関与しない 図表 3-1-4 公的介護保険の給付概要 ( 単位 : ユーロ ) 給付種類要介護 Ⅰ 要介護 Ⅱ 要介護 Ⅲ 在宅介護 ( 現物給付 ) ( 月額 ) 384 921 1,432 介護手当 ( 現金給付 ) ( 月額 ) 205 410 665 代替介護 ( 年 4 週間まで ) ( 年額 ) 205 410 665 短期介護 ( ショート ) ( 年額 ) 1,432 1,432 1,432 部分介護 ( デイ & ナイト ) ( 月額 ) 384 921 1,432 付加給付 ( 年額 ) 460 460 460 介護補装具 - 費用の 90% 完全施設介護 ( 月額 ) 1,023 1,279 1,432 障害者施設の完全施設介護 ( 月額 ) ホーム報酬の 10%( 上限 256) ( 資料 ) 医療経済研究機構 2006 ドイツ医療関連データ集, p.60 図表 3-1-5 介護保険給付費の推移 ( 単位 : 億ユーロ,%) 1996 2000 2004 2005 在宅介護 ( 現物給付 ) 15.4 (15.2) 22.3 (14.1) 23.7 (14.1) 24.0 (14.1) 介護手当 ( 現金給付 ) 44.4 (43.1) 41.8 (26.4) 40.8 (24.3) 40.5 (23.9) 代替介護 1.3 (1.3) 1.1 (0.7) 1.7 (1.0) 1.9 (1.1) 短期介護 ( ショート ) 0.9 (0.9) 1.4 (0.9) 2.0 (1.2) 2.1 (1.2) 部分介護 ( デイ & ナイト ) 0.3 (0.3) 0.6 (0.4) 0.8 (0.5) 0.8 (0.5) 付加給付 9.3 (9.1) 10.7 (6.7) 9.3 (5.5) 9.0 (5.3) 介護舗装具 3.9 (3.8) 4.0 (2.5) 3.4 (2.0) 3.8 (2.2) 完全施設介護 26.9 (26.2) 74.8 (47.2) 83.5 (49.8) 85.2 (50.2) 障害者施設の完全施設介護 0.1 (0.1) 2.1 (1.3) 2.3 (1.4) 2.3 (1.4) 合計 102.5(100.0) 158.6(100.0) 167.7(100.0) 169.8(100.0) ( 資料 ) 土田武史 2006 介護保険の展開と新政権の課題 海外社会保障研究 No.155, pp.25-29- 医療経済研究機構

介護保険給付費の推移をみると 1996 年に介護手当が給付総額の 46% を占めていたものの 2005 年には 24% にまで低下している また 在宅介護や短期介護 ( ショート ) 部分介護( デイ & ナイト ) は微増 横這い傾向にある その一方で 施設介護に係る給付額は増加の一途を辿り 完全施設介護は 1996 年には 26.2% であったものが 2005 年には 50.2% と半数以上を占めている 同時に保険財政についてみると 2000 年以降は赤字に転落しており 資金保有高も減少し続けている この要因として 受給者の増大 介護手当受給者の相対的な減少 そして施設入所者の増大が指摘されており 介護保険財政の適正化が求められている そのため 完全入所介護から部分入所介護へ あるいは施設介護から在宅介護への移行を促進するという考え方が今後も強調されることになる 図表 3-1-6 介護保険給付費の推移 ( 単位 : 億ユーロ ) 1996 1998 2000 2002 2003 2004 2005 収入総額 120.4 160.0 165.5 169.8 168.6 168.7 174.9 支出総額 108.6 158.8 166.7 173.6 175.6 176.9 178.6 収 支 11.8 1.3 1.3 3.8 6.9 8.2 3.6 資金保有高 40.5 49.9 48.2 49.3 42.4 34.2 30.5 ( 資料 ) 土田武史 2006 介護保険の展開と新政権の課題 海外社会保障研究 No.155, pp.26-30-

諸外国における介護施設の機能分化等に関する調査 また 介護保険を実施するうえで最も大きな課題が 介護の質の確保 であった 2001 年 9 月に 介護の質の確保法 (Pflege Qualitatssicherungsgesetz) が制定され 介護の質の確保策への取り組みが本格化した この法律は 施設や在宅における介護当事者のレベルアップだけではなく 介護サービス提供者の自己責任の強化をはじめ 受給者保護の強化 医療サービス機構 (MDK) と施設管理者との連携の強化を図ることを目的としたもので 介護施設における入所者と介護専門職の配置基準 MDK や介護金庫の権限の強化 給付内容と価格の情報提供 記録や帳簿の作成と保管義務など多くの規定が定められた さらに 2002 年 1 月には 介護施設における介護の質の確保策として 新しい ホーム法 (Heimgesetz) が制定され 2003 年 8 月に施行された この法律では 入所契約の透明化の推進 介護専門職 家族 老人施設 障害者施設などのメンバーによるホーム審議会の活動の強化 ホームの管理者 MDK 介護金庫 社会扶助機関の協力体制の強化 ホームと見守りなどをうけながら暮らす住居 高齢者住宅 とを区分することなどが定められた また 2005 年には 連邦保健 社会保障省と家族 高齢者 女性 青少年省とが協力して 介護施設の援助 認知症患者の援助 デイケア ショートステイ グループホームの活用などについてモデルプログラムの推進 ( 成功事例の紹介等 ) を図ることになった 2. 近年の施策の動向ドイツでは 1994 年に介護保険制度が導入された 1994 年以前までは 医療給付の1つとして 在宅の重度の要介護者に対する介護給付が組み込まれていた しかしながら その給付額は現在の介護保険による給付に比べて非常に低額のものであった 介護サービスは民間主導で進められ 施設介護も在宅介護も利用者との契約による提供されてきた 利用料は当然ながら全額自己負担であり そのため多くの利用者が自分の収入 貯蓄では賄いきれず 連邦社会扶助法による介護扶助や生活扶助を受けていた しかし 高齢化の進展による要介護者の増加 介護施設の費用の高額化などにより社会扶助を負担する州 郡 市町村の財政は圧迫され 抜本的な改革が連邦に求められた結果 介護保険制度が導入されることになった 1994 年の介護扶助受給者数は約 45 万人だったものが 介護保険導入後の 1998 年には約 22 万人まで減少し 当初の目的は達成されたといえる -31- 医療経済研究機構

3. 施設介護サービスの体系高齢者の居住施設は要介護度が重い者が入所する 完全入所介護ホーム と 自立から軽度の要介護度の者が入居する高齢者住宅である 外部介護利用型居住 等が存在し それを補完する形で 短期入所介護施設 が存在している 病院での死亡による医療保険財政の悪化から 在宅介護が最優先され 在宅介護で十分な介護が得られない場合には部分的施設介護の活用等が期待されている しかし 保険給付の設定において 施設給付が在宅給付を上回っており 受給者が運営者により施設に誘導される場合があるため 今後その設定を是正する方向である 高齢者の自立支援及び介護保険財政抑制のため 新たな高齢者居住形態についても検討が進みつつあり 個人住宅のバリアフリー化 既存建物の高齢者集合住宅化が進んでいる さらに 多世代共同居住方式による居住形態等をはじめとし 介護保険外でも利用者の創意工夫等により自然と広がりを見せている (1) 介護ホーム (Pflegeheim) 介護ホームは 入所者に対して常時の介護サービスを提供する施設である 1 利用者の主な状態像と類型概要中 ~ 重度の要介護者で長期の療養を必要とする高齢者が中心である 入所までの流れとしては 急性期病院を退院して 中間的予防 リハビリテーション施設に移り 退所後は在宅サービスやショートステイを利用するものの 心身状態の悪化に伴い介護ホームに入所するケースが多い そのため 施設に入所する者は 在宅介護や部分的施設介護で対応できないまでに要介護度が重度化しており その結果 在所期間は 1 年 ~1 年半と短くなっており ホスピス的な性格も強まっている 室内の様子 2 介護サービス施設職員 ( 介護職員 ) により身体介護や家事援助が 24 時間体制で提供される なお 職員の配置基準は 連邦の介護職員配置基準で規定されており 介護士等の専門職員を職員全体の 50% 以上配置する必要がある これは 今般の連邦制改革により 州の所管事項と -32-