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平成24年5月17日

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発達障害とは 子どもの発達の途上において なんらかの理由により 発達の特定の領域に 社会的な適応上の問題を引き起こす可能性がある凹凸を生じたもの 生来の素因を持って生じた発達障害に対して さまざまなサポートや教育を行い 健全なそだちを支えることによって 社会的な適応障害を防ぎ 障害ではなくなるところ

発達障害

高次脳機能障害 とは? 診断基準 Ⅰ 主要症状など 1 脳の器質的病変の原因となる事故による受傷や疾病の発症の事実が確認されている 2 現在 日常生活または社会生活に制約があり その主たる原因が記憶障害 注意障害 遂行機能障害 社会的行動障害などの認知障害である Ⅱ 検査所見 MRI CT 脳波など

障害福祉アンケート調査結果 1. 調査実施期間 平成 26 年 6 月 ~7 月 2. 調査対象者 精神保健福祉手帳交付者 3. 調査方法 郵送によるアンケート送付 回収 無記名 4. 送付数と回収数 送付数 回収数 回収率 送付数 回収数 回収率 (%) 身体障がい者 2,732 1,499 54

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出時に必要な援助を行うことに関する知識及び技術を習得することを目的として行われる研修であって 別表第四又は別表第五に定める内容以上のものをいう 以下同じ ) の課程を修了し 当該研修の事業を行った者から当該研修の課程を修了した旨の証明書の交付を受けた者五行動援護従業者養成研修 ( 知的障害又は精神障

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広汎性発達障がい 発達障がいの種類 アスペルガー症候群 レット症候群 注意欠如多動性障がい (ADHD) 学習障がい (LD) 発達性協調運動障がい 社会性の問題 コミュニケーションの問題 想像力の問題があると言われており 見た目には障がいがないように見えるが他人との距離感が分からず 空気が読めない

まず, 場面緘黙と選択性緘黙という診断名がありますが, 簡単に言うと両者は一緒です センターの先生方は 選択性緘黙 という言葉を使うことが多いと思いますが, 意味はい っしょです 1. 症状か診断カテゴリー ( 診断名 ) か? (1) 症状としての緘黙 : 場面緘黙 というのは, 例えば学校では一

目 次 はじめに... p1 1. 発達障害 の定義... p2 発達障害それぞれの特性について... p3 2. 発達障害をめぐる状況... p4 3. 江戸川区の発達障害者 ( 児 ) の現況... p 発達障害者 ( 児 ) 支援の江戸川区の課題... p6 施策の5つの課題 5.

Q1 診断書等がない子どもへの合理的配慮はどう考えたらよいのか A1 診断書や障がい者手帳等の有無が 合理的配慮の提供に関する判断の基準ではありません 教育支援資料 ( 文部科学省平成 25 年 10 月 ) において 各障がいは以下のように定義されています ( 参考 ) 教育支援資料における各障が

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公的医療保険が対象とならない治療 投薬などの費用 ( 例 : 病院や診療所以外でのカウンセリング ) 精神疾患 精神障害と関係のない疾患の医療費 医療費の自己負担ア ) 世帯 ( 1) における家計の負担能力 障害の状態その他の事情をしん酌した額 ( しん酌した額が自立支援医療にかかった費用の 10

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2. 身体障がいの状況 (1) 身体障がいの種別 ( 主な障がいの部位 ) 平成 28 年 6 月 30 日現在の身体障害者手帳所持者の身体障がいの種別 ( 主な障がいの部位 ) をみると 肢体不自由が 27,619 人 (53.3%) と全体の過半数を占めて最も多く 次いで 内部障がいが 15,9

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要件の判定に必要な事項 1. 患者数約 400 人 ( 徐波睡眠期持続性棘徐波を示すてんかん性脳症及びランドウ クレフナー症候群の総数 ) 2. 発病の機構不明 ( 先天性あるいは早期の後天性脳病変がみられることはあるが発病にかかわる機序は不明 遺伝子異常が関係するという報告もあり ) 3. 効果的

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第1章発達障害を理解しよう6 発達障害とはなんだろう? 広汎性発達障害 ( 自閉症 アスペルガー症候群 1 法律の定義など ) 発達障害の定義は 発達障害者支援法 ( 平成 17 年 F9: 小児期および青年期に通常発症する行動およ度施行 ) にあります び情緒の障害 法律の中には 自閉症 アスペル

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3) 適切な薬物療法ができる 4) 支持的関係を確立し 個人精神療法を適切に用い 集団精神療法を学ぶ 5) 心理社会的療法 精神科リハビリテーションを行い 早期に地域に復帰させる方法を学ぶ 10. 気分障害 : 2) 病歴を聴取し 精神症状を把握し 病型の把握 診断 鑑別診断ができる 3) 人格特徴

専門)精神医学 単位数履修方法配当学年 4 単位 R or SR 3 年以上 科目コード CQ4140 担当教員松江克彦 ( 上 ) 平成 26 年度より R or SR 科目に変更され スクーリングが開講されています スクーリングは別教員 ( 滝井泰孝先生 左 西尾雅明先生 中 高野毅久先生 右

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回数テーマ学習内容学びのポイント 2 精神医学の概念 精神医学の方法論と 精神障害の成 因と分類を理解する 3 精神疾患の診断法 診断の手順と方法 症状把握 検査 法について理解する 4 精神疾患の理解 1 症状性および器質性精神疾患 5 精神疾患の理解 2 精神作用物質による精神障害 6 精神疾患

言葉の遅れがあるかどうかで別れる 広汎性発達障碍というのはそれらの上位概念として位置づいているが現在は 自閉スペクトラム症 と呼ばれている スペクトラムとは連続体という意味 自閉症と一口に言ってもこだわりの強さや感覚過敏にはそれぞれ違いがある そのためこれらを包括して連続体と捉えたものであるが それ

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ICD-11 β draft の訳について ( 要点のみ ) ICD-11 β draft の依存領域の全体的翻訳は別添資料 2 をご覧ください この資料 1 で は 先生方のご意見をいただきたいポイントを 7 項目にしぼって記載しています 1. 大項目について ICD-11 β draft では

発達障害者支援法 (2005 年 4 月施行 ) 支援法における発達障害定義 自閉症 アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害 学習障害 注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害をいう これまで教育や福祉の支援対象となっていなかったものに対し 国 地方公共団体の支援責務を明らかにした また

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26 年度後期時間割 時限は下記の通り 11 8:50~10: :30~12: :00~14: :50~14: :40~16: :30~16: :20~17:50 時限の例 開始時限が11で終了時限が11の場合は8:

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宮川充司 / 青年期から成人期にかけての発達障害とパーソナリティ障害 : 重ね着症候群とアスペルガー障害 また 素行障害の場合 先行条件としてADHD 反抗挑戦性障害とは限らない ADHDに限らず広汎性発達障害といった他の発達障害が背景に疑われる素行障害の事例も推定できるからである 藤川 (2010

高田 : 発達障害傾向のある児童を担任する小学校教師の支援 そこで本研究では, 発達障害傾向児担任教師の支援のため, 小学校教師の発達障害傾向児の認知, メンタルヘルスの指標であるバーンアウト傾向, 職場環境ストレッサー及び自己効力感との関連を検討することを目的とした なお, 本研究では高田 (20

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2017/2/13 平成 28 年度筑波大学教員免許状更新講習シンポジウム 子どもたちの心は今 ~ 発達障害と愛着障害 :2 つのキーワードから ~ 筑波大学宮本信也 ( つくば ) 気になる子? 集団行動が取れない子 乱暴で加減ができない子 他児と全く遊ぼうとしない子 落ち着きな

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発達障害者支援法から場面緘黙や吃音が外される? 2018.02.25 Sunday02:17 久田信行 http://tsk.psychoreha.org/ からの転載 最近 場面緘黙の当事者の方から 発達障害者支援法の対象から場面緘黙が外される恐れがあるという噂を聞いたけれど どういうこと? と質問を受けました 厚生労働省や国会議員の皆様が そんなことはされないと思いますが 心配がある周辺の事情を 長くなりますがここに書きます 決して 外されるというのが決まっているのではなくて 恐れがあるという段階です しかし 時間も限られていますし 用心に越したことはありません 今のうちに 出来るだけ陳情などしていきましょう 今 関係の会では要望書などの検討に入り始めています では 本文を書きます どんな問題か最近問題になっている発達障害から吃音や場面緘黙が外れるのではないか という心配は ICD( 疾病及び関連保健問題の国際統計分類 ) が 11 版へ 2018 年に改定されるという大変化に伴う心配です 発達障害者支援法の対象となる障害は WHO の ICD-10( 疾病及び関連保健問題の国際統計分類 ) における 心理的発達の障害 (F80-F89) 及び 小児 < 児童 > 期及び青年期に通常発症する行動及び情緒の障害 (F90-F98) に含まれる障害である と規定されていて その ICD が今年 2018 年に 11 版へ改定されますので 法律の対象の障害が変わってくる可能性があるのです 現行の ICD-10 の中に 選択性緘黙や吃音が含まれているのです これらの用語は主に世界保健機構 (WHO) の疾病及び関連保健問題の国際統計分類 (ICD) の用語を主に用いています ICD は普通 国際疾病分類と簡略に呼ばれることが多い 国際的な病気の統計を取ったり 世界規模での疾病対策をしたりする際の分類体系です その第 10 版を基に政令や省令は書かれています 法律の条文では以下に引用しているように 書かれていますが 慣れないと 何が書かれているか分かりにくいです 第 2 条で書かれている障害は 中心となる障害です あまり変更はないだろうと想定して書かれています しかし この部分も 元の障害名が変わってくるので 改定されると思います --------------------------------------------------------------------------------------- 発達障害者支援法

発達障害者支援法の発達障害の定義をみてみます この法律では 法律の条文に直接書か れている障害と 政令で規定している障害と 厚生労働省令で規定している障害の 3 段階 で対象の障害を定義しています 第二条この法律において 発達障害 とは 自閉症 アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害 学習障害 注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するものとして政令で定めるものをいう 政令第百五十号発達障害者支援法施行令 ( 発達障害の定義 ) 第一条発達障害者支援法 ( 以下 法 という ) 第二条第一項の政令で定める障害は 脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するもののうち 言語の障害 協調運動の障害その他厚生労働省令で定める障害とする 厚生労働省令第八十一号発達障害者支援法施行令第一条の厚生労働省令で定める障害は 心理的発達の障害並びに行動及び情緒の障害 ( 自閉症 アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害 学習障害 注意欠陥多動性障害 言語の障害及び協調運動の障害を除く ) とする 政令や省令で規定している部分は 状況の変化に応じて 変更する含みがあると考えられ ます 11 版で大幅に改定されますので これらの部分も当然改定されます この法律が施行されたとき 平成 17 年 4 月の厚生労働省と文部科学省の通知では もっと簡略に ICD-10( 疾病及び関連保健問題の国際統計分類 ) における 心理的発達の障害 (F80-F89) 及び 小児 < 児童 > 期及び青年期に通常発症する行動及び情緒の障害 (F90- F98) に含まれる障害である と書かれています ICD-10 が分からないと訳が分かりません 次の次に ICD-10 の関連する部分を書きますが その前に 発達障害 という言葉について少し説明します ------------------------------------------------------------------------------------------- 発達障害は診断名か? 発達障害 という用語の根本的な誤りをまず確認しておきます 〇発達障害と言う言葉は, 身体障害という言葉と同格のものです 身体障害というと脳性マヒのお子さんなど, 肢体不自由がイメージされがちですが, それだけではありません 身体障害には, 視覚障害や慢性の肝臓病など内部疾患も含まれていて, 非常に幅の広い状態像を包含した言葉です 身体障害 という言葉は法律の用語です 病

名すなわち, 診断に使う用語ではありません 植物 > 果物 > 桃という関係では, 植物 に当たるような言葉です 病院であなたのお子さんは身体障害という病名ですというお医者さんは皆無です 発達障害という言葉も, 本当は法律用語で, 植物 に当たる用語です これを 発達障害 ( 法律用語 ) と書くことにします 自閉症スペクトラム症は, 桃 と同格ですので, 発達障害 ( 法律用語 ) > 自閉症スペクトラム症という関係です このように, 法律用語なので, 正式には 発達障害 という診断名はありません ところが, 実際は 発達障害 という言葉は日本中で誤用されていて, 診断名のように使われています これを, ここでは法律用語と区別するために 発達障害 ( 診断名??) と書くことにします 発達障害 ( 診断名??) には, 自閉症 ( 自閉症スペクトラム症 ), 学習障害,ADHD( 注意欠如多動性障害 ) の三つだけが含まれていると, 日本中で思われています これも誤解です 次に説明するように 様々な障害が含まれています それは 従来 障害者福祉 3 法と呼ばれていた知的障害者福祉法 身体障害者福祉法 精神保健福祉法の三つで カバーできない谷間にいた障害者に福祉を及ぼす目的で発達障害者支援法が出来たからです 知的障害を伴わない自閉症者は これらの法律ではケアできなかったのです 他にも 福祉の谷間にいたいろいろな障害についても福祉を及ぼすためにできた法律です LD,ADHD, 自閉症スペクトラム障害の他は あまり注目されていませんが 本当はこの法律を必要としている障害は多数あるのだといえるでしょう この論議は どのような障害が対象となっているかを確認した後に 再度 述べて参ります 発達障害( 法律用語 ) は日米で異なる発達障害は制度のカテゴリー名なので法律用語だと申しました 少し調べると分かるのですが, 米国と日本では, 法律の中身が異なるのです 米国では脳性まひやてんかんの子どもがまず 発達障害 ( 法律用語 ) として定められ, ずっと後に自閉症や学習障害の子どものことが加えられたという歴史があります 日本の法律を見ても,1 広汎性発達障害 ( 自閉症, アスペルガー症候群などが含まれる ), 2 学習障害 (LD),3 注意欠陥多動性障害 (ADHD),4 特異な言語発達障害, 協調運動障害 (DCD) といった多様な子どもたちが 発達障害 ( 法律用語 ) の対象と規定されています それらは法律の対象に入っている事を意味します 非常に幅のあるそれらの状態像に共通の 特性 があるはずがありません 自閉症スペクトラム障害の子どもを 発達障害 ( 診断名??) と言うのは, これ何? と八百屋さんでピンク色の丸い果物 ( 桃 ) を指さしたら, 植物 と店主が答える様なものです 当然, その原因も一つではなくて, 様々な原因が複雑に絡み合って, 様々な状態像を示している訳で, 簡単ではありません むりやり, 脳の障害と仮定している人もいますが, 専門

的に研究している方は, 自閉症においても, 脳の病変を証明出来ていないのが現状です 脳はさまざまな働きをしているので, 脳を原因と仮定するのは, 誰でも出来ることですが, 誰にもまだ, はっきりした証拠を示せないでいると言えるでしょう 証明されていない仮説で, 原因論を云々することは時期尚早だと思います 法律用語としての発達障害発達障害者支援法が発効する日に文部科学省と厚生労働省の次官の連名で出された通知 17 文科初第 16 号厚生労働省発障第 0401008 号平成 17 年 4 月 1 日 これらの規定により想定される 法の対象となる障害は 脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するもののうち ICD-10( 疾病及び関連保健問題の国際統計分類 ) における 心理的発達の障害 (F80-F89) 及び 小児 < 児童 > 期及び青年期に通常発症する行動及び情緒の障害 (F90-F98) に含まれる障害であること なお てんかんなどの中枢神経系の疾患 脳外傷や脳血管障害の後遺症が 上記の障害を伴うものである場合においても 法の対象とするものである ( 法第 2 条関係 )( 後略 ) まず 現状でどのような形で 発達障害者支援法に入っているかを確認しましょう 上記の通知で示している障害は以下のようになります WHO の国際疾病分類 ( 関係部分のみ )F8 DISORDERS OF PSYCHOLOGICAL DEVELOPMENT 心理的発達の障害 F80 会話および言語の特異的発達障害 F80.0 特異的会話構音障害 F80.1 表出性言語障害 F80.2 受容性言語障害 F80.3 てんかんにともなう獲得性 [ 後天性 ] 失語 [ 症 ]( ランドウ-クレフナー症候群 ) F80.8 他の会話および言語の発達障害 F80.9 会話および言語の発達障害, 特定不能のもの F81 学力 [ 学習能力 ] の特異的発達障害 筆者注 ) 学習障害にほぼ対応する分類 F81.0 特異的読字障害 F81.1 特異的綴字 [ 書字 ] 障害 F81.2 特異的算数能力障害 [ 算数能力の特異的障害 ]

F81.3 学力 [ 学習能力 ] の混合性障害 F81.8 他の学力 [ 学習能力 ] の発達障害 F81.9 学力 [ 学習能力 ] の発達障害, 特定不能のもの F82 運動機能の特異的発達障害 ( 筆者注 : 協調運動障害 DCD とほぼ同じ ) F83 混合性特異的発達障害 F84 広汎性発達障害 F84.0 小児自閉症 [ 自閉症 ] F84.1 非定型自閉症 F84.2 レット症候群 F84.3 他の小児期崩壊性障害 F84.4 精神遅滞および常同運動に関連した過動性障害 F84.5 アスペルガー症候群 F84.8 他の広汎性発達障害 F84.9 広汎性発達障害, 特定不能のもの F88 F89 他の心理的発達の障害 特定不能の心理的発達の障害 F90 BEHAVIOURAL AND EMOTIONAL DISORDERS WITH ONSET USUALLY OCCURRING IN CHILDHOOD AND ADOLESCENCE F98 小児期および青年期に通常発症する行動および情緒の障害 F90 多動性障害 筆者注 ) 注意欠陥多動性障害 (ADHD) にほぼ対応する分類 F90.0 活動性および注意の障害 F90.1 多動性行為障害 F90.8 他の多動性障害 F90.9 多動性障害, 特定不能のもの F91 行為障害 F91.0 家庭内に限られる [ 家庭限局性 ] 行為障害 F91.1 非社会性 [ 非社会型 ][ グループ化されない ] 行為障害 F91.2 社会性 [ 社会型 ][ グループ化された ] 行為障害 F91.3 反抗挑戦性障害 F91.8 他の行為障害 F91.9 行為障害, 特定不能のもの

F92 行為及び情緒の混合性障害 F92.0 抑うつ性行為障害 F92.8 他の行為および情緒の混合性障害 F92.9 行為および情緒の混合性障害, 特定不能のもの F93 小児期に特異的に発症する情緒障害 F93.0 小児期の分離不安障害 F93.1 小児期の恐怖症性不安障害 F93.2 小児期の社会性 [ 社交 ] 不安障害 F93.3 同胞葛藤性 [ 抗争 ] 障害 F93.8 他の小児期の情緒障害 F93.9 小児期の情緒障害, 特定不能のもの F94 小児期および青年期に特異的に発症する社会的機能の障害 F94.0 選択性緘黙 F94.1 小児期の反応性愛着障害 F94.2 小児期の脱抑制性愛着障害 F94.8 他の小児期の社会的機能の障害 F94.9 小児期の社会的機能の障害, 特定不能のもの F95 チック障害 F95.0 一過性チック障害 F95.1 慢性運動性あるいは音声チック障害 F95.2 音声性および多発運動性の合併したチック障害 ( ド ラ トゥーレット症候群 ) F95.8 他のチック障害 F95.9 チック障害, 特定不能のもの F98 通常小児期および青年期に発症する他の行動および情緒の障害 F98.0 非器質性遺尿症 F98.1 非器質性遺糞症 F98.2 乳幼児期及び小児期の哺育障害 F98.3 乳幼児期及び小児期の異食症 F98.4 常同性運動障害 F98.5 吃音 [ 症 ] F98.6 早口 [ 乱雑 ] 言語症 F98.8 他の小児期および青年期に通常発症する特異的な行動と情緒の障害

F98.9 小児期および青年期に通常発症する特定不能の行動と情緒の障害 以上 F98 までを発達障害とする これらのリストが 通知 では ICD-10( 疾病及び関連保健問題の国際統計分類 ) における 心理的発達の障害 (F80-F89) 及び 小児 < 児童 > 期及び青年期に通常発症する行動及び情緒の障害 (F90-F98) に含まれる障害である と簡略に書かれていたわけです その大本の ICD が 11 版になるのですが その概略はすでにベーター版として公表されています 主な変更点をあげると次のようになります 心理的発達の障害 という大分類は無くなり その多くは 神経発達障害 となります その中には 知的障害が第一に入り 自閉症スペクトラム障害 (ASD) 局限性学習障害 (LD) 注意欠如多動性障害 (ADHD) チック 吃音などが入ります 小児 < 児童 > 期及び青年期に通常発症する行動及び情緒の障害 (F90-F98) という大分類も無くなり 愛着障害や選択性緘黙は大人の不安症などと一緒になって 不安症群 という大分類の中に入ります 以前は ADHD に近い位置だったのですが ADHD は 神経発達障害 の方へ引っ越して 愛着障害や選択性緘黙は 別の分類へ引っ越したという事です もちろん これらの動きを厚生労働省の方は把握しています その上で 改定の時に どの障害を残し どの障害を削るかを検討しているのだと想像されます 神経発達障害 に残っている吃音の当事者の方が心配しているのに そこから外れた場面緘黙の方々が心配しないはずはありません 英文の機械翻訳を基にしていますが ICD-11 のベーター版 ( 完成版の一つ前の版 ) を以下にあげます ( ホームページの対応表を是非ご覧ください 3 月 2 日に改定し より詳しくなっています ICD は英文で示しています ) ICD-11 ベータドラフト - 死亡率と罹患率統計 06 精神的 行動的または神経発達障害神経発達障害 6A00 知的発達の障害 6A01 発達発話または言語障害 ( ここに吃音が含まれる ) 6A02 自閉症スペクトル障害 6A03 発達性学習障害 (LD) 6A04 発達中の運動協調障害 6A05 一次チックまたはチック障害 6A06 注意欠如多動性障害 (ADHD)

6A07 定型運動障害 6F00 二次神経発達症候群 Y と Z はその他ですので 以下省略 また 説明上重要でないと思われる部分も省略して書きます ( ) は久田の注です 統合失調症または他の原発性精神病性障害 Catatonia ( 緊張病 ) 気分障害 ( 躁病 うつ病 ) 不安または恐怖関連障害 6B20 全般性不安障害 6B21 パニック障害 6B22 広場恐怖症 6B23 特定の恐怖症 6B24 社会的不安障害 ( 場面緘黙に併発しやすい ) 6B25 分離不安障害 ( ここにも注目 ) 6B26 選択性緘黙 ( 場面緘黙 へと訳語も変えてほしい ) 物質誘発不安障害 6B43 心気症 ( 身体症状を多く訴える ) 6F03 二次性不安症候群強迫神経症または関連障害ストレスに関連した障害解離性疾患摂食障害または摂食障害排泄障害 ( 遺糞 遺尿なども ) 身体的苦痛または身体的経験の障害物質の使用または中毒性の行動による障害衝動調節障害破壊的な行動や社会的障害 6D10 反抗挑戦性障害 6D11 素行障害人格障害および関連形質パラフィリア虚偽性障害神経認知障害妊娠 出産および産褥に関連する精神または行動障害 ( 以下略 ) 国際疾病分類 (ICD) は WHO の分類であるため 日本の法律などの用語に大きな影響が

あります アメリカ精神医学会の分類である DSM-5 よりも法律や制度に大きな影響があります もし 神経発達障害 だけが残るとすると いろいろ問題があると思います 特に 場面緘黙は やっと発達障害として注目されるようになりましたので この段階で外されるのはかなり厳しいと思います 愛着障害などについても同じだと思います 選択性緘黙でなく 場面緘黙と言う訳語にして頂くことを求めるだけでなく 発達障害者支援法の対象として残すことを強く求める必要があると思います 関連の質問を受け付けています hisata@psychoreha.org 宛にお寄せください