Microsoft Word - 勇美助成金事業 報告書

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訪問リハビリテーションに関する調査の概要

佐久総合病院 H24年度在宅医療連携拠点事業 活動報告

17★ 訪問看護計画書及び訪問看護報告書等の取扱いについて(平成十二年三月三十日 老企 厚生労働省老人保健福祉局企画課長通知)

複数名訪問看護加算 (1 人以上の看護職員等と同 2 人以上による訪問看護を行う場合 行 ) 看護師等と訪問 看護師等と訪問 4,500 円 30 分未満 254 単位 准看護師と訪問 3,800 円 30 分以上 402 単位 看護補助者と訪問 ( 別に厚生労働省が定める場合 看護補助者と訪問 を

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加算 栄養改善加算 ( 月 2 回を限度 ) 栄養スクリーニング加算 口腔機能向上加算 ( 月 2 回を限度 ) 5 円 重度療養管理加算 要介護 であって 別に厚生労働大が定める状態である者に対して 医学的管理のもと 通所リハビリテーションを行った場合 100 円 中重度者ケア体制加算

基本料金明細 金額 基本利用料 ( 利用者負担金 ) 訪問看護基本療養費 (Ⅰ) 週 3 日まで (1 日 1 回につき ) 週 4 日目以降緩和 褥瘡ケアの専門看護師 ( 同一日に共同の訪問看護 ) 1 割負担 2 割負担 3 割負担 5, ,110 1,665 6,

Microsoft Word - Q&A(訪問リハ).doc

居宅介護支援事業者向け説明会

まちの新しい介護保険について 1. 制度のしくみについて 東温市 ( 保険者 ) 制度を運営し 介護サービスを整備します 要介護認定を行います 保険料を徴収し 保険証を交付します 東温市地域包括支援センター ( 東温市社会福祉協議会内 ) ~ 高齢者への総合的な支援 ( 包括的支援事業 )~ 介護予

13 (参考資料4-5)松下参考人資料(三菱総研)

Microsoft PowerPoint - 05短時間の身体介護 調査結果概要((5)短時間の身体介護)0320

介護支援専門員 ( 回答数 件 ) 介護支援専門員の基礎資格 介護支援専門員の基礎資格 n= 複数回答 0 基礎資格について 介護福祉士 が 件 ( 0.%) と最も多かった 介護支援専門員が担当する利用者 (H 年 月 ). 要介護別利用者の割合 要介護 0% 要介護

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届出書 体制等状況一覧表 ( 別紙 1-3) の添付書類一覧 定期巡回 随時対応型訪問介護看護 中山間地域等における小規模事業所加算 11 月当たりの平均延訪問回算定表 前年度の 4 月 ~2 月分 緊急時訪問看護加算 特別管理体制 ターミナルケア体制 サービス提供体制強化加算 (Ⅰ) サービス提供

各論第 3 章介護保険 保健福祉サービスの充実

平成17年度社会福祉法人多花楽会事業計画(案)

Microsoft PowerPoint - 01_居宅訪問型児童発達支援

問 2 次の文中のの部分を選択肢の中の適切な語句で埋め 完全な文章とせよ なお 本問は平成 28 年厚生労働白書を参照している A とは 地域の事情に応じて高齢者が 可能な限り 住み慣れた地域で B に応じ自立した日常生活を営むことができるよう 医療 介護 介護予防 C 及び自立した日常生活の支援が

通所リハビリテーションとは 介護保険で認定を受けられた要支援 要介護の方を対象に機能訓練 歩行訓練や日常生活訓練 脳への刺激で認知症予防などを目的に リハビリテーション ( 以下 リハビリ ) を行う通いのサービスです 通所リハビリテーション ( 以下 通所リハビリ ) は 利用者様が可能な限り自宅

要支援 介護保険負担額 (1 割月額 ) 介護保険負担額 (2 割月額 ) 要支援 1 1,843 円 要支援 1 3,686 円 要支援 2 3,779 円 要支援 2 7,557 円 サービス加算について (2 割負担の方は約 2 倍の料金となります ) 項目金額単位適用 内容 運動機能向上加算

特別養護老人ホーム 優雅 社会福祉法人 桜寿会 ( 特別養護老人ホーム優雅 ) 福島県南会津郡南会津町田島字北下原 111 番 TEL: FAX: ( 郡山オフィス ) 福島県郡山市菜根一丁目 22 番 10 号 T

表紙@C

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Microsoft Word - H27.4OK(DC料金表)

点検項目 点検事項 点検結果 リハビリテーションマネジメント加算 Ⅰ 計画の定期的評価 見直し 約 3 月毎に実施 リハビリテーションマネジメント加算 Ⅱ ( リハビリテーションマネジメント加算 Ⅰ の要件に加え ) 居宅介護支援事業者を通じて他のサービス事業者への情報伝達 利用者の興味 関心 身体

リハビリテーションを受けること 以下 リハビリ 理想 病院でも自宅でも 自分が納得できる 期間や時間のリハビリを受けたい 現実: 現実: リ ビリが受けられる期間や時間は制度で リハビリが受けられる期間や時間は制度で 決 決められています いつ どこで どのように いつ どこで どのように リハビリ

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通所リハ生活行為向上リハ加算 1 2,000 1 月につき 通所リハ生活行為向上リハ加算 2 1,000 1 月につき 通所リハ若年性認知症受入加算 60 1 日につき 通所リハ栄養改善加算 150 月 2 回限度 通所

介護老人保健施設 契約書

通所リハ生活行為向上リハ加算 1 2,000 1 月につき 通所リハ生活行為向上リハ加算 2 1,000 1 月につき 通所リハ若年性認知症受入加算 60 1 日につき 通所リハ栄養改善加算 150 月 2 回限度 通所

平成 28 年 10 月 17 日 平成 28 年度の認定看護師教育基準カリキュラムから排尿自立指導料の所定の研修として認めら れることとなりました 平成 28 年度研修生から 排泄自立指導料 算定要件 施設基準を満たすことができます 下部尿路機能障害を有する患者に対して 病棟でのケアや多職種チーム

同一建物に居住する利用者の減算 特別地域加算 前年度の 1 月あたりの平均実利用者数の分かる書類 ( 地域に関する状況 ) 1 訪問看護ステーション ( 規模に関する状況 ) 前年度の 1 月あたりの平均延訪問回数の分かる書類 13 訪問看護 2 病院又は診療所 3 定期巡回 随時対応サービス連携

当院人工透析室における看護必要度調査 佐藤幸子 木村房子 大館市立総合病院人工透析室 The Evaluation of the Grade of Nursing Requirement in Hemodialysis Patients in Odate Municipal Hospital < 諸

2016 年顧客満足度調査集計結果 全体 全体の集計 目次 年顧客満足度調査集計結果 全体 1 ページ 株式会社ニチイ学館 年顧客満足度評価集計表 全体 2ページ 年利用者回答結果一覧 全体 3ページ サービス名 年利用者回答詳細結果 全体 4

Ⅰ 通所リハビリテーション業務基準 通所リハビリテーションのリハビリ部門に関わる介護報酬 1. 基本報酬 ( 通所リハビリテーション費 ) 別紙コード表参照 個別リハビリテーションに関して平成 27 年度の介護報酬改定において 個別リハビリテーション実施加算が本体報酬に包括化された趣旨を踏まえ 利用

平成 24 年度診療報酬説明会リハビリテーション関連 平成 24 年 4 月 21 日 公益社団法人 高知県理学療法士協会 医療部

小規模多機能型居宅介護・介護予防小規模多機能型居宅介護サービス

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スカイラ サービス付き高齢者向け住宅料金表 部屋タイプ 月額 内訳 料金 家賃 45,000 円 A タイプ (18m2) 138,000 円 食事 ( 1,6 0 0 円 / 日 ) 48,000 円共益費 35,000 円 サービス費 10,000 円 家賃 65,000 円 B タイプ (20

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看護職員が看護補助者との同行訪問により訪問看護を実施する場合 利用者の身体的理由においても算定可能になりました 算定対象 1 別表第七に掲げる者 ( 厚生労働大臣が定める疾病等 2 表第八に掲げる者 ( 特別管理加算の対象者 ) 3 特別訪問看護指示書による訪問看護を受けている者 4 暴力行為 著し

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< 集計分析結果 > ( 単純集計版 ) 在宅介護実態調査の集計結果 ~ 第 7 期介護保険事業計画の策定に向けて ~ 平成 29 年 9 月 <5 万人以上 10 万人未満 >

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体制届の主な項目と添付書類 居宅サービス 別途 資料の提出をお願いすることがあります サービスの種類 体制届の主な項目 別紙 添付書類 その他の添付書類 備考 施設等の区分 ( 通院等乗降介助 ) - 道路運送法の許可証 - 日中の身体介護 20 分未満体制 別紙 15 定期巡回 随時対応サービスに

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下の図は 平成 25 年 8 月 28 日の社会保障審議会介護保険部会資料であるが 平成 27 年度以降 在宅医療連携拠点事業は 介護保険法の中での恒久的な制度として位置づけられる計画である 在宅医療 介護の連携推進についてのイメージでは 介護の中心的機関である地域包括支援センターと医療サイドから医

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助成研究演題 - 平成 23 年度国内共同研究 (39 歳以下 ) 重症心不全の集学的治療確立のための QOL 研究 東京大学医学系研究科重症心不全治療開発講座客員研究員 ( 助成時 : 東京大学医学部附属病院循環器内科日本学術振興会特別研究員 PD) 加藤尚子 私は 重症心不全の集学的治療確立のた

第 2 章高齢者を取り巻く現状 1 人口の推移 ( 文章は更新予定 ) 本市の総人口は 今後 ほぼ横ばいで推移する見込みです 高齢者数は 増加基調で推移し 2025 年には 41,621 人 高齢化率は 22.0% となる見込みです 特に 平成 27 年以降は 後期高齢者数が大幅に増加する見通しです

一般看護師領域 キャリアレベル ミドル (Ⅲ) 退院支援看護師育成プログラム ~ 希望を地域へつなぐ ~

改定事項 基本報酬 1 入居者の医療ニーズへの対応 2 生活機能向上連携加算の創設 3 機能訓練指導員の確保の促進 4 若年性認知症入居者受入加算の創設 5 口腔衛生管理の充実 6 栄養改善の取組の推進 7 短期利用特定施設入居者生活介護の利用者数の上限の見直し 8 身体的拘束等の適正化 9 運営推

平成20年度春の家居宅介護支援事業所事業計画

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( 別紙 1-1) 介護給付費算定に係る体制等状況一覧表 ( 居宅サービス 施設サービス 居宅介護支援 ) 特別地域加算 14 訪問リハビリテーション 31 居宅療養管理指導 1 病院又は診療所 2 介護老人保健施設 3 介護医療院 短期集中リハヒ リテーション実施加算 リハヒ リテーションマネジメ

高齢化率が上昇する中 認定看護師は患者への直接的な看護だけでなく看護職への指導 看護体制づくりなどのさまざまな場面におけるキーパーソンとして 今後もさらなる活躍が期待されます 高齢者の生活を支える主な分野と所属状況は 以下の通りです 脳卒中リハビリテーション看護認定看護師 脳卒中発症直後から 患者の

【最終版】医療経営学会議配付資料 pptx

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DOTS 実施率に関する補足資料 平成 26 年 12 月 25 日 結核研究所対策支援部作成 平成 23 年 5 月に改正された 結核に関する特定感染症予防指針 に DOTS の実施状況は自治体による違いが大きく実施体制の強化が必要であること 院内 DOTS 及び地域 DOTS の実施において医療

このような現状を踏まえると これからの介護予防は 機能回復訓練などの高齢者本人へのアプローチだけではなく 生活環境の調整や 地域の中に生きがい 役割を持って生活できるような居場所と出番づくりなど 高齢者本人を取り巻く環境へのアプローチも含めた バランスのとれたアプローチが重要である このような効果的

介護保険事業状況報告 ( 全国計 ) 第 1 表第 1 号被保険者のいる世帯数 ( 単位 : 世帯 ) 前年度末現在当年度中増当年度中減当年度末現在 23,856,459 1,319, ,241 24,261,177 第 2 表第 1 号被保険者数 ( 単位 : 人 ) 年齢区分 前年度

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平成 31 年度 地域ケア会議開催計画 魚津市地域包括支援センター 平成 31 年 4 月

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第1回 障害者グループホームと医療との連携体制構築のための検討会

地域包括ケア病棟 緩和ケア病棟 これから迎える超高齢社会において需要が高まる 高齢者救急に重点を置き 地域包括ケア病棟と 緩和ケア病棟を開設いたしました! 社会福祉法人 恩賜財団済生会福岡県済生会八幡総合病院

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本来目指すべき療養病棟の転換の方向性 ( イメージ ) 一般病床 医療療養病床 (5:) 介護療養病床 H9 年度末で廃止 (6 年間の経過期間 ) 地域医療構想の推進と療養病床の再編 現行の介護療養病床は平成 9 年度末で廃止 ( 経過措置あり ) となり 新たな類型として介護医療院が設置され こ

2 居宅サービス事業所の状況

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介護老人保健施設シンフォニー稲佐の森 Ⅱ < 介護予防短期入所療養介護利用料金一覧表 > 介護予防短期入所療養介護 ( 日額 ) 要介護度要支援 1 要支援 2 サービスに係る負担金 円 776 円 介護職員処遇改善加算 2 26 円 32 円 サーヒ ス提供体制強化加算 (Ⅰ) 3 1

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01 【北海道】

第3章 指導・監査等の実施


Clinical Indicator 2016 FUNABASHI MUNICIPAL REHABILITATION HOSPITAL

ども これを用いて 患者さんが来たとき 例えば頭が痛いと言ったときに ではその頭痛の程度はどうかとか あるいは呼吸困難はどの程度かということから 5 段階で緊急度を判定するシステムになっています ポスター 3 ポスター -4 研究方法ですけれども 研究デザインは至ってシンプルです 導入した前後で比較

西和賀町 高齢者実態調査結果報告書 平成 29 年 3 月 岩手県西和賀町

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福祉用具貸与 介護予防福祉用具貸与 心身機能が低下した高齢者に 日常生活の自立を助ける用具をレンタルします 自 宅 に 住 ん で 自 宅 で 受 け る サ ー ビ ス ( 生活環境を整える ) 貸与品目 福祉用具購入費の支給 住宅改修費の支給 手すり スロープ 歩行器 歩行補助杖 車いす ( 付

7 対 1 10 対 1 入院基本料の対応について 2(ⅲ) 7 対 1 10 対 1 入院基本料の課題 将来の入院医療ニーズは 人口構造の変化に伴う疾病構成の変化等により より高い医療資源の投入が必要となる医療ニーズは横ばいから減少 中程度の医療資源の投入が必要となる医療ニーズは増加から横ばいにな

しぶや高齢者のしおり

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7 時間以上 8 時間未満 922 単位 / 回 介護予防通所リハビリテーション 変更前 変更後 要支援 Ⅰ 1812 単位 / 月 1712 単位 / 月 要支援 Ⅱ 3715 単位 / 月 3615 単位 / 月 リハビリテーションマネジメント加算 (Ⅰ) の見直し リハビリテーションマネジメン

リハビリテーションマネジメント加算 計画の進捗状況を定期的に評価し 必要に応じ見直しを実施 ( 初回評価は約 2 週間以内 その後は約 3 月毎に実施 ) 介護支援専門員を通じ その他サービス事業者に 利用者の日常生活の留意点や介護の工夫等の情報を伝達 利用者の興味 関心 身体の状況 家屋の状況 家

私たちの人生 病気やケガのリスクと 経済的影響は? 50 ( 千人 ) 1, 通院入院 ( 歳 )

海津市介護老人保健施設 ( 通所リハビリテーション ) 運営規定 第 1 章施設の目的及び運営方針 ( 目的 ) 第 1 条この規定は 海津市介護老人保健施設サンリバーはつらつ ( 以下 施設 という ) における通所リハビリテーション ( 以下 事業所 という ) の運営についての重要事項を規定し

第28回介護福祉士国家試験 試験問題「社会の理解」

5. がん患者さんの在宅医療 介護等の基礎知識 財団法人名古屋市療養サービス事業団名古屋市西区訪問看護ステーション所長訪問看護認定看護師村井満美子 講義の狙い がん患者さんの在宅医療と在宅医療 療養を支える資源について学ぶ 訪問看護の利用の仕方について学ぶ 事例を通してより良い在宅医療のあり方を学ぶ

別表 有料老人ホームの類型及び表示事項 類型介護付有料老人ホーム ( 一般型特定施設入居者生活介護 ) 介護付有料老人ホーム ( 外部サービス利用型特定施設入居者生活介護 ) 住宅型有料老人ホーム ( 注 ) 健康型有料老人ホーム ( 注 ) 類型の説明介護等のサービスが付いた高齢者向けの居住施設で

Microsoft Word - (医政発第0717001ALS.doc

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公益財団法人在宅医療助成勇美記念財団 2010 年度在宅医療助成指定公募 ( 前期 ) 在宅療養支援診療所と訪問看護ステーションが運営するデイホスピスサービスの事業評価報告書 平成 23 年 8 月 29 日 医療法人矢津内科消化器科クリニック片山泰代 福岡県行橋市行事 7 丁目 19-6 研究組織 研究代表者片山泰代 ( 医療法人矢津内科消化器科クリニック 在宅総括 ) 共同研究者白川美弥子 ( 医療法人矢津内科消化器科クリニック 緩和ケアサロン ほっとひと息 責任者 ) 矢津剛 ( 医療法人矢津内科消化器科クリニック理事長 ) 成瀬昂 ( 東京大学医学系研究科地域看護学教室 大学院生 ( 博士課程後期 ))

1. 事業背景 2008 年度より ひと息の村訪問看護ステーションは 福岡県のモデル事業として デイホスピス事業 ( 医療型多機能サービスの展開 ) を実施している これは 訪問看護ステーション内に 医療依存度が高く ADL が高い在宅療養者の通所サービスを設置するという新事業である デイホスピス事業の対象者は ADL が高く日常生活は自立している点が療養通所介護の対象者とは異なり 大きな特徴である 癌末期の成人 高齢者は 寝たきりで医療処置が必要な状態になれば 在宅医療 介護サービスの対象となる しかし ADL が自立した状態では 医療処置が必要 もしくは急変可能性が高い状態であったとしても 外見上は問題が少なく見えるために在宅医療 介護の支援対象となりにくい 在院日数の短縮化が進むにつれ こうした対象が今後地域に増えていくと考えられる 彼らの在宅看取りを進めるには 本人 家族が安心して最期の時を在宅で迎えられるよう 周囲の関係職種と早期に信頼関係を築き 受け入れる態勢を整えておくことが重要である しかし 現在こうした対象の療養生活 在宅看取りまでのプロセスを支援するような公的制度はない 訪問看護の現場では 状態が悪くなってから関わり始めたために 信頼関係の構築や在宅療養の準備に手間取り 十分なターミナルケアが行えない事例が少なくない しかし ADL が高い状態では 本人や家族 ケアマネジャー等に訪問看護の必要性がわかりにくく 早期からの導入は難しい ADL が高くても 癌末期などの状態であれば 本人や家族の不安は大きい 彼らが在宅療養を継続し 在宅看取りにつながるには そうした不安への対応 病状の受け入れ支援がスムーズに行われる必要がある そのためには 訪問看護師等の専門職に加えて 同じ立場の療養者によるピアカウンセリングが効果的と考えられる そこで本研究では デイホスピス事業の評価研究を行う 事業評価とは 対象となる事業の効果を記述し 改善点や実現可能性 発展可能性を明確にする研究手法である デイホスピス事業評価の目的は 訪問看護ステーションがデイホスピス事業を行うことで 利用者 地域の在宅医療関係機関のネットワーク および訪問看護ステーションにどのような効果があるのかを記述し 必要な資源や運営戦略を明らかにする 2. デイホスピス事業の内容事業内容は 医師 看護師 評価担当研究者による検討会で決定した 地域のニーズ評価をもとに 事業対象者は 末期がん 神経難病等の患者で 本人 地域資源の理由により療養通所介護を利用できない者 とした 以下に 対象者 サービス内容の決定プロセスと結果を示す (1) デイホスピス事業の対象者

Resource inventory のための Service matrix (McKillip, 1997) を使用し 地域のニーズ評価を行った まず 検討委員会で図 1 の表の行 列のタイトルのみ作成した 行は 医療依存度の高い在宅療養者が在宅療養を継続するために必要だと考えられるサービス内容 列は 対象者 である 行と列が交差するカラムは 該当する対象者に対する該当サービスを示す この表をもとに 地域の在宅医療関係者 ( 行橋市保健師 ケアマネジャー 診療所医師 訪問看護ステーション職員 ) らにヒアリングを行い 各カラムについて : 十分整備されている : 十分とは言えないが 整備されている : 整備されているがとても足りない もしくはない を判定する また 該当資源がすでにある場合には その名称を判定の右カラムに記載する 図 1より 緊急対応が可能で 安全な外出先を確保するようなサービス および 本人が 自分のペースで時間を過ごせるような場所を提供するサービス が不足していると評価した (1) 進行がん末期 (2) 進行がん末期 (3) 神経難病 (4) 神経難病 ADL 要支援 ADL 要介護以上 ADL 要支援 ADL 要介護以上 介護保険対象者に対して 判定 名称 判定 名称 判定 名称 判定 名称 A) 緊急対応が可能で 安全な外出先を確保するようなサービス 老人保健施設 療養数所老人保健施設 老人保健施設 療養数所老人保健施設 B) 本人の不安や悩みに 継続にきちんと対応できるような専門家によるサービス C) 家族の不安や悩みに 継続的にしっかり対応できるような専門家によるサービス 地域在宅医療 地域在宅医療 支援センター ( 保 支援センター ( 保 健所 ) 健所 ) 保健センター 保健センター 保健所 包括支援セン 包括支援センターター 保健所 D) 本人が 自分のペースで時間を過ごせるような場所を提供するサービス 宅老所 療養通所 ひと息の村デイサービス 療養通所 介護保険非対象者に対して判定名称判定名称判定名称判定名称 E) 緊急対応が可能で 安全な外出先を確保するようなサービス F) 本人の不安や悩みに 継続にきちんと対応できるような専門家によるサービス G) 家族の不安や悩みに 継続的にしっかり対応できるような専門家によるサービス H) 本人が 自分のペースで時間を過ごせるような場所を提供するサービス 矢津外来緩和 矢津外来緩和 地域在宅医療支援地域在宅医療支援 矢津外来緩和センター ( 保健所 ) センター ( 保健所 ) 保健センター 保健センター 保健所 包括支援センター 包括支援センター 図 1. 行橋市の Service matrix 矢津外来緩和 保健所 (2) デイホスピス事業の内容デイホスピスは 週に2 回 ひと息の村訪問看護ステーションの建物内にある デイホスピスルーム で実施した 主な対象者は 進行性がん 神経難病の在宅療養者 である 進行性がんの方と神経難病の方では 病態や予後に差が大きく注意が必要であるため 同じ空間で過ごすことで 互いに理解しあえるような空間作りに努めた

デイホスピスでのスタッフの役割は 利用者さんとそのご家族に対する相談 支援 情報提供とした 病状が不安定な対象者が多いため 看護師が2 名以上滞在することを必須とし 併設する診療所医師が常にバックアップ体制をとることとした また 移乗や移動に介助を要する対象者が多いため 介護福祉士が2 名滞在するほか その日の利用者数やプログラムにあわせて スタッフの増員や理学 音楽療法士 ボランティアスタッフ等が入り 5~6 名のスタッフがデイホスピスルームの近くにいるように徹底した デイホスピス運営状況日時毎週月曜日 金曜日 (10 時 ~15 時 ) 出張デイホスピス : 水曜日 (10 時 ~15 時 ) 対象者進行性がん 神経難病の在宅療養者 ( 小児を除く ) 目的療養者とその家族に対する相談 支援 情報提供 家族介護者の休息スタッフ看護師 2~3 名 介護福祉士 2~3 名その他 ( 理学療法士 0 名 音楽療法士等 1 名 ) 計 5~7 名利用者定員 10 名具体的内容アロマ リンパマッサージ音楽療法 理学療法 ( ストレッチ リハ等 ) 作業療法 ( 絵手紙 カゴ作り 園芸 陶芸等 ) 療養相談 食事会 ( 昼食 ) 利用料金モデル事業期間中 利用料は無料 ( 食事代 作業療法の材料費等は有料 ) 利用者の一日の流れ ( 例 ) 10:00 ~11:30 バスで家族と来所した後 お茶を飲みながら利用者さん スタッフと交流 11:30 ~11:50 デイホスピス内の図書を読書 11:50 ~12:10 スタッフと一緒に昼食の準備 12:10 ~13:20 利用者 スタッフと一緒に昼食 13:20 ~13:25 スタッフと一緒に昼食の片付け 13:25 ~13:45 作業療法に参加 ( 体調の悪い人等は参加しない ) 13:45 ~14:00 お茶を飲みながら一緒に片付け 14:00 ~14:30 送迎 帰宅 3. 事業実施状況 (1) 事業実施 進捗状況 2010 年 4 月 対象者像 ( 仮 ) の決定 事業開始 (1 日 ~) 5 月 第一回 事業検討委員会 対象者像 事業評価方針 事業理論の仮説モデル作成

12 月第二回事業検討委員会 外部委員 ( 東京大学 ) の事業見学 事業 事業評価実施状況の確認 2011 年 1 月 2010 年 4~12 月調査実績の集計 (2) 利用者数 実施件数 デイホスピス実施回数 ( 回 ) ( ) 内は出張 ( 他施設で実施 ) 実利用者数 ( 名 ) のべ利用者数 ( 名 ) 2010 年 4 月 10 7 16 5 月 11 8 20 6 月 14 9 27 7 月 12 9 32 8 月 13 12 25 9 月 14(2) 15(2) 33(2) 10 月 15(2) 15(5) 32(5) 11 月 16(2) 17(3) 31(3) 12 月 16(1) 18(3) 29(3) 2011 年 1 月 15(1) 15(2) 24(2) 2 月 15(1) 14(3) 26(3) 3 月 18(1) 13(3) 27(3) 4 月 16(2) 12(3) 31(3) (3) 利用者属性 (2010 年 4~2011 年 4 月の間に利用を開始した 32 名について集計 ) 人数 (%) 年齢 65 歳未満 15 (46.8) 65 歳以上 17 (53.1) 要介護度 がん末期で 日常生活自立度が自立 / J/ A 17 (53.1) がん末期で 日常生活自立度が B/ C 3 (9.3) 神経難病等で 日常生活自立度が自立 / J/ A 4 (12.5) 神経難病等で 日常生活自立度が B/ C 8 (25.0) 紹介元 併設診療所の医師 11 (34.3) 併設訪問看護ステーション職員 8 (25.0) その他施設の医師 看護師等 5 (15.6) デイホスピス利用者 その家族 一般住民 8 (25.0) 4. 事業実施 評価結果 (1) 利用終了者の終了後 1 カ月までの状況

2010 年 4 月 ~2011 年 4 月の間に利用を開始した 18 名のうち 2011 年 4 月末日までに 利用を終了した者は 19 名だった その利用終了後の転帰を図 2 に示す 状態悪化 病院で死亡 3 名 緊急入院 利用終了 19 名 3 名状態悪化 在宅療養 訪問看護利用継続 3 名 在宅で死亡病院で死亡 5 名 1 名 16 名 訪問看護 利用開始 在宅で死亡 5 名 7 名 在宅で継続 4 名 図 2. 利用終了者の終了後 1 カ月までの状況 5. デイホスピス運営マニュアルの作成今後 さらにデイホスピスが発展していくには 1 費用分析を通した経営方法の確立 2 利用者数の拡大 3 運営方法の洗練 が必要である その第一歩として 2 利用者数の拡大 および3 運営方法の洗練を目的として デイホスピスの運営方法や使用書類 および利用者の声をまとめたパンフレットを作製した ( 添付資料 ) 今後は マニュアルの洗練作業を通じて 発展の方向性や経営方法の確立を目指す 6. 結論 デイホスピスは 状態が安定している在宅療養者の気分転換を促し 状態悪化時のす みやかな訪問看護導入につながる可能性がある 公益財団法人在宅医療助成 勇美記念財団の助成による