【資料1】石井参考人提出資料

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報道発表資料 2006 年 4 月 13 日 独立行政法人理化学研究所 抗ウイルス免疫発動機構の解明 - 免疫 アレルギー制御のための新たな標的分子を発見 - ポイント 異物センサー TLR のシグナル伝達機構を解析 インターフェロン産生に必須な分子 IKK アルファ を発見 免疫 アレルギーの有効

VACCINE PART.2 VACCINE PART.2 VACCINE PART.2 VACCINE PART.2 VACCINE 第 1 章 その魔力は薬か毒か ワクチンの効果を高める目的で添加されている補助剤がです しかし よいことだけではありません とはいったいどのようなもので ワクチンの

Research 2 Vol.81, No.12013

RNA Poly IC D-IPS-1 概要 自然免疫による病原体成分の認識は炎症反応の誘導や 獲得免疫の成立に重要な役割を果たす生体防御機構です 今回 私達はウイルス RNA を模倣する合成二本鎖 RNA アナログの Poly I:C を用いて 自然免疫応答メカニズムの解析を行いました その結果

アラムアジュバント効果に宿主細胞の DNA による自然免疫が鍵を握る 石井健 ( いしいけん ) ( 独 ) 医薬基盤研究所 アジュバント開発プロジェクトリーダー 大阪大学免疫学フロンテイア研究センター ワクチン学 主任研究者 ( 招へい教授 ) アルミニウム塩を主とするアジュバント ( 総称 :

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糖尿病診療における早期からの厳格な血糖コントロールの重要性

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の感染が阻止されるという いわゆる 二度なし現象 の原理であり 予防接種 ( ワクチン ) を行う根拠でもあります 特定の抗原を認識する記憶 B 細胞は体内を循環していますがその数は非常に少なく その中で抗原に遭遇した僅かな記憶 B 細胞が著しく増殖し 効率良く形質細胞に分化することが 大量の抗体産


ランゲルハンス細胞の過去まず LC の過去についてお話しします LC は 1868 年に 当時ドイツのベルリン大学の医学生であった Paul Langerhans により発見されました しかしながら 当初は 細胞の形状から神経のように見えたため 神経細胞と勘違いされていました その後 約 100 年

年219 番 生体防御のしくみとその破綻 (Immunity in Host Defense and Disease) 責任者: 黒田悦史主任教授 免疫学 黒田悦史主任教授 安田好文講師 2中平雅清講師 松下一史講師 目的 (1) 病原体や異物の侵入から宿主を守る 免疫系を中心とした生体防御機構を理

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2. 定期接種ンの 接種方法等について ( 表 2) ンの 種類 1 歳未満 生 BCG MR 麻疹風疹 接種回数接種方法接種回数 1 回上腕外側のほぼ中央部に菅針を用いて2か所に圧刺 ( 経皮接種 ) 1 期は1 歳以上 2 歳未満 2 期は5 歳以上 7 歳未満で小学校入学前の 1 年間 ( 年

平成24年7月x日

従来のペプチド免疫療法の問題点 樹状細胞 CTL CTL CTL CTL CTL CTL CTL CTL 腫瘍組織 腫瘍細胞を殺す 細胞傷害性 T 細胞 (CTL) の大半は 腫瘍の存在に気づかず 血管内を通り過ぎている! 腫瘍抗原の提示を考えると それは当然! 2

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1. 今回の変更に関する整理 効能 効果及び用法 用量 ( 添付文書より転載 ) 従来製剤 ( バイアル製剤 ) と製法変更製剤 ( シリンジ製剤 ) で変更はない 効能 効果 用法 容量 B 型肝炎の予防通常 0.5mL ずつ4 週間隔で2 回 更に 20~24 週を経過した後に1 回 0.5mL

卵管の自然免疫による感染防御機能 Toll 様受容体 (TLR) は微生物成分を認識して サイトカインを発現させて自然免疫応答を誘導し また適応免疫応答にも寄与すると考えられています ニワトリでは TLR-1(type1 と 2) -2(type1 と 2) -3~ の 10

く 細胞傷害活性の無い CD4 + ヘルパー T 細胞が必須と判明した 吉田らは 1988 年 C57BL/6 マウスが腹腔内に移植した BALB/c マウス由来の Meth A 腫瘍細胞 (CTL 耐性細胞株 ) を拒絶すること 1991 年 同種異系移植によって誘導されるマクロファージ (AIM

報道発表資料 2006 年 6 月 21 日 独立行政法人理化学研究所 アレルギー反応を制御する新たなメカニズムを発見 - 謎の免疫細胞 記憶型 T 細胞 がアレルギー反応に必須 - ポイント アレルギー発症の細胞を可視化する緑色蛍光マウスの開発により解明 分化 発生等で重要なノッチ分子への情報伝達

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八村敏志 TCR が発現しない. 抗原の経口投与 DO11.1 TCR トランスジェニックマウスに経口免疫寛容を誘導するために 粗精製 OVA を mg/ml の濃度で溶解した水溶液を作製し 7 日間自由摂取させた また Foxp3 の発現を検討する実験では RAG / OVA3 3 マウスおよび

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のと期待されます 本研究成果は 2011 年 4 月 5 日 ( 英国時間 ) に英国オンライン科学雑誌 Nature Communications で公開されます また 本研究成果は JST 戦略的創造研究推進事業チーム型研究 (CREST) の研究領域 アレルギー疾患 自己免疫疾患などの発症機構

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るマウスを解析したところ XCR1 陽性樹状細胞欠失マウスと同様に 腸管 T 細胞の減少が認められました さらに XCL1 の発現が 脾臓やリンパ節の T 細胞に比較して 腸管組織の T 細胞において高いこと そして 腸管内で T 細胞と XCR1 陽性樹状細胞が密に相互作用していることも明らかにな

医薬品タンパク質は 安全性の面からヒト型が常識です ではなぜ 肌につける化粧品用コラーゲンは ヒト型でなくても良いのでしょうか? アレルギーは皮膚から 最近の学説では 皮膚から侵入したアレルゲンが 食物アレルギー アトピー性皮膚炎 喘息 アレルギー性鼻炎などのアレルギー症状を引き起こすきっかけになる

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研究目的 1. 電波ばく露による免疫細胞への影響に関する研究 我々の体には 恒常性を保つために 生体内に侵入した異物を生体外に排除する 免疫と呼ばれる防御システムが存在する 免疫力の低下は感染を引き起こしやすくなり 健康を損ないやすくなる そこで 2 10W/kgのSARで電波ばく露を行い 免疫細胞

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報道発表資料 2007 年 4 月 30 日 独立行政法人理化学研究所 炎症反応を制御する新たなメカニズムを解明 - アレルギー 炎症性疾患の病態解明に新たな手掛かり - ポイント 免疫反応を正常に終息させる必須の分子は核内タンパク質 PDLIM2 炎症反応にかかわる転写因子を分解に導く新制御メカニ

はじめに 予防接種は感染症を予防するために最も特異的でかつ効果的な方法の一つです わが国では 1990 年代以降 新しいワクチンの導入が少なく 海外では受けられるワクチンが国内では受けることができないといった いわゆる ワクチンギャップ が問題になっていました しかし 近年の予防接種法の改正により

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審査結果 平成 26 年 2 月 7 日 [ 販売名 ] 1 ヘプタバックス-Ⅱ 2 ビームゲン 同注 0.25mL 同注 0.5mL [ 一般名 ] 組換え沈降 B 型肝炎ワクチン ( 酵母由来 ) [ 申請者名 ] 1 MSD 株式会社 2 一般財団法人化学及血清療法研究所 [ 申請年月日 ]

の活性化が背景となるヒト悪性腫瘍の治療薬開発につながる 図4 研究である 研究内容 私たちは図3に示すようなyeast two hybrid 法を用いて AKT分子に結合する細胞内分子のスクリーニングを行った この結果 これまで機能の分からなかったプロトオンコジン TCL1がAKTと結合し多量体を形

第一章自然免疫活性化物質による T 細胞機能の修飾に関する検討自然免疫は 感染の初期段階において重要な防御機構である 自然免疫を担当する細胞は パターン認識受容体 (Pattern Recognition Receptors:PRRs) を介して PAMPs の特異的な構造を検知する 機能性食品は

このワクチンの接種前に 確認すべきことは? ワクチン接種を受ける人または家族の方などは このワクチンの効果や副反応などの注意すべき点について十分理解できるまで説明を受けてください 説明に同意した上で接種を受けてください 医師が問診 検温および診察の結果から 接種できるかどうか判断します 次の人は こ

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東邦大学学術リポジトリ タイトル別タイトル作成者 ( 著者 ) 公開者 Epstein Barr virus infection and var 1 in synovial tissues of rheumatoid 関節リウマチ滑膜組織における Epstein Barr ウイルス感染症と Epst

2012/02/22 ワクチン分科会 The Foundation of Medical and Veterinary Virology by utmb より 国内の天然痘発生状況 2012/02/22 ワクチン分科会引用 : 臨床とウイルス Vol 木村三生夫他 2

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サーバリックス の効果について 1 サーバリックス の接種対象者は 10 歳以上の女性です 2 サーバリックス は 臨床試験により 15~25 歳の女性に対する HPV 16 型と 18 型の感染や 前がん病変の発症を予防する効果が確認されています 10~15 歳の女児および

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さらにのどや気管の粘膜に広く分布しているマスト細胞の表面に付着します IgE 抗体にスギ花粉が結合すると マスト細胞がヒスタミン ロイコトリエンという化学伝達物質を放出します このヒスタミン ロイコトリエンが鼻やのどの粘膜細胞や血管を刺激し 鼻水やくしゃみ 鼻づまりなどの花粉症の症状を引き起こします

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自然免疫と獲得免疫 免疫 自然免疫 獲得免疫 病原体 異物の貪食 消化と炎症反応 ( 非特異的免疫応答 ) 抗体 ( 液性免疫 ) キラー T 細胞 ( 細胞性免疫 )

ルス薬の開発の基盤となる重要な発見です 本研究は 京都府立医科大学 大阪大学 エジプト国 Damanhour 大学 国際医療福祉 大学病院 中部大学と共同研究で行ったものです 2 研究内容 < 研究の背景と経緯 > H5N1 高病原性鳥インフルエンザウイルスは 1996 年頃中国で出現し 現在までに

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( 様式甲 5) 学位論文内容の要旨 論文提出者氏名 論文審査担当者 主査 教授 森脇真一 井上善博 副査副査 教授教授 東 治 人 上 田 晃 一 副査 教授 朝日通雄 主論文題名 Transgene number-dependent, gene expression rate-independe

今後の展開現在でも 自己免疫疾患の発症機構については不明な点が多くあります 今回の発見により 今後自己免疫疾患の発症機構の理解が大きく前進すると共に 今まで見過ごされてきたイントロン残存の重要性が 生体反応の様々な局面で明らかにされることが期待されます 図 1 Jmjd6 欠損型の胸腺をヌードマウス

前立腺癌は男性特有の癌で 米国においては癌死亡者数の第 2 位 ( 約 20%) を占めてい ます 日本でも前立腺癌の罹患率 死亡者数は急激に上昇しており 現在は重篤な男性悪性腫瘍疾患の1つとなって図 1 います 図 1 初期段階の前立腺癌は男性ホルモン ( アンドロゲン ) に反応し増殖します そ

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( 図 ) IP3 と IRBIT( アービット ) が IP3 受容体に競合して結合する様子

ロタウイルスワクチンは初回接種を1 価で始めた場合は 1 価の2 回接種 5 価で始めた場合は 5 価の3 回接種 となります 母子感染予防の場合のスケジュール案を示す 母子感染予防以外の目的で受ける場合は 4 週間の間隔をあけて2 回接種し 1 回目 の接種から20~24 週あけて3 回目を接種生

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(資料1-1)わが国のワクチン産業と市場の動向ver3_4

バイオ医薬品は生物を用いて製造されます 通常 細菌や動物細胞などの生体の中で目的とするタンパク質を産生させます バイオ医薬品の特性は製造プロセスの状態に依存するところが大きく しばしば プロセスが製品 と喩えられます 事実 製造プロセスにおける小さな変更でも 最終製品の違いにつながる可能性があります

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図アレルギーぜんそくの初期反応の分子メカニズム

目次 1. 抗体治療とは? 2. 免疫とは? 3. 免疫の働きとは? 4. 抗体が主役の免疫とは? 5. 抗体とは? 6. 抗体の構造とは? 7. 抗体の種類とは? 8. 抗体の働きとは? 9. 抗体医薬品とは? 10. 抗体医薬品の特徴とは? 10. モノクローナル抗体とは? 11. モノクローナ

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報道関係者各位

なお本研究は 東京大学 米国ウィスコンシン大学 国立感染症研究所 米国スクリプス研 究所 米国農務省 ニュージーランドオークランド大学 日本中央競馬会が共同で行ったもの です 本研究成果は 日本医療研究開発機構 (AMED) 新興 再興感染症に対する革新的医薬品等開発推進研究事業 文部科学省新学術領

平成14年度研究報告

2017 年 2 月 1 日放送 ウイルス性肺炎の現状と治療戦略 国立病院機構沖縄病院統括診療部長比嘉太はじめに肺炎は実地臨床でよく遭遇するコモンディジーズの一つであると同時に 死亡率も高い重要な疾患です 肺炎の原因となる病原体は数多くあり 極めて多様な病態を呈します ウイルス感染症の診断法の進歩に


ヒト胎盤における

ワクチン免疫の基礎と臨床 ワクチン効果を上げるもの下げるもの Toll 図 1 自然免疫と獲得免疫 る これにより 2 度目の抗原刺激に対して急速な免疫応答が可能となる ワクチンは 病原体の曝露を受ける前に この獲得免疫を成立させておくことが目的である [ 免疫の獲得機序 ] ウイルスに対する獲得免

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資料 1 第 9 回厚生科学審議会予防接種 ワクチン分科会研究開発及び生産 流通部会平成 27 年 1 月 30 日 ( 金 ) < アジュバント開発研究の新展開 > 石井健 ( 独 ) 医薬基盤研究所 大阪大学免疫学フロンティア研究センター 1

アジュバントの効果とは アジュバント入り 免疫反応 強い免疫応答 長期の免疫応答 アジュバントなし 早期の免疫応答 時間 2

アジュバントの発見 発明 < 忘れられがちなワクチン開発史の功績のひとつ > Ramon によるアジュバントの発見 (1920s) Glenny らによるアルミニウム塩アジュバントの開発 3

アジュバントとは? 1) ワクチンの効果を増強する因子の総称 2) ラテン語の助けるという意味を持つ adjuvare ( アジュヴァーレ ) が語源 1)Immunologist s dirty little secret (C Janeway 1989) ( 抗原にアジュバントをいれないと免疫が起きないことは免疫学者は皆知っていたにもかかわらず なぜ必要かという作用機序がはっきりせず 論文などの発表でもあまり表立って記載されていなかった ) 4

アジュバントの受容体が存在し ワクチンに必須な樹状細胞を厳密に制御していることが明らかになる 結果 2011 年のノーベル賞に Bruce A. Beutler Jules A. Hoffmann Ralph M. Steinman The Nobel Prize in Physiology or Medicine 2011 was divided, one half jointly to Bruce A. Beutler and Jules A. Hoffmann "for their discoveries concerning the activation of innate immunity" and the other half to Ralph M. Steinman "for his discovery of the dendritic cell and its role in adaptive immunity". 5

背景 : 有効な免疫 ( ワクチン効果 ) を獲得するには自然免疫活性化が必須である 自然免疫 獲得免疫 抗原特異的免疫反応 炎症反応 数分数時間数日数ヶ月 - 年 シグナル 2 = 病原体成分 ( 核酸など ) TLR ligands = アジュバント ワクチン 病原体 ( ダメージを受けた細胞 ) シグナル 1 = 抗原 自然免疫受容体 (TLR 等 ) 抗原提示細胞 ( 樹状細胞など ) Cytokines Co-stimulation MHC-peptide TCR T 細胞 B 細胞 免疫反応 免疫寛容 Ishii KJ, Uematsu S, Akira S. Curr Pharm Des. 2006;12(32):4135-42. 6

インフルエンザワクチンの種類 インフルエンザワクチンの作用機序 : 内因性アジュバントが鍵 インフルエンザに罹ったことがない人 インフルエンザウイルス 不活化全粒子ワクチン スプリットHAワクチン ( 現在日本で使用されているワクチン ) 化学的な不活化 感染性をなくした ウイルス表面抗原 (HA 抗原 ) の精製 ウイルス RNA を除去した インフルエンザに暴露されたことがある人 自然免疫反応 mdcs RIG-I Uncertain NLR TLR7 上皮細胞 マクロファージ I 型インターフェロン炎症性サイトカイン pdcs pdcs I 型インターフェロン TLR7 自然免疫反応なし 免疫が成立しない Innate immunity 自然免疫反応は必ずしも必要ではない 適応免疫反応 CD8+Tcell 細胞障害活性 CD4+Tcell IFNγ の産生 Bcell Th1 タイプ抗体の産生 Koyama S et al J. Immunol. 2007 Koyama S et al Science TM 2010 Aoshi T et al Curr. Op. Virol. 2011 メモリー CD4+Tcell IFNγ の産生 よく効くインフルワクチンには内因性のアジュバント成分 (RNA) が入っている 7 Adaptive immunity

ワクチン開発研究は感染症の枠を超えて広がっている分類疾患標的抗原 神経疾患 循環器疾患 自己免疫 アレルギー アルツハイマー病パーキンソン病クロイツフェルト ヤコブ病動脈硬化症 高血圧症 1 型糖尿病重症筋無力症 全てアジュバントが必要 アミロイド β α シヌクレチンプリオン Cholesterl ester transfer protein ApoB100 oxidized LDL アンジオテンシン I/II インスリン GAD IL-1β アセチルコリン受容体 腫瘍 中毒 (40) 炎症 花粉症などアレルギー気管支喘息癌 ニコチン コカイン フェンサイクリジンメタンフェタミンヘロイン モルヒネ 慢性関節リウマチ 花粉抗原 ネコ抗原などアレルゲン IL-5 癌抗原 それぞれの中毒物質 TNFα, IL-6 他 避妊肥満症骨粗しょう症 HCG GnRH Ghrelin TRANCE/RANKL 鉄谷耕平, 小檜山康司, 石井健 Pharma Medica 29(4): 9-16 2011 8

アジュバントの種類と開発状況 分類アジュバント特徴 鉱酸塩 毒素 O/W エマルジョン 水酸化アルミニウム リン酸アルミニウムなど CTB 大腸菌易熱性毒素 MF59 AS03 1920 年代に見いだされたもっとも古く汎用されているアジュバント 形状 性質は結晶 アモルファスなど多岐にわたる 抗原特異的 Th2,IgE 誘導が強い ワクチンと経鼻投与することにより IgA 産生を誘導 臨床試験で顔面神経麻痺が起き 臨床応用はされていない 粒子が小さく細胞に取り込まれやすく 体液性免疫を誘導 インフルエンザワクチンのアジュバントとして使用されている スクワレンベースの 2008 年に欧州で認可された H5N1 ウイルスワクチンのアジュバント W/O エマルジョン Montanide ISA 51/ ミネラルオイルと植物由来界面活性剤 日本では癌ペプチドワクチンのアジュバントで臨床研究が行われている 樹状細胞を活性化 Bio polymer 植物成分 ( サポニン ) Advax/ Inulin polymer Hemozoin / heme polymer QS21 ISCOM/ 脂質 + サポニンのミセル HBV インフルエンザなどのワクチンアジュバントとして開発中 ヘムのポリマー 各種動物でインフルエンザなどアジュバント効果 南米の植物 QuiA 由来サポニン CTL を誘導することができる 現在開発中 直径 40nm ほどの粒子 CTL を誘導することができる 現在開発中 小檜山康司 石井健 自然免疫とワクチン開発 医学のあゆみ Vol.234 No.5(2010) p608-614 を改変 9

アジュバントの種類と開発状況 分類アジュバント特徴 Lipid A 蛋白核酸サイトカインカチオン AS04/MPL+ アルミニウム塩 RC-529/ MPL アナログ AS02/ スクアレン +QS21+MPL (W/O) AS01/ リポソーム +QS2+MPL フラジェリン dsrna CpG ODN STING ligand IL-12 GM-CSF DOTAP DDA 細胞性免疫を誘導 MPL とアルミニウム塩の混合剤 HPV ワクチンのアジュバントとして欧州で認可 細胞性免疫を誘導 HBV ワクチンのアジュバントとしてアルゼンチンで認可 MPL と QS21 との混合剤 マラリアワクチンのアジュバントとして開発中 マラリアワクチンのアジュバントとして開発中 TLR5 の細菌鞭毛由来の蛋白リガンド 細胞性免疫を誘導 現在開発中 TLR3 の RNA リガンド インターフェロン誘導薬として古くから知られるも炎症誘導能がつよく 安全性に問題 現在改変体の開発が盛ん TLR9 の DNA リガンド 細胞性免疫を誘導 HBV ワクチンのアジュバントとして承認が近い デリバリー機能を有する第 2 世代の開発が進んでいる 細菌のセカンドメッセンジャーや宿主由来の Dinucleotide IL-12 は細胞性免疫を誘導 GM-CSF は現在開発中の前立腺がんに対する樹状細胞ワクチンのアジュバントとして開発中 DNA ワクチンの安定性や抗原の発現量を増大させる 細胞性免疫を誘導 現在開発中 その他シクロデキストリン 広く使われている添加剤だが アジュバント効果を有することが判明 小檜山康司 石井健 自然免疫とワクチン開発 医学のあゆみ Vol.234 No.5(2010) p608-614 を改変 10

世界で使用 ( 認可 ) されている 代表的な 添加 アジュバント ワクチンアジュバント 青枝大貴, 石井健日本臨牀 69(9): 1547-1553 2011 11

日本国内で販売されているアジュバント添加ワクチン対象疾患ワクチン名アジュヴァント製造販売ジフテリア成人用沈降ジフテリアトキソイド ジフトキ ビケン F リン酸アルミニウム阪大微研 田辺三菱 沈降破傷風トキソイド 生研 塩化アルミニウムデンカ 田辺三菱 破傷風 DT 沈降破傷風トキソイド 化血研 塩化アルミニウム化血研 アステラス 沈降破傷風トキソイド タケダ アルミニウム塩武田 沈降破傷風トキソイド 破トキ ビケン F 水酸化アルミニウム阪大微研 田辺三菱 沈降破傷風トキソイド S 北研 塩化アルミニウム北里 第一三共 沈降ジフテリア破傷風混合トキソイド 生研 塩化アルミニウム デンカ 沈降ジフテリア破傷風混合トキソイド タケダ アルミニウム塩 武田 沈降ジフテリア破傷風混合トキソイド 北研 塩化アルミニウム北里 第一三共 沈降ジフテリア破傷風混合トキソイド 化血研 塩化アルミニウム化血研 アステラス 沈降ジフテリア破傷風混合トキソイド DTビック リン酸アルミニウム 阪大微研 田辺三菱 沈降精製百日咳ジフテリア破傷風混合ワクチン 塩化アルミニウム デンカ 沈降精製百日咳ジフテリア破傷風混合ワクチン 塩化アルミニウム 化血研 アステラス 沈降精製百日咳ジフテリア破傷風混合ワクチン タケダ アルミニウム塩 武田 DTP 沈降精製百日咳ジフテリア破傷風混合ワクチン 化血研シリンジ 塩化アルミニウム化血研 アステラス 沈降精製百日咳ジフテリア破傷風混合ワクチン S 北研 塩化アルミニウム北里 第一三共 沈降精製百日咳ジフテリア破傷風混合ワクチン トリビック リン酸アルミニウム阪大微研 田辺三菱 沈降精製百日咳ジフテリア破傷風混合ワクチン S 北研 塩化アルミニウム北里 第一三共 ビームゲン水酸化アルミニウム化血研 アステラス B 型肝炎ヘプタバックスー II 硫酸アルミニウム萬有 HPV サーバリックス AS04 水酸化アルミニウム +MPL GSK 肺炎球菌プレベナー水性懸濁皮下注リン酸アルミニウムファイザー 武田 インフルエンザ 乳濁細胞培養 A 型インフルエンザ HA ワクチン (H1N1 株 ) MF59( スクワレンを含む ) ノヴァルティス アレパンリックス (H1N1) 筋注 AS03( スクワレンを含む ) GSK 12

新規アジュバントの医療ニーズ < アラムアジュバントの限界および問題点 > 液性免疫は誘導されるが細胞性免疫の誘導が低い 発熱やアレルギー反応誘導 (IgE) などの副反応 細胞性免疫を誘導するアジュバント 核酸 (DNA RNA) アジュバント 脂質アジュバント アラムより副反応が低いアジュバント 低細胞毒性粒子アジュバント 低分子アジュバント 混合アジュバント AS04 ( アラム +CpG) 対象疾患に合わせたきめ細かいワクチンおよびアジュバントのデザインが求められている 13

アラムの作用機序の研究が進化アラムはアジュバントではない!??? =アラムは アジュバント誘導因子 である Inflammatory DC Alum TBK1 IRF3 signaling IRF3- independent signaling imono migration? Type 2 T cell differentiation? IgE production IgG1 production 100nm Macrophages phagolysosome phagolysosome disruption Kuroda E, Ishii KJ et al., Immunity (2011), Marichal T, Ohata K et al., Nature Medicine (2011) ATP P2X7 or others Syk p38 MAPK NALP3 ASC caspase-1 NALP3 inflammasome membrane PGE 2 phospholipid PLA arachidonic 2 acid COX-2 mpges-1 partial? IL-1 IL-18 IL-1 IL-18 pro-il-1 pro-il-18 pro-il-1 pro-il-18 COX-2 mpges-1 PAMPs TLR nuclear 14

ワクチン アジュバントの作用機序の研究が変化 : シリンジの中身だけ調べてもわからない Desmet C and Ishii KJ Nat. Rev. Immunol. 2012 15

背景 < アジュバントの功罪 > 臨床応用への期待と副作用の危険性 罪 組織障害 自然免疫 アスベスト肺など ナノ粒子による細胞死? マクロファージ活性化? 獲得免疫 慢性炎症自己炎症性疾患群自己免疫リウマチなどアジュバント因子? アジュバント 功 自然免疫活性化 樹状細胞 B 細胞活性化 病原体 ガン細胞 Th1, Th2 ワクチン サイトカイン インターフェロン NO ケモカイン アレルゲン 抗原特異的 B,T 細胞 ( 抗体 細胞免疫 ) IgE, 好酸球 耐感染症 抗ガン作用 抗アレルギー作用 ワクチン添加アジュバント 16 石井健 中西憲司ら未発表

次世代アジュバント研究会 について 設立 : 平成 22 年 10 月 趣旨 : アジュバント研究促進のための産学官共同研究のプラットフォーム組織 研究会メンバー 米田悦啓 (( 独 ) 医薬基盤研究所理事長兼研究所長 ): 会長 審良静男 ( 大阪大学免疫学フロンティア研究センター拠点長 ) 中西憲司 ( 兵庫医科大学学長 ) 清野宏 ( 東京大学医科学研究所教授 ) 瀬谷司 ( 北海道大学大学院医学研究科教授 ) 石井健 (( 独 ) 医薬基盤研究所アジュバント開発プロジェクトリーダー ) 以上が研究会幹事 [ その他の研究会メンバー ] 以下の企業の研究者 製薬企業 アステラス製薬 大塚製薬 塩野義製薬 ゼリア新薬工業 第一三共 大日本住友製薬 武田薬品工業 田辺三菱製薬 中外製薬 MSD ク ラクソ スミスクライン サノフィハ スツール ノハ ルティスファーマ ファイザー など ワクチンメーカー ( 財 ) 化学及血清療法研究所 ( 学 ) 北里研究所 ( 財 ) 阪大微生物病研究会 バイオベンチャー MBR ジーンデザイン セルメディシン など 現在までに 8 回の次世代アジュバント研究会を開催 17

アジュバント有効性マーカーの必要性 アジュバントデータベースプロジェクト ワクチン医療による予防医学の普及は医療費削減につながり アジュバントはコスト削減に寄与 そのため感染症 ガン アレルギーワクチンへのアジュバントの開発研究は世界的な競争に しかし 他の創薬 ( 低分子医薬 抗体医薬 ) に比べ アジュバントの有効性指標は未開拓分野 アジュバント安全性マーカーの必要性 外資のアジュバント付与新型インフルワクチンの導入などによるアジュバントの安全性への社会的関心の高まり 日本の産学官連携や支援 そして審査行政の立ち遅れ アジュバントの安全性に関する有効な指標の不足 ( 厚生労働省科研費指定研究 H24-29) 次世代の免疫医薬として期待されるアジュバントの開発研究 ( 有効性 ) および審査行政 ( 安全性 ) に寄与するバイオマーカー探索可能なデータベースを構築する 日本発の次世代アジュバント創薬 アジュバント開発企業との有効性指標 免疫制御バイオマーカーの検索 アジュバント開発研究産学官コンソーシアム 認可済み 臨床試験中 開発中のアジュバントによるヒト細胞 マウス個体の生物反応を総合的に解析したデータベースを構築 検定 審査機関との評価法バリデーション 18 日本ならではの高品質で安全なアジュバントの創製へアジュバント安全性評価法の確立

課題 1 課題 2 課題 3 平成 24-26 年度の研究進捗状況まとめ マウス ラットにおけるアジュバント投与後の各種臓器の遺伝子発現解析の実施 基盤研 感染研 および CRO で動物実験を行い, 採取された臓器サンプルの遺伝子発現データ取得および解析を進め アジュバントデータベースのプロトタイプを完成させた アジュバント関連治験ヒトサンプルから取得された mirna データの解析 血清中からチップで取得された約 1200 のヒト mirna データの解析を進め, 各種表現型 ( 発熱, 抗体価 ) およびアジュバントに関連した数種のバイオマーカー候補の抽出を達成した 新規ワクチン アジュバントの開発研究およびアウトリーチ活動 チーム研究による新規ワクチン アジュバントの開発研究を推進し 第 1 世代の核酸アジュバントの医師主導型治験を開始した 第 2 世代の DD S 機能つき核酸アジュバントを開発 ( 企業導出予定 ) その他約 20 種を同定 課題 4 ワクチン アジュバント開発研究の橋渡し また審査行政等への働きかけ 次世代アジュバント研究会 の開催 PMDAの科学委員会 アジュバントガイドライン作成におけるWHO 会議などのアウトリーチ活動を行った 19

次世代型ワクチンの実用化に向けた検討及び品質管理に関する基準の在り方に関する研究班 (H24-27) 20

参考資料 21

第 2 世代核酸アジュバントの開発 =K3-SPG 医薬基盤研究所石井健ら t-spg CpG ODN (*K3) (20 塩基 ) **Poly da 40 (40 塩基 ) CpG (K3)-dA 40 (60 塩基 ) 多糖 [t-spg (3 量体 )] 多糖 [s-spg (1 量体 )] s-spg * 合成核酸である CpG ODN にはいくつかの型があり 今回は K 型と呼ばれる CpG ODN (K3) を使用した ** 多糖と核酸の複合体作製にはこの配列が必須である CpG (K3)-SPG 0.25N NaOH アルカリ変性 中和 330mM NaH 2 PO 4 CpG (K3)-dA 40 これがアジュバントとして有用かを検討した 分子量 : 450KDa 3 重螺旋構造 22 Kobiyama K et al PNAS 2014

第 2 世代核酸アジュバントの開発 =K3-SPG 医薬基盤研究所石井健ら 実験スケジュール マウス 2 週間後 2 回免疫 致死量のインフルエンザウイルス感染 生存率 (%) 100 80 60 40 20 0 0 5 10 15 20 精製ワクチン + * 新規アジュバント 不活化全粒子ワクチン スプリットワクチン * 多糖 / 核酸複合体 = K3-SPG ウイルス感染後の日数インフルエンザスプリットワクチンの溶液と混ぜるだけで非常に高い有効性 ( 感染防御能 ) を示す 23 Kobiyama K et al PNAS 2014

K3-SPG アジュバントのイメージング アジュバントの開発 CMC におけるバイオディストリビューションの評価系の構築が必須であるーーーーー >2 光子顕微鏡を使用することによりリンパ節におけるアジュバント取り込み細胞のイメージングに成功したーーー > 新たな評価系 Mice: WT B6 蛍光ラベルした抗原 アジュバントを投与 24h 所属リンパ節を 2 光子顕微鏡で撮影 Kobiyama K et al PNAS 2014 24

安全性の高い添加剤がアジュバントになることを発見ーシクロデキストリン (Hydroxypropyl-b-CD) 医薬基盤研究所石井健ら Anti-OVA Total IgG titer 10 8 10 6 10 4 10 2 0 Total IgG の測定結果 # # # # Anti-OVA IgE (ng/ml) 200 150 100 50 0 IgE の測定結果 * HP-b-CD はアラムアジュバント (Alum) と同等の IgG 能を持つが アラムの副作用でもある IgE の産生誘導が低い 25 Onishi M et al J. Immunol. In press 2015

インフルエンザ HA split ワクチンにおけるシクロデキストリン (Hydroxypropyl-b-CD) のアジュバント効果 Virus: 4x10 4 TCID 50 A/Osaka/129/2009 (H1N1) 致死抑制効果 Survival (%) 100% 80% 60% 40% 20% # # # Control HA HA/3% HP-b-CD HA/10% HP-b-CD HA/30% HP-b-CD 0% 0 5 10 15 Day after infection # p<0.05 vs HA, Log-rank test and wilcoxon s test HP-b-CD は HA split ワクチンの致死抑制効果を高めた 26 Onishi M et al J. Immunol. In press 2015

低分子抗がん薬 (DMXAA) のワクチンアジュバント効果 フラボノイドの一種である低分子化合物 : 5-6-dimethylxanthenone-4-acetic acid =DMXAA のアジュバント機能を検証 Anti-OVA tigg titer (x10 5 ) 4 3 2 1 0 PBS 2.5 10 100 200 Anti-OVA tigg titer (x10 5 ) 2.5 2.0 1.5 1.0 0.5 0.0 *** ****** PBS DMXAA Alum CpG Anti-OVA IgG1 titer (x10 5 ) 2.5 2.0 1.5 1.0 0.5 0.0 ** *** PBS DMXAA Alum CpG Anti-OVA IgG2c titer (x10 5 ) 2.5 2.0 1.5 1.0 0.5 0.0 *** PBS DMXAA Alum CpG DMXAA は STING リガンドとして自然免疫を活性化し アルミニウム塩アジュバント (Alum) 以上の強いアジュバント活性を示す Tang CK et al Plos One 2013 27

上市されているアジュバント入りインフルワクチンに匹敵する防御効果を 新規アジュバント ヘモゾイン で達成 < フェレットを用いたインフルエンザワクチン 感染モデル > SV SV/sHZ SV/MF59 (Fluad) (A) SV SV/sHZ HI 抗体価 (GMT with 95%CI) 2560 640 160 40 10 1st A/California/7/2009 (H1N1) * * * * 2nd 0 14 28 42 Days after first immunization * * * Viral titer in nasal wash fluids (Log 10 of TCID 50 /ml) 5 4 3 2 1 *** 感染後の鼻腔ウイルス量 1 2 3 4 5 6 Days after viral infection Onishi M et al Vaccine 2014 28