太陽 地球 生命圏相互作用系の変動学 Dynamics of Sun-Earth-Life Interactive System (SELIS-COE) 1 拠点リーダー : 安成哲三 環境学研究科地球環境科学専攻 太陽地球環境研究所 地球水循環研究センター 年代測定総合研究センター
地球はシームレスである エネルギーの流れ物質循環水循環
太陽 地球 生命圏相互作用系の特性を診断し, タイム スケールに応じた環境変動の理解と将来予測を目指す 図 2: 太陽活動変動 太陽風 太陽 フレア CME 電磁波放射 宇宙線 惑星間空間 磁気圏 生命圏 電離圏大気圏 氷床分布 海陸分布 地圏 水圏 放射線帯粒子 電磁波粒子 相互作用 人間活動 オーロラ 磁気嵐サブストーム
ネルギー過程太陽 地球 生命圏相互作用系の変動学 2 太陽 電磁気圏エ地球表層圏 物質循環 環境学研究科地球環境科学専攻 ( 理学研究科関連専攻 ) 太陽地球環境研究所地球水循環研究センター年代測定総合研究センター 太陽地球生命圏システム研究所 ( 仮称 ) 設立へ 生命圏 エネルギー 水 物質循環過程を通して相互作用するシステム 水循環 時間スケール毎に異なる素過程 フィードバックが機能しており その解明とモデリングが重要である
水循環過程は気候システムの維持と変動に関わるエネルギー過程とシステムのフィードバック機構に 重要な役割を果たしている 水循環過程による気候システムのフィードバック
地球の歴史 ( 進化 ) は 一方向 一回限りである 非線形 非定常 非平衡系としての 地球の時間発展
( 南極氷床 + 北半球氷床が存在する ) 氷河時代は約 300 万年前に始まり 現在も続いている (4~10 万年周期の気候変化を繰り返している ) この氷河時代に人類は出現し 人類活動は拡大してきた
南極氷床コア ( ボストーク ) から得られた過去 40 万年の CO2, CH4, T( 気温 ) 変動 380ppm (present) CO2 Temp CH4
地球は物理 化学 + 生命圏の システムである 生命圏の能動的役割 環境 とは何かの見直し
紫外線 hν 太陽 大気圏 水圏 生命圏の相互作用 O2 + hν1 2O2 O + O2 + M O2 +M O3 + hν2 O + O2 O + O3 2O2 オゾン層 ( 成層圏 ) の維持 形成 cold trap O2 可視光 水循環 対流圏 CO2 + H2O CH2O + O2 H2O 光合成 図 1:
H2O ( 降水 蒸発散 ) CO2 O2 ( 光合成 ) 大陸スケールの生態系は水 物質循環を通して地球の気候をコントロールしている GAME-Siberia 観測研究の成果 ( 地球水循環研究センター ) シベリアヤクーツク付近のタイガ
Then, how should we understand the relation between evolution of life and environment? では 私たちは環境と生物 ( 進化 ) の関係をどう理解すべきだろうか?
I have called this principle, by which each slight variation, if useful, is preserved, by the term Natural Selection. Charles Darwin from "The Origin of Species" Charles Darwin British Naturalist 1809-1882 生命圏が環境を維持 形成している事実は ダーウィンの 進化論 の基本である環境への 適応 と 自然選択 と 矛盾しないのだろうか? Adaptation and natural selection
そもそも地球科学と生物学はどこで別れたのか? 博物学では 生物学と地 ( 球科 ) 学の区別はなかった 博物学における生物の記載 記述の蓄積と 地質学による地球史の解読を背景にダーウィンの進化論が生まれた ( ダーウィンの偉大さ : 膨大なデータをもとに 地球生命を解釈するひとつの理論を提出したこと ) しかし ダーウィンの進化論の基幹をなす 自然淘汰 と 適応 の概念には 生物が依存する無機的 ( 物理 化学的 ) 自然が 独立に存在することを前提としていた このあたりから 物理 化学 生物 地学という分科ができあがったのか? 生物的自然 vs 無機的自然の対比 ( 対立 ) の構図ができあがる? ( お互いがお互いの境界条件としてのみ扱われてきた )
生物圏は環境 ( 気候 ) も変える The biosphere can control earth environment. 植生域はその空間スケールに応じて 自らを含む領域の環境 ( 気候 ) も変える 気候 生態 ( 相互作用 ) 系の概念必要 新たな生物多様性 ( 一様性 ) のダイナミクスが必要 新たな地球気候システムのダイナミクスが必要 やはり ガイア論が重要??
ガイア (Gaia) 理論の革命性 デイジー ワールドでみごとに説明される生命と環境の相互作用
太陽エネルギーが大きく変化しても 白と黒のデイジーの共生により 地球 (Daisy World) の環境は一定温度に維持される ( 地球のホメオスタシス )
J.Lovelock: http://hotwired.goo.ne.jp/ecowire/interview/010123/ ガイア理論は 生物種が自然選択によって進化するというダーウィン進化論を踏まえた新しい展開ですが これまでの生物学のように 所与条件としての環境に生物がただ適応するという考え方を斥けます そのかわり 生物は環境に適応するだけでなく環境を改変すると考えるのです そして生物は環境を変えることにより 岩石 大気 海洋などのすべてと 全生命自身とを含むシステムの一部となる 微生物から樹木 ユリ クジラたちにいたるまで 文字どおり生きとし生けるもののすべてが 絶え間なく物理環境と相互作用を続けていると見るのです そして その相互作用から ガイア という自己制御システムが出現します
ところで ガイア論と今西 自然学 の 意外な共通性
今西錦司 (1902-1992) 1902.1.6~1992.6.15 生態学者 人類学者 日本の霊長類学の創始者 京都帝国大学農学部卒業 (1928) 京都大学 岡山大学 で教授職 岐阜大学では学長を歴任 日本の登山界 生態学 人類学 霊長類学と多方面で活躍された 初期にはカゲロウの分類と生態に関する研究から 生物群集の空間的構造に着目しすみわけの概念を提唱した 晩年には進化論と自然哲学の研究に没頭し 種社会論の立場から突然変異と自然選択によらない進化論を提唱し また自然のありのままの受容と認知の重要性を 自然学 として主張した 京都大学学士山岳会長 探検部顧問 チリ パタゴニア計画を今西先生宅に行き 冷や汗をかきながら説明した あそこは山もあるやろ 山にも登って来い というのがコメントだった http://www.geocities.co.jp/natureland/4270/imanishi/
今西錦司 生物の世界 1941 生物はそれ自身で完結された独立体系ではなくて 環境をも包括した一つの体系を考えることによって はじめてそこに生物というものの具体的な存在のあり方が理解されるような存在である 環境といえどもやはり生物とともに もとは一つのものから生成発展していきたこの世界の一部分であり その意味において生物と環境とはもともと同質のものでなければならぬ
今西錦司 生物の世界 1941 生物の中に環境的性質が存在し 環境の中に生物的性質が存在するということは 生物と環境とが別々の存在でなくて もとは一つのものから分化発展した 一つの体系に属していることを意味する たえず環境に働きかけ 環境をみずからの支配下におこうとして努力しているものが生物なのである
生態系におけるバイオマスの階層性 植物プランクトンに代表されるような栄養段階は低いがエネルギー的には最も大きい部分を占める微生物群の進化は 気候システムと密接な関係をもつ共生関係を大気 水圏系ともつに至っている.. これに対し より 進化 した動物群は これら栄養段階の低い生物群が作り出す生態学的環境に対し より依存的である 逆の言い方をすれば ( 人間のような ) 栄養段階の上位の生物ほど急激な環境変化には弱いということになろう 安成哲三 遺伝 1991 年 8 月号 ( 地球温暖化 と生物圏 ) ファインズ 地球の歴史と生態学 (1977) より引用 森林 草原も大きなエネルギーをもち 動物群 人間を支えている
地球学における人間原理 Anthropic principle in Chikyu-gaku ガイアにおいては 最も弱い ( 影響を最も受けやすい ) 立場にいながら ガイアの状態を変えうるような外力を ガイアに与えている存在 ただ このガイアの仕組みを認識しつつあるのも 人間をおいて他にない 地球生命圏の維持に責任のある立場になってしまっている 地球の過去 現在を理解しつつ 未来を考え 行動することが重要である 地球環境研究における人間原理の重要性 人間活動が地球を改変しつつある 地球の認識は人間の知性に拠っている
気温と CO2 濃度の変化過去 16 万年 ( 南極氷床コア ) と今後 100 年 ( 予測 ) Temperature and CO2 The last 160,000 years (from ice cores) and the next 100 years Temperature difference from now C 10 10 IPCC(2001) 0 CO 2 in 2100 (with business as usual) Double pre-industrial CO 2 Lowest possible CO 2 stabilisation level by 2100 CO 2 now 160 120 80 40 Now Time (thousands of years)? 700 600 500 400 300 200 100 CO 2 concentration (ppmv)
地球学から基礎 臨床環境学への展開 From Earth System Science to Basic and Clinical Environmental Studies 拠点リーダー : 安成哲三 www.natureasia.com/nagoya-spotlight 05/39
産業革命以降の科学発展のパラダイム 自然 自然を理解する curiosity-driven 自然を利用する Societal-needs driven 19-20 世紀の近代合理主義は 自然を分断し 細分化することにより 理解することと 利用 応用することの仕分けを進めた 全体として有機的につながった自然の理解はできなくなってしまった ( 環境問題の根本原因 )
近代合理主義にもとづく環境研究の限界 地球科学等 環境を理解する curiosity-driven 環境研究 人と自然の相互作用 工学 農学等 環境を利用する環境を修復する Societal-needs driven 既存の学問分野の枠組みを前提にしたこれまでの 環境科学 における基礎 応用の連携 文 理融合などは本質的にうまくいかない歴史的構造をもっている
基礎医学 しくみを理解する curiosity-driven 唯一の例外? 医学 病気 ( 病変 ) 症候群からだの異変 患者を診断 治療する場 ( 病院等 ) の共有 病気を治す ことを前提に成り立っている医学では 病気のしくみの理解 ( 基礎 ) とは双方向的に スパイラル的に進められてきた 臨床医学 治療法を確立する Societal-needs driven
地球 地域環境の医学 としての環境学 基礎環境学 しくみを理解する curiosity-driven 地球 ( 地域 ) の環境問題 異変 環境問題の現場の共有 人間によって変えられつつある地球 地域の環境問題の現場を 基礎 と 臨床 が共有して 健康な地球 の在り方を考えることが必須である 臨床環境学 持続可能な方策を確立する Societal-needs driven 地球全体 地域間で連関した問題群をどう解決するか?
拠点形成の構想と目的 地域の環境問題 ( 病気 ) の究明 ( 診断 ) と解決 ( 治療 ) には診断型研究と治療型研究の協働 連携が必須 診断型学問 地球科学 生態学 地理学 SELIS 地球生命圏研究機構 臨床環境学 地域での診断と治療に一貫して責任が持てる学問 診断 治療双方の研個別究者が問題の現場を共有することが重要 普遍 基礎環境学 隔絶した現状を如何に克服するか 臨床を支える共通の基盤を地域を越えて体系化する学問 様々な現場からの知見を共有 体系化 治療型学問 工学 農学 社会科学 GELP 国際環境人材育成 プログラム
統合環境学コースの教育の 2 本柱 専門力俯瞰力国際力交渉力 臨床環境学研修 (ORT) フィールド毎に 診断治療横断型の研究チームを組んで 問題解決型の調査研究を行い 提言をまとめる 現場での経験 理論的な考察 両者の緊密な連携 基礎環境学講究 地域間で共通する課題について 診断治療横断型のチームをつくり レビューと討論を通じて 共同レポートを完成させる 双方を 必修とする! 24/39