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別紙 2 平成 25 年度 北海道における不良土対策について 北海道における不良土対策マニュアルの改訂 ( 独 ) 土木研究所寒地土木研究所寒地地盤チーム 佐藤厚子 ( 独 ) 土木研究所寒地土木研究所寒地地盤チーム安達隆征 ( 独 ) 土木研究所寒地土木研究所寒地地盤チーム山田充. 寒地地盤チームでは 北海道に分布する土砂のうち自然含水比状態で使用することが困難な材料を有効利用するための手引き書として 北海道における不良土対策マニュアル を発行した このマニュアルは 北海道で発生する不良土に関して 技術的な課題を解決することを目的として 不良土の判定方法 対策工法 品質管理方法についてわかりやすく解説したものである 本報告は マニュアルを有効的に活用していただくための手順を示したものである キーワード : 不良土 判定 対策 品質管理 1. 北海道における不良土対策マニュアルの概要 北海道には 火山灰質土 高含水粘性土 蛇紋岩質土など 自然含水比状態で盛土に使用することが困難な材料が分布している このような土砂を有効利用するための手引き書として 1985 年に北海道開発局の技術職員向けに 北海道における不良土対策マニュアル ( 案 ) 1) ( 以降旧マニュアル ) を発行した しかし 発行から約 3 年が経過し 旧マニュアルに掲載されていない事例が増えたことから これらの項目を取り入れた内容に改訂する必要性が高まってきた 北海道における不良土対策マニュアル ( 以降マニュアル ) は 旧マニュアルの基本的な考え方を変えずに 旧マニュアル発行以降に得られた知見や基準などを取り入れ 213 年 4 月に改訂したものである 主な改訂内容および追加事項は 1 不良土の判定方法 2 酸性硫酸塩土壌対策 3 環境基準に関すること 4 固化材による改良土の品質管理方法 5 今後の研究によって実用化が可能な工法の紹介 6 積雪寒冷地での留意点などである 本報告では マニュアルを有効的に活用していただくため 簡潔に不良土対策の手順を示す 2. 北海道における不良土対策の手順 2.1 不良土の対策フローマニュアルでは 不良土 ( 写真 -1) を地山掘削したままの自然含水比状態で盛土材料として使用するのに適さない土および盛土完成後何らかの変状を起こし 一般交 写真 -1 不良土の例 通に支障が生じたり 河川堤防として問題が発生することが予想される土と定義している マニュアルの適用範囲は 原則として北海道開発局で実施する路体盛土および河川堤防などの一般的な土木工事における不良土対策としている 不良土対策の一般的手法としてフローチャートを図 -1 に示す 図 -1 より まず 発生土 ( 地山掘削したままの自然含水比状態の土 ) について 盛土材料として適しているか判断する 盛土材として適している場合は そのままの状態 ( 無処理 ) で盛土を施工する 盛土材として適していない場合は不良土であるので 適切な対策を行い 盛土を施工する 材料の品質に応じた品質管理を行いながら 施工し 維持管理する 以下に 図 -1 の各段階における作業内容を示す 2.2 不良土の判定対象土の不良土判定を行うにあたり 施工に用いる建

No 処分 発生土 不良土の判定 ( 盛土材として適さない ) Yes 不良土 対策工法の検討 対策が可能である Yes 対策 No 良質土 乾燥密度 2. 1.9 1.8 1.7 1.6 1.5 1.4 1.3 1.2 乾燥密度 コーン指数 qc=5kn/m 2 qc=3kn/m 2 w b w a w c 2 4 6 8 含水比 図 -2 締固め試験とコーン指数 8 7 6 5 4 3 2 コーン指数 施工 品質管理 3% 以上 9% 維持管理 図 -1 不良土対策フローチャート 2% 以上 3% 19% % 以上 1% 36% 設機械 現場条件のうち気象 施工時期 作業範囲 環境保全 供用開始時期などを検討する これらの結果と地盤工学的性質に関する調査 試験結果から 総合的に不良土の判定を行う 不良土の判定は 一般的にはトラフィカビリティ試験によるコーン指数により行う 盛土施工のためには 建設機械の走行に必要なトラフィカビリティを確保することが必要となる 建設機械のトラフィカビリティは 表 -1 に示すようにコーン指数から判定ができる 工事に使用する建設機械により 施工に必要なコーン指数は異なるので 不良土判定の基準値は現場ごとに異なる場合がある マニュアルでは 湿地ブルドーザの走行性を確 表 -1 建設機械の走行に必要なコーン指数 ( 道路土工要綱 に加筆 ) 建設機械の種類 コーン指数 q c (kn/m 2 ) 超湿地ブルドーザ 2 以上 湿地ブルドーザ 3 以上 普通ブルドーザ (15t 級 ) 5 以上 普通ブルドーザ (21t 級 ) 7 以上 スクレープドーザ 6 以上 ( 超湿地型は 4 以上 ) 非けん引式スクレーパ ( 小型 ) 7 以上 自走式スクレーパ ( 小型 ) 以上 タイヤローラ (8t~2t) ダンプトラック 以上 12 以上 2) 図 -3 1% 以上 2% 36% qc=3kn/m 2 となる含水比と qc=5kn/m 2 となる含水比の差が全体に占める割合 保できない場合に不良土と判断しており q c =3kN/m 2 をすべて不良土としている 通常 材料土のトラフィカビリティ試験は 自然含水比状態の材料に対して行う しかし 不良土と判断された場合の対策として 強度を増加させることが目標となる 材料の強度は含水比と密接な関係があることから 締固め試験時に突固めを行う各供試体でコーン指数を測定する この試験は 比較的安価な方法で 不良土判定と対策に有効な方法であるので 今回の改訂で加筆した 図 -2 に示すように 含水比変化にともなうコーン指数の変化を求めることにより 改良の目標を定めることができる 例えば この図で自然含水比を w c とすると q c =3kN/m 2 となる含水比は w a であるので w a が含水比低下の目標値となる なお 含水比低下による強度増加を調べた 含水比の変化とコーン指数の関係を求めた図 -2 より q c =5kN/m 2 に対応する含水比 (w b ) と q c =3kN/m 2 に対応する含水比 (w a ) の差 (w a -w b ) を求めた 図 -3 3) は w a -w b の出現頻度全体を示したものである 全体の 72% が w a

不良土の含水比 (%) 16 14 12 8 6 4 2 qc=3kn/m2 となる含水比 wa w a =1.33w opt 細粒土 2 4 6 8 16 14 12 8 6 4 2 qc=3kn/m2 となる含水比 wa w a =1.35w opt 砂質土 2 4 6 8 16 14 12 8 6 4 2 qc=3kn/m2 となる含水比 wa w a =1.2w opt 礫質土 2 4 6 8 図 -4 不良土の含水比と最適含水比の関係 -w b =2% 以内である これは 含水比の変化がコーン指数に与える影響が大きいことを示し わずかな含水比の低下により 良質な土質に変化することを意味している 特に 夏期の施工では 2% 程度の含水比低下は比較的容易な場合が多い しかし 現場条件によっては わずかに含水比が増加するだけで q c =3kN/m 2 の湿地ブルドーザの走行性を確保できなくなり 盛土の施工が不可能となる場合がある 特に 秋期から冬期にかけての施工は 気象条件により含水比が増加しやすい場合が多く 含水比の変化を予測して不良土の判定をする必要がある コーン指数を測定できない場合の判定方法として 土質定数による判定を参考値として示した 図 -4 3) は 寒地地盤チームで実施した土質試験データより 最適含水比 w opt と施工限界であるコーン指数 q c =3kN/m 2 となった含水比 w a の関係を示したものである この図には これまで 寒地地盤チームで不良土対策に関する対応をした箇所のうち 捨土対象となった材料の最適含水比 w opt と自然含水比 w n の関係もあわせて示している 図より w opt と w a の関係は 次のとおりである w a =1.33 w opt ( 細粒土 ) w a = 1.35 w opt ( 砂質土 ) w a = 1.2 w opt ( 礫質土 ) 上記の式から 自然含水比が w a 以上となったときに 不良土となる このほかに 地盤材料の工学的分類方法による判定として 風化火山灰のうちの火山灰質粘性土 Ⅱ 型 CH ( 粘土 ) w n ( 自然含水比 ) が w L ( 液性限界 ) より高い場合は 不良土と判定される 2.3 対策工法の検討不良土と判定された場合には 対策方法を検討する 材料の性質上盛土材として適用できないものや 対策の費用が大きすぎる場合は 捨土処分しなければならない場合がある 4) (1) 不良土対策工の種類と原理不良土対策工は 大きく分けて水分の規制 粒度調整および高密度化がある (a) 水分の規制この方法は 盛土材料の含水比を低下させることにより 効果的な締め固めを行うことのできる材料に改良する方法である 安価な方法としては 曝気乾燥がある これまでの調査では 5) 曝気乾燥では表面部しか曝気乾燥の効果がないことがわかった 効果的に曝気乾燥するときには 表面のかきおこし 曝気乾燥を排水性材料土上で実施するなどの方法と併用すると効果的である また 粘性土の曝気乾燥による改良には 砂質土を混合すると効果が大きい 6) しかし 北海道のような積雪寒冷地で夏が短い地域では 曝気乾燥する時期が限定されるので自然に頼った含水比の低下は適応期間が短い また 強制的な乾燥は費用が高くなる場合がある (b) 粒度調整粒度分布が均等な異なる種類の土砂を混合することにより 締め固まりやすい材料にする方法である この方法は 改良対象地域に適切な粒度分布の材料がある場合には効果的であるが 適切な材料が付近にない場合は 材料を購入しなければならない (c) 高密度化固化材による改良は高密度化の工法のひとつであり 固化材により土粒子同士を結合させることにより強度増加を図る方法である 固化材を混合することから 短時間で確実に強度が期待できるが 投入する固化材が比較的高価である 近年 北海道において固化材により発生土を有効利用する工事が多いことから マニュアルでは 固化材により改良した材料の凍上性 低温下で養生した場合の強度発現特性に関する情報を新たに追加しており 後述する (d) その他の不良土対策工その他の不良土対策として 強制的な脱水工法である圧縮 遠心 凍結脱水の各工法がある

目標値の設定 室内配合試験固化材 固化材混合率の仮定 品質管理値の決定 目標値の設定 地山密度の測定 28 日養生後の一軸圧縮強さ qu28(kn/m 2 ) 6 5 4 3 2 高炉 B 種セメント生石灰 1:1.4 1:1 試験施工施工時の固化材混合率の決定 混合土の密度の測定 本施工 2 3 4 7 1 日養生後の一軸圧縮強さqu 7 qu 1 (kn/m 2 ) 図 -6 7 日 1 日養生後の一軸圧縮強さと 28 日養生後の一軸圧縮強さ 施工管理 図 -5 固化材による改良フロー 2.4 固化材による改良固化材による改良手順を図 -5 に示す (1) 目標値の設定固化材による改良では 強度と環境基準のいずれも満足しなければならない 改良の目標強度と環境基準を次に示す (a) 建設機械が走行できる強度湿地ブルドーザの走行性を確保できるコーン指数として q c =3kN/m 2 以上であること (b) 盛土の安定性が確保できる強度一軸圧縮強度から判断し 次の値を標準とする 低盛土盛土高 2.5m q u =13kN/m 2 高盛土盛土高 2.5m 以上 q u =15kN/m 2 一軸圧縮試験は 6 日間空中養生 ( 生石灰は 9 日 ) 後 1 日水浸の 7 日強度とする マニュアルでは 施工速度に関して 7 日間で 1m の盛土施工を想定しているが 実際の条件に合わせることにより 目標強度を低減できる また 固化材による改良では 時間経過による強度増加を期待できることから 1m の施工が 7 日よりも長くなれば 目標強度を時間経過後に設定できる 例えば 1m の盛土を 28 日で施工する場合を考えてみる 7 日 1 日と 28 日養生後の強度の係を図 -6 に示した 図より 生石灰では 1 日から 28 日までの強度発現は大きくないが 高炉 B 種セメントでは 28 日強度は 7 日強度の約 1.4 倍である したがって セメントやセメント系固化材による改良では 高盛土の目標強度 q u7 を 15kN/m 2 /1.4 11 kn/m 2 とすることができる なお 実際に目標強度を低減する場合は室 内配合試験で確認する必要がある 7) (c) 六価クロム溶出量.5mg/l 以下であること (2) 室内配合試験 (1) の (a) (b) の強度に関する目標値を満足する固化材の種類と固化材量を求めるための室内試験を行う 室内試験では 3 種類から 4 種類の固化材 ( セメント系 2 種類 石灰系 2 種類程度 ) 4 種類の混合率で室内試験を行う 目標値を満足できる固化材混合率で六価クロム溶出量を確認する 以上より (a) (b) (c) すべての目標値を満足する固化材混合率を求め 試験施工の混合率を決める 固化材による不良土改良は 固化材と不良土を混合することにより生成される結合物質によって 土粒子間の接着を測って土の強度を増加させる方法である したがって 固化材により改良土した材料による盛土は 締固め度による盛土の品質管理を適用できず 強度で管理しなければならない その管理基準は次のとおりである (a) 建設機械が走行できる強度を得ることのできる固化材混合率が (b) 盛土の安定性が確保できる強度を得ることのできる固化材混合率よりも大きい場合は 転圧直後のコーン指数を測定し盛土の品質を管理する (b) 盛土の安定性が確保できる強度を得ることのできる固化材混合率が (a) 建設機械が走行できる強度を得ることのできる固化材混合率よりも大きい場合は 盛土の強度を一軸圧縮強さで管理する この場合 改良による盛土の一軸圧縮強さを測定することが困難であることから 現場での作業が迅速 簡単 安価な方法である衝撃加速度 7) により盛土の強度を測定する この場合 あらかじめ 衝撃加速度と一軸圧縮強さの関係 (7 日強度 ) を求めるための室内試験を行う

(3) 試験施工 (2) 室内配合試験で求めた固化材および固化材混合率で転圧回数を 2 4 6 回または 3 5 7 回として 施工で使用する機械建設により 試験施工を行う 目標強度を満足できる固化材混合率および転圧回数で盛土を施工する (4) 本施工試験施工で決定した固化材混合率と転圧回数で盛土を施工する (5) 施工管理盛土施工中は 目標値を満足していることを確認しながら 盛土作業を進める (6) 固化材による改良土を施工するための留意点固化材による改良土は 低温状態では発現強度が低いことから 寒冷な時期に施工するときは温度 周辺環境など養生条件に留意する (7) マニュアルで新しく紹介した固化材による改良技 1) 11) 術固化材を混合してから一定期間養生した後 破砕して締固め可能な材料である固化破砕土とする改良は新技術として紹介した 固化破砕土は適用方法により次の 2つがある (a) 補強土壁盛土への利用方法固化材により改良した材料は 内部摩擦角を有しない材料であることから 補強土壁盛土材として使用することができない しかし 固化破砕土とすることにより内部摩擦角を有する材料となることから 固化材により改良した材料であっても補強土壁背面盛土として使用できる (b) 固化材の使用量を低減する方法改良する対象の不良土の強度が低い場合 固化材混合直後に転圧に必要な強度を得るためには 多量の固化材を混合しなければならない しかし 多量の固化材を混合した場合 コストが高く 時間経過により盛土に必要な強度以上となる 固化材を混合してから転圧するまでの時間に余裕がある場合 固化破砕土とすることにより 使用する固化材量を低減できる これらの方法は いずれも北海道開発局で施工した活用実績がある 3. おわりに 本報告では マニュアルとの表現の違いや マニュ 11 アル発行後に得られた新たな知見を掲載しておりマニュアルには記載のない表現があることをお許し願いたい マニュアルは 印刷物としての発刊ではなく ホームページからダウンロードする方法で発刊している (http://jiban.ceri.go.jp/) このため 新しい知見が得られれば 随時更新を行う予定である なお マニュアルについて不明なことがあれば 寒地地盤チームまで ご相談いただきたい マニュアルが 現場で不良土問題が生じたときの対策の一助となれば幸いである 謝辞 : 最後になりましたが 本マニュアル作成に当たり 現場を提供いただきました北海道開発局の関係者の皆様 マニュアルについてのご討議をいただいた関係者の皆様には 末筆ながら心より感謝の意を表します 参考文献 1) 土質研究室 : 北海道における不良土対策マニュアル ( 案 ) 1985.2 2) 日本道路協会 : 道路土工要綱 ( 平成 21 年度版 ) p.287 29.6. 3) 佐藤厚子 西本聡 鈴木輝之 北海道における不良土 の判定方法の提案 第 47 回地盤工学研究発表会 213.7. 4) 松尾新一郎編 : 土質安定処理対策工便覧 1972. 5) 佐藤厚子 西本聡 前北賀則 : 浚渫工事にともない発生する高含水粘性土の有効利用について 地盤工学会第 49 回地盤工学シンポジウム論文集 24.11. 6) 佐藤厚子 山梨高裕 山田充 鈴木輝之 : 冬期における不良土対策の留意点 第 12 回技術報告会北海道土木技術会土質基礎研究委員会 214.2 7) 国土交通省 : セメント及びセメント系固化材を使用した改良土の六価クロム溶出試験実施要領 ( 案 ) 21.4. 8) 国土交通省北海道開発局 : 道路河川工事仕様書 付表 213.4. 9) 佐藤厚子 鈴木輝之 西本聡 : セメントおよび石灰改良土の発現強度に及ぼす養生温度の影響 地盤工学ジャーナル Vol. 3,No. 4,331-342 28.12. 1) 佐藤厚子 西本聡 九笹英司 : 固化破砕土の補強土壁背面盛土への利用 - 不良な土の新たな利用方法の提案 - 寒地土木研究所月報 No.667 28.12. 11) 佐藤厚子 西川純一 西本聡 : 改良した泥炭による盛土施工, 地盤工学会第 5 回環境地盤シンポジウム論文集 pp.271-276. 23.