教 材 活 用 共 有 のための DITA と CMS 利 用 の 一 考 察 高 橋 慈 子 関 根 哲 也 山 口 琢 中 野 賢 大 場 みち 子 大 学 の 授 業 で 使 われ, 配 付 資 料 として 広 く 利 用 されている PowerPoint で 作 成 さ れた 資 料 を,より 効 率 良 く 作 成 し, 教 員 間 で 共 有 し, 再 利 用 するためのコンテン ツとして 文 書 の 標 準 化 規 格 である DITA を 採 用 してコンテンツ 管 理 する 方 法 を 考 察 する. 大 学 の 授 業 で 使 われる 教 材 の PowerPoint ファイルのスライドを DITA によりト ピック 単 位 に 分 け, 編 集, 再 利 用 し,DITA のマップによって 内 容 を 吟 味 しやす くすることも 狙 いである. さらに, 複 数 の 教 員 間 でコンテンツが 共 有 できるように,CMS を 活 用 し, 授 業 内 容 の 標 準 化 を 図 るために 役 立 つ 方 法 についても 探 る. The challenges and considerations deploying DITA CCMS, for creating, reusing and sharing training slides as DITA topics. Shigeko Takahashi Tetsuya Sekine Ken Nakano Michiko Ohba and Taku Yamaguchi In university classes, PowerPoint slides are often used as handouts by instructors. In this paper, we discuss how OASIS standard DITA can be adapted for managing slides; creating efficiently, sharing among different instructors, and reusing them. A single PowerPoint file is chunked as DITA topic components, authored as DITA topics, and reused. Componentized topic files are given context by DITA map mechanism to reduce instructors' hours spent for planning the handouts. We further extend the discussion on how collaborated and information sharing CCMS(Component Content Management Systems) features can influence the quality of the classes themselves, given by instructors varied in teaching experience levels. 1. はじめに 現 在, 大 学 の 授 業 ではスタイルは 教 員 によって 異 なるが, 情 報 に 関 連 する 講 義 の 教 材 については Microsoft Power Point を 使 ってスライドを 作 成 し,スクリーンに 表 示 するケースが 多 い.1 回 の 授 業 には, 複 数 のスライドから 構 成 される 1 ファイルが 作 成 されている. 半 期 なら 15 のファイルが 作 成 される. 1 人 の 教 員 が 複 数 の 科 目 を 担 当 する 場 合 に 共 通 する 内 容 を 使 いたいときは,ファイ ル 間 でスライドをコピーして 再 利 用 する.また, 教 員 間 での 教 材 の 流 用 でも 同 様 に, ファイルを 交 換 し, 必 要 なスライドをコピーしたり, 手 直 ししたりして 使 われている. こうした 作 業 では,いったんファイルを 開 かないと,スライド 全 体 を 確 認 できず, 必 要 な 内 容 が 記 載 されたファイルを 探 し 出 す 手 間 がかかる.また, 翌 年 以 降 に 再 利 用 す る 際 は,フォルダごとコピーして, 必 要 に 応 じてファイルの 内 容 を 更 新 する. 本 研 究 では, 授 業 で 扱 われるファイルに 含 まれる 内 容 をトピックに 分 けてコンテン ツ 管 理 することを 提 案 する. 教 材 の 再 利 用 を 効 率 的 に 行 うことを 目 的 に, 手 法,ツー ル,コンテンツ 管 理 を 検 討 する. 手 法 には 技 術 文 書 作 成 の 標 準 として 注 目 されている DITA[a]を 採 用 すし,コンテンツ 管 理 システムを 活 用 する.トピック 単 位 で 教 材 コンテ ンツを 作 成, 管 理 することで, 教 材 の 内 容 を 検 討 しやすく, 複 数 の 科 目 で 標 準 化 され た,より 良 い 内 容 の 授 業 を 実 施 することを 目 的 としている. 2. DITA 1.2 仕 様 Learning &Training の 活 用 と CMS DITA は,2005 年 5 月 に OASIS が DITA1.0 仕 様 を 承 認, 公 開 されて 以 来, 構 造 化 さ れた 文 書 制 作, 管 理, 活 用 のニーズに 合 わせて, 仕 様 が 検 討 されてきた. 現 在 の 最 新 仕 様 である DITA1.2 は,2010 年 12 月 14 日 に OASIS 標 準 として 承 認 され, 公 開 され ている.リリースでは DITA1.2 仕 様 の 特 徴 として, 教 育 アプリケーションのサポー トを 提 供 する 新 しい 学 習 とトレーニング 専 門 家,および, 機 械 マニュアルを 参 照 する のに DTIA が 非 常 に 役 立 つ 危 険 有 害 性 情 報 と 機 械 作 業 専 門 化 などが 含 まれ [b]ている 株 式 会 社 ハーティネス Heartiness co. インフォパース 株 式 会 社 InfoParse Inc. ネクストソリューション 株 式 会 社 NEXTSOLUTION co., ltd. 公 立 はこだて 未 来 大 学 Future University Hakodate a) Darwin Information Typing Architecture の 略 で,OASIS による 仕 様 が 公 開 されている 構 造 化 文 書 の 標 準 化 のア ーキテクチャである.http://www.oasis-open.org/jp/ b) OASIS ニュース OASIS 会 長 が Darwin Information Typing Architecture (DITA) Version 1.2 を OASIS 標 準 とし て 承 認. より 引 用. 1
としている. 2.1 学 習 および 訓 練 特 殊 化 の 特 徴 DITA1.2 仕 様 の 特 徴 は, Technical Content と Learning & Training の 2 つの 専 門 分 野 について 特 殊 化 をしたことである.DITA では, 汎 用 トピックとして,concept,task, reference と 呼 ばれる 3 種 類 のトピックがあらかじめ 用 意 されており, 必 要 に 応 じて 特 殊 化 もできる.DITA1.2 では, 学 習 および 訓 練 分 野 で 利 用 しやすいトピックを 特 殊 化 して 用 意 し, 学 習 および 訓 練 の 分 野 のコンテンツ 作 成 と 活 用 を 効 率 し, 効 果 的 に 活 用 できるようにしている. DITA コンソーシアムジャパン( 以 下,DCJ と 略 )では,DITA 1.2 仕 様 の 中 から Technical Content と Learning & Training について DITA ボキャブラリモジュール の 各 要 素 に 関 する 情 報 を 言 語 リファレンス( 日 本 語 版 )として,Web で 公 開 [c]してい る. DCJ 言 語 リファレンスの 学 習 および 訓 練 の 要 素 では, 学 習 コンテンツをマップ 上 に 編 成 するための 学 習 メタデータ, 学 習 に 関 するやり 取 りの 記 述 のための 特 殊 化 ド メイン 要 素 が 含 まれている. (1) 学 習 および 訓 練 コンテンツ 用 のトピック 情 報 タイプ(5 つの 情 報 型 ) 学 習 および 訓 練 用 のトピックを 作 成 するための 特 殊 化 されたトピックタイプとし て, 次 の 学 習 トピックタイプが 用 意 されている. Learning Plan topic type Learning Overview topic type Learning Content topic type Learning Summary topic type Learning Assessment topic type (2) 学 習 および 訓 練 用 のマップドメイン トピックを 構 造 化 するマップについては,larningMap と learningbookmap 要 素 に 次 のようなマップドメインがドメインの 特 殊 化 として 用 意 されている. learninggroup learningobject learningplanref learningpreassessmentref learningoverviewref learningcontentref learningcontentcomponentref c)dita コンソーシアムジャパンサイト OASIS1.2 言 語 リファレンス( 日 本 語 版 ) http://dita-jp.org/language-reference/default.htm learningsummaryref learningpostassessmentref (3) 学 習 および 訓 練 のその 他 の 要 素 これらのほか,インタラクションドメインの 要 素 やメタデータの 要 素 が 用 意 されて いる.e ラーニングシステムとの 連 携 も 可 能 である. 2.2 Learning & Training 分 野 での 利 用 事 例 2010 年 12 月 に 公 開 された DITA1.2 仕 様 は,OASIS のメンバー 企 業 では 既 にこの 仕 様 を 利 用 した 事 例 も 発 表 されている.2011 年 6 月 に 米 ボルチモアで 開 催 された CMS/DITA 北 米 カンファレンス では,ERP システムのベンダーである SAP から, 同 社 の 教 育 プログラムのコンテンツ 制 作, 運 用 に DITA1.2 Learning & Training 特 殊 化 を 採 用 し, 多 様 な 教 育 コンテンツの 制 作 や e ラーニングに 活 用 していることが 報 告 さ れている. 2.3 CMS DocZone の 活 用 DITA を 採 用 し, 効 率 的 かつ 効 果 的 に 文 書 作 成 と 運 用 管 理 を 実 現 するには,コンテ ンツを 管 理 するコンテンツマネジメントシステム( 以 下,CMS と 略 )が 欠 かせない. 大 量 の 技 術 文 書 を 作 成 している 企 業 では, 大 規 模 ドキュメントの CMS として,Trisoft などが 利 用 されている.コンテンツ 作 成 には,XML エディタを 組 み 込 んで 利 用 する. 本 研 究 では, 専 任, 非 常 勤 の 両 方 の 教 員 がコンテンツ 作 成 を 各 自 の 仕 事 の 場 で 行 い, 管 理 できる 環 境 を 実 現 するものとして,Really Strategies 社 の DocZone を 利 用 する ことを 想 定 した.DocZone は, 編 集 環 境, 翻 訳 環 境, 出 力 環 境 を 含 んだ 包 括 的 なシス テムである.DITA1.2 に 対 応 したコンテンツを 作 成, 編 集 する Syncro Soft 社 の XML エディタ oxygen が FireFox などのインタネットブラウザーのアプレットとして 標 準 で 組 み 込 まれているので,スムーズにコンテンツを 作 成, 管 理 できる.また, 高 価 な XMetaL などの DITA エディタを 別 途 購 入 する 必 要 が 無 く, 標 準 で PDF や WebHelp などの HTML5 ベースのオンラインヘルプや 翻 訳 メモリ, 用 語 集 が 利 用 可 能 な 点 にも 注 目 した.クラウド 環 境 での 使 用 が 前 提 で, 教 員 の OS 環 境 に 依 存 せず, 学 内 だけで なく, 自 宅 など 学 外 からでも 使 用 できることもメリットである. 2.4 教 材 作 成 活 用 の 全 体 像 と 流 れ DITA1.2 と CMS を 活 用 することにより, 教 員 が 各 自 で 作 成 し, 管 理 していた 教 材 コ ンテンツが 教 員 間 で 共 有, 活 用 できるようになる. (1) 教 材 作 成, 運 用 の 全 体 像 DITA,CMS を 採 用 し, 教 材 を 作 成, 運 用 するときの 全 体 イメージを, 次 の 図 に 示 す. 既 存 の PowerPoint ファイルから DTIA のトピックを 作 成 したり, 新 規 にトピック を 作 成 したりする.トピックはマップによって 整 理 され, 目 的 に 応 じた 出 力 形 式 を 指 定 して 発 行 する 2
既 存 の 教 材 授 業 用 授 授 業 業 用 用 資 料 資 資 料 料 配 布 用 資 料 トピック 単 位 でコンテンツを 作 成 必 要 があれば 説 明 画 像 などを 作 成 PowerPoint ファイル PowerPoint 配 布 資 料 CMS で 管 理 授 業 用 のマップを 作 成 DITA でトピック 化 新 規 教 材 の 作 成 管 理 トピック 1 トピック 2 トピック n CMSに 格 納 スライドや 配 布 資 料 形 式 で 発 行 授 業 用 スライド 異 なる 授 業 用 スライド 配 布 用 資 料 DITA ファイル(トピック+マップ) PDF ファイルとして 発 行 からスライド 表 示 へ 図 1 DTIA,CMS 活 用 による 教 材 作 成, 管 理 の 全 体 イメージ (2) 教 材 作 成, 運 用 の 新 規 作 成 の 流 れ 教 員 は,CMS に 含 まれる XML エディタや 単 体 の XML エディタ,XML オーサリン グツールを 利 用 して, 教 材 のコンテンツを 作 成 する.コンテンツはトピック 単 位 で 作 成 する. 出 力 形 式 はコンテンツとは 分 離 されているので,スライドの 枚 数 や 分 量 を 気 にする 必 要 はない. 新 規 に 教 材 を 作 成 するときの 流 れを, 次 の 図 に 示 す. 電 子 教 科 書 EPUB ファイルとして 発 行 図 2 DTIA,CMS 活 用 による 教 材 作 成, 管 理 の 流 れ (3) 既 存 の 教 材 再 利 用 の 流 れ PowerPoint で 作 成 されている 教 材 を 再 利 用 するときの 流 れを, 次 の 図 に 示 す. PowerPoint からアウトラインを 抽 出 oxygen で 編 集 必 要 があれば 説 明 画 像 などを 編 集 授 業 用 のマップを 作 成 CMSに 格 納 スライドや 配 布 資 料 形 式 で 発 行 図 3 DTIA,CMS 活 用 による 既 存 の 教 材 再 利 用 のフロー 3
3. 教 材 コンテンツ 試 作 3.1 トピック 単 位 でコンテンツを 作 成 新 規 で 教 材 を 作 成 する 際 は,learning に 用 意 されたトピックタイプを 利 用 しながら, コンテンツを 作 成 する.たとえば 授 業 の 概 要 説 明 は,learningOverview に 作 成 しておけ ば,スライドだけでなく 配 布 資 料 などにも 再 利 用 できる. 1 回 の 授 業 の 教 材 は, 複 数 のトピックで 構 成 する.トピックに, 見 出 し, 本 文 を 入 力 する. 教 材 の 場 合 は, 箇 条 書 きを 使 う 事 が 多 いのでリスト 形 式 で 作 成 しておく. 画 像 は,1 つ 1 つの 画 像 ファイルとして 作 成 しておき,トピックに 挿 入 する. 図 4 トピックの 作 成 3.2 マップによって 教 材 を 構 造 化 する 作 成 したトピックは,マップを 使 って 構 造 化 する.トピック 単 位 で 構 成 できるので, 全 体 を 把 握 しながら, 順 番 は 自 由 に 並 べ 替 えできる. トピックにどの 程 度 の 情 報 を 入 れるかは, 作 成 する 教 員 によって 決 められるが, 受 講 対 象 により,1 回 の 授 業 で 適 切 なトピック 量 を 検 討 しながら 作 成 できるのは, PowerPoint のスライド 作 成 とは 異 なり,マップを 使 っての 利 点 と 言 えるだろう. 図 5 マップの 作 成 と 編 集 3.3 DITA ファイルとして CMS に 保 存 作 成 したコンテンツは,DITA ファイルとして CMS に 保 存 する.1 つの 授 業 の 教 材 として 使 用 されるトピック,マップ, 各 種 のファイルはまとめて 格 納 される. CMS への 格 納 の 際 は,フォルダ 作 成 やフォルダ 名 のルールを 決 めておき, 再 利 用 し やすくしておく. 3.4 配 布 資 料 の 発 行 受 講 者 に 配 布 する 資 料 を 作 成 したいときは, 教 材 として 見 やすい 出 力 形 式 にフォー マッターによって 整 え, 発 行 する. 発 行 形 式 は,PDF を 選 択 すると, 使 い 勝 手 が 良 い. 電 子 データとして 受 講 者 に 配 布 する, 印 刷 して 配 布 するなど, 状 況 に 合 わせて 選 択 で きる. 3.5 トピック 化 した 表 示 用 スライドの 発 行 作 成 した 教 材 は,スライドとして 教 室 のパソコンに 接 続 されたプロジェクターから 出 力 して 表 示 し, 講 義 をしていく.XHTML 形 式 データを 共 有 再 利 用 してスライド ショー 形 式 で 表 示 するシステムについては, 研 究 発 表 としてジャストシステム 山 口 琢 らの Slide Show for XHTML [d]がある.dita を 採 用 する 本 研 究 との 比 較 候 補 の 1 つである. Slide Show for XHTML は,1 つの XHTML ファイルを 複 数 のスライドか らなる 1 つのプレゼンとして 操 作 できる.さらに, 複 数 の XHTML ファイルを RSS/Atom d) 情 報 処 理 学 会 研 究 報 告. DD, [デジタル ドキュメント] 2006(83), 55-58, 2006-07-28 4
フィードで 束 ねて, 全 体 として 1 つのプレゼンとして 操 作 できる.ブログを CMS と して 利 用 し,ブログの 記 事 (エントリー)を 取 捨 選 択 して 1 つのプレゼンとしてまと めあげる 使 い 方 を 想 定 している. 記 事 の 選 択 は, 記 事 にカテゴリーを 割 り 当 てること などで 実 現 される. DITA で 作 成 したトピックをスライド 形 式 に 出 力 するツールとしては,W3C のオー プンソースである HTML Slidy [e]をベースに 開 発 することも 検 討 している.このツ ールは,HTML または XTHML で 作 成 されたトピックのデータを,ブラウザでスライ ドショーのように 表 示 できる.DITA マップの 内 容 を 反 映 し,1 画 面 ずつにトピックを 分 ける. 表 示 された 教 材 は,クリックするだけで 次 の 画 面 を 表 示 できる. 3.6 簡 易 スライドショー 画 面 としての 活 用 HTML Slidy を 使 い, 教 材 内 容 を 表 示 したのが, 図 6 画 面 である. 見 出 しのスタイル を 整 え, 画 面 に 表 示 する.クリックすると, 次 の 画 面 が 表 示 される. 右 クリックする ことで, 前 の 画 面 に 戻 ることもできる. 図 6 HTML Slidy で 出 力 したスライドショー 画 面 このツールを 使 うことで,ブラウザを 使 って 教 材 を 表 示 することができるようにな る.PowerPoint を 用 意 することなく, 多 様 なブラウザで 表 示 できるため, 教 員 や 学 生 にとって 利 便 性 の 高 いツールとなる. 3.7 出 力 形 式 のカスタマイズ 今 後 は 表 紙 スライドの 出 力 やロゴを 入 れた 背 景 の 指 定 など,より 見 栄 えのよい 教 材 としての 出 力 ができるようカスタマイズしていく. 大 学 のブランドイメージや, 学 科 や 科 目 によるスライドイメージの 統 一 など, 出 力 とコンテンツを 切 り 離 して, 見 栄 え のよいスライドの 表 示 が 期 待 できる. e)html Slidy http://www.w3.org/talks/tools/slidy2/ 4. コンテンツ 管 理 の 検 討 DocZone で 管 理 されたファイルは,インターネットから 接 続 するサーバーに 管 理 さ れる. 本 研 究 では,1 つの 授 業 単 位 でコンテンツを 管 理 することを 想 定 したが, 複 数 の 教 員 による 利 用 や, 科 目 をまとめてグループ 間 でコンテンツを 共 有, 再 利 用 する 際 は,あらかじめフォルダ 構 成 を 共 有, 再 利 用 を 想 定 して 設 計 してことがポイントとな る. 企 業 のドキュメントでは,インフォメーションアーキテクトと 呼 ばれる 専 門 職 の 担 当 者 が, 情 報 を 調 査, 分 析 して 設 計 する. 教 材 の 共 有, 再 利 用 を 目 指 す 場 合 も, 同 様 のノウハウをもったコンテンツ 作 成 管 理 担 当 者 が 必 要 となるだろう. 5. 提 案 方 式 の 考 察 と 今 後 の 取 り 組 み 試 作 では, 情 報 関 連 の 授 業 の PowerPoint ファイルを 既 存 のコンテンツとして,DITA ファイルを 作 成 してみた.コンテンツの 粒 度 をどのようにすると 再 利 用 しやすいかは, 教 材 の 内 容 によって 変 わるが, 作 成, 再 利 用 しやすい 単 位 を 検 討 し, 異 なる 科 目, 教 員 の 教 材 に 適 用 し, 評 価 していきたい. また, 教 員 間 での 教 材 の 共 有, 再 利 用 を 促 進 するためにコンテンツの 作 成 方 法,ワ ークフロー, 作 成 ルールの 整 備 などが 必 要 となる. 以 下 に 今 後 の 検 討 課 題 を 述 べる. 5.1 コンテンツ 作 成 管 理 ツールの 使 用 説 明 の 提 供 本 研 究 では,oXygen と DocZone を 活 用 することを 前 提 としている. 現 状 では XML エディタやドキュメントの CMS の 知 識 がないと, 教 員 がすぐに 使 いこなすことは 難 しいと 思 われる. サンプル 教 材 の 提 供 や 操 作 マニュアルなど, 使 用 説 明 のコンテンツを 充 実 させ, 短 時 間 で 教 材 作 成 ができるようなサポートが 必 要 である. 5.2 オンデマンド 印 刷 による 書 籍, 電 子 教 科 書,e ラーニングなどマルチユースの 検 討 DITA の 利 点 は,シングルソース,マルチユースと 呼 ばれる 多 彩 な 出 力 形 式 を 選 べ ることにある.たとえば, 教 材 の 中 で, 知 識 として 覚 える, 理 解 することが 重 要 なコ ンテンツについては,マップを 作 成 し, 教 科 書 のような 書 籍 形 式 に 出 力 することも 可 能 である. 受 講 数 に 合 わせて 少 部 数 ならばオンデマンド 印 刷 を, 多 人 数 ならば 商 業 印 刷 製 本 を 行 うことで,コストを 抑 えることができる. 利 便 性 と 費 用 のバランスを 検 討 しながら, 教 材 を 提 供 する 環 境 を 整 えられる. DITA 仕 様 の 実 装 のひとつである DITA Open Toolkit は, 拡 張 プラグインにより, 電 子 書 籍 の 標 準 的 なフォーマットである EPUB 出 力 ができる.パソコンやタブレット 型 の 端 末 に 表 示 する 電 子 書 籍 への 出 力 も, 特 別 な 変 換 などを 必 要 しないで 行 える. 電 子 教 科 書 として 使 うフォーマットとして, 見 やすい 出 力 形 式 を 検 討 していきたい. 画 面 を 使 った e ラーニングについても, 演 習 や 理 解 度 の 確 認 に 利 用 できる.DITA1.2 5
のインタラクション 要 素 に 対 応 したトピックの 作 成 方 法 と, 成 績 管 理 システムとの 連 携 などを 検 討 していく. 5.3 最 新 の 外 部 情 報 との LOD によるリンクの 検 討 授 業 によっては, 外 部 の 資 料 を 提 示 しながら, 講 義 を 行 いたい 場 合 がある.このよ うな 場 合, 現 在 では URL をハイパーリンクで 指 定 し,リンク 先 を 提 示 している.また, 前 提 知 識 や 関 連 知 識 として 学 内 の 他 教 員 の 資 料 の 一 部 を 利 用 したいケースもある. 再 利 用 生 が 高 く, 最 新 の 情 報 が 学 べる 教 材 にするために,セマンティック Web をベース とした Linked Data の 活 用 が 期 待 できる.どこからでも 参 照 可 能 な Linked Data を Linked Open Data(LOD)と 呼 ばれる.LOD によって, 各 教 育 コンテンツの 内 容 や 所 在 を 定 義, 公 開 / 非 公 開 する.これにより, 従 来 の 教 育 コンテンツ 同 士 や 新 たな 教 育 コンテン ツとの 関 係, 内 部 コンテンツと 外 部 コンテンツとの 関 係, 公 開 非 公 開 などの 設 定 の 定 義 により, 教 育 コンテンツの 統 合 的 な 管 理 が 実 現 できる. 教 材 から, 世 界 中 の 知 へ のアクセス 手 段 として,LOD 活 用 の 可 能 性 を 検 討 していく. 5.4 コンテンツのフェアユースの 検 討 教 材 を 共 有 化 していく 際 に, 知 的 所 有 権 の 課 題 をどのように 解 消 していくかも 今 後 の 課 題 となるだろう. 自 分 が 研 究 し, 蓄 積 してきた 教 材 を 公 開, 再 利 用 可 能 にするこ とに 対 する, 抵 抗 も 懸 念 される. コンテンツの 共 有 化 の 環 境 を 整 備 し, 公 平 な 利 用 を 促 進 するためには,メタデータ で 著 者 や 利 用 状 況, 編 集 履 歴 などを 蓄 積 する 仕 組 みが 必 要 となるだろう. 過 去 の 成 果 を 踏 まえ, 互 いに 協 力 していくための 情 報 を 記 録 し, 相 互 に 活 用 するための 手 法 を 検 討 したい.クリエイティブコモンズの 採 用 など,Web コンテンツの 相 互 利 用 の 方 法 に ついて 検 討 していく. 3) 中 澤 遊 CMS/DTIA North America 2011 視 察 報 告 DITA Festa2011(2011) 4) SAP How We Design How does DITA help us design educational content? CMS/DTIA North America 2011(2011) 5) DITA コンソーシアムジャパン DITA1.2 言 語 リファレンス( 日 本 語 版 ) http://dita-jp.org/language-reference/default.htm 6. おわりに 本 研 究 では, 大 学 の 専 任 教 員, 研 究 者,ドキュメントシステムのソリューションベ ンダー,インフォメーションアーキテクチャのコンサルタント,テクニカルライター と, 立 場 や 経 験 が 異 なるメンバーでプロジェクトを 結 成 している. 今 回 の 考 察 を 第 一 歩 として, 教 育 現 場 で 検 証 をしながら, 教 材 作 成, 活 用 の 新 たな 方 法 として 有 効 な 提 案 を 行 っていきたい. 参 考 文 献 1) 山 口 琢 Web 文 書 の 有 用 性 を 高 める Slide Show for XHTML, 情 報 処 理 学 会 研 究 報 告 デジタ ル ドキュメント(DD),2006(83(2006-DD-056)), pp.55-58 (2006-07-28) 2) 高 橋 慈 子 多 言 語 展 開, 再 利 用 を 促 進 する 構 造 化 文 書 の 作 成 動 向 -DITA を 利 用 した 文 書 作 成 活 用 -, 情 報 処 理 学 会 研 究 報 告 デジタル ドキュメント(DD),2010-DD-076-04(2010) 6