インターネット 社 会 調 査 と 多 様 化 する 情 報 端 末 スマートフォン タブレッ ト 端 末 時 代 の 社 会 調 査 に 向 けて 研 究 代 表 者 小 久 保 温 青 森 大 学 ソフトウェア 情 報 学 部 准 教 授 共 同 研 究 者 吉 村 治 正 奈 良 大 学 社 会 学 部 准 教 授 渡 部 諭 秋 田 県 立 大 学 総 合 科 学 教 育 研 究 センター 教 授 1 Web 社 会 調 査 の 課 題 これまで 日 本 では 住 基 台 帳 や 選 挙 人 名 簿 から 標 本 抽 出 を 行 なう 厳 密 な 確 率 論 的 社 会 調 査 が 可 能 であり 質 問 紙 を 用 いた 郵 送 調 査 や 訪 問 調 査 などが 高 度 に 発 達 してきた このため Web 調 査 に 対 する 重 要 性 の 認 識 が 欧 米 と 比 較 して 遅 れてきた しかし 大 隅 [1]が 指 摘 するように 従 来 の 調 査 は 国 勢 調 査 の 回 収 におけるト ラブルが 話 題 になるように 回 収 率 が 低 下 し 住 基 台 帳 や 選 挙 人 名 簿 の 閲 覧 も 個 人 情 報 保 護 の 観 点 から 困 難 に なってきている そして 近 年 大 勢 の 人 々にとって IT 機 器 が 日 常 に 取 り 込 まれている 事 などから 今 後 は 社 会 調 査 の 媒 体 は 手 軽 にアクセスできるようになったインターネットに 移 行 していく 必 要 があり そのため のシステムやワークフローの 研 究 が 必 要 である ただし 現 在 の Web 調 査 が 近 い 将 来 郵 送 調 査 法 などに 代 わって 主 要 な 社 会 調 査 法 として 認 められると 考 えられているわけではない たとえば 大 隈 [1]は Web 調 査 においては 推 計 統 計 手 法 の 推 計 対 象 となる 母 集 団 が 特 定 できないため 従 来 の 社 会 調 査 が 典 型 的 に 担 ってきた 自 治 体 などの 行 政 区 内 の 情 報 収 集 に 用 いる ことは 困 難 であると 指 摘 している しかし この 問 題 の 多 くは これまでインターネットにアクセスできる 人 が 限 られており PC の 使 用 を 前 提 とした 調 査 だったこと それから Web 調 査 の 多 くがモニター 登 録 した 人 やインターネットで 公 募 した 人 を 対 象 に 実 施 されていたことによる また 欧 米 では 純 粋 に 質 問 票 に 回 答 するプロセスに 焦 点 を 当 てた 研 究 が 1980 年 代 前 半 から 盛 んに 行 われて おり 社 会 調 査 法 と 認 知 心 理 学 の 学 際 的 フィールドである CASM(Cognitive Aspects of Survey Methodology)[2]として 確 立 した 研 究 分 野 となっている CASM 研 究 の 知 見 を 活 かすことで 回 答 の 質 の 向 上 が 期 待 できるが 従 来 の 質 問 紙 による 調 査 では 十 分 に 活 かすことができず Web 調 査 のようなインタラクテ ィブな 環 境 において 真 価 を 発 揮 する われわれは 今 後 主 流 となるであろう Web 社 会 調 査 を 改 善 することを 目 的 として 研 究 をすすめた 2 Web 社 会 調 査 のデザイン われわれは Web 社 会 調 査 を 改 善 するために 情 報 システムだけでなく 調 査 のデザイン 全 体 も 含 めて 改 良 を 試 みてきた この 節 では 調 査 のデザインについて 述 べ 情 報 システムについては 次 節 で 述 べる 2.1 サンプリング Web 調 査 においてサンプリングの 母 集 団 が 特 定 できないという 課 題 について モニター 登 録 やインターネ ットでの 公 募 を 利 用 せず われわれは 従 来 の 調 査 のように 住 民 基 本 台 帳 や 選 挙 人 名 簿 から 標 本 抽 出 を 行 なっ ている 2.2 調 査 のフロー 回 答 の 回 収 率 が 低 くなると 回 答 者 が 偏 っている 可 能 性 があり 調 査 の 信 頼 性 が 疑 われる われわれは 回 収 率 を 向 上 させるために 郵 送 調 査 で 高 い 回 収 率 をあげるとされる D.A.Dillman の TDM(Total Design Method)[3]に 準 拠 したワークフローを 使 用 している TDM は1 調 査 の 前 に 調 査 協 力 依 頼 を 郵 送 で 行 ない 調 査 協 力 しない 場 合 は 同 封 のハガキでその 旨 返 送 して もらう 2ハガキが 返 ってこなかった 対 象 者 に 調 査 票 (Web 調 査 の 場 合 はシステムへのアクセス 方 法 )と 謝 礼 を 送 付 する 3 対 象 者 が 回 答 し 返 信 する(Web 調 査 の 場 合 は 回 答 のみ) 4 調 査 票 を 送 付 した 全 員 にお 礼 状 を 発 送 する というものである 1
3 Web 社 会 調 査 システムの 開 発 今 回 開 発 した Web 社 会 調 査 システムについて 説 明 する 3.1 目 標 Web 調 査 では システムの 側 としては 回 収 率 を 高 め 回 答 上 の 誤 差 ( 質 問 の 誤 った 理 解 や 入 力 上 のミスな ど)を 減 少 させることに 寄 与 することが 重 要 である そのためには 1)さまざまな 回 答 者 が 回 答 可 能 で 回 答 しやすいこと 2) 将 来 の 調 査 の 質 問 票 を 改 善 でき るように 基 礎 データとして 回 答 履 歴 を 記 録 できることが 重 要 である 具 体 的 には 携 帯 電 話 スマートフォン タブレット 端 末 PC といったマルチ デバイスに 対 応 した Web アプリケーションを 開 発 することにした また Web アクセス 解 析 で 利 用 されるページ 滞 在 時 間 や 離 脱 率 な どのデータが 取 得 できるようにした 3.2 システム 構 成 調 査 システムはさまざまなハードや OS で 動 作 するように Web サーバーに Apache サーバーサイドのプロ グラミング 言 語 に PHP データ 管 理 はファイルあるいはリレーショナルデータベース(SQLite MySQL ほか PHP の PDO が 対 応 しているデータベース)を 選 択 できるようにした クライアントとの 通 信 は SSL により 暗 号 化 することにした 3.3 ソフトウェアの 要 件 携 帯 電 話 スマートフォン タブレット 端 末 PC などのマルチ デバイスに 対 応 した Web アプリケーショ ンでは a)それぞれのデバイスに 対 応 した 表 示 b)さまざまな 文 字 コードで 入 力 された 回 答 データの 処 理 c)cookie が 使 用 可 / 不 可 の 両 方 に 対 応 できる 認 証 システムが 必 要 である また Web アクセス 解 析 で 利 用 されるページ 滞 在 時 間 や 離 脱 率 などのデータを 取 得 するには ページ 遷 移 ごとにセッションも 含 めてデータを 記 録 する 必 要 がある セッションのデータは Web サーバーのアクセスロ グには 記 録 されないため この 機 能 はアプリケーション 側 で 実 装 した 3.4 開 発 におけるフレームワークの 活 用 近 年 Web アプリケーションの 開 発 を 効 率 化 する 目 的 で Ruby on Rails のような MVC フレームワークが 使 用 されている PHP の 場 合 上 記 の 要 件 a) b)を 満 たすフレームワークが 存 在 しないため 既 存 の 小 規 模 な MVC フレームワーク[4]をベースに 開 発 した 要 件 c)に 関 しては PHP の 設 定 により Cookie が 使 用 可 能 な 場 合 はそれを 利 用 してセッションを 管 理 し 使 用 不 可 の 場 合 は URL にセッション 情 報 を 付 加 することで 対 応 し た ただし URL リダイレクトの 処 理 がある 場 合 は 使 用 したフレームワークがうまく 動 作 しないため 独 自 に 拡 張 した 3.5 回 答 に 伴 う 処 理 のフロー 携 帯 電 話 やスマートフォンの 狭 い 画 面 に 対 応 するため また 細 かく 回 答 履 歴 を 記 録 するため 設 問 ごとに 画 面 を 用 意 して 1 問 ずつ 回 答 するようにした システムでは リクエストが 発 生 すると それに 伴 ったデータを 毎 回 そのままログとして 記 録 し 滞 在 時 間 や 離 脱 率 誤 入 力 セキュリティ 上 の 監 査 に 使 用 する そして アクセスしてきたデバイスの 種 類 を ブラウザが 送 信 する HTTP の User-Agent ヘッダの 情 報 を 元 に 判 別 する この 方 法 では 必 ずしも 適 正 に 判 別 できない 場 合 があるため 回 答 者 が 自 分 で 表 示 デバイスを 切 り 替 えることも 可 能 にしている リクエストに 回 答 データが 含 まれる 場 合 は システム 内 部 の 文 字 コード(UTF-8)に 変 換 する そして デー タのバリデーションを 行 ない 適 正 な 場 合 には データベースあるいはファイルに 回 答 者 ごとに 保 存 する 保 存 されたデータは 回 答 を 中 断 して 再 開 した 場 合 に フォームに 入 力 済 みの 状 態 で 表 示 され 回 答 者 は 再 度 入 力 しなくても 済 むようにした 入 力 しなおした 場 合 は 入 力 しなおせるようにしている 最 後 に デバイスに 応 じたビューを デバイスに 応 じた 文 字 コードに 変 換 して 送 信 する ビューの 詳 細 に ついては 次 小 節 で 述 べる 2
3.6 個 々のデバイスに 対 応 したビューの 開 発 Web のビューは 文 書 の 構 造 を 記 述 する HTML(HyperText Markup Language)とデザインを 記 述 する CSS(Cascading Style Sheets)により 構 成 され これに 画 像 データと JavaScript などのプログラムを 組 み 合 わせて 作 られている 仕 様 上 CSS の 表 現 力 と 自 由 度 は 高 く 画 像 と 組 み 合 わせることで ほとんどすべて の 要 素 に 対 して 自 由 にデザインを 適 用 できる ただし 例 外 もある 社 会 調 査 などで 使 用 する HTML の 要 素 の 中 では たとえば input 要 素 の type 属 性 の 値 を radio や checkbox に 指 定 した 場 合 ブラウザによってデザ インが 決 められてしまう この 場 合 デザインを 変 更 するためには JavaScript などで 本 来 の 要 素 を 隠 して 別 な 要 素 を 重 ね ユーザーのアクションに 対 する 反 応 を 独 自 に 記 述 する 必 要 がある マルチ デバイスに 対 応 するには Web の 仕 様 上 HTML と CSS を 用 いて 文 書 の 構 造 とデザインを 分 離 し CSS をデバイス 毎 に 用 意 することで 行 うことになっている しかし デバイスが 仕 様 に 十 分 に 対 応 していな いため デザインを 記 述 する CSS だけでなく 構 造 を 記 述 する HTML もデバイス 毎 に 用 意 する 必 要 がある また 携 帯 電 話 では ユーザーが 入 力 しやすくするために HTML の input 要 素 に 対 し 属 性 を 指 定 すること でデフォルトの 入 力 モードを 指 定 できる ただし 属 性 の 指 定 方 法 はキャリアごとに 異 なる このため 携 帯 電 話 については 3 キャリアに 対 応 したビューをそれぞれ 用 意 する 必 要 がある 以 上 のような 事 情 により ビューは 携 帯 電 話 (docomo au SoftBank の 3 種 類 ) スマートフォン PC とタ ブレット PC 兼 用 の 計 5 種 類 を 開 発 した 以 下 それぞれのビューについて 説 明 する 3.7 PC およびタブレット 端 末 のビュー PC やタブレット 端 末 の 場 合 ほぼ 従 来 の 紙 の 調 査 用 紙 に 対 応 する Web のビューを 実 現 可 能 である たとえば 択 一 式 入 力 項 目 の 場 合 コード 1 のような HTML を 記 述 すると 図 1 のような Web のビューを 実 現 することができる 図 1 の Web のビューは PC の 場 合 マウスでクリックして 入 力 できるほか キーボードのみでも 操 作 でき る 項 目 をタブキーで 移 動 でき Enter キーで 選 択 / 解 除 やボタンの 押 下 などを 行 なえる また マウスでク リックして 選 択 する 場 合 input 要 素 が 表 示 している の 部 分 だけでなく for 属 性 で 関 連 づけた label 要 素 をクリックしても 選 択 することができる タブレット 端 末 では タップ 操 作 で 項 目 を 選 択 して 入 力 する ことができる コード 1: 択 一 式 入 力 項 目 を 実 現 する HTML <!DOCTYPE html> <html> <head> <title>アンケート</title> </head> <body> <form action="query.cgi" method="post"> <fieldset> <legend>q1</legend> <p>あなたの 性 別 は?</p> <input type="radio" name="q1" id="q1-1" value="male"> <label for="q1-1"> 男 </label> <br> <input type="radio" name="q1" id="q1-2" value="female"> <label for="q1-2"> 女 </label> </fieldset> <input type="submit" value=" 送 信 "> </form> </body> </html> 3
図 1 択 一 式 入 力 項 目 の Web のビュー また 図 2 のような 多 岐 選 択 式 と 自 由 回 答 入 力 項 目 を 持 った Web のビューは コード 2 のように type 属 性 に checkbox や text を 指 定 した input 要 素 を 組 み 合 わせることで 実 現 できる コード 2: 多 岐 選 択 式 と 自 由 回 答 入 力 項 目 を 実 現 する HTML(フォームの 部 分 のみ) <form action="query.cgi" method="post"> <fieldset> <legend>q2</legend> <p>インターネットを 閲 覧 するのに 使 用 する 機 器 は?( 複 数 選 択 可 能 )</p> <input type="checkbox" name="q2" id="q2-1" value="pc"> <label for="q2-1">パソコン</label> <br> <input type="checkbox" name="q2" id="q2-2" value="smart_phone"> <label for="q2-2">スマートフォン</label> <br> <input type="checkbox" name="q2" id="q2-3" value="feature_phone"> <label for="q2-3"> 携 帯 電 話 </label> <br> <input type="checkbox" name="q2" id="q2-4" value="other"> <label for="q2-4">その 他 :</label> <input type="text" name="q2-4-1" value=""> </fieldset> <input type="submit" value=" 送 信 "> </form> 4
図 2 多 岐 選 択 式 と 自 由 回 答 入 力 項 目 の Web のビュー 更 に Web のビューを 装 飾 する UI フレームワークが 数 多 く 存 在 する たとえば Twitter Bootstrap[5]を 使 用 すると 図 3 のような Web のビューを 作 ることもできる 本 研 究 では PC とタブレット 端 末 用 の Web のビューは Twitter Bootstrap を 使 用 して 開 発 した 図 3 Twitter Bootstrap で 装 飾 した Web のビュー 3.8 携 帯 電 話 のビュー 携 帯 電 話 の 場 合 画 面 のサイズが 小 さく HTML と CSS の 仕 様 のサポート 状 況 が 十 分 でないため デザイン 上 の 制 約 が 大 きい 画 面 が 小 さいと 図 4 の 三 年 制 短 大 ( 高 等 看 護 学 校 など) 三 年 制 専 門 学 校 の 部 分 のように 選 択 項 目 の ラベルが 改 行 されて 読 みにくくなることがある このような 問 題 は CSS の 仕 様 のサポートが 十 分 な 場 合 CSS を 用 いて 読 みやすくデザインを 変 更 し 対 応 することができる しかし 携 帯 電 話 の 場 合 必 ずしも CSS の 仕 様 が 十 分 にサポートされていないため 他 の 方 法 で 対 応 しなければならない 仕 様 上 推 奨 されないが HTML の table 要 素 を 使 って 要 素 を 配 置 する ことで 図 5 のように 読 みやすくすることができる また 携 帯 電 話 では ユーザーの 入 力 を 助 けるために 全 角 / 半 角 / 英 / 数 などの 入 力 モードの 初 期 値 を HTML の input 要 素 の 属 性 値 で 指 定 できる この 属 性 は docomo の 場 合 istyle 属 性 [6] au の 場 合 format 属 性 [7] SoftBank の 場 合 mode 属 性 [8]と キャリアごとに 異 なっている 更 に これらの 属 性 をすべて 指 定 すると 互 いに 干 渉 するという 報 告 もある 本 研 究 では 携 帯 電 話 のビューは CSS を 用 いず HTML のみを 用 いて 記 述 した また 表 示 を 見 やすくす るため 必 要 最 小 限 の table 要 素 を 用 いた また 入 力 モードの 初 期 値 を 適 正 に 設 定 するために キャリア 毎 に 個 別 の Web のビューを 作 成 した 5
図 4 改 行 されて 読 みにくい 携 帯 電 話 の 画 面 図 5 table 要 素 を 使 ったレイアウト( 破 線 部 は 実 際 には 表 示 しない) 3.9 スマートフォンのビュー スマートフォンとタブレット 端 末 が 現 時 点 では 最 も 先 進 的 な HTML と CSS の 技 術 を 使 用 して Web のビュ ーを 設 計 することができる タブレット 端 末 については ほぼ PC と 同 一 の Web のビューを 利 用 して 問 題 ない ため PC のところで 論 じた 本 小 節 では スマートフォンについて 論 じる スマートフォンは サポートしている 仕 様 上 は 最 も 先 進 的 な Web のビューを 設 計 可 能 である しかし 画 面 がせまいこと 端 末 を 回 転 させると 表 示 領 域 が 変 わること タッチ 入 力 のため 入 力 ミスが 発 生 しやすいこ となどから さまざまな 制 約 が 発 生 する たとえば UI 設 計 で 定 評 のある Apple 社 のスマートフォン 用 OS である ios の ios ヒューマンインターフェイスガイドライン [9]には タップ 可 能 な UI 要 素 の 快 適 な 最 小 サイズは 44 44 ポイントです と 規 定 されており これ 以 上 小 さい 要 素 は 事 実 上 タッチできないことが 示 唆 されている また スマートフォンと 一 口 に 言 っても OS ブラウザ デバイスは 多 岐 に 渡 る HTML と CSS を 駆 使 すれ ば 個 別 に 一 つ 一 つ 最 適 なデザインを 実 現 することはできるが 現 実 的 ではない さまざまなスマートフォ ンに 対 応 した Web のビューの 開 発 を 可 能 とする 方 法 が 必 要 である HTML と CSS と JavaScript を 組 み 合 わせ たスマートフォン 用 UI フレームワークがいくつか 存 在 し 代 表 的 なものには jquery Mobile[10] iui jqtouch などがある このうち 現 時 点 では jquery Mobile が 最 も 広 範 なデバイスをサポートし 広 く 利 用 されている jquery Mobile は HTML5 の data-* 属 性 を 利 用 し JavaScript により スマートフォン 向 けの 最 適 な Web のビューを 構 築 することができるフレームワークである たとえば jquery Mobile を 使 用 せず HTML と CSS 6
をナイーブに 記 述 した 場 合 iphone5 で 表 示 すると 図 6 のような Web のビューになる これは 入 力 項 目 のタッチ 可 能 な 領 域 が 小 さ 過 ぎて 入 力 エラーが 発 生 しやすい jquery Mobile を 使 用 すると 図 7 のよう にタッチ 可 能 な 領 域 が 拡 がり スマートフォンでも 入 力 しやすい Web のビューを 構 築 することができる 本 研 究 では スマートフォン 用 の Web のビューを jquery Mobile を 使 用 して 開 発 した 図 6 iphone5 のデフォルトの Web のビュー 図 7 jquery Mobile を 使 用 した Web のビュー ただし jquery Mobile をそのまま 使 用 し 社 会 調 査 などの 質 問 紙 を 再 現 しようとした 場 合 問 題 が 発 生 する たとえば 図 2 の その 他 の 選 択 肢 のように 質 問 紙 では 選 択 肢 を 選 択 した 上 で 補 足 する 内 容 を 自 由 記 述 させる 場 合 がある ところが jquery Mobile では 基 本 的 に 1 行 に 1 項 目 ずつしか 表 示 できない このため 図 8 のように その 他 の 場 合 に 具 体 的 な 内 容 を 記 述 する 項 目 が 並 列 されてしまい わかりにくく なる これは 複 数 の 選 択 肢 に 対 して 補 足 事 項 を 具 体 的 に 記 入 する 必 要 がある 場 合 大 きな 問 題 となる これを 改 善 するには 補 足 事 項 だと 明 確 にわかるようにする 必 要 がある 図 9 のように 補 足 説 明 を 追 加 したり 破 線 部 ( 実 際 には 表 示 しない)のように 左 側 に CSS でマージンを 追 加 することで 改 善 することがで きる また 図 10 のように HTML で 水 平 の 区 切 り 線 を 入 れることで 複 数 の 選 択 肢 に 対 して 補 足 事 項 を 具 体 的 に 記 入 する 必 要 がある 場 合 にもわかりやすく 提 示 できるようになる 本 研 究 の Web のビューでは 以 上 のような 工 夫 を 行 った 7
図 8 スマートフォンでは 1 行 に 1 項 目 ずつ 表 示 8
図 9 改 善 したスマートフォン Web のビュー( 破 線 部 は 実 際 には 表 示 しない) 9
図 10 複 数 の 選 択 項 目 と 補 足 事 項 の 入 力 欄 の 設 計 例 4 郵 送 と Web による 社 会 調 査 の 実 証 実 験 の 実 施 開 発 した 調 査 のデザインと 情 報 システムを 用 い 実 証 実 験 を 行 った 4.1 調 査 票 の 内 容 調 査 票 の 内 容 は 仕 事 の 安 定 と 生 活 の 安 心 感 についての 社 会 調 査 と 題 し 職 歴 と 社 会 に 対 する 意 見 を 調 査 するものとした 調 査 票 は 紙 の 場 合 A4 で 10 ページ 質 問 数 は 大 項 目 が 43 問 であった 回 答 方 式 は 択 一 式 多 岐 選 択 式 数 値 自 由 記 述 などを 組 み 合 わせたものである そして 同 じ 内 容 の 質 問 を 選 択 式 と 自 由 記 述 で 回 答 する 割 合 を 変 えたタイプ I II の 2 種 類 を 用 意 した 4.2 調 査 地 域 と 標 本 抽 出 調 査 対 称 地 域 は 函 館 青 森 秋 田 奈 良 橿 原 の 5 地 区 である 選 挙 人 名 簿 から 25 70 才 を 無 作 為 抽 出 し 各 地 区 Web が 100 件 郵 送 が 100 件 となるようにしようとした ただし 標 本 抽 出 上 の 都 合 により 秋 田 のみ Web が 74 件 郵 送 が 73 件 となった また 調 査 票 のタイプ I II はそれぞれ 半 々である 4.3 調 査 の 日 程 実 証 実 験 は TDM に 基 づき 以 下 の 日 程 で 実 施 した 協 力 可 否 問 い 合 わせ(1 月 31 日 発 送 ) 調 査 の 趣 旨 説 明 と 協 力 の 依 頼 を 送 付 協 力 しない 場 合 および Web から 郵 送 に 切 り 替 えたい 場 合 は 同 封 のハガキで 返 信 して 欲 しいと 連 絡 調 査 依 頼 (2 月 8 日 発 送 ) 10
協 力 しないという 連 絡 がなかった 人 に 郵 送 の 場 合 は 調 査 票 Web の 場 合 は 調 査 システムへのアクセス 方 法 を 謝 礼 (500 円 相 当 )を 同 封 して 送 付 回 答 回 収 (3 月 中 旬 まで) 調 査 依 頼 では 3 月 1 日 までとしたが 3 月 11 日 まで 調 査 システムは 稼 働 させ 返 信 された 調 査 票 は 受 け 取 った 5 実 証 実 験 結 果 5.1 全 体 の 回 答 状 況 回 答 の 全 体 の 回 収 状 況 を 図 11 に 示 す 回 答 を 辞 退 すると 連 絡 した 人 は Web と 郵 送 で 同 じくらいで それ ぞれ 17% 程 度 だった 反 応 がなかった 人 は Web が 43% 郵 送 が 28%であった Web で 回 答 した 人 は 23%だった Web 回 答 を 依 頼 したが 郵 送 による 紙 での 回 答 に 変 更 を 希 望 した 人 が 17%で そのほとんどが 実 際 に 郵 送 によ る 紙 で 回 答 した 郵 送 による 紙 での 回 答 で 依 頼 し 郵 送 による 紙 で 回 答 した 人 は 56%だった 郵 送 による 紙 での 回 答 を 依 頼 した 場 合 回 答 率 が 高 く TDM の 有 効 性 が 示 されている 一 方 で Web での 回 答 が 少 ない これは Web での 回 答 を 嫌 ったり 困 難 な 人 がかなりの 割 合 で 存 在 しているためと 思 われる 今 回 回 答 を 依 頼 してから 随 分 時 間 がたってから Web から 郵 送 による 紙 での 回 答 への 切 り 替 えを 申 し 出 た 人 もいた Web で 回 答 しようとしたが 回 答 できなかったため 郵 送 による 紙 での 回 答 に 切 り 替 えたり 反 応 が なかった 可 能 性 もある なお Web で 回 答 をはじめて 途 中 でやめた 人 は Web での 回 答 者 中 3.5%であった 図 11 全 体 の 回 答 状 況 5.2 年 齢 層 別 回 答 状 況 年 齢 層 別 回 答 状 況 の 回 収 状 況 を 図 12 に 示 す 回 答 を 辞 退 する 人 は Web 回 答 も 郵 送 による 紙 での 回 答 も 年 齢 層 が 上 がるごとに 増 えて 行 く 郵 送 による 紙 での 回 答 の 場 合 40 代 が 最 も 回 答 率 が 高 い 各 年 齢 層 で Web 回 答 は 郵 送 による 紙 での 回 答 のおよそ 半 分 である ただし 60 代 では Web 回 答 が 激 減 する Web 回 答 の 場 合 郵 送 による 紙 での 回 答 へ 切 り 替 えを 希 望 する 人 は 年 齢 層 が 上 がるごとに 増 えていく 60 代 では Web 回 答 よりも 郵 送 による 紙 での 回 答 へ 切 り 替 えた 人 の 方 が 多 い 何 らかの 形 で 回 答 した 人 の 年 齢 による 分 布 は 11
Web 回 答 郵 送 による 紙 での 回 答 の 依 頼 で 似 た 傾 向 を 示 すが Web 回 答 依 頼 での 回 答 は 郵 送 による 紙 での 回 答 依 頼 のそれぞれ 2/3 程 度 である 回 答 傾 向 は 50 代 以 下 では Web 回 答 依 頼 と 郵 送 による 紙 での 回 答 依 頼 は 似 た 傾 向 を 示 した 最 も 協 力 的 なのは 40 代 であった 60 代 では 特 に Web の 回 答 を 避 ける 傾 向 があった 図 12 年 齢 層 別 回 答 状 況 5.3 回 答 環 境 回 答 者 の 回 答 環 境 を 参 考 のために 国 内 のブラウザ シェアと 比 較 したのが 図 13 である ブラウザ シェ アは アクセス 解 析 企 業 がアクセス 解 析 を 実 施 する 際 に 収 集 したデータを 元 にしている アクセス 解 析 に 使 用 している 技 術 や 推 定 に 用 いている 考 え 方 の 違 いから ブラウザ シェアは 公 表 しているアクセス 解 析 企 業 により 異 なってくる 図 3 では 忍 者 ツールズ などのアクセス 解 析 を 提 供 している 国 内 のアクセス 解 析 企 業 サムライファクトリー[11]と 海 外 のアクセス 解 析 企 業 StatCounter[12]の 集 計 結 果 を 比 較 のため 示 した サムライファクトリーと StatCounter のデータを 比 較 すると StatCounter では 携 帯 電 話 のアクセスが 拾 え ていない 可 能 性 が 考 えられる そこで 本 実 験 とサムライファクトリーのデータを 比 較 することにする 本 実 験 の 回 答 者 は 国 内 のブラウザ シェアに 比 べて モバイル 端 末 を 利 用 した 人 が 少 なかった これは アンケートに 答 えるため モバイル 端 末 よりも PC を 使 用 した 可 能 性 がある また Windows で 最 新 の Internet Explorer を 使 用 した 人 の 割 合 が 国 内 のブラウザ シェアよりも 多 かった これは ブラウザ シェアのデ ータには Web を 閲 覧 する 環 境 をカスタマイズするようなネットのヘビーユーザーのアクセスが 多 く 含 まれ ているため 実 際 の 普 及 の 割 合 とは 異 なっているためだと 思 われる 12
図 13 回 答 環 境 と 国 内 ブラウザ シェアの 比 較 6 実 験 室 における Web 調 査 と 筆 記 調 査 の 回 答 の 比 較 研 究 提 案 に 沿 って ここまで 研 究 をすすめてきた 社 会 調 査 の 調 査 票 などを より 改 善 するための 示 唆 を 得 るために われわれは 更 に 研 究 をすすめることにした 実 際 の 社 会 調 査 では 回 答 状 況 を 監 視 することはできないので ある 設 問 の 回 答 に 時 間 がかかったとして も それが 思 案 したことによるものなのか 突 然 用 事 ができたことによるものなのか 区 別 することはでき ない また 回 答 が 返 って 来 なかった 場 合 その 理 由 を 知 ることはできない そこでわれわれは Web 調 査 の 回 答 過 程 をより 詳 しく 調 べ 質 問 票 を 改 善 する 情 報 を 得 るために 実 験 室 でも 実 験 を 行 うことにした 6.1 実 験 の 構 成 Web 調 査 と 筆 記 調 査 の 回 答 を 比 較 することにした そのときに 同 一 人 物 に 同 一 内 容 の 質 問 文 で Web 調 査 と 筆 記 調 査 の 両 方 を 実 施 することにした そして 1 先 に Web 調 査 後 から 筆 記 調 査 を 行 う 2 先 に 筆 記 調 査 後 から Web 調 査 を 行 うという 2 つ の 群 に 無 作 為 に 回 答 者 を 割 り 振 って 調 査 することにした また 調 査 の 後 に 質 問 文 の 回 答 しやすさも 回 答 してもらった 更 に 筆 記 調 査 の 場 合 はトータルの 回 答 時 間 Web 調 査 の 場 合 は 個 々の 質 問 の 回 答 時 間 も 計 測 した これらにより 先 に 行 った 調 査 の 回 答 を 比 較 することで Web と 筆 記 の 回 答 傾 向 や 過 程 の 違 いを 調 べるこ とができる また 先 に 行 った 調 査 と 後 から 行 った 調 査 の 同 一 人 物 の 回 答 を 比 較 することで 回 答 環 境 の 違 いが 回 答 に 影 響 を 及 ぼし 得 るかについて 示 唆 を 得 ることができる 更 に 主 観 的 なものではあるが 質 問 文 の 回 答 しやすさについても 情 報 を 得 ることができる 6.2 実 験 室 実 験 の 実 施 2014 年 の 1 月 と 2 月 に 筆 者 の 勤 める 大 学 の 学 生 およそ 80 人 を 対 象 に 実 験 を 実 施 した 過 去 の 調 査 データと 比 較 できるように 過 去 に 同 じ 大 学 で 学 生 に 実 施 した 生 活 の 質 と 意 思 決 定 という 調 査 の 質 問 紙 を 用 いた Web 回 答 の 場 合 普 段 Web を 閲 覧 するのに 使 っているデバイスで 回 答 してもらった 回 答 結 果 は 今 後 解 析 する 予 定 である 13
7 まとめ 本 研 究 の 目 的 は 近 年 多 様 化 している 情 報 端 末 の 社 会 調 査 に 対 する 影 響 を 調 べることであった まず 2013 年 2 月 に Web 調 査 と 郵 送 による 質 問 紙 調 査 を 実 施 した 回 答 者 として 国 内 5 都 市 ( 函 館 青 森 秋 田 奈 良 橿 原 )で 選 挙 人 名 簿 からおよそ 1000 人 を 無 作 為 抽 出 した そして 郵 送 と Web に 無 作 為 に 50%ずつ 割 り 当 てた 回 収 率 は 郵 送 が 56% Web が 23%であった また Web での 回 答 を 依 頼 したが 郵 送 へ 変 更 を 希 望 した 人 が 16%であった 回 答 者 の Internet Explorer の 使 用 率 は 63%で 国 内 のシェアに 比 べて 大 変 高 かった これはインターネットを 閲 覧 する 環 境 を 自 分 でカスタマイズするようなヘビーユーザーの 存 在 により Internet Explorer 以 外 のブラウザのマーケット シェアが 過 大 に 見 積 もられている 可 能 性 を 示 していた また この 調 査 を 受 け 更 に 詳 しく 回 答 過 程 を 調 べるために 2014 年 の 1 月 と 2 月 に 同 一 人 物 に 対 して 同 一 内 容 の 質 問 文 で Web 調 査 と 質 問 紙 調 査 の 両 方 を 実 施 した また それぞれの 回 答 しやすさを 調 査 した 回 答 者 は 大 学 生 およそ 80 人 で 先 に Web で 回 答 し 後 から 質 問 紙 に 回 答 するものと 先 に 質 問 紙 で 回 答 し 後 か ら Web で 回 答 するものを 無 作 為 に 50%ずつ 割 り 当 てた 調 査 の 解 析 は 今 後 実 施 する 予 定 である なお 2013 年 2 月 に 実 施 した 調 査 は 科 学 研 究 費 補 助 金 基 盤 C 課 題 番 号 23530623 郵 送 インターネッ トによる 実 験 的 な 職 歴 調 査 の 実 施 ( 研 究 代 表 者 : 吉 村 治 正 )と 連 携 して 実 施 した 参 考 文 献 [1] 大 隅 昇, ウェブ 調 査 とはなにか?: 可 能 性 限 界 そして 課 題, ( 社 ) 輿 論 科 学 協 会 創 立 65 周 年 記 念 特 別 講 演, 2010 年 11 月 15 日. [2] Groves, R.M., et.al., "Survey Methodology", Wiley & Sons, 2004. [3] Dillman, D.A., "Mail and Telephone Surveys: The Total Design Method", Wiley & Sons, 1978. [4] 小 川 雄 大 ほか, パーフェクト PHP, 技 術 評 論 社, 2010. [5] Twitter Bootstrap, http://twitter.github.com/bootstrap/ [6] NTT ドコモ, i モード 対 応 HTML タグ 一 覧, https://www.nttdocomo.co.jp/service/developer/make/content/browser/html/tag/istyle.html [7]KDDI, EZweb 仕 様 書 EZweb 全 般 Web ページ 記 述 ガイド Version 1.0, http://www.au.kddi.com/ezfactory/web/pdf/webpage_guide.pdf [8]SoftBank, ウェブコンテンツ 開 発 ガイド[HTML 編 ] Version 2.1.1, http://creation.mb.softbank.jp/mc/tech/doc/a-005-111-html_2.1.1.pdf [9] Apple, ios ヒューマンインターフェイスガイドライン, https://developer.apple.com/jp/devcenter/ios/library/documentation/mobilehig.pdf [10] jquery Mobile, http://jquerymobile.com/ [11]サムライファクトリー, https://www.samurai-factory.jp/ [12] StatCounter, http://gs.statcounter.com/ 発 表 資 料 題 名 掲 載 誌 学 会 名 等 発 表 年 月 Web 社 会 調 査 のためのマルチ デバイ スに 対 応 したユーザー インターフェ イスの 設 計 社 会 調 査 の 入 力 ミスの 発 生 率 について 社 会 調 査 における 郵 送 とマルチ デバ イス Web アプリケーションの 比 較 青 森 大 学 青 森 短 期 大 学 研 究 紀 要 第 35 巻 第 3 号 pp.115-128 青 森 大 学 付 属 総 合 研 究 所 紀 要 第 15 巻 1 号 pp.1-5 森 大 学 付 属 総 合 研 究 所 紀 要 第 15 巻 1 号 pp.6-10 2013.2 2014.3 2014.3 14
社 会 調 査 のためのマルチデバイス Web アンケートシステムの 開 発 郵 送 とマルチデバイス 対 応 Web システ ムによるハイブリッド 社 会 調 査 の 実 証 実 験 の 解 析 社 会 調 査 における 郵 送 とマルチ デバ イス Web アプリケーションの 比 較 情 報 処 理 学 会 第 75 回 全 国 大 会 4J-3 情 報 処 理 学 会 第 76 回 全 国 大 会 1G-4 平 成 25 年 度 第 1 回 青 森 大 学 総 合 研 究 所 研 究 発 表 会 2013.3 2014.3 2014.3 15