目 次 1 学 会 及 び 大 会 の 概 要 (1) 国 際 行 政 学 会 について 1 (2) 国 際 行 政 学 会 リオデジャネイロ 大 会 概 要 2 (3)2015 年 リオ 大 会 現 地 実 行 委 員 会 について 3 (4) 研 究 大 会 プログラム 4 2 研 究 大 会

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2 役 員 の 報 酬 等 の 支 給 状 況 平 成 27 年 度 年 間 報 酬 等 の 総 額 就 任 退 任 の 状 況 役 名 報 酬 ( 給 与 ) 賞 与 その 他 ( 内 容 ) 就 任 退 任 2,142 ( 地 域 手 当 ) 17,205 11,580 3,311 4 月 1

平成25年度 独立行政法人日本学生支援機構の役職員の報酬・給与等について

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18 国立高等専門学校機構

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公表表紙

●幼児教育振興法案

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った 場 合 など 監 事 の 任 務 懈 怠 の 場 合 は その 程 度 に 応 じて 業 績 勘 案 率 を 減 算 する (8) 役 員 の 法 人 に 対 する 特 段 の 貢 献 が 認 められる 場 合 は その 程 度 に 応 じて 業 績 勘 案 率 を 加 算 することができる

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2 役 員 の 報 酬 等 の 支 給 状 況 役 名 法 人 の 長 理 事 理 事 ( 非 常 勤 ) 平 成 25 年 度 年 間 報 酬 等 の 総 額 就 任 退 任 の 状 況 報 酬 ( 給 与 ) 賞 与 その 他 ( 内 容 ) 就 任 退 任 16,936 10,654 4,36

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m07 北見工業大学 様式①

預 金 を 確 保 しつつ 資 金 調 達 手 段 も 確 保 する 収 益 性 を 示 す 指 標 として 営 業 利 益 率 を 採 用 し 営 業 利 益 率 の 目 安 となる 数 値 を 公 表 する 株 主 の 皆 様 への 還 元 については 持 続 的 な 成 長 による 配 当 可

●電力自由化推進法案

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公 的 年 金 制 度 について 制 度 の 持 続 可 能 性 を 高 め 将 来 の 世 代 の 給 付 水 準 の 確 保 等 を 図 るため 持 続 可 能 な 社 会 保 障 制 度 の 確 立 を 図 るための 改 革 の 推 進 に 関 する 法 律 に 基 づく 社 会 経 済 情


16 日本学生支援機構

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私立大学等研究設備整備費等補助金(私立大学等

為 が 行 われるおそれがある 場 合 に 都 道 府 県 公 安 委 員 会 がその 指 定 暴 力 団 等 を 特 定 抗 争 指 定 暴 力 団 等 として 指 定 し その 所 属 する 指 定 暴 力 団 員 が 警 戒 区 域 内 において 暴 力 団 の 事 務 所 を 新 たに 設

その 他 事 業 推 進 体 制 平 成 20 年 3 月 26 日 に 石 垣 島 国 営 土 地 改 良 事 業 推 進 協 議 会 を 設 立 し 事 業 を 推 進 ( 構 成 : 石 垣 市 石 垣 市 議 会 石 垣 島 土 地 改 良 区 石 垣 市 農 業 委 員 会 沖 縄 県 農

スライド 1

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文化政策情報システムの運用等

 

入 札 参 加 者 は 入 札 の 執 行 完 了 に 至 るまではいつでも 入 札 を 辞 退 することができ これを 理 由 として 以 降 の 指 名 等 において 不 利 益 な 取 扱 いを 受 けることはない 12 入 札 保 証 金 免 除 13 契 約 保 証 金 免 除 14 入

国 家 公 務 員 の 年 金 払 い 退 職 給 付 の 創 設 について 検 討 を 進 めるものとする 平 成 19 年 法 案 をベースに 一 元 化 の 具 体 的 内 容 について 検 討 する 関 係 省 庁 間 で 調 整 の 上 平 成 24 年 通 常 国 会 への 法 案 提

定款  変更

答申第585号

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は 固 定 流 動 及 び 繰 延 に 区 分 することとし 減 価 償 却 を 行 うべき 固 定 の 取 得 又 は 改 良 に 充 てるための 補 助 金 等 の 交 付 を 受 けた 場 合 にお いては その 交 付 を 受 けた 金 額 に 相 当 する 額 を 長 期 前 受 金 とし

Microsoft Word 行革PF法案-0概要

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財団法人○○会における最初の評議員の選任方法(案)

1 総 合 設 計 一 定 規 模 以 上 の 敷 地 面 積 及 び 一 定 割 合 以 上 の 空 地 を 有 する 建 築 計 画 について 特 定 行 政 庁 の 許 可 により 容 積 率 斜 線 制 限 などの 制 限 を 緩 和 する 制 度 である 建 築 敷 地 の 共 同 化 や

検 討 検 討 の 進 め 方 検 討 状 況 簡 易 収 支 の 世 帯 からサンプリング 世 帯 名 作 成 事 務 の 廃 止 4 5 必 要 な 世 帯 数 の 確 保 が 可 能 か 簡 易 収 支 を 実 施 している 民 間 事 業 者 との 連 絡 等 に 伴 う 事 務 の 複 雑

(5) 給 与 制 度 の 総 合 的 見 直 しの 実 施 状 況 について 概 要 の 給 与 制 度 の 総 合 的 見 直 しにおいては 俸 給 表 の 水 準 の 平 均 2の 引 き 下 げ 及 び 地 域 手 当 の 支 給 割 合 の 見 直 し 等 に 取 り 組 むとされている

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Microsoft Word 第1章 定款.doc

(2) 広 島 国 際 学 院 大 学 ( 以 下 大 学 という ) (3) 広 島 国 際 学 院 大 学 自 動 車 短 期 大 学 部 ( 以 下 短 大 という ) (4) 広 島 国 際 学 院 高 等 学 校 ( 以 下 高 校 という ) ( 学 納 金 の 種 類 ) 第 3 条


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している 5. これに 対 して 親 会 社 の 持 分 変 動 による 差 額 を 資 本 剰 余 金 として 処 理 した 結 果 資 本 剰 余 金 残 高 が 負 の 値 となるような 場 合 の 取 扱 いの 明 確 化 を 求 めるコメントが 複 数 寄 せられた 6. コメントでは 親

(5) 給 与 制 度 の 総 合 的 見 直 しの 実 施 状 況 概 要 国 の 給 与 制 度 の 総 合 的 見 直 しにおいては 俸 給 表 の 水 準 の 平 均 2の 引 下 げ 及 び 地 域 手 当 の 支 給 割 合 の 見 直 し 等 に 取 り 組 むとされている 総 合 的

(2)大学・学部・研究科等の理念・目的が、大学構成員(教職員および学生)に周知され、社会に公表されているか

別 紙 第 号 高 知 県 立 学 校 授 業 料 等 徴 収 条 例 の 一 部 を 改 正 する 条 例 議 案 高 知 県 立 学 校 授 業 料 等 徴 収 条 例 の 一 部 を 改 正 する 条 例 を 次 のように 定 める 平 成 26 年 2 月 日 提 出 高 知 県 知 事 尾

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ていることから それに 先 行 する 形 で 下 請 業 者 についても 対 策 を 講 じることとしまし た 本 県 としましては それまでの 間 に 未 加 入 の 建 設 業 者 に 加 入 していただきますよう 28 年 4 月 から 実 施 することとしました 問 6 公 共 工 事 の

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定款

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社会保険加入促進計画に盛込むべき内容

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質 問 票 ( 様 式 3) 質 問 番 号 62-1 質 問 内 容 鑑 定 評 価 依 頼 先 は 千 葉 県 などは 入 札 制 度 にしているが 神 奈 川 県 は 入 札 なのか?または 随 契 なのか?その 理 由 は? 地 価 調 査 業 務 は 単 にそれぞれの 地 点 の 鑑 定

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参 考 様 式 再 就 者 から 依 頼 等 を 受 けた 場 合 の 届 出 公 平 委 員 会 委 員 長 様 年 月 日 地 方 公 務 員 法 ( 昭 和 25 年 法 律 第 261 号 ) 第 38 条 の2 第 7 項 規 定 に 基 づき 下 記 のとおり 届 出 を します この

39_1


学校教育法等の一部を改正する法律の施行に伴う文部科学省関係省令の整備に関する省令等について(通知)

平 成 27 年 11 月 ~ 平 成 28 年 4 月 に 公 開 の 対 象 となった 専 門 協 議 等 における 各 専 門 委 員 等 の 寄 附 金 契 約 金 等 の 受 取 状 況 審 査 ( 別 紙 ) 専 門 協 議 等 の 件 数 専 門 委 員 数 500 万 円 超 の 受

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一般競争入札について

6 構 造 等 コンクリートブロック 造 平 屋 建 て4 戸 長 屋 16 棟 64 戸 建 築 年 1 戸 当 床 面 積 棟 数 住 戸 改 善 後 床 面 積 昭 和 42 年 36.00m m2 昭 和 43 年 36.50m m2 昭 和 44 年 36.

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弁護士報酬規定(抜粋)

4 参 加 資 格 要 件 本 提 案 への 参 加 予 定 者 は 以 下 の 条 件 を 全 て 満 たすこと 1 地 方 自 治 法 施 行 令 ( 昭 和 22 年 政 令 第 16 号 ) 第 167 条 の4 第 1 項 各 号 の 規 定 に 該 当 しない 者 であること 2 会 社

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官報掲載【セット版】

連結計算書

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頸 がん 予 防 措 置 の 実 施 の 推 進 のために 講 ずる 具 体 的 な 施 策 等 について 定 めることにより 子 宮 頸 がんの 確 実 な 予 防 を 図 ることを 目 的 とする ( 定 義 ) 第 二 条 この 法 律 において 子 宮 頸 がん 予 防 措 置 とは 子 宮

1 リーダーシップと 意 思 決 定 1-1 事 業 所 が 目 指 していることの 実 現 に 向 けて 一 丸 となっている 評 価 項 目 事 業 所 が 目 指 していること( 理 念 基 本 方 針 )を 明 確 化 周 知 している 1. 事 業 所 が 目 指 していること

2 役 員 の 報 酬 等 の 支 給 状 況 平 成 27 年 度 年 間 報 酬 等 の 総 額 就 任 退 任 の 状 況 役 名 報 酬 ( 給 与 ) 賞 与 その 他 ( 内 容 ) 就 任 退 任 法 人 の 長 A 18,248 11,166 4, ,066 6,42

競 争 参 加 資 格 審 査 等 事 務 取 扱 要 領 ( 抜 粋 ) ( 有 資 格 者 としない 者 ) 第 6 条 契 約 事 務 責 任 者 は 契 約 を 締 結 する 能 力 を 有 しない 者 破 産 者 で 復 権 を 得 ない 者 及 び 暴 力 団 等 の 反 社 会 的 勢

03 平成28年度文部科学省税制改正要望事項

注 記 事 項 (1) 当 四 半 期 連 結 累 計 期 間 における 重 要 な 子 会 社 の 異 動 : 無 (2) 四 半 期 連 結 財 務 諸 表 の 作 成 に 特 有 の 会 計 処 理 の 適 用 : 有 ( 注 ) 詳 細 は 添 付 資 料 4ページ 2.サマリー 情 報 (

共 通 認 識 1 官 民 較 差 調 整 後 は 退 職 給 付 全 体 でみて 民 間 企 業 の 事 業 主 負 担 と 均 衡 する 水 準 で あれば 最 終 的 な 税 負 担 は 変 わらず 公 務 員 を 優 遇 するものとはならないものであ ること 2 民 間 の 実 態 を 考

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リング 不 能 な 将 来 減 算 一 時 差 異 に 係 る 繰 延 税 金 資 産 について 回 収 可 能 性 がないも のとする 原 則 的 な 取 扱 いに 対 して スケジューリング 不 能 な 将 来 減 算 一 時 差 異 を 回 収 できることを 反 証 できる 場 合 に 原 則

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70 愛媛大学

2 一 般 行 政 職 給 料 表 の 状 況 ( 平 成 24 年 4 月 1 日 現 在 ) 1 級 2 級 3 級 4 級 5 級 ( 単 位 : ) 6 級 7 級 8 級 1 号 給 の 給 料 月 額 135,6 185,8 222,9 261,9 289,2 32,6 366,2 41

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PowerPoint プレゼンテーション

Transcription:

諸 外 国 における 行 政 管 理 の 実 態 把 握 に 関 する 調 査 研 究 報 告 書 IIAS 国 際 大 会 における 発 表 論 文 等 の 収 集 分 析 整 理 平 成 27 年 9 月 ( 一 財 ) 行 政 管 理 研 究 センター

目 次 1 学 会 及 び 大 会 の 概 要 (1) 国 際 行 政 学 会 について 1 (2) 国 際 行 政 学 会 リオデジャネイロ 大 会 概 要 2 (3)2015 年 リオ 大 会 現 地 実 行 委 員 会 について 3 (4) 研 究 大 会 プログラム 4 2 研 究 大 会 報 告 内 容 7 (1) 全 体 テーマ 7 (2) 全 体 会 合 14 (3) 分 科 会 16 (4) 報 告 内 容 の 分 析 と 我 が 国 の 行 政 管 理 への 示 唆 36

1 学 会 及 び 大 会 の 概 要 (1) 国 際 行 政 学 会 について 国 際 行 政 学 会 (IIAS: International Institute of Administrative Sciences)は 1 行 政 学 に 関 する 学 術 及 び 実 務 にわたる 国 際 的 な 研 究 組 織 である 行 政 学 に 関 する 最 初 の 国 際 的 会 合 は 1910 年 にブリュッセルにおいて 開 催 された 万 国 博 覧 会 にまで 遡 る 1930 年 代 には 国 際 行 政 学 会 としての 組 織 を 整 備 したものの 第 2 次 世 界 大 戦 の 戦 禍 により 崩 壊 状 態 となった 戦 禍 の 終 息 に 伴 って 学 会 再 興 の 機 運 は 高 まり 1947 年 7 月 にスイスのベルンにおいて 復 活 の 大 会 を 開 催 した これをもって 現 在 に 連 なる 国 際 行 政 学 会 が 再 生 された 現 在 の 第 18 代 会 長 (2013-16)は ベルギーのルーベンキリスト 教 大 学 教 授 のゲールト ブッカート 博 士 (Dr. Geert Bouckaert)が 務 めている 国 際 行 政 学 会 は 一 般 の 国 際 学 会 とは 異 なり 各 国 の 研 究 者 実 務 家 が 個 人 単 位 で 参 加 す るのではなく 国 家 等 組 織 単 位 で 会 員 となる 仕 組 みを 取 っている 2 会 員 は 国 家 (State) 政 府 国 際 機 関 ( Governmental International Organization ) 非 政 府 国 際 組 織 (Non-Governmental International Organization) 国 内 委 員 会 (National Sections) 国 際 委 員 会 (International Sections) 団 体 会 員 (Corporate Members) 名 誉 会 員 (Honorary Members)の 7 つの 分 類 がなされている 現 在 63 か 国 9 国 際 機 関 が 参 加 しており 地 域 別 の 参 加 国 数 は 以 下 のとおりである 国 際 行 政 学 会 参 加 国 地 域 等 参 加 国 数 アフリカ 10 アジア 太 平 洋 11 ヨーロッパ 28 中 南 米 4 中 東 8 北 米 2 国 際 機 関 9 出 典 :IIAS ウェブサイトにより 行 政 管 理 研 究 センター 作 成 我 が 国 については 日 本 国 政 府 が 国 家 会 員 (Member State)として 登 録 され 会 員 機 関 (Member Institute)として 総 務 省 が 登 録 されている また 国 内 委 員 会 (National Section) として 国 際 行 政 学 会 日 本 国 内 委 員 会 が 団 体 会 員 (Corporate Member)として 一 般 財 団 法 1 IIAS ウェブサイト http://www.iias-iisa.org/ 2 IIAS ウェブサイト http://www.iias-iisa.org/members/ 1

人 行 政 管 理 研 究 センター 日 本 公 法 学 会 及 び 日 本 行 政 学 会 が それぞれ 登 録 されている (2) 国 際 行 政 学 会 リオデジャネイロ 大 会 概 要 本 年 のリオデジャネイロ 大 会 の 概 要 は 以 下 のとおりである 開 催 日 程 は 理 事 会 事 務 局 等 による 事 前 会 合 が 1 日 研 究 会 が 3 日 エクスカーションが 1 日 の 5 日 間 であった 開 催 会 場 は 中 心 市 街 地 と 観 光 地 フラメンゴビーチとの 間 に 位 置 し ブラジリア 遷 都 以 前 に 大 統 領 公 邸 (カテテ 宮 殿 現 共 和 国 博 物 館 )のあった 市 街 地 カテテ(Catete) 地 区 のウィ ンドソル フロリダ ホテルであった 国 際 行 政 学 会 2015 年 リオデジャネイロ 大 会 概 要 日 程 2015 年 6 月 22 日 ( 火 )~26 日 ( 金 ) 事 前 会 合 エクスカーション 含 む 開 催 地 ブラジル 連 邦 共 和 国 リオデジャネイロ 州 リオデジャネイロ 市 開 催 会 場 ウィンドソル フロリダ ホテル( 市 内 Catete 地 区 ) Windsor Hotel Florida 参 加 者 250 名 出 典 : 行 政 管 理 研 究 センター 作 成 最 終 的 に 事 務 局 から 報 告 された 参 加 者 は 48 か 国 250 人 であり その 内 訳 は 下 記 のとおり である 諸 情 報 によると 例 年 の 大 会 参 加 人 数 はもう 少 し 多 いとのことで 今 回 ブラジル という 遠 隔 地 で 開 催 されたことが 人 数 の 変 動 に 寄 与 している 可 能 性 が 想 定 される 国 別 大 会 参 加 者 数 国 名 人 数 国 名 人 数 国 名 人 数 アルバニア 2 アルジェリア 1 アルゼンチン 5 オーストラリア 3 アゼルバイジャン 1 バーレーン 2 ベルギー 9 ブラジル 55 カメルーン 1 カナダ 4 中 国 30 コロンビア 8 デンマーク 1 エジプト 2 エストニア 1 フィンランド 2 フランス 9 ドイツ 12 ハイチ 1 ハンガリー 2 インド 1 インドネシア 2 イタリア 14 日 本 6 ケニヤ 1 韓 国 10 リトアニア 2 メキシコ 3 モロッコ 4 オランダ 6 ニュージーランド 1 ナイジェリア 2 パナマ 1 ペルー 3 ポーランド 1 ポルトガル 1 2

ロシア 3 サウジアラビア 1 南 アフリカ 8 スペイン 1 スイス 5 台 湾 1 タンザニア 1 タイ 2 チュニジア 1 トルコ 2 イギリス 6 アメリカ 10 出 典 :IIAS 事 務 局 提 供 資 料 より 行 政 管 理 研 究 センター 作 成 日 本 からの 参 加 者 は 以 下 のとおりであった 3 国 際 行 政 学 会 日 本 参 加 者 氏 名 所 属 等 備 考 縣 公 一 郎 早 稲 田 大 学 政 治 経 済 学 術 院 教 授 IIAS 理 事 大 山 耕 輔 慶 應 義 塾 大 学 法 学 部 教 授 発 表 者 (Speaker) 工 藤 裕 子 中 央 大 学 法 学 部 教 授 発 表 者 (Speaker) 菊 地 端 夫 明 治 大 学 経 営 学 部 准 教 授 報 告 者 (Rapporteur) 山 影 雅 良 内 閣 法 制 局 参 事 官 井 上 浩 孝 総 務 省 行 政 管 理 局 専 門 官 武 藤 桂 一 行 政 管 理 研 究 センター 主 任 研 究 員 出 典 : 行 政 管 理 研 究 センター 作 成 なお 6 月 22 日 の 理 事 会 において 来 年 度 2016 年 度 の 研 究 大 会 を 中 華 人 民 共 和 国 四 川 省 成 都 市 で 開 催 することが 決 定 された( 各 種 非 公 式 情 報 によると 開 催 時 期 は 8 月 から 9 月 を 予 定 しているとのこと) 6 月 25 日 の 閉 会 式 においては 大 臣 の 歓 迎 スピーチが 紹 介 され たほか 成 都 市 による 開 催 歓 迎 ビデオも 流 された (3)2015 年 リオ 大 会 現 地 実 行 委 員 会 について 2015 年 リオデジャネイロ 大 会 の 現 地 実 行 委 員 はブラジルのシンクタンク FGV 4 (Fundação Getulio Vargas:ジェトリオ ヴァルガス 財 団 )が 担 った FGV は 8 つの 教 育 機 関 2 つの 調 査 機 関 技 術 支 援 プロジェクト 及 び 出 版 部 門 を 持 つ 研 究 教 育 財 団 で ラ テンアメリカ 最 大 のシンクタンクとして 位 置 付 けられている 5 大 会 運 営 は 参 加 者 受 付 ( 及 び 参 加 証 明 の 発 行 )を 除 いては 基 本 的 に 現 地 開 催 実 行 委 員 会 が 行 っており 大 会 開 催 実 行 委 員 長 も FGV 会 長 であるカルロス イヴァン シモンセン リール 氏 が 務 めている な お 3 工 藤 中 央 大 学 教 授 は IIAS の 参 加 者 リストでは 現 在 滞 在 中 のイタリアからの 参 加 者 とし て 分 類 されている 4 FGV ポータルサイト http://portal.fgv.br/en 5 FGV News, http://fgvnoticias.fgv.br/en/news/fgv-tops-list-penns-2014-global-go-think-tank-rankings -latin-america 3

大 会 開 催 半 年 前 に IIAS 事 務 局 が 開 催 地 を 訪 問 し 現 地 事 務 局 との 会 合 を 持 って 開 催 地 等 の 確 認 を 行 っているとのことである なお 大 会 公 式 スポンサーとして 総 合 ヘルスカンパニーの Umined-Rio 社 がついており 開 催 パートナーとしてブラジル 国 内 の 行 政 に 関 する 教 育 学 術 団 体 等 である ANGRAD (Associação Nacional dos Cursos de Graduação em Administração: 国 立 行 政 教 育 協 会 ) ANPAD(Associação Nacional de Pós-Graduação e Pesquisa em Administração: 国 立 行 政 大 学 院 及 び 研 究 協 会 ) SBAP(Sociedade Brasileira de Administração Publica:ブラジ ル 行 政 学 会 ) Enap(Escola Nacional da Administração Pública: 国 立 行 政 大 学 院 ) CRA-RJ(Conselho Regional de Administração do Rio de Janeiro:リオデジャネイロ 州 行 政 評 議 会 ) CFA(Conselho Federal de Administração: 連 邦 行 政 評 議 会 ) ABRCA (Academia Brasileira de Ciência da Administração:ブラジル 行 政 アカデミー)が 名 を 連 ねている (4) 研 究 大 会 プログラム 研 究 大 会 のプログラムは 以 下 のとおりであった 研 究 大 会 プログラム 第 1 日 6 月 22 日 ( 月 ) 09:00-11:30 戦 略 委 員 会 11:30-13-30 財 政 委 員 会 報 告 者 (Rapporteur) 会 合 13:45-15:45 研 究 諮 問 委 員 会 15:45-16:00 休 憩 16:00-18:00 管 理 委 員 会 ( 理 事 会 ) 18:00-18:45 総 会 第 2 日 6 月 23 日 ( 火 ) 09:00-11:15 全 体 会 合 開 会 式 カルロス イヴァン シモンセン リール FGV 会 長 ( 大 会 実 行 委 員 長 ) 挨 拶 フランシスコ ドルネレス リオデジャネイロ 州 副 知 事 挨 拶 ゲールト ブッカート 国 際 行 政 学 会 会 長 挨 拶 ロレット ローレタン 国 際 行 政 学 会 事 務 局 長 挨 拶 マルコ メネグッツォ 報 告 書 代 表 -メインテーマ 紹 介 11:15-11:35 休 憩 11:35-13:00 全 体 会 合 大 陸 間 行 政 フォーラム: 信 頼 の 政 治 政 治 の 信 頼 司 会 :カルロス イヴァン シモンセン リール(ブラジル) 報 告 者 :マーガレット セイナー( 英 国 ) ルイ ソラーリ(ペルー) マルコ メネグッツォ(イタリア) クリスチャン モーグ(フランス) 4

13:00-14:30 昼 食 14:30-16:30 分 科 会 BRICS パネル 公 共 サービス 改 革 と 行 政 の 信 頼 ST1 市 民 / 消 費 者 の 政 府 への 信 頼 (1) ST1 市 民 / 消 費 者 の 政 府 への 信 頼 (2) ST2 社 会 への 政 府 からの 信 頼 (1) ST3 行 政 改 革 における 行 公 募 セッション (1) 行 政 改 革 PSG 9 公 共 サービスと 政 治 PSG 18 金 融 財 務 行 政 (1) 政 への 信 頼 (1) (1) 16:30-17:00 休 憩 17:00-18:30 分 科 会 パネルセッション 行 政 改 革 は 誰 にどの ようなメリットをもたら ST1 市 民 / 消 費 者 の 政 府 への 信 頼 (3) ST1 市 民 / 消 費 者 の 政 府 への 信 頼 (4) ST2 社 会 への 政 府 からの 信 頼 (2) すのか ST3 行 政 改 革 における 行 公 募 セッション(2) 行 政 改 革 PSG 9 公 共 サービスと 政 治 PSG 18 金 融 財 務 行 政 (2) 政 への 信 頼 (2) (2) 20:00- 歓 迎 レセプション(Windsor Hotel Florida) 第 3 日 6 月 24 日 ( 水 ) 09:00-11:00 分 科 会 パネルセッション 行 政 への 信 頼 醸 成 に おける 教 育 の 役 割 パネルセッション 政 策 基 盤 (1) 市 民 の 信 頼 強 化 に パネルセッション 政 策 基 盤 (2) 経 済 アクターへの 信 パネルセッション 政 策 基 盤 (3) 行 政 組 織 自 身 の 信 頼 向 けた 行 政 改 革 頼 ST2 社 会 における 政 府 か らの 信 頼 (3) 公 募 セッション(3) 市 民 と 行 政 の 協 同 非 営 利 組 織 と 市 民 公 募 セッション(4) 行 政 : 南 側 諸 国 の 視 点 PSG 9 公 共 サービスと 政 治 (3) 社 会 11:00-11:15 休 憩 11:15-12:45 全 体 会 合 ブレバン 記 念 講 演 報 告 者 :マーガレット セイナー( 英 国 ) 市 民 と 公 務 員 :どのように 信 頼 関 係 を 構 築 するのか 12:45-14:15 昼 食 14:15-16:00 分 科 会 パネルセッション 行 政 の 理 論 的 実 務 的 発 展 : 近 年 の 滑 降 物 ST1 市 民 / 消 費 者 の 政 府 への 信 頼 (5) ST2 社 会 における 政 府 からの 信 頼 (4) ST1 市 民 / 消 費 者 の 政 府 への 信 頼 (6) 公 募 セッション(5) 地 方 政 府 の 革 新 ST3 行 政 改 革 における PSG 9 公 共 サービスと 政 治 行 政 への 信 頼 (3) (4) 16:00-16:30 休 憩 16:30-18:30 パネルセッション ST1 パネルセッション ST2 分 科 会 OECD ワークショップ: 信 頼 への 投 資 市 民 / 消 費 者 の 政 府 への 信 頼 (7) 行 政 に 関 する 連 携 : 研 究 者 と 実 務 家 との 社 会 における 政 府 か らの 信 頼 (4) 5

関 係 ST3 行 政 改 革 における 行 政 への 信 頼 (4) ST3 行 政 改 革 における 行 政 への 信 頼 (5) 公 募 セッション(6) 地 方 政 府 の 革 新 20:00- 懇 親 会 (Windsor Hotel Atlanta) 第 4 日 6 月 25 日 ( 木 ) 09:00-11:00 CEPA パネル ST1 ST1 分 科 会 市 民 及 び 消 費 者 の 市 民 及 び 消 費 者 の 政 政 府 への 信 頼 (8) 府 への 信 頼 (9) ST3 公 募 セッション(7) 行 政 改 革 における 行 市 民 と 政 府 との 関 政 への 信 頼 (6) 係 : 非 営 利 組 織 と 市 民 社 会 11:00-11:15 休 憩 11:15-12:15 研 究 報 告 総 括 全 体 会 合 報 告 者 代 表 及 び 6 名 の 報 告 者 による 研 究 報 告 総 括 12:15-13:15 閉 会 式 全 体 会 合 エデュアルド パエス リオデジャネイロ 市 長 挨 拶 ( 代 理 ) シモンセン リール 国 内 委 員 会 代 表 挨 拶 ブッカート 国 際 行 政 学 会 長 挨 拶 ローレタン 国 際 行 政 学 会 事 務 局 長 挨 拶 2016 年 度 開 催 国 ( 中 国 ) 国 内 委 員 会 挨 拶 第 5 日 6 月 26 日 ( 金 ) エクスカーション(コルコバード 及 びシュガーローフ) 出 典 : 大 会 資 料 6より 作 成 ST2 社 会 への 政 府 からの 信 頼 (6) 6 大 会 第 1 日 に 研 究 会 受 付 配 布 の 日 程 表 に 基 づくものであり 変 更 の 可 能 性 がある 6

2 研 究 大 会 報 告 内 容 (1) 全 体 テーマ 今 回 の 研 究 大 会 は 行 政 における 信 頼 がテーマであった 行 政 に 対 する 信 頼 が 世 界 的 に 低 下 していることは 国 際 的 な 調 査 などで 知 られている 信 頼 に 関 しては 政 府 をはじめ とする 統 治 機 構 一 般 に 対 する 信 頼 の 低 下 個 別 の 政 府 行 政 機 関 に 対 する 信 頼 の 低 下 政 府 行 政 の 行 う 施 策 に 対 する 信 頼 の 低 下 等 々 様 々な 信 頼 の 対 象 が 存 在 する これらの 信 頼 の 低 下 は 政 府 行 政 の 正 統 性 の 失 墜 に 繋 がりかねないだけでなく 政 府 の 行 う 施 策 の 不 安 定 化 や 行 政 コストの 上 昇 等 といった 行 政 運 営 に 対 する 負 の 効 果 も 見 られるところである また 信 頼 そのものは 国 家 の 発 展 や 民 主 主 義 の 成 熟 度 の 違 い 近 年 では NPM 改 革 等 の 進 展 等 に 関 わらずどの 国 家 でも 問 題 になりうるものである こうした 信 頼 の 低 下 要 因 とし ては 政 府 等 の 腐 敗 強 権 的 政 権 運 営 不 十 分 な 政 策 効 果 政 策 決 定 過 程 及 び 行 政 執 行 過 程 の 不 透 明 さ 施 策 に 対 する 国 民 の 声 が 届 かないこと 等 様 々な 要 因 が 考 えられており そ れに 対 する 対 応 も 多 く 行 われているが その 効 果 は 限 定 的 であり 実 際 に 行 政 に 対 する 信 頼 向 上 一 般 に 有 効 な 方 策 は 必 ずしも 見 つかっているとは 言 えない こうした 国 際 的 な 状 況 下 において 国 際 行 政 学 会 においては 信 頼 をテーマに 据 える ことで 各 国 の 行 政 をめぐる 理 論 的 動 向 や 現 実 の 対 応 策 に 至 るまで 様 々な 情 報 を 共 有 し そのなかから 改 善 の 方 策 を 見 出 していこうとする 意 図 が 見 えてくる なお 今 回 の 全 体 テーマである 行 政 における 信 頼 に 関 し 関 連 論 文 ( 国 際 行 政 学 会 年 報 に 掲 載 された 論 文 )の 概 要 が 事 前 に 国 際 行 政 学 会 ウェブサイトにて 紹 介 された 信 頼 概 念 等 に 関 する 知 見 を 拡 充 する 点 から 重 要 であると 思 われるので 以 下 の 論 文 概 要 を 抜 粋 し 紹 介 する(なお 後 に 掲 載 する 本 大 会 報 告 論 文 と 区 別 するため 100 番 台 の 番 号 を 振 っ ている) 101 腐 敗 と 市 民 満 足 度 の 関 係 において 透 明 性 と 信 頼 が 果 たす 役 割 ( 欧 州 27 か 国 の 事 例 ) 102 私 たちは 何 を 信 頼 するのか? 国 の 特 性 評 価 のための 議 会 への 信 頼 に 関 するマル チレベル 研 究 103 現 代 における 透 明 化 に 関 する 考 察 104 情 報 通 信 技 術 と 社 会 関 係 資 本 の 汚 職 防 止 効 果 105 オランダ 失 墜 の 真 相 :オランダにおける 政 治 的 信 頼 性 の 急 落 についての 10 の 説 (オ ランダの 事 例 ) 106 公 共 部 門 における 信 頼 : 長 期 的 な 低 下 の 証 拠 が 見 当 たらない?(OECD 諸 国 (アメ リカ ニュージーランド EU 諸 国 日 本 )の 事 例 ) 107 市 民 か 消 費 者 か? 公 共 部 門 における 苦 情 処 理 108 官 民 パートナーシップ(PPP)における 信 頼 と 関 係 性 の 管 理 :オーストラリアの 事 例 (オーストラリアの 事 例 ) 7

109 住 民 サービス 及 び 信 頼 公 共 部 門 のサービスにおける 価 値 連 鎖 は 存 在 するのか (カナダの 事 例 ) 101. Heungsik Park, and John Blenkinsopp, The roles of transparency and trust in the relationship between corruption and citizen satisfaction, International Review of Administrative Sciences 2011, 腐 敗 と 市 民 満 足 度 の 関 係 において 透 明 性 と 信 頼 が 果 たす 役 割 ( 欧 州 27 か 国 の 事 例 ) 腐 敗 減 少 と 市 民 満 足 度 の 向 上 とは 政 府 の 重 要 な 目 標 であるけれども 2 つの 政 策 目 標 を 関 連 付 けて 調 査 した 例 は 乏 しい 本 報 告 は 公 務 に 関 する 政 府 の 腐 敗 と 市 民 満 足 度 との 関 係 において 透 明 性 と 信 頼 が 果 たす 役 割 についての 研 究 である 本 研 究 は 公 共 事 業 プロ グラムにおける 腐 敗 減 少 と 市 民 満 足 度 向 上 とを 追 求 した 取 り 組 みを 評 価 するために 韓 国 で 集 計 されたデータに 基 づいている 当 該 データは 腐 敗 と 満 足 度 との 関 係 は 透 明 性 に よって 緩 和 され 一 部 は 信 頼 によっても 影 響 を 受 けることを 示 している 実 務 家 へのポイント 本 研 究 は 腐 敗 と 市 民 満 足 度 の 関 係 において 透 明 性 と 信 頼 が 果 たす 役 割 に 光 を 当 て も って 腐 敗 減 少 と 満 足 度 向 上 を 目 標 とした 政 策 の 発 展 に 資 する 洞 察 を 提 供 する 102. Tom van der Meer, In what we trust? A multi-level study into trust in parliament as an evaluation of state characteristics, International Review of Administrative Sciences 2010, 私 たちは 何 を 信 頼 するのか? 国 の 特 性 評 価 のための 議 会 への 信 頼 に 関 するマルチレベ ル 研 究 政 治 システムにおける 最 小 限 度 の 信 頼 は 今 日 の 民 主 主 義 の 基 礎 と 考 えられている そ の 結 果 研 究 者 と 政 治 家 は 政 治 制 度 への 信 頼 の 低 さ あるいは 信 頼 の 減 少 傾 向 に 関 心 を 向 けてきた 本 報 告 は 議 会 への 信 頼 に 焦 点 を 当 てる 多 くの 理 論 が 信 頼 についての 国 際 的 な 相 違 や 時 期 による 変 化 への 説 明 を 提 供 してきたが それらの 説 明 に 体 系 的 で 実 証 的 な 検 証 を 課 してこなかった 本 報 告 はこの 理 論 と 実 証 とのギャップを 埋 めることを 目 指 す 筆 者 は 市 民 との 関 係 における 能 力 世 話 説 明 信 頼 性 という 4 つの 次 元 における 市 民 のやや 理 性 的 な 国 家 評 価 としての 議 会 への 信 頼 を 概 念 化 する 次 いでこの 四 側 面 を 国 の 特 性 と 関 係 付 け いかに 政 治 的 な 信 頼 に 影 響 しているかの 仮 説 を 示 す この 仮 説 は 同 時 に 2002 年 か ら 06 年 にかけてのヨーロッパでの 社 会 調 査 の 主 要 データのマルチレベル 分 析 により 検 証 さ れる この 検 証 によって 腐 敗 と 選 挙 制 度 前 政 権 のタイプという 三 つの 要 素 が 信 頼 に ついての 国 際 的 な 相 違 を 非 常 にうまく 説 明 することが 示 される 多 少 意 外 なことに 経 済 動 向 は 議 会 の 信 頼 に 影 響 しない 長 期 にわたって 信 頼 に 生 じた 変 化 をうまく 説 明 すること はできないけれども この 分 析 によって 少 なくともこれまでの 理 論 のいくつかは 退 ける ことができよう 8

実 務 家 へのポイント 本 報 告 は 議 会 に 関 する 信 頼 が 国 によって また 時 期 によって 違 うことを 指 摘 し 議 会 への 信 頼 の 相 対 的 な 低 さや 信 頼 の 減 少 傾 向 を 説 明 してきた 諸 理 論 を 検 証 する 筆 者 は 信 頼 の 四 つの 側 面 を 区 別 することによって 信 頼 の 問 題 を 理 解 するための 理 論 的 アプローチを 提 供 する 加 えて 国 の 特 性 が 国 際 的 な 相 違 を 説 明 するにあたって 重 要 であることをも 示 す 民 主 主 義 的 なルールと 選 挙 における 比 例 代 表 制 は 議 会 への 信 頼 に 好 影 響 をもたらすが 腐 敗 が 広 範 囲 に 認 知 されることは 最 も 悪 い 影 響 を 及 ぼす 同 じく 重 要 なのは 現 実 経 済 の 動 向 が 信 頼 に 関 係 がないことである 能 力 や 実 績 を 強 調 するよりも 世 話 や 清 廉 さを 強 調 する 制 度 設 計 の 方 が 議 会 への 信 頼 には 有 益 なのである 103. Albert Meijer, Understanding modern transparency, International Review of Administrative Sciences 2009, 現 代 における 透 明 化 に 関 する 考 察 コンピュータ メディアによる 行 政 の 透 明 化 が 公 共 部 門 の 信 頼 に 好 影 響 を 与 えているか 否 かについて これまで 推 進 論 者 と 反 対 論 者 の 間 で 激 しい 議 論 の 応 酬 がなされてきた 本 稿 は 前 近 代 主 義 近 代 主 義 ポストモダンの 3 つの 視 点 における 透 明 化 の 捉 え 方 を 分 析 し 透 明 化 の 問 題 に 関 する 理 解 を 深 めるものである 本 稿 の 分 析 によれば コンピュータ メディアによる 透 明 化 の 推 進 論 者 は 社 会 変 化 に 対 する 近 代 主 義 的 な 視 点 すなわち コンピュータ メディアによる 透 明 化 が 人 々により 良 い 情 報 を 提 供 し それによって 社 会 の 合 理 化 を 進 めるという 考 え 方 を 持 っている 他 方 反 対 論 者 は 一 方 向 で 構 造 化 され 脱 文 脈 化 された 透 明 性 の 在 り 方 が 社 会 の 信 頼 を 失 わ せるという 前 近 代 主 義 的 な 視 点 から 議 論 する また ポストモダニストは 透 明 性 の 美 学 に 焦 点 をあて コンピュータ メディアによる 透 明 化 の 種 々の 変 化 に 富 んだ 在 り 方 につ いて 論 じている この 3 つの 視 点 がどのような 価 値 を 持 っているのか オランダの 学 校 における 透 明 化 の 必 要 性 をめぐる 議 論 を 分 析 することによって 明 らかにし 筆 者 は 社 会 の 信 頼 への 影 響 を 最 大 化 するような 透 明 化 のシステムが 多 様 であることを 主 張 する 実 務 家 へのポイント 本 稿 は 異 なる 視 点 からインターネットを 通 じた 透 明 化 について 評 価 するものである コ ンピュータ メディアによる 透 明 化 について 前 近 代 主 義 者 はフェイス トゥ フェイス の 関 係 のような 伝 統 的 な 信 頼 の 構 造 を 壊 すものとして 捉 え 近 代 主 義 者 は 公 衆 に 客 観 的 な 情 報 を 提 供 することで 信 頼 を 高 めるものとして 評 価 し ポストモダニストはその 美 学 的 な 価 値 を 論 じる 信 頼 と 公 開 との 間 における 両 義 的 な 関 係 が 新 しい 透 明 化 に 関 する 議 論 の 中 心 となっている 本 稿 は これらの 論 争 を 理 解 し どのようなコンピュータ メディアに よる 透 明 化 の 在 り 方 が 公 的 部 門 に 求 められているのか 議 論 するのが 緊 要 であることを 主 張 するものである 9

104. Dong Chul Shim, and Tae Ho Eom, Anticorruption effects of information communication and technology (ICT) and social capital, International Review of Administrative Sciences 2009, 情 報 通 信 技 術 と 社 会 関 係 資 本 の 汚 職 防 止 効 果 本 稿 は 情 報 通 信 技 術 (ICT)と 社 会 関 係 資 本 (ソーシャル キャピタル)が 汚 職 を 減 少 させる 大 きな 要 因 として 作 用 することを 論 じるものである 情 報 通 信 技 術 は 政 府 の 作 業 工 程 における 不 必 要 な 人 的 介 入 を 減 少 させ その 結 果 汚 職 行 為 を 監 視 する 必 要 性 が 低 減 する 可 能 性 を 有 している さらに 社 会 関 係 資 本 が 高 い 社 会 では 市 民 が 政 治 的 な 意 思 決 定 プロセスに 政 局 的 に 関 与 することがより 多 くなるため 公 務 員 の 汚 職 行 為 は 密 接 な 関 係 を 有 する 市 民 に 露 呈 する 可 能 性 が 高 くなる また 社 会 関 係 資 本 と 情 報 通 信 技 術 との 相 関 性 について 複 数 の 資 料 から 得 られたパネルデータを 用 いて 統 計 分 析 を 行 った 結 果 (1) 情 報 通 信 技 術 は 汚 職 を 減 少 させるための 有 効 なツールであること (2) 社 会 関 係 資 本 も 汚 職 防 止 に 積 極 的 な 効 果 を 有 しているが 社 会 関 係 資 本 には 様 々な 階 層 があるため その 影 響 力 も 異 なるものとなり 得 ること (3) 社 会 関 係 資 本 と 情 報 通 信 技 術 の 間 の 相 関 関 係 は 確 定 的 で はないこと が 明 らかとなった 本 稿 の 理 論 モデルおよび 実 証 結 果 の 実 務 的 なポイントは 汚 職 に 対 する 情 報 通 信 技 術 の 潜 在 的 な 影 響 力 に 光 をあて 汚 染 を 減 少 させるために 有 益 かつ 実 践 的 な 政 策 ツールとして 行 政 改 革 や 法 的 措 置 のような 従 来 の 手 法 に 加 え 情 報 通 信 技 術 について 検 討 する 機 会 を 提 供 したことにある さらに 今 回 の 調 査 の 結 果 によれば 社 会 関 係 資 本 と 情 報 通 信 技 術 の 間 の 相 関 関 係 は 確 定 的 なものではなかったものの 社 会 関 係 資 本 は 情 報 通 信 技 術 と 独 立 して 汚 職 防 止 効 果 を 有 していることが 判 明 している このことは 社 会 における 信 頼 ネットワ ーク 促 進 のための 政 策 が 汚 職 防 止 に 資 することを 意 味 している 105. Mark Bovens, and Anchrit Wille, Deciphering the Dutch drop: ten explanations for decreasing political trust in the Netherlands, International Review of Administrative Sciences 2008, オランダ 失 墜 の 真 相 :オランダにおける 政 治 的 信 頼 の 急 落 についての 10 の 説 (オラン ダの 事 例 ) オランダは 常 に 公 的 制 度 の 信 頼 に 関 する 独 特 の 事 例 である 1980 1990 年 代 には 国 際 的 なトレンドに 反 して 政 府 に 対 する 信 頼 は 維 持 されたばかりが 増 加 すらした 2002 年 か らは 突 如 として 政 府 に 対 する 信 頼 は 劇 的 に 低 下 した 本 稿 では 国 際 的 な 学 説 に 基 づく 10 通 りの 説 明 についての 妥 当 性 を 検 証 し それらのどれがオランダの 失 墜 について 経 験 的 に 支 持 され あるいは 反 証 されるかについて 明 らかにする 多 くの 論 文 が 西 側 の 民 主 主 義 体 制 における 各 国 の 長 期 的 な 政 治 に 対 する 支 持 の 浸 食 に 焦 点 を 当 てているため 本 稿 も 長 期 的 かつ 漸 進 的 な 人 口 動 態 的 社 会 的 政 治 的 なトレンドに 焦 点 を 置 いた 考 察 となる しか しながら 信 頼 レベルの 急 落 については 多 様 な 説 明 ファクターの 組 み 合 わせが 求 められる 10

つまり 政 治 的 あるいは 経 済 的 な 危 機 のような 不 測 の 事 態 によって より 良 く 説 明 される オランダ 失 墜 の 事 例 において 最 も 妥 当 性 のある 説 明 は バルケネンデ(Balkenende) 内 閣 での 深 刻 な 政 治 的 な 不 安 定 性 と 不 協 和 音 および 経 済 不 況 とのコンビネーションである 2007 年 以 降 新 内 閣 発 足 と 景 気 回 復 により 政 治 への 信 頼 度 も 再 び 回 復 傾 向 にある 政 府 に 対 する 国 民 からの 信 頼 の 急 落 は 政 府 のパフォーマンスの 低 下 や 長 期 的 な 人 口 動 態 的 社 会 政 治 的 トレンドによる 説 明 よりも 政 治 的 あるいは 経 済 的 な 危 機 のような 不 測 の 事 態 によってより 良 く 説 明 される オランダにおける 信 頼 急 落 の 事 例 についても 最 も 妥 当 性 のある 説 明 は バルケネンデ 内 閣 での 大 きな 政 治 的 な 不 安 定 性 と 不 協 和 音 と 経 済 不 況 とのコンビネーションである 2007 年 以 降 新 内 閣 発 足 と 景 気 回 復 により 政 治 への 信 頼 度 も 再 び 回 復 傾 向 にある 106. Steven Van de Walle, Steven Van Roosbroek, and Geert Bouckaert, Trust in the public sector: is there any evidence for a long-term decline?, International Review of Administrative Sciences 2008, 公 共 部 門 における 信 頼 : 長 期 的 な 低 下 の 証 拠 が 見 当 たらない? (OECD 諸 国 (アメリカ ニュージーランド EU 諸 国 日 本 )の 事 例 ) 政 府 に 対 する 国 民 からの 信 頼 性 の 低 下 についての 関 心 は 現 代 政 治 学 を 論 じる 上 で 永 遠 の 要 素 である この 関 心 は 行 政 及 び 公 共 サービスにおける 市 民 の 信 頼 性 のレベルにまで 拡 大 されている 信 頼 性 は 低 下 していると 言 われるが この 低 下 は 公 共 サービス 供 給 にとって 有 害 であると 一 般 的 にはみなされている 本 稿 では この 議 論 の 本 質 を 検 証 し 既 存 の 国 際 的 サーベイデータをレビューし OECD 諸 国 について 明 らかになったことをまとめる 公 共 部 門 における 市 民 の 信 頼 は 揺 れ 動 いており データは 信 頼 性 の 一 貫 した 低 下 を 一 般 的 には 示 していない さらに いくつかの 国 においては 単 に 公 共 部 門 に 対 する 市 民 からの 信 頼 性 の 時 間 的 なトレンドについて 何 ら 結 論 を 導 けるような 十 分 なデータがない 実 務 家 へのポイント 本 稿 は 行 政 に 対 する 市 民 の 信 頼 性 についてのいくつかの 調 査 資 料 をまとめている 実 務 家 は 時 間 や 空 間 を 超 えて 各 国 における 信 頼 性 のトレンドを 比 較 することができる ここ から 導 き 出 されるのは 公 共 部 門 における 信 頼 性 が 普 遍 的 に 低 下 しているという 仮 説 の 否 定 である 本 稿 は 文 脈 を 無 視 した 世 論 調 査 結 果 の 利 用 に 対 して 警 告 している 公 共 部 門 に 対 する 市 民 からの 信 頼 性 についての 長 期 的 かつ 各 国 比 較 の 文 脈 には 政 策 論 の 視 点 が 往 々 にして 欠 けているため しばしば 仮 定 と 独 特 なアプローチに 基 づいてしまっている 107. Brian Brewer, Citizen or customer? Complaints handling in the public sector, International Review of Administrative Sciences 2007, 市 民 か 消 費 者 か? 公 共 部 門 における 苦 情 処 理 公 共 サービスに 対 する 不 満 は 効 果 的 に 扱 われるとともに 救 済 の 権 利 が 与 えられるという 11

ことを 確 かにすることは 良 いガバナンス 及 び 効 果 的 なサービス 供 給 に 不 可 欠 な 特 徴 であ る 学 術 論 文 のレビューやいくつかの 主 要 な 政 府 報 告 から 如 何 なる 市 民 の 苦 情 申 立 及 び 救 済 体 制 が 目 下 のところ 存 在 するか 如 何 にそれらがデザインされ 最 も 肯 定 的 なインパク トをもって 運 用 されるか そして 何 故 それらは 公 務 員 が 裁 量 的 な 意 思 決 定 という 権 威 を 行 使 する 際 のアカウンタビリティを 保 持 するにあたって 重 要 であるかを 明 らかにする NPM の 発 展 及 び 多 くの 公 共 部 門 改 革 により 苦 情 処 理 についての 消 費 者 モデルはますます 増 進 しており 伝 統 的 な 市 民 権 の 観 点 と 組 み 合 わせることで 苦 情 処 理 救 済 の 改 善 に 向 けた かなりの 可 能 性 を 有 しているようである しかし 消 費 者 モデルによる 消 費 者 満 足 への 視 野 狭 窄 及 び 公 正 や 社 会 的 正 義 といった 市 民 権 的 な 価 値 を 弱 体 化 させるリスクから 慎 重 な アプローチこそが 最 善 となりうることが 提 示 される 公 共 部 門 の 管 理 者 及 び 専 門 家 が 必 要 としている 知 見 は 消 費 者 としての 位 置 づけの 強 化 のみを 指 向 した 公 共 部 門 改 革 戦 略 が 市 民 指 向 の 行 政 における 法 の 支 配 は デュープロセス といった 特 徴 に 根 差 した 苦 情 処 理 救 済 戦 略 における 重 要 な 側 面 を 如 何 に 脆 弱 化 してしまうリスクを 冒 すかということ である アカウンタビリティが 弱 体 化 するのは サービスの 受 け 手 が 市 民 権 の 面 でより 小 さく 定 義 され 市 場 での 消 費 者 としてより 狭 く 定 義 された 地 位 にますます 基 づくように なる 時 である これこそ 政 府 が 公 共 サービスの 提 供 に 民 営 化 や 外 部 委 託 PPP といっ た 手 法 にますまる 頼 るようになっている 現 在 のトレンドについての 鍵 となる 含 意 である 実 務 家 へのポイント 如 何 に 上 手 く 苦 情 を 処 理 するかは 運 用 側 及 びサービス 受 容 側 の 双 方 のレベルにおける 公 共 サービスの 質 について 鍵 となる 決 定 的 要 素 である 容 易 に 受 け 入 れられる 手 続 き 及 び 単 純 な 初 動 と 運 用 透 明 性 ステイクホルダーが 情 報 を 得 ることの 保 証 そして 多 用 な 社 会 グループ 間 の 助 け 合 いの 繊 細 さは 苦 情 処 理 救 済 プロセスにおける 信 頼 性 を 築 く し かし より 多 くの 公 共 サービスが 疑 似 公 共 機 関 及 び 民 間 組 織 により 契 約 や 外 注 を 用 いて 提 供 されるようになるにつれ オンブズマン 等 の 外 部 評 価 機 関 や 伝 統 的 なアカウンタビリテ ィによる 手 続 きが 狭 義 の 消 費 者 指 向 アプローチによってとって 替 わられつつあるなかで 実 務 家 が 直 面 する 課 題 は 如 何 に 市 民 本 位 の 価 値 が 維 持 されることを 保 証 するかにある 108. Julian Teicher, Quamrul Alam, and Bernadine Van Gramberg, Managing trust and relationships in PPPs: some Australian experiences, International Review of Administrative Sciences 2006, 官 民 パートナーシップ(PPP)における 信 頼 と 関 係 性 の 管 理 :オーストラリアの 事 例 (オ ーストラリアの 事 例 ) オーストラリア 政 府 は 公 共 サービスの 提 供 を 効 率 化 するために 民 間 部 門 のサービス 事 業 者 にますます 頼 り それらの 事 業 者 との 業 務 提 携 範 囲 の 交 渉 を 始 めてきた 本 稿 では 公 共 サービスの 提 供 に 使 用 される 官 民 パートナーシップモデルの 有 効 性 を 検 討 し いくつ かのパートナーシップの 取 組 みがマイクロ マネジメントレベルにおける 効 率 は 増 加 する 12

ものの 信 頼 を 確 立 することはできなかったことを 示 唆 する 公 共 的 価 値 の 概 念 も 同 様 に 公 共 サービスの 目 標 を 設 定 するために 便 利 な 方 法 として 使 用 されてこなかった 他 のモデル では 政 策 決 定 におけるより 多 くの 住 民 参 加 と 顧 客 及 び 事 業 者 間 の 信 頼 関 係 の 構 築 に 焦 点 を 当 てており これらは このような 取 組 みの 未 来 への 道 を 指 し 示 すであろう これらの 暫 定 的 な 結 論 は パートナーシップがビクトリア 州 の 地 方 政 府 における 運 用 と 管 理 実 務 す なわちジョブネットワークと 最 適 価 格 に 影 響 を 与 えている2つの 事 例 を 考 察 することに 基 礎 を 置 いている 109. Ralph Heintzman, and Brian Marson, People, service and trust: is there a public sector service value chain? International Review of Administrative Sciences 2005, 住 民 サービス 及 び 信 頼 公 共 部 門 のサービスにおける 価 値 連 鎖 は 存 在 するのか (カ ナダの 事 例 ) 本 稿 は バウカート 等 が 公 共 機 関 における 信 頼 と 信 用 を 向 上 するための 微 視 的 な 点 から の 業 績 研 究 と 名 付 けている 方 法 論 (バウカート 他 2002 年 )に 関 して 新 たな 思 考 様 式 を 提 供 する 公 共 部 門 のサービスにおける 価 値 連 鎖 の 存 在 に 関 する 証 拠 となるものを 再 検 討 する 特 に 本 稿 は 市 民 の 信 頼 と 信 用 を 向 上 する 際 のサービス 提 供 の 役 割 に 焦 点 を 当 て ている しかし 本 稿 は より 一 般 的 なモデル つまりサービス 提 供 と 他 の 重 要 な 管 理 に 関 する 業 績 特 に 住 民 管 理 を 結 びつけたモデルの 文 脈 の 中 で 市 民 の 信 頼 と 信 用 を 向 上 する 際 のサービス 提 供 の 役 割 に 焦 点 を 当 てている 本 稿 は このモデルに 関 して 民 間 部 門 を 対 象 とするヘスケットやその 他 の 人 々による 論 文 (へスケット 他 1994 年 1997 年 )に 依 拠 した 公 共 部 門 のサービスにおける 価 値 連 鎖 であると 考 えている 本 稿 は 公 共 部 門 にお ける 被 雇 用 者 の 就 業 ( 満 足 度 及 び 忠 誠 度 ) 及 び 公 共 部 門 における 雇 客 の 満 足 度 との 関 連 性 並 びに 公 共 部 門 における 顧 客 の 満 足 度 及 び 市 民 の 信 頼 と 信 用 との 関 連 性 に 係 る 証 拠 となる ものを 再 検 討 する 本 稿 は 公 共 部 門 におけるサービス 提 供 の 5 つの 主 要 な 動 因 を 明 ら かにし そのうち 2 つの 動 因 は サービス 提 供 がカナダにおける 市 民 の 信 頼 と 信 用 に 及 ぼ すように 見 える 影 響 を 記 録 する 資 料 であるのみならず 被 雇 用 者 の 就 業 における 諸 動 因 を 意 味 する 事 を 再 検 討 する 本 稿 は 公 共 機 関 における 信 頼 と 信 用 の 諸 動 因 はもちろんの こと 職 員 の 満 足 度 及 び 忠 誠 度 の 諸 動 因 を 明 らかにし 公 共 部 門 のサービスにおける 価 値 連 鎖 に 含 まれる 上 述 の 関 連 性 が 経 験 的 に 判 断 して 有 効 となりうるかどうかを 決 定 するため に 新 たな 研 究 動 向 を 概 説 する 13

(2) 全 体 会 合 研 究 大 会 では 開 会 式 をはじめとするいくつかの 全 体 会 合 がもたれた 開 会 式 においては ブッカート 国 際 行 政 学 会 会 長 から 今 回 の 研 究 テーマである 信 頼 に 関 し 行 政 に 対 する 信 頼 によって 行 政 運 営 が 効 率 的 に 行 いうることや 現 在 国 際 連 合 や OECD においても 行 政 の 信 頼 が 重 要 なテーマになっていることが 紹 介 され 行 政 の 信 頼 はどこの 国 でも 共 通 の 問 題 として 重 要 であるとして 今 回 の 大 会 で 議 論 の 意 義 が 示 された 開 会 式 の 他 以 下 のよ うな 全 体 会 合 が 開 催 された 大 陸 間 フォーラム 開 会 式 に 引 き 続 いて 行 われた 大 陸 間 フォーラムでは 大 会 全 体 の 基 調 となるセッション として 信 頼 の 政 治 - 政 治 の 信 頼 をテーマに 英 国 フランス イタリア 及 びペルーの パネラーから 各 地 における 信 頼 への 取 組 みが 紹 介 された 英 国 のセイナー 女 史 からは 英 国 においては 総 選 挙 の 投 票 率 が 低 下 する 一 方 でスコットランド 独 立 に 関 する 住 民 投 票 の ようなシングル イシューの 投 票 では 高 投 票 率 がみられるなど 政 治 行 政 一 般 に 対 する 意 識 の 変 化 がみられており こうした 動 きに 対 して 政 府 ではデジタルガバメントの 進 展 等 オープンガバメントへ 向 けた 活 動 がなされていることが 紹 介 された フランスのモーグ 氏 からは フランスでも 公 的 信 頼 を 取 り 戻 そうとする 試 みは 繰 り 返 さ れてきたが 透 明 性 (Transparency)の 原 則 とりわけ 政 府 の 情 報 に 対 するアクセスの 問 題 が 重 視 されてきたことが 指 摘 された さらには 政 策 決 定 過 程 への 参 加 が 重 視 されるよう になってきており 行 政 のデジタル 化 の 進 展 に 伴 ってデータ 利 用 の 可 能 性 がさらに 探 られ ていることが 示 された イタリアのメネグッツォ 氏 からは 2007 年 から 12 年 の 調 査 において OECD 諸 国 よりも BRICs 諸 国 の 方 が 政 府 に 対 する 信 頼 が 高 いという 結 果 が 出 ており そこでは 経 済 状 況 が 政 府 への 信 頼 の 変 化 に 大 きな 影 響 を 与 えること マネージャーではなくリーダーシップの 強 さが 信 頼 に 寄 与 していることが 示 された ペルーのソラーリ 氏 からは ラテンアメリカにおいては 現 在 も 民 主 化 政 府 改 革 の 途 上 であり また 現 在 でも 多 くの 人 が 貧 困 に 苦 しむ 現 状 が 残 っており 真 の 意 味 での 市 民 参 加 はまだ 不 十 分 であることが 指 摘 され 仕 事 やお 金 を 与 えてくれるかどうかで 政 府 に 対 す る 信 頼 が 変 わってくることが 指 摘 された このような 各 パネラーからの 報 告 に 対 し モデレーターを 務 めるリール 氏 から 各 報 告 へ の 質 問 討 論 等 が 行 われた ブレバン 記 念 講 演 国 際 行 政 学 会 の 大 会 においては 毎 年 世 界 的 な 思 想 家 や 叙 述 家 による 講 演 が 行 われてお り この 講 演 は 第 1 回 の 2002 年 に 講 演 したフランス 国 務 院 のギ ブ レバ ン( Guy Braibant) 14

教 授 にちなみ ブレバン 記 念 講 演 と 呼 ばれている 7 過 去 には 中 邨 章 明 治 大 学 政 治 経 済 学 部 教 授 ( 現 明 治 大 学 名 誉 教 授 )が 2010 年 の 大 会 で 講 演 を 行 っている 2015 年 の 記 念 講 演 では 英 国 のセイナー 女 史 が 英 国 ケニア 及 び 国 際 連 合 行 政 専 門 家 委 員 会 (UN-CEPA: United Nations Committee of Experts of Public Administration) 等 における 行 政 実 務 家 及 び 各 種 アドバイザー 等 の 経 験 から 市 民 と 公 務 員 :どのように 信 頼 関 係 を 構 築 するか と 題 する 講 演 を 行 った 8 同 講 演 では 市 民 と 公 務 員 との 信 頼 関 係 を 構 築 するにあたって どのような 点 で 市 民 との 関 係 を 構 築 するのかが 重 要 となるが 多 様 化 し 情 報 化 の 進 んだ 現 代 では 行 政 官 たち 専 門 家 の 知 見 が 単 に 信 頼 される 時 代 は 過 ぎたと 指 摘 される こうした 状 況 においては 行 政 と 市 民 との 関 係 を 構 築 する 新 たな 手 段 として の SNS 等 の 活 用 も 重 要 であるが 行 政 の 側 から 信 頼 を 示 すことが 重 要 であることが 指 摘 さ れた 研 究 総 括 研 究 会 最 終 日 には 報 告 者 代 表 (General Rapporteur)のメネグッツォ 氏 と 6 名 の 報 告 者 9 (Rapporteur)による 研 究 総 括 が 行 われた 本 大 会 で 信 頼 に 対 する 様 々な 状 況 が 非 常 に 活 発 な 議 論 が 行 われたことを 踏 まえ 行 政 の 信 頼 の 重 要 性 を 改 めて 共 有 するものとな った 7 IIAS ウェブサイト http://www.iias-iisa.org/major-meetings/braibant-lectures/ 8 講 演 全 文 は IIAS ウェブサイトに 掲 載 されている http://www.iias-iisa.org/major-meetings/braibant-lectures/lecture-2015-margaret-sanne r/ 9 菊 地 端 夫 ( 日 本 ) マーガレット コビア(Margaret Kobia ケニア) スティーブン ファン デ ヴァレ(Steven Van de Walle オランダ) カリル アミリ(Khalil Amiri チュニジア) アルケタ ペシ(Alketa Peci ブラジル) エドガー ヴァレラ バリオス (Edgar Varela Barrios コロンビア)の 6 名 15

(3) 分 科 会 本 研 究 大 会 においては 数 多 くの 分 科 会 が 置 かれ その 分 科 会 で 行 政 の 信 頼 に 関 する 様 々な 議 論 が 交 わされた 分 科 会 は 3 つのサブテーマ 市 民 / 消 費 者 からの 行 政 への 信 頼 社 会 への 行 政 からの 信 頼 行 政 改 革 における 信 頼 と IIAS におかれている 2 つのスタ ディ グループ 公 共 サービスと 政 治 (スタディ グループ 9) 金 融 財 務 行 政 (スタ ディ グループ 18) BRICs 諸 国 による 分 科 会 CEPA による 分 科 会 さらにはテーマに とらわれない 公 募 論 文 ( 共 通 テーマで 拾 いきれなかった 論 文 が 取 り 上 げられている)によ る 分 科 会 と 多 くの 分 科 会 が 設 けられていた 大 会 プログラムを 見 ても 分 かるように これ らが 同 時 並 行 的 に 進 められ 常 時 6 から 8 つの 分 科 会 が 開 催 されるといった 大 規 模 なもの となっている 報 告 者 は 事 前 に 大 会 ウェブサイトに 報 告 概 要 及 び 論 文 を 掲 載 することとなっており 参 加 者 は 事 前 事 後 にこれらの 論 文 を 適 宜 参 照 することが 可 能 となっている しかしながら 多 くの 分 科 会 が 同 時 に 開 催 いることからもわかるように 提 出 された 論 文 は 膨 大 なものと なっており また 同 時 に 進 行 する 多 く 分 科 会 に 参 加 し そのすべてを 直 接 網 羅 すること はもとより 不 可 能 である そこで ウェブサイトに 掲 載 された 報 告 論 文 のなかで 我 が 国 の 中 央 政 府 における 行 政 管 理 に 有 意 であると 考 えられる 論 文 を 中 心 にピックアップし その 概 要 を 以 下 に 報 告 する なお これらの 論 文 は 研 究 大 会 参 加 者 にのみ 閲 覧 が 許 されたウェ ブサイトにて 配 布 されたものであり その 大 半 が 未 定 稿 として 引 用 参 照 を 認 められ ていない 資 料 である そのため 本 報 告 においてもこれら 学 術 論 文 のマナーに 則 り これ らを 直 接 訳 出 することはせず その 概 要 をまとめた 形 で 報 告 することとする 以 下 に 紹 介 する 論 文 を 報 告 の 内 容 で 大 別 すると 以 下 のとおりである 信 頼 概 念 若 しくは 信 頼 に 与 える 要 因 に 関 するするもの 1. 永 続 挑 戦 的 な 相 互 依 存 関 係 としての 市 民 - 行 政 関 係 ドイツの 市 民 感 覚 の 観 察 (ドイ ツの 事 例 ) 2. なぜ 彼 らは 私 達 を 信 頼 するのか(しないのか) 欧 州 13 か 国 における 行 政 機 関 のイメ ージ( 公 務 員 の 視 点 )( 欧 州 13 か 国 の 事 例 ) 3. 良 き 公 務 員 像 の 基 本 的 価 値 観 (オランダ イギリス フランス ドイツの 事 例 ) 4. 高 位 の 行 政 官 達 は 行 政 改 革 についてどのように 考 えているのか ドイツ 連 邦 政 府 及 び 州 政 府 における 上 級 公 務 員 の 職 務 への 姿 勢 (ドイツの 事 例 ) 5. 行 政 に 対 する 信 頼 形 成 に NPM とポスト NPM のいずれが 有 効 か? プロセスと 結 果 の 比 較 検 討 ( 日 本 ニュージーランド 他 33 か 国 の 事 例 ) 6. PPP のマネジメント 及 び 官 民 セクターにおける 信 頼 性 の 役 割 (ドイツの 事 例 ) 7. 費 用 負 担 の 意 思 認 められるニーズ サービス 及 び 信 頼 ( 韓 国 の 事 例 ) 8. 合 理 化 と 権 限 委 譲 による 行 政 の 信 頼 性 向 上 について( 中 国 の 事 例 ) 16

信 頼 を 向 上 させる 諸 政 策 に 関 するもの 9. 市 民 参 加 型 予 算 コミュニティ 的 価 値 政 府 への 信 頼 : 理 論 的 モデル 10. 市 民 の 信 頼 の 構 築 と 地 域 開 発 への 参 加 のための 戦 略 としての 計 画 立 案 アカデミー: 事 例 研 究 (アメリカの 事 例 ) 11. 政 策 規 制 の 中 でナッジ アプローチを 探 る: 都 市 共 有 空 間 を 中 心 に 12. 市 民 主 体 型 公 共 サービス 供 給 にむけたデザイン アプローチ - 韓 国 における 公 共 サ ービスデザインの 成 熟 度 評 価 ( 韓 国 の 事 例 ) 13. インドにおける 情 報 コミュニケーション 技 術 (ICT)と 租 税 管 理 法 的 分 析 (イン ドの 事 例 ) 14. 電 子 投 票 の 可 能 性 と 限 界 E デモクラシー 拡 大 のための 調 査 開 発 の 方 向 性 の 提 案 (ハンガリーの 事 例 ) 15. 中 国 における 官 民 パートナーシップの 経 済 ガバナンス 強 化 ( 中 国 の 事 例 ) 16. 天 使 か 悪 魔 か? 公 共 部 門 組 織 におけるマネジメントコンサルタントの 役 割 (イギリ ス ドイツ スイスの 事 例 ) 17. 異 なった 政 治 行 政 体 制 における 内 部 諮 問 機 構 フランス ドイツ スウェーデン オ ランダ イギリスにおける 内 部 諮 問 機 構 の 配 置 と 運 営 構 造 の 適 合 性 に 関 する 調 査 (フ ランス ドイツ スウェーデン オランダ イギリスの 事 例 ) 18. 財 政 危 機 への 対 応 : 欧 州 の 政 府 におけるパフォーマンス 情 報 の 関 連 性 における 大 きな 集 中 化 の 影 響 ( 欧 州 19 か 国 の 事 例 ) 17

1. Dr. Dieter Grunow, Citizen-Administration Relations as a Perpetual Challenging Interdependence - Observations of Citizens Perspective in Germany 永 続 挑 戦 的 な 相 互 依 存 関 係 としての 市 民 - 行 政 関 係 ドイツの 市 民 感 覚 の 観 察 (ドイツ の 事 例 ) 本 報 告 はドイツにおける 行 政 の 応 答 性 に 関 する 経 年 調 査 と 実 践 とからに 基 づくもの であり 行 政 のパフォーマンスの 質 を 測 る 尺 度 としての 応 答 性 の 確 立 とその 持 続 性 に 注 目 する 1960 年 代 後 半 に 開 始 した 行 政 の 応 答 性 ( 対 話 能 力 市 民 参 加 など)は 時 間 が 経 過 するにつれ その 範 囲 を 拡 大 し あらゆる 政 策 分 野 と 公 共 部 門 に 拡 大 している 1990 年 代 後 半 以 降 ドイツも NPM の 波 にさらされたが その 反 応 は 聡 明 な 服 従 と 不 服 従 とのレ ッテルが 貼 られ 地 方 レベルでの 多 少 の 変 化 をもたらすにとどまった ドイツの 公 的 部 門 に 対 する 市 民 の 信 頼 度 のデータを 見 ると 行 政 機 関 は 中 程 度 で 司 法 機 関 よりは 低 く 政 党 よりは 高 い 専 門 職 別 の 調 査 では 裁 判 官 への 信 頼 度 が 73.9% 公 務 員 61% 政 治 家 15.1%であった 調 査 結 果 を 比 較 検 討 すると 職 員 に 対 する 好 意 的 評 価 と 官 僚 的 な 行 政 機 関 への 批 判 的 評 価 という 矛 盾 した 結 果 が 併 存 している これは 行 政 機 関 の イメージが 個 人 的 経 験 に 加 えて マスメディアの 報 道 行 政 の 応 対 によって 形 作 られて いるためである 特 にメディア( 主 に 新 聞 )は 行 政 機 関 のポジティブな 事 例 ( 成 功 善 行 )よりもネガティブな 事 例 ( 失 敗 問 題 点 )の 報 道 に 偏 重 しがちであり 行 政 に 対 する 批 判 的 なステレオタイプや 悪 印 象 を 増 幅 し 拡 大 している なお NPM 的 なアイデアや 発 想 に 基 づく 改 革 についての 調 査 を 含 めて ドイツでは 地 方 レベルの 調 査 が 多 いため 批 判 的 なコメントが 少 ない 点 に 留 意 する 必 要 がある ドイツの 行 政 機 関 に 対 する 住 民 の 見 方 や 評 価 に 関 する 研 究 ( 調 査 )の 動 向 は 複 雑 で 一 部 矛 盾 した 様 相 を 呈 している 行 政 批 判 を 招 く 原 因 の 多 様 性 に 対 応 して 多 様 な 改 善 策 が 必 要 である 行 政 のパフォーマンスやインタラクションの 改 善 策 としては ワンストップ 窓 口 や 案 内 人 ( 行 政 コンシェルジュ) 行 政 オンライン 化 クレーム 担 当 の 導 入 などがあるも のの 予 算 的 な 制 約 がある インターネット 活 用 は メディア 対 策 としても 透 明 性 向 上 の 点 から 重 要 であろう 行 政 の 応 対 の 改 善 策 には 市 民 包 摂 ( 協 働 や 参 加 )がある NPM の 有 効 性 には 論 争 があるが 市 民 参 加 型 予 算 編 成 など 予 算 プロセスの 透 明 性 向 上 が 行 政 イ メージの 改 善 に 有 用 なのは 疑 問 の 余 地 がない 行 政 批 判 に 終 わりはなく 完 璧 な 解 決 策 はないものの 行 政 を 改 善 するための 継 続 的 な 努 力 が 必 要 である 近 年 のドイツの 事 例 からはいくつかの 選 択 肢 が 見 いだせる そしてド イツでの 経 験 から 抽 出 した 行 政 へのイメージを 形 成 する 3 つの 要 素 ( 個 人 的 体 験 メデ ィアによって 形 成 されるイメージ 市 民 包 摂 / 参 加 )は 他 の 国 にとっても 重 要 である 18

2. Robert Sobiech, Why do/don t they trust us? The image of Public Administration in 13 European Countries, The Civil Perspective なぜ 彼 らは 私 達 を 信 頼 するのか(しないのか) 欧 州 13 か 国 における 行 政 機 関 のイメー ジ( 公 務 員 の 視 点 ) ( 欧 州 13 か 国 の 事 例 ) 本 報 告 は EU 諸 国 における 中 央 政 府 の 行 政 に 対 する 大 衆 のイメージを 改 善 する 鍵 となる 概 念 や 考 えを 検 討 することを 目 的 とする 本 報 告 においては 2012 年 6 月 に 行 われた 調 査 対 象 国 である EU 加 盟 国 中 11 か 国 の 公 共 機 関 における 公 務 員 ( 管 理 職 及 び 一 般 職 )のアン ケート 調 査 及 び 調 査 対 象 国 における 行 政 事 務 に 対 する 世 論 調 査 に 基 づき 考 察 する 本 報 告 で 明 らかになったことは 調 査 対 象 国 における 行 政 機 関 及 びその 職 員 に 対 して 市 民 が 連 想 するものは 官 僚 制 及 び 非 効 率 権 力 装 置 理 解 するのに 困 難 な 組 織 高 い 社 会 的 地 位 等 であった 一 方 調 査 対 象 国 における 公 共 機 関 の 職 員 が 公 共 機 関 が 信 頼 を 得 られてい ると 考 える 要 素 は 市 民 の 保 護 高 いレベルの 専 門 性 と 堅 実 な 事 務 処 理 能 力 等 であった 反 対 に 公 共 機 関 に 対 する 市 民 の 不 信 の 要 素 として 職 員 達 が 考 えている 要 素 として 官 僚 的 機 械 的 無 駄 遣 い 腐 敗 政 治 化 等 を 挙 げていることを 明 らかにしている 財 政 危 機 等 における 政 府 の 歳 出 削 減 政 策 実 施 に 対 する 市 民 の 政 策 への 支 持 の 有 無 を 政 府 に 対 する 市 民 のイメージを 検 証 する 事 例 として 採 り 上 げ 市 民 の 歳 出 削 減 政 策 への 支 持 は 行 政 事 務 に 対 する 市 民 の 信 頼 行 政 機 関 に 対 する 評 価 及 び 政 府 の 規 模 の 相 違 とは 独 立 したものであることを 検 証 する また 公 務 員 の 社 会 的 な 立 場 について 市 民 は 公 共 機 関 の 職 員 を 社 会 的 に 中 間 的 な 立 場 であると 認 識 していることを 明 らかにしている さらに 行 政 事 務 に 対 する 市 民 の 信 頼 が 職 務 の 安 定 性 やりがいのある 仕 事 仕 事 と 私 生 活 の 両 立 を 確 保 できる 環 境 といった 項 目 とともに 職 務 に 対 する 満 足 度 の 鍵 となる 要 素 で あることを 明 らかにしている 中 央 政 府 における 行 政 のイメージの 改 善 の 手 段 として 市 民 と 公 共 機 関 における 職 員 と の 情 報 格 差 の 解 消 を 含 む 市 民 と 政 府 側 とのより 良 い 交 流 の 必 要 性 を 指 摘 され 同 時 に 政 府 の 活 動 の 効 率 性 の 増 大 及 び 政 策 決 定 過 程 のより 良 い 管 理 及 び 改 善 を 挙 げられる 政 府 における 行 政 のイメージの 改 善 は 行 政 機 関 の 職 務 に 対 する 不 十 分 な 理 解 行 政 の 不 透 明 性 及 び 行 政 組 織 に 対 する 制 限 された 市 民 の 統 制 等 にも 繋 がる 問 題 であり 本 報 告 にお ける 調 査 対 象 国 は 市 民 の 信 頼 の 程 度 において 差 異 が 存 在 するが いずれの 国 においても 官 僚 制 といった 固 定 観 念 の 再 構 築 を 熟 考 している 19

3. Toon Kerkhoff, Core Values of the Good Civil Servant 良 き 公 務 員 像 の 基 本 的 価 値 観 (オランダ イギリス フランス ドイツの 事 例 ) 現 在 ヨーロッパ 各 国 では 行 政 改 革 が 精 力 的 に 取 り 組 まれており それに 関 して 種 々の 議 論 がなされている そのなかでも 情 報 革 命 や 市 場 主 義 の 浸 透 といった 社 会 的 経 済 的 あ るいは 政 治 的 な 環 境 の 変 化 に 対 応 して どのような 公 務 員 が 望 ましいのかという 点 が 中 心 的 な 論 点 となっている こうした 議 論 は 政 府 による 公 務 員 制 度 改 革 の 実 践 とともに 学 術 的 な 検 討 の 結 果 に 基 づいて 行 われるべきであるが 良 き 公 務 員 に 関 して 学 術 的 な 検 討 を 行 うことは 必 ずしも 容 易 ではない どの 価 値 が 最 も 重 要 なのか(になるのか) またこれか らどのような 新 しい 価 値 が 創 出 されていくのか 自 明 ではないからである この 課 題 に 答 えていく 方 法 として 良 き 公 務 員 像 に 関 する 歴 史 的 かつ 国 際 比 較 の 研 究 プロジェクトが 提 案 される 歴 史 的 な 視 角 に 基 づいた 調 査 は 現 在 の 状 況 問 題 がどの 方 向 に 向 かっているのか 現 在 行 われている 諸 方 策 が 成 功 するか 否 か その 羅 針 盤 を 提 供 す る また 現 在 の 良 き 公 務 員 の 概 念 と 結 びつく 価 値 がいつ どのように そしてなぜ 創 出 され 発 達 してきたのか 明 らかにすることができる 国 際 比 較 は 各 国 間 での 類 似 点 相 違 点 を 検 討 することで それぞれの 国 が 置 かれた 状 況 を 適 切 に 把 握 することを 可 能 とす る これらの 利 点 から 本 プロジェクトでは オランダ イギリス フランス ドイツの 4ヶ 国 を 対 象 として 19 世 紀 から 現 在 に 至 るまで 公 務 員 の 研 修 教 育 プログラムの 内 容 及 び 文 脈 がどのように 変 化 持 続 してきたのか 検 討 する なかでも 公 務 員 の 研 修 教 育 プログラムの 根 底 に どのような 価 値 観 が 中 心 として 埋 め 込 まれていたのか それが 良 き 公 務 員 像 の 変 化 持 続 そして 各 国 間 での 相 違 に 影 響 を 与 えたのか という 点 を 明 ら かにすることが 中 心 的 な 課 題 となる 本 プロジェクトで 期 待 される 理 論 的 貢 献 は 以 下 の 3 つである 第 一 に 公 務 員 制 度 の 改 革 論 及 び 国 際 比 較 に 対 する 貢 献 である 特 に 求 められる 公 務 員 の 能 力 を 長 期 的 な 視 野 に 立 って 異 なる 政 治 統 治 形 態 を 通 じて 辿 ることは 公 務 員 制 度 の 概 念 的 な 基 礎 に 関 す る 新 たな 分 析 枠 組 を 提 示 することができる 第 二 の 貢 献 は 公 務 員 の 教 育 研 修 制 度 の 根 底 にある 公 共 的 価 値 を 抽 出 するとともに それが 公 共 活 動 に 与 えた 長 期 的 な 影 響 を 明 らか にできることである そして 第 三 に 公 務 員 にとって 最 も 重 要 な 能 力 は 何 か または 公 務 員 の 正 統 性 とは 何 か という 議 論 への 貢 献 である 特 に 本 プロジェクトによって 行 わ れる 良 き 公 務 員 像 の 変 化 持 続 そして 各 国 間 での 相 違 に 関 する 検 討 は 今 後 の 公 務 員 の 教 育 研 修 のあり 方 を 考 えるうえで 倫 理 的 な 示 唆 を 与 えることができると 思 われる 本 プロジェクトはまた 1これまで どのような 実 際 の 要 請 に 基 づいて 良 き 公 務 員 に 関 して 議 論 されてきたのか 明 らかすることができ 2 国 際 比 較 によって 公 務 員 の 教 育 研 修 の 改 善 に 関 する 種 々の 議 論 のバリエーションを 提 示 できる という 2 点 において 実 際 の 公 務 員 制 度 改 革 に 対 しても 貢 献 できる 点 が 大 きいと 思 われる 20

4. Eckhard Schröter and Manfred Röber, What Top Administrators Think About Administrative Reform: Job-Related Attitudes of Senior Bureaucrats in German Federal and State Governments 高 位 の 行 政 官 達 は 行 政 改 革 についてどのように 考 えているのか ドイツ 連 邦 政 府 及 び 州 政 府 における 上 級 公 務 員 の 職 務 への 姿 勢 (ドイツの 事 例 ) 本 稿 は NPM 等 の 方 法 論 から 提 起 される 近 年 のドイツ 連 邦 政 府 及 び 州 政 府 における 公 共 部 門 の 改 革 に 対 する 公 務 員 の 認 識 に 関 する 研 究 である 行 政 改 革 は 公 共 部 門 に 関 する 比 較 研 究 の 中 で 繰 り 返 し 現 れる 主 要 な 論 点 である 従 来 の 研 究 動 向 は 改 革 の 主 導 者 の 見 解 及 び 研 究 者 の 俯 瞰 的 な 視 点 等 に 基 づく 研 究 が 中 心 であり 改 革 に 直 接 影 響 力 を 及 ぼす 公 共 部 門 における 公 務 員 の 見 識 及 び 思 考 に 着 目 する 研 究 はほとんどない こうした 理 由 により 上 級 公 務 員 等 の 行 政 改 革 に 対 する 認 識 及 び 彼 らの 職 務 に 関 する 価 値 観 に 焦 点 を 当 てる 研 究 手 法 に 基 づき 調 査 を 行 う 調 査 に 協 力 した 公 務 員 は 概 ね 人 員 整 理 等 の 伝 統 的 な 削 減 政 策 と 向 き 合 い 関 心 を 寄 せて いるが 上 級 公 務 員 のための 管 理 や 専 門 的 な 職 務 に 通 じた 指 導 者 育 成 にも 注 目 している こうした 人 的 資 源 の 管 理 に 関 する 手 法 は 徐 々に 政 府 機 関 に 浸 透 している しかし このよ うな 手 法 の 十 分 な 活 用 が 確 認 できるのは 州 政 府 の 下 位 の 部 局 においてのみである 上 級 公 務 員 の 文 化 的 傾 向 に 着 目 すると 上 級 公 務 員 は 特 に 彼 ら 自 身 と 同 様 の 価 値 観 を 反 映 し 職 務 との 一 体 化 を 確 立 する 過 程 を 彼 らが 管 理 統 制 できるような 改 革 には 満 足 してい る 行 政 改 革 による 彼 らの 最 大 の 利 益 は 行 政 組 織 の 再 編 規 制 改 革 技 術 革 新 若 しくは 上 級 公 務 員 及 びその 他 の 職 員 の 間 における 意 見 交 換 によって 実 現 される 伝 統 的 な 行 政 上 の 仕 組 みの 穏 健 な 変 化 から 得 られることが 想 定 される しかし 個 別 の 改 革 項 目 ごとに 見 る と 様 々な 意 見 が 提 示 されている NPM に 関 連 する 管 理 手 段 に 対 する 支 持 は 連 邦 政 府 レ ベルではほとんど 無 いにもかかわらず 州 政 府 の 下 位 の 公 共 部 門 における 公 務 員 において は 包 括 的 な 改 革 のための 手 法 に 等 しいものとして 考 えられている しかし 民 間 部 門 との 共 同 作 業 及 び 外 部 委 託 若 しくは 市 民 の 政 策 決 定 への 参 入 といった 外 部 に 目 を 向 けた 仕 組 みに ついては 改 革 手 法 として 低 い 位 置 づけと 考 えられている 改 革 の 手 法 の 妥 当 性 に 関 する 基 本 的 な 考 えは 一 定 である 調 査 に 協 力 した 多 くの 公 務 員 は 公 共 機 関 から 市 場 若 しくは 市 民 への 政 治 的 責 任 の 移 行 に 対 して とても 懐 疑 的 である 彼 らは 自 分 達 を 政 治 的 正 当 性 及 び 政 治 的 資 源 を 伴 う 戦 略 的 に 重 要 な 主 体 であると 考 えて いる しかし 皮 肉 なことに もはや 彼 らの 地 位 は 維 持 できなくなりつつある まさにこの 点 で 公 務 員 を 取 り 巻 く 文 化 的 相 違 について 議 論 する 必 要 がある この 文 化 的 相 違 が おそらく 従 来 のシステムに 対 する 異 議 申 し 立 てをもたらすことになるであろう 本 稿 は 学 問 及 び 政 治 における 議 論 の 場 において 文 化 的 相 違 の 存 在 及 び 消 失 の 可 能 性 を 強 調 する ことを 提 起 している 21

5. Kosuke Oyama, Which Effects Trust in the Civil Service, NPM or Post-NPM? - Outcomes and Process from Comparative Perspective 行 政 に 対 する 信 頼 形 成 にNPM とポストNPM のいずれが 有 効 か? プロセスと 結 果 の 比 較 検 討 ( 日 本 ニュージーランド 他 33 か 国 の 事 例 ) 1980 年 代 のアメリカや 1990 年 代 の 日 本 に 代 表 されるように,いくつかの 先 進 国 におい て, 政 府 や 公 務 員 に 対 する 国 民 の 信 頼 が 低 下 傾 向 にあるといわれている 本 稿 は 結 果 と プロセスが 行 政 に 対 する 信 頼 形 成 に 与 える 影 響 について 実 証 的 にデータ 分 析 を 行 うことを 通 じ,NPM とポスト NPM のいずれが 行 政 に 対 する 国 民 の 信 頼 を 回 復 するために 有 益 であ るといえるかについて 検 討 するものである なお,この 点 に 関 し,ヴァン リジン(Van Ryzin) らが 2011 年 に 公 表 した 論 文 において, 結 果 よりもプロセスのほうが 信 頼 形 成 に 重 要 である ことが 既 に 指 摘 されている しかし,リジンらの 研 究 は,わずか 2 つの 事 例 について 分 析 したにとどまっていたのに 対 し, 本 稿 は,33 か 国 のデータを 用 いて,それぞれの 国 におい て, 結 果 およびプロセスが 行 政 に 対 する 信 頼 形 成 にいかなる 影 響 を 与 えたかについて 分 析 し,その 分 析 結 果 について 比 較 検 討 を 行 った 点 に 特 徴 がある NPM は, 過 去 20 年 から 30 年 の 間 に, 特 にイギリスやニュージーランドのように 英 語 圏 の 国 々において, 行 政 改 革 の 手 法 として 採 用 され,ときにその 成 果 が 強 調 されてきた し かしながら,NPM が 行 政 に 対 する 信 頼 を 獲 得 するのに 有 効 であるといえるかは 必 ずしも 明 らかではない 行 政 に 対 する 国 民 の 信 頼 が 必 ずしも 低 下 傾 向 にないといわれるヨーロッパ 諸 国 においては NPM の 影 響 は 極 めて 小 さいとの 指 摘 もなされている そこで, 本 稿 は,ポ スト NPM が 行 政 に 対 する 信 頼 形 成 に 与 える 影 響 に 着 目 し,NPM と 対 比 する 形 でポスト NPM の 影 響 力 について 検 討 することとした そのための 手 法 として, 上 記 の 33 か 国 のデ ータを 用 いた 分 析 結 果 の 比 較 検 討 に 加 え, 日 本 とニュージーランドにおいて 独 自 の 調 査 を 行 った 結 果 得 られたデータを 用 いて,ポスト NPM が 地 方 行 政 に 対 する 信 頼 形 成 に 与 える 影 響 について 分 析 を 行 った その 結 果, 行 政 に 対 する 信 頼 形 成 において,プロセスないしポ スト NPM のほうが, 結 果 ないし NPM よりも, 行 政 に 対 する 信 頼 形 成 に 有 益 であることが 判 明 した 以 上 のとおり,いくつかの 方 法 論 的 な 問 題 点 は 残 されているものの, 結 論 として,プロ セスないしポスト NPM のほうが, 結 果 ないし NPM よりも, 行 政 に 対 する 信 頼 を 回 復 する ために 有 益 であるということができよう とはいえ,このことは, 結 果 ないし NPM が 不 要 であることを 意 味 するものではない プロセスと 結 果,あるいはポスト NPM と NPM の 両 方 が 行 政 改 革 に 求 められているといえよう 22

6. Rahel Schomaker, Christian Bauer, and Andreas Knorr, Mismanagement of Public Private Partnership and the Role of Trust in Public and Private Sector PPP のマネジメント 及 び 官 民 セクターにおける 信 頼 性 の 役 割 (ドイツの 事 例 ) PPP(Public Private Partnership)とは 概 して 契 約 に 基 づく 官 民 協 働 の 取 組 を 表 し ここ 20~30 年 の 世 界 的 な 潮 流 であるが 事 業 失 敗 や 民 営 化 後 の 再 公 有 化 の 事 例 からも 明 ら かなように それは 必 ずしも 成 功 を 保 証 するものではない 近 年 の 主 要 な 論 点 となってい るのは PPP の 成 功 あるいは 失 敗 をもたらす 要 素 についてである 本 稿 は 理 論 的 かつ 実 証 的 に PPP の 成 否 における 信 頼 性 の 果 たす 役 割 について 論 ずる 冒 頭 では PPP についての 先 行 研 究 をまとめた 上 で ( 想 定 される) 取 引 コストの 低 下 は 契 約 による 官 民 セクター 関 係 の 発 展 をもたらす 可 能 性 を 高 めるとともに PPP の マネジ メント 失 敗 事 例 を 起 こりにくくすると 論 じている ここでいう マネジメント 失 敗 と は ( a) 深 刻 な 期 間 超 過 (b) 深 刻 なコスト 超 過 又 は(c)プロジェクト 未 達 成 を 表 す そ して 官 の 側 の 抵 抗 を 招 くようなコミュニケーション 戦 略 の マネジメント 失 敗 を 信 頼 性 ギャップと 関 連 付 けている PPP の 文 脈 における 信 頼 性 を 計 測 ( 及 び 向 上 させる)ツールとして 筆 者 はドイツにお いて 2015 年 3 月 から 5 月 にかけてサーベイ 調 査 を 実 施 した 調 査 はオンライン 上 で 州 および 自 治 体 レベルで PPP に 関 与 する(こともありうる) 公 務 員 を 調 査 対 象 とし PPP に 対 する 態 度 について 15 問 の 問 で 構 成 される 理 論 的 にも 関 連 するアクター 間 の 信 頼 性 は PPP をはじめとする 新 たな 官 民 協 調 の 枠 組 によるサービス 提 供 を 決 定 的 に 左 右 しうる 取 引 コスト 論 及 び 本 人 代 理 人 論 といった 理 論 的 アプローチは 信 頼 性 の 低 下 と 取 引 コストの 増 加 の 関 連 を 示 唆 している この 点 に ついて 本 稿 の 調 査 では 完 全 には 実 証 されなかったものの 民 間 セクターへの 信 頼 性 が 低 下 すると ( 想 定 又 は 実 際 の) 取 引 コストが 上 昇 すると 評 価 される また PPP の 受 容 の 効 果 は 公 的 サービス 供 給 と 比 較 して 想 定 される 程 は 大 きくない 本 調 査 のサンプル 数 が 限 られたものであることから 部 分 的 な 説 明 に 留 まりうるが 本 調 査 における 矛 盾 点 は 今 後 の 調 査 に 向 けた 興 味 深 い 視 点 を 提 供 している 総 括 として 本 調 査 結 果 サーベイからのコメント 及 びインタビューの 視 点 から コミ ュニケーション ポリシーは 信 頼 性 を 高 めることにより PPP の 受 容 を 促 進 するための 重 要 な 要 素 であると 思 われる このことは 一 般 的 に 予 想 される 程 には 関 連 していなくと も 公 務 員 についてはおおいに 関 連 しており 公 務 員 の 協 調 は PPP の 実 施 に 際 しての 必 須 条 件 であろう PPP に 対 するあらゆる( 暗 黙 の) 抵 抗 が 契 約 の 様 式 及 び 実 施 に 関 しての マネジメント 失 敗 及 び 事 業 の 遅 延 の 可 能 性 を 実 質 的 に 増 加 させうる 23

7. Heungsuk Choi, Hyun Joon Kim, Willingness to Pay, Perceived Needs, Service and Trust 費 用 負 担 の 意 思 認 められるニーズ サービス 及 び 信 頼 ( 韓 国 の 事 例 ) 本 稿 が 考 察 するのは K-12 教 育 ( 幼 稚 園 相 当 から 高 等 学 校 相 当 までを 指 す 用 語 ) 保 健 警 察 高 齢 者 福 祉 食 品 安 全 消 防 救 急 大 気 汚 染 管 理 等 の 公 共 サービスにおける 市 民 の 費 用 負 担 の 意 思 (Willing to Pay) ( 以 下 WTP)についてである 特 に 関 心 を 寄 せるの は 異 なる 市 民 集 団 ごとに 公 共 サービスに 対 する WTP の 程 度 が 異 なることについてである 同 様 に 市 民 の WTP に 影 響 を 及 ぼすファクターについても 論 じている 本 稿 の 調 査 は 2014 年 10 月 韓 国 17 地 域 での 電 話 調 査 ( 回 答 数 1926) 及 びインタビ ューをサンプル 調 査 にて 実 施 し 市 民 集 団 を 以 下 のとおり 4 類 型 化 した 1 利 益 享 受 市 民 とは 公 共 サービスに 対 する 個 人 的 満 足 度 が 高 く 政 府 の 関 与 による 効 果 を 高 く 認 識 して いるグループである 逆 に 2 不 利 益 市 民 とは 個 人 的 満 足 度 及 び 政 府 効 用 の 双 方 を 低 く 認 識 しているグループである 3 非 打 算 的 市 民 とは 個 人 的 満 足 度 が 低 いにも 関 わらず 政 府 の 関 与 を 重 視 するグループである このグループの 傾 向 としては その 低 い 個 人 的 満 足 度 を 国 のせいにしていないか あるいは 状 況 の 改 善 を 見 込 んでいると 思 われる そして 4 打 算 的 市 民 とは 個 人 的 満 足 度 が 高 いにも 関 わらず 政 府 の 効 用 を 低 くみなしているグ ループである このグループは 政 府 の 失 敗 と 市 場 の 失 敗 の 関 係 に 関 心 を 向 ける 傾 向 にあ る WTP に 影 響 を 与 えるファクターについて 政 策 過 程 個 人 的 利 害 関 係 等 の 政 治 参 加 への 影 響 は 公 的 サービスの 各 分 野 に 統 計 的 にも 左 右 する 汚 職 の 認 知 は とくに K-12 教 育 や 消 防 救 急 に 影 響 する 女 性 の WTP は 各 分 野 一 貫 して 低 い 傾 向 にある 年 齢 構 成 による WTP は 各 年 齢 層 にとっての 利 害 に 左 右 され 高 齢 者 は 高 齢 者 福 祉 の WTP が 高 い 一 方 で 警 察 や 救 命 救 急 への WTP は 低 い 2012 年 の 韓 国 の 租 税 負 担 率 (26.8%)は アメリカ(24.3%)や 日 本 (28.6%) 10 より 高 いもののイギリス(35.2%)やドイツ(37.2%)より 低 く OECD 平 均 値 を 約 8% 下 回 る 韓 国 も 高 齢 化 社 会 に 差 し 掛 かるとともに 公 的 福 祉 支 出 が 増 大 し 租 税 負 担 率 および WTP は 大 きな 論 点 となっている 本 稿 では どの 公 共 サービスもその WTP の 大 小 に 影 響 を 及 ぼす 異 なる 変 数 が 存 在 することを 明 らかにした 例 えば 大 気 汚 染 管 理 の 分 野 では 不 利 益 市 民 はより 高 い WTP を 示 す 一 方 打 算 的 市 民 の WTP が 最 低 であった そして 個 々の 市 民 の 公 共 サービスにおける 個 別 の 便 益 だけでなく 市 民 の 政 府 に 対 す る 信 頼 性 も WTP の 影 響 を 与 える 重 要 なファクターであることも 明 らかとなった 結 論 とし て 公 共 サービスに 関 わる 位 置 づけにより 市 民 はクラスター 化 されており 異 なる 市 民 集 団 ごとに WTP についての 傾 向 が 異 なっているといえよう 10 原 著 ママ( 記 載 された 負 担 率 数 値 は 韓 国 より 日 本 の 方 が 高 い) 24

8. GAO Xiao-ping, On the Enhancement of Government Credibility through Streamlining the Government and Delegating Government Powers 合 理 化 と 権 限 委 譲 による 行 政 の 信 頼 性 向 上 について ( 中 国 の 事 例 ) 現 在, 中 国 では, 行 政 システムを 改 革 し,サービス 指 向 かつ 法 の 支 配 に 基 づいた 行 政 の 構 築 に 向 けた 取 組 みを 行 っている 中 でも, 行 政 の 合 理 化 と 権 限 委 譲 は 市 民 の 行 政 に 対 す る 信 頼 性 を 向 上 させるという 積 極 的 な 役 割 を 果 たすものと 考 えられ, 一 連 の 行 政 改 革 の 中 でも 最 優 先 課 題 とされている 本 稿 は, 合 理 化 と 権 限 委 譲 による 行 政 の 信 頼 性 向 上 につい て 理 論 的 実 証 的 に 分 析 を 行 うものである 中 国 では, 長 らく 強 大 な 行 政 と 貧 弱 な 民 間 組 織 という 状 況 が 続 いており, 市 場 は 未 発 達 で 市 民 の 政 治 への 関 心 も 小 さかった しかし, 近 年 の 改 革 開 放 政 策 により, 中 国 の 社 会 経 済 環 境 は 大 きく 変 化 し, 行 政 改 革 に 対 する 圧 力 が 強 まっている 従 来 の 改 革 開 放 政 策 は, 経 済 成 長 を 重 視 した 結 果 社 会 階 層 の 分 断, 資 源 の 枯 渇, 環 境 の 悪 化 といった 深 刻 な 問 題 を 招 いており, 今 日 では,これらの 問 題 に 対 処 するための 新 たな 改 革 が 求 められている 従 来 の 改 革 開 放 政 策 が 採 用 した 行 政 主 導 型 の 成 長 モデルは 既 に 限 界 に 達 しており, 現 在 の 状 況 を 放 置 した 場 合, 中 国 経 済 は 停 滞 し 社 会 が 混 乱 することが 予 想 される これを 回 避 するには, 合 理 化 と 権 限 委 譲 によって 行 政 の 機 能 を 変 質 させる 必 要 がある 中 国 で 現 在 進 行 中 の 行 政 改 革 は, 法 制 度 や 権 力 構 造 を 再 構 築 することにより, 公 正 な 市 場 環 境 と 法 の 支 配 を 確 立 し, 行 政 の 信 頼 性 を 向 上 させることを 目 的 としている 一 方 で,それは, 中 国 が 直 面 している 中 所 得 国 の 罠 を 回 避 し, 合 理 的 かつ 持 続 的 な 成 長 を 実 現 するための 方 策 でもある 合 理 的 かつ 持 続 的 な 成 長 を 実 現 するため, 中 国 では 新 常 態 経 済 (ニューノーマル 経 済 ) が 提 唱 されている 新 常 態 経 済 のもとでは, 経 済 成 長 の 原 動 力 は 製 造 や 投 資 ではなくイノ ベーションであり,その 実 現 のため, 従 来 とは 異 なる 効 率 的 な 行 政 モデルが 構 築 されなけ ればならない すなわち, 様 々な 領 域 において 民 間 組 織 の 能 力 を 活 用 すること, 競 争 原 理 に 基 づいた 公 正 な 市 場 を 創 出 すること, 社 会 経 済 の 協 働 運 営 を 実 現 することが 求 められる そのため, 中 国 政 府 は 現 在, 行 政 の 合 理 化 と 権 限 委 譲 に 取 り 組 んでいる その 過 程 にお いては 1 行 政, 市 場 および 民 間 組 織 の 関 係 を 明 確 にして,バランスの 取 れた 権 限 配 分 を 行 うこと,2 従 前 の 事 前 規 制 を 重 視 する 行 政 モデルから 事 後 監 督 型 の 行 政 モデルへと 移 行 すること,3 社 会 経 済 に 対 する 行 政 の 介 入 を 減 少 させることが 重 視 され,さらに,4すべ ての 階 層 において 行 政 の 権 限 と 責 任 を 明 確 にし, 法 の 支 配 を 実 現 することが 最 も 重 要 と されている 上 記 の 行 政 の 合 理 化 と 権 限 委 譲 に 向 けた 取 組 みは, 市 民 の 行 政 に 対 する 信 頼 を 向 上 させ, 国 家 の 統 治 機 能 の 近 代 化 にも 寄 与 するものである これらの 取 組 みは, 中 国 のみにとって 有 益 であるのみならず, 世 界 全 体 の 経 済 的 繁 栄 と 政 治 的 安 定 を 促 進 するものである 25

9. Jooho Lee, Changsoo Song, Soonhee Kim, Participatory Budgeting, Community Values, and Trust in Government: A Theoretical Model 市 民 参 加 型 予 算 コミュニティ 的 価 値 政 府 への 信 頼 : 理 論 的 モデル これまで 政 府 の 透 明 性 と 政 府 への 信 頼 について 説 明 する 学 術 的 努 力 がなされてきたが 市 民 参 加 型 予 算 (Participatory Budgeting)のような 市 民 参 加 のプログラムが 政 府 の 透 明 性 や 政 府 に 対 する 信 頼 を 形 成 するにあたって どのような 役 割 を 果 たしているのか 実 証 的 に 説 明 しようとする 体 系 的 な 研 究 はほとんど 行 われていない しかし 近 年 市 民 参 加 を 従 来 の 民 主 的 な 価 値 だけでなく 政 府 の 透 明 性 や 政 府 に 対 する 信 頼 のようなガバナンスの 面 での 価 値 も 強 調 する 議 論 が 出 されるようになっている こうした 動 向 を 受 けて 本 研 究 では 市 民 参 加 型 予 算 がどの 程 度 政 府 の 透 明 性 や 政 府 に 対 する 市 民 の 信 頼 を 向 上 させたのか 明 らかにする 一 環 として 従 来 の 研 究 を 包 括 的 体 系 的 に 調 査 し 市 民 参 加 型 予 算 と 政 府 の 透 明 性 や 政 府 に 対 する 信 頼 との 関 係 を 確 認 したうえ で 両 者 の 関 係 に 関 する 理 論 モデルを 提 示 していく 政 府 の 透 明 性 や 政 府 への 信 頼 に 関 する 従 来 の 研 究 を 整 理 した 結 果 1 市 民 参 加 型 予 算 が 政 府 の 透 明 性 を 高 めるという 議 論 はあくまで 規 範 的 事 例 的 なものであり その 因 果 関 係 は 現 段 階 では 明 確 に 実 証 されていない 2 市 民 参 加 型 予 算 が 政 府 への 信 頼 に 与 える 影 響 も 間 接 的 なものでしかない の 2 点 が 明 らかになった このように 直 接 的 な 因 果 関 係 が 希 薄 な 市 民 参 加 型 予 算 と 政 府 の 透 明 性 政 府 への 信 頼 とを 関 係 づけているのがコミュニティ 的 価 値 である 市 民 参 加 型 予 算 の 活 用 によって 1 参 加 者 のコミュニティの 問 題 に 対 する 関 与 の 拡 大 2 参 加 者 のコミュニティへの 帰 属 意 識 の 強 化 3コミュニティ 構 成 員 のネットワークの 拡 大 が 生 じ 全 体 としてコミュニティ 的 価 値 が 高 まることになる 市 民 参 加 型 予 算 の 活 用 に よって 高 められたコミュニティ 的 価 値 は コミュニティ 構 成 員 のネットワークを 通 じた 情 報 交 換 を 活 発 化 させ 構 成 員 の 政 府 活 動 への 理 解 を 強 めていく その 結 果 政 府 の 透 明 性 は 促 進 されることになる 市 民 参 加 型 予 算 の 活 用 自 体 も 政 府 に 透 明 性 を 高 める 努 力 を 強 いる これらのプロセスを 通 じて 政 府 の 透 明 性 が 高 まると 政 府 への 信 頼 も 強 まっていく また 市 民 参 加 型 予 算 によってコミュニティ 的 価 値 が 高 められたことで コミュニティ 構 成 員 内 に 協 働 の 文 化 や 自 発 的 な 活 動 を 涵 養 させ それを 通 じて 政 府 への 信 頼 を 強 めさせて いくことになる このように 市 民 参 加 型 予 算 は コミュニティ 的 価 値 を 媒 介 にして 政 府 の 透 明 性 信 頼 の 向 上 に 影 響 を 与 えているのである なお この 市 民 参 加 型 予 算 と 政 府 の 透 明 性 政 府 への 信 頼 に 関 する 理 論 モデルは 1 経 験 的 なモデルや 仮 説 に 基 づくものではない 2 市 民 参 加 型 予 算 のプロセスや 構 造 に 関 する 詳 細 な 検 討 を 欠 いている などの 限 界 も 有 している また 本 研 究 は オフラインに 設 置 された 市 民 参 加 型 予 算 について 検 討 したものであり 将 来 的 には オンラインの 市 民 参 加 型 予 算 と 政 府 の 透 明 性 信 頼 との 関 係 についても 研 究 する 必 要 がある 26

10. Ericka O. Erickson, Linda M. Jackson, Planning Academies as a Strategy for Building Citizen's Trust and Participation in Community Development: A Case-Study 市 民 の 信 頼 の 構 築 と 地 域 開 発 への 参 加 のための 戦 略 としての 計 画 立 案 アカデミー: 事 例 研 究 (アメリカの 事 例 ) 本 稿 では 地 域 計 画 策 定 過 程 における 住 民 の 信 頼 と 参 加 を 増 加 させることを 可 能 とする 先 駆 事 例 であるカリフォルニア 州 サンラファエル 市 地 域 開 発 部 門 が 2009 年 に 初 めて 実 施 し たサンラファエル 計 画 立 案 アカデミーの 探 索 的 分 析 を 行 っている まず 本 研 究 における 方 法 論 についてふれ 次 に 政 治 への 信 頼 市 民 参 加 及 び 市 民 計 画 立 案 アカデミーに 関 する 先 行 研 究 を 概 観 している そして サンラファエル 計 画 立 案 アカデミーに 関 する 調 査 分 析 結 果 をふまえ 結 論 として 今 後 のアカデミーの 在 り 方 について 述 べる 市 民 計 画 立 案 アカデミーは アメリカで 過 去 15 年 間 に 実 施 されてきた 地 域 教 育 プログラ ムであり 地 方 政 府 機 関 によって 提 供 されるプログラムである 地 方 政 府 機 関 による 市 民 アカデミーモデルの 起 源 は 不 明 であるが 先 行 研 究 では 1970 年 代 にイギリスで 実 施 された 市 民 警 察 アカデミーが 発 祥 とされる 市 民 計 画 立 案 アカデミーの 一 般 的 な 目 標 は リーダーシップ 意 識 を 広 げ 地 域 開 発 計 画 への 市 民 参 加 を 増 加 させることにある 急 激 な 変 化 と 社 会 構 造 の 変 容 にあるこの 時 代 にお いて 市 民 計 画 立 案 アカデミーは 地 域 教 育 の 革 新 的 な 実 習 となるが 一 方 で これらのプ ログラムを 主 催 する 地 方 政 府 に 職 員 の 勤 務 時 間 の 増 大 多 様 な 参 加 者 の 一 団 を 取 りまと める 能 力 の 欠 如 などの 大 きな 支 障 を 連 想 させることとなる サンラファエル 市 における 計 画 立 案 アカデミーの 実 施 は 2008 年 のアメリカ 国 家 計 画 協 会 会 議 で 発 表 された 市 民 企 画 立 案 アカデミーのワークショップに 参 加 し それに 触 発 され た 同 市 地 域 開 発 部 門 の 長 官 と 首 席 計 画 官 の 下 で 行 われた 同 市 で 行 われたプログラムは プレゼンテーション ディスカッション グループ 演 習 などの 対 話 型 セッションで 構 成 さ れていた さらに サンラファエル 計 画 立 案 アカデミーの 特 徴 として カリキュラムの 一 部 に 気 候 変 動 の 取 組 みがあったこと 高 校 生 の 意 図 的 な 関 与 地 域 サービス 部 門 が 主 導 し た 広 報 と 参 加 登 録 などが 挙 げられる 市 民 計 画 立 案 アカデミーは 地 方 政 府 機 関 によって 提 供 することが 可 能 な 市 民 の 信 頼 と 参 加 を 促 進 するために 効 果 的 なプログラムである 地 元 の 地 縁 団 体 とのパートナーシッ プは 今 後 のプログラムの 改 善 と 参 加 者 の 多 様 性 を 高 めるために 重 要 なものである また ワークショップの 向 かい 合 うという 本 質 は ウェビナーを 容 易 に 利 用 することのできる 技 術 の 進 歩 にもかかわらず 今 後 とも 維 持 されるべきである 直 接 的 な 相 互 作 用 は 結 果 的 に 政 治 的 信 頼 社 会 の 発 展 のための 鍵 であるということを 信 頼 構 築 の 研 究 における 我 々の 探 求 として 示 唆 するものである 市 民 計 画 立 案 アカデミーは その 効 率 性 と 持 続 可 能 性 を 増 進 させ 公 共 の 意 思 決 定 の 基 盤 を 改 善 するための 社 会 的 政 治 的 信 頼 を 収 束 させるこ とができる 重 要 な 要 素 になることができる 27

11. Hyun-ju Park, Shi-Chul Lee, Exploring nudge approach in policy regulation: With a focus on urban public spaces 政 策 規 制 の 中 でナッジ アプローチを 探 る: 都 市 共 有 空 間 を 中 心 に 本 稿 では 都 市 の 公 共 政 策 の 中 で 近 年 明 らかとなった ナッジ アプローチ を 取 り 上 げ 韓 国 ではまだあまり 知 られていない 概 念 である 都 市 共 有 空 間 を 紹 介 し 政 策 にお けるナッジの 背 景 に 共 有 空 間 を 組 み 入 れるために 伝 統 的 な 行 政 規 制 と 対 照 させるこ とを 目 指 している 韓 国 における 関 連 研 究 では 規 制 という 観 点 からナッジの 主 題 を 扱 っ ている そこで 本 稿 では 規 制 に 関 する 既 存 研 究 とナッジの 思 考 方 法 について 行 動 経 済 学 及 び 都 市 公 共 空 間 の 観 点 から 考 察 する ナッジは 基 本 的 にリバタリアン パターナリズムを 追 及 することであるが 強 制 的 な 政 府 の 措 置 によるものではなく より 適 切 に 計 画 された 環 境 によって 人 間 の 行 動 を 改 善 す る 比 較 的 新 しい 方 法 である そして ナッジの 基 本 的 な 考 え 方 は ソフト パターナリズ ムの 一 形 態 として 紹 介 される 一 見 すると リバタリアン パターナリズムという 用 語 と 矛 盾 しているかもしれないが 公 的 機 関 は 個 人 の 選 択 の 自 由 を 尊 重 しながら その 行 動 に 影 響 を 与 えるためにナッジを 採 用 することが 可 能 であり 望 ましい と Nudge の 著 者 らは 主 張 している いずれにしても 都 市 環 境 の 中 で 課 題 として 挙 げられることは 都 市 の 公 共 空 間 として 誰 がどのような 環 境 を 計 画 して 設 計 するのかということであると 指 摘 する 次 に 本 稿 では 公 共 空 間 の 事 例 として 主 に 公 共 空 間 管 理 に 着 目 した そして 機 械 的 物 理 的 及 び 人 工 的 な 交 通 システムがなくなると 運 転 手 歩 行 者 自 転 車 は 他 の 車 両 歩 行 者 自 転 車 に 社 会 的 なマナーで 振 る 舞 うことが 期 待 されるということを 実 証 した オランダの 事 例 やイギリスの 事 例 を 参 考 に 共 有 空 間 が 文 字 通 り 共 有 するための 場 所 と なり 人 々が 行 動 する 方 法 を 変 えたということを 検 証 している 本 稿 は 結 論 を 導 くというよりは 主 に 今 後 の 研 究 のためにこれまでの 議 論 を 要 約 する ことに 主 眼 を 置 いてきた 加 えて 都 市 と 政 府 が 代 用 品 としてではなく 政 治 的 統 制 を 補 完 するものとしてナッジを 利 用 すべきでるということも 提 言 している また 都 市 にお ける 確 立 された 環 境 での 情 勢 の 変 化 は 道 路 交 通 信 号 公 共 の 安 全 などの 社 会 的 関 心 の 程 度 の 増 加 をもたらし 市 民 の 態 度 や 行 動 を 変 化 させる 可 能 性 が 高 いことを 明 らかにした 28

12. Hyun Jon Kim, Service Design Approach for Citizen-Centered Public Service Provision -Assessing the Maturity of Public Service Design in Korea. 市 民 主 体 型 公 共 サービス 供 給 にむけたデザイン アプローチ- 韓 国 における 公 共 サービ スデザインの 成 熟 度 評 価 ( 韓 国 の 事 例 ) 市 民 主 体 アプローチとは これまでの 従 来 型 公 共 サービス 供 給 の 限 界 を 克 服 すべく 登 場 した 代 替 的 な 行 政 手 法 である 市 民 主 体 行 政 は しばしば 行 政 参 加 と 同 一 視 され それは 疑 いなく 公 共 サービスに 対 する 市 民 の 満 足 度 を 高 めるものの それでも 行 政 参 加 の 潜 在 的 に 有 する 肯 定 的 な 効 果 は 限 定 されかねない なぜなら 市 民 が 政 府 によって 満 足 させら れる 受 身 の 消 費 者 として 扱 われる あるいは 単 に 政 策 形 成 において 政 府 を 助 ける 情 報 源 として 扱 われるからである このような 従 来 型 の 政 府 主 体 行 政 及 び 参 加 型 公 共 サービス 供 給 の 限 界 を 乗 り 越 える 一 つのオルタナティブこそ 公 共 サービスデザインという 新 たな 領 域 で 見 出 し 得 る 本 稿 では 韓 国 政 府 による 近 年 の 公 共 サービスデザイン イニシャティ ブである 市 民 デザイングループ からの 事 例 分 析 に 基 づき 韓 国 における 公 共 サービス デザイン 活 用 の 現 状 について 考 察 する 韓 国 安 全 行 政 部 は 市 民 デザイングループ につ いて 20 事 例 の 成 功 事 例 をケースブックとして 公 刊 している 本 稿 はこの 20 事 例 について 英 国 デザイン 協 会 (UK Design Council) 主 導 の 研 究 団 体 である SEE プラットフォームが 開 発 した 公 共 部 門 サービスデザイン 梯 子 を 適 用 して その 成 熟 度 を 測 定 する SEE プ ラットフォームは サービスデザインの 3 段 階 の 発 展 階 層 を 示 しており 第 一 段 階 は 個 別 問 題 解 決 型 デザイン 第 二 段 階 は 能 力 対 応 型 デザイン 第 三 段 階 は 政 策 型 デザインとなっ ている 本 稿 が 取 り 上 げる 20 事 例 は 以 下 の 4 カテゴリーの 政 策 分 野 第 一 に Moa3.0( 統 合 型 情 報 提 供 ) 第 二 に Nuri3.0( 福 祉 サービス) 第 三 に Anshim3.0( 治 安 ) 及 び 第 四 に Kium3.0( 社 会 保 障 ) に 区 分 される なお 3.0 は 韓 国 現 政 権 が 推 進 するアジェ ンダ ガバメント 3.0 を 構 成 する 一 部 であることを 示 している 結 論 として 20 事 例 の 分 析 から 示 されるのは その 多 くが 成 熟 度 においてまだまだ 初 期 段 階 にあるということである しかし 幾 つかの 事 例 では 次 の 段 階 へ 到 達 している 確 証 と して 組 織 型 ルーティーンについて 考 慮 することがサービスデザインに 組 み 込 まれている ことが 示 される そして 公 共 サービスデザインにはより 多 くの 投 資 が 必 要 であり 今 後 の 研 究 で 論 じられるべき 公 共 部 門 におけるサービスデザインの 活 用 に 向 けた 重 要 な 論 点 として 以 下 の 三 点 を 挙 げている すなわち 第 一 に 公 共 サービスデザインのプロセスは 従 来 型 の 市 民 参 加 手 法 と 実 際 に 区 別 できるのか 第 二 に 公 共 サービスデザインにより 従 来 型 の 手 法 では 達 成 不 可 能 だった 成 果 を 生 み 出 せているのか 第 三 に 行 政 参 加 した 市 民 公 務 員 及 び 公 共 サービス デザイン 専 門 家 の 経 験 から いかなる 教 訓 が 得 られるか 以 上 の 論 点 である 29

13 Jyoti Rattan and Vijay Rattan, Information and Communication Technologies (ICTs) and Tax Administration in India: A Legal Analysis インドにおける 情 報 コミュニケーション 技 術 (ICT)と 租 税 管 理 法 的 分 析 (インド の 事 例 ) 公 共 部 門 における ICT への 積 極 的 な 投 資 を 行 うことは 政 策 決 定 における 広 範 な 参 加 を 実 現 する 上 で 重 要 なことである 今 日 租 税 管 理 を 含 めた 公 共 サービスを 改 善 するための 技 術 として 民 間 企 業 同 様 全 ての 統 治 機 関 が ICT を 採 用 している 私 達 は 効 率 性 透 明 性 説 明 可 能 性 に 富 み 民 主 的 な 仕 組 みを 必 要 としている インドにおいても ICT は 透 明 性 及 び 説 明 可 能 性 を 向 上 させるために 様 々な 公 共 部 門 で 利 用 され ICT の 導 入 により データの 管 理 における 作 業 量 の 軽 減 化 が 実 現 している 租 税 管 理 に 関 しても 伝 統 的 なそれまでの 租 税 管 理 部 門 から ICT を 利 用 した 電 子 上 の 租 税 管 理 部 門 へと 移 行 しつつある しかし インドにおける 電 子 上 の 租 税 管 理 に 対 する 分 析 は 抜 け 穴 の 存 在 を 明 らかにして いる 租 税 管 理 部 門 は 電 子 上 の 租 税 管 理 に 関 する 様 々な 計 画 を 実 施 しているが 記 録 や 申 告 に 関 する 基 準 が 不 規 則 で 公 正 な 仕 組 みとなっていない この 原 因 の1つとしては 人 的 資 源 が 限 られていることが 挙 げられる 特 に 計 画 実 施 に 際 して 献 身 的 な 職 員 が 主 導 してい るものの 彼 らは その 職 務 に 関 して あまり 電 子 技 術 に 習 熟 した 専 門 家 とはいえない 職 員 に 依 存 している 状 況 にある また 直 接 税 中 央 委 員 会 及 び 中 央 物 品 税 関 税 局 は 膨 大 なデータを 各 々 管 理 しているが 両 機 関 の 間 でそうしたデータが 共 有 されるような 仕 組 みに 関 して 整 備 が 進 んでいない 状 況 である 例 えば 両 機 関 の 間 で データ 管 理 のための 計 画 を 開 始 したが 一 方 の 機 関 がす でにシステムを 機 能 させているにも 関 わらず もう 一 方 の 機 関 がシステムの 構 築 に 着 手 し たばかりという 段 階 である さらに 問 題 なのは 2 つの 租 税 管 理 機 関 はその 形 態 が 類 似 して いるが 相 互 に 独 立 して 職 務 を 行 っており 重 要 な 機 能 を 果 たす 機 関 であるにもかかわらず 協 調 することが 無 いということである さらに 租 税 管 理 部 門 による 電 子 上 のサービスに 関 する 認 知 度 はそれほど 高 くない この 原 因 として 利 用 者 にとって 分 かりにくい 専 門 用 語 及 び 英 語 の 使 用 が 挙 げられる したがって インドにおける 電 子 上 の 租 税 管 理 に 関 する 改 善 のためには 利 用 者 にとって 分 かり やすい 用 語 やインドの 各 地 方 で 使 用 されている 言 語 の 使 用 を 検 討 する 等 の 改 善 策 の 他 に 利 用 者 に 焦 点 を 当 てたサービスの 提 供 を 行 う 献 身 的 な 組 織 の 設 置 及 び 膨 大 な 時 間 や 労 力 を 省 くような 組 織 間 で 共 有 可 能 なデータ 管 理 の 仕 組 みの 設 計 等 を 提 起 する 30