38 鈴 鹿 国 際 大 学 紀 要 CAMPANA No.19,2012 外 の 地 域 にも 拡 大 し 変 容 していった 英 語 について 具 体 的 な 言 語 事 実 を 取 り 上 げ 考 察 を 行 う 2. 後 期 近 代 英 語 と 大 英 帝 国 の 繁 栄 1700 年 から



Similar documents
0605調査用紙(公民)


37 英語の変容とアメリカ英語およびその他の地域の英語 English Varieties and American English Abstract 松倉信幸 * Nobuyuki MATSUKURA The new cultural environments for the use of Eng

労働時間と休日は、労働条件のもっとも基本的なものの一つです

Microsoft Word - 佐野市生活排水処理構想(案).doc

容 積 率 制 限 の 概 要 1 容 積 率 制 限 の 目 的 地 域 で 行 われる 各 種 の 社 会 経 済 活 動 の 総 量 を 誘 導 することにより 建 築 物 と 道 路 等 の 公 共 施 設 とのバランスを 確 保 することを 目 的 として 行 われており 市 街 地 環

(Microsoft Word - \221\346\202P\202U\201@\214i\212\317.doc)

する ( 評 定 の 時 期 ) 第 条 成 績 評 定 の 時 期 は 第 3 次 評 定 者 にあっては 完 成 検 査 及 び 部 分 引 渡 しに 伴 う 検 査 の 時 とし 第 次 評 定 者 及 び 第 次 評 定 者 にあっては 工 事 の 完 成 の 時 とする ( 成 績 評 定

Ⅰ 調 査 の 概 要 1 目 的 義 務 教 育 の 機 会 均 等 その 水 準 の 維 持 向 上 の 観 点 から 的 な 児 童 生 徒 の 学 力 や 学 習 状 況 を 把 握 分 析 し 教 育 施 策 の 成 果 課 題 を 検 証 し その 改 善 を 図 るもに 学 校 におけ

Microsoft PowerPoint - 報告書(概要).ppt

Ⅰ 人 口 の 現 状 分 析 Ⅰ 人 口 の 現 状 分 析 1 人

為 が 行 われるおそれがある 場 合 に 都 道 府 県 公 安 委 員 会 がその 指 定 暴 力 団 等 を 特 定 抗 争 指 定 暴 力 団 等 として 指 定 し その 所 属 する 指 定 暴 力 団 員 が 警 戒 区 域 内 において 暴 力 団 の 事 務 所 を 新 たに 設

03 平成28年度文部科学省税制改正要望事項

39_1

第一部【証券情報】

国立研究開発法人土木研究所の役職員の報酬・給与等について

Taro-08国立大学法人宮崎大学授業

3 圏 域 では 県 北 沿 岸 で2の 傾 向 を 強 く 見 てとることができます 4 近 年 は 分 配 及 び 人 口 が 減 少 している 市 町 村 が 多 くなっているため 所 得 の 増 加 要 因 を 考 える 場 合 は 人 口 減 少 による 影 響 についても 考 慮 する

安 芸 太 田 町 学 校 適 正 配 置 基 本 方 針 の 一 部 修 正 について 1 議 会 学 校 適 正 配 置 調 査 特 別 委 員 会 調 査 報 告 書 について 安 芸 太 田 町 教 育 委 員 会 が 平 成 25 年 10 月 30 日 に 決 定 した 安 芸 太 田

<4D F736F F D B3817A8E9096E291E D86939A905C>

<947A957A8E9197BF C E786C73>

2. ど の 様 な 経 緯 で 発 覚 し た の か ま た 遡 っ た の を 昨 年 4 月 ま で と し た の は 何 故 か 明 ら か に す る こ と 回 答 3 月 17 日 に 実 施 し た ダ イ ヤ 改 正 で 静 岡 車 両 区 の 構 内 運 転 が 静 岡 運

Microsoft Word - ★HP版平成27年度検査の結果

(2) 単 身 者 向 け 以 外 の 賃 貸 共 同 住 宅 等 当 該 建 物 に 対 して 新 たに 固 定 資 産 税 等 が 課 税 される 年 から 起 算 して5 年 間 とする ( 交 付 申 請 及 び 決 定 ) 第 5 条 補 助 金 の 交 付 を 受 けようとする 者 は

Microsoft Word - 19年度(行情)答申第081号.doc

130117_『高齢社会をむかえた東京23区の将来 人口と建物の関係から見て

Microsoft Word - 【溶け込み】【修正】第2章~第4章

< DB8CAF97BF97A6955C2E786C73>

Microsoft Word - ☆f.doc

2020年の住宅市場 ~人口・世帯数減少のインパクト~

表紙

untitled


目 改 正 項 目 軽 自 動 車 率 の 引 上 げ 〇 国 及 び 地 方 を 通 じた 自 動 車 関 連 制 の 見 直 しに 伴 い 軽 自 動 車 の 標 準 率 が 次 のとおり 引 き 上 げられます 車 種 区 分 引 上 げ 幅 50cc 以 下 1,000 円 2,000 円

<4D F736F F D E598BC68A8897CD82CC8DC490B68B7982D18E598BC68A8893AE82CC8A C98AD682B782E993C195CA915B C98AEE82C382AD936F985E96C68B9690C582CC93C197E1915B927582CC898492B75F8E96914F955D89BF8F915F2E646F6

4 調 査 の 対 話 内 容 (1) 調 査 対 象 財 産 の 土 地 建 物 等 を 活 用 して 展 開 できる 事 業 のアイディアをお 聞 かせく ださい 事 業 アイディアには, 次 の 可 能 性 も 含 めて 提 案 をお 願 いします ア 地 域 の 活 性 化 と 様 々な 世

Taro-18-4完全原稿.jtd

(2) 地 域 の 実 情 に 応 じた 子 ども 子 育 て 支 援 の 充 実 保 育 の 必 要 な 子 どものいる 家 庭 だけでなく 地 域 の 実 情 に 応 じた 子 ども 子 育 て 支 援 の 充 実 のために 利 用 者 支 援 事 業 や 地 域 子 育 て 支 援 事 業 な

能勢町市街化調整区域における地区計画のガイドライン

(3) 善 通 寺 市 の 状 況 善 通 寺 市 においては 固 定 資 産 税 の 納 期 前 前 納 に 対 する 報 奨 金 について 善 通 寺 市 税 条 例 の 規 定 ( 交 付 率 :0.1% 限 度 額 :2 万 円 )に 基 づき 交 付 を 行 っています 参 考 善 通 寺

<4D F736F F D208E52979C8CA78E598BC68F5790CF91A390698F9590AC8BE08CF D6A2E646F6378>

<6D313588EF8FE991E58A778D9191E5834B C8EAE DC58F4992F18F6F816A F990B32E786C73>

4 教 科 に 関 する 調 査 結 果 の 概 況 校 種 学 年 小 学 校 2 年 生 3 年 生 4 年 生 5 年 生 6 年 生 教 科 平 均 到 達 度 目 標 値 差 達 成 率 国 語 77.8% 68.9% 8.9% 79.3% 算 数 92.0% 76.7% 15.3% 94

目 次 1.はじめに 1 2. 花 粉 発 生 源 対 策 に 関 する 基 本 方 針 (1) 花 粉 発 生 源 対 策 の 現 状 と 課 題 2 (2) 花 粉 発 生 源 対 策 に 関 する 基 本 的 な 考 え 方 6 3. 花 粉 発 生 源 対 策 区 域 (1) 花 粉 症 対

<4D F736F F D D3188C091538AC7979D8B4B92F F292B98CF092CA81698A94816A2E646F63>

学校教育法等の一部を改正する法律の施行に伴う文部科学省関係省令の整備に関する省令等について(通知)

Taro-○離島特産品等マーケティング支援事業に係る企画提案募集要領

その 他 事 業 推 進 体 制 平 成 20 年 3 月 26 日 に 石 垣 島 国 営 土 地 改 良 事 業 推 進 協 議 会 を 設 立 し 事 業 を 推 進 ( 構 成 : 石 垣 市 石 垣 市 議 会 石 垣 島 土 地 改 良 区 石 垣 市 農 業 委 員 会 沖 縄 県 農

1 変更の許可等(都市計画法第35条の2)

福山市立駅家南中学校P T A 規約

Microsoft PowerPoint - 経営事項審査.ppt

本 校 の 沿 革 昭 和 21 年 昭 和 49 年 昭 和 54 年 昭 和 60 年 平 成 9 年 平 成 11 年 平 成 18 年 北 海 道 庁 立 農 業 講 習 所 として 発 足 北 海 道 立 農 業 大 学 校 に 改 組 修 業 年 限 を1 年 制 から2 年 制 に 改

< EE597768E968BC688EA97972D372E786477>


Taro-学校だより学力調査号.jtd

は 固 定 流 動 及 び 繰 延 に 区 分 することとし 減 価 償 却 を 行 うべき 固 定 の 取 得 又 は 改 良 に 充 てるための 補 助 金 等 の 交 付 を 受 けた 場 合 にお いては その 交 付 を 受 けた 金 額 に 相 当 する 額 を 長 期 前 受 金 とし

第1章 総則

別紙3

Taro-事務処理要綱250820

既 存 建 築 物 の 建 替 市 街 化 調 整 区 域 で 許 可 を 不 要 とする 取 扱 いについて 既 存 建 築 物 の 建 替 は 以 下 の1)~3)をすべて 満 たしている 場 合 に 可 能 です 1) 建 替 前 の 建 築 物 ( 以 下 既 存 建 築 物 という )につ

(3) 調 査 の 進 め 方 2 月 28 日 2 月 28 日 ~6 月 30 日 平 成 25 年 9 月 サウンディング 型 市 場 調 査 について 公 表 松 戸 市 から 基 本 的 な 土 地 情 報 サウンディングの 実 施 活 用 意 向 アイデアのある 民 間 事 業 者 と

神 戸 法 学 雑 誌 65 巻 1 号 45 神 戸 法 学 雑 誌 第 六 十 五 巻 第 一 号 二 〇 一 五 年 六 月 a b c d 2 a b c 3 a b 4 5 a b c

Microsoft Word - 交野市産業振興基本計画 doc

経 常 収 支 差 引 額 等 の 状 況 平 成 26 年 度 予 算 早 期 集 計 平 成 25 年 度 予 算 対 前 年 度 比 較 経 常 収 支 差 引 額 3,689 億 円 4,597 億 円 908 億 円 減 少 赤 字 組 合 数 1,114 組 合 1,180 組 合 66

は 共 有 名 義 )で 所 有 権 保 存 登 記 又 は 所 有 権 移 転 登 記 を された も の で あ る こと (3) 居 室 便 所 台 所 及 び 風 呂 を 備 え 居 住 の ために 使 用 す る 部 分 の 延 べ 床 面 積 が 5 0 平 方 メ ー ト ル 以 上

住み慣れたこの町で最期まで 安心して暮らすために

3. 選 任 固 定 資 産 評 価 員 は 固 定 資 産 の 評 価 に 関 する 知 識 及 び 経 験 を 有 する 者 のうちから 市 町 村 長 が 当 該 市 町 村 の 議 会 の 同 意 を 得 て 選 任 する 二 以 上 の 市 町 村 の 長 は 当 該 市 町 村 の 議

(Microsoft PowerPoint - \203\201\203f\203B\203A\230_\221\3463\211\ ppt)

(5) 給 与 制 度 の 総 合 的 見 直 しの 実 施 状 況 について 概 要 の 給 与 制 度 の 総 合 的 見 直 しにおいては 俸 給 表 の 水 準 の 平 均 2の 引 き 下 げ 及 び 地 域 手 当 の 支 給 割 合 の 見 直 し 等 に 取 り 組 むとされている

6 構 造 等 コンクリートブロック 造 平 屋 建 て4 戸 長 屋 16 棟 64 戸 建 築 年 1 戸 当 床 面 積 棟 数 住 戸 改 善 後 床 面 積 昭 和 42 年 36.00m m2 昭 和 43 年 36.50m m2 昭 和 44 年 36.

m07 北見工業大学 様式①

参 考 改 正 災 害 対 策 基 本 法 1 ( 災 害 時 における 車 両 の 移 動 等 ) 第 七 十 六 条 の 六 道 路 管 理 者 は その 管 理 する 道 路 の 存 する 都 道 府 県 又 はこれに 隣 接 し 若 しくは 近 接 する 都 道 府 県 の 地 域 に 係

Speed突破!Premium問題集 基本書サンプル

スライド 1

2 役 員 の 報 酬 等 の 支 給 状 況 平 成 27 年 度 年 間 報 酬 等 の 総 額 就 任 退 任 の 状 況 役 名 報 酬 ( 給 与 ) 賞 与 その 他 ( 内 容 ) 就 任 退 任 2,142 ( 地 域 手 当 ) 17,205 11,580 3,311 4 月 1

<8AC48DB88C8B89CA82C98AEE82C382AD915B C8E8682C696DA8E9F E A>

Microsoft Word - 表紙.doc

2. 建 築 基 準 法 に 基 づく 限 着 色 項 目 の 地 区 が 尾 張 旭 市 内 にはあります 関 係 課 で 確 認 してください 項 目 所 管 課 窓 口 市 役 所 内 電 話 備 考 がけに 関 する 限 (がけ 条 例 ) 都 市 計 画 課 建 築 住 宅 係 南 庁 舎

(4) 給 与 制 度 の 総 合 的 見 直 しの 実 施 状 況 について 概 要 国 の 給 与 制 度 の 総 合 的 見 直 しにおいては 俸 給 表 の 水 準 の 平 均 2の 引 下 げ 及 び 地 域 手 当 の 支 給 割 合 の 見 直 し 等 に 取 り 組 むとされている.

1

<8BB388F58F5A91EE82A082E895FB8AEE967B95FB906A>

課 税 ベ ー ス の 拡 大 等 : - 租 税 特 別 措 置 の 見 直 し ( 後 掲 ) - 減 価 償 却 の 見 直 し ( 建 物 附 属 設 備 構 築 物 の 償 却 方 法 を 定 額 法 に 一 本 化 ) - 欠 損 金 繰 越 控 除 の 更 な る 見 直 し ( 大

一般競争入札について

市 の 人 口 密 度 は 5,000 人 を 超 え 図 4 人 口 密 度 ( 単 位 : 人 /k m2) に 次 いで 高 くなっている 0 5,000 10,000 15,000 首 都 圏 に 立 地 する 政 令 指 定 都 市 では 都 内 に 通 勤 通 学 する 人 口 が 多

<4D F736F F D208ED089EF95DB8CAF89C193FC8FF38BB CC8EC091D492B28DB88C8B89CA82C982C282A282C42E646F63>

一宮市町内会に対する防犯カメラ設置補助金交付要綱

退職手当とは

発 覚 理 由 違 反 態 様 在 日 期 間 違 反 期 間 婚 姻 期 間 夫 婦 間 の 子 刑 事 処 分 等 1 出 頭 申 告 不 法 残 留 約 13 年 9 月 約 9 年 11 月 約 1 年 10 月 2 出 頭 申 告 不 法 入 国 約 4 年 2 月 約 4 年 2 月 約


加 古 川 市 市 街 化 調 整 区 域 における 地 区 計 画 制 度 の 運 用 基 準 ( 概 要 ) 第 1 章 総 則 運 用 基 準 の 目 的 地 区 計 画 制 度 の 運 用 により 良 好 な 居 住 環 境 の 維 持 及 び 育 成 を 目 的 とする ( 第 1 条 )

法 人 等 に 対 する 課 税 際 課 税 原 則 の 帰 属 主 義 への 見 直 しのポイント 総 合 主 義 から 帰 属 主 義 への 移 行 法 人 及 び 非 居 住 者 ( 法 人 等 )に 対 する 課 税 原 則 について 従 来 のいわゆる 総 合 主 義 を 改 め OECD

18 国立高等専門学校機構

有 料 老 ホーム ( ) ( 主 として 要 介 護 状 態 にある を 入 居 させるも のに 限 る ) 第 29 条 ( 届 出 等 ) 第 二 十 九 条 有 料 老 ホーム( 老 を 入 居 させ 入 浴 排 せつ 若 しくは 食 事 の 介 護 食 事 の 提 供 又 はその 他 の

2 一 般 行 政 職 給 料 表 の 状 況 ( 平 成 23 年 4 月 1 日 現 在 ) 1 号 給 の 給 料 月 額 最 高 号 給 の 給 料 月 額 1 級 2 級 3 級 4 級 5 級 ( 単 位 : ) 6 級 7 級 8 級 135, , ,900 2

平成16年年金制度改正 ~年金の昔・今・未来を考える~

検 討 検 討 の 進 め 方 検 討 状 況 簡 易 収 支 の 世 帯 からサンプリング 世 帯 名 作 成 事 務 の 廃 止 4 5 必 要 な 世 帯 数 の 確 保 が 可 能 か 簡 易 収 支 を 実 施 している 民 間 事 業 者 との 連 絡 等 に 伴 う 事 務 の 複 雑

様 式 1 給 与 得 者 様 式 2 自 営 業 者 等 次 の 者 は 当 に 勤 務 し 次 のとおり 給 与 等 を 支 給 したことを 証 明 します 給 与 支 給 者 在 地 名 称 及 び 代 表 者 印 電 話 ( ) - 採 用 年 月 日 申 込 む 月 の 前 月 から 過

4 松 山 市 暴 力 団 排 除 条 の 一 部 風 俗 営 業 等 の 規 制 及 び 業 務 の 適 正 化 等 に 関 する 法 律 等 の 改 正 に 伴 い, 公 共 工 事 から 排 除 する 対 象 者 の 拡 大 等 を 図 るものです 第 30 号 H H28.1

学校安全の推進に関する計画の取組事例

島根大学における学生等の授業料その他の費用に関する規則

Transcription:

37 英 語 の 変 容 とアメリカ 英 語 およびその 他 の 地 域 の 英 語 English Varieties and American English Abstract 松 倉 信 幸 * Nobuyuki MATSUKURA The new cultural environments for the use of English have caused considerable changes: the advent of loan words and new expressions, changes of meanings, and so on. Languages are always changing their forms such pronunciations, words, and structures. These variations are to a large extent independent from the other ones because the use of English is individually affected by interference from the speakers mother tongues. We also should take into account regional varieties because each variation is connected with the educational and cultural backgrounds of the speakers. For example, we associate baseball and basketball with American English. On the other hand, people in India and Malaysia usually learn British English. Finally we must remember that the more English becomes a dominant global language, the more endangered languages will disappear from the earth. Keywords: English Varieties, American English, British English 1.はじめに 言 語 は 発 音 語 彙 そして 文 法 において 常 に 変 化 が 生 じる この 言 語 の 変 化 によって 生 じたものを 変 種 (Varieties)という 大 英 帝 国 が 世 界 の 覇 権 を 握 ったころより イギリス 英 語 によって 英 語 圏 が 拡 大 すると 共 に 英 語 の 変 種 (English Varieties)を 数 多 く 誕 生 させるに 至 っ た また ヨーロッパの 言 語 からだけではなく 大 英 帝 国 の 植 民 地 の 言 語 からも 英 語 は 多 くの 借 用 語 を 増 大 させた 英 語 が 世 界 語 あるいは 国 際 語 (International Language or World Language)と 呼 ばれる 所 以 はこれらの 点 からである 今 日 では 20 世 紀 におけるアメリカ 経 済 発 展 の 影 響 によるところも 大 きいが 国 際 社 会 に おいて 英 語 はイギリス アメリカ カナダ オーストラリア ニュージーランド 南 アフ リカ 共 和 国 インド パキスタン マレーシア シンガポール フィリピンそしてカリブ 海 諸 国 の 第 1 言 語 あるいは 公 用 語 等 で 用 いられており 加 えて 第 2 言 語 の 世 界 における 使 用 者 の 人 口 およびインターネット 情 報 のやり 取 りに 用 いる 英 語 の 圧 倒 的 な 優 位 性 によって 世 界 の 英 語 としての 様 相 を 呈 している 本 稿 ではイギリスを 発 端 にアメリカ そしてこれら 以 * 本 学 教 授 英 語 学 (English Linguistics)

38 鈴 鹿 国 際 大 学 紀 要 CAMPANA No.19,2012 外 の 地 域 にも 拡 大 し 変 容 していった 英 語 について 具 体 的 な 言 語 事 実 を 取 り 上 げ 考 察 を 行 う 2. 後 期 近 代 英 語 と 大 英 帝 国 の 繁 栄 1700 年 から 1900 年 までが 後 期 近 代 英 語 の 時 期 で それ 以 前 の 初 期 近 代 英 語 とを 区 別 する ブリテン 島 の 小 さな 島 国 イギリスは 17 世 紀 に 植 民 地 支 配 が 始 まり 19 世 紀 後 半 までに 世 界 の 覇 権 を 握 る 大 英 帝 国 を 打 ち 立 てた この 200 年 間 をローマ 帝 国 の 黄 金 期 パックス ロマー ナにならいパックス ブリタニカ(イギリスの 平 和 )と 呼 んだ 最 盛 期 には 文 字 通 り 世 界 の7つの 海 を 制 して アフリカではエジプトから 南 アフリカ アジアではインド マレーシ ア および 現 在 のミャンマー 北 米 ではカナダ 南 半 球 ではオーストラリアとニュージーラ ンド そして 太 平 洋 や 大 西 洋 の 島 々を 統 治 し 世 界 中 に 植 民 地 を 持 つ 日 の 沈 まない 帝 国 を 築 いた この 時 代 に 君 臨 したのがビクトリア 女 王 であり 大 英 帝 国 の 繁 栄 とはすなわちビクト リア 女 王 が 在 位 した 1837 年 から 1901 年 までの 期 間 といっても 過 言 ではない イングランドでは 15 世 紀 の 後 半 に 導 入 された 印 刷 術 が ロンドンで 用 いられていた 英 語 を 広 く 普 及 させたばかりか つづり 字 や 文 体 をも 定 着 させたり 文 体 の 統 一 を 図 る 上 で 貢 献 した また 正 しいつづりや 正 書 法 がほぼ 今 日 の 形 式 に 落 ち 着 いたが 正 しい 英 語 の 手 本 とな る 書 物 が 現 れた それがジョンソン(Samuel Johnson)とラウス(Robert Lowth)の 書 である 8 年 の 歳 月 を 費 やしてジョンソンは 1755 年 に A Dictionary of the English Language を 出 版 した 彼 の 独 断 と 偏 見 とも 思 われることばの 定 義 がことばの 面 白 さを 伝 え 共 感 を 与 えた その 有 名 な 記 述 が oat(カラス 麦 )の 定 義 である A grain, which in England is generally given to horses, but in Scotland supports the people. (イングランドではふだん 馬 に 与 えるが スコットランドでは 人 を 養 う 糧 である ) この 英 文 にはイギリス 人 のユーモアが 込 められていると 言 えよう 次 に1762 年 にラウスは A Short Introduction to English Grammar を 出 版 した 彼 は 正 しい 英 語 を 追 求 する 規 範 文 法 の 立 場 を 取 る 文 法 家 で 現 在 非 標 準 の 二 重 否 定 は 間 違 った 用 法 であると 指 摘 した その 後 マ レー(Lindley Murray)が 1795 年 に English Grammar, Adapted to the Different Classes of Learners: with an Appendix を 出 版 した この 文 法 書 はラテン 語 文 法 の 影 響 を 基 にして 書 かれたもので あるが 英 語 の9 品 詞 ( 名 詞 動 詞 形 容 詞 副 詞 接 続 詞 前 置 詞 代 名 詞 冠 詞 間 投 詞 )が 取 り 上 げられ 現 代 まで 影 響 を 及 ぼし 今 日 の 学 校 文 法 や 伝 統 文 法 の 規 則 は 多 くの 点 でマレーに 由 来 する

英 語 の 変 容 とアメリカ 英 語 およびその 他 の 地 域 の 英 語 39 3.イギリス 英 語 3.1. 標 準 イギリス 英 語 標 準 イギリス 英 語 の 代 表 は Received Pronunciation( 容 認 発 音 )と 呼 ばれ 略 して RP と 言 う イギリスは4つの 地 域 から 成 立 しているため 標 準 イギリス 英 語 には RP に 加 えて ス コットランド 英 語 ウェールズ 英 語 北 アイルランド 英 語 がある RP はロンドンを 中 心 と したイングランド 南 部 で パブリックスクールおよび 大 学 程 度 の 教 育 を 受 けた 人 が 用 いる 発 音 である イギリスでは 学 歴 や 職 業 によって 話 す 英 語 が 違 うことで 知 られているが この RP は 地 域 なまりを 持 つ 人 たちの 感 情 を 刺 激 することが 最 も 少 ない 発 音 であるという 理 由 か ら BBC( 英 国 放 送 協 会 )のアナウンサーによって 話 される 英 語 で 知 られている また 英 国 王 室 英 国 国 教 会 議 会 そして 法 曹 界 において 用 いられる しかし 実 際 には 人 口 の 約 3%にも 満 たない 人 々しか 話 さない 英 語 である 具 体 的 には bird や teacher の[r]が 階 級 が 高 い 人 ほど 発 音 されず それとは 反 対 に 階 級 の 低 い 人 ほど 発 音 される また [h] 音 も 階 級 の 低 い 人 ほど 発 音 しない 特 徴 がある 3.2.コックニーの 英 語 コックニー(Cockney)は cock s egg( 雄 鶏 の 卵 )に 由 来 する 意 気 地 無 し, あまえっこ とい う 意 味 があり ロンドンの 下 町 イーストエンドの 一 角 チープサイド(Cheapside)にあるボウ 教 会 (St. Mary-le-Bow)の 鐘 の 音 が 聞 こえる 地 域 に 育 った 人 々が 用 いる 英 語 を 言 う 実 際 にはこ のイーストエンド 地 区 に 住 む 労 働 者 階 級 の 人 々が 話 す 英 語 である このコックニーの 英 語 を 矯 正 する 映 画 でよく 知 られるバーナード ショウの 戯 曲 ピグマリオン が 原 作 とされる マ イフェアー レディー では 青 物 市 場 の 花 売 り 娘 イライザのひどいコックニーなまりを 聞 いた 言 語 学 者 のヒギンズ 教 授 が 彼 女 のコックニーを 見 事 矯 正 したことで 知 られる ヒギンズ 教 授 が 矯 正 のため 用 いた 英 文 が 下 記 (1)と(2)の 例 で コックニーの 音 声 の 特 徴 をよく 示 している これらコックニーの 特 徴 は 下 記 の(1)~(4)に 分 類 される (1) 母 音 [ei]が[ai]に 変 化 name, take, wait, face, price など The rain in Spain stays mainly in the plain.(スペインの 雨 は 主 にスペインの 平 野 に 降 る マイフェアー レディー より) (2) 子 音 [h]の 脱 落 hit, have, hear,など In Hertford, Hereford and Hampshire hurricanes hardly ever happen.(ハートフォード ヘ ルホード ハンプシャーでは 台 風 はほとんど 来 ない マイフェアー レディー より) (3) 子 音 [l]が 子 音 の 前 や 語 末 で 母 音 化 あるいは 半 母 音 化 milk, middle, able など

40 鈴 鹿 国 際 大 学 紀 要 CAMPANA No.19,2012 (4) 子 音 [θ],[ ð]が[f],[v]に 変 化 ( 有 声 音 )this, father, ( 無 声 音 )think, three など 4.アメリカ 英 語 4.1.アメリカ 英 語 の 起 源 イギリスからアメリカ 大 陸 に 移 った 最 初 の 移 民 は 1607 年 にヴァージニア 州 ジェームズタ ウン 周 辺 に 約 100 人 で 植 民 地 を 建 設 した 歴 史 的 には 1620 年 にメイフラワー 号 でイング ランドのプリマスから マサチューセッツ 州 プリマスに 11 月 21 日 に 到 着 して 植 民 地 を 建 設 したピューリタン( 新 教 徒 )の 一 団 が 有 名 である この 一 行 は 総 勢 約 100 名 であったが こ の 中 には 宗 教 上 の 迫 害 を 逃 れてやって 来 た35 名 のピューリタンが 中 心 になった その 後 移 民 はこの 北 東 部 からしだいに 中 部 に 拡 大 して 1682 年 にウイリアム ペンをはじめとす るクエーカー 教 徒 の 一 団 によって アメリカ 中 部 大 西 洋 沿 岸 地 方 にも 植 民 が 始 まった 当 初 の 移 民 はニューイングランドと 呼 ばれる 北 東 部 沿 岸 地 域 に 集 中 していたが 後 にこの 地 域 は 独 立 当 初 の 13 州 になったところで 北 東 のメイン 州 から 南 西 のジョージア 州 まで 細 長 くの びている このニューイングランドの 由 来 は 南 部 の 開 拓 者 として 知 られるスミス 隊 長 が 1614 年 にヴァージニア 以 北 の 土 地 を 探 検 して 名 付 けたものである 当 時 アメリカに 渡 った 植 民 者 たちはシェークスピア(1564-1616)が 話 していた 17 世 紀 の イギリス 英 語 を 用 いていた 新 大 陸 にやって 来 た 人 々はこれまで 本 国 で 見 たこともないもの に ネイティブ アメリカンが 用 いていたことばを 借 用 するなどして アメリカ 英 語 の 語 彙 を 増 やしていった アメリカ 英 語 の 方 言 は 移 民 が 入 植 した 地 域 とその 後 の 移 動 に 関 係 すると ころが 大 きい マサチューセッツ 湾 周 辺 の 東 部 (Eastern) ペンシルヴァニア 州 から 西 部 の 太 平 洋 岸 に 至 る 広 大 な 中 西 部 (Middle Western) そしてヴァージニア 州 からテキサス 州 東 部 に 至 る 南 部 (Southern)の3つの 方 言 に 分 けられる この 中 で 最 も 広 大 な 地 域 で 用 いられてい る 中 西 部 のアメリカ 英 語 が 一 般 アメリカ 英 語 (General American) すなわち GA と 呼 ばれてい る 移 民 はこの 北 東 部 からしだいに 南 部 そして 中 西 部 に 拡 大 して 行 った アメリカ 英 語 は 国 土 面 積 が 広 大 な 割 には 方 言 における 地 域 差 や 社 会 的 差 異 はイギリス 英 語 と 比 べて 大 きくな い 4.2.アメリカ 英 語 と 辞 書 ピカリング(John Pickering)が 1816 年 にアメリカ 英 語 の 最 初 の 辞 書 として 語 彙 集 を 出 版 し た 竹 林 滋 他 (1993:103)によると ピカリングはアメリカの 言 葉 がイギリスの 標 準 から 離 れることを 堕 落 ととらえ その 浄 化 のために 問 題 とすべきアメリカ 語 法 を 摘 出 したと 述 べて いる このことから 当 時 はまだ アメリカ 英 語 は 確 立 されておらず イギリス 英 語 のいわ ば 一 方 言 と 考 えられていた

英 語 の 変 容 とアメリカ 英 語 およびその 他 の 地 域 の 英 語 41 アメリカがイギリスから 独 立 した 頃 はまだ 違 いがなかったが アメリカ 独 立 戦 争 の 指 導 者 フランクリンがイギリス 英 語 のつづりをきらい アメリカ 英 語 のつづりを 提 案 したとされる 彼 のアイディアがウェブスター(Noah Webster)に 影 響 を 与 えることになり 愛 国 的 な 立 場 か らアメリカ 人 はアメリカ 英 語 を 学 ぶべきだと 考 え つづり 発 音 そして 文 法 などをまとめ た A Grammatical Institute of the English Language を 出 版 した さらに 彼 は 当 時 のアメ リカでは 地 域 によって 発 音 やつづりが 異 なるため アメリカ 全 体 で 統 一 する 必 要 を 感 じて つづりの 改 良 を 行 ない 1828 年 に An American Dictionary of the English Language を 出 版 した 具 体 的 には イギリスでは colour, honour, traveller とつづられるものが それぞ れ color, honor, traveler となり 現 在 のアメリカ 式 つづりが 確 立 された ウェブスターは そ の 後 のアメリカにおけるつづり 字 法 や 辞 書 編 集 に 大 きな 影 響 を 与 えた 彼 の 改 革 は 新 奇 をて らったものではなく 可 能 な 限 り 語 源 に 正 しく 類 推 し 易 いつづり 字 を 意 図 したものであっ た 4.3.アメリカの 英 語 公 用 語 化 英 語 はアメリカの 公 用 語 ではないが 現 在 アメリカ 英 語 が 事 実 上 世 界 の 共 通 語 になってい る 1980 年 代 に 公 用 語 化 論 争 が 起 きたが この 公 用 語 化 論 争 はノア ウェブスターにまで 遡 ることができる 彼 は 当 時 英 語 をアメリカの 国 語 にすることを 主 張 した また 19 世 紀 末 に は 大 量 の 移 民 が 流 入 し 彼 らの 言 語 や 文 化 の 影 響 を 危 惧 して ルーズベルト 大 統 領 (Theodore Roosevelt)は 移 民 の 国 アメリカを 束 ねるのは one flag, one language であると 述 べた この 後 1963 年 アメリカの 公 立 学 校 で 初 めて 二 カ 国 語 教 育 プログラムを 実 施 したのはデイド カ ウンティであった スペイン 語 が 実 質 上 第 二 公 用 語 に 位 置 づけられ 二 つの 言 語 と 二 つの 文 化 が 共 存 し 発 展 してきた 4.4.アメリカ 英 語 の 特 徴 イギリス 英 語 とアメリカ 英 語 の 顕 著 な 違 いは 発 音 に 見 られる RP と 呼 ばれる 標 準 のイギ リス 発 音 では card や lord の 母 音 の 後 の[r]は 発 音 されないが 広 大 な 中 西 部 地 域 のGA( 一 般 アメリカ 英 語 )ではこの[r]を 発 音 するのが 普 通 である この 母 音 の 後 の[r]の 脱 落 は 17 世 紀 にイングランド 南 東 部 において 生 じたが これとは 反 対 に GA において [r]を 保 った 発 音 がアメリカ 全 土 に 広 まった 発 音 の 違 いは 特 に 母 音 に 見 られる イギリス 英 語 の[ɑː]が[æ]になる 例 と 同 様 に[ɔ]が アメリカ 英 語 では[ɑ]になる 例 が 見 られる (1)イギリス 英 語 の[ɑː]がアメリカ 英 語 では[æ]になる ask, fast, after, pass, laugh など

42 鈴 鹿 国 際 大 学 紀 要 CAMPANA No.19,2012 (2)イギリス 英 語 の[ɔ]がアメリカ 英 語 では[ɑ]になる hot, god, college, doll, not など つづりはアメリカ 英 語 はイギリス 英 語 に 比 べて 出 来 るだけ 発 音 通 りに 表 記 するが 下 記 (4)のアクセントのない 語 尾 や(5)の 余 分 な 文 字 を 省 くことが 特 徴 である また 下 記 の(1)のように 発 音 につづりが 近 い 傾 向 が 強 い (1) 語 尾 -re から er ( 英 )centre, fibre, metre ( 米 )center, fiber, meter (2) 語 尾 -our から or ( 英 )colour, honour, labour ( 米 )color, honor, labor (3) 二 重 子 音 字 から 単 独 子 音 字 ( 英 )waggon, traveller, faggot ( 米 )wagon, traveler, fagot (4) アクセントのない 語 尾 を 省 略 ( 英 )catalogue, envelope, toilette( 米 )catalog, envelop, toilet (5) 余 分 な e を 省 略 ( 英 )axe, annexe, asphalte, ( 米 )ax, annex, asphalt (6) s から z ( 英 )recognise, industrialisation ( 米 )recognize, industrialization (7) x から ct ( 英 )connexion, inflexion ( 米 )connection, inflection 語 彙 におけるアメリカ 英 語 とイギリス 英 語 の 違 いは 興 味 深 い 点 が 多 く 見 られる 特 徴 的 な ものには (1) 同 一 の 語 で 異 なった 意 味 を 表 す (2)それぞれ 異 なった 語 を 用 いる (3) 交 通 輸 送 を 表 す 語 で 異 なった 語 を 用 いる これらの 中 で (4)の 交 通 輸 送 を 表 す 語 がアメリカ 英 語 とイギリス 英 語 の 差 異 を 最 も 際 立 てている 点 である (1) 同 一 語 でそれぞれ 異 なった 意 味 を 表 す corn ( 英 ) 小 麦 ( 米 )とうもろこし pants ( 英 )パンツ ( 米 )ズボン dresser ( 英 ) 食 器 棚 ( 米 ) 化 粧 台 pavement ( 英 ) 舗 装 道 路 ( 米 ) 歩 道 (2) 同 一 の 意 味 を 表 すのにそれぞれ 異 なった 語 を 用 いる ( 英 )apartment( 米 )flat ( 英 )cinema ( 米 ) movie

英 語 の 変 容 とアメリカ 英 語 およびその 他 の 地 域 の 英 語 43 ( 英 )graduate ( 米 )alumnus ( 英 )petrol ( 米 )gas ( 英 )lift ( 米 )elevator ( 英 )luggage ( 米 )baggage (3) 運 輸 交 通 を 表 す 語 で 異 なった 語 を 用 いる ( 英 )underground( 米 )subway ( 英 )railroad ( 米 )railway ( 英 )truck ( 米 )lorry ( 英 )hood ( 米 )bonnet ( 英 )airways ( 米 )airlines ( 英 )motorway ( 米 )expressway (4) イギリスでは 既 に 使 われなくなった 過 去 分 詞 がアメリカではまだ 使 用 されたり 両 方 の 過 去 分 詞 が 併 用 されたりする ( 英 )get, got, got ( 米 )get, got, gotten ( 英 )prove, proved, proved ( 米 )prove, proved, proved ( 英 )strike, struck, struck ( 米 )strike, struck, stricken ( 英 )smell, smelt, smelt ( 米 )smell, smelled, smelled (5) イギリス 英 語 では 助 動 詞 として 使 われる should がアメリカ 英 語 では 省 略 されるが have, need, ought などは 本 動 詞 として 使 用 する ( 英 )I demanded that he should apologise. ( 英 では-ise) ( 米 )I demanded that he apologize. ( 英 ) He hasn t any sisters. ( 米 )He doesn t have any sisters. ( 英 )You needn t help him. ( 米 )You don t need to help him. 4.5.アメリカ 英 語 の 借 用 語 アメリカ 英 語 とイギリス 英 語 の 違 いは 文 法 の 面 ではそれほど 違 いは 大 きくないものの 発 音 と 語 彙 の 面 では 大 きく 異 なっており 特 に 様 々な 言 語 からの 借 用 語 が 豊 富 である (インディオの 言 語 から)moose, raccoon, hickory, sequoia, tomahawk (スペイン 語 から) cafeteria, canyon, mosquito, mustang, plaza (アフリカの 言 語 から) banjo, jazz, jumbo, okra, zombie (オランダ 語 から) cookie, waffle, sleigh, boss, patron (ドイツ 語 から) noodle, hamburger, frankfurter, delicatessen

44 鈴 鹿 国 際 大 学 紀 要 CAMPANA No.19,2012 4.6. 黒 人 英 語 安 く 安 定 した 労 働 力 として 黒 人 は 三 角 貿 易 と 呼 ばれる 奴 隷 貿 易 によって 数 多 くの 黒 人 がアフリカから 運 ばれてきた アフリカで 安 い 工 業 製 品 と 交 換 され 奴 隷 船 で 新 大 陸 に 運 ば れ 現 地 の 原 材 料 を 安 く 入 手 して 持 ち 帰 るのが 三 角 貿 易 であった 19 世 紀 末 まではアメリ カの 黒 人 の 90%が 南 部 に 居 住 していたが 20 世 紀 には 北 部 中 部 西 部 に 移 住 して 行 った 黒 人 英 語 の 特 徴 はまず 母 音 に 見 られ mine や toy の 母 音 [ai]と[ɔi]がそれぞれ[aː]と[ɔː] と 発 音 される また 鼻 音 の 前 では[ɪ]と[ɜ]の 区 別 がなくなり pin と pen は 同 じ 発 音 になる 次 に 動 詞 の 時 制 について 石 黒 編 (1992:63)によると 主 語 の 人 称 にかかわらず be 動 詞 は 現 在 形 には is が 用 いられ 過 去 形 には was が 用 いられる もう 一 方 で 規 則 変 化 の 動 詞 の 場 合 には 現 在 形 および 過 去 形 は 原 形 と 同 じになり 不 規 則 変 化 動 詞 の 過 去 形 は 通 常 過 去 分 詞 形 が 用 いられる (1) 現 在 形 He live in Detroit now. (=He lives in Detroit now.) Is they sick? (=Are they sick?) ( 石 黒 :1992:63) (2) 過 去 形 He live in Detroit last year. (=He lived in Detroit last year.) I drunk too much yesterday. (=I drank too much yesterday) They was acting up and going on. (=They were acting up and going on.) (ibid.) 4.7.イギリス 英 語 のアメリカ 英 語 化 イギリス 英 語 においても アメリカ 英 語 の 影 響 を 色 濃 く 受 けて 表 現 される 下 記 (1)のlike お よび(2)のhaveの 疑 問 文 にdoを 用 いる 例 が 見 られる これらの 例 からもイギリスにおいて ア メリカ 英 語 の 影 響 が 及 んでいることを 示 している (1) I feel like I m getting a cold. (Older British form: I feel as if I m getting a cold.) Swan 295 (2) Do you have today's newspaper? (Older British form: Have you (got) today's newspaper?) (ibid.) 5.その 他 の 地 域 の 英 語 5.1.カナダの 英 語 カナダ 英 語 は 18 世 紀 後 半 のイギリス アイルランド スコットランドで 話 されていたも のが 19 世 紀 初 頭 に 移 住 した 人 々によってもたらされた アメリカ 独 立 戦 争 当 時 アメリカ

英 語 の 変 容 とアメリカ 英 語 およびその 他 の 地 域 の 英 語 45 にはカナダの 独 立 を 推 進 する 愛 国 派 と イギリスに 忠 誠 を 誓 う 王 党 派 がいたが 愛 国 派 から 身 を 守 るため 約 4 万 人 もの 王 党 派 が 現 在 のオンタリオ 州 に 定 住 した この 王 党 派 が 話 す 英 語 が 標 準 カナダ 英 語 (General Canadian)になった カナダ 英 語 の 特 徴 は 石 黒 編 (1992:76-77)によると room や roof の 母 音 が RP では[uː]と 長 母 音 で 発 音 されるのに 対 して [u]と 短 母 音 になる また house や shout の 二 重 母 音 の[au] が[əu]になり 同 様 に life や type の 二 重 母 音 の[ai]は[əi]と 発 音 される 次 にカナダに 移 住 した 人 々は 自 分 たちの 知 らないものに 現 地 固 有 の 名 を 付 けた 例 えば McIntosh(りんご の 一 種 ), crocus(アネモネ), insulin(インシュリン), ski-doo( 雪 上 スクーター), lacrosse(ラ クロス)などの 例 がある しかし 統 語 上 のカナダ 英 語 の 顕 著 な 英 米 語 との 差 異 は 下 記 の 間 投 詞 eh の 例 の 他 はほとんど 見 られない Look at that, eh? Call me John, eh? 5.2.オーストラリア 英 語 オーストラリアの 国 名 はラテン 語 の terra australis incognita( 未 知 の 南 方 大 陸 )に 由 来 する 1770 年 ジェームズ クック(Captain James Cook)による シドニーのボタニー 湾 上 陸 に 始 ま る その 後 ロンドンの 刑 務 所 が 過 密 状 態 になり 収 容 し 切 れなくなった 軽 犯 罪 者 のための 流 刑 地 として 1778 年 から 1840 年 まで 強 制 移 民 が 続 いた オーストラリア 英 語 には Cultivated( 教 養 のある), General( 標 準 の), そして Broad(なま りの 強 い)オーストラリア 英 語 という3つの 社 会 方 言 がある 発 音 はイギリス 英 語 の RP や 特 にコックニーの 影 響 を 受 けており つづりや 文 法 はイギリス 英 語 が 用 いられている (1) 二 重 母 音 の[ei]は[ai]と 発 音 される take, eight, mate, today (2)RPと 同 じように 語 末 のrや 語 中 の 子 音 の 前 のrは 発 音 しない art, teacher (3) 語 頭 のhが 脱 落 することがある hat, habit 語 彙 には(5)のオーストラリア 現 住 民 のアボリジニーの 言 語 からの 借 入 による 場 合 と (6)の 既 存 の 語 彙 の 拡 張 的 な 使 用 の 場 合 が 見 られる (5)boomerang(ブーメラン), koala(コアラ), kangaroo(カンガルー), dingo(ディンゴ), wallaby(ワラビー), wombat(ウォンバット) (6)outback( 未 開 拓 の 奥 地 ), backblocks( 奥 地 ), swagman( 浮 浪 者 ), stockman( 牧 童 ), spinney( 藪 )

46 鈴 鹿 国 際 大 学 紀 要 CAMPANA No.19,2012 5.3.ニュージーランド 英 語 ニュージーランドの 国 名 はオランダの 地 方 名 Nieuw Zeeland(New Zealand)に 由 来 する ジ ェームズ クックがオーストラリアにやって 来 る1 年 前 の 1769 年 にニュージーランドに 上 陸 した ニュージーランドはオーストラリアと 異 なり 当 初 から 自 由 入 植 者 が 作 りあげた 植 民 地 であったため オーストラリアに 見 られるような 顕 著 な 社 会 的 方 言 はないものの 語 彙 において オーストラリア 英 語 と 意 味 が 同 じものが 多 いが 異 なるものも 見 られる また ニ ュージーランドの 英 語 の 語 彙 にはマオリ 語 からの 借 用 語 が 多 く 見 られるのが 特 徴 である hongi( 鼻 を 互 いに 押 し 付 けあう 挨 拶 ) iwi( 人 々 部 族 ) marae( 集 会 場 ) mauri( 命 生 きる 力 ) waka(カヌー) whare( 家 ) 5.4. 南 アフリカの 英 語 18 世 紀 以 降 オランダ フランス イギリスの 領 土 をめぐる 争 奪 の 後 1910 年 にイギリ スはオランダの 植 民 地 をも 併 合 して 南 アフリカが 誕 生 した 南 アフリカの 英 語 はイギリス 英 語 とほとんど 変 わりはないが 発 音 には 興 味 深 い 例 が 見 られる 八 木 克 正 (2007)によると 発 音 における 最 も 顕 著 な 特 徴 は kit, foot, lot などの 短 母 音 と fleece, goose, thought の 長 母 音 の 区 別 がなく すべて 短 母 音 化 される 6. おわりに ブリテン 島 の 小 さな 島 国 イギリスで 17 世 紀 に 植 民 地 支 配 が 始 まり 19 世 紀 後 半 まで 世 界 の 覇 権 を 握 る 大 英 帝 国 を 打 ち 立 てた この 時 期 世 界 に 英 語 圏 が 拡 大 するとともに 英 語 の 変 種 を 数 多 く 誕 生 させた 英 語 はヨーロッパの 言 語 からだけではなく 大 英 帝 国 の 植 民 地 を 始 め 多 くの 言 語 から 借 用 語 を 増 大 させた この 拡 大 によって 今 日 のイギリス 英 語 とアメ リカ 英 語 そしてオーストラリア 英 語 がそれぞれ 異 なる 要 因 になった また 英 語 がグロー バルな 言 語 として 拡 大 を 続 ける 一 方 で 少 数 民 族 が 用 いるいわゆる 危 機 言 語 が 地 上 より 消 滅 することが 懸 念 される 本 稿 では イギリス 英 語 に 端 を 発 して イギリス 英 語 とアメリカ 英 語 の 違 いから さらに 南 半 球 に 拡 大 した 英 語 とその 変 種 について その 都 度 言 語 事 実 を 示 し 説 明 を 加 えた 英 語 は 現 在 上 記 以 外 の 国 や 地 域 では ESL( 第 二 言 語 としての 英 語 :English as a Second Language) および EFL( 外 国 語 としての 英 語 :English as a Foreign Language)として 用 いら れ 現 地 の 言 語 の 影 響 を 受 けながら 英 語 には 今 後 さらなる 変 容 が 予 想 される 参 考 文 献 Crystal, David (1998) English As A Global Language, Cambridge University Press. Crystal, David (2004) Language Revolution, Cambridge University Press.

英 語 の 変 容 とアメリカ 英 語 およびその 他 の 地 域 の 英 語 47 David, Graddol (1997) The Future of English? 山 岸 勝 榮 訳 (1999) 英 語 の 未 来 研 究 社. 石 黒 昭 博 編 (1992) 世 界 の 英 語 小 事 典 研 究 社 出 版. 鈴 木 雅 光 (2009) 危 機 言 語 dialogos 東 洋 大 学 文 学 部 紀 要 第 62 集 英 語 コミュニケーション 学 科 篇 第 9 号. Swan, Michael (2005) Practical English Usage (3 rd Edition), Oxford University Press. 竹 林 滋 東 信 行 高 橋 潔 高 橋 作 太 郎 (1988) アメリカ 英 語 概 説 大 修 館 書 店. 竹 下 裕 子 石 川 卓 編 (2004) 世 界 は 英 語 をどう 使 っているか< 日 本 人 の 英 語 >を 考 えるために 新 曜 社. 若 田 部 博 哉 (1985) 英 語 学 体 系 10-2 英 語 史 ⅢB( 米 語 史 ) 大 修 館 書 店. 八 木 克 正 (2007) 新 英 語 学 概 論 英 宝 社. 八 田 洋 子 (2001) 世 界 における 英 語 の 位 置 文 学 部 紀 要 文 教 大 学 文 学 部 第 14 2 号.

48 鈴 鹿 国 際 大 学 紀 要 CAMPANA No.19,2012