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2 一 般 行 政 職 給 料 表 の 状 況 (24 年 4 月 1 日 現 在 ) 1 号 級 の 給 料 月 額 最 高 号 級 の 給 料 月 額 1 級 ( 単 位 : ) 2 級 3 級 4 級 5 級 6 級 7 級 8 級 9 級 1 級 135,6 185,8 222,9 261,

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2 一 般 行 政 職 給 料 表 の 状 況 ( 平 成 23 年 4 月 1 日 現 在 ) 1 号 給 の 給 料 月 額 最 高 号 給 の 給 料 月 額 1 級 2 級 3 級 4 級 5 級 ( 単 位 : ) 6 級 7 級 8 級 135, , ,900 2

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3. 選 任 固 定 資 産 評 価 員 は 固 定 資 産 の 評 価 に 関 する 知 識 及 び 経 験 を 有 する 者 のうちから 市 町 村 長 が 当 該 市 町 村 の 議 会 の 同 意 を 得 て 選 任 する 二 以 上 の 市 町 村 の 長 は 当 該 市 町 村 の 議

2 一 般 行 政 職 給 料 表 の 状 況 ( 平 成 22 年 4 月 1 日 現 在 ) 1 号 給 の 給 料 月 額 ( 単 位 : ) 1 級 2 級 3 級 4 級 5 級 6 級 7 級 135, , , , , ,600

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った 場 合 など 監 事 の 任 務 懈 怠 の 場 合 は その 程 度 に 応 じて 業 績 勘 案 率 を 減 算 する (8) 役 員 の 法 人 に 対 する 特 段 の 貢 献 が 認 められる 場 合 は その 程 度 に 応 じて 業 績 勘 案 率 を 加 算 することができる

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Transcription:

調 査 室 だより 病 院 船 調 査 室 委 員 笠 松 正 憲 はじめに 2011 年 3 月 11 日 の 東 日 本 大 震 災 は 日 本 に 未 曽 有 の 災 害 をもたらした 災 害 の 復 興 には 長 い 年 月 を 要 す 医 療 体 制 は 慢 性 疾 患 対 応 へとシフトしているが いかなる 形 であれ 我 々 医 師 は 被 災 者 の 心 の 支 えとなれるよう 不 惜 身 命 務 めるべきだと 考 える 大 災 害 が 起 きるたびに 痛 感 させられるのは 日 本 には 病 院 船 が 必 要 だということである 病 院 船 というと 戦 争 イメージがありネガティブに 受 け 取 られそうであるが 実 は 病 院 船 は 災 害 が 発 生 したときに 緊 急 医 療 を 供 給 するアイテムである 近 年 では2010 年 ハイチ 大 地 震 のとき アメリ カの 病 院 船 コンフォートが 大 活 躍 したのは 記 憶 に 新 しい 考 えてみれば 戦 争 はなくとも 四 方 を 海 に 囲 まれて 地 震 や 火 山 の 噴 火 津 波 などの 災 害 に 定 期 的 に 見 舞 われている 我 が 国 が 一 隻 の 病 院 船 も 持 っていないということは 大 きな 問 題 と 言 えるのではないだろうか 今 般 の 東 日 本 大 震 災 では 地 震 とその 後 に 襲 った 津 波 により 交 通 通 信 網 医 療 施 設 等 が 破 壊 され 社 会 インフラが 麻 痺 し 地 域 住 民 の 平 穏 な 生 活 が 危 機 に 直 面 した こうした 中 で 多 くの 傷 病 者 が 迅 速 な 治 療 を 受 けられない 実 態 が 明 らかになった 阪 神 淡 路 大 震 災 のときに 比 べれば 災 害 派 遣 医 療 チーム(DMAT) 日 本 医 師 会 災 害 医 療 チーム(JMAT)をはじめとした 医 療 チームが 全 国 各 地 から 即 座 に 派 遣 され 災 害 医 療 は 大 きく 進 歩 したといえよう しかし 万 全 ではなかった その 背 景 には 1 病 院 施 設 も 損 傷 を 受 けたこと 2 損 傷 が 軽 微 な 病 院 でも 対 応 できる 病 床 数 が 絶 対 的 に 少 なかったこと 3 医 師 や 看 護 師 も 被 災 者 であり 交 通 網 遮 断 等 のため 救 急 活 動 に 従 事 で きる 人 数 が 少 なかったこと 等 の 理 由 があげられる 東 北 自 動 車 道 の 閉 鎖 は 初 期 行 動 の 自 由 を 奪 い 救 難 支 援 を 道 路 に 頼 る 考 え 方 にも 一 石 を 投 じた 今 回 の 被 災 地 には 港 があっただけに 海 上 か らの 救 助 活 動 が 特 に 有 効 だったのではないだろうか 着 岸 可 能 ならドクターカーで 不 可 能 な 場 合 にはドクターヘリで 速 やかに 患 者 を 受 け 入 れる 病 院 船 が 必 要 であった 今 後 の 災 害 対 策 として 通 信 手 段 の 確 保 医 薬 品 の 備 蓄 派 遣 医 師 の 受 け 皿 となる 医 療 施 設 が 検 討 されているが 1 隻 の 病 院 船 さえあれば これらの 要 件 を 満 たせるのではないだろうか 最 近 国 会 においても 病 院 船 建 造 を 求 める 議 員 連 盟 が 発 足 している 被 災 地 に 医 療 設 備 を 持 ち 込 むという 観 点 において 興 味 深 い 活 動 が 展 開 されている 眼 科 診 療 バ ス Vision Van である 通 常 眼 科 医 療 はインフラが 停 止 した 地 域 での 治 療 は 困 難 とされてい た 病 院 船 に 匹 敵 するとは 言 えないものの 被 災 地 では 大 歓 迎 されているという 病 院 船 の 現 状 を 述 べるとともに 眼 科 独 自 の 災 害 対 応 である Vision Van の 被 災 地 活 動 につ いて 紹 介 する 病 院 船 (Hospital Ship)とは 病 院 船 は 古 くはローマ 時 代 から 存 在 し 概 念 としては 戦 争 飢 餓 大 災 害 など 有 事 の 際 に 被 災

者 や 傷 病 者 に 初 期 診 療 を 提 供 し 場 合 によっては 病 床 を 提 供 することで 病 院 の 役 割 を 果 たす 船 1) 舶 である 病 院 船 の 定 義 は ジュネーヴ 諸 条 約 で 定 められている ( 第 二 十 二 条 ) 病 院 船 及 び 沿 岸 救 助 艇 軍 用 病 院 船 すなわち 傷 者 病 者 及 び 難 船 者 に 援 助 を 与 え それらの 者 を 治 療 し 並 びにそれらの 者 を 輸 送 することを 唯 一 の 目 的 として 国 が 特 別 に 建 造 し 又 は 設 備 した 船 舶 は いかなる 場 合 にも 攻 撃 し 又 は 捕 獲 してはならないもの ( 第 四 十 三 条 ) 病 院 船 の 標 識 (a) すべての 外 面 は 白 色 とする (b) 海 上 及 び 空 中 からの 最 大 限 の 可 視 度 を 確 保 するように できる 限 り 大 きい 一 又 は 二 以 上 の 濃 色 の 赤 十 字 を 船 体 の 各 側 面 及 び 水 平 面 に 塗 って 表 示 するものとする この 規 定 により 病 院 船 は( 写 真 1)のような 白 地 に 赤 十 字 の 独 特 な 外 観 となる また 病 院 専 用 船 であることが 条 件 であり 攻 撃 用 兵 器 の 装 備 は 許 されない これらにより 非 武 装 の 病 院 船 は 攻 撃 拿 捕 されることなく 安 全 が 守 られる 病 院 船 に 対 する 攻 撃 は 戦 争 犯 罪 とみなされる ( 写 真 1) コンフォート 世 界 の 病 院 船 事 情 NPO 法 人 岡 崎 研 究 所 小 谷 哲 男 特 別 研 究 員 によれば 現 在 世 界 各 国 が 保 有 する 病 院 船 は6 隻 ( 米 国 2 隻 中 国 1 隻 ロシア3 隻 ) ちなみに 病 院 船 の 定 義 からは 外 れるが 医 療 設 備 を 有 している 主 な 各 国 の 軍 艦 船 は13 隻 ( 米 国 8 隻 英 国 1 隻 フランス2 隻 ドイツ2 隻 )である ( 注 意 : 多 くの 国 が 病 院 船 の 所 有 を 主 張 しており 14の 国 家 と4の 非 政 府 組 織 が 病 院 船 を 登 録 している しかし その 多 くは 医 療 設 備 を 持 つ 軍 事 船 であり 本 当 の 意 味 での 病 院 船 ではないという ) 世 界 最 大 の 病 院 船 はア メリカのマーシー 級 艦 艇 2 隻 <マーシー(69,360トン) コンフォート(70,470トン)> 2 3 4) で 1000 床 のベッドと12 室 の 手 術 室 を 有 し 活 動 時 には 約 1200 名 の 軍 医 療 関 係 要 員 が 乗 船 する アメリカは この2 隻 を 東 海 岸 と 西 海 岸 に1 隻 ずつ 配 備 している マーシーはカリフォルニア 州 サ ンディエゴを 母 港 とし 平 時 は 少 人 数 のスタッフ70 名 < 民 間 人 12 名, 軍 人 58 名 >で 運 用 される 活 動 時 乗 員 は 1275 名 < 民 間 人 61 名, 軍 人 1214 名 >であるが 平 時 の 乗 員 以 外 はサンディエゴ 海 軍 医 療 センターで 勤 務 している かつての 日 本 は 第 二 次 大 戦 時 まで 氷 川 丸 (11,622トン)のような 病 院 船 を 複 数 所 有 していた (ちなみに 氷 川 丸 は 現 在 横 浜 山 下 公 園 に 博 物 館 船 として 係 留 されている) しかし 現 在 は 自

衛 隊 ですら 病 院 船 を 持 っていない 病 院 船 に 準 じた 船 をあげるとすれば 規 模 は 小 さいものの 岡 山 済 生 会 総 合 病 院 所 有 の 済 生 丸 (166トン) 5) がある 超 音 波 レントゲンなど 各 種 の 検 査 機 器 を 搭 載 し 瀬 戸 内 海 の 巡 回 診 療 に 利 用 されている 阪 神 淡 路 大 震 災 では 救 援 活 動 をおこなった 病 院 船 の 活 用 例 (1) アメリカ 2010 年 ハイチ 大 地 震 の 際 ハイチ 沖 に 病 院 船 コンフォートを 地 震 発 生 約 1 週 間 後 に 派 遣 した 6) 医 療 スタッフは 合 計 550 人 (ハイチ 到 着 後 に350 人 増 員 ) うち 外 科 医 13 人 を 含 む 医 師 は40 人 緊 急 治 療 を 要 す 重 傷 患 者 を 中 心 に 約 750 回 の 手 術 を 行 った 小 児 病 棟 もあり 地 震 で 九 死 に 一 生 を 得 た 子 供 たちの 精 神 的 なケアも 担 当 した 25 万 人 ともいわれる 負 傷 者 のケアに 役 立 った ( 表 )に アメリカ 病 院 船 2 隻 の 活 動 記 録 を 示 す マーシー 1986 年 就 役 1987 年 フィリピン 南 太 平 洋 で 人 道 支 援 1990 年 ペルシャ 湾 で 多 国 籍 軍 に 対 する 医 療 支 援 2005 年 スマトラ 島 沖 地 震 の 被 害 者 支 援 コンフォート 1987 年 就 役 1991 年 サウジアラビアの 沖 合 カフジに 停 泊 < 湾 岸 戦 争 > 1994 年 カリブ 海 でハイチ 難 民 の 手 続 きセンターとして 機 能 1994 年 ハイチ 沖 合 で キューバ ハイチ 難 民 支 援 2001 年 マンハッタン 第 92 桟 橋 に 停 泊 <アメリカ 同 時 多 発 テロ 事 件 > 2003 年 ペルシャ 湾 で 医 療 センターとして イラクの 自 由 作 戦 を 支 援 <イラク 戦 争 > 2005 年 ニューオーリンズ 沿 岸 で 被 害 復 興 支 援 <ハリケーン カトリーナ> 2010 年 ハイチ 沖 で 医 療 活 動 <ハイチ 地 震 > ( 表 )アメリカ 病 院 船 の 主 な 活 動 (2) 中 国 2010 年 8 月 から11 月 にかけて 病 院 船 和 平 方 舟 (Peace Ark)がソマリア 北 部 アデン 湾 へ 出 航 し 海 賊 対 処 活 動 中 の 解 放 軍 海 軍 部 隊 に 医 療 支 援 をおこなった 7) その 後 ジブチ ケニア タンザ ニア セーシェルなどアフリカ5カ 国 を 巡 り バングラデシュでも 医 療 活 動 を 行 った 将 兵 と 医 療 スタッフは428 人 徐 建 中 海 軍 副 政 治 委 員 は 海 軍 病 院 船 が 行 った 海 外 における 人 道 支 援 だった と 意 義 を 強 調 し その 上 で 国 際 義 務 を 積 極 的 に 履 行 する 責 任 大 国 のイメージを 示 した と 真 の

目 的 を 明 かした 事 実 上 白 衣 の 兵 士 による 医 療 戦 である 病 院 船 検 討 の 歴 史 以 下 に 我 が 国 における 病 院 船 検 討 の 歴 史 を 記 す < 阪 神 淡 路 大 震 災 以 前 > 防 災 船 団 で 地 震 に 備 え 国 土 庁 構 想 海 運 不 況 対 策 にも 一 役 ( 日 経 1987 年 2 月 20 日 夕 刊 ) 伊 豆 大 島 の 噴 火 で 客 船 や 巡 視 船 が 住 民 の 避 難 や 救 援 物 資 の 補 給 に 大 活 躍 した 教 訓 から 国 土 庁 は 将 来 発 生 することが 予 想 される 東 海 地 震 や 南 関 東 地 震 に 備 えて 防 災 船 団 構 想 の 検 討 を 始 めた 運 輸 大 臣 が 救 難 へリ 搭 載 の 航 空 母 船 を 提 案 ( 世 界 の 艦 船 1988 年 6 月 号 ) 石 原 慎 太 郎 運 輸 大 臣 ( 現 東 京 都 知 事 )が, 閣 議 でヘリコプター 数 十 機 を 搭 載 できる 航 空 母 船 を 海 上 保 安 庁 用 に 建 造 することを 提 案 した この 提 案 は, 中 国 上 海 で 起 きた 列 車 事 故, フィリピンで 起 きた 内 航 客 船 衝 突 沈 没 事 故 などに 関 連 して, 海 上 保 安 庁 の 救 難 体 制 を 強 化 する 意 味 でなされた < 阪 神 淡 路 大 震 災 (1995 年 1 月 17 日 ) 以 降 > 海 保 に 病 院 船 導 入 の 方 針 / 亀 井 運 輸 相 ( 読 売 1995 年 4 月 28 日 夕 刊 ) 亀 井 静 香 運 輸 相 は 海 上 保 安 庁 に 病 院 機 能 を 持 つ 大 型 巡 視 船 一 隻 を 導 入 し 災 害 時 の 救 難 活 動 の 司 令 塔 とする 方 針 を 明 らかにした 阪 神 大 震 災 を 受 けた 震 災 対 策 の 一 環 で 95 年 度 の 補 正 予 算 案 に 盛 り 込 む 導 入 する 大 型 船 は ベッド 約 百 五 十 床 を 備 え 緊 急 手 術 も 可 能 な 治 療 室 などを 整 備 す る 通 常 は 巡 視 船 として 使 うが 災 害 時 に 負 傷 者 らの 救 出 避 難 などの 海 上 基 地 としての 役 割 も 果 たす 費 用 は213 億 円 になる 見 通 し 災 害 救 援 や 難 民 輸 送 政 府 専 用 船 の 導 入 4 案 に 絞 って 検 討 ( 日 経 1996 年 6 月 2 日 朝 刊 ) 災 害 時 の 救 援 物 資 の 運 搬 や 難 民 の 輸 送 などに 使 用 できる 政 府 専 用 船 を 導 入 するかどうかの 検 討 が 本 格 化 してきた 政 府 の 多 目 的 船 調 査 検 討 委 員 会 ( 委 員 長 藤 井 内 閣 内 政 審 議 室 長 )は 使 用 目 的 別 に 数 千 トンから 二 万 トンの 四 案 に 絞 って 検 討 に 入 る 一 方 政 府 専 用 船 の 平 時 の 有 効 利 用 については (1) 海 上 保 安 庁 の 巡 視 艇 として 使 う(2) 自 衛 隊 などで 輸 送 船 にする(3) 緊 急 使 用 に 常 時 備 え 平 時 は 使 わない などと 意 見 が 割 れている 名 称 は 緊 急 救 助 医 療 船 自 民 小 委 で 検 討 の 多 目 的 船 ( 朝 日 1996 年 07 月 13 日 朝 刊 ) 国 内 外 の 大 規 模 災 害 時 や 邦 人 救 出 に 使 う 多 目 的 船 の 導 入 を 検 討 している 自 民 党 外 交 安 保 両 調 査 会 の 小 委 員 会 は 船 の 名 称 を 緊 急 救 助 医 療 船 ( 多 目 的 病 院 船 ) ( 仮 称 )とし 運 営 は 防 衛 庁 海 上 自 衛 隊 にゆだねることを 決 定 総 理 府 に 対 し 1997 年 度 予 算 の 概 算 要 求 に 建 造 調 査 費 を 盛 り 込 むよう 求 める 要 請 文 をとりまとめた 政 府 専 用 船 災 害 救 助 を 目 的 に 自 民 小 委 で 一 致 ( 日 経 1996 年 11 月 13 日 夕 刊 ) 政 府 専 用 船 の 導 入 は 九 一 年 の 湾 岸 戦 争 を 契 機 に 浮 上 しかし 政 府 内 の 検 討 作 業 が 進 展 しなかった ことから 政 治 的 判 断 が 必 要 ( 衛 藤 委 員 長 )として 六 月 から 自 民 党 も 検 討 に 着 手 した 自 民 党 は 七 月 に 緊 急 救 助 医 療 船 として 建 造 するよう 政 府 に 要 請 する 方 針 を 打 ち 出 したものの 連 立 与 党 間 の 調 整 がつかず たなざらしになっていた < 現 在 の 日 本 > 前 述 のように 病 院 船 構 想 は 長 らく 議 論 されてきた 中 東 危 機 や 湾 岸 戦 争 における 国 際 協 力 の 不 手 際 を 受 け 政 府 内 には 検 討 委 員 会 も 設 置 された しかし 貿 易 黒 字 減 らしのような 付

随 的 な 効 果 が 期 待 薄 なため などと 災 害 対 策 とは 無 関 係 な 理 由 で 計 画 は 立 ち 消 えとなってしま った 阪 神 淡 路 大 震 災 を 契 機 として 再 度 議 論 が 盛 り 上 がったが その 後 どうなったかは 現 在 に おいても 我 が 国 に 病 院 船 が 存 在 しないことから 分 かるであろう 実 現 したのは 海 上 保 安 庁 の 災 害 対 応 型 巡 視 船 いず < 就 役 年 1997 年 > 8) のみ しかしこの 船 も 当 初 ベッド 約 150 床 緊 急 手 術 も 可 能 な 治 療 室 を 整 備 の 構 想 であったが 実 際 は 医 務 室 に2 基 の 手 術 台 やX 線 撮 影 装 置 医 救 援 活 動 従 事 者 用 の120 名 分 の 居 住 施 設 であり 残 念 ながら 病 院 船 といえるようなものではな い とはいえ 阪 神 淡 路 大 震 災 の 反 省 から 実 際 に 災 害 対 応 型 巡 視 船 が 建 造 されたことは 評 価 した い 海 上 自 衛 隊 においては 一 部 の 艦 船 が 災 害 時 の 医 療 機 能 を 考 慮 して 設 計 されている 例 えば はしだて 型 迎 賓 艇 の 説 明 文 には パーティー 用 スペースはマットレスを 並 べることで 臨 時 の 医 療 室 に 休 憩 室 は 折 り 畳 みベッドを 並 べて 病 室 に 医 療 器 具 は 備 品 として 常 備 との 記 述 がある また おおすみ 型 輸 送 艦 は 医 療 機 能 手 術 室 歯 科 診 療 室 集 中 治 療 室 (2 床 ) 病 床 (6 床 ) を 有 し ひゅうが 型 護 衛 艦 は 野 外 手 術 システムを 搭 載 している しかし いずれにしても 自 己 完 結 型 の 病 院 船 レベルではない < 病 院 船 建 造 推 進 超 党 派 議 員 連 盟 > 東 日 本 大 震 災 を 受 け 今 年 4 月 超 党 派 の 国 会 議 員 でつくる 病 院 船 建 造 推 進 超 党 派 議 員 連 盟 ( 会 長 : 衛 藤 征 士 郎 衆 院 副 議 長 )が 発 足 した 調 査 費 の 予 算 計 上 を 政 府 に 求 めていく 考 えだ 衛 藤 会 長 は 病 院 船 について 被 災 地 の 医 療 者 のマンパワーを 補 完 する 規 模 でなければならない とし 500 床 ぐらいあるものを 造 りたい と 意 欲 を 示 している 病 院 船 運 用 の 課 題 医 師 不 足 が 問 題 となっている 日 本 では 人 材 確 保 が 最 大 の 問 題 である 先 に 述 べたように マ ーシー 乗 員 は 普 段 はサンディエゴ 海 軍 医 療 センターで 勤 務 している 乗 員 をどのように 確 保 す るかは 課 題 となろう 次 に 病 院 船 の 造 船 予 算 が 課 題 である 病 院 船 は 既 存 船 舶 を 改 造 するのが 一 般 的 である 実 際 に コンフォート( 写 真 1)は 石 油 タンカーを 改 装 したものである 1982 年 フォークランド 紛 争 時 のイギリスのように 民 間 商 船 を 徴 用 した 例 もある 当 時 イギリスは 枢 密 院 令 を 発 布 し 民 間 客 船 ウガンダ 号 を 徴 用 し 改 装 して 病 院 船 とした イギリスは 現 在 も 平 時 から 客 船 貨 物 船 の 徴 用 計 画 を 策 定 している また 近 年 は 中 国 の 国 防 動 員 鑑 世 昌 ( 写 真 2)のような コ ンテナ 型 船 舶 医 療 モジュールシステムも 実 用 化 されている 9) 民 間 徴 用 船 舶 (コンテナ 船 や 貨 客 船 )に 各 種 医 療 器 材 施 設 を 収 納 した 複 数 のコンテナを 搭 載 し 病 院 船 に 改 造 するものである ( 写 真 2 世 昌 )

造 船 費 用 の 参 考 に 非 政 府 組 織 Mercy Ships が 所 有 する 病 院 船 アフリカ マーシー( 写 真 3) 10) のコストを 検 証 する フェリーを 転 用 したこの 船 (16,572トン)は 医 療 スタッフ400 名 医 療 用 ベッド78 床 手 術 室 6 室 などの 医 療 設 備 を 持 つ 現 在 アフリカ 諸 国 を 巡 り 現 地 人 に 対 し 外 科 的 手 術 などを 施 している 基 本 理 念 はボランティアで 治 療 は 全 て 無 料 である 船 体 購 入 転 用 費 用 装 備 購 入 費 用 などの 総 費 用 は 6,200 万 ドルであった 米 国 沿 海 域 戦 闘 艦 の 船 体 は 約 1 億 2,000 万 ドルといわれるので その 約 半 分 のコストである 病 院 船 は 軍 艦 のような 高 コストハイテク システムと 異 なり 低 コストといえる ( 写 真 3 アフリカ マーシー) 加 えて 言 えば 軍 を 持 たない 我 が 国 における 最 大 の 問 題 点 は 運 用 方 法 である 今 年 4 月 の 通 11) 常 国 会 内 閣 委 員 会 で 象 徴 的 な 事 例 が 明 らかとなった 問 題 となったのは 被 災 者 1500 名 の 輸 送 能 力 120 名 の 宿 泊 能 力 荷 役 クレーン ヘリポートを 持 つ 災 害 対 応 型 巡 視 船 いず 8) 東 日 本 大 震 災 に 際 し 被 災 海 域 に 到 着 したが 港 に 接 岸 できず ヘリポートも 未 使 用 医 師 は 乗 船 しておらず 医 療 活 動 もなし 災 害 対 応 機 能 を 持 ちながらも 通 常 の 巡 視 船 と 同 じ 業 務 に 終 始 し たことが 明 らかになった もともと 海 上 保 安 庁 は 独 自 の 船 医 医 官 を 持 たず 洋 上 救 急 や 遠 洋 航 海 の 際 には 関 係 病 院 からの 医 師 派 遣 に 頼 っている しかし 被 災 地 入 りしていた 地 上 の 厚 生 労 働 省 医 療 チームやDMATとの 連 携 があれば 医 療 救 助 活 動 は 可 能 であった 震 災 直 後 にヘリ100 機 以 上 が 被 災 地 上 空 で 待 っている 状 態 が 報 道 されたが なぜこの 船 は 利 用 されなかったのだろうか ま さに 省 庁 縦 割 りの 弊 害 宝 の 持 ち 腐 れである 省 庁 の 綿 密 な 連 携 がなければ 病 院 船 が 機 能 し ない 事 は 明 白 である 政 府 内 連 携 が 課 題 である 眼 科 診 療 バス Vision Van 医 療 設 備 電 気 がないと 診 療 が 難 しい 眼 科 は インフラが 停 止 した 地 域 での 治 療 は 困 難 とされ ていた それを 乗 り 越 えるべく 現 在 被 災 地 ではVision Van( 写 真 4 5) 12) が 大 活 躍 してい る 2005 年 ハリケーン カトリーナの 際 に 活 躍 した 米 国 製 災 害 時 眼 科 診 療 専 用 車 であり マイア ミ 大 学 バスコンパルマー 眼 研 究 所 が 巡 回 診 療 用 に 所 有 している 屈 折 度 測 定 装 置 眼 圧 測 定 器 な どの 設 備 をもち 手 術 を 除 けば 病 院 と 遜 色 ない 医 療 が 提 供 できるという 被 災 地 に 赴 いた 慶 應 大 学 坪 田 一 男 眼 科 教 授 名 古 屋 市 医 師 会 会 員 でもある 衆 議 院 議 員 吉 田 統 彦 氏 が マイアミ 大 学 に 掛 け 合 い 被 災 地 投 入 が 実 現 した

着 の 身 着 のままで 津 波 から 逃 れ 眼 鏡 やコンタクトをなくしてしまった 被 災 住 民 はもちろん 瓦 礫 撤 去 作 業 に 従 事 している 自 衛 隊 やボランティアの 医 療 要 望 にこたえている 現 地 では 日 本 眼 科 医 会 日 本 眼 科 学 会 の 支 援 を 受 け 岩 手 医 大 と 東 北 大 岩 手 宮 城 両 県 の 眼 科 医 会 が 協 力 し 避 難 所 をまわっている ( 写 真 4 Vision Van) ( 写 真 5 Vision Van 内 部 ) 終 わりに 病 院 船 は 日 本 の 災 害 時 に 役 立 つばかりではなく 世 界 各 国 の 救 援 に 赴 き 国 際 交 流 の 場 での 活 躍 も 期 待 される 例 えば 自 衛 隊 が 病 院 船 を 持 つことを 考 えてみたい 海 外 PKO への 自 衛 隊 派 遣 に 関 しては 軍 事 力 の 行 使 と 武 器 携 帯 の 認 可 が 問 題 となる 国 際 緊 急 援 助 隊 法 は 安 全 が 懸 念 さ れる 地 域 への 自 衛 隊 派 遣 を 禁 止 している 病 院 船 には 特 別 な 法 的 保 護 が 与 えられ 安 全 が 保 障 され るので 自 衛 隊 の 新 たな 活 動 の 場 となる 可 能 性 もありそうだ 病 院 船 保 有 国 は 発 展 途 上 国 の 風 土 病 研 究 や 住 民 の 生 活 向 上 支 援 により 国 際 的 評 価 を 高 め 国 連 での 地 位 確 保 に 使 っている 前 述 した 中 国 のように 病 院 船 は 第 三 世 界 を 回 っている 日 本 政 府 もこの 点 をしっかりと 踏 まえ 病 院 船 建 造 を 考 えるべきであろう 阪 神 淡 路 大 震 災 時 には 世 界 各 国 から 様 々な 援 助 の 手 が 差 し 延 べられた しかし このような 経 験 の 少 なかった 日 本 政 府 の 対 応 は 巧 みとは 言 えず いくつもの 反 省 すべき 教 訓 が 残 った 当 時 アメリカから 提 案 された 空 母 インディペンデンスを 病 院 船 として 使 用 されたい との 申 し 出 も この 例 外 ではない アメリカは3000 人 収 容 可 能 な 空 母 を 神 戸 沖 に 展 開 しようとしたが 政 府 は 断 ってしまった 担 当 のアメリカの 将 官 達 は 冬 季 の 今 は 被 災 者 を 船 に 収 容 するのが 一 番 良 いの に と 日 本 の 無 理 解 を 嘆 いたとのことである 今 回 の 東 日 本 大 震 災 においても 中 国 が 救 援 物 資 提 供 のほか 医 療 救 援 チーム 海 軍 病 院 船 の 派 遣 を 表 明 したが 13) 政 府 は 病 院 船 派 遣 に 難 色 を 示 した これらの 提 供 を 受 け 入 れ 日 本 政 府 や 政 治 家 が 大 規 模 な 医 療 施 設 とヘリ 運 用 を 目 の 当 たり にしていれば 病 院 船 についてもう 少 し 現 実 的 な 議 論 が 出 来 たかもしれない 眼 科 医 師 の 取 り 組 み Vision Van は 被 災 地 で 大 歓 迎 されている 我 々マイナー 科 専 門 医 は 今 回 の 大 災 害 に 際 し 今 の 自 分 に 何 ができるか 何 か 少 しでも 役 立 つことはないか? と 考 え 自 身 の 無 力 感 を 感 じたのも 事 実 である 今 事 例 のような 各 科 医 学 会 独 自 の 災 害 対 応 策 も 考 えなけ ればならないであろう

今 後 起 こりうる 東 海 東 南 海 南 海 各 地 震 対 策 を 視 野 に 入 れ 事 態 に 迅 速 かつ 適 切 に 対 処 する ためにも 最 先 端 の 医 療 設 備 機 器 を 搭 載 した 病 院 船 を 建 造 して 海 上 からの 医 療 支 援 が 実 施 で きる 体 制 を 整 えることが 喫 緊 に 求 められている 我 が 国 の 技 術 の 粋 を 集 めた 本 格 的 な 高 レベル の 病 院 船 の 一 日 も 早 い 実 現 を 願 うものである 参 考 資 料 (1)ジュネーヴ 諸 条 約 ( 外 務 省 ホームページ) http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/k_jindo/giteisho.html (2)マーシー 級 病 院 船 http://ja.wikipedia.org/wiki/%e3%83%9e%e3%83%bc%e3%82%b7%e3%83%bc%e7%b4%9a%e7%97%85% E9%99%A2%E8%88%B9 (3)マーシー (T-AH-19) http://ja.wikipedia.org/wiki/%e3%83%9e%e3%83%bc%e3%82%b7%e3%83%bc_(t-ah-19) (4)コンフォート (T-AH-20) http://ja.wikipedia.org/wiki/%e3%82%b3%e3%83%b3%e3%83%95%e3%82%a9%e3%83%bc%e3%83%88_(t -AH-20) (5) 岡 山 済 生 会 総 合 病 院 済 生 丸 http://www.okayamasaiseikai.or.jp/saiseimaru/saiseimaru_index.html (6)ハイチ 沖 に 派 遣 中 世 界 最 大 級 の 病 院 船 (2010 年 2 月 15 日 ) http://www.news24.jp/articles/2010/02/15/10153557.html (7) 中 国 海 軍 病 院 船 初 めての 海 外 での 人 道 医 療 任 務 遂 行 中 国 通 信 http://www.china-news.co.jp/node/51424 (8)いず ( 巡 視 船 ) http://ja.wikipedia.org/wiki/%e3%81%84%e3%81%9a_(%e5%b7%a1%e8%a6%96%e8%88%b9) (9)コンテナ 型 船 舶 医 療 モジュールシステム 国 防 動 員 鑑 世 昌 http://wiki.livedoor.jp/namacha2/d/%a5%b3%a5%f3%a5%c6%a5%ca%b7%bf%c1%a5%c7%f5%b0%e5%ce %c5%a5%e2%a5%b8%a5%e5%a1%bc%a5%eb%a5%b7%a5%b9%a5%c6%a5%e0 (10)MS Africa Mercy http://wpedia.goo.ne.jp/enwiki/ms_africa_mercy (11) 内 閣 委 員 会 - 第 177 回 通 常 国 会 [2011.04.13] http://www.toyamakiyohiko.com/record/archives/2011/04/177.html (12) 眼 科 診 療 バス Vision Van のホームページ http://www.mediproduce.jp/mvv/index.html (13) 中 国 が 軍 医 療 隊 派 遣 を 用 意 海 軍 病 院 船 も http://www.sponichi.co.jp/society/news/2011/03/15/kiji/k20110315000433420.html