URV 研 修 報 告 書 医 学 部 保 健 学 科 理 学 療 法 学 専 攻 3 年 中 村 遼 この 度 僕 は 去 年 のマルメ 大 学 研 修 に 引 き 続 いてスペインの URV 研 修 に 参 加 させて 頂 き スペインやヨーロッパ 圏 の 医 療 制 度 について 研 修 に 行 きました ここでは 特 に 印 象 に 強 く 残 った 講 義 と 施 設 訪 問 について 報 告 させて 頂 きます 2014.3.10(Mon) Lecture on Development of the Spanish and Catalonian Health System この 授 業 では まず 世 界 保 健 機 構 (WHO)での 健 康 に 関 する 定 義 やプライマリ ヘルス ケアに 関 して 明 確 に 示 したアルタ アタ 宣 言 Bismarck model といった 社 会 保 障 制 度 国 民 保 険 サービスなどヘルスケアや 医 療 制 度 に 関 する 基 礎 的 なことについて 次 にスペイン やカタルーニャ 地 方 の 医 療 制 度 について 学 びました スペインでは SERGAS SAS CATSALUT など 地 方 の 特 性 に 応 じて 国 民 保 険 サービスが 異 なっていることに 関 心 を 持 ち ました 2014.3.10(Mon) Introduction to Faculty of Nursing:Studies of nursing in Spain この 授 業 で 印 象 に 残 っていることとして まず 日 本 とヨーロッパで 教 育 システムが 非 常 に 異 なっているということです 看 護 だけでなく 理 学 療 法 学 も 作 業 療 法 学 全 てが EU system というヨーロッパの 共 通 システムに 入 っています ヨーロッパでは 卒 業 には 240 単 位 が 必 要 で 1 単 位 が 25 時 間 であり 10 時 間 が 学 校 で 残 りの 15 時 間 が 自 宅 で 学 習 と 決 められています この EU system の 最 大 の 特 徴 として nursing exchange というものが あり 37 時 間 の 臨 床 実 習 があるのですが このシステムによって 臨 床 実 習 から 他 国 の 病 院 に 実 習 に 行 き 他 国 の 医 療 機 関 で 経 験 を 積 むことができます また 卒 業 後 は 病 院 への 就 職 率 が 低 いため 3 年 間 ほど 他 国 で 働 かなければいけませんが この EU system によってヨ ーロッパ 各 国 の 各 分 野 での 医 療 技 術 医 療 手 段 医 療 方 法 などに 関 する 共 通 認 識 を 培 うこ とができるため 卒 業 後 も 円 滑 にかつ 即 戦 力 で 働 くことが 可 能 となると 思 います 一 方 日 本 での 教 育 システムでは 自 国 の 病 院 での 臨 床 実 習 を 行 い 自 国 の 病 院 での 就 職 が 多 い ですが スペインをはじめヨーロッパの 臨 床 実 習 の 内 容 や 風 景 を 考 慮 すると 日 本 の 臨 床 実 習 のレベルが 低 くうかがえられます また 自 国 での 臨 床 実 習 および 病 院 の 労 働 内 容 が 自 国 内 でしか 行 えないものが 多 く 国 外 での 就 職 には 困 難 を 極 めます よって EU system と 同 じように アジア 圏 内 でも 類 似 したシステムを 導 入 し 日 本 国 内 だけでなく 近 隣 諸 国 と 幅 広 く 働 くことができるようにしたほうが 良 いと 思 います 修 士 課 程 博 士 課 程 も 日 本 のものとは 異 なります 日 本 での 修 士 課 程 および 博 士 課 程 で は 授 業 などはなく 自 分 の 研 究 したい 分 野 での 研 究 や 教 授 の 補 助 的 な 仕 事 など 自 由 あ るいは 容 易 に 修 士 号 および 博 士 号 を 取 得 できるような 印 象 を 受 けます しかし スペイン だけでなく 他 国 では 修 士 課 程 にも 授 業 が 存 在 し(コースワーク) 卒 業 後 も 自 分 の 選 択 した
大 学 院 での 専 門 的 な 科 目 について 学 習 することができるとともに 容 易 に 修 士 号 博 士 号 を 取 得 することが 困 難 であるため 一 層 勉 学 に 励 むことが 可 能 となります 特 に 博 士 号 の 取 得 が 困 難 であり URV 大 学 の 看 護 学 科 では 教 授 が 数 名 ほどしかいないとのことでした 次 に スペインには 去 年 のマルメ 大 学 研 修 で 学 びましたが GP 制 度 というものが 確 立 さ れています 日 本 では 病 気 にかかった 場 合 様 々な 病 院 薬 局 そしてクリニックを 選 択 することが 可 能 ですが 病 気 が 治 らなければ 違 う 機 関 に 行 くなど 多 くの 治 療 費 を 払 わ なければならないという 欠 点 があります 一 方 スペインの 医 療 制 度 として GP とは General Practitioner という 一 般 開 業 医 のことを 指 し GP への 登 録 が 義 務 付 けられていま す 病 気 にかかった 場 合 は どのような 症 状 でも この 医 師 (GP)の 診 療 を 受 け 専 門 医 の 治 療 が 必 要 と 判 断 された 場 合 には GP の 紹 介 により 他 の 専 門 病 院 で 専 門 的 な 治 療 を 受 け る 事 になります スペインでは 公 立 の 医 療 機 関 が 8 割 残 りの 2 割 が 私 立 の 医 療 機 関 と いう 医 療 体 制 であり 公 立 医 療 機 関 では 社 会 保 障 保 険 に 加 入 していれば 医 療 費 は 完 全 無 料 となり 薬 代 もかなり 割 引 になる 制 度 が 整 っています 専 門 の 治 療 が 必 要 で 他 の 専 門 病 院 を 紹 介 された 時 も 診 察 や 治 療 などの 医 療 費 は 国 税 でまかなわれているために 無 料 で 受 けることが 可 能 となります スペインの 医 療 制 度 の 最 大 の 特 徴 は 違 法 移 民 であってもま ず 無 料 の 医 療 が 受 けられるという 点 であります 日 本 ではあまり 馴 染 みがありませんが 多 くの 国 を 占 領 し また 占 領 された 国 の 独 立 など 歴 史 的 な 背 景 がある 国 ならではの 医 療 体 制 が 確 立 され ヨーロッパでも 特 に 充 実 した 制 度 であると 思 います しかし 移 民 を 受 け 入 れるあまりに 公 立 機 関 では 受 診 受 付 時 間 が 短 くいつも 混 雑 しているという 欠 点 があり 実 際 に GP がいる 病 院 に 視 察 訪 問 した 際 に 多 くの 患 者 さんが 受 付 の 前 で 自 分 の 診 察 を 待 っ ている 場 面 がうかがえました また 私 立 医 療 機 関 のほうが 公 立 医 療 機 関 よりも 設 備 が 充 実 しており 医 療 技 術 も 総 体 的 に 高 い 医 師 が 多 く 彼 らの 診 療 を 受 けたくても 私 立 医 療 機 関 であるためプライベート 診 療 となり 全 額 負 担 となるのが 現 状 です 2014.3.11(Tue) Primary care system and Study visit to the Primary Care Center この 授 業 では プライマリケアシステムについて 詳 細 に 学 び その 後 実 際 にプライマリケアセンターの 中 を 視 察 訪 問 しました この 施 設 は 病 院 ではなく 理 学 療 法 士 も 作 業 療 法 士 もいませんが リハビリは 毎 日 行 い 作 業 療 法 士 と 言 語 療 法 士 は 週 に 2 回 リハビリを 行 いに 来 ます また 日 本 では 外 来 患 者 は 48 時 間 滞 在 できるのに 対 し この 施 設 では 6 時 間 しか 滞 在 できません この 施 設 に 登 録 している 住 民 数 は 33,250 人 ですが 施 設 周 囲 が 観 光 地 というのもあ り 滞 在 する 人 も 含 めて 150,000 人 にも 昇 りますが 全 て 登 録 できるように 受 け 入 れているそうです ここでは SOS システムが 導 入 されており 例 えば 緊 急 時 や 患 者 に 暴 力 を 図 1 設 置 されたテレビ 画 面
振 るわれたなどの 時 にはスタッフ 内 のテレビ 画 面 に 表 示 され 迅 速 に 対 応 することが 可 能 と なります 先 ほど 述 べた 自 分 の 診 察 を 待 つと いう 欠 点 を 活 かすために ここの 施 設 では 受 付 や 待 合 室 にテレビ 画 面 が 接 地 されております ( 図 1) そして 診 療 待 ちの 患 者 さんに 対 して 例 えば 肥 満 やアレルギー 認 知 症 COPD 高 血 圧 など 様 々な 疾 患 の 予 防 教 育 や 各 部 門 の 診 療 時 間 や 生 化 学 検 査 などの 詳 細 な 時 間 を 掲 示 図 2 患 者 への 疾 患 予 防 の 指 導 教 室 して 情 報 提 供 を 行 っていました 日 本 の 病 院 で も 診 療 時 間 についてのテレビ 画 面 の 表 示 はよく 見 られますが 予 防 教 育 に 関 するテレビ 画 面 での 掲 示 指 導 はあまり 見 られず 日 本 においても 患 者 さんの 診 療 前 の 空 いた 時 間 にこの ような 掲 示 指 導 を 行 えば 疾 患 予 防 により 患 者 数 も 減 らすことができるのではないかと 思 います また 掲 示 指 導 だけでなく 実 際 に 講 習 を 開 いたり プリントを 配 布 したりして 疾 患 の 予 防 について 指 導 を 行 う 教 室 もありました( 図 2) この 施 設 の 特 徴 として プライマリケアはガイドラインで 標 準 化 されており 診 療 もガ イドラインに 沿 って 行 われます 専 門 医 はあくまで 処 方 のみであり 治 療 の 多 くは 全 て 看 護 士 が 行 います またガイドラインにより 各 疾 患 の 処 方 日 数 が 決 められており 例 えば 高 血 圧 症 ならば 年 に 1 回 しか 薬 剤 が 処 方 されず 次 の 処 方 までに 薬 剤 数 がすでに 決 められて います 同 様 に 糖 尿 病 ならば 3 ヶ 月 に 1 回 咽 喉 科 ならば 3 日 に 1 回 歯 科 ならば 5 日 に 1 回 と 決 められています こうすることにより 患 者 の 施 設 に 対 する 無 駄 な 医 療 費 削 減 や 患 者 への 薬 剤 などのコスト 削 減 患 者 が 余 計 に 施 設 に 訪 問 しないことによる 施 設 運 営 の 円 滑 さの 向 上 を 図 ることが 可 能 となります 日 本 の 病 院 では( 末 期 の 患 者 を 除 きますが) 病 棟 が 病 気 を 治 る 場 所 ではなく 滞 在 する 場 所 となりつつあり 治 療 およびリハビリに 関 して も 患 者 自 身 が 治 したいというよりも 気 休 めに 治 療 を 受 けているような 印 象 が 強 いのが 現 状 です そうならないためには これらのような 対 処 を 施 すことで 緊 急 時 以 外 は 極 力 施 設 に 出 向 かないように 次 の 診 察 までに 病 気 を 完 治 あるいは 状 態 維 持 を 図 るような 患 者 の 病 気 に 対 する 意 識 を 根 本 的 に 変 える 必 要 があると 思 います 日 本 との 最 大 の 違 いとして 日 本 の 緊 急 センターでは 医 者 が 処 置 を 行 うことがほとんどで 看 護 士 は 補 助 的 に 処 置 を 行 います しかし この 施 設 では EKG モニター や 人 工 呼 吸 器 など 全 て 看 護 士 が 行 います また 図 3 実 際 に 使 う 機 器
血 球 検 査 や 血 清 検 査 血 液 ガス 分 析 検 査 も 看 護 士 の 判 断 で 行 い( 図 3) 薬 の 管 理 までも 全 て 看 護 師 が 行 っており 看 護 師 の 自 立 性 の 高 さが 感 じられました 日 本 の 看 護 師 が 行 うこ とがない 処 置 もここでは 全 て 任 されており 日 本 の 看 護 士 がスペインなどのヨーロッパ 圏 内 で 働 くことが 困 難 である 要 因 はこのようなところにあるのだと 思 います このようにヨーロッパの 看 護 師 は 非 常 に 自 立 性 が 高 く 広 い 範 囲 の 医 療 事 務 を 行 うこと が 可 能 ですが 実 際 に 日 本 でも 看 護 師 の 自 立 性 を 向 上 した 場 合 に 医 師 や 理 学 療 法 士 など の 他 の 役 職 の 必 要 性 はどうなるのかという 欠 点 も 感 じました 2014.3.11(Tue) Introduction at the hospital care system,rehabilitation and elderly assistance.study visit at: The hospital Universitari Loan ⅩⅩⅢ RHB department この 病 院 では 疾 患 の 重 症 度 で 段 階 が 分 けられており 例 えば 心 臓 発 作 などは revel1 というように 分 けられていまし た ここでは 各 職 種 のタイムスケジュールが 決 められてお り 看 護 士 は 3 時 に 次 の 看 護 師 と 交 代 で 時 間 通 りに 行 って いました また System theory というものが 導 入 されて 図 4 病 院 の 外 観 おり ここには 8 つの 施 設 があるのですが 全 て 同 じシステムが 使 用 されており 患 者 の 病 歴 などを 共 有 することが 可 能 で これは 広 島 大 学 病 院 と 同 じものでした この 病 院 のリハビリとしては 基 本 的 に 図 5 のリハビリ 室 で 行 い 医 師 の 処 方 の 下 でリ ハビリを 行 います 症 状 がひ どくて 自 分 でリハビリ 室 に 来 ることが 困 難 な 患 者 は ベッ ドサイドまで 出 向 いてリハビ リを 行 います 主 な 疾 患 とし ては 股 膝 関 節 疾 患 やパーキ ンソン 病 片 麻 痺 そして 認 知 症 などの 精 神 疾 患 が 多 く リハビリの 分 野 に 関 してはあ まり 日 本 とは 変 化 がありませ 図 5 リハビリ 室 の 様 子 んでした 去 年 のマルメ 大 学 研 修 に 引 き 続 いて 今 回 の URV 研 修 を 通 して いかに 日 本 の 医 療 制 度 が 閉 鎖 的 で 非 効 率 的 であるかを 感 じました 特 にスウェーデンやスペインなどのヨーロッパ 圏 の 国 は EU system により 連 携 が 強 く また 多 国 籍 であることにより 多 文 化 の 適 合 した
医 療 システムが 確 立 されてきました 一 方 日 本 は 鎖 国 した 時 代 から 閉 鎖 的 に 制 策 を 行 っ てきたために とても 他 国 には 受 け 入 れ 難 く 独 自 的 で 非 効 率 的 な 医 療 システムとなって しまったと 思 います 今 後 は 世 界 の 医 療 制 度 に 遅 れをとらないためにも アジア 各 国 の 近 隣 諸 国 と 連 携 して 共 通 の 医 療 システムを 確 立 すべきだと 感 じました また 今 回 の 研 修 を 通 して 英 語 力 の 重 要 性 を 再 確 認 しました 今 後 も 医 療 分 野 の 更 なる 国 際 化 が 叫 ばれる 中 日 本 人 の 英 語 力 が 蔑 まれないように 日 本 での 英 語 教 育 の 発 達 をさらに 重 要 視 していくべき だとも 感 じました 現 地 では 4 セメスターの 生 徒 に 対 して 医 療 分 野 の 簡 単 な 授 業 をスペ イン 語 ではなくすべて 英 語 で 行 っており 実 際 に 見 学 させてもらいましたが 現 地 の 生 徒 はとても 授 業 に 積 極 的 でありました 一 方 僕 たちも 4 セメスターまで 英 語 の 授 業 はあり ましたが ここまで 英 語 に 徹 底 しておらず 日 本 人 の 国 民 性 からなのか 授 業 にも 消 極 的 で ありました スペインでの 授 業 レベルまで 引 き 上 げるためにも 僕 たちの 英 語 教 育 の 充 実 性 について 見 直 す 必 要 があると 思 いました 最 後 になりましたが 今 回 このような 貴 重 な 研 修 に 参 加 させて 下 さいました URV 研 修 に 帯 同 して 下 さった 森 山 美 知 子 先 生 やこの 研 修 参 加 に 推 薦 して 下 さった 理 学 療 法 学 専 攻 長 の 新 小 田 幸 一 先 生 をはじめ この 研 修 にお 力 添 いして 下 さった 関 係 者 の 方 々に 深 く 感 謝 申 し 上 げます URV 研 修 第 1 期 生 として 今 後 の 研 修 普 及 に 努 めるとともに また 他 の 研 修 がありましたら 今 回 の 研 修 を 活 かして 積 極 的 に 参 加 したいと 思 います 本 当 にありがとうございました