海 外 における IWE (International Welding Engineer) の 位 置 付 けと 活 動 状 況 (インドネシア 編 ) IHI 加 藤 義 晃 1.はじめに 私 は 1997( 平 成 9) 年 に 石 川 島 播 磨 重 工 業 株 式 会 社 ( 現 株 式 会 社 IHI)に 入 社 し 相 生 工 場 にて 発 電 用 ボイラの 製 造 技 術 に 携 わって 来 ました 現 在 は IHI のインドネシア 現 地 法 人 の PT. Cilegon Fabricators 社 に 来 ています 私 が IWE の 資 格 を 取 得 したのは 2005 年 3 月 で WES 8103 溶 接 管 理 技 術 者 から IIW(International Institute of Welding: 国 際 溶 接 学 会 )スキームの 国 際 溶 接 管 理 技 術 者 への 特 例 措 置 が 適 用 される 最 終 年 度 でした 日 本 では JWES(The Japan Welding Engineering Society: 日 本 溶 接 協 会 ) 資 格 が 溶 接 管 理 技 術 者 としては 最 も 歴 史 と 権 威 がある 資 格 であり その 資 格 さえ 持 って いれば 溶 接 構 造 物 の 溶 接 管 理 に 関 してはお 客 様 から 十 分 な 信 頼 を 得 ることができ 法 規 上 も 全 く 問 題 ありません しかし 当 時 既 に 海 外 工 事 とくにヨーロッパ 向 けの 工 事 に 関 しては 国 際 溶 接 管 理 技 術 者 (IIW)の 資 格 取 得 者 がいなければ 工 事 の 受 注 さえ 認 められない 場 合 も 出 始 めていました 私 の 会 社 においても 南 アフリカ 向 けの 天 然 ガス 液 化 プラント 米 国 向 けの 発 電 用 ボイラや ヨーロッパ 向 けの EN( 欧 州 連 合 ) 規 格 発 電 ボイラなどの 工 事 の 受 注 が 相 次 ぐという 環 境 の 中 で 海 外 工 事 受 注 に 支 障 を 来 たさないためにも 早 急 に 国 際 資 格 を 取 得 しておく 必 要 が 生 じました また 当 時 は 上 記 特 例 措 置 の 期 限 が 迫 っており タイミングを 逃 すと 新 たに 国 際 資 格 取 得 を 取 得 することは 困 難 と 考 え 特 例 措 置 による IIW の 資 格 取 得 にチャレンジした 次 第 です 2. 資 格 取 得 の 流 れ 私 は 大 阪 会 場 にて 3 日 間 の 特 別 講 習 とケーススタディによるグループディスカッションと 発 表 を 行 い その 後 の 面 接 を 経 て 無 事 IWE を 取 得 することができました 本 特 例 措 置 は 本 来 数 ヶ 月 に 渡 って 講 習 を 受 講 して 初 めて 取 得 できる 資 格 を 当 該 の 知 識 及 び 応 用 力 を 兼 ね 備 えていることを 見 極 め る 為 のケーススタディと 学 歴 審 査 により 認 証 するプログラムでした 私 も3 日 間 の 講 習 の 間 は 大 阪 のホテルに 缶 詰 になり 必 死 に 取 り 組 みました ケーススタディにおいては 同 業 種 異 業 種 の 方 々と 実 際 の 溶 接 施 工 に 関 して 意 見 をぶつかり 合 わ せたり グレードの 異 なる 資 格 の 方 々との 協 議 を 行 いました また それぞれの 知 識 を 上 手 く 引 き 出 させるよう 議 論 の 進 め 方 を 考 えるなど 大 変 勉 強 になった 3 日 間 でした 3. 資 格 の 活 用 状 況 現 在 は 上 記 インドネシア 工 場 において 製 造 の 取 纏 め 業 務 を 担 当 していますが IWE の 資 格 を 取 得 していることが 米 国 ヨーロッパの 客 先 との 技 術 協 議 を 行 う 際 に 私 の 意 見 を 尊 重 して 頂 けるなど 大 1
変 有 効 であると 実 感 致 します また 同 工 場 における 溶 接 管 理 技 術 者 は IWE(IIW)が1 名 WE(JWES) が 2 名 いますが まだまだ 実 践 知 識 などが 不 足 しており エンジニアとしてイニシアチブを 取 れてい るとはいい 難 い 状 態 です そのため OJT 教 育 を 実 施 したり 職 長 作 業 者 レベルへの 教 育 を 実 施 さ せたりすることにより 工 場 の 溶 接 技 術 向 上 製 造 技 術 の 向 上 品 質 の 向 上 に 尽 力 しております 4.インドネシアにおける IWE の 位 置 付 け インドネシア 国 内 ではボイラ 橋 梁 鉄 鋼 化 学 プラントなどの 鉄 鋼 構 造 物 の 製 造 が 成 長 産 業 であ り 溶 接 管 理 技 術 者 の 位 置 付 けは 大 変 重 要 なものであることは 間 違 いありません しかしながら 溶 接 管 理 技 術 者 の 認 証 に 関 しては 従 来 は 様 々な 機 関 施 設 が 独 自 のカリキュラム 認 証 制 度 に 基 づ いて 行 ってきて 対 外 的 に 保 障 できる 資 格 としてなかなか 確 立 されていなかったのが 実 態 のようです その 中 で 現 在 では ISO,ASME などの 国 際 規 格 の 認 定 の 際 の 要 求 事 項 となっている 点 や 就 職 時 の スキルの 証 明 として 認 められるという 点 で IIW と JWES の 認 定 している 溶 接 管 理 技 術 者 の 資 格 が 確 固 たる 地 位 を 築 いてきています 図 1 に IIW の 資 格 書 の 例 を 図 2 に JWES の 資 格 書 の 例 を 示 しま す 図 1 インドネシアにおける IIW 国 際 溶 接 管 理 技 術 者 の 資 格 書 の 例 図 2 インドネシアにおける JWES 溶 接 管 理 技 術 者 の 資 格 書 の 例 JWES の 資 格 認 証 に 関 しては 日 本 政 府 とインドネシア 政 府 の 結 んだ EPA( 経 済 連 携 協 定 )に 基 づ く JICA( 国 際 協 力 機 構 )の 活 動 の 一 環 として 日 本 溶 接 協 会 (JWES)とインドネシア 溶 接 協 会 (IWS: Indonesian Welding Society)が 共 同 で 溶 接 技 術 向 上 セミナーおよび 溶 接 管 理 技 術 者 の 評 価 試 験 と 認 証 を 行 っております 日 本 での 特 別 級 は SWE(Senior Welding Engineer) 1 級 は WE(Welding Engineer) 2 級 は AWE(Associate Welding Engineer)とされ ジャカルタ スラバヤ バンテン バタムなどで 2008 年 2 月 より 実 施 されてきています 図 3 にセミナー 資 格 取 得 の 募 集 要 項 の 例 を 示 します 3 2
~8 日 間 の 講 習 を 受 けた 後 筆 記 試 験 面 接 に 合 格 すると 資 格 を 取 得 することができます これに 対 して IIW の 資 格 の 取 得 は4ヶ 月 に 及 ぶ 講 習 と 学 歴 職 歴 に 関 する 厳 しい 基 準 のクリア が 必 要 とされています インドネシアでの IIW の 認 定 は オーストリアの ANB(Authorised National Body)が 中 心 に 行 っており 教 育 機 関 としてはインドネシアのバンドンにある B4T(Balai Besar Bahan Dan Barang Teknik)が 一 手 に 行 っております 東 南 アジア 地 区 では インドネシア B4T のみが 教 育 できる 機 関 であり マレーシア フィリピン 等 からも 受 講 生 が 集 まってきているようです 図 4 に インドネシアにおける IIW 教 育 機 関 の 資 格 取 得 プログラムの 例 を 示 します 実 際 に インドネシア で IIW の 資 格 を 取 得 するためには 4 ヶ 月 の 間 就 業 ができないため 学 生 中 に 必 須 項 目 の 溶 接 技 術 の 学 習 期 間 をクリアしておく 人 が 約 65% 会 社 就 職 前 に 自 主 的 に 資 格 習 得 する 人 が 約 20% 幸 運 にも 会 社 からの 補 助 を 受 けて 受 講 できる 人 が 15%ぐらいの 割 合 のようです IIW 資 格 の 方 が JWES 資 格 よりも 取 得 が 困 難 であることもあってより 貴 重 な 資 格 として 位 置 付 けされ 就 職 上 の 大 きなメリット となるのが 実 情 です これら 溶 接 技 術 者 は 品 質 管 理 グループや 製 造 技 術 グループ 内 における 地 位 を 得 て 社 内 の 溶 接 技 術 の 総 責 任 者 として 技 術 技 能 の 管 理 教 育 新 技 術 の 導 入 などに 関 するマネージメントを 行 ってお ります 5. 最 後 に 以 上 に 述 べたように IWE はグローバル 企 業 において 必 要 不 可 欠 な 重 要 な 資 格 と 思 われます も ちろん IIW の 正 規 の 教 育 を 経 て 資 格 を 取 得 した 方 々の 増 加 が 望 まれますが 私 のような 何 らかの 措 置 により より 広 く IIW の 門 戸 が 日 本 の 溶 接 管 理 技 術 者 に 開 かれるようになればと 思 います さら に 国 際 的 な 業 務 に 日 本 の 溶 接 管 理 技 術 者 が どんどん 進 出 し 多 くの 高 い 品 質 技 術 レベルの 製 品 を 生 み 出 して 日 本 の 溶 接 技 術 の 高 さを 海 外 に 認 識 してもらえることを 祈 念 して 止 みません 以 上 = 略 歴 = 1997 年 4 月 ~( 株 )IHI 入 社 相 生 工 場 製 造 溶 接 管 理 技 術 担 当 2000 年 非 破 壊 検 査 技 術 者 超 音 波 探 傷 試 験 2 種 取 得 2003 年 溶 接 管 理 技 術 者 1 級 取 得 2004 年 溶 接 管 理 技 術 者 特 別 級 取 得 2005 年 国 際 溶 接 管 理 技 術 者 IWE 取 得 2008 年 ( 株 )IHI 相 生 工 場 製 造 部 課 長 2010 年 PT.Cilegon Fabricators 製 造 部 シニアマネージャ PT.Cilegon Fabricators 製 造 部 ジェネラルマネージャ 現 在 に 至 る 3
図 3 JWES と IWS によるセミナー 資格取得の募集要領 Copyright The Japan Welding Engineering Society 2011e2012 All Rights Reserved.
図 4 インドネシアにおける IIW 資 格 の 取 得 プログラム