論 文 浸 透 性 吸 水 防 止 材 で 被 覆 したポーラスコンクリートの 品 質 改 善 吉 田 知 弘 *1 国 枝 稔 *2 小 澤 淳 *3 *4 六 郷 恵 哲 要 旨 : 乾 湿 の 激 しい 環 境 下 での 劣 化 が 懸 念 されているポーラスコンクリートに 対 して, 2 種 類 の 浸 透 性 吸 水 防 止 材 で 被 覆 することにより 乾 湿 繰 返 しに 対 する 抵 抗 性 ( 水 分 の 急 激 な 吸 水 および 排 水 により 生 じる 劣 化 に 対 する 抵 抗 性 )を 向 上 させたポーラスコン クリートの 開 発 を 目 的 とし, 実 験 的 な 検 討 を 行 った その 結 果, 特 に 被 膜 タイプの 吸 水 防 止 材 を 用 いた 場 合 に, 乾 湿 繰 り 返 しに 対 する 抵 抗 性 は 向 上 すること, 吸 水 防 止 材 の 劣 化 が 乾 湿 繰 り 返 し 抵 抗 性 の 低 下 に 深 く 関 係 していることを 明 らかにした キーワード:ポーラスコンクリート, 浸 透 性 吸 水 防 止 材, 乾 湿 繰 り 返 し, 動 弾 性 係 数 1.はじめに ポーラスコンクリートは, 粗 骨 材 間 に 少 量 の セメントペーストをバインダーとして 構 成 させ るオコシ 状 のコンクリートであり, 物 性 や 適 用 性 等 これまでに 多 くの 研 究 が 行 われてきた 1) 一 方,ポーラスコンクリートの 耐 久 性 について は 明 らかになっていない 部 分 も 多 く, 特 に 乾 湿 繰 返 しによる 劣 化 ( 水 分 の 急 激 な 吸 水 および 排 水 により 生 じる 劣 化 に 対 する 抵 抗 性 )が 懸 念 さ れており, 実 験 室 レベルでは 経 時 的 に 劣 化 する 事 例 が 報 告 されている なお,ポーラスコンク リートの 耐 久 性 低 下 に 関 する 特 徴 には 例 えば 以 下 の 点 が 挙 げられる コンクリート 内 部 に 連 続 的 な 空 隙 を 持 つた め, 水 に 接 する 部 分 が 多 く, 表 層 面 で 吸 排 水 が 急 速 に 行 われる よって, 乾 湿 や 凍 結 融 解 の 激 しい 環 境 下 では,ペーストの 劣 化 を 早 める 可 能 性 がある 薄 層 のセメントペースト( 骨 材 間 )に 力 学 性 能 が 依 存 するため,ペーストのわずかな 劣 化 が, 材 料 劣 化 として 顕 在 化 する ポーラスコンクリートを 長 期 的 に 供 用 するた めにも, 劣 化 メカニズムを 定 量 化 し,さらには 耐 久 性 を 向 上 させることが 期 待 される ポーラ スコンクリートの 耐 久 性 を 向 上 させる 方 法 の1 つに,セメントペースト 量 (モルタル 量 )を 増 加 させ, 強 度 を 上 げることが 考 えられる しか し, 所 定 の 空 隙 率 が 確 保 できないことが 懸 念 さ れるため, 空 隙 率 や 骨 材 寸 法 を 変 えずに, 透 水 性 や 耐 久 性 を 向 上 させることが 望 ましい 本 研 究 では,セメントペースト 内 に 浸 透 し, 内 部 組 織 を 改 質 し,かつ 水 分 の 浸 透 を 防 ぐ 機 能 を 有 する 浸 透 性 吸 水 防 止 材 を 用 いて,ポーラス コンクリートの 乾 湿 繰 返 しに 対 する 抵 抗 性 を 向 上 させることを 目 的 とした 基 礎 実 験 を 実 施 した 表 -1 浸 透 性 吸 水 防 止 材 の 概 要 種 類 タイプ 主 成 分 含 有 量 (%) ph 密 度 (g/m 3 ) 液 色 防 水 形 態 吸 水 防 止 材 1 水 性 シリカを 含 むアクリル 酸 エステル 5 8.5 1.17 乳 白 色 造 膜 吸 水 防 止 材 2 水 性 アルキルアルコキシシランモノマー 4 8.95 無 色 疎 水 化 *1 岐 阜 大 学 大 学 院 工 学 研 究 科 土 木 工 学 専 攻 ( 正 会 員 ) *2 名 古 屋 大 学 大 学 院 工 学 研 究 科 社 会 基 盤 工 学 専 攻 助 教 授 博 士 ( 工 ) ( 正 会 員 ) *3 岐 阜 大 学 工 学 部 土 木 工 学 科 *4 岐 阜 大 学 工 学 部 社 会 基 盤 工 学 科 教 授 工 博 ( 正 会 員 )
コンクリートの 種 類 粗 骨 材 寸 法 (mm) 目 標 空 隙 率 (%) W/C (%) p/g *1 単 位 量 (kg/m 3 ) (%) W C *2 S G Ad POC 大 ( 骨 材 径 大 ) 13 2 2.2 3 3 89.1 296.9 169 POC 小 ( 骨 材 径 小 ) 5 13 2.8 3 3 88.3 294.4 1583 普 通 CONC 5 13-62.8-184 293 722 *3 135 1.17 *4 *1 p/g(ペースト 粗 骨 材 比 ) *3 細 骨 材 ( 川 砂 ) 表 -2 各 種 コンクリートの 示 方 配 合 表 *2 早 強 ポルトランドセメント *4 AE 剤 POC1 POC2 写 真 -1 浸 透 性 吸 水 防 止 材 を 被 覆 したポーラスコンクリート 2. 実 験 概 要 2.1 浸 透 性 吸 水 防 止 材 および 使 用 材 料 浸 透 性 吸 水 防 止 材 の 概 要 を 表 -1 に 示 す 本 実 験 では 市 販 されている 2 種 類 の 浸 透 性 吸 水 防 止 材 ( 以 後, 吸 水 防 止 材 1, 吸 水 防 止 材 2 と 称 す)を 使 用 した 吸 水 防 止 材 1 は, 主 成 分 であ るコロイダルシリカ 微 粒 子 が 遊 離 アルカリと 反 応 して,コンクリート 表 面 の 空 隙 を 充 填 するこ とで 緻 密 化 し,アクリルウレタン 樹 脂 が 撥 水 性 のある 防 水 被 膜 を 形 成 する 吸 水 防 止 材 2 はア ルキルアルコキシシランが 加 水 分 解 および 脱 水 縮 合 反 応 を 起 こし, 生 成 したアルキルシロキサ ンポリマーにより 基 材 を 疎 水 化 する 吸 水 防 止 材 1 とは 異 なり 表 面 に 塗 膜 を 形 成 しないため, 外 観 の 変 化 は 見 られないが, 圧 力 下 での 透 水 に 対 する 抵 抗 性 は 乏 しい どちらの 吸 水 防 止 材 も 水 性 であり, 透 湿 性 にも 優 れる 特 性 を 持 つ 材 料 である 表 -2に, 本 実 験 で 用 いた 骨 材 径 の 異 なる 2 種 類 のポーラスコンクリート 及 び 比 較 用 の 普 通 コンクリートの 配 合 を 示 す いずれの 配 合 にお いても,セメントには 早 強 ポルトランドセメン トを 用 いた 粗 骨 材 には, 粒 径 13-2mm の 骨 材 ( 密 度 :2.61g/cm 3, 実 績 率 61.4%) 及 び,5-13mm の 径 の 骨 材 ( 密 度 :2.61g/cm 3, 実 績 率 6.9%) の 2 種 類 を 使 用 した 以 後,それぞれの 骨 材 を 用 いたポーラスコンクリートを POC 大,および POC 小 と 称 す 2.2 作 製 方 法 容 量 1 リットルの 強 制 練 パン 型 ミキサーに, あらかじめ 表 乾 状 態 に 調 整 しておいた 骨 材 など, 水 以 外 の 材 料 を 全 て 投 入 し 十 分 攪 拌 した 後, 水 を 投 入 し 練 り 混 ぜる 空 練 り 方 式 とした 試 料 は 所 定 の 型 枠 に 2 層 に 分 けて 詰 め, 各 層 ごとに 突 き 棒 ( 突 き 部 分 が 35 35mm)にて 十 分 に 締 め 固 めを 行 った すべての 供 試 体 は, 打 設 後 2 日 にて 脱 型 し, 2 の 恒 温 室 内 にて 湿 布 養 生 を 行 った その 後, 材 齢 14 日 にて 気 中 乾 燥 を 1 日 行 い, 吸 水 防 止 材 で 被 覆 した 被 覆 後 は, 屋 外 で 2 日 間 乾 燥 させ, 恒 温 室 内 にて 12 日 間 の 気 中 養 生 を 行 った 次 節 にて 説 明 する 各 種 物 性 試 験 は,すべて 材 齢 29 日 で 行 った
表 -3 物 性 試 験 結 果 *1 空 隙 率 *2 透 水 係 数 *2 圧 縮 強 度 *1 曲 げ 強 度 *2 静 弾 性 係 数 *1 動 弾 性 係 数 コンクリート (%) (cm/s) (MPa) (MPa) (GPa) (GPa) の 種 類 標 準 標 準 標 準 標 準 標 準 標 準 偏 差 偏 差 偏 差 偏 差 偏 差 偏 差 13.7 4.2 1.1.3 8..9 2.3.4 13.2 3.6 21.2 4.3 19.6 3.2 3.7.5 8.6 1.4 2.3.4 12.5 1.2 2.4 3. POC 小 22.3 3.2 2.8.3 8.7.6 2.2.3 12.2 3.6 19.4 3.6 26.3 1.8 4.9.7 8.9 1.2 1.3.2 11.9 2.3 14.6 1.3 27.8 1.2 5.8 1.2 6.1 3.6 1.5.2 1. 2.7 13.2 2.1 POC 大 29.3 2.4 6.1.3 6.9 1.8 1.8.3 12.2 1.5 13.5 1.8 普 通 CONC - - - - 32. 2.8 4.2.3 25.2 1.6 32.1.5 *1 角 柱 供 試 体 (1 1 4mm) *2 円 柱 供 試 体 (φ1 2mm) 乾 燥 炉 へ 1 時 間 気 中 乾 燥 後 初 期 動 弾 性 係 数 を 測 定 4 気 中 乾 燥 (24 時 間 ) 2 水 中 湿 潤 (24 時 間 ) 2~4サイクル 毎 に 動 弾 性 係 数 及 び 質 量 測 定 水 槽 へ 図 -1 乾 湿 繰 り 返 し 試 験 フロー 吸 水 防 止 材 による 被 覆 は, 円 柱 供 試 体 (φ1 2mm) 及 び 角 柱 供 試 体 (1 1 4mm) が 完 全 に 浸 漬 できるボックスを 用 意 し, 吸 水 防 止 材 をそれぞれ 溜 め, 供 試 体 を 溶 液 中 に 浸 漬 さ せる 方 法 とした その 際,コンクリート 内 部 に まで 吸 水 防 止 材 が 行 き 渡 るよう, 浸 漬 中 に 供 試 体 を 反 転 させ, 十 分 に 空 気 を 取 り 除 いた 以 後, 吸 水 防 止 材 1,2 でそれぞれ 被 覆 したポーラスコ ンクリートを POC1,POC2, 無 被 覆 ポーラスコン クリートを POC と 称 し, 外 観 を 写 真 -1に 示 す 2.3 物 性 に 関 する 検 討 本 実 験 では, 空 隙 率, 透 水 係 数 および 強 度 等 の 力 学 特 性 を 求 める 試 験 を 行 った 空 隙 率 と 透 水 係 数 については,JCI エココンクリート 研 究 委 員 会 が 提 案 している ポーラスコンクリート の 空 隙 率 試 験 方 法 ( 案 ) の 容 積 法, ポーラス コンクリートの 透 水 試 験 方 法 ( 案 ) に 準 じて 行 った 空 隙 率, 透 水 係 数 を 計 測 後 に, 圧 縮 強 度, 曲 げ 強 度, 静 弾 性 係 数, 動 弾 性 係 数 も 併 せて 測 定 した なお, 供 試 体 寸 法 は,φ1 2mm の 円 柱 供 試 体 で 空 隙 率, 透 水 係 数, 圧 縮 強 度, 静 弾 性 係 数 を,1 1 4mm の 角 柱 供 試 体 で, 空 隙 率, 曲 げ 強 度, 動 弾 性 係 数 を 測 定 した 2.4 乾 湿 繰 り 返 し 試 験 試 験 方 法 を 図 -1に 示 す 材 齢 29 日 経 過 後, 1 1 4mm の 各 種 コンクリート 供 試 体 ( 各 3 体 )を, 先 ず 乾 燥 炉 (4 )に 24 時 間 置 いて 乾 燥 状 態 にし, 次 に 2 の 恒 温 室 内 の 水 中 ( 水 温 は 約 17 )に 24 時 間 浸 漬 して 湿 潤 状 態 にする この 操 作 を 乾 湿 繰 返 し 1 サイクルとし, 2~4 サイクル 毎 に 動 弾 性 係 数 及 び 質 量 を 測 定 する なお, 測 定 は 湿 潤 工 程 直 後 に 行 うことと し, 水 中 から 取 り 出 した 後, 約 1 時 間, 気 中 で 内 部 の 水 抜 きを 行 い,その 後, 表 面 の 水 をふき 取 り 速 やかに 測 定 した また, 試 験 条 件 は 供 試 体 を 作 製 する 際 に, 熱 電 対 を 供 試 体 中 心 部 に 埋 設 し, 温 度 履 歴 を 計 測 することで 一 定 とした 評 価 項 目 は 相 対 動 弾 性 係 数, 質 量 減 少 率 および マイクロスコープによる 表 面 観 察 の 3 項 目 とし た
空 隙 比 1.5 1.5 1 2 3 空 隙 率 (%) 透 水 係 数 (cm/s) 8 6 4 2 前 後 2 3 空 隙 率 (%) 図 -2 空 隙 率 と 被 覆 後 の 空 隙 比 図 -3 空 隙 率 と 透 水 係 数 の 関 係 3. 実 験 結 果 および 考 察 3.1 物 性 試 験 結 果 今 回 作 製 したポーラスコンクリートの 物 性 試 験 結 果 を 表 -3に 示 す ただし, 各 データはそ れぞれの 平 均 値 とした (1) 強 度 表 -3の 結 果 から, 吸 水 防 止 材 による 被 覆 が 圧 縮 強 度, 曲 げ 強 度 に 及 ぼす 影 響 は 小 さい では, 圧 縮 強 度 はシリーズ 中 最 も 大 き いが, 曲 げ 強 度 は 最 も 小 さくなっているなど, ばらつきが 原 因 と 推 察 されるデータが 見 受 けら れる 吸 水 防 止 材 が 供 試 体 表 面 の 硬 度 を 上 げ, 微 細 なひび 割 れ 等 の 発 生 を 低 減 することで 圧 縮, 曲 げ 強 度 ともに 向 上 させることを 期 待 したが, 全 体 の 傾 向 としては, 本 実 験 ではその 効 果 はほ とんど 確 認 されなかった (2) 空 隙 率 図 -2に, 吸 水 防 止 材 での 被 覆 による 空 隙 率 の 変 化 を, 被 覆 前 の 空 隙 率 に 対 する 被 覆 後 の 空 隙 の 比 ( 空 隙 比 )で 示 した POC2 供 試 体 では, 被 覆 による 空 隙 率 の 変 動 は 見 られないが,POC1 供 試 体 においては, 供 試 体 の 空 隙 率 が 低 いほど, 被 覆 後 の 空 隙 比 が 低 下 する 傾 向 を 示 した 特 に, 空 隙 率 が 15% 程 度 の 供 試 体 では, 被 覆 後 の 空 隙 比 が 半 減 ( 空 隙 率 約 8%)しており, 空 隙 率 が 大 幅 に 下 がったことを 示 している これは,ア クリルウレタン 樹 脂 が 厚 みのある 防 水 被 膜 を 表 面 に 形 成 したため, 吸 水 防 止 材 の 付 着 量 が 見 か 動 弾 性 係 数 (GPa) 3 2 1 POC 小 POC 大 1 2 3 空 隙 率 (%) 図 -4 空 隙 率 と 動 弾 性 係 数 の 関 係 けの 空 隙 率 を 低 下 させたと 考 えられる また, それは 骨 材 径 の 小 さなポーラスコンクリートで 顕 著 であり, 連 続 空 隙 の 細 分 化 により 吸 水 防 止 材 の 付 着 面 積 が 拡 大 したことが 影 響 を 及 ぼして いると 推 測 される さらに, 供 試 体 表 面 を 観 察 すると, 所 々で 吸 水 防 止 材 による 目 詰 まりも 確 認 された 既 往 の 研 究 結 果 においては,5-13mm の 砕 石 を 使 用 したポーラスコンクリートの 空 隙 径 は 約 3mm と 示 されており, 吸 水 防 止 材 が 空 隙 に 充 填 された 可 能 性 も 考 えられる 以 上 より, 被 膜 タイプの 吸 水 防 止 材 をポーラスコンクリー トに 適 用 する 場 合, 空 隙 径 が 空 隙 率 に 与 える 影 響 は 大 きく, 比 較 的 大 きな 骨 材 での 利 用 が 求 め られる 本 研 究 の 範 囲 内 では 骨 材 径 が 13-2mm, 空 隙 率 が 約 3% 程 度 のポーラスコンクリート において 望 ましい 結 果 となった
相 対 動 弾 性 係 数 (%) 1 8 6 4 2 POC 小 POC 大 普 通 CONC 1 2 サイクル 数 ( 回 ) 図 -6 乾 湿 繰 り 返 しによる 相 対 動 弾 性 係 数 質 量 減 少 率 (%) 1 99 98 97 POC 小 96 POC 大 普 通 CONC 95 1 2 サイクル 数 ( 回 ) 図 -7 乾 湿 繰 り 返 しによる 質 量 減 少 サイクル 13 サイクル 25 サイクル 写 真 -2 乾 湿 繰 り 返 しによる 表 面 劣 化 ( 倍 率 25 倍 ) 温 度 ( ) 6 4 2 普 通 CONC POC 小 POC 大 雰 囲 気 温 度 ( 炉 水 中 ) 1サイクル 1 2 3 4 経 過 日 数 (day) 図 -5 温 度 の 経 時 変 化 1サイクル (3) 透 水 係 数 図 -3に 吸 水 防 止 材 の 被 覆 による 空 隙 率 と 透 水 係 数 の 関 係 を 示 す POC1 供 試 体 では, 吸 水 防 止 材 の 被 覆 による 空 隙 率 の 低 下 に 伴 い, 透 水 係 数 も 低 下 する 傾 向 を 示 した これは, 吸 水 防 止 材 が 連 続 空 隙 ( 透 水 に 関 わる 空 隙 )に 被 膜 す ることで,その 膜 厚 が 空 隙 径 を 小 さくしたり, 連 続 空 隙 を 閉 塞 させ 独 立 空 隙 や 半 独 立 空 隙 ( 透 水 に 関 係 の 無 い 空 隙 )に 変 えたことによると 推 察 される 一 方,POC2 供 試 体 では, 被 覆 後 の 透 水 係 数 に 変 化 は 現 れていない また,どの 供 試 体 も 空 隙 率 が 高 くなるにつれて 透 水 係 数 は 比 例 的 に 大 きくなり, 被 覆 後 においても, 空 隙 率 と 透 水 係 数 の 間 には 相 関 性 が 維 持 されていた (4) 動 弾 性 係 数 図 -4に 空 隙 率 と 動 弾 性 係 数 の 関 係 を 示 す 寸 法 の 異 なる 2 種 類 の 骨 材 を 用 いた 場 合 でも, 空 隙 率 の 増 加 に 伴 い 動 弾 性 係 数 は 低 下 し, 空 隙 率 と 動 弾 性 係 数 の 間 には 高 い 相 関 性 が 認 められ た 前 述 のとおり, 空 隙 率 と 圧 縮 強 度 には 高 い 相 関 性 があったことからも, 通 常 のコンクリー トと 同 様 にポーラスコンクリートにおいても, 空 隙 率 と 動 弾 性 係 数 の 間 には, 良 い 相 関 性 が 存 在 している 3.2 乾 湿 繰 返 し 試 験 結 果 (1) 供 試 体 内 部 の 温 度 変 化 図 -5に, 乾 湿 繰 返 し 試 験 において, 熱 電 対 による 供 試 体 内 部 の 温 度 と 外 部 の 温 度 変 化 の 経 時 変 化 を 示 す いずれの 供 試 体 においても, 平
衡 温 度 になるまでに, 加 熱 時 には 12 時 間 程 度, 冷 却 時 には 6 時 間 程 度 必 要 であった さらに, 乾 燥 炉 の 容 量 が 小 さいために, 局 所 的 な 温 度 の 差 が 見 受 けられる 場 合 もあった よって, 本 実 験 では, 各 供 試 体 が 同 一 の 場 所 に 配 置 されない ように 配 慮 することとした (2) 相 対 動 弾 性 係 数, 質 量 減 少 率 乾 湿 繰 り 返 しによる 相 対 動 弾 性 係 数, 質 量 減 少 率 とサイクル 数 の 関 係 をそれぞれ 図 -6,7 に 示 す また,POC1 供 試 体 の 表 層 を 写 真 -2 に 示 す サイクル 数 25 回 において,POC2 供 試 体 およ び POC 供 試 体 では, 動 弾 性 係 数 が 6%まで 低 下 した それに 比 べ,POC1 供 試 体 では 動 弾 性 係 数 および 質 量 減 少 率 ともにわずかに 低 下 する 程 度 であった POC2 供 試 体 では, 吸 水 防 止 性 能 としてシリコーンが 水 の 浸 透 とともにセメン トペースト 内 部 へ 浸 透 し, 表 面 に 撥 水 層 が 形 成 される しかしながら, 本 実 験 で 使 用 したポー ラスコンクリートは 水 セメント 比 3%と 緻 密 なマトリックスであることから, 内 部 への 浸 透 が 少 なく 液 ダレや 揮 発 を 起 こした 可 能 性 2) が 考 えられ,POC 供 試 体 と 同 程 度 の 乾 湿 繰 り 返 し に 対 する 抵 抗 性 を 示 したと 予 想 される POC1 供 試 体 においては,アクリルウレタン 樹 脂 の 層 が 水 分 の 吸 収 を 抑 制 したものと 考 えられる た だし,POC1 供 試 体 の 表 層 部 では, 試 験 開 始 直 後 から, 約 13 サイクルにかけては, 表 面 に 微 細 なひび 割 れが 発 生 するに 留 まっているが,その 後, 終 了 25 サイクルにかけて, 頻 繁 に 吸 水 防 止 材 の 剥 離 が 生 じていた これは, 動 弾 性 係 数 の 低 下 と 関 係 深 く, 吸 水 防 止 材 の 劣 化 ( 比 較 的 大 きなひび 割 れの 発 生 )が 乾 湿 繰 り 返 しに 対 する 抵 抗 性 の 低 下 を 促 進 したものと 推 察 される 以 上 より, 動 弾 性 係 数 の 低 下 により 評 価 されると 考 えられる 乾 湿 繰 返 しによるポーラスコンクリ ートの 劣 化 のメカニズムとして,セメントペー スト 表 面 での 微 細 なひび 割 れの 発 生,およびそ れに 起 因 して 生 じた 供 試 体 表 面 近 傍 の 骨 材 の 欠 落 ち( 質 量 減 少 で 表 される)が 考 えられる ま た, 乾 湿 繰 り 返 しに 対 する 抵 抗 性 の 向 上 には 被 膜 タイプの 吸 水 防 止 材 が 有 効 であるが,その 場 合 は, 吸 水 防 止 材 の 劣 化 が 耐 久 性 の 低 下 に 深 く 関 係 していると 予 想 される 4.おわりに 本 研 究 にて 得 られた 結 論 を 以 下 に 示 す 1) 吸 水 防 止 材 が,ポーラスコンクリートの 各 種 力 学 特 性 に 与 える 影 響 は 小 さく, 吸 水 防 止 材 の 種 類 によっては, 空 隙 率 及 び 透 水 係 数 が 低 下 する 傾 向 を 示 した 2) ポーラスコンクリート 供 試 体 内 に 熱 電 対 を 配 置 し, 供 試 体 内 部 の 温 度 変 化 を 計 測 した 結 果, 本 研 究 では 所 定 の 温 度 に 到 達 するま でに 時 間 差 が 生 じた 乾 燥 炉 を 用 いた 乾 湿 繰 返 し 試 験 においては,その 容 量 によって は 局 所 的 な 温 度 のばらつきが 認 められる 場 合 があるため, 供 試 体 の 配 置 等 には 注 意 す る 必 要 があった 供 試 体 内 部 の 昇 温 速 度 や 表 面 と 内 部 の 温 度 差 などが 劣 化 に 及 ぼす 影 響 等 についても 引 き 続 き 検 討 が 必 要 である 3) 本 実 験 の 条 件 においては, 内 部 に 含 浸 し 表 層 を 改 質 する 吸 水 防 止 材 ( 吸 水 防 止 材 2)で 被 覆 したポーラスコンクリートでは, 乾 湿 繰 返 しに 対 する 抵 抗 性 の 改 善 効 果 は 少 なく, 緻 密 なポーラスコンクリートのマトリックスに, 当 該 材 料 が 十 分 に 浸 透 していない 可 能 性 が 考 えられる 逆 に, 被 膜 タイプの 吸 水 防 止 材 ( 吸 水 防 止 材 1)が 効 果 的 であり,その 場 合 は, 吸 水 防 止 材 の 劣 化 がポーラスコンクリー トの 耐 久 性 の 低 下 に 深 く 関 係 していると 予 想 される 参 考 文 献 1) コンクリート 工 学 協 会 :ポーラスコンクリ ートの 設 計 施 工 法 の 確 立 に 関 する 研 究 委 員 会 報 告 書,pp.65-7,23 2) 林 大 介 他 :シラン シロキサン 系 撥 水 材 の 開 発,コンクリート 工 学 年 次 論 文 集, Vol.22,pp.31-36,2