外資による観光不動産投資の拡大とそれを活用した観光地振興



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平成24年度税制改正要望 公募結果 153. 不動産取得税

個人住民税徴収対策会議

その 他 事 業 推 進 体 制 平 成 20 年 3 月 26 日 に 石 垣 島 国 営 土 地 改 良 事 業 推 進 協 議 会 を 設 立 し 事 業 を 推 進 ( 構 成 : 石 垣 市 石 垣 市 議 会 石 垣 島 土 地 改 良 区 石 垣 市 農 業 委 員 会 沖 縄 県 農


平成25年度 独立行政法人日本学生支援機構の役職員の報酬・給与等について


第316回取締役会議案

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18 国立高等専門学校機構

公 的 年 金 制 度 について 制 度 の 持 続 可 能 性 を 高 め 将 来 の 世 代 の 給 付 水 準 の 確 保 等 を 図 るため 持 続 可 能 な 社 会 保 障 制 度 の 確 立 を 図 るための 改 革 の 推 進 に 関 する 法 律 に 基 づく 社 会 経 済 情

Microsoft Word - プレスリリース(運用ガイドライン変更)_Final_cln_ doc

損 益 計 算 書 自. 平 成 26 年 4 月 1 日 至. 平 成 27 年 3 月 31 日 科 目 内 訳 金 額 千 円 千 円 営 業 収 益 6,167,402 委 託 者 報 酬 4,328,295 運 用 受 託 報 酬 1,839,106 営 業 費 用 3,911,389 一

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Microsoft Word - 交野市産業振興基本計画 doc

目 次 第 1 土 地 区 画 整 理 事 業 の 名 称 等 1 1. 土 地 区 画 整 理 事 業 の 名 称 1 2. 施 行 者 の 名 称 1 第 2 施 行 地 区 1 1. 施 行 地 区 の 位 置 1 2. 施 行 地 区 位 置 図 1 3. 施 行 地 区 の 区 域 1 4

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は 固 定 流 動 及 び 繰 延 に 区 分 することとし 減 価 償 却 を 行 うべき 固 定 の 取 得 又 は 改 良 に 充 てるための 補 助 金 等 の 交 付 を 受 けた 場 合 にお いては その 交 付 を 受 けた 金 額 に 相 当 する 額 を 長 期 前 受 金 とし

災害時の賃貸住宅居住者の居住の安定確保について


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スライド 1

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注 記 事 項 (1) 当 四 半 期 連 結 累 計 期 間 における 重 要 な 子 会 社 の 異 動 : 無 (2) 四 半 期 連 結 財 務 諸 表 の 作 成 に 特 有 の 会 計 処 理 の 適 用 : 有 ( 注 ) 詳 細 は 添 付 資 料 4ページ 2.サマリー 情 報 (

Microsoft Word - 佐野市生活排水処理構想(案).doc

セルフメディケーション推進のための一般用医薬品等に関する所得控除制度の創設(個別要望事項:HP掲載用)

●幼児教育振興法案

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Microsoft Word )40期決算公開用.doc

平成29年2月期 第2四半期決算短信


貸 借 対 照 表 内 訳 表 212 年 3 月 31 日 現 在 公 益 財 団 法 人 神 奈 川 県 公 園 協 会 科 目 公 益 目 的 事 業 会 計 収 益 事 業 等 会 計 法 人 会 計 内 部 取 引 消 去 合 計 Ⅰ 資 産 の 部 1. 流 動 資 産 現 金 預 金

別 表 1 土 地 建 物 提 案 型 の 供 給 計 画 に 関 する 評 価 項 目 と 評 価 点 数 表 項 目 区 分 評 価 内 容 と 点 数 一 般 評 価 項 目 立 地 条 件 (1) 交 通 利 便 性 ( 徒 歩 =80m/1 分 ) 25 (2) 生 活 利 便

( 別 途 調 査 様 式 1) 減 損 損 失 を 認 識 するに 至 った 経 緯 等 1 列 2 列 3 列 4 列 5 列 6 列 7 列 8 列 9 列 10 列 11 列 12 列 13 列 14 列 15 列 16 列 17 列 18 列 19 列 20 列 21 列 22 列 固 定

損 益 計 算 書 ( 平 成 25 年 10 月 1 日 から 平 成 26 年 9 月 30 日 まで) ( 単 位 : 千 円 ) 科 目 金 額 営 業 収 益 304,971 営 業 費 用 566,243 営 業 総 損 失 261,271 営 業 外 収 益 受 取 利 息 3,545

国立研究開発法人土木研究所の役職員の報酬・給与等について

(2) 単 身 者 向 け 以 外 の 賃 貸 共 同 住 宅 等 当 該 建 物 に 対 して 新 たに 固 定 資 産 税 等 が 課 税 される 年 から 起 算 して5 年 間 とする ( 交 付 申 請 及 び 決 定 ) 第 5 条 補 助 金 の 交 付 を 受 けようとする 者 は

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市街化区域と市街化調整区域との区分


<重要な会計方針及び注記>

平 成 27 年 度 第 3 四 半 期 運 用 状 況 の 概 要 第 3 四 半 期 の 運 用 資 産 額 は 2 兆 4,339 億 円 となりました 第 3 四 半 期 の 修 正 総 合 収 益 率 ( 期 間 率 )は +2.05%となりました 実 現 収 益 率 は +1.19%です

は し が き

 

4. その 他 (1) 期 中 における 重 要 な 子 会 社 の 異 動 ( 連 結 範 囲 の 変 更 を 伴 う 特 定 子 会 社 の 異 動 ) 無 (2) 簡 便 な 会 計 処 理 及 び 四 半 期 連 結 財 務 諸 表 の 作 成 に 特 有 の 会 計 処 理 の 適 用 有

Microsoft Word - J_ エンゲル.docx

スライド 1

4. 長 期 優 良 住 宅 に 係 る 特 例 の 延 長 長 期 優 良 住 宅 に 係 る 以 下 の 特 例 措 置 の 適 用 期 限 ( 平 成 28 年 3 月 31 日 )を 延 長 する 1 登 録 免 許 税 の 特 例 ( 所 有 権 の 保 存 登 記 : 本 則 0.4%

目 次 第 1. 土 区 画 整 理 事 業 の 名 称 等 1 (1) 土 区 画 整 理 事 業 の 名 称 1 (2) 施 行 者 の 名 称 1 第 2. 施 行 区 1 (1) 施 行 区 の 位 置 1 (2) 施 行 区 位 置 図 1 (3) 施 行 区 の 区 域 1 (4) 施

Ⅰ 平成14年度の状況

16 日本学生支援機構

Ⅰ 人 口 の 現 状 分 析 Ⅰ 人 口 の 現 状 分 析 1 人

容 積 率 制 限 の 概 要 1 容 積 率 制 限 の 目 的 地 域 で 行 われる 各 種 の 社 会 経 済 活 動 の 総 量 を 誘 導 することにより 建 築 物 と 道 路 等 の 公 共 施 設 とのバランスを 確 保 することを 目 的 として 行 われており 市 街 地 環

1 総 合 設 計 一 定 規 模 以 上 の 敷 地 面 積 及 び 一 定 割 合 以 上 の 空 地 を 有 する 建 築 計 画 について 特 定 行 政 庁 の 許 可 により 容 積 率 斜 線 制 限 などの 制 限 を 緩 和 する 制 度 である 建 築 敷 地 の 共 同 化 や

全国都市再生モデル調査調書(様式1)

2 役 員 の 報 酬 等 の 支 給 状 況 役 名 法 人 の 長 理 事 理 事 ( 非 常 勤 ) 平 成 25 年 度 年 間 報 酬 等 の 総 額 就 任 退 任 の 状 況 報 酬 ( 給 与 ) 賞 与 その 他 ( 内 容 ) 就 任 退 任 16,936 10,654 4,36

課 税 ベ ー ス の 拡 大 等 : - 租 税 特 別 措 置 の 見 直 し ( 後 掲 ) - 減 価 償 却 の 見 直 し ( 建 物 附 属 設 備 構 築 物 の 償 却 方 法 を 定 額 法 に 一 本 化 ) - 欠 損 金 繰 越 控 除 の 更 な る 見 直 し ( 大

Ⅰ 平成14年度の状況

市況トレンド

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科 売 上 原 価 売 上 総 利 益 損 益 計 算 書 ( 自 平 成 26 年 4 月 1 日 至 平 成 27 年 3 月 31 日 ) 目 売 上 高 販 売 費 及 び 一 般 管 理 費 営 業 利 益 営 業 外 収 益 受 取 保 険 金 受 取 支 援 金 補 助 金 収 入 保

1. 本 市 の 保 育 所 運 営 費 と 保 育 料 の 現 状 2 (1) 前 回 (5/29 5/29) 児 童 福 祉 専 門 分 科 会 資 料 国 基 準 に 対 する 本 市 の 保 育 料 階 層 区 分 別 軽 減 率 国 基 準 に 対 する 本 市 の 保 育 料 階 層 区

Microsoft Word 運営方針(本編)

Microsoft Word - H27概要版

2 役 員 の 報 酬 等 の 支 給 状 況 平 成 27 年 度 年 間 報 酬 等 の 総 額 就 任 退 任 の 状 況 役 名 報 酬 ( 給 与 ) 賞 与 その 他 ( 内 容 ) 就 任 退 任 2,142 ( 地 域 手 当 ) 17,205 11,580 3,311 4 月 1

人事行政の運営状況の報告について

(1) 率 等 一 覧 ( 平 成 26 年 度 ) 目 課 客 体 及 び 納 義 務 者 課 標 準 及 び 率 法 内 に 住 所 を 有 する ( 均 等 割 所 得 割 ) 内 に 事 務 所 事 業 所 又 は 家 屋 敷 を 有 する で 内 に 住 所 を 有 し ないもの( 均 等

2013/4/23版

事 業 概 要 利 用 時 間 休 館 日 使 用 方 法 使 用 料 施 設 を 取 り 巻 く 状 況 や 課 題 < 松 山 駅 前 駐 輪 場 > JR 松 山 駅 を 利 用 する 人 の 自 転 車 原 付 を 収 容 する 施 設 として 設 置 され 有 料 駐 輪 場 の 利 用

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Microsoft Word - 07②-2 補足説明資料1.docx

(2) 簡 便 な 会 計 処 理 及 び 四 半 期 連 結 財 務 諸 表 の 作 成 に 特 有 の 会 計 処 理 の 適 用 該 当 事 項 はありません (3) 四 半 期 連 結 財 務 諸 表 作 成 に 係 る 会 計 処 理 の 原 則 手 続 表 示 方 法 等 の 変 更 当

企業結合ステップ2に関連するJICPA実務指針等の改正について③・資本連結実務指針(その2)

最 近 5 期 の 運 用 実 績 決 算 期 基 準 価 額 期 中 騰 落 率 公 社 債 組 入 比 率 純 資 産 総 額 円 % % 百 万 円 36 期 末 (2011 年 11 月 19 日 ) 3, 期 末 (2012 年 11 月 19 日

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4. その 他 (1) 期 中 における 重 要 な 子 会 社 の 異 動 ( 連 結 範 囲 の 変 更 を 伴 う 特 定 子 会 社 の 異 動 ) 無 新 規 社 ( 社 名 ) 除 外 社 ( 社 名 ) (2) 簡 便 な 会 計 処 理 及 び 四 半 期 連 結 財 務 諸 表 の

Microsoft Word - 奨学金相談Q&A.rtf

の 提 供 状 況 等 を 総 合 的 に 勘 案 し 土 地 及 び 家 屋 に 係 る 固 定 資 産 税 及 び 都 市 計 画 税 を 減 額 せずに 平 成 24 年 度 分 の 固 定 資 産 税 及 び 都 市 計 画 税 を 課 税 することが 適 当 と 市 町 村 長 が 認 め

連結計算書

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第 41 期

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25 年 度 アクションプラン 補 助 制 度 目 標 定 住 人 口 :198 人 増 1 九 州 大 学 学 生 への 電 動 バイクレンタル 事 業 学 研 都 市 づくり 課 進 学 糸 島 市 内 に 居 住 する 九 州 大 学 の 学 生 に 民 間 業 者 と 連 携 し て 電 動

平 成 24 年 4 月 1 日 から 平 成 25 年 3 月 31 日 まで 公 益 目 的 事 業 科 目 公 1 公 2 公 3 公 4 法 人 会 計 合 計 共 通 小 計 苦 情 相 談 解 決 研 修 情 報 提 供 保 証 宅 建 取 引 健 全 育 成 Ⅰ. 一 般 正 味 財

目 次 高 山 市 連 結 財 務 諸 表 について 1 連 結 貸 借 対 照 表 2 連 結 行 政 コスト 計 算 書 4 連 結 純 資 産 変 動 計 算 書 6 連 結 資 金 収 支 計 算 書 7

スライド 1

Microsoft PowerPoint - 税制上の特例.pptx

Microsoft PowerPoint - 経営事項審査.ppt


損 益 計 算 書 ( 自 平 成 23 年 4 月 1 日 至 平 成 24 年 3 月 31 日 ) 金 額 ( 単 位 : 百 万 円 ) 売 上 高 99,163 売 上 原 価 90,815 売 上 総 利 益 8,347 販 売 費 及 び 一 般 管 理 費 4,661 営 業 利 益

目 次 貸 借 対 照 表 1 損 益 計 算 書 2 キャッシュ フロー 計 算 書 3 利 益 の 処 分 に 関 する 書 類 4 国 立 大 学 法 人 等 業 務 実 施 コスト 計 算 書 5 注 記 事 項 6 附 属 明 細 書 別 紙

質 問 票 ( 様 式 3) 質 問 番 号 62-1 質 問 内 容 鑑 定 評 価 依 頼 先 は 千 葉 県 などは 入 札 制 度 にしているが 神 奈 川 県 は 入 札 なのか?または 随 契 なのか?その 理 由 は? 地 価 調 査 業 務 は 単 にそれぞれの 地 点 の 鑑 定

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第5回法人課税ディスカッショングループ 法D5-4

公表表紙

Transcription:

NRI Public Management Review 外 資 による 観 光 不 動 産 投 資 の 拡 大 とそれを 活 用 した 観 光 地 振 興 野 村 総 合 研 究 所 社 会 産 業 コンサルティング 部 上 席 コンサルタント 北 村 倫 夫 コンサルタント 岡 村 篤 1. 不 動 産 投 資 のグローバリゼーションの 進 展 不 動 産 投 資 のグローバリゼーションが 急 拡 大 している 不 動 産 サービスおよび 不 動 産 投 資 マネジメントサービスの 世 界 的 な 企 業 であ る ジョーンズラングラサール 社 の 調 査 レポ ート *1 によると 2006 年 上 半 期 (1~6 月 ) の 全 世 界 における 直 接 不 動 産 投 資 は 前 年 同 期 比 30% 増 の 2,900 億 米 ドル( 約 35 兆 円 ) という 記 録 的 な 数 字 を 示 した また その 中 でアジア パシフィック 地 域 が 同 40% 増 の 430 億 米 ドル( 全 体 の 約 15%)となった この 不 動 産 投 資 増 大 の 背 景 としては 先 進 国 において 人 口 の 多 くが 定 年 を 迎 える 中 世 界 的 にファンドへの 流 入 資 金 が 増 え 続 けてお り その 大 半 が 投 資 ポートフォリオに 占 める 不 動 産 の 比 率 を 高 めている 点 が 挙 げられる アジア パシフィック 地 域 の 中 で 最 も 投 資 額 の 大 きかった 国 が 日 本 である 同 レポー トによるとアジア パシフィック 地 域 の 不 動 産 取 引 全 体 の 約 51%が 日 本 に 集 中 している 日 本 に 集 中 する 理 由 は 継 続 して 経 済 成 長 が 見 込 まれること 低 金 利 であること 不 動 産 デフレが 終 息 したことなどにより 国 内 外 の 投 資 家 が 戻 ってきたためである 2. 外 資 による 国 内 観 光 投 資 の 増 加 このようなグローバルな 潮 流 の 中 で 最 近 わが 国 においては プライベイト エクイテ ィ ファンドや 投 資 銀 行 等 の 外 資 による 観 光 関 連 の 不 動 産 投 資 が 増 加 している 外 資 は 世 界 規 模 で 蓄 積 している 観 光 投 資 に 関 連 する 金 融 および 事 業 のノウハウと 経 験 を 携 え 日 本 市 場 に 進 出 してきている 投 資 の 目 的 は 大 きく 捉 えると 不 動 産 流 動 化 ビジネス 型 投 資 および 事 業 再 生 不 良 債 権 処 理 型 投 資 の 2 つであり それらの 対 象 分 野 となっている のは ホテル&リゾート ゴルフ 場 スパ スキー 場 などである 特 に ホテル&リゾー ト ゴルフ 場 について 動 向 をみると 次 のとお りである 1)ホテル&リゾート 投 資 の 動 向 2000 年 以 降 外 資 系 ファンドや 企 業 による 国 内 ホテル&リゾート 施 設 の 買 収 事 例 が 増 え ている( 図 表 1) 特 に 固 定 資 産 の 減 損 に 係 る 会 計 基 準 の 適 用 指 針 が 公 表 された 2003 年 頃 から 買 収 件 数 が 顕 著 に 増 加 しており 減 損 会 計 の 導 入 によりホテル 経 営 の 見 直 しが 大 きな 契 機 となったことが 推 察 される これら 外 資 によるホテル 投 資 は バブル 期 の 過 剰 な 投 資 等 を 理 由 に 破 綻 した 施 設 を 不 良 債 権 として 初 期 投 資 を 大 きく 下 回 る 価 格 で 買 収 し 経 営 再 建 によって 収 益 性 を 高 めたの ちに 売 却 してリターンを 得 る というスキー ム(ディストレスファンド 等 )を 中 心 に 行 わ れてきた いわゆる ハゲタカ と 呼 ばれた 投 資 スキームである しかし ここ 数 年 は 収 益 事 業 として 成 立 しているホテル&リゾート 事 業 を 簿 価 を 上 *1 グローバル リアルエステート キャピタル- 動 く 巨 大 資 金 進 むグローバリゼーション NRI パブリックマネジメントレビュー February 2007 vol.43-1-

回 る 価 格 で 買 収 し 経 営 効 率 化 等 による 更 な る 資 産 価 値 向 上 を 図 ることを 目 的 とした 買 収 案 件 も 見 られるようになった 例 えば 米 国 投 資 銀 行 のモルガンスタンレーは サッポロ ホールディングスから ウェスティンホテル 東 京 を 簿 価 を 約 70 億 円 程 度 上 回 る 約 500 億 円 で 買 収 している サッポロホールディン グスにとっては 約 70 億 円 の 売 却 益 によっ て 有 利 子 負 債 圧 縮 や 本 業 への 経 営 資 源 集 中 を 促 進 する 結 果 となった また 外 資 系 のプレーヤーそのものにも 変 化 が 見 られる 米 国 系 不 動 産 投 資 ファンドを 母 体 とするイシン ホテル グループは 転 売 によるリターン 獲 得 を 目 的 とした 買 収 では なく あくまでホテルビジネスそのものへの 進 出 を 目 的 に 積 極 的 な 投 資 戦 略 を 展 開 してい る 図 表 1 外 資 による 国 内 ホテル&リゾート 投 資 ( 買 収 )の 事 例 (2003 年 以 降 ) 買 主 ホテル 名 所 在 地 買 収 年 G 神 戸 メリケンパークオリエンタルホテル 兵 庫 県 2003 G なんばオリエンタルホテル 大 阪 府 2003 G ホテルセントラーザ 博 多 福 岡 県 2003 M 新 神 戸 オリエンタルホテル 兵 庫 県 2003 G ホテル 日 航 アリビラ 沖 縄 県 2003 L ホテル 日 航 豊 橋 愛 知 県 2003 L ホリデイイン 京 都 京 都 府 2003 I 大 阪 なんばワシントンホテルプラザ 大 阪 府 2003 M ホテルイルモンテ 大 阪 府 2003 L トーヨーホテル 北 海 道 2004 L シェラトンホテル 札 幌 北 海 道 2004 L 旭 川 パレスホテル 北 海 道 2004 CO シーホークホテル&リゾートおよび 福 岡 ドーム 福 岡 県 2004 I ホテルバーデン 六 本 木 東 京 都 2004 I インターナショナルガーデンホテル 成 田 千 葉 県 2004 M 東 洋 ホテル 大 阪 府 2004 M ホテルルートイン 五 反 田 東 京 都 2004 M ホテルサンフラワー 札 幌 北 海 道 2004 I 鹿 児 島 東 急 ホテル 鹿 児 島 県 2004 I マルコーイン 東 京 東 京 都 2004 L 長 崎 ビューホテル 長 崎 県 2004 L ホテルシップビクトリア 長 崎 県 2004 M ウェスティンホテル 東 京 東 京 都 2004 M 京 都 国 際 ホテル 京 都 府 2004 I シャンピアホテル 赤 坂 東 京 都 2004 I 大 津 シャンピアホテル 滋 賀 県 2004 I シャンピアホテル 防 府 山 口 県 2004 I 沖 縄 不 二 ホテル 沖 縄 県 2004 M 京 都 パークホテル 京 都 府 2004 G いずみ 荘 静 岡 県 2005 I ホテルライオンズプラザ 名 古 屋 愛 知 県 2005 L 神 戸 ベイシェラトンホテル&タワーズ 兵 庫 県 2005 I ヒルトン 小 樽 北 海 道 2005 L 石 垣 グランドホテル 沖 縄 県 2005 I サンルート 赤 坂 東 京 都 2005 I ホテル 成 田 エアポートワシントンホテル 千 葉 県 2006 I 八 王 子 プラザホテル 東 京 都 2006 I サンマリーナホテル 沖 縄 県 2006 G 広 島 ワシントンホテルプラザ 広 島 県 2006 L 沖 縄 マリオットリゾート かりゆしビーチ 沖 縄 県 2006 I ココガーデンリゾートオキナワ 沖 縄 県 2006 I ルネッサンスリゾートオキナワ 沖 縄 県 2006 注 )G:ゴールドマン サックス 系 I:イシン ホテルズ グループ L:ローンスター 系 M:モルガンスタンレー 系 CO:コロニーキャピタル NRI パブリックマネジメントレビュー February 2007 vol.43-2-

2)ゴルフ 場 投 資 の 動 向 1990 年 代 後 半 以 降 高 度 経 済 成 長 期 からバ ブル 期 にかけて 全 国 各 地 で 開 発 されたゴル フ 場 の 経 営 破 綻 が 相 次 いだ これをビジネス チャンスと 捉 えた 米 国 投 資 銀 行 のゴールドマ ン サックスおよび 米 国 投 資 ファンドのロー ン スターグループが 破 綻 したゴルフ 場 を 次 々と 買 収 した その 結 果 2006 年 3 月 現 在 で 両 者 それぞれ 94 コースを 保 有 し 国 内 ゴルフ 場 所 有 の 上 位 トップ 2 の 企 業 グルー プとなっている これら 外 資 の 投 資 戦 略 は 集 中 購 買 導 入 等 スケールメリットを 追 及 したコスト 削 減 ブ ランディングの 推 進 低 価 格 のカジュアルな アメリカ 式 ゴルフスタイルの 導 入 などによっ て 集 客 力 と 事 業 収 益 性 を 高 めることである また 外 資 による 投 資 の 場 合 出 口 戦 略 も 考 慮 されている ゴールドマン サックス 系 の ゴルフ 場 運 営 子 会 社 であるアコーディア ゴ ルフと ローン スターグループ 系 のパシフ ィック ゴルフマネジメントは すでに 東 証 一 部 上 場 を 果 たし 出 口 としての 投 資 に 対 す る 大 きなリターンが 実 現 化 している 一 方 最 近 ではエイチ ジェイグループや 財 閥 系 ハンファグループ 等 の 韓 国 資 本 が 韓 国 内 富 裕 層 の 台 頭 ウォン 高 国 内 ゴルフコ ースの 少 なさ 等 を 背 景 に 日 本 のゴルフ 場 へ の 投 資 ( 買 収 )を 行 うケースが 増 えている 2005 年 現 在 で 韓 国 資 本 は 日 本 国 内 で 19 コースを 買 収 所 有 していると 推 測 される 3. 外 資 による 国 内 観 光 投 資 の 特 徴 こうした 外 資 による 日 本 国 内 への 観 光 投 資 の 特 徴 としては 大 きく 次 の 2 点 が 指 摘 でき る 1) 多 様 なプレーヤー 機 能 の 相 互 連 携 第 一 は 観 光 投 資 を 推 進 するプレーヤーが 多 様 化 しているとともに それらの 間 での 役 割 分 担 連 携 が 合 理 的 なシステムとして 機 能 している 点 である 国 内 のホテル&リゾート 投 資 における 外 資 系 プレーヤーとその 機 能 は 図 表 2のイメー ジである この 中 で 特 に 資 金 調 達 と 投 資 運 用 を 担 う 投 資 銀 行 ファンド プロフェッ ショナルなホテル 経 営 や 事 業 運 営 を 担 う マ ネジメント 会 社 専 門 事 業 オペレーター 等 がキープレーヤーとして 重 要 な 位 置 づけに ある また これらのプレーヤーは 投 資 銀 行 やファンドが 組 成 する 投 資 スキーム の もとで 密 接 な 連 携 を 持 ち 全 体 として 最 高 の パフォーマンスを 達 成 するように 設 計 されて いる 図 表 2 外 資 による 国 内 のホテル&リゾート 投 資 スキームにおける 機 能 分 担 イメージ 機 能 分 類 具 体 的 企 業 機 関 名 ( 例 示 ) 投 資 銀 行 資 金 調 達 投 資 買 収 スキーム 構 築 投 資 ファンド 事 業 会 社 ホテル 事 業 者 ゴールドマン サックスグループ モルガン スタンレーグループ リーマン ブラザーズグループ 等 ローン スターグループ リップルウッド コロニー キャピタル グローブ インターナショナル 等 イシン ホテル グループ ラッフルズ インターナショナル ホ テル&リゾーツ 等 その 他 韓 国 産 業 洋 行 グループ 等 経 営 (+ 運 営 ) マネジメント 会 社 パノラマ ホスピタリティ ゴールドマン サックス リアルティ ジャパン アーコン ホスピタリティ 等 運 営 受 託 専 門 事 業 オペレーター マリオット インターナショナル インク スターウッド ホテル &リゾート ワールドワイド ハイアット ホテル&リゾート ヒ ルトン インターナショナル インク フォーシーズンズ ホテル &リゾート マンダリン オリエンタル ホテルグループ 等 資 金 回 収 投 資 法 人 ジャパン ホテル アンド リゾート 投 資 法 人 等 投 信 委 託 業 者 ジャパン ホテル アンド リゾート 株 式 会 社 等 NRI パブリックマネジメントレビュー February 2007 vol.43-3-

2) 高 度 な 金 融 事 業 スキームの 展 開 外 資 の 第 二 の 特 徴 は 世 界 標 準 の 高 度 な 金 融 事 業 スキームを 観 光 投 資 に 展 開 すること である 外 資 は ノンリコースローン 等 を 利 用 したレバレッジ 効 果 による 高 投 資 利 回 りの 実 現 観 光 投 資 の 回 収 手 段 としての REIT の 活 用 等 それまでの 日 本 では 一 般 的 ではなか った 金 融 事 業 スキームを 浸 透 普 及 させ 機 関 投 資 家 一 般 投 資 家 からのリスクマネー 調 達 資 金 運 用 事 業 運 営 リターン 獲 得 分 配 等 をシステマティックに 行 うことを 可 能 にした 外 資 は このようなグローバルスタンダー ドの 金 融 事 業 スキームを 観 光 分 野 へ 応 用 し 世 界 中 のリスクマネーを 原 資 に ホテル&リ ゾートやゴルフ 場 等 への 投 資 を 増 やしている のである その 中 で 特 に 積 極 的 であるのが 米 国 系 の 投 資 銀 行 やファンドである 例 えば 米 国 系 投 資 銀 行 であるゴールドマン サックスは ホテル&リゾート ゴルフ 場 等 への 膨 大 な 投 資 を 行 っているとともに ジャパン ホテ ル アンド リゾート ( 投 信 委 託 業 者 として 認 定 )を 設 立 し ホテル 特 化 型 の REIT を 上 場 させるなどの 出 口 戦 略 も 展 開 している 図 表 3 外 資 のホテル&リゾート 再 生 の 事 業 スキーム(REIT 型 )の 例 日 系 企 業 売 却 外 資 系 投 資 銀 行 外 資 系 ファンド ホテル 経 営 子 会 社 ( 運 営 委 託 ) 投 資 家 出 資 売 却 代 金 一 定 期 間 後 に 売 却 REIT 等 運 営 委 託 所 有 施 設 運 営 ホテル 事 業 者 3. 外 資 による 国 内 観 光 投 資 の 主 な 成 功 事 例 最 近 の 外 資 による 国 内 観 光 投 資 の 事 例 の 中 で 地 域 観 光 振 興 や 事 業 再 生 に 結 びついてい るという 点 で 成 功 しているものとして 例 え ば 以 下 が 挙 げられる 1) 九 州 における 韓 国 資 本 の 観 光 連 携 投 資 と 相 乗 効 果 現 在 韓 国 はゴルフブームであり 国 内 に ゴルフ 場 の 数 が 少 ないことから 安 くて 近 い 日 本 のゴルフ 場 へのツアー 客 が 急 増 している こうした 韓 国 からのゴルフ 客 の 増 加 を 背 景 と して 韓 国 資 本 が 日 本 のゴルフ 場 および 関 連 観 光 施 設 へ 投 資 し 成 功 する 例 がみられる 韓 国 系 企 業 のエイチ ジェイ 社 (ソウルの 韓 国 産 業 洋 行 社 の 子 会 社 )は 事 業 再 生 を 目 的 として 2004 年 に 長 崎 県 のペニンシュラオー ナーズゴルフクラブ および 福 岡 県 の 福 岡 レ イクサイドカントリークラブを 買 収 した ま た 韓 国 財 閥 のハンファグループも 2004 年 8 月 に 長 崎 カントリークラブを 買 収 している 九 州 のゴルフ 場 は 都 市 部 国 際 空 港 ( 韓 国 便 就 航 )からのアクセスの 良 さ 秋 冬 期 に プレーが 可 能 であることなどが 評 価 されてお り 韓 国 資 本 の 投 資 ターゲットになっている さらに 注 目 すべきは こうした 韓 国 からの ゴルフ 客 や 観 光 客 の 増 加 をビジネス 機 会 と 捉 えて 韓 国 人 観 光 客 をターゲットにした 観 光 投 資 が 広 がっていることである 例 えば エ NRI パブリックマネジメントレビュー February 2007 vol.43-4-

イチ ジェイ 社 と 同 系 列 のジェイ エス リ ゾート 社 は 2006 年 に 佐 世 保 市 の 西 海 橋 コラ ソンホテルを 買 収 した また 韓 国 資 本 によ って 九 州 に 貸 切 観 光 バス 会 社 (ソウルの 旅 行 博 士 社 の 子 会 社 )が 2004 年 に 設 立 されるな ど 観 光 関 連 投 資 は 拡 大 しつつある その 結 果 九 州 への 韓 国 人 観 光 客 はさらに 増 加 して いる 以 上 のように 九 州 では 韓 国 人 観 光 客 やゴ ルフ 客 の 増 大 が 韓 国 からの 資 本 流 入 (ゴル フ 場 投 資 ホテル 投 資 観 光 バス 会 社 設 立 等 ) の 契 機 となった またそれらの 投 資 が 観 光 地 としての 利 便 性 や 評 価 を 高 め さらに 韓 国 人 観 光 客 やゴルフ 客 を 呼 び 寄 せるという 好 循 環 を 生 み 出 している 2)ニセコへのオーストラリア 資 本 の 観 光 連 携 投 資 と 相 乗 効 果 北 海 道 ニセコ 地 域 における オーストラリ ア 人 スキー 客 の 急 増 およびそれに 伴 う 関 連 ビジネスへの 投 資 による 地 域 活 性 化 は 全 国 的 にも 著 名 な 事 例 となっている オーストラリア 資 本 によるビジネス 投 資 に ついてみると 最 近 では 不 動 産 事 業 旅 行 事 業 などが 主 な 投 資 分 野 となっており すでに 不 動 産 業 4 社 旅 行 代 理 業 3 社 がニセコ 地 域 に 進 出 している 特 に 不 動 産 投 資 については 外 資 によるコンドミニアムの 建 設 販 売 賃 貸 が 増 加 しており 2004 年 は 22 戸 2005 年 は 36 戸 2006 年 は 50 戸 以 上 の 販 売 が 見 込 まれている ニセコでも 人 気 があり 投 資 が 集 中 してい るのは ひらふスキー 場 地 区 のみであった が 最 近 では 周 辺 への 波 及 をもたらそうと する 動 きもみられる 例 えば オーストラリ ア 系 の 日 本 ハーモニーリゾート 社 は 日 本 の 東 急 不 動 産 から ニセコひらふ 花 園 スキー 場 を 買 収 し スキー 場 周 辺 にカナダの Whistler をモデルとした 通 年 型 の 大 規 模 リゾートタウ ンを 建 設 する 予 定 である このように オー ストラリアのスキー 関 連 投 資 がニセコへ 集 中 している 理 由 としては 雪 質 自 然 環 境 の 良 さ 本 国 からの 地 理 的 近 接 性 ( 時 差 がない アメリカ ヨーロッパより 近 い) 投 資 条 件 の 良 さ( 外 国 人 投 資 に 制 約 なし 不 動 産 価 格 は カナダやヨーロッパの 3 分 の 1 程 度 ) 日 本 文 化 への 憧 れなどといわれている ニセコにオーストラリア 人 客 が 来 訪 するよ うになったのは 先 駆 的 に 訪 れた 個 人 客 の 口 コミによるとされている その 後 オースト ラリアの 旅 行 会 社 がスキー 客 を 連 れてくるよ うになり 最 近 では 年 間 固 定 客 が 200 から 300 人 に 至 っている また 居 住 者 も 増 え 倶 知 安 町 では 現 在 約 100 人 のオーストラリア 人 が 暮 らしている こうした 本 国 からの 人 の 流 れ が 増 加 するに 伴 い オーストラリア 人 向 けの 観 光 サービス 需 要 長 期 滞 在 居 住 需 要 が 発 生 し 自 国 民 のニーズを 熟 知 してい るオーストラリア 資 本 のビジネス 機 会 が 広 が ってきたのである 以 上 のように ニセコにおいても オース トラリア 人 スキー 客 の 増 大 が 本 国 からの 資 本 流 入 (ビジネス 投 資 不 動 産 投 資 等 )を 誘 引 し それらの 投 資 が 国 外 で 最 も 近 い 世 界 水 準 のスキーリゾート 地 としての 利 便 性 や 評 価 を 高 め より 一 層 のオーストラリア 人 スキー 滞 在 客 や 居 住 者 を 増 やすという 好 循 環 を 生 み 出 している 3) 国 際 ブランドと 高 度 経 営 ノウハウ 導 入 に よるヒルトン 成 田 ( 旧 リーガロイヤルホ テル 成 田 )の 再 生 2001 年 にイシン ホテル グループが 大 阪 のロイヤルホテル 所 有 のリーガロイヤルホ テル 成 田 を 買 収 し ホテル 運 営 事 業 者 として 国 際 展 開 するヒルトングループとフランチャ イズ 契 約 を 締 結 し ヒルトン 成 田 として 再 建 させた 同 施 設 は グローバルにホテル 事 業 NRI パブリックマネジメントレビュー February 2007 vol.43-5-

を 展 開 するヒルトンのブランド 力 と 全 世 界 に 拡 がる 顧 客 基 盤 を 活 用 するとともに イシ ン ホテル グループの 持 つ 高 度 な 経 営 ノウ ハウを 導 入 することによって 客 室 稼 働 率 は 買 収 前 年 (2000 年 )の 67%から 88%(2003 年 )に 上 昇 収 益 も 大 幅 に 改 善 された また イシン ホテル グループは 買 収 し た 施 設 の 雇 用 を 継 続 する 基 本 方 針 を 掲 げてい ることから 地 元 経 済 にとってもこの 買 収 は ホテルが 有 する 雇 用 創 出 効 果 や 経 済 波 及 効 果 を 活 用 するという 側 面 から 意 義 があったと 考 えられる 一 方 急 激 に 日 本 国 内 での 事 業 拡 大 を 進 めるイシン ホテル グループにとっ ても 雇 用 の 継 続 は 買 収 に 伴 う 地 元 経 済 と の 協 調 協 力 関 係 づくり 早 期 の 事 業 体 制 整 備 等 の 面 でメリットがあったと 推 測 される 4. 外 資 による 観 光 投 資 の 利 点 前 述 のような 国 内 観 光 投 資 の 成 功 事 例 のケ ーススタディから 導 かれる 外 資 による 観 光 投 資 の 利 点 の 例 として 以 下 が 挙 げられる 1) 外 資 は 世 界 に 通 用 する 観 光 ブランド を 構 築 できる 観 光 投 資 の 成 功 に 不 可 欠 な 要 因 は 観 光 ブ ランド の 構 築 である ホテル 等 の 単 体 施 設 あるいは 地 域 全 体 として いかに 世 界 に 通 用 するブランドを 構 築 できるかが 国 内 からの 集 客 面 に 大 きく 影 響 してくる こうした 観 光 ブ ランド 構 築 の 面 で 外 資 は 非 常 に 力 を 持 って いる 例 えば 世 界 的 なネームバリューを 持 つ 施 設 運 営 事 業 者 (オペレーター)への 委 託 あるいはフランチャイズ 方 式 の 導 入 ( 例 えば 有 名 ホテルグループとの FC 契 約 等 )などの 面 で 外 資 は 世 界 的 なネットワークとコネク ションを 持 っており それが 観 光 ブランドの 構 築 に 有 効 なリソースとなる 2) 外 資 は 世 界 標 準 の マネジメントスキル を 持 っている 観 光 投 資 には 投 資 プロジェクトのマネジ メント 投 資 後 のプロパティマネジメントの スキルやノウハウが 不 可 欠 である また 不 動 産 流 動 化 スキーム( 投 資 スキーム)のアレ ンジメント 金 融 事 業 プレーヤーの 選 定 組 成 投 資 計 画 の 作 成 各 種 リーガルチェッ ク 税 務 チェックなどのノウハウが 必 要 とな る こうした 点 に 関 して 外 資 のファンドや 投 資 銀 行 あるいはそれらと 連 携 する 専 門 ア セットマネージャーや 専 門 事 業 オペレーター 等 が 世 界 標 準 のスキルとノウハウを 持 って いる 観 光 投 資 を 成 功 に 導 く 基 本 的 なノウハウと しては 例 えば 観 光 施 設 における 所 有 と 経 営 の 分 離 施 設 運 営 の 専 門 オペレーター へのアウトソーシング などが 重 要 である 3) 外 資 は 母 国 からの 観 光 誘 客 連 携 投 資 の 相 乗 効 果 を 発 揮 できる 観 光 投 資 を 成 功 に 導 く 要 因 の 一 つは 観 光 投 資 と 観 光 誘 客 の 相 乗 効 果 を 発 揮 させること である 九 州 における 韓 国 人 ゴルフ 客 の 増 加 と 韓 国 資 本 による 観 光 投 資 の 拡 大 北 海 道 ニ セコにおけるオーストラリア 人 スキー 客 の 増 加 と 同 国 資 本 による 不 動 産 開 発 投 資 の 増 加 な どにみられるように 外 資 は 本 国 からの 人 の 流 れ と 投 資 (カネ)の 流 れ をうまく 連 動 させることによって 両 者 の 相 乗 効 果 を 発 揮 させることができる その 結 果 当 該 地 域 へ 投 資 と 消 費 による 大 きな 経 済 効 果 が 発 生 することになる 5. 外 資 を 取 り 込 んだ 観 光 地 振 興 に 向 けた 課 題 以 上 のように 国 内 観 光 投 資 の 展 開 にあたっ て 外 資 は 多 くの 利 点 を 持 っている こうし NRI パブリックマネジメントレビュー February 2007 vol.43-6-

た 外 資 の 利 点 をうまく 活 用 することによって 国 内 の 観 光 地 域 開 発 を 成 功 に 導 く 可 能 性 が 高 まる しかし 一 方 で 外 資 による 観 光 投 資 には 課 題 も 発 生 している 例 えば 日 本 有 数 の 観 光 地 である 沖 縄 では 米 国 の 投 資 銀 行 が 既 存 ホ テルの 再 生 に 乗 り 出 した 際 に 地 元 事 情 を 考 慮 せず 雇 用 の 削 減 等 を 前 面 にした 再 建 策 を 講 じようとしたために 地 元 および 売 主 企 業 か らの 反 発 を 招 いた また ニセコの 観 光 投 資 事 例 においても オーストラリア 人 と 日 本 の 不 動 産 会 社 による 契 約 上 のトラブルが 発 生 敷 地 内 にオープンスペースを 設 けないなどの 景 観 まちづくり 面 でのルール 違 反 投 資 の 特 定 地 区 への 集 中 による 地 価 高 騰 などの 問 題 が 生 じている したがって わが 国 の 今 後 の 観 光 地 振 興 の 戦 略 としては 外 資 の 利 点 を 最 大 限 活 かすと 同 時 に 次 のような 手 法 で 観 光 地 振 興 を 目 指 すことが 望 ましい 第 一 は 観 光 地 における 一 体 的 な 地 域 マ ネジメント の 展 開 である リゾート 等 の 面 的 な 観 光 投 資 を 成 功 させるためには ホテル 等 の 単 体 施 設 の 経 営 だけではなく 投 資 マネ ーを 起 爆 剤 として 観 光 地 の 再 建 やバリューア ップを 実 現 する 地 域 マネジメント を 外 資 とともに 進 めていくことが 重 要 である 第 二 は 地 域 と 外 資 との 連 携 協 働 の 実 現 で ある 外 資 が 観 光 投 資 を 地 域 で 行 う 場 合 には 地 域 の 雇 用 や 地 産 地 消 の 重 視 など 地 元 との 連 携 協 働 が 不 可 欠 である 第 三 は 観 光 投 資 と 都 市 / 地 域 づくり との 調 和 であ る 観 光 投 資 が 新 規 の 開 発 事 業 を 伴 う 場 合 に は 地 元 の 都 市 づくり 地 域 づくりと 融 合 す ることが 求 められる これらを 実 践 することによって 外 資 の 力 を 活 用 した 地 元 主 導 の 観 光 地 振 興 が 実 現 する ことになろう 筆 者 北 村 倫 夫 (きたむら みちお) 株 式 会 社 野 村 総 合 研 究 所 社 会 産 業 コンサルティング 部 上 席 コンサルタント 北 海 道 大 学 大 学 院 国 際 広 報 メディア 研 究 科 客 員 教 授 専 門 は 国 土 地 域 産 業 政 策 行 政 改 革 パブリックセクター 広 報 など E-mail: m-kitamura@nri.co.jp 筆 者 岡 村 篤 (おかむら あつし) 株 式 会 社 野 村 総 合 研 究 所 社 会 産 業 コンサルティング 部 コンサルタント 専 門 は 地 域 再 生 都 市 計 画 産 業 政 策 少 子 高 齢 化 対 策 など E-mail: a2-okamura@nri.co.jp NRI パブリックマネジメントレビュー February 2007 vol.43-7-