2016 年 米 国 大 統 領 選 挙 をどうみるか? 2015 年 11 月 27 日 於 :RIETI BBL セミナー 東 京 財 団 上 席 研 究 員 渡 部 恒 雄 米 国 大 統 領 選 挙 の 日 程 2016 年 2 月 1 日 アイオワ 党 員 集 会 2 月 9 日 ニューハンプシャー 予 備 選 3 月 1 日 スーパーチューズデイ アラバマ( 共 和 党 のみ) アーカンソー コロ ラド( 党 員 集 会 ) ジョージア マサチューセッツ ミネソタ( 党 員 集 会 ) ノースカロラ イナ オクラホマ テネシー テキサス バーモント バージニア 7 月 18-21 日 共 和 党 全 国 大 会 (クリーブランド オハイオ 州 ) 7 月 25-28 日 民 主 党 全 国 大 会 (フィラデルフィア ペンシルバニア 州 ) 11 月 8 日 一 般 有 権 者 による 投 票 及 び 開 票 2017 年 1 月 20 日 大 統 領 就 任 式 米 国 政 治 が 保 守 とリベラルの 二 極 に 分 化 共 和 党 内 でも 分 化 が 進 む 背 景 アメリカの 政 治 は 共 和 党 支 持 と 民 主 党 支 持 に 大 きく 分 かれ 中 道 穏 健 派 が 減 ってきて いる 保 守 とリベラルのイデオロギー 上 の 党 派 対 立 はクリントン 政 権 頃 から 激 化 したが クリ ントン 大 統 領 には 保 守 派 も 嫌 いになれない 人 間 的 魅 力 があった 2000 年 の 大 統 領 選 挙 は 共 和 党 民 主 党 の 双 方 に 不 満 を 残 した ブッシュ vs.ゴアの 選 挙 は 接 戦 となり 異 例 のフロリダ 州 リカウントをめぐる 法 廷 闘 争 となり ブッシュの 勝 利 で 決 着 総 得 票 数 でブッシュを 上 回 ったゴア 支 持 者 は 結 果 に 納 得 できなかった これは 米 国 が 18 世 紀 後 半 の 建 国 当 初 の 交 通 事 情 を 反 映 した 選 挙 人 団 制 (electoral college)を 維 持 してい ることの 矛 盾 の 反 映 でもある 保 守 とリベラルに 分 裂 した 選 挙 では 中 道 層 にアピールするよりも 自 らの 陣 営 をなる べく 多 く 動 員 したほうが 勝 利 すると 考 えられた ブッシュ( 子 ) 政 権 の 2001 年 9 月 11 日 同 時 多 発 テロで 米 国 はまとまり 対 テロ 戦 争 を 遂 行 したが 2003 年 のイラク 開 戦 の 経 緯 とその 後 のイラクとアフガニスタンでの 米 軍 の 1
苦 境 により ブッシュ 政 権 に 対 する 反 発 が 民 主 党 と 中 道 層 から 強 くなった ブッシュ( 子 ) 大 統 領 は 2004 年 の 再 選 がかかった 大 統 領 選 挙 で イラク 開 戦 や 単 独 行 動 主 義 などへの 不 満 への 逆 風 を 乗 り 切 るため 宗 教 的 な 価 値 観 を 重 視 する 選 挙 を 行 い 妊 娠 中 絶 反 対 や 同 性 婚 の 反 対 などのアジェンダで 宗 教 保 守 層 にアピールし 減 税 策 により 小 さな 政 府 主 義 者 に 訴 えるなどの 政 策 を 行 って 再 選 また 対 抗 馬 のケリー 候 補 のベトナム 戦 歴 に 疑 問 を 煽 るなどのネガティブキャンペーンも 激 化 これに 対 して 民 主 党 のリベラル 支 持 層 がさらに 反 発 することになった 2008 年 の 大 統 領 選 挙 は レッド ステート( 共 和 党 州 )とブルー ステート( 民 主 党 州 ) の 二 つに 分 裂 したアメリカと 揶 揄 される 状 況 で 行 われ ブッシュのイラク 戦 争 を 批 判 し 二 つのアメリカを 一 つにすると 訴 えたオバマ 候 補 が 勝 利 を 収 めた オバマ 政 権 は リーマンショック 後 の 米 国 経 済 を 立 て 直 すための 史 上 最 高 額 の 景 気 対 策 と オバマケアと 呼 ばれる 社 会 保 障 政 策 の 拡 充 を 行 い 共 和 党 の 小 さな 政 府 主 義 者 の 大 反 発 を 買 った 反 発 した 小 さな 政 府 主 義 者 は ティーパーティー( 茶 会 派 ) と 呼 ばれた 草 の 根 運 動 となり 共 和 党 はそれを 吸 収 ティーパーティーは 共 和 党 の 中 道 派 を 予 備 選 で 攻 撃 勝 利 し 多 くの 中 道 派 の 議 席 を 奪 い 米 国 政 治 の 二 極 化 を 進 めた 2016 年 の 大 統 領 選 挙 も これまで 拡 大 してきた 米 国 政 治 の 二 極 化 の 中 で 行 われる 2016 年 の 選 挙 は Super PAC(2010 年 以 来 法 律 で 認 められた 寄 付 金 上 限 制 限 のない 政 治 資 金 管 理 団 体 )の 役 割 が 大 きくなることが 予 想 されている 二 極 化 した 選 挙 での メデ ィアでのネガティブキャンペーンの 資 金 源 となると 目 される 2016 年 大 統 領 選 挙 の 外 交 安 全 保 障 議 論 の 底 流 にあるもの 2016 年 の 大 統 領 選 挙 の 前 哨 戦 は 米 国 民 の 大 きな 不 安 と 不 満 を 映 し 出 す 鏡 あまりにも 現 実 離 れした 発 言 を 繰 り 返 すドナルド トランプが 共 和 党 候 補 の 先 頭 民 主 党 の 先 頭 を 走 るヒラリー クリントン 前 国 務 長 官 への 支 持 が 伸 び 悩 み 自 らがオバ マ 政 権 の 国 務 長 官 として 主 導 したアジア リバランス 政 策 の 目 玉 の TPP に 反 対 している 二 番 手 につけている 社 会 民 主 主 義 者 を 自 称 するバーニー サンダースの 人 気 が 衰 えない (ウォールストリート 占 拠 運 動 のような 貧 富 の 差 への 不 満 ) <S&P 500 Top CEO の 年 収 と 平 均 の 非 管 理 職 の 年 収 の 差 >(AFL-CIO 集 計 のデータ) 1980 42 倍 1990 85 倍 2000 525 倍 2009 300 倍 (リーマンショック 後 ) 2014 373 倍 2
保 守 とリベラルに 二 極 化 している 米 国 民 の 米 国 の 現 状 に 対 する 不 満 は 大 きく さらに 保 守 とリベラルの 中 でも 現 状 不 満 派 と 現 状 維 持 勢 力 との 分 極 化 がみられる 共 和 党 内 には ティーパーティー 系 などの 現 状 に 不 満 を 持 つ 勢 力 と 現 状 維 持 を 望 む 既 存 のエスタブリッシュメントの 勢 力 との 分 極 化 が 深 刻 化 している ベーナー 下 院 議 長 が 政 府 の 窓 口 閉 鎖 回 避 のために 辞 任 をせざるを 得 なくなったことや その 後 の 下 院 議 長 候 補 が 簡 単 に 決 まらないというような 状 況 が 共 和 党 内 の 分 裂 の 深 刻 さを 如 実 に 示 している 民 主 党 内 でも ヒラリー クリントン 候 補 やバーニー サンダース 候 補 に 不 満 を 持 つ 層 が ジョー バイデン 副 大 統 領 の 出 馬 を 強 く 求 めたように 多 極 化 が 進 んでいる このような 状 況 の 背 景 には 米 国 の 現 状 に 対 する 不 満 と 不 安 がある 内 政 では 貧 富 の 格 差 拡 大 の 継 続 と 将 来 の 経 済 への 不 安 外 交 面 では 世 界 秩 序 における 米 国 自 身 の 位 置 づけ への 深 刻 なアイデンティティー 危 機 オバマ 政 権 の 7 年 間 オバマ 政 権 は リーマンショック 後 の 米 国 経 済 を 立 て 直 すための 史 上 最 高 額 の 景 気 対 策 と オバマケアと 呼 ばれる 社 会 保 障 政 策 の 拡 充 を 行 い 共 和 党 の 小 さな 政 府 主 義 者 の 大 反 発 を 買 う 反 発 した 小 さな 政 府 主 義 者 は ティーパーティー( 茶 会 派 ) と 呼 ばれた 草 の 根 運 動 となり 共 和 党 はそれを 吸 収 ティーパーティーは 共 和 党 の 中 道 派 を 予 備 選 で 攻 撃 勝 利 し 多 くの 中 道 派 の 議 席 を 奪 い 米 国 政 治 の 二 極 化 を 進 めた 2008 年 の 大 統 領 選 挙 では イラク 開 戦 をそれに 続 く 米 国 の 重 い 軍 事 負 担 に 対 するブッシュ 政 権 の 不 満 を 受 けたオバマ 政 権 が 米 国 の 選 択 であり 希 望 であった オバマ 政 権 は イラク アフガニスタンからの 軍 の 撤 退 を 着 実 に 進 め リビア シリア ウクライナなどの 内 戦 状 況 に 極 力 自 国 の 軍 隊 を 関 与 させないように 軍 の 対 外 関 与 を 最 小 化 した ( 背 後 からの 指 導 lead from behind) イランのような ならず 者 国 家 とも 条 件 をつけずに 話 し 合 う オバマドクトリン こ れはブッシュ 外 交 の 単 独 行 動 主 義 へのアンチテーゼ ただし 2015 年 の 世 界 をみると アフガニスタンとイラクでの 米 軍 の 負 担 を 軽 減 して 対 話 と 外 交 を 重 視 するオバマ 外 交 が 必 ずしも 米 国 の 求 心 力 を 回 復 させてはおらず むしろ 軍 事 力 行 使 へのハードルを 上 げたことで ロシア 中 国 イスラム 国 といった 世 界 秩 序 に 挑 戦 する 勢 力 を 勢 いづけたという 不 満 を 有 権 者 に 与 えた 3
世 界 秩 序 における 米 国 の 役 割 の 在 り 方 について 米 国 内 で 明 確 な 選 択 肢 やコンセンサス が 得 られない 状 況 を 作 り 出 している ブッシュの 軍 事 力 行 使 は too much だったが オバマの 軍 事 力 行 使 は too little 単 に too much と too little に 対 する 選 択 肢 はある 意 味 単 純 であり 選 挙 でも 分 かりや すく 示 せるが too much と too little のどちらも うまくいかなかった 米 国 の 選 択 肢 は どうしてもニュアンスのある 複 雑 な 選 択 とならざるを 得 ない しかしそれが 選 挙 という 明 確 な 選 択 肢 を 示 さなくてはならない 場 面 となると しかも 米 国 民 の 抱 く 分 極 化 した 不 満 を 考 えると かなり 困 難 な 作 業 とならざるを 得 ない 軍 事 的 関 与 のためには 大 規 模 な 予 算 も 必 要 だが 財 政 的 には 社 会 保 障 費 に 使 うのか( 民 主 党 左 派 ) ある 程 度 の 軍 事 費 に 回 すのか( 民 主 党 と 共 和 党 の 現 実 主 義 者 ) 減 税 をするの か( 共 和 党 ティーパーティー 派 )の 違 う 立 場 からの 綱 引 きで 答 えがでない 主 要 候 補 者 への 有 権 者 の 印 象 8 月 20~25 日 に 行 われた 世 論 調 査 の 精 度 では 定 評 のある 米 国 コネチカット 州 にあるクイ ニピアック 大 学 が これは 米 大 統 領 候 補 に 関 して 有 権 者 が 最 初 に 思 いつく 言 葉 を 調 査 民 主 党 のヒラリー クリントン 前 国 務 長 官 1. 嘘 つき (liar)2. 不 正 直 (dishonest) 3. 信 頼 できない (untrustworthy) 共 和 党 のドナルド トランプ 1. 傲 慢 (arrogant) 2. 大 口 の 自 信 家 (blowhard) 3. ばか (idiot) 共 和 党 のジェブ ブッシュ 元 フロリダ 州 知 事 ブッシュ を 挙 げた 人 が 圧 倒 的 で 個 人 の 資 質 よりも 父 と 兄 の 大 統 領 を 擁 する ブッシュ 家 のイメージが 先 行 している トランプは 誹 謗 中 傷 を 繰 り 返 す 事 で 支 持 率 を 上 昇 させているが 有 権 者 の 既 存 の 候 補 者 に 対 する 信 頼 の 欠 如 や 興 味 の 低 下 が 反 映 されている ヒラリーは 嘘 つき で ブッシュは ただのブッシュ 家 の 人 間 と 思 われているため そもそも 現 時 点 で 共 和 党 候 補 者 の 支 持 率 トップの 二 人 がプロの 政 治 家 ではない(もう 一 人 は 結 合 双 生 児 の 分 離 手 術 の 成 功 などで 有 名 な 元 外 科 医 のベン カーソン) という 状 況 の 背 景 にある トランプ 候 補 は 既 存 の 候 補 者 へのアンチテーゼではあるが 肯 定 的 にとらえる 要 素 は 少 な い トランプが 黒 人 が 嫌 いだとか 移 民 は 要 らないなど 抑 制 なしに 本 音 を 語 る 発 言 が 支 持 を 集 めるという 現 象 は かならずしも 米 国 を 前 向 きにしない 4
これまで 共 和 党 保 守 派 からの 期 待 は 中 道 派 のジェブ ブッシュではなく ティーパー ティーの 支 持 を 受 けてきたスコット ウォーカー ウィスコンシン 州 知 事 マルコ ルビ オ 上 院 議 員 ランド ポール 上 院 議 員 たちだった しかし ウォーカーとポールが トラ ンプ 人 気 のあおりを 受 けて 支 持 を 減 らして 失 速 ルビオも 苦 戦 している 9 月 21 日 にウォーカー 氏 はトランプ 氏 に 対 抗 する 勢 力 結 集 のため 保 守 の 選 択 肢 を 示 せる 候 補 者 に 絞 る 必 要 があると 述 べ 予 備 選 からの 撤 退 を 発 表 し 他 候 補 にも 撤 退 を 要 請 保 守 派 のほうがトランプのあおりを 食 らっている 政 策 面 ではトランプの 主 張 は 矛 盾 だらけであり 外 交 政 策 経 済 政 策 などに 深 く 言 及 して おらず また 政 策 についての 発 言 では 具 体 的 がなく 一 貫 性 もない トランプの 政 策 的 な 立 ち 位 置 は 分 かりにくく 外 交 的 議 論 も 時 代 遅 れというのが 冷 徹 な 見 方 これまでは 目 立 つ 視 聴 率 が 取 れるなどからメディアがトランプに 注 目 していたメディ アが 今 後 選 挙 戦 が 本 格 化 するにつれ メディアも 注 目 しなくなり トランプ 現 象 は 衰 退 する 可 能 性 は 十 分 ある そうなると トランプ 現 象 により 共 和 党 候 補 の 受 けたダメージは 大 きい といことにな るかもしれない 民 主 党 はヒラリー クリントンが 圧 倒 的 な 有 力 候 補 で よほどのスキャンダルや 健 康 問 題 がない 限 り 彼 女 が 民 主 党 の 候 補 者 として 残 る 可 能 性 は 依 然 として 高 い ビル クリントン 大 統 領 が 2012 年 のオバマ 再 選 に 貢 献 したことで 民 主 党 内 のヒラリー 支 持 は 固 い クリントン 候 補 には 関 連 団 体 クリントン 財 団 が 長 官 在 任 中 に 外 国 から 献 金 を 受 け 取 っていた 問 題 国 務 長 官 時 代 に 私 用 の Email を 使 っていたこと リビアのベンガジで 米 国 大 使 らがテロで 殺 害 された 事 件 で 情 報 を 正 しく 扱 かったのか?という 点 で 共 和 党 側 が 執 拗 に 追 求 現 在 下 院 議 長 候 補 選 びが 難 航 して 最 後 には 2012 年 大 統 領 選 挙 の 共 和 党 副 大 統 領 候 補 だ ったポール ライアン 議 員 に 落 ち 着 いたが その 一 因 に 最 有 力 候 補 だったケビン マッカ ーシー 下 院 院 内 総 務 の 以 下 のような 舌 禍 事 件 があった だれもヒラリークリントンには 勝 てないと 思 ってただろう?しかし 我 々はベンガジに ついての 特 別 委 員 会 を 組 織 した 出 席 者 限 定 の 特 別 委 員 会 だ 彼 女 の 支 持 率 はいくつだ? 支 持 率 は 落 ちている なぜかって? 彼 女 が 信 頼 できないからだ 我 々が 委 員 会 を 立 ち 上 げ なければ だれも(ベンガジでのヒラリーの 責 任 について) 知 らされないままだった 5
外 交 政 策 におけるオバマケア としての イラン 核 合 意 の 撤 廃 も 争 点 分 極 化 の 一 端 を 示 す 政 策 課 題 が 外 交 政 策 におけるオバマケア といわれているオバマ 政 権 の 行 ったイランとの 包 括 的 核 合 意 最 右 翼 は オバマケアに 対 する 強 い 反 対 者 でもあるテッド クルーズ 上 院 議 員 ドナルド トランプ 候 補 もクルーズと 共 闘 現 状 批 判 派 の 共 和 党 支 持 勢 力 を 捉 える 魅 力 がある クルーズ 上 院 議 員 オバマ 大 統 領 がこのままイランとの 核 合 意 を 進 めていけば イランが 核 兵 器 を 持 つものを 止 めるものは 何 もなくなる ジェブ ブッシュ 候 補 もイラン 合 意 には 批 判 的 だが 実 際 には 大 統 領 になってすぐに 国 際 合 意 を 一 方 的 に 取 り 消 すことは 現 実 的 ではないというようなニュアンスのある 発 言 も しているし トランプはそのような 発 言 もしている 共 和 党 大 統 領 候 補 の 第 二 回 のディベートで ジョン ケーシック オハイオ 州 知 事 が 今 回 のイラン 合 意 についてのクルーズ 氏 の 政 策 は 経 験 不 足 を 示 すものと 指 摘 自 分 は 必 ず しもオバマ 政 権 のイラン 合 意 を 支 持 するものではないが 一 方 で 現 在 の 合 意 の 履 行 を 邪 魔 はせずに イランが 合 意 を 守 らなかったときに すかさず 制 裁 を 強 化 すればいい ケーシック 氏 が 一 般 にはそれほど 人 気 はでていないにもかかわらず ワシントン DC の 専 門 家 には 意 外 に 待 望 論 がある オバマ 政 権 の 国 務 長 官 として イランとの 合 意 を 進 めてきたヒラリー クリントン 候 補 は 現 在 の 合 意 を 支 持 している ただし オバマ 大 統 領 との 違 いを 明 確 にするために もし イランが 核 兵 器 を 獲 得 するような 状 況 になれば 軍 事 オプションをとることを 躊 躇 しない と 明 言 このような 覚 悟 なしに 現 在 の 核 合 意 を 批 判 するクルーズやトランプのほうが ナイーブ で 現 実 性 を 欠 いた 議 論 というのが 現 実 主 義 者 の 見 方 ヒラリー クリントンの 意 見 は あきらかに イスラエルの 影 響 が 強 いユダヤ 系 の 支 持 を 意 識 したものでもあり その 点 で 労 働 組 合 を 意 識 した TPP 合 意 反 対 とは 同 列 のものとも いえる この 点 で イラン 核 合 意 を 米 国 が 中 東 で 終 わりのないもう 一 つの 戦 争 に 引 き 込 まれる ことを 避 けるための 外 交 的 勝 利 と 手 放 しで 礼 賛 する 民 主 党 二 番 手 のバーニー サンダー ス 上 院 議 員 も クルーズ 達 とは 逆 の 方 向 に ナイーブでポピュリスティックな 候 補 経 済 内 政 で 浮 上 してくる 二 極 化 された 課 題 (1) オバマケアへの 審 判 と 税 と 社 会 保 障 6
Real Clear Politics 集 計 医 療 保 険 法 への 賛 否 (7/9-8/13) 賛 成 40.2% 反 対 48.4% オバマ 大 統 領 はそうはならないといっているが 数 百 万 人 が 既 存 の 医 療 保 険 を 失 うこと になれば 批 判 が 高 まり 共 和 党 候 補 からの 反 発 の 可 能 性 はある 共 和 党 候 補 はティーパーティーに 連 なる 保 守 派 ほど 減 税 策 を 訴 え 社 会 保 障 費 の 削 減 つまりオバマケアへの 反 対 を 主 張 民 主 党 のリベラル 派 はオバマケアを 擁 護 し 財 源 としては 減 税 でなく 軍 事 費 削 減 を 訴 え る (2) 減 速 気 味 の 経 済 対 策 は 大 きな 課 題 景 気 刺 激 策 も 民 主 党 は 財 政 出 動 共 和 党 は 減 税 でと 基 本 的 な 手 段 で 歩 み 寄 りはない (3) キーストン パイプラインの 許 可 : 環 境 保 護 と 経 済 エネルギー 重 視 の 対 立 ヒラリークリントンをはじめとする 民 主 党 候 補 は 環 境 破 壊 の 恐 れのあるキーストン パ イプラインに 反 対 共 和 党 候 補 は 賛 成 (4) 移 民 政 策 での 大 きな 違 い パリ 同 時 多 発 テロ 後 は 難 民 も 対 象 に 共 和 党 は 全 般 的 に 中 南 米 からの 移 民 に 厳 しい 民 主 党 は 多 くの 不 法 移 民 に 米 国 の 市 民 権 を 獲 得 する 道 を 与 える 包 括 移 民 法 を 提 出 したが 共 和 党 はこれに 反 対 オバマ 大 統 領 は 包 括 移 民 法 は 共 和 党 の 強 い 反 対 で 実 現 しないことが 明 らかなため 大 統 領 令 によって 改 革 を 行 っており 共 和 党 は 大 きく 反 発 している ヒスパニック 層 は 基 本 的 に 民 主 党 支 持 が 多 い パリ 同 時 多 発 テロ 以 降 は オバマ 大 統 領 が 継 続 する 難 民 受 け 入 れに 対 しても 不 安 と 反 発 が 強 くなろう (5) 同 性 婚 を 認 めるかどうか 保 守 派 が 反 発 する 社 会 的 な 価 値 感 トランプやカーソンをはじめ クルーズ ルビオなどの 保 守 派 の 支 持 を 期 待 する 層 は オバマ 政 権 下 で 急 速 に 進 むLGBT(レズビアン ゲイ バイセクシャル トランスジェ ンダー)の 権 利 拡 大 などの 社 会 の 変 化 に 対 して 危 機 意 識 を 持 っている (6) 乱 射 事 件 が 相 次 ぐ 中 で 要 請 はあるが 共 和 党 の 銃 規 制 の 反 対 は 根 強 い リベラル 側 は 銃 規 制 を 強 めたいが 全 米 ライフル 協 会 の 影 響 が 強 い 共 和 党 を 中 心 に 反 対 が 根 強 い カーソンは 銃 規 制 がないからヒットラーが 台 頭 した という 迷 発 言 (7) 自 由 貿 易 政 策 なぜヒラリーはTPPに 反 対 なのか? 組 合 AFL-CIOの 支 持 する 民 主 党 議 員 への 強 力 な 圧 力 政 治 資 金 をすべて 止 めて TPA TPPに 投 票 した 議 員 には 資 金 を 与 えない 7
<Real Clear Politics 集 計 の 主 要 世 論 調 査 の 平 均 による 民 主 党 次 期 大 統 領 候 補 の 支 持 率 > RCP による 平 均 (4/16) 同 (10/24-11/3) クリントン 65.8% クリントン 54.8% バイデン 12.3% サンダース 32.5% オマーリー 2.3% オマーリー 1.8% <Real Clear Politics 集 計 の 主 要 世 論 調 査 の 平 均 による 共 和 党 次 期 大 統 領 候 補 の 支 持 率 > RCP による 平 均 (4/16-5/12) 同 (10/29-11/4) ブッシュ 15.4% トランプ 24.3% ウォーカー 13.2% カーソン 23.3% ルビオ 13.2% ルビオ 12.3% ランド ポール 9.2% クルーズ 10.7% ハッカビー 8.6% ブッシュ 5.3% クルーズ 8.6% ポール 3.7% カーソン 7.8% ケーシック 3.7% クリスティ 5.4% フィオリーナ 3.0% ハッカビー 2.7% クリスティ 2.3% サントラム 0.7% ジンダル 0.3% パタキ 0.3% グラム 0.0% 民 主 党 と 共 和 党 どちらが 日 本 にとっていいのか? 2009 年 のオバマ 政 権 発 足 当 時 は 世 界 の 主 要 な 課 題 を 米 中 で 解 決 するというような 米 中 G2 論 のような 楽 観 的 で 協 調 的 な 対 中 姿 勢 をとっていた しかし 2010 年 に 顕 在 化 した 中 国 の 国 際 法 やルールを 無 視 した 拡 張 的 な 行 動 に 危 機 感 を 持 ち 7 月 のクリントン 国 務 長 官 の ASEAN 地 域 フォーラムでの 中 国 をけん 制 する 演 説 を 契 機 に 米 軍 のアジアでのプレゼンス 重 視 を 含 むアジア 回 帰 (リバランス) 政 策 を 打 ち 出 した 2014 年 11 月 の 北 京 での APEC では 米 主 導 の 経 済 秩 序 に 対 抗 する 中 国 の 動 きが 目 立 っ た 習 近 平 主 席 は 一 帯 一 路 という 経 済 圏 構 想 を 打 ち 出 した これは 中 国 西 部 から 中 央 アジアを 経 由 してヨーロッパにつながる シルクロード 経 済 ベ 8
ルト ( 一 帯 )と 中 国 沿 岸 部 から 東 南 アジア インド アラビア 半 島 の 沿 岸 部 アフリカ 東 岸 を 結 ぶ 21 世 紀 海 上 シルクロード ( 一 路 )の 二 つの 地 域 で インフラ 整 備 貿 易 促 進 資 金 の 往 来 を 促 進 させるもの この 一 環 として 日 米 主 導 のアジア 開 発 銀 行 に 対 抗 する AIIB の 創 設 や 地 域 のインフラ 整 備 を 支 援 する 独 自 の シルクロード 基 金 の 創 設 を 提 案 中 国 が 他 の 沿 岸 国 が 領 有 を 主 張 している 南 シナ 海 のスプラトリー( 南 沙 ) 諸 島 のファ イアリー クロス 礁 など 複 数 の 岩 礁 で 埋 め 立 てを 行 い 滑 走 路 などを 建 設 していることに 対 して 5 月 16 日 ケリー 国 務 長 官 が 王 穀 外 相 に 自 制 を 促 した 王 外 相 は 主 権 と 領 土 を 守 る と 反 論 して 平 行 線 米 中 の 対 立 が 鮮 明 になった 5 月 20 日 CNN テレビの 取 材 班 を 乗 せた 米 軍 の P8 対 潜 哨 戒 機 が ファイアリー クロ ス 礁 などの 人 工 島 の 周 辺 空 域 を 飛 行 11 月 には 駆 逐 艦 をスービ 礁 の 12 カイリ 以 内 を 航 行 ( 航 行 の 自 由 作 戦 )これを 定 例 化 すると 発 表 B52 爆 撃 機 も 飛 行 米 国 では アジア 太 平 洋 地 域 の 安 全 保 障 及 び 国 際 社 会 のリベラルな 秩 序 維 持 について 日 本 オーストラリア インドの 役 割 への 期 待 が 高 まっている 中 国 への 警 戒 感 から 日 米 同 盟 重 視 は 共 和 党 民 主 党 問 わず 超 党 派 からも 期 待 され ている 選 挙 が 終 われば 民 主 党 政 権 でも 現 実 的 な 観 点 から 自 由 貿 易 政 策 特 にTPPのよう な 米 国 経 済 に 利 益 となる 政 策 を 推 進 することになるだろう 以 上 9