57 外 航 船 員 育 成 のための 練 習 船 における 英 語 教 育 の 取 組 み 小 林 一 平 * 山 本 皐 央 ** 村 上 知 弘 *** Approach of English education aboard training ship for international mariners Ippei Kobayashi*,Takahisa Yamamoto** and Tomohiro Murakami*** Abstract We made an English version of an engineer s checklist for departing and entering port aboard a training ship. We surveyed student s understanding of professional English and maritime training to establish its understandability. We found the checklist improved understanding of training. However, using an English version reduced work efficiency. Overall, skill as international mariners definitely appeared to rise by practicing English aboard the training ship. 1.はじめに 近 年 グローバル 化 が 進 んでおり 多 種 多 様 な 職 業 で 英 語 の 必 要 性 が 増 してきている 海 運 業 界 においては 近 年 のグローバル 化 が 進 む 以 前 から 海 外 での 仕 事 は 通 常 であり 英 語 の 必 要 性 が 求 められていた 海 運 業 界 では 乗 組 員 の 大 半 をフィリピン 人 等 の 外 国 人 船 員 が 占 め 日 本 人 船 員 は 外 国 人 船 員 と 混 乗 するケースがほ とんどである 仕 事 上 の 会 話 はもちろんのこと 食 事 中 や 娯 楽 中 といった 普 段 のコミュニケーションも 全 て 英 語 でやりとりしなければならなく 英 語 は 外 航 船 舶 に 乗 船 するにあたり 重 要 な 知 識 の 一 つであることが 窺 える 本 校 では 外 航 を 希 望 する 学 生 が 多 いにも 関 わ らず 学 生 の 英 語 力 が 著 しく 低 いのが 実 状 である 著 者 らが 勤 務 する 弓 削 商 船 高 等 専 門 学 校 は 主 に 外 航 船 員 の 育 成 を 目 的 としており 単 に 船 舶 に 関 する 知 識 経 験 を 積 むだけではなく 外 航 船 員 になるための 英 語 力 を 向 上 させる 責 務 がある 英 語 授 業 の 他 に 本 校 が 所 有 する 練 習 船 弓 削 丸 では1 年 次 から5 年 次 までの 在 学 中 年 に 数 回 行 われる 航 海 実 習 でも 英 語 を 使 用 した 実 習 を 行 っている その 実 習 ではこれまで 人 員 報 告 等 の 簡 単 な 号 令 のみ 英 語 で 行 っており 出 入 港 時 の 機 関 室 と 機 関 制 御 室 間 船 橋 と 機 関 制 御 室 間 といった 各 部 署 間 で のマイクや 電 話 のやりとりは 全 て 日 本 語 で 行 っている そのため 英 語 による 会 話 はもちろんのこと 機 器 名 称 や 操 作 といった 簡 単 な 専 門 用 語 が 分 からない 学 生 も 多 かった また 平 成 24 年 より 海 事 人 材 育 成 プロジェク ト1)が 商 船 学 科 を 有 する 5 校 で 行 われており 英 語 教 育 にも 力 を 入 れている 本 校 では 授 業 単 位 以 外 に TOEIC 対 策 や 放 課 後 のネイティブティーチャーによ る 英 会 話 教 室 等 も 行 われているが 参 加 学 生 はそれほど 多 くはない 学 生 にとってより 多 くに 英 語 慣 れさせる ことが 大 切 である そのような 観 点 から 前 回 の 研 究 2)で 行 ったヒュ ーマンエラーの 防 止 に 併 せ 外 航 船 舶 乗 船 時 に 即 戦 力 となる 人 材 の 育 成 になるのではないかと 機 関 系 出 入 港 作 業 の 英 語 版 チェックリストを 新 たに 作 成 した また チェックリストの 使 用 前 後 で 学 生 にアンケー トをとり 実 習 前 後 での 英 語 及 び 実 習 に 対 する 理 解 度 の 変 化 やチェックリストの 運 用 効 率 について 考 察 した 2.チェックリスト 及 びアンケート 2.1 チェックリスト 前 節 で 述 べたように ヒューマンエラー 防 止 と 外 航 船 舶 乗 船 時 に 即 戦 力 となる 人 材 の 育 成 を 目 的 として * 弓 削 丸 平 成 27 年 11 月 30 日 受 理 ** 商 船 学 科 本 科 生 *** 商 船 学 科
58 弓 削 商 船 高 等 専 門 学 校 紀 要 第 38 号 ( 平 成 28 年 ) 実 習 や 英 語 が 苦 手 な 学 生 でも 簡 単 に 扱 えるような 英 語 版 チェックリストを 作 成 した 実 際 の 外 航 現 場 作 業 で は 1 歩 間 違 えれば 大 事 故 と 隣 り 合 わせとなる このよ うな 重 要 な 作 業 においては 周 囲 への 作 業 開 始 とその 注 意 喚 起 のための 指 示 や 復 唱 のための 英 語 による 会 話 能 力 が 必 要 となってくる 前 回 の 研 究 で 作 成 した 日 本 語 版 のチェックリスト2)では 機 関 室 作 業 と 制 御 室 作 業 との 間 にセンターラインを 引 き 機 関 室 である 作 業 を している 時 制 御 室 ではどのような 作 業 をしているの か 理 解 出 来 るよう 時 系 列 で 表 記 した それを 実 習 で 使 用 した 結 果 作 業 がスムーズに 進 んだことや 作 業 確 認 が 出 来 ていた 等 の 成 果 が 得 られた そこで まず 前 回 のチェックリストをそのまま 英 語 に 翻 訳 した しか し これでは 作 業 の 手 順 が 分 かったとしてもそれをど のように 英 語 で 報 告 すれば 良 いのか 分 からない 学 生 が 出 てくると 考 えた そこで 図 1 及 び 図 2 に 示 すよう に 作 業 手 順 と 報 告 の 際 の 口 頭 文 句 を 左 右 で 分 けること により 作 業 と 報 告 を 両 立 出 来 るようにした しかし いきなり 英 語 での 実 習 を 始 めると 意 味 が 全 く 分 からな い 学 生 が 大 半 になることが 想 定 され 今 回 作 成 した 英 語 版 チェックリストをベースに 図 3 及 び 図 4 に 示 すよ うな 日 本 語 表 記 のチェックリストも 別 に 作 成 した こ の 日 本 語 表 記 のチェックリストは あくまで 英 語 版 チ ェックリストの 意 味 を 理 解 するものであり 実 際 の 練 習 船 実 習 では 英 語 版 をメインに 使 用 しアンケートや 学 生 及 び 乗 組 員 からのアドバイスをもとに より 簡 単 で 見 易 いものへと 改 善 した Procedure 図 1 機 関 室 出 港 作 業 ( 表 ) Date Name Report Check C.F.W. quantity(expansion TK) Water quantity of the Exp'TK is L. Check M/E Crankcase L.O. quantity M/E L.O. S/B P'P, Start We'll check the L.O. quantity of the M/E Crankcase. We'll start the M/E L.O. S/B P'P. M/E L.O. Heater, Start We'll start the M/E L.O. Heater. M/E C.F.W. S/B P'P, Start We'll start the M/E C.F.W. S/B P'P. M/e C.F.W. Heater, Start We'll start the M/E C.F.W. Heater. Check C.F.W. quantity (Expansion TK) Water quantity of the Exp'TK is L. Check M/E Crankcase L.O. quantity We'll check the L.O. quantity of the M/E Crankcase. Open Each valves F.O. SERVICE TK inlet valve, Open D/G F.O. Flow meter Inlet valve, Open M/E F.O. Flow meter Inlet valve, Open S.W. Port or St'b suction valve, Open M/E Overboard discharge valve, Open NO.1 and NO.2 D/G Overboard discharge valve, Open Stern tube S.W. inlet valve, Open We'll open the intlet valve of the F.O. SERVICE TK. We'll open the Inlet valve of the D/G F.O. Flow meter. We'll open the Inlet valve of the M/E F.O. Flow meter. We'll open the S.W. Port or St'b suction valve. We'll open the Overboard discharge valve of the M/E. We'll open the NO.1 and NO.2 D/G Overboard discharge valves. We'll open the inlet valve of Stern tube S.W. Turning Engage the Turning Gear We'll engage the Turning Gear. Turning Motor power ON We'll turn on the Turning motor. Turning Start (Check the current value) We'll start the turning. The current is A. Start Main Air Compressor YUGEMARU Departure Procedure (E/R) Port to Main Air Reservoir drain discharge Main stop valve, Open Main Control Air valve, Open Charge valve, Open Main Air Compressor breaker, ON Start NO.1, NO.2 D/G Check L.O. SUMP TK quantity Check Starting Air Motor L.O. quantity Check C.F.W. TK quantity Priming D/G, Start Warm-up Procedure YUGEMARU Departure Procedure We'll discharge blow off the drain of the NO.1 or NO.2 Main air reservoir. We'll open the Main stop valve. We'll open the Main Control Air valve. We'll open the Charge valve. We'll start the Main Air Compressor. We'll check the L.O. quantity of the D/G SUMP TK. We'll check the Starting Air Motor. We'll check the C.F.W. TK quantity. We'll carry out L.O. Priming for the D/G. We'll start the D/G. CPP Oil P'P, Start R/G L.O. P'P, Start M/E S/B F.O. SUPPLY P'P, Start End Warm-up M/E L.O. Heater, Stop M/E C.F.W. Heater, Stop M/E Turning, Stop Turning Motor power, OFF Disengage the Turning Gear Air running Starting Air Inlet valve, Open Request to C/R (Starting Air Intermediate valve, Open ) Drain valve, Close Check the F.O. handle STOP position Air running Check the abnormality Start M/E Indicator valve, CLOSE F.O. Handle, RUN Report to C/R Started the M/E(550rpm), Check the abnormality M/E S/B F.O. SUPPLY P'P, Stop M/E L.O. S/B P'P, Stop M/E C.F.W. S/B P'P, Stop R/G L.O. P'P, Stop Engage Clutch C.S.W. P'P Start (Cheak the discharge pressure) After increase of M/E revotion(~750rpm), Check for abnormality We'll start the CPP Oil P'P. We'll start the R/G L.O. P'P. We'll start the M/E S/B F.O. SUPPLY P'P. We'll stop the M/E L.O. Heater. We'll stop the M/E C.F.W. Heater. We'll stop turning. We'll turn off the Turning motor. We'll disengage the Turning Gear. We'll open the Starting Air Inlet valve. Please open the Starting Air Intermediate valve. We'll close the Drain valve. We'll check the F.O. handle STOP position. We'll carry out air running for the M/E. Everything is in order, Sir. Plase close all indicator valves on the M/E. We'll chang position of F.O. control handle STOP to RUN. Enginroom all's well. Everything is in order, Sir. We'll stop the M/E S/B F.O. SUPPLY P'P. We'll stop the M/E L.O. S/B P'P. We'll stop the M/E C.F.W. S/B P'P. We'll stop the R/G L.O. P'P. We'll start the C.S.W. P'P. Everything is in order, Sir. 図 2 機 関 室 出 港 作 業 ( 裏 )
外 航 船 員 育 成 のための 練 習 船 における 英 語 教 育 の 取 組 み 59 寄 港 地 ~ 弓 削 丸 出 港 手 順 ( 機 関 室 ) 日 付 記 入 者 暖 機 手 順 手 順 報 告 C.F.W. 残 量 確 認 ( 膨 張 タンク) 膨 張 タンクの 水 量 は Lです M/Eサンプタンク L.O. 残 量 確 認 主 機 サンプタンクの 潤 滑 油 量 を 計 ります M/E L.O. S/B P'P 始 動 M/E L.O.スタンバイポンプを 始 動 します M/E L.O. Heater 始 動 M/E L.O.ヒーターを 始 動 します M/E C.F.W. S/B P'P 始 動 M/E 冷 却 清 水 スタンバイポンプを 始 動 します M/E C.F.W. Heater 始 動 M/E 冷 却 清 水 ヒーターを 始 動 します 出 港 手 順 C.F.W. 残 量 確 認 ( 膨 張 タンク) 膨 張 タンクの 水 量 は Lです M/Eサンプタンク L.O. 残 量 確 認 主 機 サンプタンクの 潤 滑 油 量 を 計 ります 諸 弁 開 放 F.O. サービスタンク 元 弁 開 放 F.O.サービスタンクの 元 弁 を 開 放 します D/G F.O. 流 量 計 入 口 弁 開 放 発 電 機 の 燃 料 流 量 計 入 口 弁 を 開 放 します M/E F.O. 流 量 計 入 口 弁 開 放 主 機 の 燃 料 流 量 計 入 口 弁 を 開 放 します 左 舷 または 右 舷 船 底 弁 開 放 左 舷 または 右 舷 の 船 底 弁 を 開 放 します M/E 船 外 弁 開 放 主 機 の 船 外 弁 を 開 放 します NO.1 NO.2 D/G. 船 外 弁 開 放 一 号 二 号 発 電 機 の 船 外 弁 を 開 放 します 船 尾 管 海 水 入 口 弁 開 放 船 尾 管 海 水 入 口 弁 を 開 放 します 2.2 アンケート 実 習 前 後 で 学 生 の 出 入 港 作 業 に 対 する 理 解 度 の 変 化 及 び 日 本 語 版 と 英 語 版 チェックリストでどの 程 度 理 解 度 に 差 があるか 調 査 を 行 った 出 入 港 作 業 チェックリ スト 内 の 各 手 順 の 左 枠 空 白 部 分 に 図 5 に 示 すように 表 記 し 解 答 者 の 答 弁 を 図 った 読 めない 読 めるけど 作 業 はできない できる の 3 項 目 を 記 入 し 英 語 が 読 めないため 作 業 が 出 来 ないのか 英 語 は 読 めるが 作 業 内 容 を 理 解 していないため 出 来 ないのか 英 語 が 読 めて 作 業 内 容 も 理 解 しているため 出 来 るのかを 調 査 し た ターニング ターニングギア 嵌 合 ターニングモーター 電 源 ON ターニング 開 始 ( 電 流 値 確 認 ) 主 空 気 圧 縮 機 始 動 主 空 気 層 ドレン 排 除 主 塞 止 弁 開 放 制 御 空 気 元 弁 開 放 充 気 弁 開 放 主 空 気 圧 縮 機 ブレーカー ON ターニングギアを 嵌 合 します ターニングモーターの 電 源 をONにします ターニングを 開 始 します 電 流 値 は Aです 主 空 気 層 ドレンを 排 除 します 主 塞 止 弁 を 開 放 します 制 御 空 気 元 弁 を 開 放 します 充 気 弁 を 開 放 します 主 空 気 圧 縮 機 のブレーカーをONします 図 5 アンケート 記 入 方 法 NO.1,NO.2 D/G 始 動 L.O.サンプタンク 油 流 確 認 図 3 日 本 語 版 機 関 室 出 港 作 業 ( 表 ) 始 動 用 エアモーター リブリケータ 油 流 確 認 清 水 タンク 水 量 確 認 プライミング D/G 始 動 NO.1,NO.2 D/G 運 転 状 態 確 認 L.O.サンプタンクの 油 量 を 確 認 します 始 動 用 エアモーターリブリケータの 油 量 を 確 認 します 清 水 タンクの 水 量 を 確 認 します プライミングをします 発 電 機 を 始 動 します ( 見 回 りをしてから 報 告 ) 異 常 ありません また 上 記 アンケートとは 別 に 英 語 版 チェックリス トを 用 いた 際 の 出 入 港 作 業 の 出 来 具 合 日 本 語 版 と 比 較 した 場 合 の 作 業 効 率 チェックリスト 内 の 各 略 語 や 操 作 機 器 名 称 の 理 解 度 チェックリストの 必 要 性 チ ェックリストについての 意 見 等 を 自 己 評 価 形 式 で 図 6 に 示 すアンケート 用 紙 により 調 査 した CPP Oil P'P 始 動 R/G L.O. S/B P'P 始 動 M/E F.O. SUPPLY P'P 始 動 ターニング 終 了 L.O. Heater 停 止 C.F.W. Heater 停 止 M/E ターニング 停 止 ターニングモーター 電 源 OFF ターニングギア 離 脱 エアランニング 始 動 空 気 入 口 弁 開 放 制 御 室 に 始 動 空 気 中 間 弁 を 開 放 要 請 ドレン 弁 閉 鎖 F.O. ハンドル STOP 位 置 確 認 エアランニング 異 常 がないか 確 認 ( 異 物 水 等 混 入 ) M/E 始 動 インジケータバルブ 閉 鎖 F.O.ハンドル RUNの 位 置 にする 制 御 室 に 報 告 M/E 始 動 後 (550rpm) 運 転 状 態 確 認 M/E F.O. S/B P'P 停 止 M/E L.O. S/B P'P 停 止 M/E C.F.W. S/B P'P 停 止 R/G L.O. S/B P'P 停 止 クラッチ 嵌 合 海 水 ポンプ 始 動 増 速 後 (~750rpm) 巡 回 ( 機 器 からの 異 音 振 動 漏 れ 等 がないか) CPPのオイルポンプを 始 動 します 減 速 機 L.O.スタンバイポンプを 始 動 始 動 します M/E F.O.サプライポンプを 始 動 します L.O.ヒーターを 停 止 します 冷 却 清 水 ヒーターを 停 止 します 主 機 のターニングを 停 止 します ターニングモーターの 電 源 をOFFにします ターニングギアを 離 脱 します 始 動 空 気 入 口 弁 を 開 放 します 制 御 室 始 動 空 気 中 間 弁 を 開 放 して 下 さい ドレン 弁 を 閉 鎖 します F.O. ハンドルはSTOPの 位 置 にあります エアランニングをします 異 常 ありません インジケータバルブを 閉 鎖 します F.O.ハンドルをRUNの 位 置 にします 主 機 始 動 準 備 完 了 しました ( 見 回 りをしてから 報 告 ) 異 常 ありません M/E 燃 料 スタンバイポンプを 停 止 します M/E L.O.スタンバイポンプを 停 止 します M/E 冷 却 清 水 スタンバイポンプを 停 止 します 減 速 機 L.O.スタンバイポンプを 停 止 します (クラッチ 嵌 合 する 前 に) 海 水 ポンプを 始 動 します ( 巡 回 をしてから 報 告 ) 異 常 ありません 図 4 日 本 語 版 機 関 室 出 港 作 業 ( 裏 ) 図 6 アンケート 用 紙
60 弓 削 商 船 高 等 専 門 学 校 紀 要 第 38 号 ( 平 成 28 年 ) 2.3 調 査 対 象 人 数 調 査 対 象 人 数 は 商 船 学 科 4 年 機 関 コースが 13 名 商 船 学 科 5 年 機 関 コースが 17 名 となっており 両 アンケ ートの 回 答 率 は 100%である 3. 結 果 及 び 考 察 次 に 英 語 版 チェックリストを 使 用 した 際 の 出 入 港 作 業 の 出 来 具 合 を 図 9 に 示 す 各 学 年 共 に できた 普 通 という 回 答 が 多 数 を 占 め できなかった という 回 答 はごく 僅 かであった 練 習 船 実 習 は 4 年 生 では 2 泊 3 日 5 年 生 では 3 泊 4 日 で 行 うため 実 習 中 に 英 語 に 慣 れたのではないかと 考 えられる 図 7 に 出 港 時 の 英 語 版 チェックリストに 対 する 各 学 年 の 実 習 前 後 での 理 解 度 を 示 す 本 校 では 1 年 次 から 5 年 次 までの 間 年 に2 回 程 度 航 海 実 習 を 行 っている 1 年 生 から 3 年 生 までは 基 本 的 に 乗 組 員 の 指 示 のもと 実 習 を 行 い 4 年 次 から 学 生 主 体 の 実 習 となり 乗 組 員 は 緊 急 時 を 除 き 一 切 指 示 を 出 さないようにしている そのため 実 習 前 の 4 年 生 では 作 業 が 出 来 ると 回 答 した 学 生 は 30% 程 度 しかいなかった しかし 実 習 後 のア ンケートでは 作 業 が 出 来 ると 回 答 した 学 生 が 約 90%と なり 理 解 度 の 上 達 が 窺 える 一 方 5 年 生 では 4 年 次 の 経 験 もあり 実 習 前 のアンケートから 作 業 出 来 ると 回 答 した 学 生 が 80%を 占 めた 実 習 後 のアンケートで はさらに 上 達 し 100%に 近 い 値 となった 図 8 の 入 港 時 の 理 解 度 の 変 化 についても 同 様 のことが 窺 えた 図 9 英 語 版 による 作 業 の 状 況 また チェックリスト 内 の 使 用 している 略 語 や 操 作 機 器 名 称 の 理 解 度 については 図 10 に 示 す 略 語 や 操 作 機 器 名 称 においては 1 年 次 の 実 習 から 使 用 している ため 大 半 の 学 生 が わかる 普 通 と 回 答 した 図 7 英 語 版 に 対 する 理 解 度 の 変 化 ( 出 港 作 業 ) 図 10 略 語 操 作 機 器 名 称 の 理 解 度 図 8 英 語 版 に 対 する 理 解 度 の 変 化 ( 入 港 作 業 ) 英 語 版 チェックリストの 使 用 とそれに 伴 い 英 語 によ る 実 習 を 行 った 結 果 作 業 効 率 を 図 11 に 示 す 良 い 普 通 という 回 答 が 全 体 の 約 7 割 を 占 めているが 良 くない という 回 答 も 3 割 前 後 見 受 けられた こ れは 学 生 の 実 習 風 景 を 見 て 著 者 の 一 人 が 感 じた 事 であ るが 常 に 騒 音 が 発 生 している 機 関 室 内 において 英 語 でやり 取 りをするとなると 制 御 室 から 機 関 室 への 報
61 外 航 船 員 育 成 のための 練 習 船 における 英 語 教 育 の 取 組 み 告 は 日 本 語 に 比 べて 聞 き 取 りづらいものがある また 機 関 室 から 制 御 室 への 報 告 も 騒 音 が 邪 魔 で 発 音 良 く 喋 ろうとすると 逆 に 聞 き 取 りづらく 作 業 効 率 としては 悪 いように 感 じた しかしながら 実 際 の 外 航 船 舶 では フィリピン 人 インドネシア 人 インド 人 韓 国 人 及 びクロアチア 人 など 多 種 多 様 な 人 々が 実 際 に 英 語 を 使 用 し 作 業 が 成 り 立 っている 英 語 によるコミュニケ ーションは 経 験 の 積 み 重 ねが 重 要 だと 考 える 図 12 チェックリストの 必 要 性 図 13 に 示 すように 希 望 の 職 種 はほぼ 全 ての 学 生 が 海 上 職 を 希 望 した 近 年 海 運 業 界 において 外 航 のみ ならず 内 航 においても 人 手 不 足 に 悩 まされており 特 に 機 関 系 に 関 しては 非 常 に 深 刻 化 している そのため 機 関 系 の 募 集 が 増 加 し 海 上 職 に 就 き 易 いというのが 要 因 であると 思 われる 図 11 作 業 効 率 一 方 チェックリストの 必 要 性 の 有 無 は 図 12 に 示 す チェックリスト 本 来 の 目 的 であるバルブの 開 閉 機 器 の 発 停 忘 れ 等 によるヒューマンエラーの 防 止 また 海 難 事 故 発 生 後 の 証 拠 書 類 にもなるため 役 割 としては 非 常 に 重 要 になる さらに 作 業 手 順 が 分 からない 学 生 に とっては 良 い 教 材 となるため 以 下 のような 結 果 にな 図 13 希 望 職 種 ったのではないかと 考 える 5 年 生 で 不 要 と 回 答 した 学 生 の 意 見 は チェックリストを 持 ち 歩 いている 学 生 は 作 業 の 流 れは 分 かるが 手 が 塞 がってしまうため 実 また 海 上 職 希 望 と 答 えた 学 生 で 外 航 と 内 航 どちら 際 に 作 業 を 出 来 ず 効 率 が 悪 くなる とあった これは を 希 望 か 調 査 した 結 果 を 図 14 に 示 す 4 年 生 は 外 航 志 チェックリストを 持 ち 歩 きながらの 作 業 は 非 効 率 的 で 望 が 約 4 割 5 年 生 は 約 3 割 となり 外 航 志 望 の 方 が 少 あるが 上 記 で 述 べたようにヒューマンエラーの 防 止 ない 結 果 となった 高 学 年 になると 会 社 説 明 会 やイン や 海 難 事 故 発 生 後 の 証 拠 書 類 としては 非 常 に 重 要 とな ターンシップ 等 の 参 加 で 就 労 条 件 や 所 有 船 舶 所 有 隻 ってくることが 学 生 の 常 識 にはないことが 分 かる そ 数 採 用 条 件 等 を 調 べ 自 分 の 能 力 に 適 した 会 社 を 探 し のため 持 ち 歩 くのではなく 各 部 署 の 決 まった 箇 所 に 出 す 外 航 船 舶 では 英 語 能 力 の 有 無 はもちろんのこと チェックリストを 配 置 するなどすれば 手 が 塞 がらず 2 級 海 技 士 筆 記 試 験 合 格 等 の 内 航 の 採 用 条 件 にはない 作 業 に 参 加 できるのではないかと 考 える 厳 しい 条 件 も 加 わってくる 最 近 では 英 語 能 力 の 低 下 に 加 えて 海 技 士 取 得 者 も 少 なく 外 航 船 舶 に 乗 ろう とする 学 生 が 少 数 派 であるのが 実 状 である 外 航 船 員 の 育 成 を 目 的 とする 本 校 としては 英 語 力 の 向 上 に 加 え て 上 級 海 技 士 の 取 得 にも 力 を 入 れる 必 要 がある
62 弓 削 商 船 高 等 専 門 学 校 紀 要 第 38 号 ( 平 成 28 年 ) 高 等 専 門 学 校 37 号 P19 図 14 内 航 外 航 志 望 の 割 合 4.まとめ 外 航 船 員 育 成 のための 機 関 系 出 入 港 作 業 の 英 語 版 チ ェックリストを 作 成 した 更 に 実 習 前 後 のアンケート 調 査 により 以 下 の 事 が 判 明 した 実 習 前 後 を 比 較 すると 英 語 の 理 解 度 は 大 きく 向 上 し た しかし 英 語 を 聞 きなれていない 事 と 騒 音 問 題 が 重 なって 部 署 間 でのやりとりに 支 障 が 出 る 場 面 があっ た また チェックリストを 記 入 する 学 生 が 作 業 に 参 加 出 来 ない 場 面 もあった そのため チェックリスト は 持 ち 歩 かずどこか 決 まった 一 定 の 場 所 に 配 置 し 作 業 が 終 わればそこまで 行 ってチェックする また 英 語 による 実 習 を 行 うには 教 室 での 授 業 や 放 課 後 の 英 会 話 教 室 への 参 加 TOEIC を 受 験 するなどして 発 音 の 改 善 をする 必 要 がある そして 英 語 だけでなく 人 として のコミュニケーション 能 力 を 高 めておく 必 要 があると 考 える 希 望 の 職 種 に 関 しては ほぼ 全 員 が 海 上 職 希 望 と 答 えた また その 内 の 3~4 割 は 外 航 志 望 と 回 答 した 本 来 の 希 望 は 外 航 であるが 現 実 的 に 考 えると 少 なく なるというだけで 技 能 が 備 わればもっと 多 くの 学 生 が 希 望 するであろう 近 い 将 来 外 航 志 望 の 方 が 多 くなる よう そしてその 学 生 たちが 実 際 に 外 航 船 員 となれる よう これから 更 に 英 語 能 力 の 向 上 に 取 り 組 んでいく 必 要 がある また 本 校 学 生 が 外 航 を 諦 める 一 番 の 理 由 となっている 上 級 海 技 士 国 家 試 験 についても 試 験 対 策 資 料 を 作 成 配 布 する 等 しているが より 取 得 率 向 上 に 向 けた 方 法 を 考 えていく 必 要 がある 参 考 文 献 1) 海 事 分 野 における 高 専 産 業 界 連 携 による 人 材 育 成 システムの 開 発 ~ 平 成 26 年 度 報 告 3 年 間 の 活 動 をまとめて P8 2014 2) 小 林 ら: 練 習 船 実 習 における 機 関 系 出 入 港 作 チェ ックリストの 作 成 とその 運 用 について ; 弓 削 商 船