Uchida Report 42 原 油 1 バレル 100 ドルの 時 代 - 金 融 不 信 ドル 離 れ 政 情 不 安 Ⅰ. 金 融 帝 国 米 国 から 資 金 流 出 - 原 油 価 格 高 騰 の 引 き 金 1. 米 国 金 融 の 混 迷 経 済 減 速 信 用 収 縮 米 国 経 済 は 2007 年 第 3 四 半 期 の GDP は 前 年 比 年 率 3.9% 成 長 の 強 い 数 字 であった 住 宅 部 門 の 落 ち 込 みは GDP 成 長 率 約 1% それをカバーしたのが 輸 出 の 伸 び 0.9% 増 で 内 需 一 辺 倒 の 成 長 から 外 需 を 取 り 込 み 米 国 経 済 としてはバランスの 良 い 形 となっ た しかし この 状 況 は 今 後 住 宅 市 場 の 環 境 悪 化 住 宅 価 格 の 下 落 が 予 想 より 大 き くなるリスクを 抱 えており もう 一 つは 金 融 機 能 の 不 全 や 貸 し 渋 りが 厳 しさを 増 す ものとの 予 測 から 米 国 経 済 は 緩 やかに 減 速 して 行 くものと 見 られる 2008 年 後 半 には 改 善 に 向 かうと 見 られているのは 米 国 は 人 口 が 増 えつつあり 需 要 が 無 くなる 事 は 無 い ピーク 時 に 年 170 万 戸 あった 住 宅 着 工 件 数 が 9 月 は 119 万 3000 戸 で 1993 年 3 月 以 来 14 年 ぶりの 低 水 準 となった 新 築 住 宅 在 庫 率 は 通 常 約 4%であるが 現 在 は 倍 の 8%を 越 えた 50 万 戸 強 の 過 去 最 高 となっている 今 回 のサブプライムローン 問 題 に 対 して FRB バーナンキ 議 長 は 2007 年 11 月 8 日 米 国 議 会 の 証 言 で 高 度 な 技 術 を 身 につけている 筈 の 投 資 専 門 家 達 が 資 産 評 価 (due diligence)をせずに 格 付 けだけしか 見 ていなかった と 彼 等 が CDO( 債 務 担 保 証 券 )の 中 身 を 精 査 しなかった 事 に 怒 りを 示 した 銀 行 システムの 安 全 確 保 は FRB の 責 務 であるから 今 後 問 題 債 権 が 正 しく 評 価 されているかどうか 厳 しい 監 視 がなされる 米 国 の 新 会 計 基 準 では 市 場 価 格 を 優 先 する 事 を 明 確 にする 事 を 求 めている 取 引 価 格 が 無 い 時 は 気 配 値 を 使 い 合 理 的 な 計 算 価 格 を 使 う 場 合 には 評 価 方 法 や 評 価 額 などの 開 示 が 義 務 付 けられた それに 伴 って 金 融 機 関 の 貸 し 出 し 姿 勢 が 慎 重 になるの は 致 し 方 ない 状 況 にある 2. 仕 組 み 債 市 場 危 機 金 融 帝 国 衰 退 へ 複 雑 な 仕 組 み 債 権 は その 債 権 を 組 成 した 金 融 工 学 専 門 家 以 外 には 理 解 出 来 ない 様 な 商 品 であり 投 資 家 が 自 分 で 資 産 評 価 が 出 来 ない この 事 は 中 身 を 熟 知 した 者 し か 市 場 に 参 加 しなくなる 従 って FRB の 仕 組 み 債 の 内 容 精 査 への 行 動 で 仕 組 み 債 市 場 は 激 減 した 世 界 的 にリスクの 把 握 が 出 来 ない 仕 組 み 債 から 撤 退 が 始 まり この 債 権 の 価 格 下 落 が 多 くの 金 融 機 関 を 直 撃 しているのである 米 国 の 金 融 機 関 を 信 用 して 多 額 の 投 資 を 委 託 した 投 資 家 達 は この 打 撃 を 教 訓 とし て 行 き 場 を 失 った 資 金 を 原 油 金 穀 物 などの 現 物 資 産 の 先 物 へ 振 り 向 けるのは 当 然 の 動 きである この 中 でも 原 油 は 流 動 性 の 高 い 国 際 商 品 として 必 ず 消 費 されて 行 くもので 需 要 1
は 拡 大 を 続 けており 一 番 採 用 しやすい 投 資 対 象 である 金 とドルとの 交 換 停 止 をし たニクソンショックの 際 に 原 油 価 格 が 実 勢 に 合 わせて 4~6 倍 に 跳 ね 上 がった 様 に 原 油 は 貨 幣 以 上 に 経 済 実 態 としての 価 値 がある 米 国 は 金 融 資 本 と IT によって 経 済 帝 国 を 形 成 する 事 に 成 功 して 来 た この 金 融 工 学 の 専 門 能 力 の 高 い 欧 米 金 融 機 関 を 信 用 して 全 世 界 の マネー が 磁 石 に 吸 い 寄 せ られる 様 に 集 まって 来 ていた これが 米 国 の 経 済 パワーの 源 泉 であった 株 式 資 本 な ど 中 核 自 己 資 本 比 率 規 制 (BIS:: 国 債 決 済 銀 行 規 制 )による 比 率 が 高 かったシテイグ ループの 2007 年 9 月 末 の 比 率 は 7.3%へ 下 がった 国 際 的 な 優 良 水 準 8%を 下 回 った のは 象 徴 的 である 不 良 債 権 に 苦 しんだ 日 本 の 三 菱 UFJ 銀 行 は 現 在 7.7%でシテイは それを 下 回 っており 米 国 が 金 融 盟 主 の 地 位 を 失 った 事 が 明 らかにされた この 信 用 喪 失 の 金 融 危 機 は 緩 やかではあるが 目 に 見 えぬ 形 で 米 国 の 金 融 支 配 力 を 喪 失 させて 行 く 事 になる 金 融 覇 権 はどこに 行 くのであろうか と 言 う 幕 が 上 がっ た 3. 規 模 の 小 さい 商 品 市 場 へ マネー の 洪 水 商 品 先 物 市 場 で 最 大 のニューヨーク 原 油 市 場 規 模 は 資 金 流 入 量 を 示 す 未 決 済 残 高 に 数 値 をかけた 計 算 値 は 1200 億 ドル( 約 14 兆 円 2007 年 11 月 ) 金 は 400 億 ドル(4 5 兆 円 ) 金 の 現 物 総 量 は 15 万 トン 時 価 計 算 総 価 値 は 約 540 兆 円 程 度 である 商 品 市 場 の 参 加 者 は 実 需 家 ヘッジファンドが 中 心 であったものが これまで 債 権 株 式 で 資 金 運 用 をしてきた 年 金 基 金 も 商 品 を 投 資 対 象 に 組 み 込 み 始 めていた こ こに 今 回 のサブプライムローン 問 題 による 金 融 不 信 ドル 不 安 で マネーの 流 れが 激 変 し 始 めた 現 在 焦 点 となった 様 々な 店 頭 デリバテイブ( 金 融 派 生 商 品 )の 想 定 元 本 総 額 は 4 京 9300 兆 円 (2006 年 末 時 点 国 債 決 済 銀 行 調 査 ) これに 対 して 投 資 対 象 の 世 界 の 株 式 市 場 規 模 は 7200 兆 円 (2007 年 10 月 時 点 国 際 取 引 所 連 盟 調 査 ) 債 権 市 場 規 模 は 5500 兆 円 である 金 融 派 生 商 品 での 信 用 が 収 縮 して そこから 逃 げ 出 した 資 金 が 500 分 の 1 もの 小 規 模 な 現 物 市 場 へ 流 れ 込 んでいるのは 株 式 債 券 市 場 という 大 きな 湖 で 流 水 調 節 され ていた 大 河 マネー の 流 水 が 突 如 として 小 さな 溜 池 へ 向 かい 溢 れ 始 めたとも 思 え る 現 象 なのである 米 国 の 景 気 減 速 は 本 来 なら 原 油 需 要 減 に 結 びつくが 新 興 国 の 需 要 は 依 然 高 水 準 で 先 高 期 待 が 高 い また ドルがユーロに 対 して 最 安 値 を 更 新 したドル 安 で 他 の 通 貨 から 見 ると 原 価 価 格 ドル 建 ては 割 安 になった 事 もあって ニューヨーク 原 油 先 物 は 2007 年 11 月 20 日 夜 の 時 間 外 取 引 で 2008 年 1 月 物 は 一 時 1 バレル 99.2 ドルの 過 去 最 高 値 をつけた 1 月 のほぼ 2 倍 の 水 準 である 4. 原 油 価 格 高 騰 オイルピーク の 現 実 世 界 に 原 油 は 数 百 種 類 ある 原 油 の 相 場 を 決 める 際 の 基 準 が 指 標 原 油 で 米 国 は 2
WTI(ウェスト テキサス インターミデイエイト) 硫 黄 分 が 少 ない 軽 質 油 で 40 万 バ レル/ 日 の 生 産 しかないが 実 需 でないニューヨークマーカンタイル 取 引 所 (NYMEX) の 相 場 取 引 で 世 界 の 原 油 価 格 の 指 標 とされている 欧 州 の 指 標 は 北 海 ブレンド(WTI に 近 い 品 質 ) アジアの 指 標 は 中 東 産 のドバイ 原 油 ( 高 硫 黄 重 質 原 油 )で WTI の 動 きと 連 動 している 原 油 価 格 が 1 バレル 100 ドルに 近 づき その 価 格 は 投 機 によりやがて 反 落 すると 見 る 人 と 更 に 高 値 を 目 指 すとする 人 と 見 方 が 分 かれている 原 油 の 原 価 である 油 田 の 生 産 コストは サウジアラビアなどの 既 存 油 田 は 1 バレル 3 ~8 ドル メキシコ 湾 深 海 油 田 やサハリン 沖 など 気 象 条 件 の 厳 しい 地 域 の 新 規 油 田 では 30 ドルを 超 える 政 情 不 安 な 国 々では 予 測 出 来 ない 経 済 や 市 場 関 係 者 は コストプ ラス 利 潤 で 市 場 価 格 を 決 めそれ 以 上 を 投 機 としているが 見 方 を 変 える 必 要 がある 現 在 の 原 油 市 場 の 逼 迫 は 2004 年 中 国 が 石 油 需 要 を 300 万 バレル/ 日 プラスへ 押 し 上 げた 事 に 始 まり OPEC はそれに 対 応 して 300 万 バレル/ 日 の 増 産 に 踏 み 切 った これ によって OPEC は 石 油 価 格 調 節 のための 生 産 余 力 を 失 っている このため 需 給 調 整 が 思 うようにならず 先 進 諸 国 は 原 油 備 蓄 を 縮 小 して この 事 態 に 対 応 している IEA によれば 2007 年 7 月 から 9 月 にかけて 石 油 備 蓄 は 3300 万 バレル( 日 量 換 算 36 万 バ レル) 減 った 石 油 備 蓄 量 は 54 日 分 の 消 費 量 にまで 落 ち 込 んだと 発 表 している 過 去 5 年 間 同 時 期 に 備 蓄 量 が 平 均 して 日 量 28 万 バレル 増 加 して 来 た 事 と 比 較 すると 合 わせて 64 万 バレル 減 産 した 事 と 同 じになる OPEC は 世 界 の 石 油 産 出 の 40%を 占 めているが 2007 年 11 月 から 50 万 バレル/ 日 の 増 産 を 約 束 していたが それを 果 そうとしない 2007 年 11 月 18 日 7 年 ぶりに OPEC 首 脳 会 議 がサウジアラビアのリヤドで 開 催 された アブダラ エルバドリ 事 務 局 長 は 現 段 階 で OPEC が 増 産 しても 在 庫 が 増 えるだけで 原 油 価 格 の 沈 静 化 には 効 果 が 無 い と 増 産 に 消 極 的 な 姿 勢 を 表 明 した OPEC は 原 油 の 需 給 量 は 充 分 で 原 油 価 格 高 騰 は 原 油 の 需 給 が 原 因 ではないというのが 基 本 姿 勢 である OPEC 内 では 1 バレル 90 ドルを 下 回 る 状 況 では 増 産 を 見 送 りをする 現 状 維 持 派 が 多 い 最 大 の 産 油 国 サウジアラビアだけが 増 産 意 欲 を 有 している 状 況 にある 特 に 反 米 のイランとベネズエラは 増 産 する 余 力 も 無 く 目 先 の 収 入 を 最 大 化 する 事 に 関 心 があり ドル 価 格 下 落 で 1 バレル 95 ドルでも ユーロなどで 見 ればそれほど 高 値 でないとの 立 場 を 取 っている 生 産 余 力 に 乏 しく 供 給 側 に 増 産 意 欲 が 無 く 消 費 側 の 備 蓄 量 も 減 少 しており 石 油 供 給 が 需 要 に 対 して 生 産 が 応 じきれない ピークオイル が 現 実 のものとなりつつ ある 石 油 会 社 が 産 油 国 と 長 期 契 約 をして 輸 入 する 直 接 取 引 (DD) 原 油 の 2007 年 11 月 積 みは サウジアラビア 産 アラビアンエキストラ( 軽 質 原 油 )は 92 ドル 台 と 前 月 比 13% 1 月 比 67% 高 い インドネシア 産 スマトラライト( 低 硫 黄 原 油 )も 93 ドル 台 と 初 めて 90 ドルを 超 えた 3
Ⅱ. ドル 離 れに 動 く 産 油 国 - 高 価 格 は 国 益 5. 産 油 国 は 高 価 格 維 持 (1) 中 東 OPEC の 姿 勢 OPEC は カルテルで 原 油 価 格 管 理 を 行 った 事 があるが 価 格 決 定 権 を 市 場 へ 移 し てからは 価 格 を 管 理 する 力 を 失 っている 事 を 承 知 している 現 在 は 如 何 なる 価 格 帯 も 価 格 目 標 も 設 定 していない と 事 務 局 長 は 述 べている 世 界 最 大 規 模 の 経 済 で 最 大 のエネルギー 消 費 国 米 国 の 景 気 後 退 への 不 安 もあって OPEC は 増 産 に 慎 重 である 市 場 関 係 者 の 多 くは OPEC が 日 産 75 万 バレル 増 産 検 討 インドネシアが 増 産 支 持 などの 報 道 に 投 資 ファンドが 敏 感 に 反 応 しているが OPEC の 本 音 は 増 産 に 消 極 的 で WTI 価 格 が 1 バレル 90 ドルを 割 り 込 む 水 準 になれば 増 産 を 見 送 るとして 価 格 の 下 値 は 限 定 的 と 見 ている (2) 中 東 産 油 国 の 財 政 中 東 諸 国 の 財 政 と 経 済 は 殆 どが 石 油 依 存 で 成 り 立 っており 1 バレル 40 ドルが 収 支 均 衡 の 価 格 で 原 油 価 格 高 騰 のおかげで 先 進 諸 国 からの 借 金 を 返 して 債 務 国 から 脱 却 した また 国 民 への 利 益 配 分 要 求 のナショナリズムの 高 揚 と 若 者 雇 用 のための 新 産 業 創 設 インフラ 整 備 に 巨 費 を 必 要 としており 価 格 低 下 へ 協 調 するインセンテイブが 全 く 無 い (3) 生 産 国 が 消 費 国 化 中 東 諸 国 は 人 口 増 加 に 伴 う 若 者 の 雇 用 の 創 出 と ピークを 迎 えた 油 田 から 将 来 の 国 づくりのために 金 融 資 本 国 化 と 石 油 天 然 ガスをプラスチックなどに 加 工 して 輸 出 する 世 界 の 石 油 化 学 工 場 化 を 目 指 している 即 ち 産 出 国 が 石 油 を 自 国 で 消 費 する 産 業 化 を 急 速 に 進 めているという 事 である 安 価 に 輸 出 するよりも 需 要 側 の 工 業 製 品 化 して 輸 出 するという 加 工 費 をも 吸 収 する 動 きに 出 ており 原 料 石 油 天 然 ガスを 安 値 で 輸 出 する 事 は 世 界 経 済 が 破 滅 するような 事 態 とならない 限 り 行 う 気 は 無 いと 見 るべきであろう OPEC のハミル 議 長 (アラブ 首 長 国 連 邦 エネルギー 相 )は 2007 年 11 月 28 日 シン ガポールで 講 演 大 型 製 油 所 を 含 む 12 超 のプロジェクトを 中 心 に 加 盟 国 が 2012 年 までに 総 額 1500 億 ドル 投 資 と 述 べた 本 来 消 費 国 の 問 題 としつつも 石 油 精 製 石 油 化 学 工 場 を 含 む 製 品 生 産 までの 一 貫 投 資 である (4) ロシア 財 政 政 策 ロシアの 2007 年 度 国 家 予 算 は 61 ドル/バレルで 組 み 立 てており 石 油 天 然 ガス 輸 出 が 最 大 の 貿 易 収 入 である 同 国 では 価 格 低 下 の 動 きはしない また 石 油 天 然 ガ 4
ス 企 業 は 国 家 権 力 が 支 配 しており 政 策 上 輸 出 国 の 経 済 が 破 綻 するような 事 の 無 い 範 囲 で 高 価 格 維 持 を 図 る 事 がロシアの 国 益 となる 産 油 各 国 の 詳 細 な 国 情 については 石 油 文 明 を 越 えて (オフィス HANS 2007 年 11 月 )を 見 て 頂 きたい 6. ドル 不 安 へ 産 油 国 懸 念 米 国 の 経 常 赤 字 は 2007 年 GDP 比 5% 台 後 半 で 1992 年 以 降 の 累 積 経 常 赤 字 は 約 6 兆 ドル 世 界 の 金 融 市 場 でのドル 余 剰 感 は 強 い このために 主 要 通 貨 に 対 するドル 実 行 レートは 最 安 値 を 更 新 し 続 けており ドル 離 れが 進 んでいる 更 に 米 国 発 のサブプライム ショックの 余 波 が 世 界 的 な 金 融 不 安 を 誘 発 する 過 程 で 歴 史 的 なドル 安 が 進 行 した 1 ユーロ:1.45 ドルの 節 目 を 超 えて ユーロ 発 足 以 来 のユーロ 高 ドル 安 水 準 一 時 的 だが 1 ポンド:2.10 ドル 超 えを 26 年 ぶりのポンド 高 となった カナダドルは 31 年 ぶりに 1 米 ドル:1 カナダドルの 等 価 交 換 の 壁 を 突 き 破 り 一 時 51 年 ぶりに 1 ドル:0.90 カナダドルとドルは 戦 後 最 安 値 を 更 新 した ドル 安 は 原 油 価 格 をドルで 受 け 取 る 産 油 国 は 実 質 的 に 低 価 格 で 売 った 事 になる また 米 国 経 済 の 先 行 きが 不 透 明 で 専 門 家 は 米 景 気 見 通 しを 相 次 いで 引 き 下 げてい る フィラデルフィア 連 銀 による 米 主 要 調 査 機 関 の 2007 年 10~12 月 の 実 質 成 長 率 予 測 平 均 は 8 月 調 査 の 2.7%から 1.7%まで 下 がった 7~9 月 実 績 が 実 質 3.9% 成 長 だ ったのに 比 べて 米 景 気 は 足 元 で 急 速 に 減 速 し 始 めている FRB は 2010 年 までの 米 経 済 見 通 しを 2007 年 11 月 20 日 発 表 した 08 年 の 実 質 経 済 成 長 率 は 1.8~2.5%で 7 月 時 点 で 公 表 した 予 測 2.5~2.75%を 下 方 修 正 した 07 年 の 2.4~2.5%より 減 速 すると 見 ている 2009 年 2.3~2.7% 2010 年 2.5~2.6%に 持 ち 直 すと 指 摘 している 08 年 の 失 業 率 も 4.8~4.9%まで 緩 やかに 上 昇 インフレ 懸 念 が 台 頭 するかどうかの 目 安 といわれる 5%を 下 回 る 水 準 を 維 持 すると 見 ている しかし インフレと 景 気 減 速 の 先 にドル 暴 落 の 不 安 も 存 在 すると 見 る 専 門 家 も 多 い 原 油 高 価 格 の 底 流 には このドル 不 安 がある しかも 米 国 は 経 済 的 政 治 的 軍 事 的 な 世 界 唯 一 の 超 大 国 でなくなっている 事 もド ル 信 認 低 下 へ 影 響 している 7. 産 油 国 の ドルペッグ 制 廃 止 ドル 安 による 石 油 収 入 の 実 質 価 値 の 目 減 りに 直 面 する 中 東 産 油 国 で 自 国 の 通 貨 を ドルに 連 動 させる ペッグ 制 を 取 っている ドル 安 で 欧 州 日 本 からの 自 動 車 家 電 などの 輸 入 品 が ドル 安 に 連 動 した 自 国 通 貨 の 値 上 がりで インフレが 深 刻 化 して いる この 事 から ペッグ 制 廃 止 への 意 見 が 台 頭 している ドルペッグ 制 とは 自 国 通 貨 の 価 値 を 米 ドルに 連 動 させる 固 定 為 替 制 度 である 相 場 が 通 貨 当 局 の 容 認 する 変 動 幅 を 外 れそうになった 場 合 には 外 国 為 替 市 場 で 介 入 を 実 施 して 範 囲 内 に 収 める 事 を 行 う 最 大 の 産 油 国 サウジアラビアの 通 貨 リアル は ペッグ 制 離 脱 の 観 測 で 投 機 的 な 5
買 いが 入 り 上 昇 21 年 ぶりの 高 値 をつけた こうした 状 況 を 受 けて ペルシャ 湾 岸 の 産 油 国 は 2007 年 12 月 3 日 4 日 カタール の 首 都 ドーハで 首 脳 会 議 を 開 催 した ドルペッグ 制 度 維 持 の 是 非 は 意 見 が 割 れ 結 論 を 先 送 りした 一 部 加 盟 国 はドルペッグ 制 を 維 持 した 上 で 通 貨 を 切 り 上 げる ドル 建 て 外 貨 準 備 高 は サウジアラビア 2600 億 ドル UAE430 億 ドル カタール 55 億 ドルで 大 半 は 米 国 債 で 運 用 しており このドル 建 て 外 貨 資 産 の 自 国 通 貨 建 てで の 目 減 りを 懸 念 している 原 油 取 引 そのものを ドル 建 てから 主 要 通 貨 を 混 ぜ 合 わせたバスケットを 指 標 とす る 方 式 に 改 める 案 も 検 討 OPEC もドル 建 て 見 直 しの 検 討 を 進 めている ドルペッグ 制 廃 止 が 決 まれば ドルの 国 際 的 な 信 認 が 一 段 と 低 下 する ドル 安 が 一 定 限 度 を 越 えると 長 期 金 利 上 昇 へ 飛 び 火 する 米 国 にとってドル 紙 幣 があれば 石 油 が 変 える 時 代 が 終 わろうとしている 更 に 米 国 主 導 の 世 界 経 済 の 回 転 が 狂 いだす 危 険 が 見 える 8. ドルペッグ 廃 止 の 影 響 現 在 ドルとペッグしている 通 貨 のほうがユーロとペッグしている 通 貨 より 遥 かに 多 い 産 油 大 国 サウジアラビアは 自 国 通 貨 をドルペッグしており 石 油 価 格 のドル 表 示 は 当 然 の 事 として 受 け 止 められている 万 一 同 国 がドル 価 値 の 下 落 を 嫌 気 してドルペ ッグを 解 除 したら 石 油 価 格 のドル 表 示 中 止 の 可 能 性 も 出 てくる 仮 に 石 油 がユーロ 表 示 にでもなったら 米 国 は 巨 大 な 貿 易 赤 字 国 であるから 国 内 に 外 貨 が 無 く ドルを 売 ってユーロを 買 い そのユーロで 石 油 を 購 入 しなくてはならな い そうなれば ドルの 危 機 は 本 格 化 しかねない それは 世 界 経 済 危 機 へと 波 及 する しかし 巨 額 の 貿 易 赤 字 を 抱 える 米 国 のドル 価 を 維 持 するには 米 国 外 の 金 融 機 関 や 投 資 家 がリスクを 承 知 の 上 でドルを 買 う 必 要 がある このリスクを 担 う 人 たちの 減 少 がユーロ 高 円 高 へ 進 む 一 因 と 思 われ 長 期 的 には 石 油 とドルとの 関 係 には 何 ら かの 調 整 が 行 われるであろう 主 要 通 貨 とのバスケット 方 式 が 中 東 諸 国 で 検 討 対 象 となっているのも 全 世 界 の 通 貨 バランス 現 実 の 貿 易 対 象 として EU からの 物 品 購 入 日 本 への 原 油 輸 出 など ユーロ 円 との 関 係 も 無 視 出 来 ない そしてドル 安 は 表 示 上 の 価 格 でユーロ 高 円 高 はこの 両 地 域 での 原 油 価 格 高 騰 のショックを 和 らげる 事 になる 一 方 中 国 のように 外 貨 準 備 1 兆 4000 億 ドルものドル 主 体 の 資 産 を 持 つ 国 は 資 産 の 目 減 りを 懸 念 してドル 高 を 望 んでいる 日 本 の 円 高 は 輸 出 には 打 撃 だが 高 騰 する 諸 原 料 輸 入 にはプラスになり 多 くの 原 材 料 を 加 工 する 部 品 メーカーである 中 小 企 業 の 収 益 はプラスになる それを 組 み 入 れた 商 品 輸 出 をする 大 企 業 にはマイナスとなる 商 品 生 産 が 海 外 へ 移 転 する 中 で 基 幹 部 品 を 国 内 で 製 造 する 中 小 企 業 には 円 価 値 の 維 持 は 必 要 である 6
9. 通 貨 ユーロの 信 認 向 上 一 方 EU のユーロ 圏 13 カ 国 すべてが 2007 年 に 安 定 成 長 協 定 ( 財 政 協 定 ) 違 反 を 解 消 する 通 貨 ユーロの 全 導 入 国 が 義 務 付 けられている 財 政 赤 字 を 対 GDP 比 で 3% 以 下 に 抑 える 3% 基 準 を 満 たす これは ユーロ 流 通 開 始 の 2002 年 以 来 初 めてである ユーロ 圏 全 体 の 財 政 赤 字 は 0.8%に 低 下 する この 事 は ユーロの 信 認 をより 高 める ものである EU と 貿 易 量 の 多 い 国 々はユーロで 取 引 決 済 する 事 が 現 実 的 でドルよりユ ーロの 信 認 が 高 まるにつれてその 動 きが 加 速 するのは 当 然 の 流 れである 欧 州 委 員 会 の 07 年 財 政 予 測 によると 一 番 懸 念 されていたイタリアの 06 年 4% 超 の 赤 字 が 2.3%まで 低 下 イタリアと 並 んで 協 定 違 反 国 ポルトガルも 財 政 赤 字 の 削 減 を 進 めて 3.0%ぎりぎりまで 押 さえ 込 み 基 準 違 反 を 解 消 した ユーロ 圏 の 経 済 牽 引 国 ドイツは 07 年 に 財 政 均 衡 を 達 成 02 年 からの 協 定 違 反 が 0.1%の 黒 字 へ 転 換 する フランスは 2.6% 前 後 となる EU は 急 速 な 高 齢 化 に 伴 う 社 会 保 障 費 や 年 金 支 出 増 があり 財 政 収 支 改 善 への 課 題 と なっているが 景 気 拡 大 が 続 く 間 は 年 間 0.5 ポイント 以 上 の 赤 字 削 減 を 導 入 国 に 迫 る 方 針 である 日 本 も 高 齢 化 社 会 への 移 行 に 備 えて 財 政 再 建 に 取 り 組 んでいるが 07 年 の 財 政 赤 字 は GDP 比 4%と 高 い 通 貨 は 国 内 だけの 問 題 ではない 対 ユーロ 円 安 は 問 題 である 我 が 国 は 国 際 通 貨 決 済 の 中 での 円 の 信 認 強 化 と 原 油 支 払 い 代 金 による 産 油 国 の 輸 入 への 日 本 産 品 の 国 際 競 争 力 の 強 化 が 原 油 価 格 高 騰 の 対 応 に 必 要 である 要 は 原 油 と 産 品 との 物 々 交 換 とも 言 える 状 況 になりつつあるという 時 代 認 識 を 持 たなくてはならない そしてその 取 引 媒 体 としての 通 貨 の 力 それは 夫 々の 通 貨 を 発 行 する 国 の 力 を 背 景 として 形 成 されるもので 我 が 国 はその 資 本 と 技 術 力 により 産 油 国 の 国 民 生 活 向 上 と 政 情 安 定 へ 貢 献 する 動 きが 必 要 になっている 同 時 に 原 油 輸 入 大 国 日 本 は 原 油 輸 出 国 との 貿 易 決 済 に 円 が 使 用 出 来 る 経 済 協 力 環 境 を 創 出 して 経 済 連 携 の 協 定 を 確 立 する 事 が 重 要 となる 2007 年 12 月 13 日 7