抵 抗 板 を 設 置 した 空 積 みブロックの 動 的 変 形 特 性 向 谷 光 彦 *, 末 松 吉 生 **, 水 越 睦 視 ***, 乃 村 智 子 *, 岡 崎 芳 行 *** Seismic Characteristics of Dry Masonry Block Retaining Wall Structure with a Resistance Plate Mitsuhiko MUKAITANI*, Yoshio SUEMATSU**, Mutsumi MIZUKOSHI***, Tomoko NOMURA* and Yoshiyuki OKAZAKI*** Abstract There are two methods of the block retaining wall work, one is the dry masonry block wall structure, and the other is the wet one. The dry masonry block wall structure has the goodness of speed of work and the economically comparison of the wet one. However, dry masonry method has little resistance force against the retaining wall s sliding. We proposed the new method of the dry masonry block retaining wall structure with a resistance plate. This plate makes a passive pressure in the dry masonry block. We investigated seismic characteristics of the dry masonry block retaining wall structure with a resistance plate using the small size model test apparatus. The apparatus is the one dimensional seismic machine. We discussed the influence of the residual displacement of the dry masonry box on materials, position of the box and frequency. We use 1/10 scale model comparison of the in-situ work. We clarified that the influence of the resistance plate makes the residual displacement reduce. Keywords:dry masonry block, retaining wall, resistance plate, seismic performance 1.はじめに 近 年, 地 球 規 模 で 異 常 気 象 をもたらしている 地 球 温 暖 化 は 深 刻 な 国 際 政 治 問 題 に 発 展 しており, 世 界 的 に 温 室 効 果 ガスの 削 減 が 求 められている 日 本 政 府 も 2020 年 までに 1990 年 比 25%の 削 減 を 目 標 に 掲 げており, 土 木 コンクリート 業 界 においても 削 減 可 能 な 技 術 が 求 められている 例 えば, 国 土 交 通 省 は, 河 道 計 画 の 技 術 基 準 の 中 で, 今 後 の 河 川 は 治 水 機 能 の 確 保 に 加 えて 河 岸 水 際 部 が 本 来 有 する 環 境 上 の 機 能 を 確 保 する 視 点 が 重 要 になる 1),2) と 通 達 し た 環 境 機 能 を 付 加 するためには, 護 岸 堤 の 内 外 を 遮 断 する 練 積 みではなく, 連 続 させる 空 積 み 構 造 が 絶 対 に 不 可 欠 である しかし, 空 積 みブロックは * 香 川 高 等 専 門 学 校 専 攻 科 ** 東 栄 商 興 ( 株 ) *** 香 川 高 等 専 門 学 校 建 設 環 境 工 学 科 練 積 みより 滑 動 抵 抗 力 が 不 足 しやすい 等 の 理 由 から, あまり 積 極 的 には 使 用 されていない もし, 空 積 み で, 練 積 みと 同 程 度 の 安 全 性 が 確 保 できれば, 河 川 の 生 態 系 や 自 然 環 境 の 保 全 に 貢 献 でき,CO 2 も 確 実 に 削 減 することが 可 能 になる また, 地 震 の 頻 繁 化 や 地 球 温 暖 化 による 異 常 気 象 で 災 害 の 外 力 が 増 大 し ている 今 日, 擁 壁 分 野 においても 更 なる 安 全 性 の 確 保 が 強 く 求 められている 3),4) そこで 本 研 究 では, 抵 抗 板 を 設 置 した 空 積 みブロ ック 5) の 動 的 特 性 について 調 べた 1/10 スケールの 小 型 模 型 を 用 いて 振 幅 16mmで1 方 向 に 正 弦 波 によ る 単 調 振 動 を 加 え,これによって 空 積 みブロックの 動 的 特 性 に 及 ぼす 滑 動 抵 抗 体 の 影 響 について, 残 留 変 位 に 関 する 検 討 を 行 った 73
香 川 高 等 専 門 学 校 研 究 紀 要 4(2013) 2. 試 料, 実 験 装 置, 実 験 の 概 要 模 型 は 木 製 で 作 成 し, 中 詰 材 ( 礫 5mm 以 下 )は 現 場 での 1/10 スケールをそれぞれ 想 定 している 模 型 にはコンクリートと 比 重 を 合 わせるために, 周 囲 に 鉄 板 を 張 り 付 けてある 図 -2.1 にその 概 略 を 示 す 図 -2.2 には, 抵 抗 板 を 振 動 方 向 に 対 して 直 角 に 設 置 した 状 況 を 示 す 210 230 99 図 -2.1 土 槽 と 模 型 ブロックの 設 置 状 況 抵 抗 板 ; 振 動 方 向 に 対 して 平 行 に 設 置 ( 単 位 ;mm) 入 力 振 動 は,ダイヤル 式 で 振 動 数 を 設 定 できる 小 型 振 動 台 を 使 用 した 周 波 数 を 4~5Hz まで 0.5Hz 刻 みに 変 化 させ, 試 験 体 を 10 秒 間 振 動 させる 10 秒 間 振 動 させた 後 に 停 止 させた その 後,1ブロック と 土 槽 間 の 水 平 距 離 ( 前 方 ),2ブロック 天 端 と 土 槽 地 表 面 の 高 さ( 前 方 ),3ブロックと 土 槽 間 の 水 平 距 離 ( 後 方 ),4ブロック 天 端 と 土 槽 地 表 面 の 高 さ( 後 方 ),5ブロック 天 端 と 土 槽 地 表 面 の 高 さ( 中 央 ),6ブロック 天 端 とブロック 内 地 表 面 の 高 さ( 前 方 ),および7ブロック 天 端 とブロック 内 地 表 面 の 高 さ( 後 方 )の 計 7 ヶ 所 で 変 位 の 測 定 を 行 った 図 -2.3 に 試 験 体 と 計 測 位 置 の 概 略 図 を 示 す 滑 動 抵 抗 体 の 有 無, 滑 動 抵 抗 体 の 設 置 方 向, 抵 抗 体 の 種 類 ( 木 板 + 鉄 板, 鉄 板 のみ, 木 板 のみ)の 影 響 について 検 討 した 実 際 の 地 震 を 想 定 すれば, 擁 壁 の 前 後 方 向 だけでなく 奥 行 き 方 向 への 入 力 波 も 想 定 しなければならない したがって, 振 動 方 向 に 対 し 直 角 と 平 行 の 2 方 向 に 抵 抗 板 を 設 置 し,その 影 響 について 比 較 検 討 を 行 った それぞれの 周 波 数 間 で の 累 積 変 位 を 計 測 し,その 増 分 を 算 出 した 100 通 過 質 量 百 分 率 (%) 80 60 40 20 礫 0 0.01 0.1 1 10 粒 径 (mm) 図 -2.2 土 槽 と 模 型 ブロックの 設 置 状 況 抵 抗 板 ; 振 動 方 向 に 対 して 直 角 に 設 置 図 -2.4 使 用 した 試 料 の 粒 径 加 積 曲 線 表 -2.1 試 料 の 物 性 値 ρ s (g/cm 3 ) 2.640 D 10 (mm) 2.2 D 50 (mm) 0.40 U c ( 無 次 元 ) 6.3 U' c ( 無 次 元 ) 1.7 図 -2.3 試 験 体 と 計 測 位 置 の 概 略 図 試 料 には,5mm 以 下 の 乾 燥 した 礫 を 使 用 した 粒 径 加 積 曲 線 を 図 -2.4 に, 物 性 値 を 表 -2.1 にそれぞれ 示 す ブロックはベニヤ 板 で 作 製 し,コンクリートとの 比 重 を 合 わせるために, 鉄 板 を 周 囲 に 貼 り 付 けてあ 74
向 谷 光 彦 他 : 抵 抗 板 を 設 置 した 空 積 みブロックの 動 的 変 形 特 性 図 -3.1 抵 抗 板 を 有 する 空 積 みブロック 構 造 の 概 念 図 り,その 大 きさは 横 230mm 縦 210mm 高 さ 99mm である 土 槽 はプラスチック 製 で, 内 法 ; 縦 335mm 横 240mm 深 さ 215mm の 市 販 の 容 器 を 使 用 した 抵 抗 板 の 大 きさの 基 本 形 は, 横 185mm 縦 99mm 厚 さ 10mm のベニヤ 板 にコンクリートとの 比 重 合 わ せの 鉄 板 を 剛 結 してある 抵 抗 板 の 表 面 摩 擦 の 有 無 を 調 べるために, 木 や 鉄 板 の 表 面 をサンダーで 人 工 的 に 凹 凸 を 加 えたものを 粗 面 とし, 以 下 そのように 称 することにする 表 -2.2 には, 今 回 実 施 した 抵 抗 板 の 状 態 と 振 動 方 向 に 対 する 設 置 について, 実 験 ケ ースをそれぞれ 示 す 表 -2.2 実 験 ケース Case 抵 抗 板 の 設 置 方 向 ; 状 況 Case 1 なし Case 2 直 角 ; 木 + 鉄 板 1 枚 ( 滑, 基 本 形 ) Case 3 平 行 ; 木 + 鉄 板 1 枚 ( 滑 ) Case 4 直 角 ; 鉄 板 1 枚 ( 滑 ) Case 5 直 角 ; 鉄 板 2 枚 ( 滑 ) Case 6 直 角 ; 木 ( 滑 ) Case 7 直 角 ; 鉄 板 1 枚 ( 粗 ) Case 8 直 角 ; 木 ( 粗 ) Case 9 平 行 ; 鉄 板 1 枚 ( 滑 ) Case 10 平 行 ; 鉄 板 2 枚 ( 滑 ) 抵 抗 板 の 底 面 まで 試 料 を 容 器 に 充 填 し,ランマー で 十 分 突 き 固 めた 設 定 した 抵 抗 板 の 設 置 深 さ( 標 準 は 1/2)まで 試 料 を 投 入 して 同 様 に 突 き 固 めた ブ ロック 底 部 の 高 さになると,ブロックを 設 置 して 水 平 性 を 水 準 器 により 確 認 しながら 中 空 部 に 試 料 を 投 入 し 充 填, 突 き 固 めた ブロックの 天 端 まで 試 料 が 充 填 完 了 後, 再 度 水 準 を 確 認 した なお, 抵 抗 板 と ブロック 枠 は 密 着 していない ブロック 段 数 は1 段 のみを 実 施 した 3. 抵 抗 板 を 有 する 空 積 みブロック 構 造 の 滑 動 抵 抗 力 発 現 のメカニズム 抵 抗 板 を 有 する 空 積 みブロック 構 造 の 概 念 図 を 図 -3.1 に 示 す 本 構 造 は, 前 壁 後 壁 及 び 前 壁 と 後 壁 をつなぐ 左 右 の 側 壁 を 有 し, 底 版 がない, 高 さ 0.5 ~1mのブロックを 段 積 みする 空 積 みブロック 構 造 である 地 盤 面 GLの 高 さは 最 下 段 ブロックの 1/2 の 高 さに 相 当 し, 背 面 土 にはアスファルト 舗 装 や 車 両 などに 起 因 する 荷 重 ;qが 上 載 されている 基 礎 部 と 最 下 段 ブロック 及 び 上 下 ブロックの 境 界 面 に 高 さ 0.35~0.5m 程 度 の 抵 抗 板 を 擁 壁 の 前 後 方 向 に 対 して は 直 交 して 設 置 する 基 礎 部 は 栗 石,ブロック 内 は 中 詰 砕 石, 背 面 は 裏 込 砕 石 等 の 粒 状 材 で 形 成 されて おり, 抵 抗 板 とブロック 後 壁 との 間 に 粒 状 材 の 詰 ま った 部 分 が 形 成 される 壁 体 に 背 面 土 圧 P A が 作 用 す 75
香 川 高 等 専 門 学 校 研 究 紀 要 4(2013) ると,ブロック 底 部 の 潜 在 すべり 面 の 土 粒 子 がせん 断 されて 移 動 する それと 同 時 に 土 粒 子 間 に 摩 擦 抵 抗 力 Tが 生 じ,ブロックも 変 位 する この 際, 抵 抗 板 の 前 面 には 抵 抗 板 の 変 位 方 向 とは 逆 方 向 の 水 平 力 が 作 用 し,かつブロック 前 壁 底 面 から 抵 抗 板 の 前 面 間 の 底 面 部 分 はブロックの 潜 在 すべり 面 とはならない ことから, 抵 抗 板 背 面 の 上 半 部 とブロック 後 壁 間 の 土 塊 の 間 隙 は 密 になり, 潜 在 すべり 面 上 の 土 粒 子 の せん 断 ひずみが 増 加 して 体 積 が 膨 張 する( 正 のダイ レイタンシー) こうした 土 塊 の 体 積 膨 張 により, 抵 抗 抗 板 背 面 の 上 半 部 に 水 平 力 が 集 中 して 抵 抗 板 が 前 方 に 変 位 する 抵 抗 板 が 前 方 に 変 位 すると, 抵 抗 板 に 作 用 する 抵 抗 板 前 面 の 土 塊, 即 ち 抵 抗 板 の 前 面 お よび 同 土 塊 の 潜 在 すべり 面 で 囲 まれた 土 塊 をすべり 面 に 沿 ってずり 上 げようとする 力 が 生 じる これに 対 して, 土 塊 がずり 上 がらないように 同 土 塊 のすべ り 面 上 に 反 力 R, 抵 抗 板 の 前 面 には 反 力 P( 最 終 的 には 受 働 土 圧 P p )が 作 用 してこれらの 力 (P A,T,P p )が 釣 合 い 状 態 となる その 結 果, 抵 抗 板 前 面 の 反 力 P が 後 部 拘 束 層 の 土 塊 を 介 してブロックの 後 壁 内 面 に 伝 播 され, 抵 抗 板 の 前 面 の 受 働 土 圧 P p とブロック 底 部 の 摩 擦 抵 抗 力 Tが 連 動 して 背 面 土 圧 に 抵 抗 する 滑 動 抵 抗 力 が 発 現 する これが, 本 構 造 の 滑 動 抵 抗 発 現 のメカニズムである 5) 図 -4.1 より 抵 抗 板 なしにおいては, 入 力 周 波 数 が Hz から 4.5Hz に 増 加 すると,5.8mm 程 度 の 変 形 が 発 生 している これに 対 して, 抵 抗 板 を 振 動 方 向 に 対 して 直 角 に 設 置 すると,1.2mm 程 度 と 抵 抗 板 なし に 比 べて 80% 程 度 に 変 形 が 抑 制 されていることが 分 かる 同 様 に, 抵 抗 板 を 水 平 方 向 に 設 置 しても 2.1mm 程 度 になり,60% 程 度 に 変 形 が 抑 制 されていること が 分 かる 入 力 周 波 数 が 4.5Hz から 5.0Hz に 増 加 し た 場 合 を 見 ても, 抵 抗 板 なしに 比 べてそれぞれ 35% と 50% 程 度 に 変 形 が 抑 制 されていることが 明 らかに なった これらのことから, 通 常 地 震 時 の 擁 壁 安 定 で 検 討 されている 前 後 方 向 だけでなく,いわゆる 奥 行 き 方 向 においても, 抵 抗 板 の 設 置 により 抵 抗 板 な しよりも 変 形 抑 制 効 果 が 発 現 されることが 明 らかに なった 4の 変 位 増 分 (mm) 10.0 8.0 抵 抗 板 なし 直 角 ; 木 + 鉄 板 1 枚 水 平 ; 木 + 鉄 板 1 枚 直 角 ; 鉄 板 1 枚 直 角 ; 鉄 板 2 枚 平 行 ; 鉄 板 1 枚 平 行 ; 鉄 板 2 枚 4. 実 験 結 果 と 考 察 4.1 空 積 みブロックの 変 形 に 及 ぼす 抵 抗 板 設 置 方 向 の 影 響 計 測 位 置 1に 着 目 し, 空 積 みブロックの 変 形 に 及 ぼす 抵 抗 板 設 置 方 向 の 影 響 について 調 べた 抵 抗 板 の 条 件 ;Case1,2 及 び 3 について 検 討 した 1の 変 位 増 分 (mm) 7.0 抵 抗 板 なし 直 角 ; 木 + 鉄 板 1 枚 水 平 ; 木 + 鉄 板 1 枚 5.0 3.0 1.0 0.0 4.5 周 波 数 (Hz) 4.5 5.0 図 -4.1 入 力 周 波 数 と 計 測 位 置 1の 変 位 増 分 の 関 係 0.0 0.0 8.0 10.0 3の 変 位 増 分 (mm) 図 -4.2 計 測 位 置 3と4の 変 位 増 分 の 関 係 ( 入 力 周 波 数 ;4.5Hz から 5.0Hz に 増 加 ) 4.2 空 積 みブロックの 沈 下 形 体 に 及 ぼす 抵 抗 板 設 置 方 法 の 影 響 空 積 みブロックは, 地 震 時 に 水 平 のままで 沈 下 上 昇 するのではなく,むしろ 不 等 沈 下 による 影 響 が 考 えられる 最 下 段 のブロックが 傾 くと, 擁 壁 の 転 倒 に 関 する 安 定 性 が 失 われることにつながる した がって, 加 振 後 のブロックと 地 表 面 との 高 さの 相 違 である 計 測 位 置 2と4の 関 係 を 調 べることによって, ブロックの 傾 きを 数 値 化 できると 考 えた 抵 抗 板 の 条 件 ;Case1,2,3,4,5,9 及 び 10 について 検 討 した 図 -4.2 より 抵 抗 板 の 鉄 板 1 枚 と 鉄 板 2 枚 をそれぞ れ 振 動 方 向 に 水 平 に 設 置 した 条 件 で, 変 形 の 相 違 が 大 きくなっていることが 分 かる 最 も 差 違 の 大 きな 76
向 谷 光 彦 他 : 抵 抗 板 を 設 置 した 空 積 みブロックの 動 的 変 形 特 性 鉄 板 1 枚 を 水 平 に 設 置 した 条 件 下 では, 計 測 位 置 3 で 9.7mm, 計 測 位 置 4で 7.7mm であり,2mm の 差 が 見 られる したがって,2/230 より 30 秒 程 度 の 傾 きが 生 じている 抵 抗 板 が 鉄 板 1 枚 や 2 枚 の 場 合, 試 料 の 粒 径 に 対 して 薄 く, 水 平 方 向 に 設 置 した 場 合 には, 振 動 によって 抵 抗 板 が 沈 降 していることを 実 験 後 に 確 認 している つまり, 抵 抗 板 の 厚 さについ ても, 中 詰 材 と 比 較 してあまり 薄 くならない 程 度 の 形 状 に 設 定 しておく 必 要 がある 振 動 により 抵 抗 板 が 初 期 設 定 位 置 から 外 れていくにつれて,ブロック も 不 等 沈 下 を 起 こしたものと 考 えられる 4.3 空 積 みブロックの 変 形 に 及 ぼす 抵 抗 板 の 表 面 粗 度 の 影 響 計 測 位 置 1に 着 目 し, 空 積 みブロックの 変 形 に 及 ぼす 抵 抗 板 の 表 面 粗 度 の 影 響 について 調 べた 抵 抗 板 の 条 件 ;Case1,2,4,5,6,7 及 び 8 について 検 討 した 抵 抗 板 なし 直 角 ; 木 + 鉄 板 1 枚 直 角 ; 鉄 板 1 枚 直 角 ; 鉄 板 1 枚 ( 粗 ) 直 角 ; 鉄 板 2 枚 直 角 ; 木 1 枚 直 角 ; 木 1 枚 ( 粗 ) 変 位 増 分 (mm) 7.0 5.0 3.0 1.0 4.5 周 波 数 (Hz) 4.5 5.0 図 -4.3 入 力 周 波 数 と 計 測 位 置 1の 変 位 増 分 の 関 係 図 -4.3 より 表 面 粗 度 を 増 加 させただけでも, 同 条 件 の 表 面 が 滑 らかな 場 合 に 比 べて 多 少 の 抑 制 効 果 が 増 加 していることが 分 かる このことは, 抵 抗 板 の 製 作 においても, 表 面 粗 度 を 向 上 させた 凹 凸 状 のコ ンクリートを 使 用 する 方 が 擁 壁 全 体 の 滑 動 抵 抗 力 を より 強 固 なものにできる 可 能 性 があることを 示 唆 し ている 4.4 空 積 みブロックの 変 形 に 及 ぼす 抵 抗 板 の 埋 設 量 の 影 響 計 測 位 置 1に 着 目 し, 空 積 みブロックの 変 形 に 及 ぼす 抵 抗 板 の 埋 設 量 の 影 響 について 調 べた 抵 抗 板 の 条 件 ;Case2 について 検 討 した 埋 設 量 が 1/2 を 標 準 として,2/3 とは 埋 設 量 が 大 きくなり,1/3 とは 埋 設 量 が 小 さくなることを 意 味 している 1の 変 位 増 分 (mm) 5.0 3.0 1.0 0.0 抵 抗 板 1/2 埋 設 1/3 埋 設 2/3 埋 設 4.5 周 波 数 (Hz) 4.5 5.0 図 -4.4 入 力 周 波 数 と 計 測 位 置 1の 変 位 増 分 の 関 係 図 -4.4 より, 埋 設 量 は 1/2 が 最 も 効 果 的 であるこ とが 分 かる 埋 設 量 を 小 さくすると, 受 動 土 圧 が 十 分 発 現 することができなくなり, 変 形 が 大 きくなっ たものと 思 われる 最 下 段 の 抵 抗 板 は,むしろ 埋 設 量 を 多 めに 設 定 しておくなどの 施 工 上 の 配 慮 が 必 要 であることを 示 しているものと 考 えられる 5.まとめ 小 型 振 動 台 を 用 いて, 様 々な 条 件 における 抵 抗 板 を 設 置 した 空 積 みブロックの 動 的 特 性 について 模 型 土 槽 を 作 成 し,その 変 形 特 性 に 及 ぼす 影 響 につい て 検 討 した 得 られた 結 論 は, 以 下 のとおりである 1) 空 積 みブロックの 変 形 に 及 ぼす 抵 抗 板 設 置 方 向 の 影 響 について 検 討 し, 擁 壁 の 前 後 方 向 に 対 して 直 角 に 設 置 する 方 が, 変 形 を 抑 制 できることを 明 らか にした また, 擁 壁 の 奥 行 き 方 向 に 対 する 地 震 動 を 想 定 して, 抵 抗 板 を 振 動 方 向 に 水 平 に 設 置 しても, ある 程 度 の 変 形 抑 制 効 果 があることが 明 らかになっ た 従 来, 擁 壁 の 地 震 時 安 定 性 については, 擁 壁 の 前 後 方 向 のみが 議 論 されてきた 今 回 新 たな 試 みと して 擁 壁 に 対 して 奥 行 き 方 向 の 安 定 性 にも 検 討 を 加 えた これらの 結 果 から, 擁 壁 の 現 実 的 な 耐 震 性 評 価 を 実 験 的 に 明 らかにできる 可 能 性 があることを 示 唆 した 2) 空 積 みブロックの 沈 下 形 体 に 及 ぼす 抵 抗 板 設 置 方 法 の 影 響 について 検 討 し, 中 詰 材 の 粒 径 と 比 較 し て 抵 抗 板 の 適 切 な 厚 さを 確 保 することで, 不 等 沈 下 を 抑 制 できることが 明 らかになった 抵 抗 板 が 中 詰 材 に 対 して 薄 い 時 には, 擁 壁 の 奥 行 き 方 向 の 耐 震 性 が 著 しく 失 われることが 分 かった 77
香 川 高 等 専 門 学 校 研 究 紀 要 4(2013) 3) 空 積 みブロックの 変 形 に 及 ぼす 抵 抗 板 の 表 面 粗 度 の 影 響 について 検 討 し, 抵 抗 板 の 表 面 粗 度 を 粗 く することによって, 滑 動 抵 抗 力 を 向 上 できる 可 能 性 を 示 唆 した 実 際 には, 抵 抗 板 は 表 面 を 滑 らかに 仕 上 げたものより, 表 面 粗 度 を 有 する 凹 凸 状 のコンク リートの 方 が 抵 抗 板 には 適 していることが 明 らかに なった 4) 空 積 みブロックの 変 形 に 及 ぼす 抵 抗 板 の 埋 設 量 の 影 響 について 検 討 し, 埋 設 量 は 抵 抗 板 の 半 分 かそ れ 以 上 を 確 保 する 方 が, 滑 動 抵 抗 力 が 大 きいことが 明 らかになった 施 工 上, 抵 抗 板 の 埋 設 量 を 半 分 か ら 2/3 程 度 に 設 定 すべきとの 見 解 を 示 した 参 考 文 献 1) 道 路 土 工 擁 壁 工 指 針, 社 団 法 人 日 本 道 路 協 会, pp. 74-75,1999. 2) 道 路 土 工 擁 壁 工 指 針, 社 団 法 人 日 本 道 路 協 会, p. 82,1999. 3) 渕 靖 文, 長 友 克 寛, 松 山 哲 也, 松 原 三 郎 :ブロ ック 積 み 擁 壁 模 型 の 動 的 安 定 性 に 及 ぼす 背 面 土 の 影 響, 土 木 学 会 四 国 支 部 技 術 研 究 発 表 会 講 演 概 要 集, 12 巻,6 号,pp. 386-387,2006. 4) 渕 靖 文, 長 友 克 寛, 松 山 哲 也 :ブロック 積 擁 壁 の 連 結 法 が 動 的 挙 動 に 与 える 影 響,コンクリ-ト 工 学 年 次 論 文 集,Vol. 29,No. 3,pp. 523-528,2007. 5) 橋 本 彰 博, 安 福 規 之, 末 松 吉 生, 小 松 利 光 : 抵 抗 板 を 有 する 空 積 みブロック 構 造 の 滑 動 抵 抗 とその 評 価, 公 益 社 団 法 人 地 盤 工 学 会 中 国 支 部 論 文 報 告 集, 地 盤 と 建 設,Vol. 30,No. 1,pp. 27-37,2012. 78