2011 年 ( 平 成 23 年 )2 月 25 日 国 際 的 な 子 の 奪 取 の 民 事 面 に 関 する 条 約 の 批 准 についての 意 見 書 大 阪 弁 護 士 会 会 長 金 子 武 嗣 第 1 趣 旨 政 府 は,ハーグ 国 際 私 法 会 議 において 制 定 された 国 際 的 な 子 の 奪 取 の 民 事 面 に 関 する 条 約 ( 以 下 ハーグ 条 約 という )について, 批 准 に 向 けた 前 向 きな 検 討 を 行 うと 発 表 している ハーグ 条 約 の 国 境 を 越 えた 子 の 連 れ 去 りについて 法 と 裁 判 による 解 決 を 行 う 基 盤 を 与 え,これによって 国 境 を 越 えた 子 の 連 れ 去 りを 抑 制 するという 側 面 に 着 目 した 場 合,その 趣 旨 は 十 分 に 理 解 できるもので ある ただ,ハーグ 条 約 の 形 式 的 な 適 用 により, 実 質 的 に 子 どもの 権 利 を 侵 害 する 恐 れのある 事 案 や,いわゆるドメスティック バイオレンスの 被 害 者 に 不 当 な 結 論 を 生 じさせる 事 案 が 存 することも 考 えられ,またハーグ 条 約 の 基 本 的 な 発 想 と 従 来 のわが 国 の 法 制 度 との 整 合 性 についても,いまだ 調 整 の 必 要 な 点 もあ る 批 准 にあたっては,これらの 問 題 にいかなる 対 応 が 可 能 であるのかについ て 十 分 な 検 討 を 行 い, 実 施 法 の 制 定 その 他 条 約 実 施 のための 施 策 において 必 要 な 措 置 をとるべきである 加 えて, 条 約 の 締 結 から 実 施 法 の 制 定 に 至 るまでの 過 程 は, 出 来 る 限 り 国 民 に 分 かりやすい 形 で 開 示 され, 周 知 されるとともに, 特 に 在 外 邦 人 に 対 する 情 報 提 供 や 援 助 の 体 制 整 備 がなされるべきである 第 2 理 由 1 ハーグ 条 約 の 内 容 ハーグ 条 約 は, 子 どもが, 片 方 の 親 の 監 護 権 を 侵 害 して 常 居 所 地 国 から 他 国 に 連 れ 去 られた 場 合, 残 された 親 の 申 立 てにより, 子 どもを 常 居 所 地 国 へ 返 還 する 制 度 を 定 めたものである 双 方 の 親 の 間 で, 子 どもの 親 権 や 監 護 権, 具 体 的 な 養 育 方 法 について 争 いが ある 場 合 には, 子 の 最 善 の 利 益 を 基 準 として 常 居 所 地 国 の 裁 判 所 において 法 に 従 った 解 決 がなされるべきであり, 現 実 にもわが 国 を 含 む 多 くの 国 において, このような 手 続 が 存 在 するところである 1
ところが, 国 境 を 越 えた 子 どもの 連 れ 去 りがあった 場 合,ハーグ 条 約 が 提 供 するシステムがない 中 では, 残 された 親 は, 連 れ 去 った 親 の 住 む 国 において, その 国 の 定 める 手 続 をとらなければ 実 効 性 がないこととなる この 場 合, 異 な る 法 制 度 や 言 語, 連 れ 去 った 親 や 子 の 居 場 所 の 特 定, 状 況 の 立 証 など 多 くの 側 面 で 残 された 親 に 多 大 な 手 続 的 負 担 があり, 法 的 手 続 をとること 自 体 が 困 難 と なる このため, 親 権 や 監 護 権 をめぐる 争 いがある 場 合, 常 居 所 地 国 で 適 正 な 法 的 手 続 をとるのではなく, 仮 に 同 国 内 ではそれが 違 法 であったとしても, 子 どもを 他 国 へ 連 れ 去 るほうが 連 れ 去 り 親 にとって 有 利 であるということになり, 結 果 として 子 どもを 連 れ 去 って 国 境 をこえる 親 が 発 生 し, 子 どもをそれまでの 環 境 から 引 き 離 し, 子 どもと 残 された 親 との 交 流 の 機 会 を 奪 うことにつながり, 子 どもに 悪 影 響 を 及 ぼすことになる ハーグ 条 約 は,このような 場 合 に,16 歳 未 満 の 子 どもに 限 定 して, 迅 速 か つ 実 効 的 に, 子 どもを 常 居 所 地 国 へ 返 還 する 手 続 を 定 めるものであり, 子 ども の 連 れ 去 りに 対 する 法 的 対 応 方 法 を 与 え,これにより 親 権 や 監 護 権 をめぐる 紛 争 に 関 して 常 居 所 地 の 裁 判 所 において 法 に 従 った 手 続 をとることを 促 し, 違 法 な 子 の 連 れ 去 りを 抑 止 しようとするものである さらに,ハーグ 条 約 において は, 常 居 所 地 国 への 返 還 が 必 ずしも 残 された 親 への 返 還 を 意 味 するのではなく, 最 終 的 な 子 の 親 権 や 監 護 権 は 常 居 所 地 の 裁 判 所 で 決 定 されるものであって,そ の 趣 旨 は 十 分 理 解 できるところである 2 日 本 をめぐる 子 の 連 れ 去 りの 状 況 現 在, 締 約 国 の 一 部 から, 日 本 がこの 条 約 を 批 准 していないことにより, 日 本 への 違 法 な 子 どもの 連 れ 去 りが 相 当 数 発 生 し, 残 された 親 の 権 利 が 侵 害 され ているにもかかわらず,これに 対 する 法 的 対 応 が 困 難 な 状 況 にあるという 批 判 を 受 けている 状 況 にある また 外 国 に 居 住 する 日 本 人 の 親 が, 当 該 国 の 法 制 度 に 従 い, 子 の 監 護 権 を 取 得 したり, 子 を 日 本 に 一 時 的 に 連 れ 帰 る 裁 判 所 の 許 可 を 得 ようとした 場 合 に, わが 国 のハーグ 条 約 への 批 准 が 未 了 であり 仮 に 当 該 日 本 人 の 親 が 実 力 行 使 に 出 た 場 合 には 実 効 的 な 法 的 対 応 が 困 難 という 理 由 で,このような 許 可 が 得 られに くいという 問 題 が 発 生 している なお 逆 に 日 本 から 連 れ 去 られる 子 のケースでは,その 連 れ 去 り 先 は,アジア 諸 国 の 条 約 非 締 約 国 であることが 多 く, 日 本 が 締 結 しても 子 の 返 還 には 役 立 た ないとの 批 判 がある 現 状 はそのようにいえるだろうが,アジア 諸 国 の 中 でも 近 時 シンガポールがこれを 批 准 し,また 韓 国 が 現 在 検 討 中 であるという 状 況 も あり 変 化 の 兆 しが 見 受 けられる 日 本 がハーグ 条 約 を 批 准 すれば, 今 後, 非 締 約 国 が 多 いアジア 諸 国 に 対 して,ハーグ 条 約 の 批 准 を 求 めていき, 将 来 的 に 連 2
れ 去 られた 国 からの 返 還 を 求 めることが 可 能 になる 一 歩 となるものと 考 えられ る ハーグ 条 約 の 批 准 については, 第 2,1 記 載 の 内 容 に 加 えてこれらのような 状 況 をも 考 慮 する 必 要 があり, 総 じて,その 意 義 は 十 分 理 解 できるものである 3 批 准 により 発 生 する 問 題 点 他 方 で,ハーグ 条 約 の 批 准 については, 別 の 側 面 も 十 分 考 慮 されなければな らない 子 どもを 他 国 からわが 国 に 連 れ 帰 った 親 子 を 想 定 すれば,ハーグ 条 約 の 子 どもの 原 則 的 即 時 返 還 という 効 果 は, 時 に 子 どもに 大 きな 負 担 を 課 する ことになる 特 にハーグ 条 約 が 抗 弁 事 由 を 狭 く 解 釈 すべきとしていることから, 連 れ 去 った 親 と 共 にわが 国 に 住 み 続 けることが 子 どもの 最 善 の 利 益 にかなうで あろうと 思 われる 場 合 にまで, 即 時 返 還 が 求 められるという 結 果 に 結 びつくと いう 事 態 も 発 生 しうる さらには, 外 国 でドメスティック バイオレンスの 被 害 に 遭 った 一 方 の 親 が, それから 逃 れるためにやむなく 子 どもを 連 れてわが 国 に 帰 国 した 場 合 に,ハー グ 条 約 の 適 用 により, 連 れ 去 った 親 は, 被 害 を 受 けた 国 に 子 どもと 共 に 戻 るか, 子 どもと 別 れて 子 どもだけを 常 居 所 地 国 へ 戻 すかの 選 択 を 迫 られることになり, 当 該 親 にとって 酷 な 結 果 になるという 点 も 指 摘 される 特 に, 日 本 人 の 国 際 結 婚 の 現 在 の 特 徴 として, 日 本 人 女 性 と 外 国 人 男 性 との 婚 姻 件 数 が, 日 本 人 男 性 と 外 国 人 女 性 との 婚 姻 の5 倍 以 上 多 くあることから 1, 現 在 は, 子 どもの 連 れ 去 り 事 件 については, 日 本 人 女 性 が 海 外 から 子 どもを 連 れ 帰 る 事 案 が 圧 倒 的 に 多 く,その 中 にはドメスティック バイオレンスの 被 害 者 である 日 本 人 女 性 の 事 例 も 含 まれていること,にもかかわらず 常 居 所 地 国 においては 刑 事 訴 追 を 受 け る 可 能 性 すらあることを 考 慮 しなければならない 4 形 式 的 適 用 に 対 する 懸 念 に 対 する 対 応 (1) 序 子 の 連 れ 去 り 事 案 の 中 に, 第 2,3 記 載 のような 懸 念 が 正 に 妥 当 し,ハーグ 条 約 の 形 式 的 な 適 用 が, 子 どもの 最 善 の 利 益 に 反 する 結 果 を 招 く 事 案 が 存 する ことは 確 かである 違 法 な 子 の 国 外 への 連 れ 去 りに 対 する 実 効 的 な 法 的 対 応 策 を 構 築 するというハーグ 条 約 批 准 の 意 義 は 十 分 に 理 解 できるとしても,ハーグ 条 約 の 批 准,わが 国 への 導 入 にあたっては,このような 事 案 に 対 するきめ 細 か な 対 応 を 行 うことができる 制 度 をどのように 構 築 するかという 議 論 を 欠 かすこ とができない 1 国 境 を 超 える 子 の 奪 取 をめぐる 問 題 の 現 状 と 課 題 外 務 省 国 際 法 課 長 岡 野 正 敬, 国 際 法 外 交 雑 誌 109 巻 第 1 号,34 頁 3
この 点 については, 既 にハーグ 条 約 の 締 約 国 となって, 多 くの 実 務 的 な 工 夫 を 積 み 重 ねている 国 から 学 ぶとともに, 日 本 の 実 情 や 法 制 度 を 踏 まえてわが 国 独 自 の 観 点 からの 検 討 を 行 うべきである (2) 抗 弁 事 由 等 の 精 緻 化 既 に, 第 2,3 記 載 のような 懸 念 のある 事 案 が 存 するという 認 識 は,ハーグ 条 約 締 約 国 において, 共 通 のものとなっている このような 懸 念 に 対 する 対 応 として, 抗 弁 事 由 の 適 用,アンダーテイキング 2 やミラーオーダー3の 活 用 等 が 多 くの 国 において 一 般 的 に 提 唱 され, 採 用 されている さらに, 専 門 調 停 制 度 の 活 用 など, 各 国 がそれぞれの 法 域 の 実 情 に 即 した 工 夫 を 行 っている 状 況 にある このうち,まず, 抗 弁 事 由 の 柔 軟 化 は 子 の 迅 速 な 返 還 を 指 向 するハーグ 条 約 の 根 本 的 なあり 方 とは 緊 張 関 係 にあるともいえる しかし,この 点 については ヨーロッパ 人 権 裁 判 所 の2010 年 7 月 6 日 大 法 廷 判 決 が 参 考 になる 同 判 決 は,ハーグ 条 約 による 機 械 的 な 子 どもの 返 還 命 令 が 子 の 最 善 の 利 益 の 観 点 から 問 題 があり,これはヨーロッパ 人 権 条 約 に 反 するとした ここでは,ハーグ 条 約 の 存 在 そのものの 価 値 を 認 めた 上 で 機 械 的 な 適 用 に 対 する 警 鐘 が 鳴 らされた ものと 評 価 でき, 抗 弁 事 由 について, 子 どもの 最 善 の 利 益 の 観 点 からさらなる 精 緻 化 やきめ 細 かな 検 討 が 必 要 である 例 えば 常 居 所 地 国 において 子 どもへの 虐 待 が 行 われている 場 合 には, 子 ども に 対 する 重 大 な 危 険 の 抗 弁 事 由 や, 人 権 及 び 基 本 的 自 由 の 侵 害 の 場 合 に 返 還 を 拒 否 できる 条 項 (ハーグ 条 約 20 条 )など, 条 約 の 中 に 組 み 込 まれた 制 度 を 実 質 的 に 適 用 することができるよう, 解 釈 規 定 を 置 くなどの 国 内 の 施 行 法 の 整 備 に 努 めるべきである さらに,ドメスティック バイオレンスや 連 れ 去 り 親 の 刑 事 訴 追 の 懸 念 につ いては,あくまで 抗 弁 事 由 は 子 どもに 対 する 重 大 な 危 険 であってこの 枠 組 みそのものを 修 正 することはできないとはいえ, 近 時 の 研 究 の 深 化 により, 片 方 の 親 に 対 するドメスティック バイオレンスが 子 どもに 与 える 強 い 悪 影 響 を 引 き 起 こす 恐 れが 高 いことや, 子 どもが 返 還 に 伴 い 連 れ 去 り 親 と 永 続 的 に 分 離 されることにより 子 どもへの 悪 影 響 を 及 ぼすことや, 刑 事 訴 追 の 可 能 性 がある 場 合 にはこの 懸 念 が 一 層 高 まると 考 えられることなどの 観 点 からの 精 緻 化 が 必 要 である (3) 手 続 についての 視 点 また 条 約 を 実 施 する 手 続 についても,できる 限 り 子 の 意 思 を 十 分 反 映 する 内 2 返 還 を 申 し 立 てている 親 ( 連 れ 去 られた 親 )が, 子 の 所 在 国 の 裁 判 所 において, 例 えば 暴 力 をしない 刑 事 告 訴 を 取 り 下 げる 被 申 立 人 ( 連 れ 去 った 親 )から, 子 を 取 り 上 げない といった 約 束 をすること 3 子 供 が 返 還 される 先 の 国 の 裁 判 所 が,アンダーテイキングと 同 じ 内 容 の 命 令 を 出 すこと 4
容 のものとすることが, 子 どもの 権 利 条 約 により 保 障 された 子 どもの 意 見 表 明 権 の 観 点 からも 重 要 である 条 約 の 中 には, 抗 弁 事 由 としての 子 の 異 議 につい ての 規 定 しかこの 件 に 関 する 規 定 が 見 受 けられないが,その 他 の 抗 弁 事 由 を 考 慮 する 上 でも 極 めて 重 要 な 要 素 であり, 条 約 がこの 点 について 消 極 的 な 姿 勢 で あるとはいえないはずである この 点 は 施 行 法 の 中 で 言 及 されるべきである なお, 前 記 のスイスの 国 内 法 の9 条 はこの 点 について 意 識 し, 審 理 の 中 での 当 事 者 ( 当 然 子 どもを 含 むと 解 釈 されている)の 意 見 聴 取 を 義 務 付 ける 規 定 であ り, 参 考 にされるべきである (4)アンダーテイキング,ミラーオーダー 次 に,いわゆるアンダーテイキングやミラーオーダーなどの 制 度 についても, そもそも 法 域 を 異 にする 裁 判 所 間 の 取 り 決 めとして 実 効 性 に 乏 しいという 点 が 指 摘 されているが, 特 に 言 語 の 壁 のある 日 本 において,どの 程 度 この 制 度 を 活 用 できるのかの 検 討 が 必 要 である (5)その 他 さらには, 各 国 独 自 の 運 用 の 中 で 日 本 においてなじみやすいものを 採 り 入 れ る 工 夫 が 必 要 である 特 に, 専 門 調 停 手 続 を 採 用 している 大 陸 ヨーロッパの 一 部 の 国 の 実 践 が 参 考 になるものと 考 えられる 5 日 本 の 法 制 度 との 調 整 次 に, 日 本 においては 従 来, 共 同 親 権 を 前 提 にして, 片 方 の 親 が 他 方 の 親 の 了 解 なしに 子 どもを 連 れ 去 ることそのものは, 原 則 として 違 法 性 を 欠 くものと 考 えられてきたところ,ハーグ 条 約 は, 片 方 の 親 の 了 解 なく 子 どもを 連 れ 去 る ことを 違 法 とするものであり,ハーグ 条 約 とは 基 本 的 な 発 想 に 差 があること, 批 准 により 日 本 国 内 の 上 記 の 考 え 方 に 影 響 を 与 えるおそれがあることという 指 摘 がある この 点, 仮 に 上 記 の 日 本 国 内 の 考 え 方 をいったん 是 とした 場 合 でも, 国 境 を 超 える 子 の 連 れ 去 りは, 法 的 対 応 を 困 難 とするため 違 法 性 が 強 く, 日 本 国 内 で の 連 れ 去 りは 日 本 国 内 の 法 により 対 応 可 能 であるため 違 法 とは 言 えない,ない しは 違 法 性 が 弱 いという 理 解 は 十 分 ありうるのであって, 少 なくともこの 点 の 差 異 が 批 准 の 重 大 な 障 害 になるものではない ただ,この 点 や 離 婚 後 の 単 独 親 権 の 制 度, 面 会 交 流 権 が 明 文 上 の 根 拠 を 欠 く 点 との 関 係 も 含 め, 日 本 国 内 の 法 制 度 との 関 係 及 び 日 本 法 の 整 備 の 問 題 は 十 分 に 検 討 されなければならない 特 に, 日 本 から 子 が 連 れ 去 られた 場 合 にハーグ 条 約 を 利 用 して 返 還 を 求 める 必 要 性 を 考 えれば,ハーグ 条 約 前 文 及 び21 条 の 面 会 交 流 権 に 対 応 して, 日 本 法 の 中 に 面 会 交 流 権 の 根 拠 規 定 を 設 けるべきである このほか, 居 場 所 の 特 定 や 引 き 渡 しの 実 効 性 確 保 など, 本 格 的 な 導 入 にあた 5
っては 技 術 的 に 詰 めなければならない 事 項 も 多 くあり, 批 准 に 向 けてこのよう な 国 内 の 制 度 の 調 整 に 取 り 組 む 必 要 がある さらに 言 えば,これを 取 り 扱 うこ とのできる 専 門 家 の 育 成 が 必 要 である 6 周 知 と 援 助 体 制 の 整 備 ハーグ 条 約 の 適 用 は, 子 どもの 返 還 というある 意 味 激 しい 効 果 を 発 生 させる ものであり, 十 分 な 周 知 期 間 を 置 くことが 必 要 である また 在 外 法 人,とりわ けハーグ 条 約 締 結 国 に 居 住 する 日 本 人 に 対 し, 当 該 国 における 親 子 関 係 法 及 び 離 婚 関 係 法, 子 を 連 れ 去 った 場 合 に 犯 罪 となるか 否 か, 法 律 扶 助 制 度, 親 子 関 係 や 離 婚 等 に 関 して 精 通 している 弁 護 士 等 に 関 する 情 報 も 提 供 すること,ハー グ 条 約 発 効 後 も 引 き 続 き 同 様 の 情 報 提 供 をすることに 加 え, 在 外 領 事 館 におい て 可 能 な 支 援 を 行 なうことを 検 討 するべきである 第 3 まとめ 以 上 のとおりであり,ハーグ 条 約 については, 批 准 を 進 める 理 由 があると 考 えられるとともに, 子 どもの 最 善 の 利 益 の 観 点 からの 懸 念 が 存 する 事 案 に 対 す る 対 応, 日 本 国 内 の 制 度 との 調 整 など, 多 くの 課 題 があり,これに 真 剣 に 取 り 組 むことが 必 要 であるため, 冒 頭 の 結 論 に 達 した 以 上 6