レファレンス 平 成 22 年 2 月 号 現 地 調 査 報 告 ふるさと 納 税 の 現 状 と 課 題 九 州 における 現 地 調 査 を 踏 まえて 財 政 金 融 課 加 藤 慶 一 目 次 はじめに Ⅰ ふるさと 納 税 の 概 要 1 制 度 の 創 設 までの 経 緯 2 制 度 設 計 の 論 点 3 制 度 の 仕 組 み Ⅱ ふるさと 納 税 の 現 状 1 鹿 児 島 県 2 南 阿 蘇 村 3 佐 賀 市 4 福 岡 市 5 まとめ Ⅲ ふるさと 納 税 の 課 題 1 制 度 執 行 上 の 諸 課 題 2 より 根 本 的 な 問 題 点 3 見 直 しの 方 向 性 おわりに 国 立 国 会 図 書 館 調 査 及 び 立 法 考 査 局 レファレンス 2010. 2 119
はじめに 平 成 20 年 度 税 制 改 正 において いわゆる ふ るさと 納 税 が 導 入 された これは 納 税 者 の ふるさと に 対 する 想 いを 税 制 上 後 押 しする という 観 点 から 都 道 府 県 市 区 町 村 に 対 する 寄 附 金 について 極 力 自 己 負 担 の 少 なくなるよ う 個 人 住 民 税 と 所 得 税 からの 控 除 を 拡 充 する ものである 寄 附 金 控 除 という 形 をとってはい るものの 実 質 的 には 税 の 一 部 を ふるさと に 納 税 することと 同 様 の 効 果 をもたらす 制 度 の 導 入 から 2 年 が 経 過 しようとしてい る 今 各 自 治 体 がふるさと 納 税 にどのように 取 り 組 み どの 程 度 の 実 績 を 挙 げているのか あ るいは 制 度 を 執 行 する 上 での 課 題 やふるさと 納 税 そのものに 問 題 点 はないのかといったこと について 一 度 検 証 してみる 必 要 があろう このような 問 題 意 識 から 筆 者 は 昨 年 ( 平 成 21 年 )8 月 3 日 から 6 日 にかけて 九 州 の 4 自 治 体 を 訪 問 し 現 地 調 査 を 行 う 機 会 を 得 た (1) 本 稿 では 以 下 Ⅰでふるさと 納 税 制 度 の 概 要 について 述 べた 後 Ⅱで 現 地 調 査 結 果 の 紹 介 を 交 えてふるさと 納 税 の 現 状 を 見 るとともに Ⅲ で 同 制 度 の 課 題 や 問 題 点 を 指 摘 し 今 後 の 方 向 性 について 若 干 の 問 題 提 起 を 行 うこととする Ⅰ ふるさと 納 税 の 概 要 1 制 度 の 創 設 までの 経 緯 ふるさと 納 税 の 構 想 は 平 成 18 年 10 月 の 西 川 一 誠 福 井 県 知 事 による 故 郷 寄 附 金 控 除 導 入 の 提 案 (2) に 端 を 発 する (3) 同 氏 は 地 方 で 育 ち 都 市 で 働 き 退 職 後 は 地 方 に 戻 るという 人 の 循 環 システム を 踏 まえ 地 方 が 子 供 を 育 む のに 費 やした 行 政 コストを 都 市 から 回 収 する 手 段 はないかという 問 題 意 識 から 納 税 者 が 故 郷 の 自 治 体 に 寄 附 を 行 った 場 合 に それに 見 合 う 税 額 を 所 得 税 と 住 民 税 から 控 除 するという 制 度 を 提 案 した その 後 平 成 19 年 7 月 の 参 議 院 議 員 選 挙 を 控 え 同 年 5 月 1 日 に 菅 義 偉 総 務 大 臣 ( 当 時 ) が 制 度 創 設 に 向 けて 研 究 会 を 立 上 げる 方 針 を 明 らかにした 6 月 1 日 に 総 務 省 が ふるさと 納 税 研 究 会 ( 座 長 : 島 田 晴 雄 千 葉 商 科 大 学 学 長 以 下 研 究 会 )を 立 ち 上 げて 議 論 を 開 始 し 研 究 会 は 10 月 5 日 に ふるさと 納 税 研 究 会 報 告 書 ( 以 下 研 究 会 報 告 書 )をまとめた 研 究 会 報 告 書 の 内 容 は ほぼそのまま 地 方 税 法 等 改 正 案 に 盛 り 込 まれて 翌 年 の 通 常 国 会 に 提 出 され 平 成 20 年 4 月 30 日 に 成 立 した ふ るさと 納 税 に 係 る 部 分 は 平 成 21 年 4 月 1 日 施 行 ではあるが 平 成 20 年 1 月 1 日 以 降 に 支 出 された 寄 附 金 について 適 用 される このため 同 法 案 の 成 立 を 受 けて 各 自 治 体 が 取 組 みを 開 始 しており 平 成 20 年 度 が 実 質 的 な 制 度 のス タートの 年 と 考 えることができる( 表 1 参 照 ) まず ふるさと 納 税 制 度 の 創 設 までの 経 緯 とその 仕 組 みを 確 認 しておく 2 制 度 設 計 の 論 点 ふるさと 納 税 の 制 度 設 計 に 当 たっては 主 として 次 のような 点 が 議 論 の 焦 点 となった (4) ⑴ 訪 問 したのは 鹿 児 島 県 熊 本 県 南 阿 蘇 村 佐 賀 市 および 福 岡 市 である 鹿 児 島 県 庁 では 総 務 部 財 政 課 財 産 活 用 対 策 室 南 阿 蘇 村 役 場 では 総 務 課 佐 賀 市 役 所 では 企 画 調 整 部 総 合 政 策 課 そして 福 岡 市 役 所 では 財 政 局 税 務 部 税 制 課 の 方 々から 貴 重 なお 話 を 伺 った 記 してお 礼 を 申 し 上 げる ⑵ 西 川 一 誠 ( 経 済 教 室 ) 少 子 化 対 策 と 税 源 偏 在 解 消 故 郷 寄 付 金 控 除 導 入 を 日 本 経 済 新 聞 2006.10.20. ⑶ ふるさと 納 税 の 発 端 については これ 以 外 にも 平 岡 秀 夫 衆 議 院 議 員 による 納 税 先 指 定 による 納 税 法 案 谷 垣 禎 一 財 務 大 臣 ( 当 時 )による ふるさと 共 同 税 世 耕 弘 成 参 議 院 議 員 による ふるさと 還 元 税 制 な どの 構 想 がある( 小 林 良 彰 石 上 泰 州 ふるさと 納 税 山 口 県 萩 市 地 方 財 務 653 号, 2008.11, p.88; ふる さと 納 税 私 のアイデア 与 野 党 から 名 乗 り 朝 日 新 聞 2007.5.17.) 120 レファレンス 2010. 2
ふるさと 納 税 の 現 状 と 課 題 ⑴ ふるさと の 定 義 ふるさと 納 税 構 想 の 背 景 には 上 述 のよう に 自 らが 生 まれ 育 った 地 域 への 税 の 還 流 とい う 考 え 方 があった そのため ふるさと 納 税 の 対 象 となる 自 治 体 を 納 税 者 の 出 生 地 等 に 限 定 す るのか 否 かが 論 点 となった この 点 について 納 税 者 が 貢 献 したいと 考 える 自 治 体 は 自 分 の 出 生 地 や 教 育 を 受 けた 地 域 以 外 にも 両 親 の 居 住 地 や 二 地 域 居 住 先 の 自 治 体 などが 想 定 され 納 税 者 によって ふるさ と のイメージは 様 々であると 考 えられる ま た 仮 に ふるさと を 定 義 できたとしても 客 観 的 な 資 料 に 基 づく ふるさと の 確 認 が 困 難 であったり 確 認 のための 事 務 負 担 が 膨 大 に なる 場 合 もありうる そのため 研 究 会 報 告 書 では ふるさと 納 税 の 対 象 とする 自 治 体 には 制 限 を 設 けず 納 税 者 の 意 思 に 委 ねるのが 適 当 で あると 結 論 付 けられた ⑵ 住 民 税 の 諸 原 則 等 との 関 係 ふるさと 納 税 の 仕 組 みとしては 西 川 氏 の 構 想 のような 寄 附 金 控 除 方 式 のほか 納 税 者 が 住 所 地 の 自 治 体 と ふるさと の 自 治 体 に 住 民 税 を 分 割 して 納 付 するという 方 法 が 考 えられ 3 3 る そして ふるさと 納 税 という 名 称 にも 名 残 を 留 めているように 菅 総 務 大 臣 の 当 初 の 想 定 は 後 者 の 税 の 分 割 方 式 であった (5) し かし 研 究 会 では 次 のような 理 由 からこの 方 法 は 採 りえないと 結 論 付 けられた すなわち 住 民 税 は 住 所 地 の 地 方 自 治 体 から 受 ける 警 察 消 防 ごみ 処 理 などの 行 政 サービスの 対 価 ( 地 域 社 会 の 会 費 )と 位 置 付 けられている (6) これは 応 益 負 担 の 原 則 や 負 担 分 任 の 原 則 などと 言 われることもある また 条 例 の 効 力 の 及 ぶ 範 囲 との 関 係 からも 住 所 地 以 外 の 地 方 自 治 体 に 個 人 住 民 税 の 課 税 権 を 認 めることはできない 納 税 者 の 意 思 により 納 税 先 を 任 意 に 選 べる 仕 組 みは 租 税 の 強 制 性 ⑷ 以 下 の 議 論 は 小 池 拓 自 地 方 税 財 政 改 革 と 税 収 の 地 域 間 格 差 ふるさと 納 税 を 巡 る 議 論 を 超 えて 調 査 と 情 報 ISSUE BRIEF 593 号, 2007.9.13; 山 口 最 丈 ふるさと 納 税 研 究 会 報 告 書 について 地 方 税 58 巻 10 号, 2007.10, pp.18-27; 知 原 信 良 ふるさと 納 税 制 度 とパーセント 法 について 国 際 税 制 研 究 19 号, 2007.11.20, pp.46-54 等 を 基 にまとめた ⑸ ふるさと 納 税 自 民 に 慎 重 論 日 本 経 済 新 聞 2007.5.11. レファレンス 2010. 2 121
と 相 容 れない (7) さらに 住 民 税 の 一 部 を 分 割 して 他 の 自 治 体 に 納 税 する 方 式 を 採 る 場 合 住 民 税 の 全 額 を 住 所 地 の 自 治 体 に 納 付 する 者 と ふるさと 納 税 を 行 う 者 とが 同 じ 行 政 サービスを 享 受 するのは 公 平 性 の 点 で 問 題 がある (8) 以 上 のような 理 由 から (9) 研 究 会 報 告 書 は 寄 附 金 控 除 方 式 とすることを 提 言 した (10) ⑶ 所 得 控 除 か 税 額 控 除 か 寄 附 金 控 除 の 活 用 という 方 式 を 採 る 場 合 税 率 を 掛 ける 前 の 所 得 から 寄 附 金 額 を 控 除 する のか( 所 得 控 除 ) 税 率 を 掛 けた 後 の 納 税 額 から 控 除 するのか( 税 額 控 除 )が 論 点 となる 所 得 控 除 の 場 合 寄 附 金 額 の 全 額 を 控 除 し ても それに 税 率 ( 住 民 税 の 場 合 10%)を 乗 じ た 額 しか 税 額 軽 減 効 果 がないのに 対 して 税 額 控 除 方 式 の 場 合 高 率 の 税 額 控 除 率 を 設 定 する ことで 税 額 軽 減 効 果 を 高 めることができる 研 究 会 では ふるさと 納 税 には 高 い 税 額 軽 減 効 果 が 求 められるとして 税 額 控 除 方 式 が 適 当 であ ると 結 論 付 けられた (11) 加 えて 一 般 的 に 政 策 目 的 を 達 成 するための 控 除 であって 所 得 の 多 寡 によって 税 額 の 軽 減 割 合 を 変 化 させること が 適 当 でないものについては 税 額 控 除 方 式 にな じむとされているところ 寄 附 金 控 除 は 特 に 政 策 的 要 素 が 強 いこと また 税 額 控 除 の 場 合 控 除 額 と 税 額 軽 減 額 が 同 額 となり 納 税 者 に とってその 効 果 を 実 感 しやすく わかりやすい ということも 理 由 として 挙 げられた なお ふるさと 納 税 には 納 税 者 による 選 択 を 通 じた 納 税 者 意 識 の 向 上 等 の 役 割 が 期 待 され ている これは 地 方 自 治 体 のみならず 国 にとっ ても 大 きな 意 義 があるため 国 も 一 定 の 役 割 を 担 うとの 観 点 から 国 税 である 所 得 税 も 控 除 の 対 象 とされた (12) こちらについては 従 来 通 りの 所 得 控 除 方 式 が 維 持 された ⑹ この 点 は 持 田 信 樹 ふるさと 納 税 格 差 是 正 には 消 費 税 改 革 を 産 経 新 聞 2007.5.18; 野 口 悠 紀 雄 ふ るさと 納 税 にだまされてはいけない 週 刊 ダイヤモンド 95 巻 21 号, 2007.6.2, pp.116-117 などでも 指 摘 さ れている 他 方 中 里 透 ( 経 済 教 室 )ふるさと 納 税 導 入 の 是 非 ( 下 ) 地 域 活 性 化 の 手 段 に 日 本 経 済 新 聞 2007.5.30 は 住 民 税 は 実 際 には 応 能 的 な 性 格 を 併 せ 持 つ 課 税 になっているとして 受 益 と 負 担 の 概 念 はふるさ と 納 税 導 入 の 是 非 を 判 断 する 上 で 決 め 手 とはならないとしている ⑺ 野 口 同 上 も 同 旨 ⑻ もっとも この 点 は 寄 附 金 控 除 方 式 を 採 った 場 合 でも 考 慮 する 必 要 のある 問 題 であり 税 の 分 割 方 式 に 特 有 の 問 題 ではない なお 知 原 前 掲 注 ⑷, pp.48-49 は 住 民 税 の 分 割 納 付 が 公 平 性 を 侵 害 するという 見 方 には 大 いに 疑 問 があるとして 本 来 は 税 の 分 割 方 式 を 探 るべきだったとの 立 場 に 立 っている ⑼ 研 究 会 報 告 書 で 示 された 理 由 は 以 上 のとおりであるが このほかにも たとえば 神 野 直 彦 東 京 大 学 大 学 院 経 済 学 研 究 科 教 授 ( 当 時 )は 税 をどのように 負 担 し 集 めた 税 を 何 に 使 うかは 本 来 議 会 を 通 じて 社 会 全 体 の 共 同 意 思 として 決 めるものであるとして 住 民 税 の 分 割 方 式 は 財 政 民 主 主 義 の 考 え 方 に 反 するとしている ( 論 陣 論 客 ふるさと 納 税 どう 見 る 水 野 忠 恒 氏 VS 神 野 直 彦 氏 読 売 新 聞 2007.6.12.) ⑽ 寄 附 税 制 の 拡 充 という 形 を 採 ってもなお 実 質 的 な 面 を 捉 えて 応 益 負 担 の 原 則 や 負 担 分 任 の 原 則 と 相 容 れないとする 見 解 もある( 片 山 善 博 ふるさと 納 税 から 税 と 自 治 の 本 質 を 考 える 税 経 通 信 63 巻 7 号, 2008.7, pp.17-24; 永 橋 利 志 地 方 税 課 税 を 検 討 する ふるさと 納 税 を 中 心 として 税 研 24 巻 2 号, 2008.9, pp.105-110 など ) また 池 上 岳 彦 地 方 税 と 財 政 調 整 制 度 ふるさと 納 税 論 及 び 法 人 二 税 の 分 割 基 準 見 直 し 論 をめぐって 税 62 巻 9 号, 2007.9, pp.4-17 は 寄 附 金 控 除 は 控 除 対 象 団 体 が 寄 附 を 受 ける 機 会 を 拡 大 するという 優 遇 措 置 という 性 格 も 持 つので その 控 除 対 象 は 政 策 主 体 である 各 地 方 自 治 体 が 決 定 すべ きものであるとして 国 が 一 律 に 控 除 対 象 を 決 めることに 対 して 疑 問 を 呈 している ⑾ しかし 野 口 悠 紀 雄 ふるさと 納 税 が 招 くモラルの 低 下 週 刊 ダイヤモンド 95 巻 41 号, 2007.10.27, pp.150-151 のように 寄 附 金 税 制 に 税 額 控 除 を 導 入 するのは 自 己 犠 牲 を 伴 う 利 他 的 行 為 としての 寄 附 の 本 質 と 相 容 れないとする 反 対 論 も 根 強 い ⑿ もっとも 鳥 取 県 など 5 県 知 事 による ふるさと 納 税 制 度 創 設 の 提 言 ( 平 成 19 年 7 月 )では 所 得 税 か ら 60% 住 民 税 から 40% の 税 額 控 除 を 求 めていたが 実 際 に 導 入 された 制 度 では 所 得 税 からの 控 除 はより 限 定 されたものに 留 まっている 122 レファレンス 2010. 2
ふるさと 納 税 の 現 状 と 課 題 ⑷ 適 用 下 限 額 の 問 題 寄 附 金 控 除 が 受 けられる 下 限 額 を 設 けるべ きか 否 かも 問 題 となった この 点 につき もし 下 限 をゼロにすると 少 額 の 寄 附 が 増 えて 事 務 量 が 増 加 することや 寄 附 者 の 真 剣 さへの 悪 影 響 などが 懸 念 されるこ とから 研 究 会 報 告 書 では 従 来 10 万 円 であっ た 住 民 税 の 寄 附 金 控 除 の 下 限 額 を 大 幅 に 引 き 下 げ 所 得 税 と 同 一 の 5,000 円 とすることとされ た なお その 場 合 下 限 額 を 超 えれば 下 限 額 以 下 の 部 分 も 含 めて 控 除 の 対 象 とするのか( 免 税 点 方 式 ) それとも 下 限 額 を 超 えた 部 分 に 限 っ て 控 除 の 対 象 とするのか( 控 除 方 式 )が 問 題 と なる 免 税 点 方 式 を 採 用 した 場 合 適 用 下 限 額 を 挟 んで 負 担 の 逆 転 現 象 が 生 じることや 従 来 の 制 度 との 整 合 性 の 観 点 から 控 除 方 式 が 採 ら れることとなった (13) ⑸ 地 域 間 の 税 収 格 差 の 是 正 ふるさと 納 税 の 構 想 が 持 ち 上 がった 当 初 同 制 度 は 主 として 都 市 と 地 方 の 税 収 格 差 是 正 の 一 環 として 位 置 づけられていた 仮 に ふる さと( 出 身 地 )への 納 税 の 上 限 と 想 定 されてい た 住 民 税 の 1 割 がすべて 動 けば その 規 模 は 約 1 兆 2000 億 円 になると 言 われ (14) 東 京 都 や 大 阪 府 など 制 度 の 導 入 に 伴 い 税 収 が 減 ると 予 想 さ れる 都 市 部 の 自 治 体 は ふるさと 納 税 に 反 対 の 姿 勢 を 示 していた しかし ふるさと 納 税 が 納 税 者 の 任 意 によ るものである 以 上 税 収 格 差 の 是 正 効 果 はそれ ほどないことが 次 第 に 明 らかとなってきた (15) ことなどを 受 けて 研 究 会 においては 当 初 か らふるさと 納 税 が 地 方 団 体 間 の 財 政 力 格 差 の 切 り 札 とは 考 えられていない (16) 3 制 度 の 仕 組 み 以 上 のような 議 論 を 経 て 実 際 に 導 入 された ふるさと 納 税 は 次 のような 仕 組 みである (17) 納 税 者 は 任 意 の 地 方 自 治 体 ( 都 道 府 県 およ ⒀ このあたりの 議 論 は 佐 藤 英 明 ふるさと 納 税 研 究 会 報 告 書 とふるさと 納 税 制 度 ジュリスト 1366 号, 2008.11.1, p.160 に 詳 しく 紹 介 されている ⒁ 住 民 税 1 割 ふるさと に 日 本 経 済 新 聞 2007.5.3. ⒂ ふるさと 納 税 税 収 偏 在 是 正 できぬ 日 本 経 済 新 聞 2007.7.5. ⒃ 佐 藤 前 掲 注 ⒀, p.158; 高 橋 洋 一 地 域 間 格 差 是 正 のため は 誤 解 ふるさと 納 税 の 本 当 の 狙 い 週 刊 ダイ ヤモンド 96 巻 5 号, 2008.2.2, pp.112-114. ⒄ 以 下 の 記 述 は 実 際 のふるさと 納 税 の 手 続 きに 即 して 分 かりやすく 述 べたものであるが 税 法 上 の 改 正 内 容 は 次 のとおりである( 国 税 庁 平 成 20 年 税 制 改 正 の 解 説, pp.647-649 を 参 照 なお 平 成 20 年 度 税 制 改 正 では 住 民 税 の 寄 附 金 控 除 の 対 象 として 一 定 の 要 件 を 満 たす 条 例 で 定 める 寄 附 金 が 加 えられたが ふるさと 納 税 と は 直 接 関 係 がないため 以 下 の 記 述 では 割 愛 している ) すなわち 従 来 住 民 税 には 都 道 府 県 共 同 募 金 会 日 本 赤 十 字 社 都 道 府 県 市 区 町 村 に 対 する 寄 附 金 控 除 の 制 度 が 存 在 したところ その 適 用 下 限 額 が 10 万 円 から 5,000 円 に 引 き 下 げられるとともに 控 除 対 象 限 度 額 が 総 所 得 金 額 等 の 25% から 30% に 引 き 上 げられた また 控 除 方 式 が 所 得 控 除 から 税 額 控 除 に 改 められた そして 都 道 府 県 市 区 町 村 に 対 する 寄 附 金 控 除 に 従 来 の 控 除 額 ( 以 下 便 宜 基 本 控 除 ( 額 ) とする ) に 加 えて 特 例 控 除 額 という 上 乗 せ 部 分 が 創 設 され 控 除 率 は(90% - 寄 附 者 に 適 用 される 所 得 税 の 限 界 税 率 ) とされた この 特 例 控 除 額 の 上 限 は 個 人 住 民 税 所 得 割 の 1 割 である 基 本 控 除 は 日 本 赤 十 字 社 などに 対 す る 寄 附 金 も 合 わせて 5,000 円 を 超 えれば 適 用 されるのに 対 して 特 例 控 除 は 都 道 府 県 市 区 町 村 に 対 する 寄 附 金 額 が 5,000 円 を 超 えないと 適 用 されない 改 正 点 を 分 かりやすくまとめれば 下 表 のとおりである レファレンス 2010. 2 123
び 市 区 町 村 のどちらでもよい)に 寄 附 を 行 う 寄 附 金 の 支 払 方 法 は 窓 口 に 直 接 現 金 を 持 参 する 方 法 金 融 機 関 等 における 口 座 振 込 クレジッ トカードを 利 用 したインターネット 上 の 払 込 み など 自 治 体 によって 様 々である 寄 附 をする と 当 該 自 治 体 から 受 領 証 等 が 交 付 される こ れを 添 えて 確 定 申 告 を 行 い その 際 に 寄 附 金 控 除 の 申 告 を 行 えば 寄 附 金 額 の 一 部 がふるさと 納 税 を 行 った 年 の 所 得 税 および 翌 年 度 の 住 民 税 から 控 除 される なお 確 定 申 告 を 行 わない 場 合 住 所 地 の 自 治 体 で 住 民 税 の 寄 附 金 控 除 の 申 告 を 行 えば 所 得 税 からの 控 除 は 受 けられない が 住 民 税 のみから 控 除 が 受 けられる 税 額 控 除 額 の 計 算 はやや 複 雑 である 所 得 税 からの 控 除 については 寄 附 金 額 から 5,000 円 を 差 し 引 いた 額 ( 以 下 寄 附 控 除 対 象 額 )が 所 得 控 除 される 住 民 税 からの 控 除 は 基 本 控 除 と 特 例 控 除 に 分 かれる 1 基 本 控 除 は 寄 附 控 除 対 象 額 の 10% 2 特 例 控 除 は 寄 附 控 除 対 象 額 {90% -( 当 該 納 税 者 に 適 用 される 所 得 税 の 限 界 税 率 )} (18) であり 両 者 の 合 計 額 が 住 民 税 から 税 額 控 除 される 特 例 控 除 については 当 該 納 税 者 の 住 民 税 所 得 割 額 の 1 割 が 上 限 である 以 上 の 結 果 所 得 税 と 住 民 税 を 合 わせた 控 除 額 は 最 大 で 寄 付 控 除 対 象 額 と 等 しくなり 5,000 円 の 自 己 負 担 でふるさと 納 税 を 行 うことができる 以 上 を 分 かりやすく 示 せば 下 の 具 体 例 のようになる Ⅱ ふるさと 納 税 の 現 状 ふるさと 納 税 の 実 績 については 都 道 府 県 レベルでは ふるさと 納 税 情 報 センター のホー ムページ (20) に 集 計 結 果 が 公 表 されている (21) しかし 市 町 村 レベルに 関 しては 網 羅 的 な 集 計 は 行 われていないようであり 新 聞 報 道 等 でも 取 り 上 げられる 機 会 が 極 端 に 少 ないように 思 わ ⒅ 90% から 所 得 税 の 限 界 税 率 を 差 し 引 く 趣 旨 は 所 得 税 における 所 得 控 除 との 重 複 を 避 けることにある ⒆ 正 確 には 所 得 税 から 住 民 税 への 税 源 移 譲 に 伴 う 調 整 控 除 があるため 上 限 額 はこれより 少 ない 金 額 となる 調 整 控 除 額 は 世 帯 構 成 や 課 税 総 所 得 金 額 によって 異 なるが たとえば 上 記 の 例 で 納 税 者 が 独 身 者 の 場 合 調 整 控 除 額 は 2,500 円 であり 住 民 税 所 得 割 額 は 300,000 円 - 2,500 円 = 297,500 円 となる したがって 厳 密 には 特 例 控 除 の 限 度 額 は その 10% の 29,750 円 となる ⒇ ふるさと 納 税 情 報 センター http://info.pref.fukui.lg.jp/furusatonouzei/index.html 各 都 道 府 県 の 受 付 実 績 ( 平 成 21 年 3 月 31 日 現 在 ) http://info.pref.fukui.lg.jp/furusatonouzei/katsudou/ uketsuke-zisseki/kihuuketuke-todouhuken-h21.3.html ; 各 都 道 府 県 の 受 付 実 績 ( 平 成 21 年 1 月 ~ 平 成 21 年 11 月 30 日 現 在 ) http://info.pref.fukui.lg.jp/furusatonouzei/katsudou/uketsuke-zisseki/kihuuketuketodouhuken-h21.11.html ; 各 都 道 府 県 内 市 町 村 の 受 付 実 績 ( 平 成 21 年 3 月 31 日 現 在 ) http://info.pref. fukui.lg.jp/furusatonouzei/katsudou/uketsuke-zisseki/kihuuketuke-todouhuken-sityouson-h21.3.html 124 レファレンス 2010. 2
ふるさと 納 税 の 現 状 と 課 題 れる まして ふるさと 納 税 による 寄 附 金 控 除 に 伴 う 減 収 額 のデータは さらに 入 手 が 困 難 で ある そのため 現 地 調 査 では 市 町 村 を 中 心 に 訪 問 し ヒアリングを 行 った 以 下 では 調 査 対 象 とした 自 治 体 におけるこれまでのふるさと 納 税 の 実 績 等 を 紹 介 する もっとも 今 回 の 調 査 先 の 選 定 に 当 たって は 税 収 減 が 予 想 される 大 都 市 と 税 収 増 が 予 想 される 小 規 模 自 治 体 を 選 ぶなど できるだけ 様 々な 意 見 が 得 られるように 心 がけたが 調 査 対 象 は 4 自 治 体 のみであり 地 理 的 にも 九 州 に 限 定 されているため 以 下 の 調 査 結 果 に 基 づく 考 察 が 直 ちに 一 般 化 できるものでないことは あらかじめ 断 っておかねばならない 1 鹿 児 島 県 平 成 21 年 3 月 末 現 在 県 内 の 市 町 村 分 も 含 めた 鹿 児 島 県 への 寄 附 額 は 累 積 で 795 件 63,470,800 円 である (22) 公 表 していない 自 治 体 を 除 けば 寄 附 金 額 では 4 位 件 数 では 1 位 で ある( 表 2 参 照 ) 寄 附 金 額 で 4 位 に 留 まってい るのは 栃 木 県 や 大 阪 府 などが 1 件 で 1 億 円 を 超 えるような 大 口 寄 附 を 獲 得 したためである 件 数 では 他 を 大 きく 引 き 離 しており 鹿 児 島 県 はふるさと 納 税 において 非 常 に 成 功 している 県 といえよう その 理 由 はいくつか 考 えられる 第 一 に 県 内 でふるさと 納 税 の 奪 い 合 いをするのは 非 生 産 的 であるとの 考 えから 県 と 県 内 の 市 町 村 で 協 議 会 を 立 ち 上 げ ふるさと 納 税 に 関 する PR 活 動 を 一 元 的 に 行 っていることが 挙 げられる 寄 附 金 は 一 旦 県 が 受 け 入 れた 後 4 割 を 県 に 6 割 を 市 町 村 に 配 分 する 寄 附 者 は 市 町 村 を 指 定 することができるが 指 定 しない 場 合 は 市 町 村 に 配 分 される 額 のうち 4 分 の 1 を 均 等 割 4 分 の 3 を 人 口 割 で 県 内 の 全 市 町 村 に 配 分 する 第 二 に 東 京 と 大 阪 にある 同 県 の 事 務 所 に 各 5 名 のふるさと 納 税 の 専 従 班 を 置 くととも に 福 岡 を 加 えた 3 事 務 所 を ふるさと 納 税 現 地 推 進 本 部 と 位 置 づけ 45 名 ( 平 成 21 年 4 月 1 日 現 在 )もの 職 員 による 推 進 体 制 を 敷 いてい ることが 挙 げられる 県 人 会 への 出 席 などを 通 じてふるさと 納 税 を PR しているが 鹿 児 島 県 ふるさと 納 税 に 係 る 寄 附 金 は それを 受 領 した 地 方 自 治 体 の 地 方 交 付 税 の 算 定 に 当 たって 基 準 財 政 収 入 額 には 組 み 入 れられない( 国 税 庁 前 掲 注 ⒄, p.649.) したがって ふるさと 納 税 を 受 けても その 分 だけ 当 該 自 治 体 の 地 方 交 付 税 額 が 減 少 するということはない 脚 注 も 参 照 レファレンス 2010. 2 125
は 県 人 会 の 活 動 が 活 発 とのことであり このあ たりが 成 功 の 一 因 であると 考 えられる また 以 上 のような 鹿 児 島 県 の 取 組 みがマ スコミに 頻 繁 に 取 り 上 げられたこと (23) も 奏 功 していると 思 われる 2 南 阿 蘇 村 平 成 20 年 12 月 末 までに 南 阿 蘇 村 には 18 件 1,895,000 円 の 寄 附 があった 寄 附 金 控 除 の 申 告 件 数 はゼロであり ふるさと 納 税 に 伴 う 減 収 は 生 じていない 1 件 で 1,000,000 円 の 大 口 寄 附 を 除 けば この 実 績 額 はおよそ 当 初 の 想 定 通 りで 村 の 財 政 にとっては 助 かる 額 であるとの ことであった( 平 成 20 年 度 の 村 税 歳 入 は 約 10 憶 円 ) 南 阿 蘇 村 においても ふるさと 納 税 はま ずまず 成 功 していると 言 ってよいであろう その 理 由 としては まず そもそも 村 の 財 政 規 模 が 大 きくないため ふるさと 納 税 の 絶 対 額 は 少 なくとも それなりの 効 果 があるという ことが 挙 げられる そして 南 阿 蘇 村 の 別 荘 地 としての 特 殊 性 も 貢 献 していると 考 えられる すなわち 将 来 同 村 に 移 住 する 予 定 の 者 が 現 役 のうちに 村 に 貢 献 しておきたいとの 理 由 でふるさと 納 税 を 行 ったケースが 全 18 件 の 寄 附 のうち 3 件 あっ たとのことである なお ふるさと 納 税 の PR のために 専 従 職 員 を 置 くようなことはせず 寄 附 者 へのお 礼 の 品 にも 元 々あった 村 歌 の CD 等 を 活 用 するなど 極 力 コストを 省 いていることも 財 政 に 貢 献 し ているといえよう さらに 他 の 自 治 体 にふるさと 納 税 を 行 う 住 民 がほとんどおらず 減 収 が 極 めて 小 さい( 平 成 20 年 12 月 末 現 在 ではゼロ)ことも 大 きいであ ろう この 点 は 後 に 見 る 福 岡 市 と 大 きな 対 比 を 示 す 3 佐 賀 市 ふるさと 納 税 による 平 成 20 年 度 の 佐 賀 市 へ の 寄 附 は 21 名 1,292,000 円 である また 住 民 による 他 の 自 治 体 への 寄 附 に 伴 う 平 成 21 年 度 の 住 民 税 の 減 収 額 は 570,000 円 である PR 等 の 経 費 に 約 80 万 円 かかっており 費 用 対 効 果 の 観 点 からは 疑 問 符 がつくとのことであった 佐 賀 市 の 実 績 は 鹿 児 島 県 や 南 阿 蘇 村 と 次 に 見 る 福 岡 市 のちょうど 中 間 といった 状 況 で ある 鹿 児 島 県 のように 専 従 職 員 を 置 くといっ た 対 応 は 行 っていないが 県 人 会 やイベントで の PR 寄 附 者 の 利 便 性 の 向 上 など 他 の 自 治 体 と 比 べてふるさと 納 税 への 取 組 みが 不 足 して いるわけではない それにもかかわらず 増 減 収 で 採 算 がとれていないというのは 南 阿 蘇 村 の ような 特 殊 要 因 ( 別 荘 地 )が 見 当 たらない 一 方 都 市 部 ゆえ 寄 附 金 控 除 に 伴 う 減 収 額 もかなり あるというのが 原 因 ではなかろうか 4 福 岡 市 平 成 21 年 6 月 末 現 在 ふるさと 納 税 による 福 岡 市 への 寄 附 は 106 名 3,082,634 円 である また 住 民 による 他 の 自 治 体 へのふるさと 納 税 に 伴 う 平 成 21 年 度 の 住 民 税 の 減 収 額 は 17,675,219 円 であり このほかに PR 等 の 経 費 として 約 190 万 円 をかけている ふるさと 納 税 による 寄 附 額 を 大 幅 に 上 回 る 減 収 が 生 じてお り 鹿 児 島 県 や 南 阿 蘇 村 とは 対 照 的 に ふるさ と 納 税 が 導 入 されたことにより 財 政 上 のマイ ナスの 影 響 を 受 けている (24) その 理 由 としては 福 岡 市 は 九 州 はもとよ ふるさと 納 税 鹿 児 島 最 多 475 件 日 本 経 済 新 聞 2008.11.21; ふるさと 納 税 鹿 児 島 好 調 産 経 新 聞 2009.1.6; 自 治 体 の 努 力 で 明 暗 ふるさと 納 税 導 入 1 年 税 務 経 理 8915 号, 2009.5.15, pp.10-12 など ふるさと 納 税 を 行 った 者 の 住 所 地 の 地 方 自 治 体 の 減 収 額 は 地 方 交 付 税 の 算 定 に 当 たって 基 準 財 政 収 入 額 か ら 控 除 される( 国 税 庁 前 掲 注 ⒄, p.649.) 地 方 交 付 税 額 は 基 準 財 政 需 要 額 - 基 準 財 政 収 入 額 により 求 められ るので 基 準 財 政 収 入 額 が 小 さくなれば 地 方 交 付 税 額 は 増 えることになる しかし 基 準 財 政 収 入 額 の 算 定 に 当 たり 住 民 税 はその 75% しか 組 み 入 れられないため 寄 附 金 控 除 に 伴 う 減 収 の 25% 分 は 地 方 交 付 税 によっ ても 補 填 されない 126 レファレンス 2010. 2
ふるさと 納 税 の 現 状 と 課 題 り 全 国 から 人 が 集 まってくるため これらの 者 が 自 分 の 故 郷 にふるさと 納 税 をすることに 伴 う 減 収 額 が 非 常 に 大 きいことが 挙 げられる 制 度 の 導 入 前 から 予 想 されていたように 都 市 部 ほ ど 減 収 が 大 きくなるという 傾 向 が 見 てとれる さらに この 減 収 を 穴 埋 めするために 少 しでも 寄 附 を 獲 得 しようと PR 活 動 を 活 発 にすれば 経 費 がかかってマイナスになるという まさに 板 挟 みの 状 況 に 置 かれている 5 まとめ 以 上 をまとめると ふるさと 納 税 の PR に 成 功 した 自 治 体 あるいは 地 方 部 の 自 治 体 と 都 市 部 の 自 治 体 との 間 で 明 暗 がはっきりと 分 かれ たといえる それは 集 めた 寄 附 金 額 の 多 寡 だ けではなく 寄 附 金 控 除 に 伴 う 減 収 の 面 でもそ うである また 実 績 の 差 だけに 留 まらず そ れに 伴 って 各 自 治 体 のふるさと 納 税 に 対 する 見 方 や 取 組 みの 姿 勢 にも 差 が 見 られる( 温 度 差 がある) 点 は 重 要 であろう ラリーマンは 年 末 調 整 を 受 けるため 確 定 申 告 になじみがなく ふるさと 納 税 を 敬 遠 する 要 因 のひとつとして 指 摘 されている (25) これは 現 地 調 査 においてもしばしば 指 摘 されたことであ る そのため 寄 附 の 証 明 書 を 勤 務 先 に 提 出 す ることにより ふるさと 納 税 の 寄 附 金 控 除 も 年 末 調 整 で 対 応 できるようにすべきとの 指 摘 があ る (26) ⑵ 5,000 円 の 自 己 負 担 住 民 税 における 寄 附 金 控 除 の 適 用 下 限 額 は 従 来 と 比 べれば 大 幅 に 引 き 下 げられたものの Ⅰ- 1 で 見 たような 議 論 の 結 果 5,000 円 の 下 限 額 が 残 された そのため 最 低 でも 5,000 円 の 自 己 負 担 をしてまでふるさと 納 税 をしたいとい う 人 がどれほどいるのかが 疑 問 視 され 普 及 の 足 かせになるのではないかとの 懸 念 が 示 されて いる (27) もっとも 現 地 調 査 においては そ れに 同 調 する 声 もあった 一 方 直 接 このような 声 に 接 したことはないとする 自 治 体 もあった Ⅲ ふるさと 納 税 の 課 題 それでは 以 上 の 調 査 結 果 を 踏 まえた 場 合 に 浮 かび 上 がってくる ふるさと 納 税 の 課 題 や 問 題 点 は 何 であろうか まずは ふるさと 納 税 の 普 及 を 阻 害 する 要 因 として 従 来 から 指 摘 され てきた 執 行 上 の 諸 課 題 を 確 認 しておく 1 制 度 執 行 上 の 諸 課 題 ⑴ 確 定 申 告 が 必 要 なこと 寄 附 金 控 除 を 受 けるためには 確 定 申 告 を 行 わなければならないが 日 本 ではほとんどのサ ⑶ 制 度 の 複 雑 さに 伴 う 諸 問 題 上 記 Ⅰ- 2 のとおり ふるさと 納 税 にかかる 寄 附 金 控 除 の 仕 組 みは 非 常 に 複 雑 であるため 受 けられる 控 除 金 額 や 最 少 の 自 己 負 担 (5,000 円 )で 可 能 な 寄 附 の 最 高 額 などが 寄 附 者 にとっ て 分 かりにくい また 従 来 必 ずしも 明 確 に 指 摘 されていな かったように 思 われるが 現 地 調 査 では 寄 附 と 控 除 のつながりが 見 えにくいといった 声 も 聞 かれた つまり 所 得 税 については 寄 附 を 行 っ た 年 の 納 税 額 から 軽 減 を 受 けられるのに 対 し て 前 年 課 税 方 式 を 採 る 住 民 税 については 翌 ( 社 説 )ふるさと 納 税 特 産 品 よりも 使 い 道 で 工 夫 を 毎 日 新 聞 2008.7.12; ふるさと 納 税 記 者 が 体 験 還 付 額 所 得 で 差 出 身 地 以 外 も 可 日 本 経 済 新 聞 2008.11.16; 小 林 石 上 前 掲 注 ⑶, p.98. 西 川 一 誠 ふるさと 納 税 年 末 調 整 で 手 続 き 簡 素 化 を 朝 日 新 聞 2009.3.11. 一 方 で 豊 岡 正 弘 ふるさと 納 税 思 い 入 れ 表 明 は 確 定 申 告 で 朝 日 新 聞 2009.4.18 のように 年 末 調 整 で 対 応 できるようになれば ふる さと 納 税 に 伴 う 控 除 が 他 の 諸 控 除 とまぎれてしまうため 納 税 者 のふるさとへの 思 い 入 れは 確 定 申 告 によっ て 表 明 すべきだとの 見 方 もある ふるさと 納 税 研 究 会 報 告 格 差 是 正 につながらず 5000 円 負 担 増 で 実 効 性 疑 問 東 京 新 聞 2007.10.6; ふ るさと 納 税 : 寄 付 制 度 に 苦 境 の 地 方 歓 迎 都 市 部 には 不 満 毎 日 新 聞 2007.10.6. レファレンス 2010. 2 127
年 度 分 の 納 税 額 から 軽 減 を 受 けることとなり 寄 附 を 行 う 時 点 と 控 除 を 受 ける 時 点 が 時 間 的 に 大 きく 離 れてしまい 両 者 を 関 連 付 けて 捉 える のが 難 しいということである ⑷ その 他 現 地 調 査 では ふるさと 納 税 制 度 の 導 入 を 決 めた 国 による より 積 極 的 な 広 報 活 動 を 望 む 声 があった (28) また 執 行 上 の 諸 課 題 という ことではないが ふるさと 納 税 の 導 入 に 伴 い 地 方 自 治 体 への 寄 附 に 限 って 特 例 控 除 という 形 で 大 幅 に 税 額 控 除 枠 を 拡 大 したため 結 果 とし て 民 間 の 非 営 利 団 体 等 に 対 する 寄 附 が 追 い 出 さ れてしまうのではないかとの 懸 念 も 示 されてい る (29) 2 より 根 本 的 な 問 題 点 以 上 が 主 としてふるさと 納 税 の 普 及 の 阻 害 要 因 という 観 点 からの 諸 課 題 である しかし Ⅱでみた 現 地 調 査 の 結 果 からは 同 制 度 にはこ れに 留 まらない 一 層 根 本 的 な 問 題 点 があるよう に 思 われる 前 述 のように ふるさと 納 税 は すでにそ の 検 討 段 階 において 地 域 間 の 税 収 格 差 の 是 正 効 果 がほとんどないことが 予 想 されていた 制 度 導 入 後 に 書 かれたいくつかの 文 献 でも 同 様 の 評 価 が 下 されており (30) 少 なくとも 現 在 まで のところ この 観 点 からは 効 果 が 小 さいと 言 っ て 間 違 いなさそうである 現 地 調 査 の 結 果 を 見 ても たしかに 南 阿 蘇 村 と 福 岡 市 の 実 績 を 見 れ ば 多 少 の 財 源 移 転 は 認 められるものの その 効 果 は 地 方 自 治 体 の 財 政 規 模 に 比 べてあまりにも 小 さい (31) 今 回 訪 問 した 4 自 治 体 はいずれも ふるさと 納 税 による 格 差 是 正 効 果 は 薄 いとして いる その 意 味 では ふるさと 納 税 の 趣 旨 目 的 から 税 収 格 差 の 是 正 が 外 されたのは 当 然 の 成 り 行 きであったといえよう そして これに 代 わって 登 場 してきた 概 念 が 1 納 税 者 自 身 が 納 税 先 を 選 択 することによ る 納 税 者 意 識 の 涵 養 であり 2 ふるさと の 大 切 さの 再 認 識 であり 3 自 治 体 間 競 争 を 通 じ た 切 磋 琢 磨 であった それでは これらの 趣 旨 目 的 からみて ふるさと 納 税 は 有 効 に 機 能 して いるであろうか ここでは 特 に3の 観 点 から 考 えてみたい Ⅱ- 5 で 述 べたように ふるさと 納 税 の 実 績 では 地 方 部 と 都 市 部 で 明 暗 がはっきりと 分 か れ それに 伴 い 同 制 度 に 対 して 両 者 の 間 で 温 度 差 が 生 じている 自 治 体 間 競 争 の 促 進 という 観 点 からすれば この 結 果 は 必 ずしも 悪 いことと はいえないかもしれない しかし 留 意 しなければならないのは 自 治 体 間 競 争 といっても 各 自 治 体 にできること には 限 りがあるということである たとえば 制 度 の 趣 旨 からくる 制 約 としては 寄 附 金 獲 得 のために 寄 附 者 に 返 礼 を 贈 る 場 合 あまりに 高 価 な 品 物 だと もので 釣 る ようにもとられか ねず そこには 自 ずと 枠 がはめられることにな ろう (32) また 周 辺 自 治 体 や PR 先 の 団 体 等 への 配 慮 からの 自 制 ということもありうる た とえば 福 岡 市 のように 元 来 財 源 が 豊 かだと 見 られている 自 治 体 は 周 辺 自 治 体 への 遠 慮 も あって あまり 大 々 的 な PR 活 動 はやりにくい という 事 情 がある (33) 企 業 や 県 人 会 への PR 鹿 児 島 県 開 発 促 進 協 議 会 鹿 児 島 県 平 成 22 年 度 予 算 等 の 措 置 に 関 する 提 案 要 望 書 2009.7. 片 山 前 掲 注 ⑽, pp.22-23. 小 林 石 上 前 掲 注 ⑶, p.88; 叶 井 泰 幸 ふるさと 納 税 制 度 を 評 価 する( 下 ) 自 治 体 の 組 織 文 化 変 革 の 一 歩 に も 寄 付 集 めに 必 要 な 柔 軟 発 想 地 方 行 政 10053 号, 2009.4.9, p.6 など ふるさと 納 税 による 寄 附 金 額 のデータが 必 ずしも 年 度 単 位 では 得 られないため 正 確 な 計 算 はできないもの の 平 成 20 年 度 の 南 阿 蘇 村 の 歳 入 額 に 占 めるふるさと 納 税 による 増 収 の 割 合 は 0.03% 程 度 でしかない 同 じく 福 岡 市 の 減 収 額 にいたっては 0.005% に 満 たない また 全 国 規 模 で 見 た 場 合 叶 井 同 上, p.2 によれば 平 成 20 年 の 日 本 全 体 の 個 人 寄 附 総 額 は 約 380 億 円 であり 仮 にこの 全 額 がふるさと 納 税 によるものだとしても そ の 規 模 は 全 自 治 体 の 歳 入 規 模 のわずか 0.04% でしかないとされている 128 レファレンス 2010. 2
ふるさと 納 税 の 現 状 と 課 題 についても 鹿 児 島 県 のように 県 が 代 表 して 行 うならともかく 個 々の 市 町 村 がそれぞれ 押 し かければ 迷 惑 にもなりかねない さらに かね てより 減 収 が 予 想 され 費 用 対 効 果 で 割 に 合 わ ないと 考 える 都 市 部 の 自 治 体 などは そもそも 競 争 へのモチベーションが 湧 かないということ も 考 えられる そして 何 より ただでさえ 財 政 状 況 の 厳 しい 地 方 自 治 体 が ふるさと 納 税 に 注 ぎ 込 める 予 算 は 非 常 に 限 られているということ である たとえ 高 価 な 返 礼 品 を 贈 るのでなくと も パンフレットの 印 刷 配 布 などの PR 活 動 や 寄 附 金 の 使 途 の 公 表 等 の 競 争 には 多 くの 経 費 がかかる (34) このような 状 況 を 踏 まえれば 自 治 体 同 士 を 競 争 に 駆 り 立 てるような ふるさと 納 税 の 趣 旨 目 的 の 妥 当 性 が 改 めて 問 われるのではない かと 思 われる 3 見 直 しの 方 向 性 研 究 会 報 告 書 においても ふるさと 納 税 の 実 績 等 を 踏 まえて 同 制 度 をより 使 いやすいも のにするための 見 直 しの 可 能 性 に 言 及 してい る しかし 以 上 に 述 べた 観 点 からは もう 少 し 根 本 的 な 制 度 の 見 直 しということも 視 野 に 入 れる 必 要 があろう 2 で 述 べた 問 題 点 は 突 き 詰 めれば ふるさと 納 税 に 当 初 の 税 収 格 差 是 正 効 果 が 期 待 できないと 明 らかになったにもかか わらず 制 度 の 導 入 自 体 を 見 直 すのではなく はじめに 導 入 ありきでその 趣 旨 目 的 のほうを 置 き 換 えて 議 論 を 進 めたことに 原 因 があるよう に 思 われる とすれば 今 後 の 見 直 しに 当 たっ ては まず 何 のためのふるさと 納 税 なのか をもう 一 度 問 い 直 す 必 要 があるのではなかろ うか (35) 仮 に 税 収 格 差 の 是 正 を 最 終 目 標 に 据 えるので (36) あれば ふるさと 納 税 はいかにも 中 途 半 端 であり 小 手 先 のその 場 しのぎ (37) 脇 道 (38) とのそしりは 免 れまい 地 域 格 差 是 正 のために は もっと 本 質 的 な 解 決 策 を 講 じなければなら ない 具 体 的 には 消 費 税 のような 税 収 の 偏 在 性 の 低 い 税 を 地 方 税 の 基 本 にし 地 方 法 人 二 税 のような 偏 在 性 の 高 い 税 を 国 税 に 移 す 税 源 交 換 などが 有 力 な 選 択 肢 として 挙 げられよう (39) 制 度 の 導 入 以 前 にすでに 野 口 悠 紀 雄 早 稲 田 大 学 大 学 院 ファイナンス 研 究 科 教 授 が 指 摘 してい たように 付 け 焼 刃 的 な 政 策 で 地 域 格 差 の 是 正 を 図 ろうとすれば かえって 格 差 は 拡 大 してし まう (40) そしてもし ふるさと 納 税 の 趣 旨 目 的 は やはり 研 究 会 報 告 書 で 示 されたような 点 だとす るならば 2 で 指 摘 したように 自 治 体 間 競 争 に 伴 う 弊 害 をどう 考 えるのかが 課 題 となる も ちろん 今 後 地 方 分 権 の 流 れの 中 で 自 治 体 間 競 争 は 高 まらざるを 得 ないであろうし 競 争 を 通 じて 最 終 的 に 地 域 が 活 性 化 するならば それ 自 体 は 好 ましいことであろう しかしそれは この 点 は 研 究 会 報 告 書, p.23 でも 懸 念 が 表 明 されており 各 自 治 体 に 抑 制 的 な 対 応 を 求 めているところである しかし 実 際 には 特 にふるさと 納 税 の 導 入 当 初 において 寄 附 者 に 高 価 な 特 産 品 等 を 贈 る 自 治 体 の 例 がしばし ば 報 道 された( ふるさと 納 税 獲 得 合 戦 読 売 新 聞 2008.5.27, 夕 刊 ; ふるさと 納 税 PR 合 戦 先 行 日 本 経 済 新 聞 2008.6.2 など) ふるさと 納 税 情 報 センター 全 国 市 町 村 の ふるさと 納 税 の 推 進 施 策 税 63 巻 9 号, 2008.9, p.158 でも このような 自 治 体 があることが 指 摘 されている 永 橋 前 掲 注 ⑽, p.109 も PR 活 動 には 多 額 の 経 費 が 必 要 であり 資 金 力 のある 自 治 体 とそうでない 自 治 体 と の 格 差 が 拡 大 することへの 懸 念 を 示 している 実 際 研 究 会 報 告 書 が 出 た 後 でさえ 報 道 記 事 や 識 者 による 論 考 等 において ふるさと 納 税 の 目 的 は 税 収 格 差 の 是 正 であるとするものが 多 数 出 ている(ふるさと 納 税 情 報 センター 前 掲 注, p.151; 小 林 石 上 前 掲 注 ⑶, p.87; 永 橋 前 掲 注 ⑽, p.105; 五 十 嵐 敬 喜 何 のための ふるさと 納 税 か 日 本 経 済 新 聞 2008.1.8, 夕 刊 など) 五 十 嵐 同 上. 片 山 前 掲 注 ⑽, p.23. 池 上 前 掲 注 ⑽, p.14. レファレンス 2010. 2 129
(41) 国 から 地 方 への 税 源 移 譲 等 を 通 じた 地 方 財 政 の 充 実 という 競 争 の 土 壌 が 整 うことが 前 提 であり それなくして 自 治 体 間 競 争 のみを 前 倒 しで 進 めれば 格 差 のみが 広 がる 結 果 になり かねない おわりに ふるさと 納 税 には 以 上 に 述 べたような 課 題 や 問 題 点 がある 一 方 評 価 できる 点 もあるこ とは 強 調 しておかねばならない 鹿 児 島 県 では ふるさと 納 税 の 促 進 のための 活 動 を 通 じて 県 人 会 等 とのパイプが 太 くなったとか 県 出 身 者 の 故 郷 を 思 う 気 持 ちに 働 きかけることができたと して 目 に 見 えない 効 果 があったとしている 定 年 後 の 別 荘 購 入 等 を 見 据 えて 南 阿 蘇 村 にふる さと 納 税 を 行 ったというケースも 寄 附 者 の 気 持 ちに 応 えられた 好 例 と 言 ってよいであろう また 多 くの 自 治 体 が 寄 附 金 の 使 途 を 納 税 者 に 選 ばせた 上 で 随 時 ホームページ 等 で 状 況 報 告 を 行 っている その 意 味 では 納 税 者 自 身 によ る 納 税 先 の 選 択 あるいは ふるさと の 大 切 さの 再 認 識 といった 納 税 者 側 の 観 点 からは ふるさと 納 税 は 一 定 の 役 割 を 果 たしているとい えよう (42) しかし 納 税 者 の 視 点 から 評 価 できる 制 度 であっても それを 運 用 するのはそれぞれの 地 方 自 治 体 である その 地 方 自 治 体 の 間 で ふる さと 納 税 は 割 に 合 わないといった 冷 めた 見 方 が 広 まり 果 ては 制 度 そのものが 縮 小 していった のでは 元 も 子 もない 今 後 はこのような 観 点 も 踏 まえて ふるさと 納 税 制 度 の 見 直 しを 検 討 す る 必 要 があろう (かとう けいいち) たとえば 持 田 前 掲 注 ⑹ ; 佐 藤 主 光 ( 経 済 教 室 )ふるさと 納 税 導 入 の 是 非 ( 上 ) 格 差 是 正 策 として 不 適 切 日 本 経 済 新 聞 2007.5.29 など 片 山 前 掲 注 ⑽は 所 得 税 と 法 人 事 業 税 の 税 源 交 換 を 提 案 している また 小 池 前 掲 注 ⑷, pp.7-9 に 地 域 間 格 差 是 正 のための 抜 本 的 対 策 として 現 在 提 案 されているいくつかの 案 が 紹 介 さ れている ただし 地 域 間 の 偏 在 性 が 低 い 地 方 消 費 税 といえども 人 口 1 人 当 たりの 税 収 額 で 1.8 倍 の 開 きがあり( 人 口 一 人 当 たりの 税 収 額 の 指 数 ( 平 成 19 年 度 決 算 ) 総 務 省 ホームページ http://www.soumu.go.jp/main_ sosiki/jichi_zeisei/czaisei/czaisei_seido/pdf/02-17.pdf ) 税 源 交 換 のみで 税 収 格 差 が 解 消 するわけではない 池 上 前 掲 注 ⑽, pp.12-14 や 片 山 前 掲 注 ⑽, p.24 が 指 摘 するように 税 制 面 での 改 革 に 加 えて 財 政 調 整 制 度 としての 地 方 交 付 税 の 見 直 しも 不 可 欠 であろう 野 口 前 掲 注 ⑹. もっとも 国 から 地 方 への 税 源 移 譲 にも 問 題 が 無 いわけではない 地 方 の 課 税 自 主 権 の 拡 大 に 伴 い 地 方 自 治 体 同 士 が 課 税 ベースを 引 き 込 むために 租 税 競 争 を 繰 り 広 げるといった 懸 念 もある 点 には 留 意 が 必 要 である 研 究 会 の 座 長 を 務 めた 島 田 晴 雄 千 葉 商 科 大 学 学 長 も 税 制 という 厳 格 な 分 野 に 地 方 を 思 う 制 度 を 取 り 入 れ ることができた 点 に 象 徴 的 な 意 味 を 見 出 している( 島 田 晴 雄 インタビュー ふるさと 納 税 へ 込 めた 想 い その 創 設 の 背 景 とねらい 税 63 巻 9 号, 2008.9, pp.36-37.) 130 レファレンス 2010. 2