経済・物価情勢の展望(2016年7月)



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経済・物価情勢の展望(2015年10月)

2000 年 12 月 輸 出 の 減 速 によりテンポはやや 鈍 化 しているものの 緩 やかな 回 復 を 続 けている 2001 年 1 月 緩 やかな 回 復 を 続 けているが そのテンポは 輸 出 の 減 速 により 鈍 化 している 2001 年 2 月 緩 やかな 回 復 を 続 け


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平成24年度税制改正要望 公募結果 153. 不動産取得税

記者発表資料

市況トレンド

Microsoft PowerPoint - 報告書(概要).ppt

平成24年度 業務概況書


公 的 年 金 制 度 について 制 度 の 持 続 可 能 性 を 高 め 将 来 の 世 代 の 給 付 水 準 の 確 保 等 を 図 るため 持 続 可 能 な 社 会 保 障 制 度 の 確 立 を 図 るための 改 革 の 推 進 に 関 する 法 律 に 基 づく 社 会 経 済 情


第 3 四 半 期 運 用 状 況 の 概 要 第 3 四 半 期 末 の 運 用 資 産 額 は 2,976 億 円 となりました 第 3 四 半 期 の 修 正 総 合 収 益 率 ( 期 間 率 )は +1.79%となりました なお 実 現 収 益 率 は +0.67%です 第 3 四 半 期

2016年夏のボーナス見通し

検 討 検 討 の 進 め 方 検 討 状 況 簡 易 収 支 の 世 帯 からサンプリング 世 帯 名 作 成 事 務 の 廃 止 4 5 必 要 な 世 帯 数 の 確 保 が 可 能 か 簡 易 収 支 を 実 施 している 民 間 事 業 者 との 連 絡 等 に 伴 う 事 務 の 複 雑

Ⅰ 人 口 の 現 状 分 析 Ⅰ 人 口 の 現 状 分 析 1 人

2

1 予 算 の 姿 ( 平 成 25 当 初 予 算 ) 長 野 県 財 政 の 状 況 H 現 在 長 野 県 の 予 算 を 歳 入 面 から 見 ると 自 主 財 源 の 根 幹 である 県 税 が 全 体 の5 分 の1 程 度 しかなく 地 方 交 付 税 や 国 庫 支

タイトル

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Economic Trends    マクロ経済分析レポート

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社 会 保 障 税 一 体 改 革 ( 年 金 分 野 )の 経 緯 社 会 保 障 税 一 体 改 革 大 綱 (2 月 17 日 閣 議 決 定 ) 国 年 法 等 改 正 法 案 (2 月 10 日 提 出 ) 法 案 を 提 出 する または 法 案 提 出 を 検 討 する と された 事

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スライド 1

セルフメディケーション推進のための一般用医薬品等に関する所得控除制度の創設(個別要望事項:HP掲載用)

Ⅰ. 量 的 質 的 金 融 緩 和 の 拡 大 量 的 質 的 金 融 緩 和 の 拡 大 マネタリーベースの 年 間 増 加 ペースを 60~70 兆 円 から 80 兆 円 に 拡 大 長 期 国 債 の 保 有 残 高 の 年 間 増 加 額 を 80 兆 円 に +30 兆 円 長 期 国

片岡氏提出資料

は 固 定 流 動 及 び 繰 延 に 区 分 することとし 減 価 償 却 を 行 うべき 固 定 の 取 得 又 は 改 良 に 充 てるための 補 助 金 等 の 交 付 を 受 けた 場 合 にお いては その 交 付 を 受 けた 金 額 に 相 当 する 額 を 長 期 前 受 金 とし

平 成 27 年 度 第 3 四 半 期 運 用 状 況 の 概 要 第 3 四 半 期 の 運 用 資 産 額 は 2 兆 4,339 億 円 となりました 第 3 四 半 期 の 修 正 総 合 収 益 率 ( 期 間 率 )は +2.05%となりました 実 現 収 益 率 は +1.19%です

(5) 給 与 制 度 の 総 合 的 見 直 しの 実 施 状 況 について 概 要 の 給 与 制 度 の 総 合 的 見 直 しにおいては 俸 給 表 の 水 準 の 平 均 2の 引 き 下 げ 及 び 地 域 手 当 の 支 給 割 合 の 見 直 し 等 に 取 り 組 むとされている

損 益 計 算 書 自. 平 成 26 年 4 月 1 日 至. 平 成 27 年 3 月 31 日 科 目 内 訳 金 額 千 円 千 円 営 業 収 益 6,167,402 委 託 者 報 酬 4,328,295 運 用 受 託 報 酬 1,839,106 営 業 費 用 3,911,389 一

金融緩和強化のための新しい枠組み:「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」

ほかに パート 従 業 員 らの 厚 生 年 金 加 入 の 拡 大 を 促 す 従 業 員 五 百 人 以 下 の 企 業 を 対 象 に 労 使 が 合 意 すれば 今 年 十 月 から 短 時 間 で 働 く 人 も 加 入 できる 対 象 は 約 五 十 万 人 五 百 人 超 の 企 業

第4回税制調査会 総4-1

2 役 員 の 報 酬 等 の 支 給 状 況 役 名 法 人 の 長 理 事 理 事 ( 非 常 勤 ) 平 成 25 年 度 年 間 報 酬 等 の 総 額 就 任 退 任 の 状 況 報 酬 ( 給 与 ) 賞 与 その 他 ( 内 容 ) 就 任 退 任 16,936 10,654 4,36

Microsoft Word レポート(最終)

減 少 率 ) と 平 均 余 命 の 伸 びを 勘 案 した 一 定 率 (0.3%) の 合 計 である スライド 調 整 率 を 差 し 引 いて 年 金 額 の 改 定 が 行 われる( 図 表 ) ただし マクロ 経 済 スライドが 完 全 に 実 施 されるのは 賃 金 や 物 価 があ

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3 圏 域 では 県 北 沿 岸 で2の 傾 向 を 強 く 見 てとることができます 4 近 年 は 分 配 及 び 人 口 が 減 少 している 市 町 村 が 多 くなっているため 所 得 の 増 加 要 因 を 考 える 場 合 は 人 口 減 少 による 影 響 についても 考 慮 する

平成25年度 独立行政法人日本学生支援機構の役職員の報酬・給与等について

小 売 電 気 の 登 録 数 の 推 移 昨 年 8 月 の 前 登 録 申 請 の 受 付 開 始 以 降 小 売 電 気 の 登 録 申 請 は 着 実 に 増 加 しており これまでに310 件 を 登 録 (6 月 30 日 時 点 ) 本 年 4 月 の 全 面 自 由 化 以 降 申

経済・物価情勢の展望(2016年4月)

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第25回税制調査会 総25-1

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スライド 1

市 町 村 税 の 概 況 市 町 村 税 の 概 況 は 平 成 25 年 度 地 方 財 政 状 況 調 査 平 成 26 年 度 市 町 村 税 の 課 税 状 況 等 の 調 及 び 平 成 26 年 度 固 定 資 産 の 価 格 等 の 概 要 調 書 等 報 告 書 等 の 資 料 に

Microsoft Word - 目次.doc

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注 記 事 項 (1) 当 四 半 期 連 結 累 計 期 間 における 重 要 な 子 会 社 の 異 動 : 無 ( 連 結 範 囲 の 変 更 を 伴 う 特 定 子 会 社 の 異 動 ) 新 規 - 社 除 外 - 社 (2) 四 半 期 連 結 財 務 諸 表 の 作 成 に 特 有 の

2020年の住宅市場 ~人口・世帯数減少のインパクト~

平成28年11月期第3四半期決算短

平成29年2月期 第2四半期決算短信

Microsoft Word - J_ エンゲル.docx

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Q IFRSの特徴について教えてください

消 費 ~ 軽 減 率 消 費 の 軽 減 率 制 度 が 消 費 率 10% 時 に 導 入 することとされています 平 成 26 年 4 月 1 日 平 成 27 年 10 月 1 日 ( 予 定 ) 消 費 率 5% 消 費 率 8% 消 費 率 10% 軽 減 率 の 導 入 平 成 26

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業 種 別 業 況 は 製 造 業 が 46.2 で 前 期 より 12.3 ポイント 低 下 ( 前 期 33.9) し 建 設 業 が 48.1 で 13.1 ポイントの 低 下 商 業 サービス 業 が 65.1 で 3.4 ポイントの 低 下 となりました 製 造 業 のポイントの 低 下

その 他 事 業 推 進 体 制 平 成 20 年 3 月 26 日 に 石 垣 島 国 営 土 地 改 良 事 業 推 進 協 議 会 を 設 立 し 事 業 を 推 進 ( 構 成 : 石 垣 市 石 垣 市 議 会 石 垣 島 土 地 改 良 区 石 垣 市 農 業 委 員 会 沖 縄 県 農

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共 通 認 識 1 官 民 較 差 調 整 後 は 退 職 給 付 全 体 でみて 民 間 企 業 の 事 業 主 負 担 と 均 衡 する 水 準 で あれば 最 終 的 な 税 負 担 は 変 わらず 公 務 員 を 優 遇 するものとはならないものであ ること 2 民 間 の 実 態 を 考


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経済・物価情勢の展望(2016年1月)

Microsoft Word - 佐野市生活排水処理構想(案).doc

Microsoft Word - N 容積率.doc

03 平成28年度文部科学省税制改正要望事項

●電力自由化推進法案

2 1. 交 易 条 件 の 改 善 の 影 響 輸 出 輸 入 デフレーターの 動 向 と 交 易 条 件 まずは GDP デフレーターの 動 向 を 見 ていこう GDP デフレー ターは 前 期 の 94.2 から 94.6 へと 0.4% 増 加 している GDP デフレーター 14 年 I

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Microsoft Word - 【QA】外貨MMF受付停止.doc

プラス 0.9%の 年 金 額 改 定 が 行 われることで 何 円 になりますか また どのような 計 算 が 行 われているのですか A これまでの 年 金 額 は 過 去 に 物 価 が 下 落 したにもかかわらず 年 金 額 は 据 え 置 く 措 置 をと った 時 の 計 算 式 に 基

子ども手当見直しによる家計への影響~高所得者層の可処分所得は大幅減少に

Microsoft Word )40期決算公開用.doc

国 家 公 務 員 の 年 金 払 い 退 職 給 付 の 創 設 について 検 討 を 進 めるものとする 平 成 19 年 法 案 をベースに 一 元 化 の 具 体 的 内 容 について 検 討 する 関 係 省 庁 間 で 調 整 の 上 平 成 24 年 通 常 国 会 への 法 案 提

国立研究開発法人土木研究所の役職員の報酬・給与等について

注 記 事 項 (1) 四 半 期 財 務 諸 表 の 作 成 に 特 有 の 会 計 処 理 の 適 用 : 無 (2) 会 計 方 針 の 変 更 会 計 上 の 見 積 りの 変 更 修 正 再 表 示 1 会 計 基 準 等 の 改 正 に 伴 う 会 計 方 針 の 変 更 : 無 2 1

1 はじめに 財 政 の 役 割 資 源 配 分 ( 公 共 財 供 給 ) 所 得 再 分 配 経 済 安 定 化 ( 景 気 調 整 ) 地 方 自 治 体 の 役 割 は 資 源 配 分 ( 公 共 財 の 安 定 供 給 )とされる ( 所 得 再 分 配 や 経 済 安 定 化 は 国 の

1. 運 用 パフォーマンスの 状 況 1 収 益 率 第 1 四 半 期 第 2 四 半 期 第 3 四 半 期 第 4 四 半 期 年 度 国 内 債 券 0.72% 0.53% 1.88% -0.38% 2.76% 国 内 株 式 5.11% 5.78% 6.20% 10.51% 30.48%

注 記 事 項 (1) 当 四 半 期 連 結 累 計 期 間 における 重 要 な 子 会 社 の 異 動 : 無 (2) 四 半 期 連 結 財 務 諸 表 の 作 成 に 特 有 の 会 計 処 理 の 適 用 : 有 ( 注 ) 詳 細 は 添 付 資 料 4ページ 2.サマリー 情 報 (

為 が 行 われるおそれがある 場 合 に 都 道 府 県 公 安 委 員 会 がその 指 定 暴 力 団 等 を 特 定 抗 争 指 定 暴 力 団 等 として 指 定 し その 所 属 する 指 定 暴 力 団 員 が 警 戒 区 域 内 において 暴 力 団 の 事 務 所 を 新 たに 設

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1. 決 算 の 概 要 法 人 全 体 として 2,459 億 円 の 当 期 総 利 益 を 計 上 し 末 をもって 繰 越 欠 損 金 を 解 消 しています ( : 当 期 総 利 益 2,092 億 円 ) 中 期 計 画 における 収 支 改 善 項 目 に 関 して ( : 繰 越

弁護士報酬規定(抜粋)

注 記 事 項 (1) 当 四 半 期 連 結 累 計 期 間 における 重 要 な 子 会 社 の 異 動 ( 連 結 範 囲 の 変 更 を 伴 う 特 定 子 会 社 の 異 動 ): 無 新 規 - 社 ( 社 名 ) 除 外 - 社 ( 社 名 ) (2) 四 半 期 連 結 財 務 諸

別紙3

文化政策情報システムの運用等


注 記 事 項 (1) 四 半 期 財 務 諸 表 の 作 成 に 特 有 の 会 計 処 理 の 適 用 : 無 (2) 会 計 方 針 の 変 更 会 計 上 の 見 積 りの 変 更 修 正 再 表 示 1 会 計 基 準 等 の 改 正 に 伴 う 会 計 方 針 の 変 更 : 無 2 1

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月次運用状況 無配当個人変額年金保険(平成27年8月末).xls

Transcription:

2016 年 7 月 29 日 日 本 銀 行 経 済 物 価 情 勢 の 展 望 (2016 年 7 月 ) 基 本 的 見 解 1 < 概 要 > わが 国 の 景 気 は 新 興 国 経 済 の 減 速 の 影 響 などから 輸 出 生 産 面 に 鈍 さが みられるものの 基 調 としては 緩 やかな 回 復 を 続 けている 先 行 きを 展 望 すると 暫 くの 間 輸 出 生 産 面 に 鈍 さが 残 り 景 気 回 復 ペースの 鈍 化 し た 状 態 が 続 くとみられる その 後 は 家 計 企 業 の 両 部 門 において 所 得 か ら 支 出 への 前 向 きの 循 環 メカニズムが 持 続 するもとで 国 内 需 要 が 増 加 基 調 をたどるとともに 輸 出 も 海 外 経 済 が 減 速 した 状 態 から 脱 していくに つれて 緩 やかな 増 加 に 向 かうことから わが 国 経 済 は 基 調 として 緩 や かに 拡 大 していくと 考 えられる 消 費 者 物 価 ( 除 く 生 鮮 食 品 )の 前 年 比 は エネルギー 価 格 下 落 の 影 響 から 当 面 小 幅 のマイナスないし0% 程 度 で 推 移 するとみられるが 物 価 の 基 調 は 着 実 に 高 まり 2%に 向 けて 上 昇 率 を 高 めていくと 考 えられる この 間 原 油 価 格 が 現 状 程 度 の 水 準 から 緩 やかに 上 昇 していくとの 前 提 にたてば エネルギー 価 格 の 寄 与 度 は 現 在 の-1% 強 から 剥 落 していくが 2016 年 度 末 まではマイナス 寄 与 が 残 ると 試 算 される 2 この 前 提 のもとでは 消 費 者 物 価 の 前 年 比 が 物 価 安 定 の 目 標 3 である2% 程 度 に 達 する 時 期 は 中 心 的 な 見 通 しとしては 2017 年 度 中 になるとみられるが 先 行 きの 海 外 経 済 に 関 する 不 透 明 感 などから 不 確 実 性 が 大 きい その 後 は 平 均 的 にみ て 2% 程 度 で 推 移 すると 見 込 まれる 従 来 の 見 通 しと 比 べると 成 長 率 については 財 政 面 での 景 気 刺 激 策 の 効 果 もあって 見 通 し 期 間 の 前 半 を 中 心 に 上 振 れている なお 2017 年 4 月 に 予 定 されていた 消 費 増 税 の 延 期 に 伴 い 駆 け 込 み 需 要 とその 反 動 減 は 均 される 物 価 見 通 しについては こうした 成 長 率 の 上 振 れの 一 方 為 替 円 高 や 中 長 期 的 な 予 想 物 価 上 昇 率 の 改 善 が 後 ずれしていることなどにより 2016 年 度 について 下 振 れているが 2017 年 度 2018 年 度 については 概 ね 不 変 である 金 融 政 策 運 営 については 2%の 物 価 安 定 の 目 標 の 実 現 を 目 指 し こ れを 安 定 的 に 持 続 するために 必 要 な 時 点 まで マイナス 金 利 付 き 量 的 質 的 金 融 緩 和 を 継 続 する 今 後 とも 経 済 物 価 のリスク 要 因 を 点 検 し 物 価 安 定 の 目 標 の 実 現 のために 必 要 な 場 合 には 量 質 金 利 の3つの 次 元 で 追 加 的 な 金 融 緩 和 措 置 を 講 じる 1 7 月 28 29 日 開 催 の 政 策 委 員 会 金 融 政 策 決 定 会 合 で 決 定 されたものである 2 各 政 策 委 員 は 見 通 し 作 成 にあたって 原 油 価 格 (ドバイ)は 1バレル 45 ドルを 出 発 点 に 見 通 し 期 間 の 終 盤 である 2018 年 度 にかけて 50 ドル 程 度 に 緩 やかに 上 昇 してい くと 想 定 している その 場 合 の 消 費 者 物 価 ( 除 く 生 鮮 食 品 )の 前 年 比 に 対 するエネルギ ー 価 格 の 寄 与 度 は 2016 年 度 で-0.6~-0.7%ポイント 程 度 と 試 算 される また 寄 与 度 は 2016 年 度 後 半 にマイナス 幅 縮 小 に 転 じ 2017 年 度 初 に 概 ねゼロになると 試 算 される 3 日 本 銀 行 は 物 価 安 定 の 目 標 を 消 費 者 物 価 指 数 ( 総 合 ベース)の 前 年 比 上 昇 率 で2% としている そのうえで 見 通 しは 天 候 など 予 測 しがたい 要 因 に 左 右 される 生 鮮 食 品 を 除 くベースの 消 費 者 物 価 指 数 で 作 成 している 1

1.わが 国 の 経 済 物 価 の 現 状 わが 国 の 景 気 は 新 興 国 経 済 の 減 速 の 影 響 などから 輸 出 生 産 面 に 鈍 さ がみられるものの 基 調 としては 緩 やかな 回 復 を 続 けている 海 外 経 済 は 緩 やかな 成 長 が 続 いているが 新 興 国 を 中 心 に 幾 分 減 速 している そうし たもとで 輸 出 は 横 ばい 圏 内 の 動 きとなっている 国 内 需 要 の 面 では 設 備 投 資 は 企 業 収 益 が 高 水 準 で 推 移 するなかで 緩 やかな 増 加 基 調 にある 個 人 消 費 は 一 部 に 弱 めの 動 きもみられるが 雇 用 所 得 環 境 の 着 実 な 改 善 を 背 景 に 底 堅 く 推 移 している 住 宅 投 資 は 再 び 持 ち 直 しており 公 共 投 資 は 下 げ 止 まっている 以 上 の 内 外 需 要 を 反 映 して 鉱 工 業 生 産 は 地 震 による 影 響 もあって 横 ばい 圏 内 の 動 きを 続 けている 企 業 の 業 況 感 は 総 じて 良 好 な 水 準 を 維 持 しているが このところ 慎 重 化 している わが 国 の 金 融 環 境 は きわめて 緩 和 した 状 態 にある 物 価 面 では 消 費 者 物 価 ( 除 く 生 鮮 食 品 以 下 同 じ)の 前 年 比 は 小 幅 のマイナスとなっている 予 想 物 価 上 昇 率 は やや 長 い 目 でみれば 全 体 として 上 昇 しているとみられるが このところ 弱 含 んでいる 2.わが 国 の 経 済 物 価 の 中 心 的 な 見 通 し (1) 経 済 情 勢 先 行 きのわが 国 経 済 を 展 望 すると 暫 くの 間 輸 出 生 産 面 に 鈍 さが 残 り 景 気 回 復 ペースの 鈍 化 した 状 態 が 続 くとみられる その 後 は 家 計 企 業 の 両 部 門 において 所 得 から 支 出 への 前 向 きの 循 環 メカニズムが 持 続 す るもとで 国 内 需 要 が 増 加 基 調 をたどるとともに 輸 出 も 海 外 経 済 が 減 速 した 状 態 から 脱 していくにつれて 緩 やかな 増 加 に 向 かうことから わ が 国 経 済 は 基 調 として 緩 やかに 拡 大 していくと 考 えられる 見 通 し 期 間 中 の 成 長 率 は 潜 在 成 長 率 を 上 回 って 推 移 すると 予 想 される 4 4 わが 国 の 潜 在 成 長 率 を 一 定 の 手 法 で 推 計 すると このところ 0% 台 前 半 と 計 算 されるが 見 通 し 期 間 の 終 盤 にかけて 徐 々に 上 昇 していくと 見 込 まれる ただし 潜 在 成 長 率 は 推 計 手 法 や 今 後 蓄 積 されていくデータにも 左 右 される 性 格 のものであるため 相 当 の 幅 をもってみる 必 要 がある 2

見 通 しの 背 景 にある 前 提 は 以 下 のとおりである 第 1に 日 本 銀 行 が 2%の 物 価 安 定 の 目 標 の 実 現 を 目 指 し これ を 安 定 的 に 持 続 するために 必 要 な 時 点 まで マイナス 金 利 付 き 量 的 質 的 金 融 緩 和 を 継 続 するもとで 実 質 金 利 は 見 通 し 期 間 を 通 じてマイナスで 推 移 するなど 金 融 環 境 はきわめて 緩 和 した 状 態 が 続 き 景 気 に 対 し 刺 激 的 に 作 用 していくと 想 定 している 5 第 2に 海 外 経 済 については 幾 分 減 速 した 状 態 が 暫 く 続 くとみられ 英 国 のEU 離 脱 問 題 などを 巡 って 不 透 明 感 も 強 い しかし 先 行 き 先 進 国 が 着 実 な 成 長 を 続 けるとともに その 好 影 響 の 波 及 や 政 策 効 果 により 新 興 国 も 減 速 した 状 態 から 脱 していくとみられることから 緩 やかに 成 長 率 を 高 めていくと 予 想 している 第 3に 公 共 投 資 は このところ 下 げ 止 まっており 先 行 きは 2016 年 度 予 算 の 早 期 執 行 や 近 日 中 に 取 りまとめられる 予 定 の 経 済 対 策 の 効 果 など から 増 加 に 転 じるとみられる 見 通 し 期 間 の 中 盤 以 降 は オリンピック 関 連 投 資 の 本 格 化 もあって 高 めの 水 準 を 維 持 すると 想 定 している 第 4に 政 府 による 規 制 制 度 改 革 などの 成 長 戦 略 の 推 進 や そのもと での 女 性 や 高 齢 者 による 労 働 参 加 の 高 まり 企 業 による 生 産 性 向 上 に 向 け た 取 り 組 みと 内 外 需 要 の 掘 り 起 こしなどが 続 くとともに デフレからの 脱 却 が 着 実 に 進 んでいくにつれて 企 業 や 家 計 の 中 長 期 的 な 成 長 期 待 は 緩 やかに 高 まっていくと 想 定 している 以 上 を 前 提 に 見 通 し 期 間 の 景 気 展 開 をやや 詳 しく 述 べると 2016 年 度 については 輸 出 は 暫 く 鈍 さが 残 るとみられるが その 後 は 海 外 経 済 が 減 速 した 状 態 から 脱 していくにつれて 緩 やかな 増 加 に 向 かうと 考 えら れる また 企 業 収 益 は 前 年 度 に 比 べて 減 益 となるものの 非 製 造 業 を 中 心 に 高 水 準 で 推 移 するとみられる そのもとで 設 備 投 資 は 金 融 緩 和 5 各 政 策 委 員 は 既 に 決 定 した 政 策 を 前 提 として また 先 行 きの 政 策 運 営 については 市 場 の 織 り 込 みを 参 考 にして 見 通 しを 作 成 している 具 体 的 には 長 短 金 利 について 市 場 金 利 をもとにしつつ 展 望 レポートと 市 場 参 加 者 との 物 価 見 通 しの 違 いを 加 味 し 想 定 している 3

に 伴 う 実 質 金 利 の 一 段 の 低 下 効 果 もあって 増 加 基 調 を 続 けると 考 えられ る 個 人 消 費 は 株 価 下 落 に 伴 う 負 の 資 産 効 果 もあってこのところ 弱 めの 動 きがみられるが 雇 用 所 得 環 境 の 着 実 な 改 善 が 続 くことなどから 緩 やかに 増 加 すると 予 想 される この 間 公 共 投 資 も 2016 年 度 予 算 の 早 期 執 行 や 近 日 中 に 取 りまとめられる 予 定 の 経 済 対 策 の 押 し 上 げ 効 果 などから 緩 やかな 増 加 に 転 じると 考 えられる こうした 内 外 需 要 のもとで 成 長 率 は 潜 在 成 長 率 を 上 回 ると 予 想 される 2017 年 度 から 2018 年 度 にかけては 輸 出 は 海 外 経 済 の 成 長 率 の 高 ま りを 背 景 に 緩 やかな 増 加 を 続 けると 考 えられる 内 需 面 では 設 備 投 資 は 緩 和 的 な 金 融 環 境 や 成 長 期 待 の 高 まり オリンピック 関 連 需 要 の 本 格 化 な どを 受 けて 緩 やかな 増 加 基 調 を 維 持 すると 予 想 される 個 人 消 費 も 雇 用 者 所 得 の 改 善 を 背 景 に 緩 やかな 増 加 を 続 けると 予 想 される この 間 公 共 投 資 は 近 日 中 に 取 りまとめられる 予 定 の 経 済 対 策 による 押 し 上 げ 効 果 などから 2017 年 度 にかけて 増 加 し その 後 は 経 済 対 策 の 効 果 は 減 衰 する ものの オリンピック 関 連 需 要 もあって 高 めの 水 準 で 推 移 すると 考 えら れる こうしたもとで 成 長 率 は 潜 在 成 長 率 を 上 回 ると 予 想 される この 間 潜 在 成 長 率 については 見 通 し 期 間 を 通 じて 緩 やかな 上 昇 傾 向 をたどり 中 長 期 的 にみた 成 長 ペースを 押 し 上 げていくと 考 えられる 今 回 の 成 長 率 の 見 通 しを 従 来 の 見 通 しと 比 べると 財 政 面 での 景 気 刺 激 策 の 効 果 もあって 見 通 し 期 間 の 前 半 を 中 心 に 上 振 れている なお 2017 年 4 月 に 予 定 されていた 消 費 増 税 の 延 期 に 伴 い 駆 け 込 み 需 要 とその 反 動 減 は 均 される 6 (2) 物 価 情 勢 先 行 きの 物 価 を 展 望 すると 消 費 者 物 価 の 前 年 比 は エネルギー 価 格 下 落 の 影 響 から 当 面 小 幅 のマイナスないし0% 程 度 で 推 移 するとみられる 6 政 府 は 2017 年 4 月 に 予 定 されていた 消 費 税 率 の 引 き 上 げを 2019 年 10 月 まで2 年 半 延 期 する 方 針 を 6 月 2 日 に 閣 議 決 定 された 経 済 財 政 運 営 と 改 革 の 基 本 方 針 2016 で 示 している このため 今 回 の 見 通 しは この 方 針 を 踏 まえて 作 成 している 4

が 物 価 の 基 調 は 着 実 に 高 まり 2%に 向 けて 上 昇 率 を 高 めていくと 考 え られる この 間 原 油 価 格 が 現 状 程 度 の 水 準 から 緩 やかに 上 昇 していくと の 前 提 にたてば エネルギー 価 格 の 寄 与 度 は 現 在 の-1% 強 から 剥 落 し ていくが 2016 年 度 末 まではマイナス 寄 与 が 残 ると 試 算 される この 前 提 のもとでは 消 費 者 物 価 の 前 年 比 が 物 価 安 定 の 目 標 である2% 程 度 に 達 する 時 期 は 中 心 的 な 見 通 しとしては 2017 年 度 中 になるとみられるが 先 行 きの 海 外 経 済 に 関 する 不 透 明 感 などから 不 確 実 性 が 大 きい その 後 は 平 均 的 にみて 2% 程 度 で 推 移 すると 見 込 まれる 今 回 の 物 価 見 通 しを 従 来 の 見 通 しと 比 べると 成 長 率 が 上 振 れる 一 方 為 替 円 高 や 中 長 期 的 な 予 想 物 価 上 昇 率 の 改 善 が 後 ずれしていることなどに より 2016 年 度 について 下 振 れているが 2017 年 度 2018 年 度 について は 概 ね 不 変 である こうした 見 通 しの 背 景 として 物 価 上 昇 率 を 規 定 する 主 たる 要 因 につい て 点 検 すると 第 1に 労 働 や 設 備 の 稼 働 状 況 を 表 すマクロ 的 な 需 給 バラ ンスは 新 興 国 経 済 の 減 速 を 背 景 に 製 造 業 の 設 備 稼 働 率 の 改 善 が 遅 れる 一 方 労 働 需 給 の 引 き 締 まりは 続 いており 全 体 として 横 這 い 圏 内 の 動 きと なっている 7 先 行 きは 経 済 対 策 の 効 果 もあって 失 業 率 が 低 下 するなど 労 働 需 給 の 引 き 締 まりは 続 き そうしたもとで パート 時 給 をはじめとす る 賃 金 への 上 昇 圧 力 は 強 まっていくとみられる 設 備 の 稼 働 率 も 輸 出 生 産 が 持 ち 直 していくに 伴 い 再 び 上 昇 していくと 考 えられる このため マクロ 的 な 需 給 バランスは 本 年 度 末 にかけてプラスに 転 じていくと 見 込 まれる すなわち 需 給 面 からみた 賃 金 と 物 価 の 上 昇 圧 力 は 着 実 に 強 ま っていくと 予 想 される 7 マクロ 的 な 需 給 バランスについては 1 潜 在 GDPを 推 計 のうえ 実 際 のGDPとの 乖 離 を 計 測 するアプローチと 2 生 産 要 素 ( 労 働 と 設 備 )の 稼 働 状 況 を 直 接 計 測 するア プローチがある 展 望 レポートにおけるマクロ 的 な 需 給 バランスの 計 測 は 従 来 から 後 者 のアプローチを 採 用 しているため GDP 成 長 率 の 変 化 と 需 給 バランスの 拡 大 縮 小 の 間 に1 対 1の 対 応 関 係 があるわけではない マクロ 的 な 需 給 バランスの 値 は 計 測 方 法 や 使 用 するデータによって 異 なり 得 るため 相 当 の 幅 をもってみる 必 要 がある 5

第 2に 中 長 期 的 な 予 想 物 価 上 昇 率 については やや 長 い 目 でみれば 全 体 として 上 昇 しているとみられるが このところ 弱 含 んでいる とくに 予 想 物 価 上 昇 率 に 関 するマーケット 関 連 指 標 やアンケート 調 査 結 果 は 低 下 している その 背 景 としては 実 際 の 消 費 者 物 価 が1 年 以 上 にわたって 前 年 比 0% 程 度 で 推 移 したため その 影 響 を 受 ける 形 で 予 想 物 価 上 昇 率 が 低 下 したものと 考 えられる( 予 想 物 価 上 昇 率 に 関 する 適 合 的 な 形 成 メ カニズム ) また このところの 個 人 消 費 の 弱 めの 動 きを 背 景 に 新 年 度 入 り 後 の 価 格 改 定 においては 食 料 工 業 製 品 や 耐 久 消 費 財 など 財 を 中 心 に 改 定 を 見 送 る 動 きがみられる 先 行 きについては 前 述 の 見 通 しに 基 づけば 個 人 消 費 の 持 ち 直 しに 伴 って 企 業 の 価 格 設 定 スタンスは 再 び 積 極 化 していくとみられる 賃 金 設 定 スタンスについても 今 春 の 賃 金 改 定 交 渉 においては 伸 び 率 は 昨 年 を 下 回 ったものの 3 年 連 続 でベースアップが 実 現 したほか 中 小 企 業 にも 賃 上 げの 動 きが 拡 がっている さらに 労 働 需 給 の 影 響 を 強 く 受 ける 傾 向 のある 非 正 規 労 働 者 の 賃 金 は はっきりと 上 昇 している こうした 点 を 踏 まえると 企 業 収 益 から 雇 用 者 所 得 への 波 及 は 維 持 されており 賃 金 の 上 昇 を 伴 いながら 物 価 上 昇 率 が 緩 やかに 高 まっていくというメカニズムは 引 き 続 き 作 用 していると 考 えられる また 今 後 エネルギー 価 格 による 下 押 しの 剥 落 もあって 実 際 の 物 価 上 昇 率 は 高 まっていくと 予 想 される 以 上 を 踏 まえると 中 長 期 的 な 予 想 物 価 上 昇 率 は 日 本 銀 行 が2%の 物 価 安 定 の 目 標 の 実 現 を 目 指 して マイナス 金 利 付 き 量 的 質 的 金 融 緩 和 を 推 進 するもとで 上 昇 傾 向 をたどり 2% 程 度 に 向 けて 次 第 に 収 斂 してい くとみられる 第 3に 輸 入 物 価 についてみると 原 油 価 格 をはじめとする 国 際 商 品 市 況 の 既 往 の 下 落 は 当 面 輸 入 物 価 を 通 じた 消 費 者 物 価 の 下 押 し 圧 力 とな るが その 影 響 は 減 衰 していく この 間 為 替 が 輸 入 物 価 を 通 じて 消 費 者 物 価 にもたらす 影 響 については 最 近 の 円 高 もあって 価 格 上 昇 圧 力 を 抑 6

制 する 方 向 に 作 用 すると 考 えられる 3. 上 振 れ 要 因 下 振 れ 要 因 (1) 経 済 情 勢 上 記 の 中 心 的 な 経 済 の 見 通 しに 対 する 上 振 れ 下 振 れ 要 因 としては 第 1に 海 外 経 済 の 動 向 に 関 する 不 確 実 性 がある 英 国 のEU 離 脱 問 題 を 巡 る 不 透 明 感 が 国 際 金 融 資 本 市 場 や 世 界 経 済 に 及 ぼす 影 響 には 注 意 が 必 要 で ある また 中 国 をはじめとする 新 興 国 や 資 源 国 についても 先 行 き 不 透 明 感 が 強 い さらに 米 国 経 済 の 動 向 やそのもとでの 金 融 政 策 運 営 が 国 際 金 融 資 本 市 場 に 及 ぼす 影 響 金 融 セクターを 含 む 欧 州 債 務 問 題 の 展 開 や 景 気 物 価 のモメンタム 地 政 学 的 リスクなどもリスク 要 因 として 挙 げられ る こうした 海 外 経 済 や 国 際 金 融 資 本 市 場 の 動 向 については わが 国 の 輸 出 入 を 通 じた 直 接 的 な 影 響 に 加 え 企 業 や 家 計 のコンフィデンスに 影 響 を 与 え 設 備 投 資 や 消 費 などの 支 出 行 動 に 抑 制 的 に 作 用 する 可 能 性 に 注 意 す る 必 要 がある 第 2に 企 業 や 家 計 の 中 長 期 的 な 成 長 期 待 は 規 制 制 度 改 革 の 今 後 の 展 開 や 企 業 部 門 におけるイノベーション 家 計 部 門 を 取 り 巻 く 雇 用 所 得 環 境 などによって 上 下 双 方 向 に 変 化 する 可 能 性 がある この 点 企 業 が 高 水 準 の 収 益 に 伴 う 潤 沢 なキャッシュフローをより 効 率 的 に 設 備 人 材 投 資 などに 活 用 していくことが 期 待 される 第 3に 財 政 の 中 長 期 的 な 持 続 可 能 性 に 対 する 信 認 が 低 下 するような 場 合 には 人 々の 将 来 不 安 の 強 まりや 経 済 実 態 から 乖 離 した 長 期 金 利 の 上 昇 などを 通 じて 経 済 の 下 振 れにつながる 惧 れがある 一 方 財 政 再 建 の 道 筋 に 対 する 信 認 が 高 まり 人 々の 将 来 不 安 が 軽 減 されれば 経 済 が 上 振 れ る 可 能 性 もある (2) 物 価 情 勢 上 述 のような 経 済 の 上 振 れ 下 振 れ 要 因 が 顕 在 化 した 場 合 物 価 にも 相 応 の 影 響 が 及 ぶとみられる それ 以 外 に 物 価 の 上 振 れ 下 振 れをもたらす 7

要 因 としては 第 1に 企 業 や 家 計 の 中 長 期 的 な 予 想 物 価 上 昇 率 の 動 向 が 挙 げられる 中 心 的 な 見 通 しでは 先 行 き 個 人 消 費 の 持 ち 直 しが 明 確 にな るにつれて 企 業 の 価 格 設 定 スタンスも 再 び 積 極 化 し 労 働 需 給 の 改 善 に 伴 う 賃 金 の 上 昇 が 続 くことと 相 俟 って 中 長 期 的 な 予 想 物 価 上 昇 率 が 物 価 安 定 の 目 標 である2% 程 度 に 向 けて 次 第 に 収 斂 していく 姿 を 想 定 して いる しかしながら 既 往 のエネルギー 価 格 下 落 の 影 響 から 総 合 ベース でみた 消 費 者 物 価 の 伸 びが 当 面 低 位 で 推 移 することが 適 合 的 な 形 成 メ カニズム を 通 じて 予 想 物 価 上 昇 率 の 伸 びをどの 程 度 抑 制 するかという 点 や 海 外 経 済 を 中 心 とした 景 気 の 先 行 きに 関 する 不 透 明 感 が 企 業 の 価 格 賃 金 設 定 スタンスにどのような 影 響 を 与 えるかという 点 を 巡 っては 不 確 実 性 がある 第 2に マクロ 的 な 需 給 バランス とくに 労 働 需 給 の 動 向 がある 中 心 的 な 見 通 しでは 近 年 の 高 齢 者 や 女 性 による 労 働 参 加 の 高 まりや 最 近 みら れているパート 労 働 の 正 規 雇 用 化 が 労 働 供 給 を 下 支 えしていくことを 前 提 としているが この 点 を 巡 っては 上 下 双 方 向 の 不 確 実 性 がある 第 3に 物 価 上 昇 率 のマクロ 的 な 需 給 バランスに 対 する 感 応 度 が 挙 げら れる とくに 公 共 料 金 や 一 部 のサービス 価 格 家 賃 などは 依 然 鈍 い 動 き を 続 けており 先 行 きも 消 費 者 物 価 の 上 昇 率 の 高 まりを 抑 制 する 要 因 とな る 可 能 性 がある 第 4に 原 油 価 格 といった 国 際 商 品 市 況 や 為 替 相 場 の 変 動 などに 伴 う 輸 入 物 価 の 動 向 や その 国 内 価 格 への 波 及 の 状 況 によっても 上 振 れ 下 振 れ 双 方 の 可 能 性 がある 4. 金 融 政 策 運 営 以 上 の 経 済 物 価 情 勢 について 物 価 安 定 の 目 標 のもとで 2つの 柱 による 点 検 を 行 い 先 行 きの 金 融 政 策 運 営 の 考 え 方 を 整 理 する 8 まず 第 1の 柱 すなわち 中 心 的 な 見 通 しについて 点 検 すると わが 国 8 物 価 安 定 の 目 標 のもとでの2つの 柱 による 点 検 については 日 本 銀 行 金 融 政 策 運 営 の 枠 組 みのもとでの 物 価 安 定 の 目 標 について (2013 年 1 月 22 日 ) 参 照 8

経 済 は 2017 年 度 中 に2% 程 度 の 物 価 上 昇 率 を 実 現 し その 後 次 第 に こ れを 安 定 的 に 持 続 する 成 長 経 路 へと 移 行 していく 可 能 性 が 高 いと 判 断 され る 次 に 第 2の 柱 すなわち 金 融 政 策 運 営 の 観 点 から 重 視 すべきリスクに ついて 点 検 すると 中 心 的 な 経 済 の 見 通 しについては 海 外 経 済 の 動 向 を 中 心 に 下 振 れリスクが 大 きい 物 価 の 中 心 的 な 見 通 しについては 先 行 き の 海 外 経 済 に 関 する 不 透 明 感 や そのもとでの 中 長 期 的 な 予 想 物 価 上 昇 率 の 動 向 などを 巡 って 不 確 実 性 は 大 きく 下 振 れリスクが 大 きい より 長 期 的 な 視 点 から 金 融 面 の 不 均 衡 について 点 検 すると 現 時 点 では 資 産 市 場 や 金 融 機 関 行 動 において 過 度 な 期 待 の 強 気 化 を 示 す 動 きは 観 察 されていな いほか 低 金 利 に 伴 う 金 融 機 関 収 益 の 下 押 しによって 金 融 仲 介 が 停 滞 方 向 に 向 かうリスクについても 金 融 機 関 が 充 実 した 資 本 基 盤 を 備 え 前 向 き なリスクテイクを 継 続 していく 力 を 有 していることから 大 きくないと 判 断 している もっとも 政 府 債 務 残 高 が 累 増 するなかで 金 融 機 関 の 国 債 保 有 残 高 は 全 体 として 減 少 傾 向 が 続 いているが なお 高 水 準 である 点 に は 留 意 する 必 要 がある 金 融 政 策 運 営 については 2%の 物 価 安 定 の 目 標 の 実 現 を 目 指 し これを 安 定 的 に 持 続 するために 必 要 な 時 点 まで マイナス 金 利 付 き 量 的 質 的 金 融 緩 和 を 継 続 する 今 後 とも 経 済 物 価 のリスク 要 因 を 点 検 し 物 価 安 定 の 目 標 の 実 現 のために 必 要 な 場 合 には 量 質 金 利 の3つの 次 元 で 追 加 的 な 金 融 緩 和 措 置 を 講 じる 以 上 9

( 参 考 ) 2016~2018 年 度 の 政 策 委 員 の 大 勢 見 通 し 対 前 年 度 比 % なお < > 内 は 政 策 委 員 見 通 しの 中 央 値 実 質 GDP 消 費 者 物 価 指 数 ( 除 く 生 鮮 食 品 ) 消 費 税 率 引 き 上 げの 影 響 を 除 くケース 2016 年 度 4 月 時 点 の 見 通 し +0.8~+1.0 <+1.0> +0.8~+1.4 <+1.2> 0.0~+0.3 <+0.1> 0.0~+0.8 <+0.5> 2017 年 度 +1.0~+1.5 <+1.3> +0.8~+1.8 <+1.7> 4 月 時 点 の 見 通 し 0.0~+0.3 <+0.1> +1.8~+3.0 <+2.7> +0.8~+2.0 <+1.7> 2018 年 度 4 月 時 点 の 見 通 し +0.8~+1.0 <+0.9> +0.6~+1.2 <+1.0> +1.0~+2.0 <+1.9> +1.0~+2.1 <+1.9> ( 注 1) 大 勢 見 通 し は 各 政 策 委 員 が 最 も 蓋 然 性 の 高 いと 考 える 見 通 しの 数 値 について 最 大 値 と 最 小 値 を1 個 ずつ 除 いて 幅 で 示 したものであり その 幅 は 予 測 誤 差 など を 踏 まえた 見 通 しの 上 限 下 限 を 意 味 しない ( 注 2) 各 政 策 委 員 は 既 に 決 定 した 政 策 を 前 提 として また 先 行 きの 政 策 運 営 については 市 場 の 織 り 込 みを 参 考 にして 上 記 の 見 通 しを 作 成 している 具 体 的 には 長 短 金 利 について 市 場 金 利 をもとにしつつ 展 望 レポートと 市 場 参 加 者 との 物 価 見 通 しの 違 いを 加 味 して 想 定 している ( 注 3) 原 油 価 格 (ドバイ)については 1バレル 45 ドルを 出 発 点 に 見 通 し 期 間 の 終 盤 である 2018 年 度 にかけて 50 ドル 程 度 に 緩 やかに 上 昇 していくと 想 定 している その 場 合 の 消 費 者 物 価 ( 除 く 生 鮮 食 品 )の 前 年 比 に 対 するエネルギー 価 格 の 寄 与 度 は 2016 年 度 で-0.6~-0.7%ポイント 程 度 と 試 算 される また 寄 与 度 は 2016 年 度 後 半 に マイナス 幅 縮 小 に 転 じ 2017 年 度 初 に 概 ねゼロになると 試 算 される ( 注 4)4 月 時 点 の 見 通 しでは 消 費 税 率 について 2017 年 4 月 に 10%に 引 き 上 げられる ことを 前 提 として 各 政 策 委 員 は 消 費 税 率 引 き 上 げの 直 接 的 な 影 響 を 除 いた 消 費 者 物 価 の 見 通 し 計 数 を 作 成 した 今 回 の 展 望 レポートでは 政 府 が6 月 2 日 に 閣 議 決 定 した 経 済 財 政 運 営 と 改 革 の 基 本 方 針 2016 の 中 で 2017 年 4 月 に 予 定 されていた 消 費 税 率 の 引 き 上 げを 2019 年 10 月 まで2 年 半 延 期 する 方 針 が 示 されているため そ の 方 針 を 踏 まえて 見 通 しを 作 成 している 10

政 策 委 員 の 経 済 物 価 見 通 しとリスク 評 価 (1) 実 質 GDP ( 前 年 比 %) ( 前 年 比 %) 3.0 3.0 2.5 2.5 2.0 2.0 1.5 1.5 1.0 1.0 0.5 0.5 0.0 0.0-0.5-0.5-1.0-1.0-1.5-1.5 2010 2011 年 度 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018 2019 (2) 消 費 者 物 価 指 数 ( 除 く 生 鮮 食 品 ) ( 前 年 比 %) ( 前 年 比 %) 3.5 3.5 3.0 3.0 2.5 2.5 2.0 2.0 1.5 1.5 1.0 1.0 0.5 0.5 0.0 0.0-0.5-0.5-1.0-1.0 2010 2011 年 度 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018 2019 ( 注 1) 実 線 は 実 績 値 点 線 は 政 策 委 員 見 通 しの 中 央 値 を 示 す ( 注 2) は 各 政 策 委 員 が 最 も 蓋 然 性 が 高 いと 考 える 見 通 しの 数 値 を 示 すとともに その 形 状 で 各 政 策 委 員 が 考 えるリスクバランスを 示 している は リスクは 概 ね 上 下 にバランスしている は 上 振 れリスクが 大 きい は 下 振 れリスクが 大 きい と 各 政 策 委 員 が 考 えていることを 示 している ( 注 3) 消 費 者 物 価 指 数 ( 除 く 生 鮮 食 品 )は 消 費 税 率 引 き 上 げの 直 接 的 な 影 響 を 除 いたベース 11