Works Review Vol.6 国 内 の 経 営 学 系 大 学 院 における 社 会 人 の 学 び 直 し 社 会 人 入 学 した 卒 業 生 データより 兵 藤 郷 リクルートワークス 研 究 所 研 究 員 国 内 経 営 学 系 大 学 院 における 社 会 人 の 学 び 直 しの 実 態 を 明 らかにするため, 大 学 院 の 卒 業 生 への 調 査 を 実 施 し た 社 会 人 入 学 者 は 処 遇 よりも 能 力 知 識 の 習 得 等 を 期 待 し, 特 に 経 営 専 攻 者 は 財 務 会 計 金 融 専 攻 者 に 比 べ て, 論 理 的 思 考 力 の 向 上 を 期 待 する 者 が 多 かった 大 学 院 での 学 習 の 成 果 として, 処 遇 の 向 上 よりも 能 力 知 識 等 の 習 得 とする 社 会 人 入 学 者 が 多 く,さらに 役 職 別 に 得 られる 成 果 が 異 なることが 分 かった キーワード: 国 内 大 学 院, 経 営 学 系 大 学 院, 社 会 人 入 学 者, 職 業 キャリア, 学 習 成 果 目 次 Ⅰ.はじめに Ⅰ-1. 本 研 究 の 背 景 Ⅰ-2. 本 研 究 の 目 的 Ⅰ-3. 先 行 研 究 Ⅱ.データ Ⅱ-1. 調 査 概 要 Ⅱ-2. 記 述 統 計 Ⅲ. 分 析 Ⅲ-1. 入 学 目 的 Ⅲ-2. 学 習 の 成 果 Ⅲ-3. 役 職 費 用 負 担 別 にみた 学 習 の 成 果 Ⅳ. 総 括 と 今 後 の 課 題 Ⅰ.はじめに Ⅰ-1. 本 研 究 の 背 景 国 内 経 営 学 系 大 学 院 に 対 する 社 会 人 の 期 待 は 大 きい 専 門 職 大 学 院 の 設 置 が 始 まった2003 年 に, 経 営 学 系 iの 社 会 人 学 生 の 数 は 4,834 人 で, 現 在 で は 経 営 学 系 専 門 職 大 学 院 iiは 49 校 に 達 し, 社 会 人 学 生 数 は 7,253 人 に 上 る( 文 部 科 学 省 2010ab, 2003) しかし, 社 会 人 がどのような 目 的 をもって 国 内 の 経 営 学 系 大 学 院 に 入 学 するかは 明 らかではない 大 学 院 への 入 学 目 的 について, 複 数 の 大 学 院 にま たがる 大 規 模 調 査 としては, 本 田 (2003), 吉 田 (2010)の 研 究 がある 本 田 (2003)は 経 営 学 系 を 含 む 国 内 社 会 科 学 系 大 学 院 を 卒 業 した 社 会 人 に 対 する 大 規 模 な 調 査 を 実 施 した しかし, 調 査 実 施 は 専 門 職 大 学 院 設 置 以 前 の 2002 年 であり, 現 在 のトレンドを 反 映 していない 一 方, 吉 田 (2010)は,2008 年 に 専 門 職 大 学 院 の 在 学 生 へ の 大 規 模 な 調 査 を 実 施 した しかし, 調 査 は 経 営 学 系 だけでなく, 法 科, 公 共 政 策, 医 療 などの 専 攻 を 横 断 的 に 実 施 されている 以 上 から, 現 在 の 国 内 経 営 学 系 大 学 院 への 入 学 目 的 についての 大 規 模 な 調 査 は 実 施 されていない 入 学 目 的 と 同 様 に, 国 内 の 経 営 学 系 大 学 院 の 学 習 の 成 果 についても 議 論 の 余 地 が 残 る 学 習 の 成 果 を 測 る 指 標 として 年 収 に 注 目 した 場 合, 経 営 学 系 を 含 む 文 科 系 大 学 院 卒 は, 同 系 の 大 学 卒 に 比 べ て 平 均 年 収 が 高 い(リクルートワーキングパーソ ン 調 査 2011 iii ) 具 体 的 には,20 代 後 半 から 40 代 前 半 の 正 社 員 について, 大 学 院 卒 は 612 万 円 で 大 学 卒 は 517 万 円 であり, 大 学 卒 に 比 べて 大 学 院 122
国 内 の 経 営 学 系 大 学 院 における 社 会 人 の 学 び 直 し 卒 の 方 が 95 万 円 高 い 一 方, 国 内 の 経 営 学 系 大 学 院 を 卒 業 したことが 年 収 などに 影 響 を 与 えないという 調 査 結 果 もある 例 えば, 慶 應 義 塾 大 学 のビジネススクールの 卒 業 生 を 対 象 にした 調 査 によれば, 卒 業 生 の 多 くが, 転 職 昇 格 時 に 高 い 評 価 を 受 けていない(KBS 2009) 前 述 の 本 田 (2003)の 調 査 では, 社 会 科 学 系 社 会 人 大 学 院 を 卒 業 後 に 昇 給 した 人 は 50%, 昇 進 した 人 は 60%に 留 まった( 本 田 2003) つまり, 大 学 院 を 卒 業 することは 年 収 の 面 では プラスの 影 響 があるものの, 年 収 などの 処 遇 の 変 化 には 大 きな 個 人 差 があることが 示 唆 される 以 上 をまとめると, 社 会 人 の 国 内 の 経 営 学 系 大 学 院 に 対 する 人 気 は 高 いにもかかわらず, 社 会 人 が 国 内 の 経 営 学 系 大 学 院 に 何 を 期 待 しているのか, 国 内 の 経 営 学 系 大 学 院 にはどのような 学 習 成 果 が あるのかは 明 らかになっていない また,ミンツバーグ(2006)はマネジメントの 成 功 要 件 とアメリカにおけるビジネススクールの 問 題 点 を 指 摘 している 具 体 的 には,マネジメン トは,アート( 直 感 )とクラフト( 実 務 経 験 )と サイエンス( 分 析 )の 3 つが 揃 った 時 に 成 功 する としている しかしながら,ビジネススクール 入 学 前 に, 実 務 経 験,とりわけマネージャー 経 験 が 数 年 もないままに 入 学 する 若 者 は, 卒 業 後 マネー ジャーの 職 を 得 られるものの,ビジネススクール で 身 につけたサイエンス( 分 析 )でもってマネジ メントを 遂 行 するため, 失 敗 してしまうと 述 べて いる そこで, 日 本 においても,ビジネススクー ルを 含 む 経 営 学 系 大 学 院 の 修 了 者 の 中 で, 入 学 前 の 役 職 経 験 によって, 大 学 院 での 学 習 の 成 果 に 違 いが 生 じるかを 検 証 する 必 要 があると 考 える Ⅰ-2. 本 研 究 の 目 的 本 研 究 の 目 的 は 下 記 の 3 つである 社 会 人 入 学 者 が 国 内 の 経 営 学 系 大 学 院 へ 入 学 する 目 的 を 明 らかにすること 社 会 人 入 学 者 が 国 内 の 経 営 学 系 大 学 院 で 学 習 の 成 果 を 明 らかにすること さらに, 社 会 人 入 学 者 が 入 学 前 の 役 職 経 験 の 有 無 によって, 学 習 成 果 に 違 いがあるのかを 明 らかにすること Ⅰ-3. 先 行 研 究 社 会 人 の 大 学 院 への 入 学 目 的 に 関 する 先 行 研 究 として, 前 述 した 本 田 (2003)の 大 規 模 調 査 に 基 づく 研 究 がある 全 回 答 者 の 559 人 が, 入 学 動 機 きっかけを 16 の 選 択 肢 から 複 数 選 択 で 回 答 した 上 位 5 つは, 仕 事 経 験 の 理 論 的 整 理 (61.2%) 何 かにチャレンジしてみたかった(48.5%) 修 士 号 が 仕 事 上 有 利 なる(33.3%) 大 学 時 から 大 学 院 に 興 味 (26.3%) 特 定 の 知 識 が 仕 事 上 必 要 (25.4%) だった 処 遇 に 関 連 する 入 学 動 機 き っかけとして 上 位 3 位 に 入 っているが, 回 答 者 の 3 割 程 度 しか 選 択 しておらず, 院 卒 者 の 一 部 しか, 仕 事 上 で 客 観 的 な 評 価 を 高 めることを 期 待 してい ないことが 窺 える また, 吉 田 (2010)の 調 査 では 経 営 学 系 だけで なく 法 科, 公 共 政 策, 医 療 などの 専 攻 を 横 断 的 に 調 査 している 有 効 回 答 数 1645 人 のうち 社 会 人 学 生 889 人 が 専 門 職 大 学 院 への 進 学 の 目 的 を 8 つ の 選 択 肢 から 複 数 選 択 で 回 答 した MBA を 専 攻 する 社 会 人 在 学 生 が 回 答 した 上 位 5 つは, 専 門 的 知 識 の 獲 得 幅 広 い 知 識 教 養 の 獲 得 学 位 取 得 昇 進 昇 給 起 業 だった 処 遇 に 関 連 する 進 学 目 的 として 上 位 4 位 に 入 っていて, 半 数 強 がこの 項 目 を 選 択 している 本 田 (2003)の 調 査 と 比 べると 客 観 的 な 評 価 の 向 上 を 期 待 している 者 が 多 いが,それでも 必 ずしも 全 員 が 客 観 的 な 評 価 の 向 上 を 期 待 しているわけではない また, 特 定 の 大 学 院 に 限 定 されてはいるが, 最 近 実 施 された 調 査 として, 前 述 した 慶 應 義 塾 大 学 ビジネススクールの 卒 業 生 への 調 査 がある(KBS 2009) この 調 査 の 特 徴 的 な 点 は, 日 本 の 社 会 人 向 けの 経 営 学 系 大 学 院 の 草 分 け 的 存 在 であるビジ ネススクールに 関 するものであり,598 人 の 回 答 を 得 ている また 昼 間 開 講 制 のカリキュラムで 学 習 した 卒 業 生 について 把 握 することができる こ 123
Works Review Vol.6 の 調 査 では,ビジネススクールへの 入 学 目 的 を 10 の 選 択 肢 から 3 つ 回 答 してもらっている 上 位 5 つは, 総 合 的 な 経 営 の 知 識 スキルの 習 得 社 内 におけるキャリアチェンジ キャリアアップ 人 的 ネットワークの 獲 得 転 職 によるキャリア チェンジ キャリアアップ 特 定 の 分 野 の 専 門 的 知 識 スキルの 習 得 だった 処 遇 に 関 連 する 進 学 目 的 として 上 位 2 位 と 上 位 4 位 に 入 っていて, 多 くがこの 項 目 を 選 択 している 本 田 (2003)や 吉 田 (2010)に 比 べて, 客 観 的 評 価 の 向 上 を 期 待 している 者 が 多 いことが 分 かる 社 会 人 向 けの 大 学 院 の 学 習 効 果 について, 能 力 の 向 上 に 関 する 研 究 ( 加 藤 2003; 小 山 2003), 仕 事 内 容 への 影 響 に 関 する 研 究 ( 小 方 2003; 小 山 2003; 平 尾 梅 崎 松 繁 2010a), 処 遇 への 影 響 に 関 する 研 究 ( 加 藤 2003; 平 尾 梅 崎 松 繁 2003; 平 尾 梅 崎 松 繁 2007; 平 尾 梅 崎 松 繁 2010b)がある Ⅱ.データ Ⅱ-1. 調 査 概 要 首 都 圏 および 関 西 主 要 都 市, 経 営 学 系 の 大 学 院 卒 業 生 を 対 象 に,ウェブ 調 査 を 実 施 した 実 施 期 間 は 2011 年 1 月 29 日 ~2 月 27 日 で,792 のサ ンプルを 回 収 した 具 体 的 には,15 の 研 究 科 を 調 査 開 始 時 点 で 卒 業 した 者 ( 研 究 科 または 研 究 科 同 窓 会 組 織 が 把 握 しているすべて)であり, 実 対 象 数 は 3784 で, 回 収 率 は 20.9%である 調 査 方 法 は, 主 として 各 研 究 科 または 研 究 科 同 窓 会 組 織 が 管 理 する 卒 業 生 名 簿 に 基 づき,メール または 封 書 またはポータルサイトによって 案 内 し, ウェブで 回 答 してもらった 本 研 究 では, 社 会 人 にとっての 大 学 院 の 成 果 に 着 目 するため, 大 学 院 に 入 学 する 直 前 に 就 業 して いた 者 のみ(716 サンプル)を 用 いて 分 析 する Ⅱ-2. 記 述 統 計 記 述 統 計 から, 国 内 の 経 営 学 系 大 学 院 に 入 学 し た 社 会 人 像 を 明 らかにする 社 会 人 入 学 者 の 9 割 近 くが, 大 学 院 へ 通 いなが らも 仕 事 をしていた( 図 表 1) 実 際 に 社 会 人 入 学 者 の 約 9 割 が 通 学 した 時 間 帯 は, 平 日 夜 間 や 土 日 などだった( 図 表 2) 入 学 前 の 勤 務 先 の 従 業 員 規 模 については, 社 会 人 入 学 者 の 約 半 数 が 5000 人 以 上 の 大 手 企 業 に 勤 務 していた 従 業 員 規 模 1000 人 以 上 に 広 げると 7 割 近 くと, 多 くの 社 会 人 入 学 者 が 大 企 業 勤 務 者 で ある( 図 表 3) 従 業 員 規 模 から 推 測 されるように, 年 収 が 高 い 者 が 多 い 入 学 前 から 700 万 円 以 上 を 超 える 割 合 は 約 65%で,1000 万 円 以 上 に 絞 ってみるとその 割 合 が 約 25% 占 めている( 図 表 4) 社 会 人 入 学 者 の 半 数 以 上 は, 入 学 前 から 高 所 得 者 であること が 分 かる このように 社 会 人 入 学 者 が 入 学 前 から 高 所 得 者 である 背 景 として, 大 学 院 での 学 習 にかかる 入 学 金 や 授 業 料 の 高 さにあるかもしれない 実 際, 入 学 金 授 業 料 を, 入 学 時 に 勤 務 してい た 会 社 に 負 担 してもらった 者 の 割 合 は 23.8%だ けで, 社 会 人 入 学 者 の 7 割 以 上 が, 会 社 の 派 遣 制 度 等 を 利 用 せず 入 学 したことが 分 かる( 図 表 5) 具 体 的 に 自 己 負 担 した 入 学 金 授 業 料 が 300 万 円 以 上 を 超 える 割 合 が 3 割 強 で,200 万 円 以 上 に 広 げてみると 5 割 に 及 ぶ( 図 表 6) 決 して 安 くな い 費 用 を 自 分 で 賄 うには, 入 学 前 から 高 所 得 者 で ないと 入 学 が 難 しいのではないだろうか 上 述 のように, 日 中 の 勤 務 や 大 学 院 での 学 習 に かかる 費 用 といったハードルがあったとしてもな お 大 学 院 への 入 学 を 決 めた 理 由 を, 次 章 で 明 らか にしていきたい 上 記 した 以 外 で, 本 研 究 で 分 析 対 象 となる 入 学 者 のその 他 の 特 徴 に 触 れておく まず 年 齢 は,30 代 後 半 が 最 も 多 く 31.4%で, 次 いで 40 代 前 半 が 24.3%,30 代 前 半 が 17.5%で ある( 図 表 7) 性 別 は 男 女 比 が 9:1 であり( 図 表 8), 社 会 人 入 学 者 のうち 男 性 が 圧 倒 的 に 多 い 就 業 状 況 は, 大 学 院 卒 業 後 に 仕 事 に 就 いていた 人 は 99.2%で( 図 表 9), 社 会 人 入 学 者 は 卒 業 後 124
国 内 の 経 営 学 系 大 学 院 における 社 会 人 の 学 び 直 し もほとんど 就 業 していた 就 業 形 態 は, 入 学 前 に 正 社 員 正 職 員 だった 割 合 は 95.4%で,ほとんど の 社 会 人 入 学 者 が 正 社 員 正 職 員 だったことがわ かる 卒 業 後 の 現 在, 正 社 員 正 職 員 だった 割 合 は 87.8%と 7.6% 減 っている わずかではあるが, 経 営 者 役 員 の 割 合 が, 入 学 前 3.1%から 現 在 7.0%となっている( 図 表 10) 役 職 は, 入 学 前 か ら 課 長 以 上 の 役 職 に 就 いていた 割 合 は 37.0%で, 係 長 以 上 の 役 職 に 就 いていた 割 合 をみると 70.5%であった( 図 表 11) 大 学 院 での 専 攻 は, 経 営 系 が 7 割 弱, 財 務 会 計 金 融 系 が 3 割 弱 である( 図 表 12) 大 学 院 に 入 学 前 の 社 会 人 経 験 年 数 と 卒 業 経 過 年 数 では, 入 学 前 の 社 会 人 経 験 年 数 が 5 年 に 満 たな い 割 合 は 1 割 に 過 ぎず, 半 数 以 上 が 10 年 以 上 の 社 会 人 経 験 を 経 て 大 学 院 に 入 学 している( 図 表 13) 卒 業 経 過 年 数 が 3 年 未 満 と 卒 業 してあまり 時 間 の 経 っていないものが 4 割 いる( 図 表 14) 図 表 1 在 学 中 の 仕 事 の 有 無 仕 事 をしていた 648 90.5 仕 事 はしていなかった 68 9.5 図 表 2 通 学 した 時 間 帯 平 日 昼 間 76 10.6 平 日 昼 間 以 外 640 89.4 図 表 3 入 学 前 と 卒 業 後 の 勤 務 先 の 従 業 員 規 模 入 学 前 卒 業 後 ( 現 在 ) 100 人 未 満 82 11.4 112 15.7 100~500 人 未 満 89 12.5 86 12.0 500~1000 人 未 満 59 8.2 56 7.8 1000~5000 人 未 満 164 23.0 143 20.0 5000 人 以 上 315 44.0 297 41.5 公 務 ( 官 公 庁 ) 7 1.0 10 1.4 非 就 業 者 - - 12 1.7 図 表 4 入 学 前 と 卒 業 後 の 年 収 入 学 前 卒 業 後 ( 現 在 ) 300 万 円 未 満 13 1.8 23 3.3 300~500 万 円 未 満 56 7.8 27 3.8 500~700 万 円 未 満 168 23.4 111 15.5 700~1000 万 円 未 満 286 39.9 251 35.1 1000 万 円 以 上 190 26.5 304 42.4 システム 欠 損 値 3 0.4 0 0.0 図 表 5 入 学 金 授 業 料 の 費 用 負 担 勤 務 先 に 費 用 をすべて 負 担 しても らった 勤 務 先 に 費 用 を 一 部 負 担 してもらっ た 勤 務 先 に 費 用 をまったく 負 担 しても らわなかった 95 13.3 75 10.5 546 76.3 図 表 6 自 己 負 担 した 入 学 金 授 業 料 50 万 円 未 満 27 3.8 50~100 万 円 未 満 36 5.0 100~150 万 円 未 満 116 16.2 150~200 万 円 未 満 82 11.5 200~250 万 円 未 満 48 6.7 250~300 万 円 未 満 90 12.6 300~350 万 円 未 満 104 14.5 350 万 円 以 上 118 16.5 システム 欠 損 値 95 13.3 図 表 7 年 齢 25 才 ~29 才 18 2.5 30 才 ~34 才 125 17.5 35 才 ~39 才 225 31.4 40 才 ~44 才 174 24.3 45 才 ~49 才 114 15.9 50 才 以 上 59 8.2 システム 欠 損 値 1 0.1 125
Works Review Vol.6 図 表 8 性 別 図 表 13 入 学 前 の 社 会 人 経 験 年 数 男 性 638 89.1 女 性 78 10.9 図 表 9 入 学 前 と 卒 業 後 の 就 業 状 況 入 学 前 卒 業 後 ( 現 在 ) 就 業 713 99.6 710 99.2 非 就 業 3 0.4 6 0.8 図 表 10 入 学 前 と 卒 業 後 の 就 業 形 態 入 学 前 卒 業 後 ( 現 在 ) 正 社 員 正 職 員 683 95.4 629 87.8 契 約 社 員 3 0.4 4 0.6 フリーター 4 0.6 2 0.3 パートタイマー 2 0.3 1 0.1 派 遣 2 0.3 3 0.4 経 営 者 役 員 22 3.1 50 7.0 自 営 自 営 手 伝 い - - 15 2.1 専 業 主 婦 - - 1 0.1 無 職 - - 5 0.7 その 他 - - 6 0.8 図 表 11 入 学 前 と 卒 業 後 の 役 職 入 学 前 卒 業 後 ( 現 在 ) 部 長 クラス 81 11.3 131 18.3 課 長 クラス 184 25.7 232 32.4 係 長 主 任 クラス 240 33.5 186 26.0 一 般 社 員 クラス 187 26.1 86 12.0 システム 欠 損 値 24 3.4 81 11.3 図 表 12 専 攻 経 営 489 68.3 財 務 会 計 金 融 209 29.2 不 明 18 2.5 3 年 未 満 24 3.4 3 年 以 上 5 年 未 満 51 7.1 5 年 以 上 10 年 未 満 227 31.7 10 年 以 上 20 年 未 満 322 45.0 20 年 以 上 92 12.8 図 表 14 卒 業 経 過 年 数 3 年 未 満 295 41.2 3 年 以 上 5 年 未 満 223 31.1 5 年 以 上 10 年 未 満 178 24.8 10 年 以 上 20 2.8 Ⅲ. 分 析 Ⅲ-1. 入 学 目 的 そもそも 社 会 人 入 学 者 がどのような 目 的 で 大 学 院 へ 入 学 したかを 調 べた 入 学 目 的 を 達 成 したと いうデータは, 大 学 院 修 士 課 程 への 入 学 目 的 をお 答 えください として,13 の 選 択 肢 から 複 数 回 答 してもらった その 結 果 を 図 表 15 に 示 した 図 表 15 入 学 目 的 項 目 基 礎 的 なスキルの 習 得 471 65.8 論 理 的 思 考 力 の 向 上 478 66.8 専 門 的 な 知 識 等 の 習 得 539 75.3 教 養 の 深 耕 384 53.6 仕 事 経 験 の 理 論 的 整 理 418 58.4 人 脈 の 充 実 438 61.2 出 身 会 社 での 処 遇 の 向 上 115 16.1 転 職 独 立 開 業 226 31.6 研 究 者 34 4.7 修 士 取 得 265 37.0 資 格 取 得 85 11.9 緊 急 避 難 51 7.1 その 他 36 5.0 126
国 内 の 経 営 学 系 大 学 院 における 社 会 人 の 学 び 直 し 上 位 3 つは 専 門 的 な 知 識 等 の 習 得 (75.3%) 論 理 的 思 考 力 の 向 上 (66.8%) 基 礎 的 なスキ ルの 習 得 (65.8%) となった 社 会 人 の 多 くは, 処 遇 の 向 上 や 転 職 独 立 を 期 待 して 経 営 学 系 大 学 院 に 入 学 しているのではなく, 仕 事 に 必 要 な 知 識, 論 理 的 思 考 力,スキルを 身 につけることを 期 待 し て 経 営 学 系 大 学 院 に 入 学 している さらに, 経 営 学 系 を 経 営 と 財 務 会 計 金 融 の 2 つの 専 攻 に 分 けて, 社 会 人 入 学 者 の 入 学 目 的 を みた( 図 表 16) 図 表 16 専 攻 別 の 入 学 目 的 財 務 会 計 項 目 経 営 系 金 融 系 基 礎 的 なスキルの 習 得 334 69.2% 137 58.8% 論 理 的 思 考 力 の 向 上 367 76.0% 111 47.6% 専 門 的 知 識 等 の 習 得 344 71.2% 195 83.7% 教 養 の 深 耕 257 53.2% 127 54.5% 仕 事 経 験 の 理 論 的 整 理 294 60.9% 124 53.2% 人 脈 の 充 実 305 63.1% 133 57.1% 出 身 会 社 での 処 遇 の 向 上 74 15.3% 41 17.6% 転 職 独 立 開 業 152 31.5% 74 31.8% 研 究 者 になる 22 4.6% 12 5.2% 修 士 取 得 155 32.1% 110 47.2% 資 格 取 得 48 9.9% 37 15.9% 緊 急 避 難 33 6.8% 18 7.7% その 他 32 6.6% 4 1.7% 経 営 系 専 攻 者 での 上 位 3 つは 論 理 的 思 考 力 の 向 上 (76.0%) 専 門 的 知 識 等 の 習 得 (71.2%) 基 礎 的 なスキルの 習 得 (69.2%) となった 財 務 会 計 金 融 系 専 攻 者 での 上 位 3 つは 専 門 的 知 識 等 の 習 得 (83.7%) 基 礎 的 なスキルの 習 得 (58.8%) 人 脈 の 充 実 (57.1%) だった 専 攻 による 最 も 異 なっていた 入 学 目 的 は 論 理 的 思 考 力 の 向 上 で,その 差 は 29.4%だった 基 礎 的 なスキルや 論 理 的 思 考 力, 仕 事 経 験 の 理 論 的 整 理, 人 脈 の 充 実 を 期 待 している 割 合 は 経 営 専 攻 者 の 方 が 5 ポイント 以 上 多 く, 専 門 的 知 識 等 の 習 得, 修 士 取 得, 資 格 取 得 を 期 待 している 割 合 は 財 務 会 計 金 融 専 攻 者 の 方 が 5 ポイント 以 上 多 い 以 上, 専 攻 によって 経 営 学 系 大 学 院 に 期 待 した ものは 異 なることが 示 唆 された Ⅲ-2. 学 習 の 成 果 社 会 人 入 学 者 が 経 営 学 系 大 学 院 で 学 習 すること によりどのような 成 果 があったのかを 調 べた 具 体 的 には, 大 学 院 修 士 課 程 で 学 習 することによっ て 得 られたもの 達 成 したものを 選 んでくださ い という 問 いを 示 し,11 の 選 択 肢 から 複 数 回 答 してもらった 回 答 結 果 を 図 表 17 に 示 した 図 表 17 大 学 院 での 学 習 による 成 果 項 目 基 礎 的 なスキルの 習 得 476 66.5 論 理 的 思 考 力 の 向 上 520 72.6 専 門 的 な 知 識 等 の 習 得 498 69.6 教 養 の 深 耕 474 66.2 仕 事 経 験 の 理 論 的 整 理 408 57.0 人 脈 の 充 実 506 70.7 出 身 会 社 での 処 遇 の 向 上 109 15.2 転 職 独 立 開 業 113 15.8 研 究 者 12 1.7 資 格 取 得 119 16.6 その 他 20 2.8 まず, 経 営 学 系 大 学 院 での 学 習 によって, 論 理 的 思 考 力 の 向 上, 人 脈 の 充 実, 専 門 的 な 知 識 等 の 習 得 などといったものを 得 られた 社 会 人 入 学 者 は 半 数 以 上 いることが 分 かった また, 卒 業 後 のキャリアとして, 経 営 学 系 大 学 院 での 学 習 によって, 入 学 時 に 在 籍 していた 会 社 ( 以 下, 出 身 会 社 )での 処 遇 向 上, 転 職 や 独 立 開 業, 資 格 取 得 を 達 成 した 社 会 人 入 学 者 が 一 部 いる ことが 分 かった 経 営 学 系 大 学 院 を 卒 業 したから といって, 社 会 人 入 学 者 全 員 が 必 ずしもその 後 の 127
Works Review Vol.6 キャリアに 変 化 が 起 きているわけではない なお, 経 営 学 系 大 学 院 での 学 習 が 卒 業 後 の 何 ら かのキャリアに 役 立 ったとした 社 会 人 入 学 者 は 4 割 存 在 する Ⅲ-3. 役 職 費 用 負 担 別 にみた 学 習 の 成 果 一 般 社 員 クラス 係 長 クラス 仕 事 経 験 の 理 論 的 整 理 はい いいえ 88 99 187 47.1% 52.9% 100.0% 141 99 240 58.8% 41.3% 100.0% 役 職 によって, 経 営 学 系 大 学 院 での 学 習 の 成 果 にどのような 影 響 を 与 えるかを 検 証 した 役 職 は 4 つに 分 類 ( 部 長 クラス, 課 長 クラス, 係 長 クラ ス, 一 般 社 員 クラス, 図 表 11 参 照 )し, 学 習 の 成 果 は 図 表 17 の 項 目 を 用 いた 学 習 の 成 果 の 各 項 目 について Pearson のカイ 2 乗 検 定 を 行 い,10% 水 準 で 有 意 だった 項 目 に 関 す るクロス 集 計 表 を 図 表 18~20 に 示 した まず, 論 理 的 思 考 力 の 向 上, 仕 事 経 験 の 理 論 的 整 理, 資 格 取 得 といった 項 目 について, 入 学 前 の 役 職 によって 異 なることが 示 唆 された このうち, 論 理 的 思 考 力 の 向 上, 仕 事 経 験 の 理 論 的 整 理 は, 役 職 が 高 いほど, 得 られる 可 能 性 が 高 い また, 資 格 取 得 は, 部 長 クラス, 一 般 社 員 クラス, 係 長 クラス, 課 長 クラスの 順 に, 得 られ る 可 能 性 が 高 いことがわかった 図 表 18 役 職 別 の 学 習 成 果 論 理 的 思 考 力 の 向 上 はい いいえ 138 49 187 一 般 社 員 クラス 73.8% 26.2% 100.0% 171 69 240 係 長 クラス 71.3% 28.8% 100.0% 127 57 184 課 長 クラス 69.0% 31.0% 100.0% 69 12 81 部 長 クラス 85.2% 14.8% 100.0% 505 187 692 73.0% 27.0% 100.0% Pearson のカイ 2 乗 の 漸 近 有 意 確 率 ( 両 側 ) 0.046 図 表 19 役 職 別 の 学 習 成 果 112 72 184 課 長 クラス 60.9% 39.1% 100.0% 53 28 81 部 長 クラス 65.4% 34.6% 100.0% 394 298 692 56.9% 43.1% 100.0% Pearson のカイ 2 乗 の 漸 近 有 意 確 率 ( 両 側 ) 0.010 図 表 20 役 職 別 の 学 習 成 果 資 格 取 得 はい いいえ 一 般 社 員 クラス 36 151 187 19.3% 80.7% 100.0% 係 長 クラス 37 203 240 15.4% 84.6% 100.0% 課 長 クラス 24 160 184 13.0% 87.0% 100.0% 部 長 クラス 20 61 81 24.7% 75.3% 100.0% 117 575 692 16.9% 83.1% 100.0% Pearson のカイ 2 乗 の 漸 近 有 意 確 率 ( 両 側 ) 0.087 これらの 結 果 からは, 求 めたい 成 果 によって 大 学 院 で 学 び 直 す 最 適 な 時 期 が 異 なる 可 能 性 がある ことが 示 唆 された つまり, 論 理 的 思 考 力 の 向 上, 仕 事 の 理 論 的 整 理 はマネージャー 経 験 が 長 いほど, 資 格 取 得 に 関 してはマネージャー 経 験 が 短 いほど 学 び 直 しが 有 効 であることが 示 唆 された 次 に, 役 職 に 加 えて, 入 学 金 や 授 業 料 などの 費 用 について 勤 務 先 の 負 担 の 有 無 によって, 経 営 学 系 大 学 院 での 学 習 の 成 果 にどのような 影 響 を 与 え るかを 検 証 した 役 職 と 学 習 成 果 の 変 数 は, 前 節 128
国 内 の 経 営 学 系 大 学 院 における 社 会 人 の 学 び 直 し と 同 様 に 用 いた 学 習 の 成 果 の 各 項 目 に 関 して 作 成 したクロス 集 計 表 について,Pearson のカイ 2 乗 検 定 を 行 い, 有 意 だったものを 図 表 21~22 に 示 した 経 営 学 系 大 学 院 での 学 習 によって, 論 理 的 思 考 力 の 向 上, 仕 事 経 験 の 理 論 的 整 理 といった 成 果 は, 大 学 院 の 費 用 を 自 分 で 負 担 している 場 合 に 限 って, 入 学 前 の 役 職 によって 異 なることが 示 唆 された 具 体 的 には, 論 理 的 思 考 力 は, 部 長 クラスはその 他 のクラスに 比 べて 向 上 できる 可 能 性 が 高 く( 部 長 クラス>その 他 のクラス), 仕 事 経 験 の 理 論 的 整 理 は, 役 職 が 高 いほど, 実 現 する 可 能 性 が 高 い( 課 長 クラス 以 上 > 係 長 クラス> 一 般 社 員 クラス) 自 己 負 担 図 表 22 費 用 負 担 役 職 別 の 学 習 成 果 仕 事 経 験 の 理 論 的 整 理 はい いいえ 一 般 社 員 66 75 141 クラス 46.8% 53.2% 100.0% 係 長 102 79 181 クラス 56.4% 43.6% 100.0% 課 長 91 53 144 クラス 63.2% 36.8% 100.0% 部 長 38 22 60 クラス 63.3% 36.7% 100.0% 297 229 526 56.5% 43.5% 100.0% 自 己 負 担 会 社 負 担 図 表 21 費 用 負 担 役 職 別 の 学 習 成 果 論 理 的 思 考 力 の 向 上 はい いいえ 一 般 社 員 100 41 141 クラス 70.9% 29.1% 100.0% 係 長 129 52 181 クラス 71.3% 28.7% 100.0% 課 長 96 48 144 クラス 66.7% 33.3% 100.0% 部 長 53 7 60 クラス 88.3% 11.7% 100.0% 378 148 526 71.9% 28.1% 100.0% Pearson のカイ 2 乗 の 漸 近 有 意 確 率 ( 両 側 ) 0.018 一 般 社 員 38 8 46 クラス 82.6% 17.4% 100.0% 係 長 42 17 59 クラス 71.2% 28.8% 100.0% 課 長 31 9 40 クラス 77.5% 22.5% 100.0% 部 長 16 5 21 クラス 76.2% 23.8% 100.0% 127 39 166 76.5% 23.5% 100.0% Pearson のカイ 2 乗 の 漸 近 有 意 確 率 ( 両 側 ) 0.592 Pearson のカイ 2 乗 の 漸 近 有 意 確 率 ( 両 側 ) 0.027 一 般 社 員 22 24 46 クラス 47.8% 52.2% 100.0% 係 長 39 20 59 クラス 66.1% 33.9% 100.0% 会 課 長 21 19 40 社 負 クラス 52.5% 47.5% 100.0% 担 部 長 15 6 21 クラス 71.4% 28.6% 100.0% 97 69 166 58.4% 41.6% 100.0% Pearson のカイ 2 乗 の 漸 近 有 意 確 率 ( 両 側 ) 0.133 上 述 の 分 析 からは, 費 用 を 自 分 で 負 担 するのか, 会 社 が 負 担 してくれるのかという 違 いにより 学 習 効 果 に 差 が 生 まれることが 示 唆 され, 自 分 で 費 用 を 負 担 している 方 が 入 学 前 の 役 職 の 違 いが 学 習 効 果 に 与 える 影 響 が 大 きいことが 示 唆 された Ⅳ. 統 括 と 今 後 の 課 題 本 研 究 では, 次 の 3 つを 明 らかにした 第 1 に 社 会 人 入 学 者 が 国 内 の 経 営 学 系 大 学 院 へ 入 学 する 目 的, 第 2 に 社 会 人 入 学 者 の 国 内 の 経 営 学 系 大 学 院 での 学 習 の 成 果, 第 3 に 入 学 前 の 役 職 経 験 によ る 学 習 成 果 の 違 いである 129
Works Review Vol.6 ここで 改 めて 分 析 結 果 をまとめたい まず, 入 学 目 的 については, 社 会 人 入 学 者 の 半 数 以 上 が 能 力 知 識 等 の 習 得 や, 仕 事 経 験 の 整 理 や 人 脈 の 充 実 を 挙 げた 一 方, 出 身 会 社 での 処 遇 の 向 上 や 転 職 独 立 等 を 挙 げた 社 会 人 学 生 は 一 部 に 留 まった また, 入 学 目 的 は 専 攻 によって 大 きな 違 いがあ った 特 に 大 きい 違 いが 目 立 った 入 学 目 的 は 論 理 的 思 考 力 の 向 上 で, 経 営 専 攻 者 は 財 務 会 計 金 融 専 攻 者 に 比 べて 30% 程 度 多 かった 次 に, 大 学 院 での 学 習 の 成 果 として, 論 理 的 思 考 力 の 向 上, 人 脈 の 充 実, 専 門 的 な 知 識 等 の 習 得 などを 挙 げた 社 会 人 入 学 者 が 半 数 以 上 いた また 出 身 会 社 での 処 遇 の 向 上 などの 卒 業 後 のキャリア に 役 立 ったと 回 答 した 社 会 人 入 学 者 は, 一 部 に 留 まった 最 後 に, 役 職 ごとの 学 習 成 果 の 分 析 結 果 から, 効 果 的 に 学 習 成 果 を 高 めるためには, 学 び 直 しの 時 期 が 重 要 であることが 示 唆 された 具 体 的 には, 論 理 的 思 考 力 の 向 上, 仕 事 の 理 論 的 整 理 はマネー ジャー 経 験 が 長 いほど, 資 格 取 得 に 関 してはマネ ージャー 経 験 が 短 く, 少 ないほど 学 び 直 しが 有 効 であることが 分 かった このことは,アメリカに おいて,ビジネススクール 入 学 前 の 実 務 経 験 の 程 度 によって, 卒 業 後 のマネージャーとしての 職 務 遂 行 の 成 否 を 分 けるというミンツバーグ(2006) の 指 摘 にあったように, 日 本 の 経 営 学 系 大 学 院 に おいても 入 学 前 の 役 職 経 験 の 有 無 によって, 得 ら れる 学 習 成 果 に 違 いが 生 じることが 示 唆 された 本 研 究 で 残 された 課 題 について 述 べておく 第 1 に 年 収 や 役 職 など 処 遇 について 実 際 に 生 じ た 変 化 を 表 す 変 数 を 用 いた 分 析 を 行 いたい 第 2 に 大 学 院 での 学 習 によって 達 成 した 卒 業 後 の 処 遇 には, 入 学 目 的 だけでなく, 卒 業 後 の 経 過 年 数 や 大 学 院 での 学 習 行 動, 授 業 内 容 に 対 する 評 価, 仕 事 に 対 する 取 り 組 みなどが 影 響 していると 思 われる そこで, 入 学 目 的 以 外 の 変 数 も 用 いて, 改 めて 分 析 したい 第 3 に 入 学 目 的 と 大 学 院 での 学 習 によって 達 成 した 卒 業 後 の 処 遇 の 関 係 を,クロス 集 計 表 とカイ 2 乗 検 定 で 示 したが, 因 果 関 係 までは 言 及 できて いない 回 帰 分 析 等 を 用 いて, 因 果 関 係 を 説 明 し たい 第 4 に, 卒 業 してしばらく 経 った 時 点 で 質 問 さ れた 入 学 目 的 は, 現 時 点 の 状 況 を 鑑 みて,その 状 況 を 肯 定 した 回 答 をしてしまう 可 能 性 がある 謝 辞 この 研 究 を 論 文 として 形 にすることが 出 来 たの は, 経 営 学 系 大 学 院 の 教 職 員 の 方, 卒 業 生 の 方 に 貴 重 な 時 間 を 割 いてアンケート 調 査 に 協 力 してい ただいたおかげです ご 協 力 くださった 皆 様 へ 心 から 感 謝 の 気 持 ちと 御 礼 を 申 し 上 げたく, 謝 辞 に かえさせて 頂 きます 130
国 内 の 経 営 学 系 大 学 院 における 社 会 人 の 学 び 直 し 注 i 経 営 学 系 とは 商 経 済 学 系 のことを 指 す ii 経 営 学 系 とは 文 部 科 学 省 のホームページに 記 載 されている ビジ ネス MOT と 会 計 を 指 す iii この 調 査 は,2010 年 に 実 施 し,9931 人 を 回 収 した 参 考 文 献 ; 小 方 直 幸,2003, 大 学 院 教 育 に 対 する 修 了 者 の 評 価, 本 田 由 紀 編 社 会 人 大 学 院 修 了 者 の 職 業 キャリアと 大 学 院 教 育 のレ リバンス : 社 会 科 学 系 修 士 課 程 (MBA を 含 む) に 注 目 して 分 析 編 87-104 加 藤 毅,2003, 社 会 人 大 学 院 における 学 習 成 果 とその 評 価 教 育 固 有 の 価 値 へ 回 帰 する 高 度 専 門 職 業 人 教 育, 本 田 由 紀 編 社 会 人 大 学 院 修 了 者 の 職 業 キャリアと 大 学 院 教 育 のレリバン ス : 社 会 科 学 系 修 士 課 程 (MBAを 含 む) に 注 目 して 分 析 編 45-86 小 山 治,2003, 専 攻 移 動 の 意 味 社 会 人 大 学 院 教 育 における 能 力 の 獲 得, 社 会 人 大 学 院 教 育 と 仕 事 との 関 連 度 を 中 心 に, 本 田 由 紀 編 社 会 人 大 学 院 修 了 者 の 職 業 キャリアと 大 学 院 教 育 の レリバンス : 社 会 科 学 系 修 士 課 程 (MBAを 含 む) に 注 目 して 分 析 編 105-118 平 尾 智 隆, 梅 崎 修, 松 繁 寿 和,2010a, 社 会 人 大 学 院 教 育 と 職 業 キャリアの 関 連 性 -あるビジネススクール 卒 業 生 のその 後 日 本 労 務 学 会 誌 11(2):30-42,,,2010b, 企 業 内 における 大 学 院 卒 業 生 の 処 遇 企 業 アンケート 調 査 の 分 析, 日 本 労 務 学 会 第 40 回 全 国 大 会 研 究 報 告 論 集 271-278,,,2007, 企 業 内 における 院 卒 従 業 員 の 処 遇 プレミアム- 人 事 アンケート 調 査 を 使 った 分 析 キャリアデザイン 研 究 3:63-74,2003, 大 学 院 修 士 課 程 における 社 会 人 教 育 後 のキャ リア 展 開 立 命 館 高 等 教 育 研 究 2:59-71 本 田 由 紀 編,2003, 社 会 人 大 学 院 修 了 者 の 職 業 キャリアと 大 学 院 教 育 のレリバンス : 社 会 科 学 系 修 士 課 程 (MBA を 含 む) に 注 目 して 資 料 編 東 京 大 学 社 会 科 学 研 究 所 調 査 研 究 シリーズ, 12:8 慶 應 義 塾 大 学 ビジネス スクール 編,2009, 検 証 ビジネススク ール 慶 應 義 塾 大 学 出 版 会 ミンツバーグ, H, 2006, MBA が 会 社 を 滅 ぼす マネージャーの 正 しい 育 て 方 日 経 BP 社 文 部 科 学 省,2010a, 学 校 基 本 調 査 報 告 書 ( 高 等 教 育 機 関 編 ) 平 成 22 年 度,2010b, 専 門 職 大 学 院 一 覧 (http://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/senmonshoku/080 60508.htm),2003, 学 校 基 本 調 査 報 告 書 ( 高 等 教 育 機 関 編 ) 平 成 15 年 度 吉 田 文,2010, 社 会 人 学 生 の 進 学 動 機 を 探 る カレッジ マネ ジメント 161:24-30 131