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基 礎 からの M&A 講 座 第 9 回 M&A の 論 点 (2)ストラクチャー デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー 株 式 会 社 コーポレートファイナンシャルアドバイザリー 西 崎 祐 喜 はじめに 基 礎 からの M&A 講 座 第 8 回 から M&A の 個 別 論 点 について 解 説 しているが 今 回 は M&A で 論 点 となりやすいストラク チャーに 焦 点 を 当 て 説 明 する ストラクチャーとは M&A を 行 うにあたって 目 的 を 達 成 するための 手 順 方 法 のことである M&A においては 売 り 手 買 い 手 のみならず さまざまな 利 害 関 係 者 に 影 響 を 及 ぼすことになる このため 各 利 害 関 係 者 が 納 得 できるようなストラク チャーを 構 築 することが 肝 要 となる そこで 本 稿 では M&A で 用 いる 一 般 的 なストラクチャーについて スキーム 設 計 上 のポイントおよび 手 続 き 面 等 について 解 説 していく ストラクチャーの 検 討 にあたって 一 言 でストラクチャーといえど M&A で 用 いられるストラクチャーにはいくつかの 形 態 が 存 在 し 最 終 的 な 支 配 関 係 や 手 続 きなどが 大 きく 異 なってくる そのため M&A で 達 成 したい 目 的 を 踏 まえてストラクチャーを 検 討 する 必 要 がある 検 討 の 際 には 特 に 会 計 税 務 法 務 の 各 ポイントを 押 さえた 上 で 比 較 検 討 を 行 うことが 重 要 である まず 会 計 上 留 意 すべき 観 点 として いつ 財 務 諸 表 のどの 区 分 に いくらのインパクトが 生 じるかということを 考 慮 する 必 要 がある 特 に 経 営 者 は 財 務 諸 表 で 株 主 および 利 害 関 係 者 から 評 価 されるので その 説 明 責 任 を 果 たすため シミュレ ーションを 交 えた 上 で スキームごとのインパクト 比 較 を 行 うことが 重 要 である

次 に 税 務 上 の 観 点 である 税 制 適 格 要 件 や 繰 越 欠 損 金 の 使 用 制 限 等 課 税 の 発 生 に 大 きなインパクトを 与 えることに なるため ストラクチャー 検 討 においては 留 意 すべき 点 である 最 後 に 法 務 上 の 観 点 である M&A には 会 社 法 金 融 商 品 取 引 法 等 のさまざまな 法 律 が 関 係 する M&A の 実 行 の 際 に は 各 法 律 の 規 制 に 則 った 手 続 きを 経 る 必 要 があり 各 手 続 きの 要 件 等 を 考 慮 にいれて ストラクチャーを 検 討 する 必 要 がある M&A の 類 型 M&A のストラクチャーは 大 きく 分 類 すると 図 1 のように 分 けられる 株 式 を 取 得 して 会 社 を 支 配 したいのか 事 業 自 体 を 取 得 したいのかにより 取 り 得 るストラクチャーは 変 わってくる 図 1 M&A の 類 型 株 式 取 得 株 式 の 取 得 株 式 交 換 M&A 株 式 移 転 事 業 譲 受 事 業 の 取 得 会 社 分 割 合 併 各 ストラクチャーの 比 較 ストラクチャーの 検 討 段 階 においては 各 ストラクチャーの 特 徴 を 把 握 し M&A 実 施 時 の 状 況 を 踏 まえて さまざまな 角 度 から どのストラクチャーを 選 択 するかを 検 討 する ここでは 論 点 を 簡 単 にまとめ 各 ストラクチャーの 比 較 を 行 うこととす る 図 2( 一 部 簡 便 的 に 記 載 しており 詳 細 の 論 点 を 省 略 している)において 各 ストラクチャーの 論 点 比 較 を 行 っている 手 続 き 面 での 決 議 方 法 が 一 番 簡 単 なのが 株 式 取 得 である 次 に 債 権 者 保 護 手 続 きが 必 要 となる 手 続 きは 会 社 分 割 と 合 併 である その 他 は 不 要 である

税 務 面 においては 株 式 取 得 と 事 業 譲 受 以 外 は 適 格 要 件 の 検 討 が 必 要 となる さらに 事 業 譲 受 では 消 費 税 が 課 税 され るということも 重 要 な 論 点 である 図 2 各 ストラクチャーの 論 点 比 較 各 ストラクチャー 手 続 き 面 決 議 方 法 債 権 者 保 護 手 続 き 税 務 面 適 格 要 件 の 確 認 消 費 税 の 有 無 株 式 取 得 株 式 交 換 株 式 移 転 既 存 株 式 不 要 1 不 要 なし なし 新 規 株 式 取 締 役 会 ( 株 主 総 会 ) 1 不 要 なし なし 株 主 総 会 2 不 要 あり なし 株 主 総 会 不 要 あり なし 事 業 譲 受 会 社 分 割 合 併 株 主 総 会 2 不 要 なし あり 株 主 総 会 2 必 要 あり なし 株 主 総 会 2 必 要 あり なし 出 典 : デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー 株 式 会 社 作 成 1:TOB 規 制 あり 2: 簡 易 略 式 手 続 きあり 以 下 個 別 のストラクチャーについて 見 ていくこととする 株 式 取 得 M&A の 中 で 最 もよく 用 いられるストラクチャーが 株 式 取 得 である 株 式 取 得 は 発 行 済 株 式 の 取 得 と 新 規 発 行 株 式 の 取 得 ( 第 三 者 割 当 増 資 )に 大 別 できる 既 存 株 式 の 取 得 は 他 のストラクチャーに 比 べて 手 続 きは 簡 単 である 一 方 第 三 者 割 当 増 資 は 有 利 発 行 であれば 株 主 総 会 の 特 別 決 議 が 必 要 になる 等 会 社 法 による 規 制 があることに 留 意 する 必 要 がある このストラクチャーは 営 業 取 引 上 の 理 由 からの 資 本 提 携 に 用 いられることが 多 い 株 式 交 換 通 常 株 式 交 換 は 完 全 親 会 社 となる 会 社 に 完 全 子 会 社 となる 会 社 の 株 式 をすべて 取 得 させ 100% 子 会 社 とすることが 多 い( 図 3 参 照 ) そのため 手 許 資 金 がない 場 合 でも 完 全 子 会 社 化 にすることができるストラクチャーである ただしこの 場 合 完 全 子 会 社 の 株 主 は 完 全 親 会 社 となる 株 主 と 並 列 の 関 係 になる

なお 会 社 法 上 株 式 交 換 は 組 織 再 編 行 為 に 該 当 するため 原 則 として 株 主 総 会 特 別 決 議 が 必 要 であり 株 主 の 異 動 が 生 じるため 反 対 株 主 の 買 取 請 求 権 がある なお 債 権 者 の 地 位 の 変 動 はないため 債 権 者 保 護 手 続 きは 不 要 である また 税 務 上 注 意 すべき 点 として 税 制 適 格 要 件 の 確 認 がある 本 稿 では 税 制 適 格 の 要 件 についての 詳 細 な 説 明 は 割 愛 するが M&A 実 施 時 に 課 税 されるか 課 税 が 将 来 に 繰 延 られるかという 課 税 のタイミングが 変 わるため 重 要 な 論 点 となる なお 当 然 ながら 100% 子 会 社 となるため 会 計 上 連 結 の 手 続 きが 必 要 となる 株 式 交 換 は 既 に 持 株 会 社 制 を 採 用 しているグループの 傘 下 に 別 の 会 社 を 取 り 込 む 際 に 用 いられることが 多 い 最 近 では 株 式 交 換 によりイズミヤがエイチ ツー オーリテイリングの 完 全 子 会 社 化 した 事 例 がある 図 3 株 式 交 換 の 例 株 式 株 式 100% 株 式 移 転 株 式 移 転 は 自 らの 発 行 している 株 式 を 新 設 する 会 社 に 取 得 させるストラクチャーである( 図 4 参 照 ) 株 式 移 転 は 単 独 株 式 移 転 と 共 同 株 式 移 転 に 大 別 される 単 独 株 式 移 転 は 持 株 会 社 のためのグループ 内 組 織 再 編 で 用 いられることが 多 く 通 常 の M&A では 共 同 株 式 移 転 のケースが 多 く 用 いられる 最 近 では KADOKAWA とドワンゴによる 共 同 株 式 移 転 など の 事 例 がある 株 式 移 転 の 特 徴 は 異 なる 法 人 格 を 維 持 できるという 点 にある 例 えば 持 株 会 社 制 を 採 用 している 会 社 が 多 角 化 の 一 環 で 異 業 種 の M&A を 実 施 する 場 合 等 に 用 いられることが 多 い この 場 合 会 社 の 風 土 や 人 事 体 系 等 が 異 なるケースが 多 いため 両 者 を 一 致 させることは 非 常 に 労 力 がかかるが 法 人 格 を 残 し 同 じグループ 内 という 組 織 形 態 にしておけば M&A のメリットを 享 受 できることが 可 能 となる 手 続 きとしては 株 主 総 会 特 別 決 議 が 求 められ 反 対 株 主 の 株 式 買 取 請 求 権 がある なお 債 権 者 保 護 手 続 きは 不 要 で ある この 場 合 も 株 式 交 換 と 同 じく 会 計 上 連 結 手 続 きが 必 要 となり 税 務 上 税 制 適 格 要 件 に 留 意 する 必 要 がある

図 4 株 式 移 転 の 例 ( 共 同 株 式 移 転 ) 新 設 会 社 新 設 会 社 株 式 株 式 新 設 会 社 株 式 株 式 新 設 会 社 100% 100% 事 業 譲 受 事 業 譲 受 は 事 業 を 形 成 する 資 産 のみならず 人 材 や 商 圏 等 も 含 めた 事 業 全 体 としての 譲 受 を 指 す( 図 5 参 照 ) しかし 法 的 には 組 織 再 編 行 為 と 異 なり 資 産 負 債 の 個 々の 移 転 手 続 きが 必 要 となる この 点 手 続 きが 煩 雑 になる 一 方 譲 受 範 囲 を 限 定 し 簿 外 債 務 等 のリスクを 承 継 しないなどのメリットもある そのため 事 業 譲 受 は 簿 外 債 務 等 が 不 明 瞭 な 場 合 等 における 回 避 策 として M&A で 用 いられることがある 会 社 法 上 の 手 続 きにおいては 譲 受 会 社 では 事 業 の 全 部 譲 渡 の 場 合 株 主 総 会 特 別 決 議 が 必 要 となる 一 方 譲 渡 会 社 では 事 業 の 全 部 譲 渡 重 要 な 一 部 譲 渡 の 場 合 株 主 総 会 特 別 決 議 が 必 要 となる 税 務 上 は 通 常 の 資 産 の 譲 渡 損 益 と 同 様 の 考 え 方 が 適 用 される なお 他 のストラクチャーと 異 なり 事 業 譲 受 は 譲 渡 対 象 資 産 全 体 に 消 費 税 の 支 払 が 必 要 になるため 買 収 価 格 に 影 響 がでる 点 に 留 意 が 必 要 となる 図 5 事 業 譲 受 の 例 対 価 X 事 業 X X

会 社 分 割 会 社 分 割 は 分 割 した 事 業 の 承 継 会 社 によって 吸 収 分 割 と 新 設 分 割 に 大 別 される 承 継 する 会 社 が 既 に 存 在 する 会 社 か 新 設 する 会 社 かにより ストラクチャーが 異 なる ( 図 6 は 新 設 分 割 を 例 示 ) 会 社 分 割 は 本 社 事 業 の 一 部 の 切 り 出 しを 行 い グループ 内 組 織 再 編 などに 用 いられることが 多 い この 会 社 分 割 は 先 ほどの 事 業 譲 受 と 異 なり その 事 業 が 有 する 権 利 義 務 を 包 括 的 に 承 継 会 社 に 移 転 するものである なお 会 社 分 割 の 特 徴 としては 従 業 員 保 護 のために 労 働 者 の 承 継 に 関 する 手 続 きが 厳 格 に 規 定 されている 点 に 留 意 が 必 要 となる 会 社 法 上 の 手 続 きとしては 組 織 再 編 手 続 きなので 原 則 として 株 主 総 会 特 別 決 議 が 必 要 となる なお 税 務 上 の 論 点 として 対 価 の 支 払 先 によって 分 割 型 分 割 と 分 社 型 分 割 に 分 けられ それぞれにおいて 課 税 関 係 が 異 なることとなるため ストラクチャーの 設 計 には 留 意 が 必 要 となる 会 社 分 割 は 事 業 譲 受 と 比 較 されることが 多 く 両 者 の 大 きな 違 いは 承 継 事 業 の 権 利 義 務 が 包 括 的 に 移 転 されるか 否 かで ある 図 6 会 社 分 割 の 例 ( 新 設 分 割 ) 株 式 X X 事 業 X 合 併 合 併 には 承 継 する 会 社 の 形 態 により 吸 収 合 併 と 新 設 合 併 に 大 別 される 合 併 により 存 続 する 会 社 が 既 にある 会 社 か 新 たに 設 立 する 会 社 かの 違 いにより このように 分 類 される ( 図 7 は 吸 収 合 併 を 例 示 ) 合 併 は 組 織 再 編 の 一 環 として 子 会 社 同 士 の 合 併 などに 用 いられるケースが 多 い

そして 会 社 法 上 合 併 行 為 は 組 織 再 編 行 為 に 該 当 し 消 滅 会 社 の 資 産 負 債 は 包 括 的 に 存 続 会 社 に 承 継 されることにな る 合 併 は 異 なる 法 人 が 一 つの 会 社 になることから 各 種 の 制 度 やシステム 等 の 統 合 に 非 常 に 時 間 を 有 することになる 点 に 留 意 が 必 要 になる 手 続 きとしては 原 則 株 主 総 会 特 別 決 議 債 権 者 保 護 手 続 きが 必 要 となり 反 対 株 主 の 株 式 買 取 請 求 権 も 認 められて いる なお 新 設 合 併 の 場 合 許 認 可 の 再 取 得 手 続 きや 上 場 会 社 の 場 合 は 上 場 手 続 き 等 が 必 要 になり 手 続 きが 煩 雑 化 する ことにも 留 意 が 必 要 である 税 務 上 の 留 意 点 は 税 制 適 格 要 件 の 確 認 が 必 要 になる 図 7 合 併 の 例 ( 吸 収 合 併 ) 株 式 吸 収 おわりに ストラクチャーを 選 択 する 際 には スケジュール 利 害 関 係 者 との 交 渉 経 済 性 役 員 等 の 人 事 や 会 社 の 制 度 等 のさまざ まな 観 点 で 各 取 引 における 最 適 なストラクチャーを 適 用 する 必 要 がある 本 稿 で 示 したストラクチャーは 一 般 的 なものであ り 実 際 には 複 数 のストラクチャーを 組 み 合 わせて 採 用 する 等 複 雑 になることもある M&A のプロセスの 中 でストラクチャーの 決 定 はすべての 要 素 に 大 きく 関 わり M&A の 成 否 を 決 めることになると 言 っても 過 言 ではないため 十 分 な 検 討 を 行 うことが 求 められる 次 稿 は M&A の 論 点 ~ 契 約 の 留 意 点 ~ について 取 り 上 げる

本 文 中 の 意 見 や 見 解 にかかわる 部 分 は 私 見 であることをお 断 りする トーマツグループは 日 本 におけるデロイト トウシュ トーマツ リミテッド( 英 国 の 法 令 に 基 づく 保 証 有 限 責 任 会 社 )のメンバーファームおよびそれらの 関 係 会 社 ( 有 限 責 任 監 査 法 人 トーマツ デロイト トーマツ コンサルティング 株 式 会 社 デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー 株 式 会 社 お よび 税 理 士 法 人 トーマツを 含 む)の 総 称 です トーマツグループは 日 本 で 最 大 級 のビジネスプロフェッショナルグループのひとつであり 各 社 がそれぞ れの 適 用 法 令 に 従 い 監 査 税 務 コンサルティング ファイナンシャルアドバイザリー 等 を 提 供 しています また 国 内 約 40 都 市 に 約 7,600 名 の 専 門 家 ( 公 認 会 計 士 税 理 士 コンサルタントなど)を 擁 し 多 国 籍 企 業 や 主 要 な 日 本 企 業 をクライアントとしています 詳 細 はトーマツグループ Web サイト (www.tohmatsu.com)をご 覧 ください Deloitte(デロイト)は 監 査 税 務 コンサルティングおよびファイナンシャル アドバイザリーサービスを さまざまな 業 種 にわたる 上 場 非 上 場 のクラ イアントに 提 供 しています 全 世 界 150 を 超 える 国 地 域 のメンバーファームのネットワークを 通 じ デロイトは 高 度 に 複 合 化 されたビジネスに 取 り 組 むクライアントに 向 けて 深 い 洞 察 に 基 づき 世 界 最 高 水 準 の 陣 容 をもって 高 品 質 なサービスを 提 供 しています デロイトの 約 200,000 名 を 超 える 人 材 は standard of excellence となることを 目 指 しています Deloitte(デロイト)とは 英 国 の 法 令 に 基 づく 保 証 有 限 責 任 会 社 であるデロイト トウシュ トーマツ リミテッド( DTTL )ならびにそのネットワーク 組 織 を 構 成 するメンバーファームおよびその 関 係 会 社 のひとつまたは 複 数 を 指 します DTTL および 各 メンバーファームはそれぞれ 法 的 に 独 立 した 別 個 の 組 織 体 です DTTL(または Deloitte Global )はクライアントへのサービス 提 供 を 行 いません DTTL およびそのメンバーファームについての 詳 細 は www.tohmatsu.com/deloitte/ をご 覧 ください 本 資 料 は 皆 様 への 情 報 提 供 として 一 般 的 な 情 報 を 掲 載 するのみであり その 性 質 上 特 定 の 個 人 や 事 業 体 に 具 体 的 に 適 用 される 個 別 の 事 情 に 対 応 するものではありません また 本 資 料 の 作 成 または 発 行 後 に 関 連 する 制 度 その 他 の 適 用 の 前 提 となる 状 況 について 変 動 を 生 じる 可 能 性 もあ ります 個 別 の 事 案 に 適 用 するためには 当 該 時 点 で 有 効 とされる 内 容 により 結 論 等 を 異 にする 可 能 性 があることをご 留 意 いただき 本 資 料 の 記 載 のみに 依 拠 して 意 思 決 定 行 動 をされることなく 適 用 に 関 する 具 体 的 事 案 をもとに 適 切 な 専 門 家 にご 相 談 ください 2014. For information, contact Deloitte Tohmatsu Financial Advisory Co., Ltd. Member of Deloitte Touche Tohmatsu Limited