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論文 現代シンガポールのリベラル派ムスリムによる 言論活動の意義と課題 ブディ クリティック の出版から Significance and Challenges of Speech Activities by Liberal Muslims in the Modern Singapore Publication of Budi Kritik 国際文化研究科兼任講師 市岡卓 ICHIOKA Takashi 序論 本論文は 現代の島嶼部東南アジアにおいて保守的なイスラームの 宗教志向が強まり 厳格で非寛容的なイスラームの宗教実践が拡大す る方向にある中での シンガポールのリベラル派ムスリムによる言論 活動の意義と課題を明らかにしようとするものである 具体的には シンガポールを含む島嶼部東南アジアにおける近年の イスラームの宗教志向の動向について整理した上で シンガポールの リベラル派ムスリムの言論活動について 特に彼らが共同で 2018 年 に出版した書籍 ブディ クリティック の内容やこれに対する社会 の反応を題材として分析を行う これらを通じて リベラル派ムスリ ムの取組みの意義と課題について検討を行う 研究方法としては 先行研究 報道内容 関係者への聴き取りなど から 島嶼部東南アジア及びシンガポールの宗教志向の動向について 事実関係やその背景の整理を行う 次に ブディ クリティック の内容について整理し リベラル派ムスリムによるイスラームの解釈 実践の内容について分析し イスラームの宗教志向の面からみた同書 の意義について論じる 最後に 同書の出版に関わったリベラル派ム スリムたち 一方で彼らを批判する保守派のムスリムたちの発言内容 195

や筆者による聴き取りの結果を踏まえ リベラル派ムスリムの取組み の課題について論じる 現代の世界では 欧米諸国において また インドのような発展途 上国においても 移民や宗教的少数者に対し排斥的なポピュリズム政 党 政治家が台頭していることにみられるように 少数者への非寛容 が強まる傾向にある 少数者への非寛容は 島嶼部東南アジアでは保 守的なイスラームの宗教志向を背景とした他宗教やイスラームの中の 少数者への非寛容という形で表れている こうした中で 改革主義的 で寛容なイスラームのあり方を追求するリベラル派ムスリムの取組み の意義と課題を分析することは 宗教を他者に対してより開かれたも のとするための宗教コミュニティ内部からの変革の可能性を探る上で 大きな意義を有すると考えられる 1 島嶼部東南アジアにおけるイスラームの保守化 非寛容化 1 イスラーム復興とムスリムの様々な宗教志向 本論文は シンガポールのムスリム社会について論じる シンガポー ルは 19 世紀の前半にイギリスの植民地となり 島嶼部東南アジア 中国 南アジアから大量の移民を受け入れたことで 現在に至る多民 族 多宗教社会を成立させた 島嶼部東南アジアに起源を持つ人々は 現在のシンガポールの公式のエスニック グループの区分では マレー 人 とされ 居住者人口の 13.3% を占め そのほとんど 99.2% が ムスリム イスラーム教徒 である これにインド人の一部 アラブ 1 人等を含めたムスリムの比率は 14.0% である シンガポールを含む島嶼部東南アジアでは 地域の文化と共存する 穏健な ここでは 宗教実践において厳格ではないという意味で言う 2 イスラームの信仰が伝統的に維持されてきた 例えば 現代では一 般化しているヒジャブ 女性が頭部を覆うために着けるスカーフ状の 布 はほとんど着用されてこなかった また 現代の厳格なムスリム 196

が イスラームに反する として否定する聖者崇拝なども広く行われ てきた しかし 1970 年代から 世界の また 隣接するマレーシア イ ンドネシアの影響を受けながら ムスリムの宗教意識が高まり 預言 者ムハンマドの時代の 本来あるべき純粋なイスラーム に帰ろうと する イスラーム復興 が進んだ その結果 女性のヒジャブの着用 が広まる 聖者崇拝が否定される 地域の文化の一部 例えばマレー の音楽 踊りなど が イスラームに反する として否定されるなど より厳格な実践が追及される方向での宗教実践の変化が起こった こ のようなイスラーム復興の動きについて 宗教学者 宗教教師を代表 3 50 年前にムスリムがある宗教的義務を無知 する団体プルガス は ゆえに実践していなかったとしても 現在それを行わない理由にはな らない と シンガポール社会の中にあるムスリムの宗教実践の厳格 4 化に否定的な見方に反論している マレーシア シンガポールでは 都市化 西洋化 多民族 多宗教的環境への不安などもイスラーム復 5 興の背景にあったとされる このような変化を経て 現在のシンガポールのムスリムの宗教をめ ぐる論議の方向性は ①伝統主義者 traditionalist ②復興主義者 revivalist ③リベラル派 liberal の三つに類型化されるようになっ 6 ている ①の伝統主義者は 東南アジアの伝統的なイスラームの信 仰を守ろうとする人々であり 政府関係機関であるシンガポール イ 7 スラーム評議会 に所属してイスラーム法の公式解釈やそれに基づく 宗教教育を担う人々の多くはこれに含まれる ②の復興主義者は イ スラーム復興の流れをくみ 本来あるべき純粋なイスラーム を追 求しようとする人々で 中東に留学してイスラームを学んだ宗教教師 などがこれに当たる場合が多い ③のリベラル派は 社会環境の変化 に柔軟に対応するイスラームの解釈 実践を追求する立場であり 大 学卒の研究者 市民活動家など高学歴層の人々がこれに当たる場合が 197

多い ③ ① ②の順に より厳格なイスラームの実践を追求する意味で の 保守 度が強まる ①の伝統主義者が中間に位置するいわば主流 派であり 政府に協力して 穏健なイスラーム の普及や過激主義防 止対策を推進する点では 穏健派 であるが 伝統的なイスラームの 解釈を堅持する点では ③のリベラル派からみれば保守派ということ になる 以上の類型化は 必ずしも厳密に線引きができるわけではなく 実 際には多くのムスリムはある部分では 伝統主義 的でもあり 別の 部分では リベラル 的でもある その意味で上記の類型化は あく までもムスリムの宗教志向を表す一つの指標としてとらえることが適 切であると考えられる また 本人からみればいずれも自分は ある べき正しいイスラーム を追求しているのであり 必ずしも自ら リ ベラル派 復興主義者 などと称しているわけではない 極めて厳 格なイスラームを追求する意味で 保守派 あるいは 復興主義者 とみられているムスリムが ネガティブなイメージがあると感じる 保 8 守派 という呼び名を嫌い 伝統主義者 と名乗る場合もある 本論文は このような前提の下で その思考 行動様式から リベ ラル派 としての志向を持つとみられる人々の活動が これに対抗す る 保守派 の人々 復興主義者 および 伝統主義者 の一部と 考えられる とどのような関係にあるのかを中心に分析していく 2 近年におけるイスラームの保守化 非寛容化 近年 マレーシア インドネシア両国では 保守的なイスラームの 9 実践が一層広まり これに伴って 社会において他宗教 イスラー 10 ムの中の少数者等に対する非寛容な傾向が強まっている マレーシアでは イスラーム復興以降 国家主導での社会のイスラー ム化が進められてきた 近年では宗教警察によって改革的な市民団体 198

に対する思想統制が行われたり 他宗教 シーア派などイスラームの 中の少数者 LGBT への抑圧が行われる形で 社会における厳格なイ スラームの影響が強まっている また 2016 年にはイスラーム法に よる刑罰の適用を拡大する法案が連邦議会に提出される 成立はしな かったが など 政治戦略から宗教の政治動員が行われる動きも強まっ た インドネシアでは 近年 宗教的少数者に対する不寛容が強まって おり イスラームの中の少数者であるシーア派やアフマディー教団に 対する抑圧がみられる 2017 年にキリスト教徒のジャカルタ州知事 候補であったバスキ Basuki Tjahaja Purnama 通称アホック が 選挙運動中の発言の言葉尻をとらえられ イスラームを冒涜したとさ 11 れて宗教冒涜罪で禁固刑に処せられたことは特に象徴的である シンガポールでは 近年リベラル派やシーア派に対する偏見の高ま りがみられ 暴力事件などには至らないものの ソーシャル メディ 12 アなどでの誹謗や中傷が活発化するなど マレーシア インドネシ アと同様に少数者への不寛容が広がっている 2016 年には ムスリ ムの間にクリスマスの挨拶を避ける 兵役を嫌う イスラーム国家の 建設を望むなど シンガポールの主流社会からの分離 の動きがみら 13 れるとシャンムガム K. Shanmugam 内務大臣が懸念を表明した 2001 年から 2002 年にかけて国内でイスラーム過激主義組織のメン バーによる爆弾テロ未遂事件が発覚して以来 政府は イスラームを 厳 格 に 解 釈 実 践 せ ず 非 寛 容 や 過 激 主 義 に 反 対 す る 穏 健 な moderate イ ス ラ ー ム 2002 年 当 時 の ゴ ー チ ョ ク ト ン Goh 14 Chok Tong 首相の発言 の普及をムスリム社会に対し求めてきた 政府が懸念するように暴力的過激主義に結びつくかどうかについては 議論があるが ムスリムの宗教意識の高まりが続いており より厳格 な方向にイスラームの解釈 実践が変化し続けていることは 現地の 15 人々の間で認識として共有されている 199

2 シンガポールのリベラル派ムスリムによる ブディ クリティッ ク の出版 1 リベラル派ムスリムによる ブディ クリティック の出版 本論文では ムスリムの宗教志向の観点から論じるため すでに述 べたような①伝統主義者 ②復興主義者 ③リベラル派という宗教志 向の面からみたムスリムの三類型の一つとしてのリベラル派について 論じる ただし リベラル と目される人々は必ずしも リベラル であると自認したり そのように名乗っていない 彼らの間にも様々 な宗教志向のあり方がある中で リベラル として一律に扱われるの を嫌がること リベラル という呼称が保守派からのレッテル ペジョ ラティブとして使われることなどが その理由にあると考えられる 彼らは 様々な社会問題に関し批判的に発言したり活動に取り組んで いこうとするスタンスを持つ人々であり 進歩的な progressive ム スリム と自らを位置づけているが 宗教志向の面からみれば概して リ ベラル である 本論文では 進歩的なムスリム と自認し 概ねリ ベラルな宗教志向を持つとみられる人々を リベラル派 として取り 扱う 本論文では この リベラル派 と 保守派 との対立の構図を分 析していくが 上述のように 保守派 についても その範囲を確定 することは難しい ここでは リベラル派 の宗教志向に強硬に反 発する人々を 保守派 として取り扱う リベラル派ムスリムたちは 多くが高学歴者であり 研究者 市民 活動家 イスラーム関係機関 ムイスなど の一部の職員などから構 成され それぞれの立場で活動している 彼らは 2001 年に非公式 のネットワーク リーディング グループ Reading Group を発 足させた 明確なメンバー制はとられていない ゆるいネットワーク 16 で あ る 彼 ら は ウ ェ ブ サ イ ト The Reading Group を プ ラ ッ ト フォームとし 参加者がマレー人 ムスリム に関わる政治 経済 200

教育など幅広い問題や 知識階層の取組みのあり方についてエッセイ を執筆し 同サイトにアップロードして発信するという形で活動を続 けている 2019 年 10 月までに 200 を超えるエッセイが寄稿されて いる 彼らは リベラル派 の集まりとみられ 後述するとおり 保 守派の攻撃の対象とされてきた この リーディング グループ に関わる人々が 2018 年 6 月に書 17 籍 ブディ クリティック Budi Kritik を出版した 同書は これ までに The Reading Group に寄稿されたエッセイから 22 点を選び 編集したものである 編者は Mohamed Imran Mohamed Taib イム ラン と Nurul Fadiah Johari ファディア の二人である イムランは ムイスの職員として宗教間交流事業を担当するとともに 市民活動家と して様々な対話プロジェクトに関わってきた男性である ファディアは シンガポール国立大学の修士課程を修了し 同大学に研究職として勤 務する女性である 二人はリーディング グループの中心メンバーであ る 書籍のタイトルは マレー語で 批判的な理性 を意味している イムランが執筆した 序章 Introduction によれば 同書は マレー 18 人 ムスリム の知識層が社会の改革 進歩に向けて意見を発信する 19 リーディング グループ のエッセ ことを目的としている 20 イは英語によるものと彼らの母語であるマレー語によるものが混在し ているが 同書はマレー語ではなく シンガポールの事実上の共通語 である英語で出版されている 彼らには マレー人 ムスリム 社会 だけでなく シンガポール社会全体に向けて発信する意図があったか らである これは マレー人社会のことをマレー人以外にも知っても らいたいという動機から また マレー人社会にとどまらない問題提 20 起も含まれているからであった 2 ブディ クリティック にみられるリベラル派ムスリムの宗教志向 201

以下では ブディ クリティック の内容を紹介するとともに 同書に現れているリベラル派ムスリムの宗教志向について整理 分析 していく 同書に寄稿された 22 点のエッセイのうち 19 点がシンガポール人 ムスリムによるものである シンガポール人ムスリム以外では LGBT の問題について普段から発信しているインドネシア人研究者の ムニム スィリー Mun im Sirry も寄稿している なお エッセイ ではないが 巻頭のメッセージの寄稿者には マレーシアで名の通っ 21 た市民活動家のマリーナ マハティール Marina Mahathir も名を 連ねている イムランその他のリーディング グループに関わるムス リムたちは たびたびマレーシア インドネシアの市民活動家と相互 に行き来し合い 意見交換を行ったり共同でセミナー等を開催したり 22 している こうしたことからも 彼らがマレーシア インドネシア の市民運動等とも連携を図っていることが分かる 同書はテーマごとの 5 章構成となっており 22 のエッセイは 以 下のようにテーマによって分類されている カッコ内がテーマごとの エッセイの数である また ① ⑤の番号は筆者が便宜上付したもの である ①文化 言語 文学 4 ②宗教 伝統 改革 5 ③アイデンティティ 人種 ジェンダー 5 ④宗教間 宗教内の多様性 4 ⑤政治社会学 思想 教育 4 ブディ クリティック は その序文にあるように社会改革全般 に関するテーマを取り扱っており また 編者のイムランも筆者に対 しそのことを強調している しかし ②や④のように宗教に直接関係 202

するテーマの章以外においても イスラームに関わる問題を取り上げ るエッセイは多い 例えば ①の 文化 言語 文学 の章に含まれるエッセイ 発展 のためには マレー語は なじみのないタブーや不愉快な文章や思想 23 にも適応する必要がある 31-38 は シンガポールが英語中心の社 会となる中でのマレー語の衰退を憂慮し マレー語が生き残るために は ニーチェの ツァラトゥストラはこう言った の 神は死んだ という件なども タブーとせず翻訳できるようになることが必要だと 24 述べている このように イスラームはムスリム社会の様々な問題に関連してい るため 同書は 宗教に直接関連しないテーマの章も含め イスラー ムに様々な側面から 多くの場合既存の解釈や実践に変更を求める形 で言及することになる ブディ クリティック の中で 特に寄稿 者たちのリベラル的な宗教志向が現れているア オの 5 点のエッセイ について 保守派との関係で問題になる点を指摘しながら 以下に例 示する 25 ③ア ア 発展の基準にはジェンダー平等を含めるべき 139-148 イデンティティ 人種 ジェンダー 寄稿者は 編者の一人のファディアである 彼女は マレー人社会 において女性だけが労働と家庭への貢献の両方を求められ 男性との 関係で不平等な状況に置かれていると考える そして このようなジェ ンダー不平等の是正が必要であり そのためには 父権主義的なイス ラームの解釈に基づいて男性 女性に異なる役割が期待されることに ついても見直しが必要だと主張する イスラームにおいては 結婚 離婚に関わる手続 相続その他様々 な面で男女の間に差が設けられている これらは 聖典クルアーンな どにおいて規定されており 正統なイスラームの教義とされている 203

寄稿者はそうしたジェンダー平等に反する規範は見直すべきだと主張 しており 寄稿者が改革主義的な宗教志向を持っていることは明らか である このような主張は イスラームにおいては男性と女性の役割 には区別があり 西洋的なジェンダー平等の概念はイスラームとは相 26 容れないものであるとする保守派からは容認できないものである 27 ② イ イスラーム法改革のために すべての声を聴くべき 85-95 宗教 伝統 改革 寄稿者は 法律家であり ムスリム女性の権利保護の問題に取り組 む市民活動家である 彼女は 婚姻や相続に関わる男女間の不平等の 解消のために イスラーム法の改革が必要であり イスラーム法学 フィクフ が神の言葉を人間が解釈した結果である以上 改革は可 能であると主張する また イスラーム法の解釈は 解釈の権限を独 占してきた宗教指導者だけでなく より幅広い関係者が参画して行う べきであるとも主張している 婚姻や相続に関わるイスラーム法の解釈の問題については 伝統主 義的な志向を持つ宗教指導者によるシンガポールの公式解釈にも見直 しを迫るものであり 特別に保守的な志向が強いムスリムだけではな く ムスリムの多数が賛同できないものであると考えられる また 婚姻や相続の問題に限らず 伝統的なイスラームの解釈は確立された 完全なものであり 変更は不可能であるとするイスラームの主流的な 考え方からも容認できないものである また 解釈への参画の問題に ついては イスラーム法学を専門に学んだ宗教学者以外の者にはイス ラーム法の解釈は認められないとするイスラームの伝統的な考え方か らは容認できないものである 寄稿者の主張は イスラームの既存の規範の内容に疑問を呈する点 ではアのエッセイと同じであるが さらに規範の不可変性や宗教指導 者であるイスラーム学者が規範の解釈者として正統性を独占すること 204

にも異論を唱えており ドラスティックと言っていいほどに改革主義 的であると言える ウ イスラームの中の豊かで多様な伝統を主張することが 過激主 28 ②宗教 伝統 改革 義と戦う鍵である 75-83 寄稿者は 編者の一人であるイムランである 彼は イスラームは思 想体系として完全であり唯一無比の特別なものである という考え方に 基づく分離的 排他的なムスリムのアイデンティティのあり方を否定する 彼は イスラームの解釈は 多様なものであり 社会の文脈に合ったも のである と述べ 東南アジアでは穏健で寛容なイスラームが保たれて きたと指摘する その上で 多様性の容認 平和的共生 地域の 社 会的 文脈と文化との融和的同化 に基づくイスラームの教義を支持する このような主張は イスラームの正しい教義は一つしかなく 時代 や場所によって変わるものではないと考える保守派からは容認できな いものである イスラーム復興以降広まってきた 東南アジアの文化 と共存するイスラームの否定の動きは このような正しいイスラーム は一つしかないという考え方に基づくものである そうした復興主義 者の考え方を寄稿者は否定するのである また 多様性や平和的共生 を訴える寄稿者の議論は ムスリムに他者への寛容性を求める主張の 基盤となるものでもある エ 主流メディアは単一のものとしてのムスリム社会の描写を打破 29 ④宗教間 宗教内の多様性 すべき 187-195 寄稿者は元ジャーナリストの大学院生である 彼女は シンガポー ルのイスラームの公式解釈においてシーア派もムスリムであることが 確認されているにもかかわらず 外国の影響を受け ソーシャル メ ディアなどでシーア派に対するヘイトスピーチが広がっている状況を 懸念している その上で 主流メディアもシーア派に対する偏ったイ 205

メージを伝えないよう また ムスリム社会を 単一の宗派しかない のではなく 多様なものとして伝えるよう求めている このような主張は シーア派を異端とみなし スティグマ化 脅威 視する保守派の主張に反対するものである また ウの寄稿者が訴え る他者への寛容に関わる個別の具体的なテーマを論じるものでもある オ 宗教と国家が一体というイスラームの概念は後世の構築であり 30 ②宗教 伝統 初期のイスラームでは失敗に終わった 107-115 改革 寄稿者は インドネシア人の研究者ムニム 既出 である イスラー ムにおいては 初期のイスラームにおける宗教と国家の一体性 が主 流的な理解となっているが 彼は 実際には正統カリフの時代も含め 宗教と国家の一体性は実現されておらず 宗教と国家の一体性 は 現代における構築でしかないと主張する 宗教と国家との一体性 の観念は イスラーム法が実施される イ スラーム国家 の樹立をムスリムの義務とするイスラームの解釈を支 えるものである イスラーム国家 の樹立について 宗教教師 宗 教学者を代表する団体プルガスは 正統なイスラームの教義であると 明言する プルガスは 現実にシンガポールにおいてそれを実現する ことは不可能であるが ムスリムがそのような信仰を持つことは否定 31 できないと説明しており シンガポールの宗教指導者の多数がこれ を支持していると考えられる 排他的 分離的な志向 非寛容的な志向を支えることにもなりうるこ のような観念を 寄稿者は否定しようとしているのである 彼の主張は 預言者ムハンマドおよびその後の四代の正統カリフの時代が 神が伝 えたイスラームの原理に基づき政治が運営されていた理想の時代であ り ムスリムはこの時代に戻ることを追求すべきである と考える保守 的な復興主義者の考え方からは 到底容認できないものである 206

以上のように リベラル派のムスリムたちは 保守派のムスリムか らみれば容認できないドラスティックな改革主義的な宗教志向を持 ち それを積極的に発信している 彼らは 現代社会の要請や国際的な人権感覚にそぐわない非合理な ものと彼らが考えるイスラームの規範に疑問を投げかけ さらには そうした規範は変更すべきであるし 変更することが可能であると主 張する また 規範をつかさどる権限を宗教指導者が独占することに も反対するのである さらに彼らは イスラームが他の宗教に優越する特別な存在である ことを信じたり イスラームの原理に基づく国家の樹立を望んだりす ることを否定し 他宗教や少数者との共生を訴える寛容な志向を持っ ている リベラル派のムスリムたちの考え方は 復興主義的志向を持つ特に 保守的なムスリムからは 西洋的な価値観に染まったものであり 反 イスラーム的 であり イスラームから逸脱している deviate も 32 のとみなされる 強硬な保守派として広く知られる 本人は 伝統主義者 と自認し 33 単に世界の ている 宗教教師 A は リベラル派の考え方について 流れに従っているだけ 時代の変化だと言っているだけ の ゆが められたイスラーム で 宗教的な基盤がなく 知識に基づいた真 34 摯なものではない と筆者に対し述べている 強硬な保守派として知 35 られる別の宗教教師 B もまた 筆者からの聴き取りにおいてリベラル 36 派に対して イスラームを正しく理解していない と断じていた B は 例えばイスラーム法に基づく相続 現在のシンガポールにおいてムス リムに適用される では男女の相続分が 2 対 1 となることをリベラル 派は不公正だと言うが イスラームにおいて男女にそれぞれ異なる役 割が与えられていることから この差は公正なものだと主張する B は リベラル派は 全体として整合性が確保された包括的な体系であるイ 207

スラームの一部だけをみて間違った考えを述べている と主張するの である A も B も イスラームの宗教指導者を養成する学校であるマドラ サ madrasah を卒業し 中東のイスラーム大学に留学した宗教学 者である 彼らは イスラームを正しく理解するには アラビア語と その文法や文脈を理解した上で聖典クルアーンの解釈ができなければ ならないと主張する つまり 自分たちのようにイスラームを専門に 学んだ宗教学者だけが正しくイスラームを解釈できるのであり その ような 知識 のないリベラル派にはイスラームを解釈する資格はな いと考えるのである このような考え方は上記イの寄稿にあるような イスラームの解釈へのより幅広い参画という発想とは真っ向から対立 するものである このように ブディ クリティック に現れているリベラル派の イスラームの解釈 実践の方向性は 保守派のそれとは大きく異なる ものである 3 ブディ クリティック に対する社会の反応 1 社会からの好意的評価 編者のイムランからの聴き取りによれば ブディ クリティック の刊行に当たっては 3 千シンガポール ドル 約 24 万円 の資金 負担が必要だったが クラウド ファンディングで寄付を募ったとこ ろ 1 週間で必要な資金が集まったという このことから彼は 社会 からの強い賛同が得られたと感じている 発行部数は 500 部だったが 3 か月で完売した これは 人口が約 570 万人 居住者に限れば約 400 万人 の小国シンガポールでは よく売れた部類に入るとイムラ ンは言う 2019 年 11 月には第二版が刊行されることになった マスメディアでの報道に関しては マレー語の日刊紙ブリタ ハリ 37 アン Berita Harian のほか マレー語のテレビチャンネルであるス 208

リア Suria でも取り上げられた しかし シンガポール人全体を 購読者とする英語紙 Straits Times での報道はなかった イムランは ブディ クリティック が取り上げたのはマレー人 ムスリム の 問題だが シンガポール社会にも共通する問題でもあり 英語系のメ ディアへの発信を強化する必要があると考えている 2018 年 6 月の出版記念イベントでは 来賓として 与党である人民 行動党 People s Action Party に所属し 複数の大臣職を歴任した マレー人ムスリムのヤコブ イブラヒム Yaacob Ibrahim 議員が出 席し ムスリム社会が抱える困難な課題について議論を深める契機 となるものとして歓迎する 宗教的保守主義が活発化 する中で 健 38 全な対話が求められている などと賛辞を述べた その他社会からの反応としては シンガポールで最も有力な進学校 であり官僚や政治家を多数輩出してきたラッフルズ インスティ チューション Raffles Institution が 編者を招き ブディ クリティッ ク を題材としたディスカッションを開催した こうしたことから 筆者が聴き取りを行った編者や寄稿者たちは 高学歴層以外のマレー人 ムスリム 大衆への発信 マレー人 ムス リム 社会を越えた発信には依然課題はあるものの 出版は社会から の賛同 好意的評価を集め 言論の場の拡大 問題への関心喚起に一 定の効果はあったと考えている 2 ムスリム社会の一部からのバックラッシュ 一方で ムスリム社会の一部からは 強い反発があった 編者及び寄稿者たち 計 4 名 からの聴き取りによれば 複数の寄 稿者に対し メールまたはソーシャル メディアで 出版を強く批判 するコメントが寄せられた 筆者が聴き取りを行った 4 名のうち 3 名 は自身がその対象となった 特に 女性の寄稿者がターゲットにされ る傾向があった 本人への個人的なハラスメントのほか 寄稿者が所 209

属する団体等や政治家 ムイスの幹部などに対しても寄稿者個人を誹 謗中傷するメール等が送られた 反発は バックラッシュ とも言う べき激しいものであり 彼らもそのように表現している 批判は 保 守的なムスリムたちからのものとみられる 前述のように ブディ クリティック は 保守派のムスリムたちの反発を買う要素を多く含 む しかし 批判者たちの主張は リベラルな思想を広めようとして いる という程度の内容にとどまり 具体的な論点は明らかにされず また 個人攻撃の域を出ないものばかりであった 編者や寄稿者であるリベラル派たちの対応は 批判する人々は回答 を求めず一方的に誹謗中傷するだけであったので無視した 個人的な 問題に踏み込むなど理不尽な攻撃であったのでソーシャル メディア のシステム上でブロックした といったものであった ブディ ク リティック の出版の主体となった リーディング グループ は それまでも保守派から イスラームから逸脱している とされ 偏見 39 スティグマ化の対象となってきた 特に 編者であるイムランは 2009 年には リベラルなイスラームを広めようとしている として ムスリム問題担当大臣あての公開書簡で批判されたことまであった 従って リベラル派たちは これまでの動きの延長線上のことに過ぎ ないとして冷静に受け止めていた 3 リベラル派と保守派との対立 リベラル派のムスリムたちが新たな言論空間をつくり出すことを目 指して ブディ クリティック を出版した結果 ムスリム社会の中 では 賛同する動きもあったものの 一部の保守的なムスリムからの 激しい反発もあった それは これまでと同様のリベラル派に対する スティグマに基づくネット上での一方的な攻撃であり 論点を明確に した対話に結びつくことは全くなかった そもそもリベラル派と強硬な保守派とでは宗教志向の差があまりに 210

大きく 対話が行われたとしても簡単に合意が成立するとは想定でき ない しかし それ以前の問題として これまでも両者の間に対話は なかった 保守派は自身の意見発信の場であるソーシャル メディア 40 でリベラル派を悪罵し これに賛同者が共感するコメントを投稿す るだけであった リベラル派の一部も同様にソーシャル メディアで 41 保守派を手厳しく批判してきている また 一部のリベラル派は保 守派に対し強い嫌悪感を持っている 例えば 編者のファディアは 筆者が聴き取りのために前述の宗教教師 A と面会したことを知って 42 なぜあんな人と会ったのか と筆者を責めたことがある 結果として ネット上での敵対的な発信が互いに行われるだけで 両者が顔を合わせて対話をすることはこれまでになく ブディ ク リティック の出版後もそれは同様である 同書の出版は 宗教志向 の異なるムスリム間の対話にはつながっていないのである 4 リベラル派ムスリムの取組みの意義と課題 1 意義 リベラル派ムスリムのこれまでの言論活動は ブディ クリティッ ク の出版という形で実を結び シンガポール社会にその主張を問う ことになった これは 保守的な宗教志向を強めるシンガポールのム スリム社会において これまでムスリム社会においては主流的ではな かった意見の表明を新たに行うことで 言論空間を拡大し 多様なも のにする意義を有していたと考えることができる 彼らの意見表明の内容は 現在の主流的なイスラームの解釈やそれ を決定する宗教上の権威のあり方に異議を唱えると同時に 多様性や 共生といった価値を訴えるものであり 改革主義的で寛容なイスラー ムを強く志向するものである これは 現代社会の要請に適合するイ スラームの実践の一つの方向性を示しており シンガポールのみにと どまらない多文化社会に生きるムスリムのあり方に関する普遍的な問 211

21 題提起とみなすことができる 彼らの取組みは ブディ クリティック の売れ行きやエリート校の学習活動の中で取り上げられたことにみられるように シンガポール社会の中で好意的に受け止められた また 出版記念行事に有力な与党議員が参加し 出版の意義について高く評価するコメントを述べたことにみられるように 政府も彼らの取組みを支持していることが分かる このように リベラル派ムスリムの活動は ムスリム社会にとどまらないシンガポール社会全体への普及 発信という点では課題を残すものの シンガポール社会 また 政府からも一定の好意的な評価を獲得していると言える (2) 課題一方で リベラル派ムスリムたちは ブディ クリティック の出版により ムスリムの保守派からのバックラッシュにさらされた リベラル派はもともと保守派からスティグマ化され 攻撃される存在であり 出版に対する反応は 従来の保守派の姿勢の延長線上にあるものであった もともとリベラル派と保守派では 宗教志向は大きく異なり 対話による合意が成立することは難しい さらに 保守派の批判は直接対面せず言いっぱなしでのネット上での中傷にとどまり また 具体的に論点を定めての実質的な議論にはつながっていない リベラル派の間でも 保守派と距離を置きたいという気持ちが強い面もあり 保守派と積極的に議論をする機運は生まれそうにない このような状況を踏まえると ブディ クリティック の出版をもってしても イスラームのあり方に対し 異なる立場からの意見が戦わされ 相互理解が深められ 新しい価値が創造されるような新たな公共圏の創出は到底望めない状況にあるとみることができる また リベラル派を攻撃するような強硬な保守派は別としても シンガポールのムスリム大衆の間では 伝統主義 的な志向も含め 212

保守的な志向が強い モスクや私立の宗教学校のようにムスリム大衆 の宗教志向に直接影響を及ぼすことができるルートを持たない点で は リベラル派の影響力は限られたものである また シンガポール 社会への浸透をねらい英語で発信することも ムスリム大衆への訴求 43 という点では不利に働く 以上から ただでさえドラスティックな 内容を含むリベラル派の主張がムスリム社会の中で浸透し 広く支持 を獲得することは現状では難しいと考えられる 政府のリベラル派への支持についてみれば 一定の留保がつくこと は認めざるを得ない 政府は 過激主義への懸念から ムスリム社会に対し 穏健なイスラー ム の普及を求めており その点ではリベラル派ムスリムの取組みを歓 迎していると考えられる この点は ブディ クリティック の出版 記念イベントでヤコブ議員が述べた賛辞からもみてとることができる ムスリムの他宗教との交流 融和を促進しようとするリベラル派の方向 性も 社会の安定や過激主義防止対策の観点から民族 宗教間融和を 推進する政府がリベラル派と問題意識を共有できる部分である 一方で ジェンダー平等の観点からのイスラーム法改革の問題に典 型的にみられるような イスラーム法の解釈 実施に直接触れる領域 については 政府はリベラル派 保守派のいずれの側にもつかず 中 立を維持している 従ってリベラル派は 例えば 現在のシンガポー ルのイスラーム法の公式解釈に基づく相続制度の変更など 政府の支 援を受けての制度変更については 道筋をつけることは難しい状況に ある 結論 本論文では シンガポールのリベラル派ムスリムの言論活動につい て 彼らの主張が凝縮された書籍 ブディ クリティック を中心と して分析を行った 213

ブディ クリティック における改革主義的で寛容なイスラーム の提示は 単にシンガポールあるいは東南アジアにおけるイスラーム の実践のあり方にとどまらず イスラームの教義の解釈 実践のあり 方に関わる普遍的な提言を含んでいる その内容は 意識や行動の面 で宗教的規範に強く拘束されざるを得ないという 非ムスリム側から みたムスリムの一般的なイメージを覆すドラスティックなものを含ん でいる 決して社会のアウトロー的な人々ではなく 高学歴で高い社 会的地位を獲得したムスリムたちがこうした発信を行っていることも また重要であると考えられる もちろん こうしたリベラル派たちの提言は ムスリムが少数者で ある多民族 多宗教国家であって マレーシア インドネシアのよう にイスラームが社会の主流的な規範を構成しておらず また 政府が 穏健なイスラーム を支持しており ムスリムに対し主流社会への 統合の圧力が働くシンガポールであるからこそ可能なのである ムス リムが多数者であり 保守的なイスラームの志向が力を増し リベラ ル派に対しても抑圧が進むマレーシア インドネシアであれば こう した言論活動はより大きな困難に直面していたであろうと想定され る また 社会が安定しており 治安が非常に良好なシンガポールで 44 あればこそ可能であったものであるとも言える ブディ クリティック はシンガポール社会から好意をもって受 け止められ 政府も支持する姿勢を見せたが ムスリムの保守派から は強い反発を受け その状況はまさにバックラッシュと呼ぶにふさわ しいものであった シンガポールのムスリム社会が全体に保守的な志 向を強めている中で リベラル派たちの言論活動のムスリム社会全体 への影響は限られたものとならざるを得ないであろう リベラル派たちの言論活動に以上のような限界があることは事実で ある しかし 島嶼部東南アジアのムスリム社会が保守的な志向を強 め 他者への寛容性を失っていく方向にある中で シンガポールのリ 214

21 ベラル派たちの言論活動は 多様性の尊重や共生を志向する寛容なイスラームのあり方を提起している それは 島嶼部東南アジアのイスラームをめぐる言論空間に空いた風穴であり マレーシア インドネシアのリベラル派と連携してカウンター ムーブメントの発信源となる可能性を秘めている点で 大きな意義を有するものと考えられる 以上のように シンガポールのリベラル派ムスリムたちの活動は 宗教に関わる非寛容が広まる中での 宗教コミュニティ内部からの変革の可能性とその課題を示唆するものであると筆者は考える 1 Department of Statistics, Singapore (2016) General Household Survey 2015. 2 中村光男 (1999) イスラム 新訂増補 東南アジアを知る事典 桃木至朗 ほか編集 石井米雄ほか監修 平凡社 3 英語名は Singapore Islamic Scholars and Religious Teachers Association で あるが 一般にはマレー語名 Persatuan Ulama dan Guru-Guru Agama Islam Singapura のアクロニムで PERGAS( プルガス ) と呼ばれる 4 PERGAS (2004) Moderation in Islam in the Context of Muslim Community in Singapore: 158. 5 Noor Aisha Abdl Rahman (2018) Shariah Revivalism in Singapore, Islam in Southeast Asia: Negotiating Modernity, Norshahrli Saat ed., Singapore: ISEAS Publishing. 6 Azhar Ibrahim (2014) Contemporary Islamic Discourse in the Malay-Indonesian World: Critical Perspectives, Petaling Jaya: Strategic Information and Research Development Centre: 98-102. 7 英語名は Islamic Religious Council of Singapore であるが 一般にはマレー 語名 Majlis Ugama Islam Singapura のアクロニムで MUIS( ムイス ) と呼ば れる 8 後述の宗教教師 Aへの聴き取り (2016 年 10 月 11 日 ) から 9 これは アラブの厳格なイスラームの実践が本来あるべき望ましいものとさ れたり 服装や言語の面でのアラブの文化がイスラーム的なものとみなされ て取り入れられる面があることから アラブ化 とも呼ばれる 10 Norshahril Saat (2018) Introduction, Islam in Southeast Asia: Negotiating Modernity, Norshahril Saat ed., Singapore: ISEAS Publishing. 215

21 11 見市建 インドネシアのイスラームと政治 宗教的寛容 のゆくえ SYNODOS 2018 年 7 月 27 日 (https://synodos.jp/international/21865: 2019 年 10 月 19 日最終アクセス ) 12 Nurul Fadiah Johari (2016) Fearing the Enemy Within: A Study of Intra- Muslim Prejudice Among Singaporean Muslims, MA thesis, Department of Malay Studies, National University of Singapore.( 後述する ブディ クリティック の編者の一人であるファディアがシンガポール国立大学に提出した修士論文である ) 13 Shanmugam, K. (2016) The 2nd SRP Distinguished Lecture and Symposium 2016, Opening Address by Mr K. Shanmugam, Minister for Home Affairs and Minister for Law, January 19, 2016 14 Goh, Chok Tong (2002) National Day Rally Speech (English). 15 ただし キリスト教徒も教会に熱心に通うようになるなど イスラーム以外の宗教においても宗教意識の高まりは起こっている イスラームは 暴力的過激主義への懸念から 特別に問題視される状況がある 16 http://www.thereadinggroup.sg/ 17 Mohamed Imran Mohamed Taib & Nurul Fadiah Johari eds.(2018) Budi Kritik, Singapore: The Literacy Centre and The Reading Group. 18 編者や寄稿者は主に マレー人 を名乗っているが マレー人 と ムスリム はほぼその範囲が重なっている また 彼らはムスリムであることを自認し イスラームに関わる問題を多く取り上げている このことから 同書は ムスリム によって書かれたものでもあると言える 19 以下 ブディ クリティック から引用する場合は ページ数のみを括弧書きで示す 20 イムランからの聴き取りによる (2019 年 8 月 27 日 ) 21 マハティール首相 (Mahathir Bin Mohamad) の娘である 22 筆者は 2016 年にシンガポールでそうしたセミナーの一つにオブザーバーとして参加したことがある 23 To thrive Malay Language needs to accommodate taboo, distasteful texts and thoughts from strange places (Nazry Bahrawi) 24 現状では宗教的保守派の反発を買いかねないと 筆者は言外に述べているのである 25 Standard of progress must include gender equality (Nurul Fadiah Johari) 26 イスラームにおける男女の役割の違いに関し筆者が聴き取りを行った保守的 216

21 なムスリムの考え方については 後述のとおり 27 Islamic Law Reform requests all voices to be heard (Halijah Mohamad) 28 Reclaiming the rich and diverse traditions in Islam is key to combating extremism (Mohamed Imran Mohamed Taib) 29 Mainstream media need to break out of monolithic portrayal of the Muslim community (Mysara Aljaru) 30 The concept of Islam as religion and state was a late construction; it ended in failure in early Islam (Dr Mun im Sirry) 31 PERGAS (2004) 98, 115-118, 126-127. 32 Azhar (2014) 202, 211-212, 221-222. 33 彼は 2014 年に LGBT( 性的少数者 ) の権利擁護運動に反対する ウェア ホワイト (Wear White) キャンペーンをソーシャル メディアを通じ主導したことで有名になった 34 2016 年 8 月 23 日聴き取り 35 彼は ブディ クリティック の編者の一人であるファディアの修士論文においても 宗教教師 Aと並び 強硬な保守派として言及されている (Nurul Fadiah Johari (2016) Fearing the Enemy Within: A Study of Intra-Muslim Prejudice Among Singaporean Muslims, MA thesis, Department of Malay Studies, National University of Singapore: pp. 83-86.) 36 2019 年 8 月 25 日聴き取り 37 Suara generasi muda tentang masyarakat Melayu kontemporari, 18 June, 2018, Berita Harian. 38 前注の 2018 年 6 月 18 日付の記事参照 39 編者の一人ファディアが 前述の修士論文でこのことを論じている (Nurul Fadiah Johari, 2016: 75-90) 40 例えば 前述の宗教教師 Bは フェイスブックの個人ページへの投稿 (2016 年 5 月 16 日付 ) で リベラルたちは神の命令に従いたがらない悪魔のようなものだ などと書いている 41 例えば 編者の一人イムランのフェイスブックの個人ページがそれである 42 2018 年 8 月 27 日のやりとりから 43 Azhar (2014) 107. 44 編者のイムランは 筆者に対し 非難にさらされるのはつらい と言いながらも 南アジアのある国を引き合いに出し もし〇〇国だったら 自分は殺されているだろう とまじめな表情で語った (2019 年 8 月 27 日聴き取り ) 217