JapaneseSociety Society of Psychosomatic Medicine Jpn J Psychosom Med 44 I 407-413,2004 Sgmposium/Psychosomatic Medicine of Aging Male Evaluation and Coping in Male Climacterium Koichi Nakano, MD" Abstract Male c]imacterium iscomplicated by various factors.itneeds multi-dimensional evaluation including bio-psycho-social factors.ithas been recently pointed out that the decreasein free-testosterone secretion isfound in male climacterium. In this connection, important psychological factors affecting the male middle age includemood disorders,mid-life crisis latentalcoholic dependence and dailysleep disturbance.main social factorscan be changes in the quality of work procedures and increasedquantities of work contents, changes in the husband-and-wife relationships, children's growth and independence,and declineof parental influence(generativity crisis). Ethically a change in the philosophical value isimportant. Clinical evaluation ef themiddle age isuseful from the stand point of lifecycle. Being workaholic isone of the common coping styles which are selected by the middle aged persons. But workaholic coping isalso a vulnerable defensewhich failseasily, and behaviormodification becomes necessary fer the workaholics. Itsheuld be suggested that workaholism isclosely connected with themoney-centered community value which had given support to the economic growth of JapanṬhere were many cases of office refusals in the men of 40 's as well as those of 2e 's according to the investigation conducted by the psychosomatic clinic of Toho University.The lifestyle-related diseasesfound in the middle age such as obesity, alcoholic liver disease,hypercholesterolemia were often closely related to psychological and sociological problems. Improvements in the bad habits were difficult to achieve in the case of alcehol drinking and over eating by the clinical interventionforthe company employees at the mental healthoffice. In general, the lifestyle-related diseasesoi the middle age could not be modified easily. Therefore counterrneasures need to be taken to enhance restructuring of the psycho-social values and the social support systems. - Kby tvonis :male climacterium, psychosomatic disease, middle age, treatment, evaluation ' Centerof ClinicalTraining and Education,Toho Universityof Scheolof Medicine (Mtiiliizg Address : Koichi Nakano, 5-21-16Ornorinishi, Ota-ku, 143-8540 Tokyo, Japan) bfiee 2004 lli6 E lj44 tsag 6e 407 NII-Electronic NII-Electionic Library Service
Japanese J Society of Psychosomatic Medicine 唇毒冒一 = lv 薗蠶 s 慧靉襲鋤融ウム / 男蟆鰯身騨く tt tfittt 1, i,. i 萼 囁广弾 t ロほい / tts を 4 キ. tl う tt 霾 ; i: 葦 1 蕊霪 恋 ll 噤男牲更年期の評価と対処に関して : i 噴 tt 儀 t N 継 澎 tt, 蟹鰭鴬 :; 1 窓 1 / i, : ン. 三 1 中野 弘一 一. 抄録 一. 一. 男性壷年期における問題は, 生物 心理 社会にわたる多次元評価理解が勘要である. 社会 的にはライフサイクル的評価の視点が有力である. 仕事中毒は中年期に陥りやすい対処撮式で あるが, 破綻しやすいスタイルでもあり修正が必要であることが多い. 仕事中毒の成立の背景 には戦後の臼本の経済成長を支えた利益共同体的価値観が深く関わっていると考えられる. 仕 事中番の破綻の一つの形が中年発症の出社困難である. 中年期に発生する生活習慣病である肥 満, アルコール性肝障害, 高脂 [m 症などの中で心理社会的問題と密接に関連しているケースは 容易には修正できない. 中年期危機には心理社会的価値観の再構築と, ソーシャルサポートの構築が有力な対策となる. K 曙脚脇 : 男性更年期, 心身症, 中年期, 治療, 診断 はじめに 中年期は, 青年期と老年期の中間に位置し, 一般的には個人が社会生活の中でもっとも生 産的かつ かし, 期でもあり, 因となり, 創造的な活動を行う時期である. し 中年期は心理的な葛藤をもちやすい時 職場や家庭での心理的刺激が誘 心身に障害を呈し心療内科を受診 するに至るものも少なくない. 本稿では, 学病院心療内科での受療患者の治療過程を通 して, 男性更年期の著者なりの評価と対処の 方向性について述べる. 男性更年期は, 更年期の多次元評価 大 多様な因子の重ね合わせに よって問題が複雑になっていると考えられる ため Engel の bio psycho social model に 当てはめてとらえてみる. 生物学的にはテストステロン分泌の減少が 近年指摘されており, 心理的には気分障害の 発症, 中年期危機, アルコール依存の潜在化, そして睡眠障害の日常化が重要であり, 的には仕事の質の変化と量の増加, 社会 妻との関 係の変化, 子どもの自立, 親世代の力の衰え などが要因としてあげられる. さらに倫理的 に重要なものとして, 価値観の変化があげら れている. ここでは心理および社会的側面に ついて取り上げる. 巨 ] 中年期の心理的発達理解 佐藤ら 2 ) によれば, イトの時代以来, 的葛藤を中心に取り扱い, 発達心理の理解はフロ 幼児期 青年期までの心理 中年期は重視され ていなかった. エリクソンの自我の発達に関一する仮説では, 青年期での自我同性対拡散 の精神的危機を頂点にそれぞれの段階ごとに 危機的状況があり, 段階に応じた課題を次々 に克服し, それ以降大きな発達は見出せずに 東邦大学医学部卒後臨床研修 / 生涯教育センター一 ( 連絡先 : 中野弘, @ 143 8540 東京都大田区大森西 5. 21 16) 408 心身医 2004 年 6 月 第 44 巻第 6 号
4 50 歳の中年期で 一応の完成をみると考 えている. すなわち, 青年期に比し中年期で は世代的には大きな葛藤は見出すことがで ないとする考え方といえる. 一方, JaquesE は, 310 き 名の芸術家の創造 性についての調査で, 30 歳代半ばに大きな転 換期があると結論した. そして葛藤は個々人 のライフサイクルに一般的に見出しうること を指摘し mid 1ifecrisis ( 中年期危機 ) とよ び, 中年期の心理的葛藤を肯定した. さらに レビンソン 3 ) は中年男性のライフサイクル 注目し, 中年期は職種を超えて心理的に重要 な転換期であることを指摘した. その中で特 に 40 45 歳を自己の価値観や配偶者との関 係の再構築が行われる時期とし, 味での更年期に相当すると考えた. このように中年期の心理的研究では, に 心理的な意 男性 における更年期という考え方には肯定的で, 年齢的には 40 歳過ぎと想定される. 中年期の心理発達の理論によれば, 40 歳代 前半は心理的な発達課題が処理されなければ ならない時期にあたることを肯定している点 的には, 中年期である本人の青年期に未解決 で潜在してい た問題が再燃するとい う厄介な メカニ ズムもある. さらに, 中年期ではライ フサイクル的内的問題につ い て意識的に関わ らずに, 配偶者など他のメンバ ーに押しつ け る形で先送りし潜在化してしまうと, 自分が 老年期に入り自分の子ども世代が中年期 ( 更 年期 ) に入っ たとき, 必ず形を変えて再燃し てくる. つ まり, ライフサイクル的問題は避 けられない問題である. また創造性が高まることに よって も, 中年 期では生産や創造性に付随した心理的問題が 増加するなど, 中年期は心理的悩みや危機的 状況が起こりやすい時期であることがわかっ てきた. このように中年期に必然的に起こるであろ う親世代の生命に関係する重大な健康上の諸 問題や, 子ども世代の思春期葛藤などライフ サイクル的難題に対して, 未成熟な解決様式 しかもたない, 精神的には未成熟な中年期男 性では, 各世代が家族に持ち込む心理的悩み をすべて解決することはできない. で共通している. したがって, 心理的にもラ イフサイクル的にも重要な時期といえる. 圄ライフサイクルとしての中年中年期における心理 社会的側面については, ライフサイクルという側面のとらえ方が問題を浮き彫りにしやすい. ライフサイクル的には, 更年期は青年期と老年期 ( 熟年期 ) の中間にあたり, 人生の中でもっとも生産的 かつ 創造的な時期ではある. このような時期 には心理的な問題は起きにくいはずであった. しかし, ライフサイクル的には自分が中年期 ( 更年期 ) に入ったとき, 子ども世代は青年期に入り種々の問題を家庭に持ち込み, 親世代は老年期に入り病気の発病に伴う介護に関わることや, 逝去に伴い残された者の生活に関する問題などの処理に直面する. 心理 團仕事中番後に生活習慣病として発現した中年期危機ここでライフサイクル的な問題が累積し, 生活習慣病に至った症例を示し, 心理社会的問題が身体へと連鎖していく過程を示す. 仕事中心の 52 歳の会社役員は妻の病死の 後, それまでの子どもとの関係が仕事中心であったため共に生活すること一にはならず, 人暮らしとなった. 家庭のことは配偶者に任せきりであったので食事の管理が自分でできず, 毎日行きつけの飲み屋で夕食を済ませていた. 不規則な生活が 4 年間続いた後, 便秘下痢の繰り返しが続くため入院精査を行ったところ, 糖尿病境界域, 高血圧症, 脂肪肝, 高脂血症そして高尿酸血症があることがわかった. 入院での食事管理によって著明な改 心身医 2004 年 6 月 第 44 巻第 6 号 409
善を示した. しかし, 自分の問題を含め家族内に生じた葛藤処理をすべて家族の他のメンバーに任せきりとし, また処理できない時は先送りしてきた患者は, 生活の自己管理を続 けることができない. すぐに血糖, γ 一 GTP, コレステロール, 中性脂肪そして尿酸値は再 病様状態への治療介入を試みた. 事務系事業所に勤務している会社員 411 名の定期健康診断と, 人聞ドックにおいて生活習慣病とされる肥満, やせ, 高血圧, 高脂血症そして肝機能障害に異常を認めた者 110 名を対象に行った. 上昇していった 4 ). このように仕事中毒化し 対象となった病態の分布は, 20% 以上の肥 た行動による精神的負荷の処理がアル コ ール や美食であっ たとすれば, たちまち中年期で は生活習慣病につかまることとなる. さらに, 治療過程はライフサイクル的な必然性がある ため再発を繰り返し, 容易に改善を示さない ことが一般的である. 団日本における仕事中蕾のもつ要素 中年期に出現する心理的危機は, 米国や西 欧の社会に比べ 国の境界がはっ きりし, 単一 民族で構成されているわが国で は, 外敵が存 在しにくく民族意識も必要ないため青年期に 自我同一性の確立を急ぐ必然性がないこ とが 遅一れのつ の要素となっ てい ると考えられ る. 青年期での自我同一性の確立は, 社会参 加の時期と重なるため潜伏期となり, 心理的 葛藤一は時潜在化してしまう. 自我が青年期 に確立せず一自我同性の確立のための葛藤が 潜在化してしまうため, 心理的葛藤の成熟し た処理は青年期には十分には発達してい ない ため未成熟な葛藤処理の方法を選びやすい. 未成熟な処理方法の代表的なものが仕事中毒とよばれている対処様式である. 仕事中毒という方法は心理的葛藤を回避することがで き, さらに社会的にも評価されやすい点では 優れていると考えられる. 満を認めたもの 15 名, 20% 以上のやせを認め たもの 15 名, 高血圧症 15 名, 高脂血症 45 名 そして肝機能障害は 20 名であっ た. これらの 対象について生活指導, 食事指導, 服薬コン プライアンスを上げる指導を個別に行った. その結果, 肥満群は改善を示した者 6.6%, 不 変であったもの 53.3% であり, 体重減少群では改善 40%, 不変 60% であった. さらに高血圧群は改善 73.3%, 不変 20% であり, 高脂血 症群の改善は 28.9%, 不変は 68.9%, 肝機能 障害群は改善 25.5%, 不変 65% であった. す なわち体重減少群, 高血圧群, 高脂血症群で は優位な改善を認めたが, 肥満群, 肝機能障 害群では改善は認められなかっ た 5 ). このこ とより薬物や簡単な食事指導で修正可能な高 血圧症, 高脂血症は比較的短期で修正可能で あるが, 生活に密着した食の過剰摂取の習慣, アルコール性肝障害などは, ライフスタイル 変容の必要を真に理解し, 長く培ってきた習 慣を自らの意思で変え, そして持続していく ことが必要である. また心理社会的要素も深 く関わっているため問題が潜在化しやすい. したがって, 中年期発症の生活習慣病は容易 に修正できないことが示唆される. [6] 中年の世代的価値観の関連 固中年期の生活習慣病への介入中年期に発症する生活習慣病の改善を行うことは容易ではないことを認識させられた. すなわち自らの症例の経験から, 企業内において病院に通い続けるほどでもない生活習慣 佐々 6 ) は著書の中で指摘しているように, 昭和 40 年代の学生紛争後, 高度経済成長の中ゲマインシャフト ( 運命共同体 ) 的価値観が敗北し, ゲゼルシャフト ( 利益共同体 ) 的価値観へと価値観を移動させてしまったこととの関連を推測している. すなわち頑張って働 410 心身医 2004 年 6 月 第 44 巻第 6 号
くことによって地位が向上し, 俸給が上がることのみを是とする価値観, つまりゲゼルシャフト的価値観に同一化していく. この現実を守り続けることができるのはごく一部であり, 大部分の中年期を迎えたサラリーマン は不本意な社会的処遇を受けることになっ しまう. したがって, 成熟した対処がこの時点までに身についていれば, 心身の不調は呈するかもしれないが破綻することなく過ごす可能性が高くなる. しかし, このように仕事中毒で処理してしまい中年を迎えた人々は, 社会的また家庭内の力学の変化にも強く影響され, ゲゼルシャフト的価値観の崩壊はついには出社困難に至るような重い同一性の拡散を起こし, 社会適応に障害を呈することになる. 圉中年期の出社困難例の調査東邦大学心療内科の外来を受診し継続勤務が不良であった 1 5 例についての調査の結果 は, たっ 以下のとおりである 7 ). 男性では 1 年以上て受療した者では復職できている者は有 意に少なく, 初診時における勤務状況別の復 職者の割合にっいては男性は現在の勤務状況 に関速していたが, 女性では勤務状況との関 連は認められなかっ た. 職場不適応の年代の ピークをみてみると 3 つ のピークが認められ た. すなわち 20 歳代の男女と 40 歳代の男性 に認められた. この出社困難の集計は対象を かえ 2 回行っ ているが, いずれも 40 歳代男性 にピークを認め, ライフサイクル的にも社会 へ の入り口での戸惑いに次いで, 第 2 の社会 的破綻の時期となっ てい ることを示唆してい る. て いことが一般的である 8 ). しかし, それまでの 生き方に疑問を感じながら中年期危機を呈し たものでは, それまでの生き方を含め支えと してきた価値観を変容に向けていき, 再構築 を目指す者も存在する. 症例 : 男性, 49 歳, 専門職の技師である. 中学生までは体力もなく運動嫌い, また勉強 嫌いで成績不良であり, 劣等感の中, 成功体 験はほとんどもっていない. 高校生の頃, 家庭の事情一で人で生活しなければならない状一況になり, 念発起してそれまでの常習遅刻 と学業へのサボタージュからの脱却を志し, 目標とした大学合格へとたどりつく. 青年期 における価値観の変容である. 大学入学後, 約 2 年間のアパシーの時期をもつが再び 20 歳頃より知識への欲求が高まり学習を始め, 卒業時の成績も上位であっ た. さらに大学院 へと進学し, 卒業した後は朝から晩まで休日 を返上しての仕事中心の生活を 25 年にわ たって続けていた. 執着的な仕事への関わり は社会的に膨大な仕事の成果と創造的な仕事 の遂行となって結実し, 社会的に十分な俸給 と職位を受けるに至る.2 年前, 母親の入院を めぐるやり取りの中で幼少時から潜在してい た親子間の葛藤が再燃した. 青年期において 経験した崩壊寸前の家族間の葛藤が未解決の まま受験勉強に置き換えるとい う葛藤回避の 方法をとってしまったため, 大学合格という 社会的成功は手にしたものの, 家族間の内的 葛藤は先送りされてしまったと考えられる. 葛藤再燃後は仕事へ 目に見えない期待とい に続けていたと感じ, の執着的遂行は親からの う重圧から逃れるため それまで私生活より絶 対に優先していた仕事すべてに意欲を失う. 出社困難には至らないが, 抑うつ気分の中で 圈中年期に心理社会的再構築を果たした事例人は元来ホメオスタシスを目指すものであり, 危機に接しないと生き方の根源は変えな それまでの十分の一程度の遂行力で仕事は休み休み続けた. そこで悩んだ末, 価値観の再構築を決意する. まず仕事中心の生活様式を捨て, それまでまったく関わっていなかった 心身医 2004 年 6 月 第 44 巻第 6 号 411
家庭内での生活を妻の示唆に従い, 場の確保 か ら再構築を始める. それまで妻のみが担当 していた家事, たとえば掃除, 洗濯そして台 筋梗塞の発生を抑制するための, 自分への ソーシャルサポートを増やすには, どのよう にすればよいのであろうか? ここではする 所の仕事などの作業を, 曜日を決めて始める こととした. またそれまで唯一無二と考えて 者とされる者の転換とい い. う視点を提示した きた仕事も志願して転属し, 同じ職場ながら今までの技術職からまったく違う管理系の仕事を開始した. それまで仕事を変えることなどありえないと感じ, 変化に恐怖感すらもっていたが, 思い切って変えてみると失うものは何もなく, そこには未知の新しい世界が獲得できた. 中年期における価値観の転換である. そして, 新しい生活を模索する中で, これまでしがみついてきたものだけが換えがたいものではなく, かえた先に今までよりもすばらしい新しい世界があることを知る. 仕事中毒からライフサイクル的契機によって脱却 し, 内的再構築を果たした中年期事例といえ る. 囹デマンド コントロールモデルにおけるソーシャルサポート一中年期危機への介入方法のつはソーシャルサポートである. ソーシャルサポートはカラゼックら 9) の提唱する三次元デマンド コントロールモデルの一つの要素である. 三次元デマンド コントロールモデルは仕事の要求度 ( デマンド ), 裁量の自由度 ( コントロール ) と社会的援助 ( ソーシャルサポート ) を独立した要素として, 働く人のメンタ ルヘ ルスを考える重要なモデルである ID ). こ のモデルの研究の中で, ソーシャルサポートが虚血性心疾患の発生を抑制できることが実証された 11 ). 職場におけるソーシャルサポートの評価は休み時間に同僚と会話ができるか, 仕事中に同僚と話すために持ち場を離れることができるか, そして上司が食事やーコヒーを誘ってくれたり気遣ってもらえるかなどによる. 心 南木 2} の著書の中で次のような事例が語ら れている. 看護師の中年女性が病院勤めを辞 め脳血管障害の慢性期にある自らの父親の在 宅介護を夫と共に始める. 介護には入浴等重 労働が続くが, 護することとなっ し, 昼食は不登校の次男が食事介 た. その後次男は自発登校 帰宅後学校の様子を祖父に話すように なった. 次男に登校の価値を教えたものは, 日常の労作に不自由してい であっ る寝たきりの祖父 たと考えられる. 介護で世話される受 身の存在が, 登校の価値を教えてくれている. 世話をしているつ もりが教えを受けていたこ とになる. ソーシャルサポートも同様に, り質の高いサポートを多く受けるには, いか に自らが他者に与えることができるかが, 大 きな要素になることが推測できる 13 ). まとめ 1 ) 男性更年期における問題をとらえるに は生物 心理 社会にわたる多次元評価理解 が必要である. 2 ) 中年期危機には, ソーシャルサポート の構築が有力な対策となる. には, 3) 男性更年期を社会的側面からとらえる ある. ライフサイクル的評価の視点が必要で 4 ) 仕事中毒は中年期に陥りやすい対処様 式であるが, 破綻しやすいスタイルでもある. 5 ) 中年期に発生する生活習慣病は, 心理 社会的問題と密接に関連してい よ るので容易に は修正できない. 6 ) 中年期における心理社会的価値観の再 構築は, ライフサイクルにおける切れ目を形 成するイニシエーションといえる. 412 心身医 20D4 年 6 月 第 44 巻第 6 号
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