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Sophia Junior College Faculty Journal Vol. 29, 2009, 73-89 中 間 言 語 語 用 論 と 英 語 教 育 近 藤 佐 智 子 1. はじめに 1 第 2 言 語 習 得 研 究 における 中 間 言 語 研 究 は 1970 年 代 以 後 に 音 韻 形 態 統 語 の 各 側 面 か ら 行 わ れ て い た が Hymes(1972) が コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 能 力 (Communicative Competence)を 提 唱 して 以 来 1980 年 代 に 入 って 学 習 者 の 語 用 論 的 知 識 の 研 究 が 進 展 を 見 せた この 比 較 的 新 しい 分 野 は 中 間 言 語 語 用 論 (Interlanguage Pragmatics) 2 と 呼 ばれており 主 に 外 国 語 学 習 者 が 目 標 言 語 で 謝 罪 依 頼 断 り 等 の 発 話 行 為 (speech act) を 行 う 際 の 語 用 論 的 能 力 (Pragmatic Competence) に 関 し て 発 語 内 的 な 力 (illocutionary force) ポライトネス(politeness) 適 切 さ(appropriateness)などの 側 面 に 焦 点 をあて 研 究 が 行 われてきた その 後 1990 年 代 後 半 から 現 在 にかけては 語 用 論 的 知 識 の 教 育 方 法 や 教 育 効 果 についての 研 究 が 行 われている 本 稿 ではまず 当 分 野 の 研 究 の 枠 組 として 使 われてきた 理 論 や 概 念 を 概 観 し 次 に 謝 罪 依 頼 断 り の 第 2 言 語 学 習 者 による 習 得 に 関 する 研 究 を 紹 介 する そして 最 後 にこれらの 研 究 をどのように 英 語 教 育 に 活 用 するのかについて 考 察 する 2. 理 論 2.1 コミュニケーション 能 力 言 語 能 力 は1960 年 半 ばまで 語 音 韻 文 法 生 成 などの 言 語 構 造 規 則 に 関 る 知 識 として 狭 義 に 定 義 されてきた Hymes(1972)は 言 語 能 力 の 意 味 をより 広 義 に 捉 え いつ 誰 に どのよ うな 状 況 で 何 を 伝 えるかを 把 握 し その 目 的 や 場 面 に 応 じた 適 切 な 言 語 使 用 をする 能 力 も 含 む コミュニケーション 能 力 を 提 唱 した Canale & Swain(1980)は Hymes の コミュ ニケーション 能 力 をさらに 細 分 化 し 文 法 的 能 力 社 会 言 語 学 的 能 力 談 話 能 力 及 び 方 略 的 能 力 に 分 けた 社 会 言 語 学 的 能 力 とは 言 葉 の 持 つ 社 会 文 化 的 意 味 や 機 能 を 理 解 し 状 況 や 聞 き 手 に 合 わせた 適 切 な 話 し 方 ができる 能 力 のことである この 能 力 により 話 し 手 は 聞 き 手 に 対 して 丁 寧 さや 礼 儀 正 しさを 表 すことができ 円 滑 な 人 間 関 係 を 築 くことができる 1.Selinker(1972, 1992)は 中 間 言 語 体 系 を 母 語 にも 目 標 言 語 にも 属 さない 中 間 的 で 流 動 的 な 言 語 体 系 であると 定 義 した 2. 本 稿 で 取 り 上 げた3つの 発 話 行 為 以 外 にも 不 満 表 明 感 謝 賞 賛 訂 正 提 案 反 対 意 見 の 表 明 などの 研 究 が 行 われている また 発 話 行 為 以 外 にも 会 話 の 含 意 談 話 標 識 談 話 ストラテジーなどの 研 究 が 行 われている 73

近 藤 佐 智 子 Bachman(1990)も Hymes(1972)や Canale & Swain(1980)の 言 語 使 用 に 関 する 能 力 を 言 語 能 力 に 含 める 考 え 方 に 沿 って 言 語 能 力 の 定 義 を 提 唱 した 言 語 コミュニケーショ ン 能 力 について Bachman は 言 語 能 力 (Language Competence)の 他 に 実 際 の 言 語 使 用 の 場 面 で 言 語 能 力 を 実 行 する 知 力 である 方 略 的 能 力 (Strategic Competence) 物 理 的 現 象 として 言 語 を 実 行 する 際 の 神 経 学 的 心 理 学 的 プロセスである 心 理 生 理 学 的 メカニズム (Psychophysiological Mechanisms)が 含 まれるとした 上 で その 中 の 言 語 能 力 を 図 1のよ うに 下 位 分 類 した 図 1. 言 語 能 力 の 構 成 要 素 (Bachman 1990) Language Competence Organizational Competence Pragmatic Competence Grammatical Textual Illocutionary Sociolinguistic Competence Competence Competence Competence 言 語 能 力 をまず 構 造 的 能 力 (Organizational Competence)と 語 用 論 的 能 力 (Pragmatic Competence) に 分 け 前 者 に は 語 彙 形 態 統 語 な ど の 文 法 的 能 力 (Grammatical Competence)と 二 つ 以 上 の 文 を 首 尾 一 貫 したものとして 繋 ぐ 用 法 の 知 識 や 文 章 や 会 話 の 構 造 に 関 する 知 識 であるテキストについての 能 力 (Textual Competence)があるとした 一 方 の 語 用 論 的 能 力 には 発 語 内 能 力 (Illocutionary Competence)と 社 会 言 語 学 的 能 力 (Sociolinguistic Competence)がある 発 語 内 能 力 とはことばの 表 面 的 意 味 の 背 後 にある 言 語 使 用 者 の 意 図 を 理 解 し 謝 罪 依 頼 断 りなどさまざまな 行 為 を 適 切 に 遂 行 する 能 力 である 例 えば Could you open the window? という 発 話 は 表 面 的 には 窓 を 開 けることが 可 能 か? という 相 手 の 能 力 につ いての 質 問 となっているが これに 対 して Yes, I could と 答 えるのは 不 適 切 であり 窓 を 開 けてください という 依 頼 行 為 の 間 接 的 表 現 であることを 理 解 し Sure などのこと ばとともに 窓 を 開 けるという 行 動 をとることでコミュニケーションが 成 立 することになる 社 会 言 語 学 的 能 力 とは 方 言 や 変 種 職 業 や 分 野 話 し 言 葉 か 書 き 言 葉 か 改 まった 場 面 か 砕 けた 場 面 か 年 齢 や 親 疎 関 係 比 喩 表 現 などさまざまなコンテクストでの 社 会 的 文 化 的 ルールに 従 って 適 切 に 言 語 を 使 用 する 能 力 である このような 言 語 能 力 に 関 する 理 論 の 展 開 に 合 わせて 第 2 言 語 習 得 研 究 においても1980 年 代 から 学 習 者 の 語 用 論 的 能 力 に 関 する 研 究 が 盛 んに 行 われるようになった 74

中 間 言 語 語 用 論 と 英 語 教 育 2.2 発 話 行 為 理 論 と 第 2 言 語 習 得 研 究 における 応 用 言 語 使 用 の 研 究 において 発 話 行 為 の 概 念 が 重 要 な 役 割 を 果 たしてきた 哲 学 者 である Austin(1962)と Searle(1969)によって 提 唱 された 発 話 行 為 理 論 は 話 すことは 行 な うことである とし 人 間 のコミュニケーションの 最 少 単 位 は 言 語 表 現 そのものではなく 指 示 をする 質 問 をする 謝 罪 をする といったある 種 の 行 為 を 行 なうことであるとした Austin は 発 話 行 為 には 次 の3つの 行 為 が 関 わるとした 1. 発 語 行 為 (locutionary act): 一 定 の 意 味 と 指 示 を 持 った 言 葉 を 発 すること 2. 発 語 内 行 為 (illocutionary act): 言 葉 を 発 することで その 言 葉 と 結 びついている 言 語 規 約 的 な 力 (force)によって 陳 述 申 し 出 約 束 などを 行 なうこと 3. 発 語 外 行 為 (perlocutionary act): 言 葉 を 発 することによって 発 話 の 状 況 に 特 有 な 効 果 を 聞 き 手 に 引 き 起 こすこと 例 えば 子 供 である 話 し 手 が 母 親 に 対 して I m hungry という 言 葉 を 発 したとすると そ の 発 語 行 為 は 空 腹 である という 状 態 を 述 べていることになる それに 対 して 発 語 内 行 為 とは その 言 葉 が 持 っている 社 会 的 慣 習 的 な 機 能 であり I m hungry であれば 食 事 を 作 ってください という 依 頼 の 機 能 を 果 たすことができる また 場 合 によって は 食 事 の 時 間 が 遅 れていることに 抗 議 をしたい という 不 満 表 明 の 機 能 を 果 たすこと も 可 能 である そして 母 親 がその 依 頼 に 応 えて 食 事 を 作 ってくれれば 発 語 外 行 為 が 達 成 されたということになる 発 話 行 為 の 研 究 では この 中 の 発 語 内 行 為 に 焦 点 をあて ており 中 間 言 語 語 用 論 研 究 においては 外 国 語 学 習 者 が 目 標 言 語 における 発 語 内 的 な 力 (illocutionary force)を 正 しく 理 解 し 適 切 な 使 用 ができるかどうかという 問 題 を 扱 った 実 証 的 研 究 が 行 われるようになった 2.3 ポライトネス 理 論 中 間 言 語 語 用 論 の 研 究 において 重 要 な 役 割 を 果 たしている 理 論 に Brown & Levinson (1987)の 提 唱 した ポライトネス 理 論 がある 彼 らは 日 常 の 対 人 関 係 を 円 滑 にする 為 に 常 に 注 意 を 払 うべきものとして フェイス(face) という 概 念 を 提 唱 した フェイスとは 公 の 場 で 自 分 が 主 張 したい 自 己 イメージのことであり 相 手 から 認 められたいという 積 極 的 なフェ イス(positive face) と 自 分 の 領 域 を 侵 されたくないという 消 極 的 なフェイス(negative face) がある 発 話 行 為 の 中 には 本 質 的 に 話 し 手 や 聞 き 手 の フェイスを 脅 かす 行 為 (Face Threatening Acts) となるものがある 例 えば 断 り は 相 手 に 不 快 感 を 与 える 行 為 であるため できるだけ 聞 き 手 のフェイスを 傷 つけないように 特 別 の 配 慮 や 丁 寧 さが 必 要 になる Brown & Levinson によると フェイス という 概 念 の 存 在 自 体 は 文 化 に 関 わらず 普 遍 的 なものである が その 具 体 的 な 要 素 は 文 化 によって 異 なるとしている 例 えば どのような 行 為 がフェイスを 75

近 藤 佐 智 子 脅 かすのか どのような 人 がフェイスを 保 つ 特 別 の 権 利 を 持 っているのか フェイスを 保 つ ためにどのような 方 略 が 好 まれるのか などに 関 しては 文 化 によって 異 なる また 彼 らは フェイスを 脅 かす 行 為 を 計 る 尺 度 として (1) 親 疎 のような 相 手 との 社 会 的 心 理 的 距 離 (2) 目 上 目 下 のような 相 手 との 相 対 的 力 関 係 (3) 相 手 に 与 える 負 担 の 大 きさ という3つの 要 素 を 提 案 した これらの 要 素 を 総 合 して フェイスを 脅 かす 行 為 の 重 さが 計 られ それによって 適 切 な 方 略 が 選 択 されるとしている 2.4 語 用 論 的 転 移 中 間 言 語 語 用 論 の 分 野 では 前 述 の コミュニケーション 能 力 発 話 行 為 理 論 ポライトネ ス 理 論 の 考 え 方 に 基 づき 特 に1980 年 代 後 半 から1990 年 代 にかけて 学 習 者 の 中 間 言 語 目 標 言 語 及 び 母 語 を 比 較 対 照 する 実 証 的 研 究 が 行 われた これらの 研 究 における 中 心 課 題 は 語 用 論 的 転 移 (pragmatic transfer)と 呼 ばれるもので 第 2 言 語 で 発 話 行 為 を 行 う 際 母 語 の 社 会 言 語 学 的 能 力 を 転 移 することを 指 す このディスコースレベルでの 転 移 は 目 標 言 語 の 語 彙 や 文 法 体 系 に 熟 達 している 学 習 者 であっても 相 手 に 対 して 失 礼 なことやふさわしくないことを 言 ってしまい 誤 解 につながる 可 能 性 のあるコミュニケーション 上 危 険 な 転 移 であると 言 える Thomas(1983) は 語 用 論 的 誤 り(pragmatic failure) に は 言 語 語 用 論 的 誤 り (pragmalinguistic failure) と 社 会 語 用 論 的 誤 り(sociopragmatic failure) の2 種 類 があ るとしている 言 語 語 用 論 的 誤 りは ある 決 まった 状 況 と 結 びついた 言 語 表 現 を 間 違 えた 時 に 生 じる 一 方 社 会 語 用 論 的 誤 りは 相 手 との 距 離 相 手 への 負 担 の 度 合 権 利 や 義 務 等 の 社 会 心 理 的 文 化 的 前 提 を 間 違 って 解 釈 してしまうことによって 引 き 起 こされる 誤 りである 3. 第 2 言 語 学 習 者 による 発 話 行 為 の 習 得 中 間 言 語 語 用 論 の 研 究 の 方 向 付 けとなった 大 規 模 な 研 究 として Cross-Cultural Speech Act Research Project(CCSARP)が 挙 げられる(Blum-Kulka et al., 1989) これは 謝 罪 と 依 頼 に 関 して8 言 語 における 母 語 話 者 と 学 習 者 の 言 語 使 用 を 比 較 したもので その 後 の 研 究 のデータ 収 集 方 法 や 各 発 話 行 為 のストラテジー 分 類 の 枠 組 として 応 用 された この 調 査 はゲルマン 系 とラテン 系 の 言 語 を 中 心 に 行 われたが その 後 アジアの 言 語 を 含 む 様 々な 言 語 で 研 究 が 繰 り 広 げられている 研 究 対 象 となっている 発 話 行 為 の 種 類 も 多 岐 に 及 ぶが こ こでは 最 も 多 く 研 究 されている 謝 罪 依 頼 及 び 断 り について 研 究 の 概 要 と 主 に 日 本 人 英 語 学 習 者 を 扱 った 研 究 を 紹 介 する 研 究 の 全 容 については Cohen(1996) Ellis (1994) Kasper & Blum-Kulka(1993) Kasper & Rose(1999, 2002)を 参 照 して 欲 しい 3.1 謝 罪 謝 罪 とは 話 し 手 が 聞 き 手 に 対 して 何 らかの 危 害 を 加 えることに 関 りを 持 ち それを 76

中 間 言 語 語 用 論 と 英 語 教 育 償 うために 行 われる 発 話 行 為 である Olshtain & Cohen(1983)は 謝 罪 の 方 略 の 基 本 的 分 類 として(1) 謝 罪 の 表 現 (2) 状 況 の 説 明 (3) 責 任 の 承 認 (4) 補 償 の 申 し 出 (5) 二 度 と 起 きない 旨 の 表 明 の5 範 疇 とその 下 位 区 分 からなるスピーチアクトセット(Speech Act Set)を 提 唱 した これらはストラテジーまたは 意 味 公 式 3 とも 呼 ばれ その 後 の 謝 罪 研 究 のコーディングの 枠 組 として 応 用 された 日 本 人 英 語 学 習 者 を 対 象 とした 謝 罪 の 研 究 としては Maeshiba et al.(1996)が 挙 げら れる この 研 究 では 語 用 論 的 転 移 と 状 況 の 捉 え 方 の 関 係 学 習 者 の 英 語 能 力 の 語 用 論 的 転 移 への 影 響 について 検 証 した 様 々な 謝 罪 の 状 況 について 相 手 との 距 離 や 上 下 関 係 謝 罪 の 義 務 や 過 失 の 重 さなどについて 被 験 者 がどのように 捉 えているかを 検 証 した 点 でユニークで ある その 結 果 フェイス や 社 会 的 距 離 などの 捉 え 方 に 関 して アメリカ 人 と 日 本 人 の 間 に 有 意 な 差 が 見 られた また Discourse Completion Task(DCT) 4 を 使 用 し 収 集 したデータ から 英 語 上 級 者 の 方 が 中 級 者 よりも 転 移 が 少 なく アメリカ 人 の 謝 罪 方 法 に 近 いことが 分 かった Kondo(1997)は 米 国 に1 年 間 留 学 した 日 本 人 高 校 生 45 名 を 対 象 に 留 学 の 前 後 で 同 一 被 験 者 の 方 略 選 択 がどのように 変 化 するかを 検 証 した その 結 果 留 学 前 はアメリカ 人 に 比 べ 謝 罪 の 表 現 を 多 く 使 用 する 状 況 の 説 明 を 少 なく 使 用 するという 面 で 日 本 語 か らの 転 移 が 見 られた 留 学 後 は 留 学 前 よりも 語 用 論 的 転 移 が 少 なく 状 況 の 説 明 補 償 の 申 し 出 などの 方 略 はより 多 く また 謝 罪 の 表 現 はより 少 なく 使 用 しており いずれも アメリカ 人 の 方 略 選 択 に 近 づいている Kondo が 留 学 前 と 後 の 同 一 被 験 者 による 具 体 的 発 話 例 としていくつか 挙 げているものの 一 つとして 友 達 との 映 画 の 待 ち 合 わせに 遅 れたとい う 状 況 設 定 である 下 記 の 例 がある Subject #24(female)in [Late for Movie] (Before) Oh, I m sorry, I m really sorry, I shouldn t keep you waiting. IFID IFID T-a Anyway I m sorry. IFID 3.Fraser (1981)は 意 味 公 式 を 特 定 の 意 味 的 基 準 またはストラテジーを 表 す 単 語 句 または 文 と 定 義 している 4. 中 間 言 語 語 用 論 の 実 証 的 研 究 に お い て 主 に 使 わ れ て き た デ ー タ 収 集 方 法 は 談 話 完 成 タ ス ク(Discourse Completion Task) ロール プレイ(Role Play) 自 然 な 会 話 からのデータ(Naturally Occuring Data)である DCTは 与 えられた 状 況 においてどのように 言 うかを 筆 記 形 式 で 答 える 手 法 で 統 制 されたコンテクストにおいて 大 量 のデータを 短 期 間 で 集 めることができるという 利 点 があるが 実 際 の 会 話 のような 話 者 交 代 による 発 話 の 展 開 が 見 られないといった 短 所 がある それに 対 しロール プレイは 話 者 交 代 を 可 能 にし 実 際 に 声 を 出 して 発 話 すると いう 点 が 長 所 であるが 音 声 データの 転 記 に 時 間 を 要 するため 多 量 のデータ 処 理 が 困 難 であるという 短 所 がある また 自 然 な 会 話 からのデータは 実 際 の 発 話 を 反 映 しているという 意 味 で 理 想 的 ではあるが 該 当 の 発 話 行 為 が 頻 繁 には 現 れないことや コンテクストの 統 制 が 難 しいという 短 所 がある 77

近 藤 佐 智 子 (After) Oh, I am so sorry that I m late. I didn t mean to, IFID T-c T-b but I had things to do. I m sorry. D-a-1 IFID (Kondo, 1997, p.275) 当 被 験 者 は 留 学 前 には 謝 罪 の 表 現 (IFID) を3 回 使 用 し 自 分 の 非 を 認 めている(T-a) それに 対 し 留 学 後 は 謝 罪 の 表 現 以 外 に 事 実 を 認 める(T-c) 意 図 がなかった(T-b) 状 況 の 説 明 (D-a-1) といった 方 略 を 使 用 している 留 学 前 の 方 略 選 択 は 謝 罪 の 表 現 を 多 用 し 過 失 の 原 因 に 関 する 説 明 をあまりしない 傾 向 にあり 相 手 の 感 情 や 共 感 に 訴 えるという 日 本 人 特 有 の 関 係 修 復 方 法 を 取 っている それに 対 しアメリカ 人 や 留 学 後 の 被 験 者 は 過 失 の 原 因 を 説 明 し 故 意 ではない 事 を 伝 え 情 報 をできるだけ 提 供 することによって 論 理 的 アプ ローチによる 関 係 修 復 を 行 っており 文 化 を 背 景 とする 社 会 語 用 論 的 違 いが 結 果 に 出 ている 3.2 依 頼 依 頼 とは 話 し 手 が 聞 き 手 に 対 して 何 らかの 行 為 を 行 なう または 行 なわないように 促 す 発 話 行 為 であり 必 然 的 に 聞 き 手 に 何 等 かの 負 担 をかけてしまうため 関 係 修 復 に 関 する 特 別 な 配 慮 が 必 要 な 行 為 である この 行 為 に 関 しては 相 手 との 関 係 負 担 の 重 さな どに 応 じて 適 切 な 丁 寧 度 の 表 現 を 選 択 できるかどうかという 言 語 語 用 論 的 研 究 が 主 に 行 わ れてきた CCSARPに 関 連 する 諸 研 究 (Blum-Kulka & Olshtain, 1984; Blum-Kulka et al., 1989; Faerch & Kasper, 1989; Kasper, 1989) で は 依 頼 行 為 の 主 部 (head act) を そ の 直 接 度 (directness)の 観 点 から 大 きく(1) 直 接 的 表 現 (direct) (2) 慣 習 的 間 接 表 現 (conventionally indirect) (3) 非 慣 習 的 間 接 表 現 (non-conventionally indirect) の3つ に 分 けた さらにそれを 最 も 直 接 的 な 命 令 表 現 から 最 も 間 接 的 な 軽 いほのめかし 表 現 に 至 る9 段 階 に 下 位 区 分 し 丁 寧 度 の 尺 度 とした また 依 頼 の 理 由 付 けなどの 主 部 以 外 の 支 持 的 部 分 (supportive move)についても 分 類 を 行 い その 後 の 他 の 研 究 においても 分 析 に 応 用 された Tanaka(1988)はオーストラリアに 在 住 する 日 本 人 英 語 学 習 者 にロール プレイの 手 法 を 用 いて 調 査 したところ 英 語 母 語 話 者 と 違 って 学 習 者 は 依 頼 の 具 体 的 理 由 を 述 べない こと また より 直 接 的 な 依 頼 表 現 を 使 う 傾 向 があることが 明 らかになった Takahashi(1996)は 日 本 語 の 依 頼 表 現 を 英 語 に 転 移 させて 使 用 することの 可 能 性 (transferability)について 調 査 したところ 日 本 人 EFL 学 習 者 は 日 本 語 の 依 頼 表 現 であ る ~していただけないでしょうか に 機 能 的 に 相 当 する 英 語 表 現 を 理 解 できておらず 78

中 間 言 語 語 用 論 と 英 語 教 育 Would/Could you VP? といった 単 文 構 造 の 依 頼 表 現 が 適 切 であると 考 えていた 日 本 人 学 習 者 は 英 語 においては 文 法 的 により 複 雑 な Would it be possible to VP? といった 複 文 構 造 にすることによってより 間 接 的 な 表 現 にし 丁 寧 度 の 高 い 文 を 作 ることができるという 知 識 を 持 っていなかったことが 判 明 した 第 2 言 語 学 習 者 が 依 頼 という 発 話 行 為 を 行 う 場 合 目 標 言 語 の 文 化 では 相 手 との 関 係 や 依 頼 の 種 類 によって 相 手 にかける 負 荷 の 度 合 いなどをどのようにとらえるのかという 社 会 語 用 論 的 知 識 も 必 要 であるが 丁 寧 度 の 異 なる 言 語 表 現 に 関 する 言 語 語 用 論 的 知 識 の 習 得 も 重 要 である 3.3 断 り 断 り とは 聞 き 手 によって 提 案 された 行 為 を 行 なうことを 拒 否 する 発 話 行 為 であり 相 手 に 不 快 な 思 いをさせないためには 高 度 なコミュニケーション 能 力 を 必 要 とする Beebe et al.(1990)は 日 本 人 英 語 学 習 者 を 対 象 にDCTの 手 法 を 用 いて 調 査 した 断 り の 意 味 公 式 の 分 類 を 用 いて 分 析 したところ 意 味 要 素 の 使 用 順 序 使 用 頻 度 内 容 において 日 本 語 からの 語 用 論 的 転 移 が 見 られた 言 い 訳 (excuses) の 意 味 公 式 については 日 本 人 とアメリカ 人 両 方 が 使 用 していたが 日 本 人 が 日 本 語 で 断 り をする 場 合 は アメリカ 人 の 英 語 での 発 話 に 比 べて 言 い 訳 の 内 容 が 具 体 的 でなく これが 日 本 人 英 語 学 習 者 の 英 語 での 発 話 に 転 移 していた Kondo(2000)は46 名 の 日 本 人 英 語 学 習 者 と46 名 のアメリカ 人 英 語 母 語 話 者 が 断 り の 場 面 でどのような 方 略 を 使 用 するかを 比 較 した その 結 果 日 本 人 英 語 学 習 者 は I m sorry といった 謝 罪 遺 憾 の 意 の 表 明 をより 多 く アメリカ 人 は I d love to といった 共 感 Thank you for inviting me といった 感 謝 Maybe some other time といった 未 来 の 約 束 の 意 味 公 式 をより 多 く 使 用 し 両 者 に 差 異 が 見 られた また 言 い 訳 の 内 容 を 分 析 したところ 日 本 人 英 語 学 習 者 の 言 い 訳 はアメリカ 人 のものに 比 べ 具 体 性 のないも のであった 断 り においは 日 本 人 はどちらかと 言 うと 謝 罪 遺 憾 の 意 の 表 明 を 使 用 することによっ て Brown and Levinson(1987)の 提 唱 した 相 手 の 領 域 を 侵 さない という 消 極 的 ポラ イトネス(negative politeness)を 重 視 しているのに 対 し アメリカ 人 は 共 感 や 感 謝 の 気 持 ちを 伝 えることによって 相 手 を 認 める という 積 極 的 ポライトネス(positive politeness)を 重 視 しており 両 者 の 文 化 的 特 徴 が 出 ている 4. 中 間 言 語 語 用 論 研 究 の 英 語 教 育 への 活 用 コミュニケーション 能 力 の 育 成 を 目 的 としたコミュニカティブアプローチが 主 流 となる 英 語 教 育 の 中 で Canale & Swain(1980)や Bachman(1990)の 提 唱 した 言 語 能 力 を 構 79

近 藤 佐 智 子 成 する 社 会 言 語 学 的 能 力 や 語 用 論 的 能 力 の 教 育 が 益 々 重 視 されるようになった こ の 流 れを 受 けて1980 年 代 後 半 から90 年 代 にかけて 中 間 言 語 語 用 論 の 分 野 における 研 究 が 主 に 学 習 者 の 語 用 論 的 言 語 使 用 について 行 われたのに 対 し 90 年 代 後 半 からは 語 用 論 的 知 識 の 教 育 に つ い て 盛 ん に 行 わ れ る よ う に な っ た(Alcón and Martínez-Flor, 2008; Bardovi-Harlig & Mahan-Taylor, 2003; Kasper & Rose, 2002; Martinez-Flor et al, 2003; Rose & Kasper, 2001; 清 水, 2008) 会 話 をする 相 手 との 上 下 関 係 親 疎 関 係 相 手 にかける 負 荷 の 度 合 いなどに 応 じて 適 切 な 言 葉 を 使 用 をするという 語 用 論 的 能 力 を 習 得 する には 個 々の 状 況 とそこで 使 用 される 言 葉 を 直 接 的 に 教 室 外 でも 体 験 できる 第 2 言 語 (ESL) 環 境 の 方 が 外 国 語 (EFL) 環 境 5 よりも 有 利 であると 考 えられる(Kasper & Schmidt, 1996; Kondo, 1997) それだけにEFL 環 境 では 教 室 での 語 用 論 的 教 育 により 多 くの 工 夫 が 必 要 であろう 語 用 論 的 体 験 の 頻 度 や 種 類 が 限 定 されるEFL 環 境 において 教 室 でどのよ うに 語 用 論 的 教 育 を 行 うことが 好 ましいのか 語 用 論 的 教 育 効 果 の 研 究 を 参 照 しながら 考 察 したい 4.1 明 示 的 教 育 教 育 の 効 果 に 関 する 問 題 のひとつとして 指 導 方 法 によって 異 なる 結 果 が 出 るか とい う 点 が 挙 げられる(Kasper & Rose, 2002) メタ 語 用 論 的 情 報 を 明 示 して 指 導 する 明 示 的 (explicit) 方 法 と そうではない 暗 示 的 (implicit) 方 法 の 教 育 効 果 を 比 較 する 研 究 では 概 ね 明 示 的 指 導 の 方 が 効 果 があるという 結 果 が 出 ている(House, 1996; Rose & Ng, 2001; Takahashi, 2001; Tateyama et al., 1997; Tateyama, 2001) 例 えば Takahashi(2001)は 日 本 人 EFL 学 習 者 が Would it be possible to VP? といっ たより 間 接 的 で 丁 寧 度 の 高 い 複 文 構 造 の 依 頼 表 現 が 適 切 である 場 面 で Would/Could you VP? といった 単 文 構 造 の 表 現 を 使 用 するという 点 に 着 目 し 依 頼 場 面 での 言 語 語 用 論 的 知 識 に 関 して4つの 学 習 者 グループにそれぞれ 異 なるインプットを 与 えた 4 種 類 のインプッ トのうちひとつが 明 示 的 指 導 方 法 (explicit teaching)で 残 りはインプットの 度 合 い(input enhancement)によって 分 けた3つの 暗 示 的 指 導 方 法 (form-comparison, form-search, meaning-focused)であった 指 導 の 前 に pretest 後 に posttestをdct 形 式 で 実 施 した ところ 明 示 的 指 導 を 施 したグループが 暗 示 的 指 導 を 施 した3つのグループより 優 れた 結 果 を 出 した 日 本 人 英 語 学 習 者 の 多 くは 依 頼 の 場 面 で 命 令 形 (mood derivables)に please を 付 け た 形 (e.g., Please change the appointment )で 十 分 丁 寧 であると 考 えている 場 合 が 多 く 例 えば 教 授 に 対 してこのような 表 現 で 依 頼 をすることは 不 適 切 であるとは 認 識 していない 5.ESL(English as a second language) 学 習 者 とは 英 語 が 教 室 外 の 日 常 生 活 でも 使 用 されている 環 境 での 英 語 学 習 者 である それに 対 してEFL(English as a foreign language) 学 習 者 とは 主 に 教 室 で 英 語 を 学 び 教 室 以 外 で はほとんど 英 語 と 接 触 のない 環 境 で 学 ぶ 英 語 学 習 者 である 日 本 で 英 語 を 学 ぶ 学 習 者 はEFL 学 習 者 である 80

中 間 言 語 語 用 論 と 英 語 教 育 場 合 が 多 い より 丁 寧 な Would/Could you VP? )といった 慣 習 的 間 接 表 現 や さらに 丁 寧 度 の 高 い 複 文 構 造 の 表 現 (e.g., Do you think you could VP? Would it be possible to VP? I wonder if you could VP )についての 言 語 語 用 論 的 知 識 に 欠 けている 場 合 が 多 く 相 手 との 上 下 関 係 親 疎 関 係 相 手 にかける 負 荷 の 度 合 い(Brown & Levinson, 1987)が 異 なる 様 々な 場 面 での 適 切 な 依 頼 表 現 について 明 示 的 指 導 を 行 うことが 望 まれる 4.2 意 識 付 けの 方 法 語 用 論 的 知 識 を 向 上 させる 手 法 として 意 識 付 け(awareness-raising)が 挙 げられる 4.1 項 で 述 べた 明 示 的 教 育 は 学 習 者 が 普 段 は 無 意 識 に 行 っている 意 味 公 式 や 言 語 語 用 論 的 選 択 について メタ 語 用 論 的 情 報 を 明 示 することによって 学 習 者 に 意 識 付 けを 行 うものである ここでは 意 識 付 けの 方 法 について 考 察 する まず 学 習 者 に 発 話 行 為 における 学 習 者 自 身 と 英 語 母 語 話 者 の 発 話 の 相 違 を 認 識 させると いう 方 法 がある Kondo(2003, 2004 & 2008)は 日 本 人 EFL 学 習 者 を 対 象 に 英 語 での 断 り を 明 示 的 に 指 導 した 結 果 の 効 果 について 分 析 している ある 断 りの 状 況 を 提 示 し 学 習 者 は その 状 況 でどのように 発 話 するかをDCTの 形 で 記 述 してもらった 後 で 断 りの Speech Act Set と 日 本 語 と 英 語 の 母 語 話 者 を 対 象 とした 研 究 結 果 をグラフ 形 式 にしたものを 提 示 し 学 習 者 はそれらを 基 に 自 分 の 発 話 を 分 析 する さらに 学 習 者 はこの 一 連 の 活 動 を 通 しての 語 用 論 的 気 付 きについてグループディスカッションを 行 う このディスカッションの 内 容 を 分 析 したところ 学 習 者 は 日 本 語 からの 転 移 や 相 手 に 誤 解 を 与 える 可 能 性 ポライトネスへの 配 慮 その 他 言 語 を 選 択 するにあたって 考 慮 しなければならない 様 々なコンテクストの 要 因 に ついて 気 付 いたことが 判 明 した 英 語 学 習 者 は 単 なる 受 け 身 の 学 習 者 であることに 留 まらず 積 極 的 に 自 ら 言 語 を 分 析 し 新 たな 発 見 をすることによってメタ 語 用 論 的 見 方 ができるように なる 語 用 論 的 知 識 の 意 識 付 けに 映 画 を 使 用 することもできる 例 えば Rose(1994, 1997)は 様 々な 社 会 的 コンテクストの 中 で 言 語 形 式 がどのように 適 切 に 使 用 されているかについての 意 識 付 けを 行 うために 映 画 の 使 用 を 提 案 している 学 習 者 に 映 画 を 見 せると 共 に 謝 罪 や 依 頼 といった 発 話 行 為 の Speech Act Set を 提 示 することによって 学 習 者 は 映 画 の 特 定 の 場 面 で 使 用 されている 言 語 形 式 とコンテクストの 関 係 を 自 分 で 分 析 し 適 切 な 言 語 使 用 の 知 識 を 得 ることができる(Rose, 1997. p. 283) このような 意 識 付 けを 基 に 教 室 内 で 語 用 論 的 規 則 についてのディスカッションを 行 うことも 意 識 付 けに 貢 献 するであろう 母 語 の 例 を 挙 げることでの 意 識 付 けは 上 述 した 本 格 的 意 識 付 けに 入 る 前 の 導 入 として 有 効 である 例 えば 先 生 から 本 を 借 りることを 依 頼 する 場 面 で ねえー 本 貸 して と 言 った ら 先 生 はどう 感 じるか という 問 いかけに たいがい 日 本 人 学 習 者 は 笑 いで 反 応 する これ はこの 表 現 が 友 達 に 対 してなら 適 切 だが 目 上 の 人 である 先 生 に 対 しては 適 切 ではないこと が 分 かっているからである また 同 じ 友 達 であっても ちょっと100 円 貸 してくれる? 81

近 藤 佐 智 子 は 適 切 でも ちょっと1 万 円 貸 してくれる? は 適 切 でなく 相 手 にかける 負 荷 度 に 応 じ てより 丁 寧 な 依 頼 表 現 やそれに 付 随 する 詳 細 な 説 明 が 必 要 であることは 母 語 であれば 容 易 に 分 かる このような 母 語 による 意 識 付 けの 後 で 英 語 での 依 頼 にかかわる 言 語 語 用 論 的 およ び 社 会 語 用 論 的 問 題 についての 意 識 付 けを 行 うと 効 果 的 であると 思 われる 教 室 内 で 明 示 的 に 語 用 論 的 知 識 を 指 導 する 際 に 提 示 される 例 文 やダイアローグ 以 外 に 自 然 なインターアクションから 学 習 者 が 得 るインプットは 主 に 教 員 と 他 の 学 習 者 の 発 話 であ り 形 式 的 にも 機 能 的 にもかなり 限 定 されたものである(Kasper & Rose, 2002) 豊 富 な インプットを 学 習 者 に 提 供 する 方 法 として 目 標 言 語 を 話 すゲストをクラスへ 招 待 すること が 挙 げられる Tateyama & Kasper(2008)は 日 本 語 教 育 を 行 うクラスに 日 本 語 母 語 話 者 をゲストとして 招 いた 場 合 に 教 員 からクラスへ 教 員 からゲストへ ゲストからクラスへ という3 種 類 の 依 頼 がどのように 行 われるか 分 析 した その 結 果 教 員 からゲストへの 依 頼 に 比 べて 教 員 からクラスへの 依 頼 は 限 定 された 言 語 表 現 とスピーチスタイル 6 で 行 われ 日 本 語 母 語 話 者 がよく 使 用 する 控 え 目 で 謝 罪 的 なふるまいが 見 られなかった Tateyama & Kasper(2008)が 教 員 からゲストへの 依 頼 の 例 として 提 示 したデータには 例 えば あや さん あのー すみません お 忙 しいところ 申 し 訳 ないんですけど 来 週 水 曜 日 どうですか クラスにまた 来 てくださいます? という 教 員 の 発 話 があり ここでは 普 段 教 員 から 学 習 者 に 対 しては 使 われない 依 頼 表 現 の 前 置 きとしての 謝 罪 的 定 式 表 現 (formulaic expressions) が 使 用 されている 英 語 教 育 の 教 室 においても ゲストを 招 くことによって 普 段 教 員 から 学 習 者 に 向 けて 行 われる 依 頼 よりも 丁 寧 な 複 文 構 造 の 依 頼 主 部 表 現 や 依 頼 の 理 由 付 けなどの 主 部 以 外 の 支 持 的 部 分 が 教 員 やゲストの 発 話 に 現 れる 可 能 性 が 大 きく 学 習 者 に 多 様 性 のあ るインプットを 提 供 することができると 思 われる 4.3 アウトプットとインターアクションの 重 要 性 語 用 論 的 知 識 の 指 導 において 前 述 した 豊 富 なインプットも 重 要 であるが それに 加 え 様 々な 場 面 を 想 定 してのコミュニカティブな 練 習 によるアウトプットも 重 要 である(House, 1996; Yoshimi, 2001) 適 切 な 言 語 使 用 にかかわる 大 きな 要 因 として 相 手 との 上 下 親 疎 関 係 や 相 手 への 負 荷 度 が 挙 げられるが これらの 要 因 を 考 慮 した 様 々な 場 面 を 想 定 し それぞれの 状 況 に 合 った 発 話 を 考 え(planning) 行 う(producing)という 練 習 を 重 ねることが 有 効 であると 考 える 例 えば 日 本 人 EFL 学 習 者 を 対 象 に 英 語 での 発 話 行 為 について 指 導 することを 目 的 とした テキストブックである Yoshida et al.(2000)では 日 本 語 と 英 語 の 語 用 論 的 共 通 点 や 違 いを 比 較 する 明 示 的 指 導 を 行 い そこから 得 た 気 づきについてのメタ 語 用 論 的 ディスカッ ションの 後 で 様 々な 状 況 における 練 習 をペアで 行 う 例 えば 謝 罪 を 扱 った 章 では 約 6.ここで 言 うスピーチスタイルとは 丁 寧 な です ます 調 を 使 用 するかしないかという 違 いである 82

中 間 言 語 語 用 論 と 英 語 教 育 束 の 時 間 に 遅 れる 借 りたノートを 汚 してしまう などの 異 なる 状 況 や 発 話 の 相 手 も 友 達 だけでなくアルバイト 先 の 上 司 や 顧 客 であったりという 状 況 での 練 習 機 会 を 提 供 している コミュニカティブな 練 習 を 行 うにあたって ある 状 況 においてどのように 答 えるかを1 回 の 発 話 だけで 終 えるのではなく インターアクションによっていくつかの 話 者 交 代 (turntaking)が 自 然 に 行 われるよう 学 習 者 に 促 す 必 要 がある Gass & Houck(1999)は 日 本 人 英 語 学 習 者 を 対 象 に 断 りにおける 自 然 なやりとりの 場 合 意 味 や 意 図 などの 交 渉 (negotiation)がどのように 行 われるかを 検 証 するためにオープン ロール プレイ 7 の 手 法 を 用 いて 研 究 した その 結 果 発 話 交 代 を 伴 わないデータを 基 にした 従 来 の 意 味 公 式 の 分 類 には 存 在 しなかったようなストラテジーが 使 われたと 報 告 している 練 習 においては 非 言 語 的 行 動 も 含 めてできるだけ 自 然 なやりとりが 行 われることが 好 ましい 一 歩 教 室 の 外 に 出 ると 英 語 を 使 う 機 会 が 極 めて 少 ないEFL 環 境 では 授 業 外 でのアウト プットは 難 しい これに 対 処 する 方 法 として eメールなどを 使 用 して 目 標 言 語 使 用 者 とコ ミュニケーションを 行 う tele-communication の 活 用 が 考 えられる Belz & Kinginger (2003)はドイツ 語 話 者 とドイツ 語 を 学 習 するアメリカ 英 語 話 者 のグループ 間 で 提 携 し e メールの 交 換 とチャットを 行 ったところ ドイツ 語 学 習 者 にとって 社 会 語 用 論 的 に 選 択 が 困 難 な 二 人 称 の 呼 称 (duとsie)の 使 い 分 けに 関 して 学 習 者 はドイツ 語 話 者 からインプット や 明 示 的 アドバイスを 得 たばかりでなく 実 際 に 適 切 な 使 い 分 けができるようになった 目 標 言 語 の 母 語 話 者 と 直 接 話 す 機 会 の 少 ないEFL 環 境 でも tele-communication という 形 で やり 取 りを 行 い 語 用 論 的 知 識 を 得 ると 同 時 にアウトプットの 機 会 を 持 つことが 可 能 である 4.4 今 後 の 課 題 語 用 論 的 知 識 の 教 育 における 大 きな 問 題 として どの 規 範 を 教 えるのか(Whose norms?) という 点 が 挙 げられる 中 間 言 語 語 用 論 分 野 の 言 語 使 用 や 教 育 に 関 する 研 究 では 学 習 者 と 目 標 言 語 母 語 話 者 の 違 いを 検 証 するために どうしても アメリカ 英 語 や イギ リス 英 語 といった 何 らかの 言 語 変 種 を 選 択 し それを 基 本 (base-line)として 比 較 対 照 せざるを 得 ない しかし 英 語 のように World Englishes と 呼 ばれ 多 様 な 変 種 を 持 つ 言 語 では それぞれの 変 種 で 語 用 論 的 規 範 が 異 なっており どれを 基 本 とするかは 非 常 に 困 難 な 問 題 である(Kasper & Rose, 2002, p. 272) また 特 に 社 会 語 用 論 的 規 範 はそれぞれの 言 語 話 者 の 文 化 的 アイデンティティーと 深 い 関 連 があり それを 無 視 して 別 の 言 語 の 文 化 的 価 値 観 に 合 わせるということを 強 いるのも 問 題 である このような 問 題 をふまえ 語 用 論 的 教 育 では 言 語 が 異 なればその 背 景 にある 文 化 的 価 値 観 も 異 なり それがコミュニケーション 上 の 誤 解 につながる 可 能 性 があるという 語 用 論 的 気 付 き を 重 要 視 し 実 際 の 発 話 練 習 や 使 用 においては 目 標 言 語 の 規 範 に 完 全 に 合 わせるのではなく 自 分 のアイデンティティーを 7. クローズド ロール プレイ では 話 者 交 代 が 行 われないのに 対 し オープン ロール プレイ では 行 われる 83

近 藤 佐 智 子 保 ちながらも 相 手 に 誤 解 を 与 えない 程 度 の 気 配 りをしながら 発 話 ができるよう 様 々な 意 味 公 式 や 言 語 表 現 のオプションを 提 供 することが 重 要 であると 考 える ネイティブスピーカー の 規 範 に 合 致 していなくても 相 手 に 不 快 な 思 いをさせることなく 会 話 の 目 的 を 達 成 し や りとりが 成 功 すれば 良 いと 考 える また 別 の 課 題 として 実 際 に 自 然 な 会 話 の 中 で 様 々な 発 話 行 為 がどのように 行 われてい るのかという 点 に 関 する 研 究 がさらに 必 要 であろう これまでの 中 間 言 語 語 用 論 研 究 では 統 制 されたコンテクストにおいてデータを 短 期 間 で 集 めることができるという 利 点 のために 主 に 筆 記 形 式 のDCTや 口 頭 であればロールプレイによってデータを 集 め 研 究 が 行 われて きた これらの 手 法 での 研 究 で どのような 意 味 公 式 と 言 語 表 現 が 使 用 されるのかという 点 は 明 らかになったが 特 に 学 習 者 が 自 然 な 会 話 の 話 者 交 代 が 行 われる 中 でどのように 発 話 行 為 を 行 うのかという 研 究 はまだ 十 分 であるとは 言 えない その 解 明 には 会 話 分 析 (Atkinson & Heritage, 1984; Lerner, 1996; Markee, 2000; Sacks et al., 1974; Schegloff, 1988; Schegloff, 2007)の 手 法 を 使 った 会 話 の 連 鎖 構 造 (sequence organization)の 研 究 が 有 効 である 会 話 分 析 の 分 野 ではこれまで 英 語 ネイティブスピーカーによる 大 量 の 自 然 会 話 の データを 詳 細 に 書 き 起 こし どのような 社 会 的 行 為 がどのような 連 鎖 構 造 で 行 われるのか 話 者 交 代 や 会 話 の 構 造 といった 視 点 から 分 析 研 究 されてきた 例 えば Schegloff(2007)は 招 待 という 行 為 が 行 われる 前 の pre-invitation sequence を 分 析 し 例 えば 電 話 で What are you doing? という 発 話 は 聞 き 手 によって 招 待 の 前 触 れ と 理 解 され 招 待 を 受 け 入 れる 気 持 ちがあるのであれば 詳 細 に 実 際 に 行 っていることを 述 べるのではなく nothing と 答 えることによって 相 手 に 招 待 をしても 良 いということを 伝 え(go-ahead) それによっ て 次 に you wanna drink? といった 招 待 の 本 行 為 に 入 る 逆 に 断 る 場 合 は I have a term paper to finish などと 言 うことによってまだ 発 話 されていない 招 待 を 受 ける 気 持 ち がないことを 事 前 に 示 し 予 期 されていた 招 待 - 断 り という 隣 接 ペア(adjacency pairs) 8 が 発 生 することを 避 けることができる 招 待 や 依 頼 などの 行 為 はこのよう に 話 者 交 代 が 何 度 も 行 われる 連 鎖 の 中 で 成 立 するものなのである また 会 話 分 析 による 研 究 によって 依 頼 や 招 待 に 対 する 断 り のような 非 優 先 行 為 (dispreferred action) 9 を 行 う 際 は 説 明 といったことを 行 う 前 に 相 手 の 発 話 との 間 に 若 干 のポーズ を 置 く well や uh などのためらいの 言 葉 や 和 らげるための 垣 根 表 現 (hedges)など を 使 用 することが 明 らかになっており これらは 従 来 の 中 間 言 語 語 用 論 研 究 ではあまり 注 目 されてこなかった 部 分 である 特 に2000 年 代 に 入 って 第 2 言 語 習 得 研 究 において 会 話 分 析 8. 隣 接 ペア とはSchegloff & Sacks(1973)の 用 語 で 会 話 分 析 の 際 ことばのやりとりを 最 小 のまとまりにした 分 析 単 位 である 質 問 - 応 答 申 し 出 - 受 諾 など 通 常 連 続 ( 隣 接 )して 起 こる 一 対 の 発 話 の 組 み 合 わせを 言 う ( 小 池, 2003) 9. 隣 接 ペアの 応 答 として 構 造 的 に 期 待 ( 予 測 )されない 第 二 部 の 発 話 例 えば 招 待 に 対 して 受 諾 は 優 先 的 第 二 部 であり 拒 否 ( 断 り)は 非 優 先 的 第 二 部 である 他 に 非 優 先 構 造 として 提 案 - 不 同 意 依 頼 - 拒 否 などがある (Yule, 1996) 84

中 間 言 語 語 用 論 と 英 語 教 育 の 手 法 を 用 いる 研 究 が 増 えており(Gardner & Wagner, 2004; Kasper, 2006; Markee & Kasper, 2004; Schegloff et al., 2002) 言 語 学 習 者 の 語 用 論 的 能 力 を 解 明 する 上 で 新 たな 知 見 をもたらしてくれるものと 期 待 する 5.おわりに 本 稿 では 中 間 言 語 語 用 論 の 分 野 で 用 いられる 理 論 を 概 観 し 当 分 野 でのこれまでの 第 2 言 語 使 用 に 関 わる 研 究 を 紹 介 すると 共 に それらの 研 究 結 果 を 活 かした 英 語 教 育 の 方 法 につい て 考 察 を 行 った 中 間 言 語 語 用 論 は 比 較 的 新 しい 分 野 であるが 国 地 域 民 族 ジェンダー 社 会 階 層 などによって 異 なる 様 々な 文 化 背 景 を 持 つ 人 々と 常 に 接 触 して 生 きている 私 たちに とって 意 図 しないところでの 誤 解 やミスコニュニケーションを 避 けるために 欠 かせないも のの 見 方 を 提 供 してくれる 研 究 分 野 である また この 分 野 の 研 究 は 異 なる 文 化 背 景 を 持 っ ていても 人 間 が 共 通 して 持 っている 言 語 使 用 のメカニズムに 関 しても 我 々に 知 見 を 与 え てくれている 異 文 化 の 壁 を 越 えて 人 々が 共 存 できるような 世 界 を 目 指 して 今 後 も 当 研 究 分 野 における 研 究 が 発 展 していくことを 願 っている 参 考 文 献 Alcón, E. and Martínez-Flor, E. (eds.). (2008). Investigating Pragmatics in Foreign Language Learning, Teaching and Testing. Clevedon: Multilingual Matters. Atkinson, J. M. and Heritage, J. (eds.). (1984). Structures of Social Action. Cambridge: Cambridge University Press. Austin, J. (1962). How to do things with words. Oxford: Oxford University Press. Bachman, L.F. (1990). Fundamental Considerations in Language Testing. Oxford: Oxford Univ. Press. Bardovi-Harlig, K., Hartford, B. S. and Mahan-Taylor, R. (eds.). (2003). Teaching Pragmatics. Office of English Language Programs, US Department of State. Online document: http://draft.eca.state.gov/education/engteaching/pragmatics. htm Beebe, L. M., Takahashi, T. and Uliss-Weltz, R. (1990). Pragmatic transfer in ESL refusals. In S. D. Krashen, R. Scarcella and E. Andersen. (eds.). On the development of communicative competence in a second language. (pp.55-73). Cambridge, MA: Newbury House. Belz, J. A. and Kinginger, C. (2003). Discourse Options and the Development of Pragmatic Competence by Classroom Learners of German: The Case of Address 85

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