厚 生 労 働 科 学 研 究 費 補 助 金 ( 免 疫 アレルギー 疾 患 等 予 防 治 療 研 究 事 業 ) 総 括 研 究 報 告 書 関 節 リウマチ 上 肢 人 工 関 節 開 発 に 関 する 研 究 主 任 研 究 者 三 浪 明 男 北 海 道 大 学 大 学 院 医 学 研 究 科 教 授 研 究 要 旨 : 関 節 リウマチ(RA)は 全 身 の 関 節 が 罹 患 する 下 肢 関 節 特 に 高 度 に 罹 患 し た 股 関 節 と 膝 関 節 においては 耐 久 性 に 優 れた 人 工 関 節 が 開 発 されつつあり 良 好 な 治 療 成 績 が 報 告 されている 一 方 肩 関 節 肘 関 節 手 関 節 などの 上 肢 関 節 がRAにより 高 度 に 破 壊 された 場 合 には 切 除 関 節 形 成 術 を 含 む 滑 膜 切 除 術 手 関 節 固 定 術 などの 従 来 の 上 肢 機 能 再 建 術 では 十 分 な 機 能 回 復 が 期 待 できない 最 近 上 肢 関 節 に 対 しても 人 工 関 節 置 換 術 が 施 行 されることが 多 くはなってきているが 耐 久 性 という 点 で 下 肢 人 工 関 節 に 比 べると 多 くの 問 題 点 を 包 含 しており 日 本 人 にフィットした 上 肢 人 工 関 節 の 開 発 が 急 務 であり そ れによってRA 患 者 の ADL および QOL の 向 上 が 図 られ 介 護 を 必 要 とする 割 合 が 低 下 お よび 健 康 寿 命 が 延 伸 することが 期 待 される 今 年 度 の 開 発 研 究 においては1 三 次 元 有 限 要 素 法 を 用 いた 人 工 肩 関 節 の 開 発 2 非 RA 患 者 RA 患 者 および 人 工 肘 関 節 置 換 術 後 患 者 における 運 動 解 析 3 非 拘 束 型 人 工 肘 関 節 の 生 体 内 三 次 元 動 態 解 析 4 人 工 手 関 節 開 発 の ための 成 人 正 常 手 関 節 を 用 いた 三 次 元 運 動 解 析 5dart throw motion をもたらす 人 工 手 関 節 の 開 発 研 究 6HDP( 骨 セメント)およびメタル 製 ステム 表 面 と 骨 に 対 して 生 物 学 的 活 性 ( 結 合 能 誘 導 能 骨 形 成 能 )を 持 つ 分 子 の 化 学 糖 鎖 工 学 的 手 法 を 用 いた 導 入 実 験 を 実 施 した 分 担 研 究 者 加 藤 博 之 信 州 大 学 医 学 部 教 授 砂 川 融 広 島 大 学 大 学 院 保 健 学 研 究 科 教 授 村 瀬 剛 大 阪 大 学 大 学 院 医 学 研 究 科 助 教 岩 崎 倫 政 北 海 道 大 学 病 院 講 師 研 究 協 力 者 馬 場 久 敏 福 井 大 学 医 学 部 教 授 但 野 茂 北 海 道 大 学 大 学 院 工 学 研 究 科 教 授 齋 藤 直 人 信 州 大 学 医 学 部 保 健 学 科 教 授 関 敦 仁 国 立 成 育 医 療 センター 医 長 村 上 成 道 信 州 大 学 医 学 部 講 師 彌 山 峰 史 福 井 大 学 医 学 部 助 教
石 川 淳 一 山 の 手 通 八 木 病 院 院 長 正 富 隆 行 岡 病 院 手 の 外 科 センター 長 益 子 竜 弥 北 海 道 大 学 病 院 助 教 大 泉 尚 美 北 海 道 大 学 病 院 平 田 裕 子 ナカシマプロペラ 株 式 会 社 A. 研 究 目 的 関 節 リウマチ(RA) 患 者 の RA 病 期 が 進 行 した 時 に 骨 軟 骨 靭 帯 腱 など 全 て に 広 範 な 変 性 破 壊 および 他 の 疾 患 に 見 ら れない 重 度 の 機 能 障 害 に 陥 る 下 肢 機 能 は 移 動 するために 必 須 な 機 能 であるのに 対 し て 上 肢 機 能 は 食 事 動 作 整 容 動 作 トイ レッティング 動 作 など 人 間 として 最 低 限 に 保 持 すべき 尊 厳 に 関 わる 重 要 な 機 能 であり 上 肢 に 対 する 機 能 再 建 は 生 活 の 質 (Quolity of life=qol)を 高 める 医 療 として 最 優 先 に 推 進 されるべきものであると 考 える RA 患 者 に 対 する 上 肢 機 能 再 建 手 術 治 療 は 長 年 行 われてきているが 関 節 としての 要 素 ( 無 痛 性 可 動 性 安 定 性 整 合 性 耐 久 性 )を 全 て 保 ったままの 関 節 機 能 再 建 は 困 難 でこれらの 要 素 のいずれかを 犠 牲 に せざる 得 ないのが 現 状 である その 意 味 で これらの 関 節 の 重 要 な 要 素 のうち 耐 久 性 以 外 のほぼ 全 てを 満 たしている 適 切 な 人 工 関 節 開 発 の 必 要 性 が 求 められている 膝 関 節 や 股 関 節 などの 下 肢 関 節 に 対 する 人 工 関 節 はほぼ 完 成 の 域 に 達 し ほぼ 半 永 久 的 な 人 工 関 節 が 完 成 しつつある しかしながら 上 肢 人 工 関 節 の 場 合 肩 関 節 では 牽 引 力 も 加 わる 力 を 腱 板 などで 支 える 形 肘 関 節 は 牽 引 力 も 加 わる 蝶 番 運 動 を 側 副 靭 帯 で 支 え る 形 など 手 関 節 では 捻 りも 加 わる 蝶 番 関 節 を 側 副 靭 帯 で 支 える 形 など 上 肢 人 工 関 節 の 基 本 構 造 は 下 肢 のものと 比 べて 根 本 的 に 異 なるものである RA により 破 壊 された 上 肢 関 節 の 各 関 節 の 自 然 経 過 例 の 解 明 上 肢 関 節 の 障 害 程 度 と ADL の 関 係 は 未 解 明 で また RA のよう に 免 疫 機 能 亢 進 の 状 態 ではどのような 人 工 関 節 材 料 の 材 質 が 適 当 かについても 未 解 明 の 状 態 である 加 えて 上 肢 関 節 のように 比 較 的 小 さな 関 節 では RA により 骨 が 脆 く 再 手 術 が 困 難 な 関 節 置 換 に 関 する 基 本 的 対 応 も 術 者 により 考 え 方 が 異 なり 未 解 明 な 要 因 が 極 めて 多 い 今 年 度 の 研 究 においては 肩 関 節 肘 関 節 手 関 節 に 対 する 人 工 関 節 の 開 発 を 行 った 肩 関 節 については 三 次 元 有 限 要 素 法 を 用 いて 開 発 肘 関 節 について は 動 態 解 析 を 行 った 手 関 節 については dart thrower motion を simulation した 新 たな 人 工 関 節 の 開 発 を 行 っている また ステム セメント 界 面 セメン ト 骨 界 面 のルーズニングが 人 工 関 節 置 換 術 の 長 期 成 績 に 影 響 することは 周 知 の 事 実 である 私 たちは 糖 鎖 工 学 的 手 法 を 用 いて ステム 表 面 あるいはセメントに 生 物 学 的 活 性 を 持 つ 糖 鎖 を 結 合 することにより 骨 セ メント ステム 間 の 機 械 的 結 合 ではなく 生 物 学 的 結 合 を 図 る 研 究 を 行 っている この 研 究 開 発 により 上 肢 関 節 に 強 い 機 能 障 害 を 有 する 多 くの RA 患 者 がより 非 侵 襲 的 で 安 定 した 成 績 を 望 むことができる 人 工 関 節 置 換 術 の 恩 恵 を 享 受 できるようにな り 介 護 を 必 要 とする 割 合 が 低 下 すること および 健 康 寿 命 が 延 伸 することが 期 待 され る
B. 研 究 方 法 1. 人 工 肩 関 節 ( 岩 崎 ) 過 去 に 我 々が 報 告 した 広 範 囲 断 裂 肩 に 人 工 肩 関 節 を 置 換 した 有 限 要 素 モデルを 用 い て 解 析 を 行 った 今 回 は a) 従 来 の 汎 用 コ ンポーネント( 材 質 ;UHMWPE) b) 新 コンポーネント type 1 c) 新 コンポーネン ト type 2(type 2 よりフード 部 分 が 短 く 厚 い 形 状 )の3つのモデルを 作 成 し 応 力 解 析 を 行 った 肩 甲 関 節 窩 コンポーネントと 骨 の 間 には 骨 セメント 層 を 挿 入 し 荷 重 条 件 としては 数 値 解 析 モデル(Oizumi, et al. J Shoulder Elbow Surg, 2006)により 求 め た 三 角 筋 の 前 部 中 部 後 部 線 維 と 肩 甲 下 筋 小 円 筋 の 計 5 つの 筋 力 値 を 各 筋 の 停 止 点 に 負 荷 した コンポーネントとセメント 層 における von Mises 相 当 応 力 を 比 較 検 討 した 2. 人 工 肘 関 節 A. 非 拘 束 型 人 工 肘 関 節 の 生 体 内 三 次 元 動 態 解 析 ( 村 瀬 ) 1998 年 10 月 から 2006 年 9 月 までに 大 阪 大 学 式 人 工 肘 関 節 置 換 術 を 施 行 した 関 節 リ ウマチ 12 症 例 14 肘 を 対 象 とした 本 人 工 肘 関 節 は 非 拘 束 型 で 橈 骨 頭 は 全 例 切 除 非 置 換 である 手 術 時 平 均 年 齢 は 57.8 歳 術 後 追 跡 期 間 は 49.2 ヶ 月 であった X 線 透 視 装 置 を 用 いて 肘 関 節 屈 曲 動 作 側 面 像 を 連 続 的 に 撮 影 した 肘 屈 伸 X 線 透 視 動 態 画 像 か らコンピューター 上 で 人 工 関 節 の 輪 郭 抽 出 を 行 い CAD データとの 形 状 マッチングす る 2D/3D レジストレーション 法 を 用 いて インプラントの 連 続 的 空 間 位 置 姿 勢 を 計 算 した そして 上 腕 骨 および 尺 骨 コンポー ネントの 位 置 を 6 自 由 度 座 標 軸 上 に 表 現 す ることで 人 工 肘 関 節 の 生 体 内 での 3 次 元 運 動 を 可 視 化 した さらに 屈 曲 動 作 中 の コンポーネント 間 の 屈 曲 / 伸 展 内 反 / 外 反 内 旋 / 外 旋 角 の 推 移 に 関 して 定 量 的 に 解 析 した 本 システムの 位 置 計 測 の 精 度 は 回 転 角 1.2 未 満 偏 位 0.2mm 未 満 である B. 関 節 リウマチ 肘 の 運 動 解 析 ( 加 藤 ) 非 RA 女 性 右 肘 14 肘 ( 年 齢 50~74 歳 )を 対 照 群 とした RA 群 は 13 肘 で 年 齢 は 55~ 75 歳 で Larsen 分 類 は GradeⅣであった 人 工 肘 関 節 (TEA) 群 は 5 肘 (60 69 歳 )で あった. 被 検 者 を 背 もたれ 付 き 椅 子 に 座 ら せ 測 定 上 肢 の 上 腕 を 下 垂 し 回 旋 中 間 位 で 体 幹 に 固 定 し 前 腕 回 内 外 中 間 位 で 肘 関 節 を 自 動 的 屈 曲 伸 展 運 動 させた.Biiceps brachii ( 以 下 BB) Brachioradialis( 以 下 BR) Triceps medial head( 以 下 TM) Triceps lateral head( 以 下 TL)の 表 面 筋 電 図 と 3 軸 加 速 度 計 AC101 のアナログ 信 号 を 導 出 し た 表 面 筋 電 信 号 の 解 析 は 各 筋 の 等 尺 性 最 大 随 意 収 縮 時 の 筋 放 電 積 分 値 に 対 する 屈 曲 運 動 時 の 積 分 値 の 比 である%I-EMG を 指 標 とした 3 軸 加 速 度 計 の Y 軸 の 波 形 すな わち 肘 内 反 方 向 および 外 反 方 向 の 波 形 の 解 析 は 基 線 に 対 する+ 方 向 と- 方 向 の 面 積 積 分 値 の 合 計 を 算 出 した 3. 人 工 手 関 節 A. 成 人 正 常 手 関 節 を 用 いた 三 次 元 運 動 計 測 ( 砂 川 ) 健 常 成 人 男 性 7 名 の 右 手 関 節 を 対 象 とし た 直 径 3cm の 棒 を 握 った 状 態 で dart-throw 運 動 を 模 倣 して 手 関 節 最 大 橈 背 屈 位 と 最 大 掌 尺 屈 位 の 2 肢 位 で 前 腕 末 梢 から 指 尖 部 まで CT 撮 影 (slice 厚 1.25mm,pitch 0.63mm)を 行 い, 骨 データ を 取 得 した 得 られた 骨 データのスライス 画 像 ( 各 例 約 80 枚 )をパーソナルコンピュ
ータ 上 で 市 販 のソフトウエア(Image-J, Adobe Photoshop)を 使 用 して 各 々の 骨 デー タを 手 動 で 分 離 し,MATLAB 上 で 開 発 したオ リジナルソフトウエア 上 で 三 次 元 骨 表 面 モ デルを 自 動 的 に 作 成 した 次 に 同 様 に 作 成 したソフトウエア 上 で 2 肢 位 の 橈 骨, 尺 骨 を 重 ね 合 わせ, 橈 骨 の 骨 軸 を Z 軸, 橈 骨 末 梢 の 尺 骨 切 痕 掌 背 側 縁 を 通 り Z 軸 と 垂 直 な 線 を Y 軸,Y,Z 両 軸 に 垂 直 な 線 を X 軸 とし て 三 次 元 座 標 を 構 築 した 後 に, 各 々の 手 根 骨 が 重 なり 合 うために 3 軸 周 りで 必 要 とな る 回 転 角 度 を 計 測 した 手 根 骨 を 重 ね 合 わ せる 際 には,まず 各 々の 手 根 骨 を 剛 体 と 考 えて 自 動 計 測 した 重 心 を 運 動 前 後 で 座 標 上 で 移 動 させ 重 ね 合 わせた 後 に,Eular 角 を 求 める 原 理 で3 軸 周 りの 回 転 角 度 を 自 動 的 に 計 測 した.つまり 計 測 した 回 転 角 度 は, 各 々の 骨 の 重 心 を 中 心 とした 回 転 角 度 であ る また,X 軸 周 りでは 掌 屈 方 向 を+,Y 軸 周 りでは 尺 屈 方 向 を+,Z 軸 周 りでは 回 外 方 向 を+として 表 示 した B. 新 しい 人 工 手 関 節 の 開 発 ( 三 浪 ) 我 々がデザインした 新 しい 人 工 手 関 節 は 前 回 報 告 したように 生 体 関 節 形 状 に 近 づけ るため 表 面 置 換 半 拘 束 である 関 節 面 の 形 状 は 舟 状 骨 と 月 状 骨 およびそれらに 対 応 す る 橈 骨 関 節 面 との 摺 動 面 を 有 する 生 理 的 な 手 関 節 運 動 である 投 げ 矢 面 (dart thrower plane)での 掌 背 屈 運 動 をもたらす ため 関 節 面 は 橈 骨 ステム 軸 に 対 して axial plane で 10 度 の 回 旋 をつけた コンポーネ ントは 橈 骨 手 根 骨 ステム 骨 頭 の 3 parts よりなり 手 根 骨 側 は 第 3 中 手 骨 基 部 まで 届 くステムを 有 し 橈 骨 側 は 橈 骨 骨 髄 にタ イトにフィットさせるためのステム 形 状 を 持 つ 高 頻 度 に 発 生 する 手 根 骨 側 のゆるみ に 対 応 するため 第 2 第 4 中 手 骨 へスクリ ューによる 手 根 骨 ステムの 強 固 な 固 定 を 可 能 にした 2 つの 半 楕 円 形 摺 動 面 をもつ 初 回 モデル( 半 楕 円 形 摺 動 面 )での X 線 検 討 では 橈 尺 屈 位 で 関 節 面 に 不 適 合 性 が 生 じた ため 新 たに 摺 動 面 形 状 を 卵 円 形 とした 月 状 骨 側 ( 尺 側 )の 曲 率 を 舟 状 骨 側 より 小 さくすることで ある 程 度 の 回 旋 運 動 が 許 容 される さらに 卵 円 形 摺 動 面 として 橈 尺 屈 にあそびを 有 する( 橈 屈 5 度 尺 屈 25 度 ) もの( 橈 尺 屈 半 拘 束 型 )と 橈 尺 屈 を 完 全 に 拘 束 したもの( 完 全 拘 束 型 )の2つを 作 成 した 屍 体 上 肢 ( 解 剖 用 1 体 新 鮮 凍 結 1 体 )を 肘 関 節 近 位 で 切 断 し 肘 関 節 90 度 屈 曲 位 回 内 外 中 間 位 で 固 定 板 に K 鋼 線 で 固 定 した 第 3 中 手 骨 骨 幹 部 に 刺 入 した 木 棒 2 本 を 通 して 磁 場 センサーを 固 定 した 橈 側 尺 側 手 根 伸 筋 腱 橈 側 尺 側 手 根 屈 筋 腱 の4つに 重 錘 をつけ 手 関 節 掌 背 屈 運 動 を 再 現 した 解 析 方 法 として 手 関 節 橈 尺 方 向 を X 軸 掌 背 方 向 を Y 軸 近 位 遠 位 方 向 を Z 軸 として3 次 元 座 標 を 決 定 し 全 体 と しての 手 関 節 の 運 動 方 向 回 転 角 度 を 測 定 した 人 工 手 関 節 挿 入 前 と 先 の 摺 動 面 の 形 状 相 違 による3つの 人 工 関 節 ( 半 楕 円 形 卵 円 形 [ 橈 尺 屈 半 拘 束 完 全 拘 束 型 ]) 挿 入 後 で 比 較 検 討 した 界 面 ( 骨 セメント 間 およびセメント ステム 間 )でルーズニングが 発 生 すること より セメントおよびメタル 製 ステム 表 面 に 骨 に 対 し 生 物 学 的 活 性 ( 結 合 能 誘 導 能 骨 形 成 能 )を 持 つ 分 子 を 化 学 糖 鎖 工 学 的 手 法 を 用 いて 導 入 する 研 究 を 行 っている ( 岩 崎 ) ( 倫 理 面 への 配 慮 ) 本 研 究 は 当 初 は 開 発 研 究 であるために 動 物 実 験 において 組 織 を 回 収 する 際 には 深 麻 酔 により 安 楽 死 させ 苦 痛 を 全 く 与 えな
いようにして 行 う 正 常 人 あるいは 各 関 節 に 障 害 の 持 たない 別 の 理 由 で 受 診 した 患 者 の 上 肢 各 関 節 の X 線 写 真 などを 用 いての 研 究 であるため 使 用 の 許 可 については 同 意 を 得 るなどの 倫 理 面 の 配 慮 を 行 う 上 肢 人 工 関 節 が 試 作 され 患 者 に 応 用 されるとい うことになると 臨 床 研 究 となり 通 常 の 治 験 以 上 にインフォームドコンセントや 倫 理 面 には 最 大 限 の 配 慮 を 行 う 当 該 事 項 に 関 しては 文 部 科 学 省 平 成 10 年 10 月 3 日 付 け 15 国 文 科 研 振 第 15 号 通 知 を 厳 守 して 研 究 を 遂 行 すると 考 える また それぞれの 大 学 あるいは 研 究 機 関 での 倫 理 委 員 会 の 承 認 を 得 た 上 で 研 究 を 開 始 する C. 研 究 結 果 1. 人 工 肩 関 節 セメント 層 の 最 大 応 力 は モデル a) 5.60 MPa に 対 してモデル b) 3.56 MPa c) 3.89 MPa と 減 少 し セメント 層 上 部 への 応 力 集 中 は 消 失 していた コンポーネントの 最 大 応 力 は モデル a) 1.78MPa に 対 してモデル b) 3.91 MPa c) 3.13 MPa とフード 基 部 で 増 加 しており 上 方 偏 位 する 上 腕 骨 頭 によ る 応 力 を 同 部 で 受 けているためと 考 えられ た フード 部 分 がより 短 く 厚 い type 2でそ の 応 力 は 少 なかった 常 に 大 きく 50 度 の 外 反 40 度 の 外 旋 を 示 す 症 例 もみられた 一 方 屈 曲 動 作 中 の 内 外 反 回 旋 角 の 偏 移 量 は 比 較 的 小 さかった 内 外 反 角 内 外 旋 角 が 中 間 位 に 近 い 状 態 で 屈 曲 している 症 例 では 上 腕 骨 コンポーネン トとポリエチレンインサートの 接 触 領 域 は 広 く 保 たれているが 外 反 が 強 く 外 旋 角 も 大 きい 症 例 ではポリエチレンインサートの 接 触 領 域 は 狭 くなり いわゆる 線 接 触 が 生 じていた B. 関 節 リウマチ 肘 の 運 動 解 析 表 面 筋 電 図. 肘 屈 曲 運 動 と 肘 伸 展 運 動 に おいて 全 ての 筋 において RA 群 が 健 常 肘 群 よりも 有 意 に 高 い 値 を 示 した(BB p=0.029 BR p=0.000 TM p=0.004 TL p=0.000)( 図 1,2) 図 1 屈 曲 運 動 %I-EMG 2. 人 工 肘 関 節 A. 非 拘 束 型 人 工 肘 関 節 の 生 体 内 三 次 元 動 態 対 象 症 例 のコンポーネント 間 屈 伸 可 動 域 の 屈 曲 / 伸 展 は 131.6 /-33.6 で 屈 曲 角 度 はどの 症 例 もほぼ 最 大 屈 曲 位 が 得 られ ていた 一 方 伸 展 角 度 に 関 しては 症 例 に より 偏 りがみられた またコンポーネント 間 の 回 旋 内 外 反 も 症 例 によって 偏 りが 非 図 2 伸 展 運 動 時 %I-EMG 一 方 対 照 群 と TEA 施 行 群 との%I-EMG を 各 筋 間 で 比 較 すると BR 以 外 の 筋 は 有 意 な 差 はなかった 即 ち TEA 後 に 肘 周 囲 筋 の 運 動 時 の 活 動 は 健 常 に 近 くなる 事 実 が 示 さ れた. 内 反 外 反 方 向 の 加 速 度 分 析 の 結 果 では RA 群 で 波 形 の 内 反 外 反 方 向 への 山
の 大 きさが 対 照 群 に 比 較 して 大 きい 傾 向 が 示 された( 図 3). 加 速 度 波 形 の 内 反 外 反 方 向 の 大 きさを 定 量 するために 面 積 積 分 値 を 両 群 間 で 比 較 してみると RA 群 では 対 照 群 に 比 べて 高 い 傾 向 がみられたが 有 意 差 はなかった 図 3 肘 内 反 外 反 方 向 の 加 速 度 3. 人 工 手 関 節 A. 成 人 正 常 手 関 節 を 用 いた 三 次 元 運 動 計 測 Dart-throw 運 動 での 有 頭 骨 の 回 転 角 度 は X, Y, Z 軸 周 りに 各 々 38.1 ± 10.0, 37.0 ±12.5, -0.4 ± 4.2, 舟 状 骨 の 回 転 角 度 は 各 々19.0 ±7.0, 21.9 ±14.1, 22.0 ±14.2, 月 状 骨 の 回 転 角 度 は 各 々 21.7 ±15.3, 9.3 ±9.2, 1.7 ±6.1 であった B. 新 しい 人 工 手 関 節 の 開 発 掌 背 屈 運 動 方 向 を XY 平 面 での X 軸 からの 角 度 で 表 すと(-90, 90 度 は Y 軸 に 一 致 する 背 掌 屈 運 動 を 意 味 する) 背 屈 は 置 換 前 ;-70.1 度 半 楕 円 形 ;-59.5 度 卵 円 形 ( 半 拘 束 );-70.5 度 卵 円 形 ( 拘 束 ); -65.8 度 であった 一 方 掌 屈 は 置 換 前 ;102.3 度 半 楕 円 形 ;96.0 度 卵 円 形 ( 半 拘 束 );104 度 卵 円 形 ( 拘 束 ); 112.2 度 であった いずれも dart thrower 面 での 運 動 で あったが 卵 円 形 ( 半 拘 束 型 )で 最 も 置 換 前 と 近 似 していた 背 屈 回 転 角 度 はそれぞれ 置 換 前 ;50 度 半 楕 円 形 ;44 度 卵 円 形 ( 半 拘 束 ); 52 度 卵 円 形 ( 拘 束 ); 48 度 掌 屈 回 転 角 度 は 置 換 前 ;73 度 半 楕 円 形 ;63 度 卵 円 形 ( 半 拘 束 );57 度 卵 円 形 ( 拘 束 ); 48 度 であった 掌 屈 角 度 は 置 換 後 で 低 下 したが 背 屈 角 度 は 維 持 されていた 回 内 外 運 動 すなわち Z 軸 周 囲 の 回 転 は 置 換 前 ;36 度 半 楕 円 形 ;49 度 卵 円 形 ( 半 拘 束 );3.0 度 卵 円 形 ( 拘 束 ); 3.5 度 であった 半 楕 円 形 では 過 大 な 回 旋 運 動 が おこっていること また 逆 に 卵 円 形 では 回 旋 運 動 は 少 なく 安 定 した dart thrower motion が 得 られていると 考 えられた 化 学 糖 鎖 工 学 的 手 法 を 用 いた 生 物 活 性 を 有 する 分 子 の 導 入 方 法 については 理 論 的 には 実 証 済 みなので ターゲットとなる 分 子 選 択 とステム 表 面 への 実 際 への 導 入 さ らに 動 物 体 内 (ウサギ ラット)での 活 性 の 維 持 などに 関 する 成 果 が 得 られており 最 終 的 にはステム- 骨 間 の 骨 形 成 の 促 進 と それに 伴 う 結 合 能 の 向 上 を 動 物 体 内 で 実 証 する D. 考 察 および E. 結 論 1. 人 工 肩 関 節 フード 付 き 新 コンポーネントはフード 部 分 で 上 腕 骨 頭 の 上 方 偏 位 を 抑 制 して 骨 頭 を 安 定 化 させることができ その 結 果 として セメント 層 への 偏 った 応 力 分 布 を 改 善 する ことができた すなわち 従 来 のコンポー ネントと 比 べてコンポーネントのゆるみを 減 少 させる 可 能 性 が 示 された フード 部 分 にかかる 応 力 が 大 きすぎるとコンポーネン ト 自 体 の 磨 耗 破 損 も 危 惧 され またフー ドが 長 すぎると 肩 関 節 挙 上 時 に 上 腕 骨 大 結
節 部 と 衝 突 (インピンジ)して 可 動 域 制 限 を 生 じる 可 能 性 があるが 今 回 フード 形 状 を 改 良 することでそれらの 問 題 を 少 なくす ることができた 今 後 はさらなる 材 質 およ び 強 度 の 検 討 を 行 っていくと 同 時 に 糖 鎖 工 学 的 手 法 を 用 い 生 理 活 性 物 質 を 人 工 関 節 素 材 に 導 入 することによりゆるみを 減 少 させ 人 工 関 節 を 長 寿 命 化 する 実 験 を 施 行 する 予 定 である 2. 人 工 肘 関 節 A. 非 拘 束 型 人 工 肘 関 節 の 生 体 内 三 次 元 動 態 我 々が 独 自 に 開 発 した 生 体 内 3 次 元 人 工 関 節 動 態 解 析 法 は 従 来 機 種 の 動 態 を 客 観 的 定 量 的 に 評 価 することで 人 工 関 節 摺 動 面 形 状 の 改 良 に 極 めて 有 用 であると 考 えら れた 人 工 肘 関 節 置 換 術 後 に 応 用 した 結 果 では 屈 伸 可 動 域 に 関 しては 従 来 の 知 見 と 一 致 した 一 方 で 伸 展 可 動 域 は 症 例 による ばらつきが 大 きく -50 度 以 下 を 示 す 症 例 もみられた 日 常 生 活 動 作 の 制 限 を 回 避 す るには-30 度 以 上 の 伸 展 角 度 が 必 要 とさ れているが 本 研 究 では 半 数 の 9 肘 に-30 度 以 下 の 伸 展 制 限 認 めた また コンポー ネント 間 の 回 旋 内 外 反 偏 位 は 肘 の 肢 位 に よって 変 化 し 症 例 によって 大 きく 異 なっ た 過 度 の 回 旋 内 外 反 偏 位 を 示 す 症 例 で は 摺 動 面 の 限 られた 部 分 に 過 重 が 集 中 す る 傾 向 が 見 られた これは ポリエチレン インサートの 摩 耗 の 要 因 となり 早 期 のイ ンプラントゆるみを 引 き 起 こす 可 能 性 があ る 原 因 としては インプラント 設 置 不 良 不 均 一 な 軟 部 組 織 バランス 術 前 から 存 在 する 変 形 インプラントデザインなどが 考 えられた 今 後 術 前 後 の CT から 3 次 元 でのインプラント 設 置 角 位 置 骨 アライ メントを 解 析 すること および 異 なるイン プラントデザイン 術 式 間 での 生 体 内 3 次 元 動 態 の 違 いを 検 討 することが 必 要 である 現 行 の 非 拘 束 型 人 工 肘 関 節 ではコンポーネ ントの 回 旋 内 外 反 偏 位 は 症 例 間 で 大 きく 異 なり 新 しい 人 工 肘 関 節 の 摺 動 面 デザイ ンを 考 えるにあたり 考 慮 すべき 問 題 である B. 関 節 リウマチ 肘 の 運 動 解 析 %I-EMG について RA 群 が 対 照 群 よりも 高 値 を 示 したことは(1) 痛 みのため 最 大 随 意 収 縮 が 行 いにくい (2) 廃 用 性 萎 縮 により 筋 量 が 減 少 した (3) 破 壊 された 肘 の 安 定 化 のために 肘 関 節 周 囲 筋 群 が 過 剰 に 収 縮 した などの 可 能 性 が 考 えられる また TEA 後 に 筋 放 電 量 の 傾 向 が 対 照 群 に 近 くなること は 肘 の 運 動 時 の 努 力 量 が 軽 減 されたこと を 示 唆 している 内 反 外 反 方 向 の 加 速 度 波 形 について 加 速 度 面 積 積 分 値 周 波 数 解 析 では 有 意 な 差 は 得 られなかったが 対 照 群 に 比 べて RA 肘 では 加 速 度 の 内 反 外 反 方 向 へのばらつきが 大 きい 傾 向 がみられた 3. 人 工 手 関 節 A. 成 人 正 常 手 関 節 を 用 いた 三 次 元 運 動 計 測 本 計 測 結 果 から dart-throw 運 動 で, 有 頭 骨 と 月 状 骨 では Z 軸 周 りの 回 転 はほと んど 認 めず,この 両 骨 は 二 次 元 平 面 上 をほ ぼ on plane の 動 きをするのに 対 し, 舟 状 骨 は Z 軸 周 りの 著 明 な 回 転 を 認 め 二 次 元 平 面 から 外 れた out of plane の 動 きをすること が 判 明 した この 結 果 は 従 来 の 研 究 で 報 告 されている 単 純 な 掌 背 屈 運 動 と 同 様 に, 手 関 節 の dart-throw 運 動 においても 舟 状 骨 が key bone であることを 示 唆 するもの である 手 関 節 は 手 根 中 央 関 節, 橈 骨 手 根 関 節 の2 関 節 を 有 し, 掌 背 屈 橈 尺 屈 さら に 回 内 外 の 複 雑 を 運 動 様 式 であるため1 関 節 の 人 工 関 節 で 置 換 することの 困 難 さが dart-throw 運 動 でも 存 在 することが
判 明 した 正 常 な 関 節 運 動 を 1 関 節 で 得 るためには out of plane の 動 きを 許 容 した 非 拘 束 型 の デザインが 必 要 となるが,それでは 関 節 面 の 不 適 合 性 が 大 きく, 破 損 ゆるみの 原 因 になると 考 えられ, 橈 側 では 可 動 性 があり かつ 尺 側 では 安 定 性 を 得 られるような 摺 動 面 を 有 する 半 拘 束 型 の 人 工 関 節 をデザイン する 必 要 性 があると 考 えられた B. 新 しい 人 工 手 関 節 の 開 発 手 関 節 は 手 根 中 央 関 節 橈 骨 手 根 関 節 の 2 関 節 を 有 し 掌 背 屈 橈 尺 屈 さらに 回 内 外 の 複 雑 な 運 動 様 式 であるため1 関 節 の 人 工 関 節 で 置 換 することの 困 難 がある 今 回 いずれの 人 工 手 関 節 でも dart thrower motion が 再 現 されていた 楕 円 形 の 摺 動 面 では 橈 尺 屈 回 旋 方 向 への 制 動 が 少 なく 関 節 面 の 不 適 合 性 が 大 きく 破 損 ゆるみの 原 因 になると 思 われた 卵 円 形 ( 半 拘 束 型 ) では 置 換 前 と 近 似 した dart thrower motion が 得 れらており 最 も 理 想 的 な 摺 動 面 であ ると 考 えられた F. 健 康 危 険 情 報 なし G. 研 究 発 表 分 担 研 究 報 告 書 に 個 々に 記 載 H. 知 的 財 産 権 の 出 願 登 録 状 況 分 担 研 究 報 告 書 に 個 々に 記 載