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預 金 を 確 保 しつつ 資 金 調 達 手 段 も 確 保 する 収 益 性 を 示 す 指 標 として 営 業 利 益 率 を 採 用 し 営 業 利 益 率 の 目 安 となる 数 値 を 公 表 する 株 主 の 皆 様 への 還 元 については 持 続 的 な 成 長 による 配 当 可

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2 役 員 の 報 酬 等 の 支 給 状 況 平 成 27 年 度 年 間 報 酬 等 の 総 額 就 任 退 任 の 状 況 役 名 報 酬 ( 給 与 ) 賞 与 その 他 ( 内 容 ) 就 任 退 任 2,142 ( 地 域 手 当 ) 17,205 11,580 3,311 4 月 1

2 役 員 の 報 酬 等 の 支 給 状 況 役 名 法 人 の 長 理 事 理 事 ( 非 常 勤 ) 平 成 25 年 度 年 間 報 酬 等 の 総 額 就 任 退 任 の 状 況 報 酬 ( 給 与 ) 賞 与 その 他 ( 内 容 ) 就 任 退 任 16,936 10,654 4,36

(5) 給 与 制 度 の 総 合 的 見 直 しの 実 施 状 況 について 概 要 の 給 与 制 度 の 総 合 的 見 直 しにおいては 俸 給 表 の 水 準 の 平 均 2の 引 き 下 げ 及 び 地 域 手 当 の 支 給 割 合 の 見 直 し 等 に 取 り 組 むとされている

18 国立高等専門学校機構

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1. 前 払 式 支 払 手 段 サーバ 型 の 前 払 式 支 払 手 段 に 関 する 利 用 者 保 護 等 発 行 者 があらかじめ 利 用 者 から 資 金 を 受 け 取 り 財 サービスを 受 ける 際 の 支 払 手 段 として 前 払 式 支 払 手 段 が 発 行 される 場 合

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ほかに パート 従 業 員 らの 厚 生 年 金 加 入 の 拡 大 を 促 す 従 業 員 五 百 人 以 下 の 企 業 を 対 象 に 労 使 が 合 意 すれば 今 年 十 月 から 短 時 間 で 働 く 人 も 加 入 できる 対 象 は 約 五 十 万 人 五 百 人 超 の 企 業

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(4) 武 力 攻 撃 原 子 力 災 害 合 同 対 策 協 議 会 との 連 携 1 市 は 国 の 現 地 対 策 本 部 長 が 運 営 する 武 力 攻 撃 原 子 力 災 害 合 同 対 策 協 議 会 に 職 員 を 派 遣 するなど 同 協 議 会 と 必 要 な 連 携 を 図 る

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示 とする 原 処 分 を 行 ったところ 異 議 申 立 てが 提 起 されたものである なお, 本 件 対 象 文 書 の 一 部 開 示 決 定 に 係 る 審 査 会 への 諮 問 は2 度 目 であ り, 前 回 の 一 部 開 示 決 定 について,その 決 定 は 妥 当 である 旨

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就 学 前 教 育 保 育 の 実 施 状 況 ( 平 成 23 年 度 ) 3 歳 以 上 児 の 多 く(4 歳 以 上 児 はほとんど)が 保 育 所 又 は 幼 稚 園 に 入 所 3 歳 未 満 児 (0~2 歳 児 )で 保 育 所 に 入 所 している 割 合 は 約 2 割 就 学

代 議 員 会 決 議 内 容 についてお 知 らせします さる3 月 4 日 当 基 金 の 代 議 員 会 を 開 催 し 次 の 議 案 が 審 議 され 可 決 承 認 されました 第 1 号 議 案 : 財 政 再 計 算 について ( 概 要 ) 確 定 給 付 企 業 年 金 法 第

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その 他 事 業 推 進 体 制 平 成 20 年 3 月 26 日 に 石 垣 島 国 営 土 地 改 良 事 業 推 進 協 議 会 を 設 立 し 事 業 を 推 進 ( 構 成 : 石 垣 市 石 垣 市 議 会 石 垣 島 土 地 改 良 区 石 垣 市 農 業 委 員 会 沖 縄 県 農

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福 山 市 では, 福 山 市 民 の 安 全 に 関 する 条 例 ( 平 成 10 年 条 例 第 12 号 )に 基 づき, 安 全 で 住 みよい 地 域 社 会 の 形 成 を 推 進 しています また, 各 地 域 では, 防 犯 を 始 め 様 々な 安 心 安 全 活 動 に 熱 心


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2 役 員 の 報 酬 等 の 支 給 状 況 平 成 27 年 度 年 間 報 酬 等 の 総 額 就 任 退 任 の 状 況 役 名 報 酬 ( 給 与 ) 賞 与 その 他 ( 内 容 ) 就 任 退 任 法 人 の 長 A 18,248 11,166 4, ,066 6,42

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1 総 合 設 計 一 定 規 模 以 上 の 敷 地 面 積 及 び 一 定 割 合 以 上 の 空 地 を 有 する 建 築 計 画 について 特 定 行 政 庁 の 許 可 により 容 積 率 斜 線 制 限 などの 制 限 を 緩 和 する 制 度 である 建 築 敷 地 の 共 同 化 や

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PHP Policy Review Vol.2-No.6 2008.2.29 官 邸 のインテリジェンス 機 能 は 強 化 されるか - 鍵 となる 官 邸 首 脳 のコミットメント- かねこ 金 子 まさふみ 将 史 PHP 総 合 研 究 所 主 任 研 究 員 PHP Policy Review Vol.2-No.6 2008.2.29 PHP 総 合 研 究 所 Talking Points 1. 日 本 のインテリジェンス 体 制 の 主 たる 課 題 は インテリジェンス コミュ ニティが 機 能 不 全 で 集 約 評 価 を 経 た ナショナル インテリジェンス が 存 在 しないことにある 2. 情 報 機 能 強 化 検 討 会 議 が 公 表 した 官 邸 における 情 報 機 能 の 強 化 の 方 針 では 上 記 の 課 題 にとりくむ 姿 勢 が 明 確 になっている 3. 官 邸 のインテリジェンス 機 能 強 化 を 成 功 させるには 官 邸 首 脳 のコミッ トメントが 不 可 欠 である PHP 総 合 研 究 所 102-0075 東 京 都 千 代 田 区 三 番 町 5-7 3F Tel:03-3239-6222 Fax:03-3239-6273 e-mail:think2@php.co.jp

1.はじめに 2008 年 2 月 14 日 町 村 官 房 長 官 を 議 長 と する 情 報 機 能 強 化 検 討 会 議 は 官 邸 のインテ リジェンス 機 能 の 強 化 策 官 邸 における 情 報 機 能 の 強 化 の 方 針 ( 以 下 方 針 ) を 公 表 し た 1 同 会 議 は 2006 年 12 月 に 設 置 された もので 昨 年 2007 年 2 月 末 には 中 間 報 告 として 官 邸 における 情 報 機 能 の 強 化 の 基 本 的 な 考 え 方 ( 以 下 考 え 方 ) をまとめてい る 2 当 初 の 予 定 では 最 終 報 告 は 半 年 後 の 2007 年 夏 ごろに 発 表 されることになってい たが 参 議 院 選 挙 後 流 動 化 した 政 局 を 反 映 し て 先 送 りになり 今 回 ようやく 発 表 されるこ とになった インテリジェンス 機 能 強 化 は 日 本 版 NSC 創 設 と 並 んで 安 倍 前 政 権 が 目 指 した 外 交 安 全 保 障 に 関 する 官 邸 強 化 の 両 輪 をなしてい た 福 田 内 閣 になり 日 本 版 NSCの 創 設 は 見 送 られたが インテリジェンス 機 能 強 化 につ いては 関 係 機 関 を 中 心 に 議 論 が 続 けられてい た 3 今 回 発 表 された 方 針 は 安 倍 政 権 下 の 考 え 方 の 方 向 性 を 大 きく 変 えるものでは なく 文 章 上 もかなりの 部 分 で 重 複 する 大 まかに 言 って 考 え 方 に 具 体 策 を 加 えたも のが 今 回 の 方 針 という 位 置 づけである その 意 味 で 安 倍 政 権 の 目 玉 政 策 に また 一 つ 幕 が 引 かれた(2008 年 2 月 15 日 毎 日 新 聞 ) という 評 価 は 当 を 得 たものとは 言 えない 1 http://www.kantei.go.jp/jp/singi/zyouhou/in dex.html 2 同 上 3 拙 稿 福 田 政 権 のインテリジェンス 戦 略 Voice 2008 年 3 月 号 すでに 他 所 でも 評 価 したように 考 え 方 は インテリジェンス コミュニティ( 日 本 では 情 報 コミュニティと 称 される)を 全 体 と して 取 りまとめ 最 高 決 定 機 関 である 官 邸 を 支 える 体 制 を 構 築 することに 主 眼 を 置 いてお り その 課 題 設 定 は 概 ね 妥 当 なものだった 4 だが 考 え 方 の 段 階 で 関 係 機 関 の 間 で 調 整 がつかなかった 人 的 情 報 収 集 などの 争 点 は 方 針 においても 決 着 をみたとは 言 えず また 個 々の 具 体 策 が 実 を 結 ぶかどうかは 今 後 の 運 用 次 第 の 部 分 が 大 きい 以 下 本 稿 では まず 日 本 のインテリジェ ンス 体 制 の 課 題 を 簡 単 にまとめた 後 方 針 がそうした 課 題 にどのような 処 方 箋 を 提 示 し たか 整 理 し 最 後 に 方 針 の 処 方 箋 につい て 評 価 を 加 えることにしたい 2. 日 本 のインテリジェンス 体 制 の 課 題 日 本 はインテリジェンスが 弱 いと 言 われて 久 しい 5 日 本 のインテリジェンス 体 制 の 何 が 問 題 かについては 9.11 テロ 以 降 次 々に 出 さ れた 日 本 のインテリジェンス 強 化 を 求 める 以 下 の 諸 提 言 を 参 照 するのが 便 利 である 自 民 党 情 報 収 集 等 検 討 チーム わが 国 の 情 報 能 力 等 の 強 化 に 関 する 提 言 (2002 年 ) 6 安 全 保 障 と 防 衛 協 力 に 関 する 懇 談 会 未 来 への 安 全 保 障 防 衛 力 ビジョン (2004 年 ) 7 4 拙 稿 同 盟 国 の 情 報 には 頼 れない Voice 2007 年 7 月 号 5 戦 後 日 本 のインテリジェンスについては 拙 稿 日 本 -コミュニティ 成 熟 への 長 い 道 の り 小 谷 賢 編 世 界 のインテリジェンス (PHP 研 究 所 2007 年 ) 第 3 章 6 田 村 重 信 丹 羽 文 生 政 治 と 危 機 管 理 ( 内 外 出 版 2006 年 ) 第 5 章 7 http://www.kantei.go.jp/jp/singi/ampobouei/ 2

対 外 情 報 機 能 強 化 に 関 する 懇 談 会 対 外 情 報 機 能 の 強 化 に 向 けて (2005 年 ) 8 PHP 日 本 のインテリジェンス 体 制 の 変 革 研 究 会 日 本 のインテリジェンス 体 制 - 変 革 へのロードマップ (2006 年 ) 9 自 民 党 政 務 調 査 会 国 家 の 情 報 機 能 強 化 に 関 する 検 討 チーム 国 家 の 情 報 機 能 強 化 に 関 する 提 言 (2006 年 ) 10 以 上 の 諸 提 言 が 指 摘 する 日 本 のインテリジ ェンス 体 制 の 課 題 は 下 記 のように 大 別 できる 第 一 に そもそも 政 策 サイドからの 情 報 要 求 に 問 題 があるとの 指 摘 である そもそも 国 益 認 識 や 国 家 戦 略 に 基 づく 情 報 要 求 がきちん と 出 されないために インテリジェンス サ イクルが 回 らない という 類 の 批 判 である ( 第 一 の 課 題 ) 第 二 に 日 本 の 情 報 組 織 は 十 分 な 情 報 を 収 集 していないとの 指 摘 である 収 集 される 情 報 の 種 類 に 応 じて 課 題 も 様 々であり 通 信 傍 受 情 報 に 関 してその 地 理 的 限 界 や 行 政 傍 受 の 不 在 が 画 像 情 報 については 情 報 収 集 衛 星 の 性 能 や 数 などが 指 摘 される 中 でも 最 も 顕 著 なのは エージェントなどを 用 いての 機 微 な 人 的 情 報 収 集 が 十 分 行 なわれていないという 批 判 である ( 第 二 の 課 題 ) 第 三 に 国 家 としての 意 思 決 定 を 行 なう 首 相 や 内 閣 に 集 約 評 価 を 経 たインテリジェ dai13/13gijisidai.html 8 http://www.mofa.go.jp/mofaj/press/release/ 17/rls_0913a.html 9 http://research.php.co.jp/research/foreign_p olicy/policy/post_14.php 10 http://www.jimin.jp/jimin/seisaku/2006/seis aku-016.html ンスが 上 がっていないとの 指 摘 である 言 い かえれば 個 別 の 省 庁 のニーズを 超 えたナシ ョナル インテリジェンスが 存 在 していない ということである 現 状 では 首 相 や 官 房 長 官 官 房 副 長 官 のもとに 各 省 庁 が 重 要 と 判 断 する 情 報 が 出 身 の 秘 書 官 などを 通 じて 個 別 に 上 げられているにすぎない ( 第 三 の 課 題 ) 第 四 に 官 邸 へのタテの 情 報 の 集 約 だけで なく 情 報 組 織 同 士 のヨコの 情 報 共 有 も 活 発 ではないとの 指 摘 である 各 情 報 組 織 は 影 響 力 や 予 算 などをめぐって 競 合 しており 自 らの 有 する 情 報 を 他 組 織 に 提 供 することに 積 極 的 ではない このため 情 報 が 共 有 されて いれば 気 づいたような 兆 候 を 見 落 とすことに なりがちである ( 第 四 の 課 題 ) 第 五 に 日 本 の 場 合 内 部 からの 情 報 漏 れ を 防 ぐ 情 報 保 全 体 制 が 十 分 ではなく 情 報 を 盗 んだり 操 作 したりという 外 部 からの 工 作 活 動 に 対 抗 する 防 諜 の 体 制 も 弱 いとの 指 摘 で ある 秘 密 保 護 への 懸 念 は 上 述 したような 情 報 組 織 間 での 情 報 共 有 が 滞 りがちな 理 由 の 一 つにもなっている ( 第 五 の 課 題 ) 第 六 に 政 府 の 情 報 活 動 を 監 視 する 体 制 が 十 分 でないとの 指 摘 である 日 本 政 府 のイン テリジェンス 活 動 が 市 民 の 自 由 や 権 利 に 抵 触 するもの 市 民 社 会 の 倫 理 観 と 整 合 しない ものにこれまで 以 上 に 踏 み 込 むのであれば 国 会 等 が 行 政 府 のインテリジェンス 活 動 の 行 き 過 ぎをチェックする 仕 組 みが 不 可 欠 になる ( 第 六 の 課 題 ) これらはそれぞれにもっともな 指 摘 である が 現 実 には どの 課 題 から 手 をつけるか 優 先 順 位 をつけなければならない 日 本 とい う 国 家 の 全 体 としての 利 益 を 効 率 よく 最 大 限 増 進 するという 観 点 に 立 てば 国 家 の 全 体 3

的 な 方 向 を 指 し 示 すべき 官 邸 が 政 府 内 にあ る 情 報 をつき 合 わせて 生 産 された 最 高 水 準 の インテリジェンスに 基 づいて 意 思 決 定 できる ようにすることが 何 よりも 肝 心 である その ためには 個 別 の 情 報 組 織 が 相 互 補 完 しつつ 高 度 なインテリジェンスを 生 産 する インテ リジェンス コミュニティ を 実 効 性 のある ものにしていくことが 必 要 である 11 筆 者 を 含 むPHP 日 本 のインテリジェンス 体 制 の 変 革 研 究 会 は 集 約 評 価 されたイ ンテリジェンスが 官 邸 に 届 いていないこと ( 第 三 の 課 題 ) 情 報 組 織 間 で 情 報 共 有 されな いこと( 第 四 の 課 題 ) 情 報 漏 洩 を 防 ぐ 体 制 が 弱 いこと( 第 五 の 課 題 ) の 三 点 が 実 効 性 の あるインテリジェンス コミュニティの 発 達 を 阻 む 三 つのボトルネックであり それらの 解 消 が 情 報 収 集 の 質 量 ( 第 二 の 課 題 )を 拡 大 することなどよりも 優 先 されるべきと 主 張 し た 12 なぜなら 人 的 情 報 収 集 などをてこ 入 れしてインフォメーションの 入 力 を 強 化 する ことは 届 かない 共 有 されない 漏 れてし まう というプロセス 面 での 不 具 合 が 改 善 さ れない 限 り 官 邸 の 意 思 決 定 の 根 拠 となるイ ンテリジェンスという 最 終 出 力 の 質 の 向 上 を もたらすものではないからである また 人 的 情 報 収 集 を 行 なう 情 報 機 関 の 創 設 の 政 治 的 ハードルは 高 く それにこだわりすぎると インテリジェンス コミュニティの 実 効 性 を 高 める 上 でより 重 要 な 他 の 改 革 を 遅 らせてし まうおそれがある 11 インテリジェンス コミュニティについて は 北 岡 元 インテリジェンス 入 門 ( 慶 應 大 学 出 版 会 2003 年 ) 第 3 部 12 PHP 提 言 の 概 要 は 拙 稿 日 本 のインテリ ジェンス 体 制 - 改 革 の 本 丸 へと 導 くPHP 総 合 研 究 所 の 政 策 提 言 PHP Policy Review Vol.1-No.2, 2007 年 10 月 政 策 サイドからの 情 報 要 求 が 曖 昧 であるた め 優 れたインテリジェンスが 生 産 されない ( 第 一 の 課 題 )という 指 摘 についても 一 見 も っともであるが 戦 略 とインテリジェンスは 表 裏 一 体 の 関 係 にあり どちらから 始 めなけ ればならないというものではない 十 分 根 拠 のあるインテリジェンスが 豊 富 に 手 元 に 届 い ていない 段 階 で 明 確 な 戦 略 に 基 づいた 情 報 要 求 ができないのは 仕 方 のないところでもあ る 国 会 等 による 政 府 の 情 報 活 動 の 監 視 ( 第 六 の 課 題 )は 機 微 な 情 報 収 集 活 動 や 法 律 による 秘 密 保 護 に 踏 み 込 む 以 前 の 段 階 ではそれほど 問 題 ではない 重 要 な 観 点 ではあるが 上 記 の 三 つのボトルネックの 解 消 に 焦 点 を 合 わせ る 限 り 喫 緊 の 課 題 とはいえない 以 上 をまとめれば 三 つのボトルネックを 解 消 し 自 民 党 外 交 力 強 化 に 関 する 特 命 委 員 会 の 提 言 がいうところの 回 って 上 がっ て 漏 れない 政 府 全 体 の 情 報 体 制 を 構 築 することがなによりも 重 要 ということになる 13 3. 官 邸 における 情 報 機 能 の 強 化 の 方 針 では 今 回 まとめられた 方 針 は 以 上 の ような 課 題 をいかに 克 服 しようとしているの だろうか 政 策 サイドからの 情 報 要 求 ( 第 一 の 課 題 ) に 関 しては 官 邸 の 政 策 部 門 と 情 報 部 門 を 分 離 した 上 で 両 者 を 有 機 的 に 連 接 する 必 要 が あるとしている( 方 針 2 の(1)の1) その ための 具 体 的 な 措 置 として 内 閣 情 報 会 議 の 13 自 民 党 外 交 力 強 化 に 関 する 特 命 委 員 会 外 交 力 強 化 へのアクション プラン 10 (2007 年 6 月 8 日 ) 4

現 行 メンバーに 内 閣 官 房 副 長 官 補 ( 内 政 外 政 安 危 )など 官 邸 の 政 策 部 門 と 拡 大 情 報 コミュニティ( 金 融 庁 財 務 省 経 産 省 海 保 )の 代 表 を 加 えるとしている( 方 針 2 の (1)の2) 14 内 閣 情 報 会 議 に 期 待 される 役 割 が 中 長 期 的 な 情 報 重 点 の 策 定 という 大 枠 での 機 能 である のに 対 し 政 策 部 門 と 情 報 部 門 の 日 常 的 な 接 点 は 内 閣 情 報 調 査 室 のトップでもある 内 閣 情 報 官 の 役 割 とされた( 方 針 2 の(1)の2) 内 閣 情 報 官 は 定 期 的 ブリーフィングの 機 会 の 場 を 通 じて 官 邸 首 脳 にオール ソース アナリシスの 結 果 を 提 供 すると 同 時 に 官 邸 首 脳 からの 情 報 要 求 を 受 ける 内 閣 情 報 官 に は そうした 官 邸 首 脳 とのやりとりを 情 報 コミュニティ 内 にフィードバックすることも 期 待 されている 収 集 機 能 の 強 化 ( 第 二 の 課 題 )では 注 目 された 対 外 人 的 情 報 収 集 機 能 について その 必 要 性 については 指 摘 されたものの 各 省 庁 の 取 り 組 みを 強 化 することや 専 門 家 を 育 成 す ること そして より 専 門 的 かつ 組 織 的 な 対 外 人 的 情 報 収 集 の 手 段 方 法 及 び 態 勢 の 在 り 方 についての 研 究 を 深 める とされるにとど まり 独 立 した 情 報 収 集 機 関 の 設 置 につなが るような 具 体 的 な 内 容 は 盛 り 込 まれなかった ( 方 針 2 の(2)の1) 考 え 方 の 段 階 で 内 調 と 外 務 省 の 激 しい 意 見 対 立 があった 点 で あるが 方 針 においても どこが 中 心 にな って 対 外 人 的 情 報 収 集 機 能 を 強 くしていくか 明 示 されることはなかった その 代 わり 方 針 には 考 え 方 には 14 内 閣 情 報 会 議 の 現 行 メンバーは 内 閣 官 房 長 官 が 議 長 内 閣 官 房 副 長 官 ( 政 務 事 務 ) 内 閣 危 機 管 理 監 内 閣 情 報 官 警 察 庁 長 官 防 衛 省 事 務 次 官 公 安 調 査 庁 長 官 外 務 省 事 務 次 官 年 二 回 開 催 されている なかった 内 閣 ( 情 報 収 集 衛 星 公 開 情 報 ) や 各 省 庁 ( 警 察 庁 公 安 調 査 庁 外 務 省 防 衛 省 )の 情 報 収 集 機 能 強 化 のポイントが 挙 げ られている 官 邸 における 情 報 集 約 評 価 ( 第 三 の 課 題 ) については 内 閣 情 報 会 議 の 下 に 置 かれてい る 局 長 級 の 合 同 情 報 会 議 等 で オール ソー ス アナリシスを 行 うものとされた( 方 針 2 の(3)の134) 15 具 体 的 には 内 閣 情 報 調 査 室 に 新 設 される 地 域 事 項 担 当 の 内 閣 情 報 分 析 官 が 連 絡 責 任 者 連 絡 担 当 官 経 由 で 各 省 庁 から 集 約 された 情 報 に 基 づいて 分 析 作 業 を 行 い 情 報 評 価 書 のドラフトを 作 成 して 合 同 情 報 会 議 等 に 諮 る なお どのような 情 報 評 価 書 をいつ 作 成 す るかについては 四 半 期 に 一 度 拡 大 情 報 コ ミュニティを 含 む 合 同 情 報 会 議 の 場 で 計 画 を 策 定 ( 案 は 内 閣 情 報 官 が 作 成 )するが 緊 急 時 は 内 閣 情 報 官 が 再 調 整 する ( 方 針 2 の (3)の3) コミュニティ 内 での 情 報 共 有 ( 第 四 の 課 題 ) については 情 報 評 価 書 作 成 のために 集 約 さ れた 情 報 の 共 有 やオール ソース アナリシ スの 成 果 の 情 報 コミュニティ 内 での 共 有 ( 方 針 2 の(3)の5) 共 通 のデータベースや 秘 密 情 報 伝 達 用 のイントラネットの 設 置 ( 方 針 2 の(4)の1) 人 事 交 流 や 合 同 研 修 の 推 進 ( 方 針 2 の(4)の2)が 提 起 された 合 同 研 修 の 内 容 としては 高 度 情 報 保 全 研 修 情 報 分 析 研 究 専 門 分 析 研 修 が 例 示 され ている 15 合 同 情 報 会 議 の 現 行 メンバーは 内 閣 官 房 副 長 官 ( 事 務 )が 議 長 内 閣 危 機 管 理 監 内 閣 官 房 副 長 官 補 ( 安 危 ) 内 閣 情 報 官 警 察 庁 警 備 局 長 防 衛 省 防 衛 政 策 局 長 公 安 調 査 庁 次 長 外 務 省 国 際 情 報 統 括 官 月 二 回 程 度 開 催 されている 5

秘 密 保 護 ( 第 五 の 課 題 )については セキ ュリティ クリアランスを 含 む 統 一 的 な 情 報 保 全 基 準 の 確 立 や 物 理 的 保 全 措 置 の 他 秘 密 保 全 法 制 についても 検 討 するとしている( 方 針 3 の123) また 2007 年 8 月 に カ ウンターインテリジェンス 推 進 会 議 が 決 定 した カウンターインテリジェンス 機 能 の 強 化 に 関 する 基 本 方 針 の 着 実 な 履 行 も 求 めて いる 同 基 本 方 針 は 国 の 安 全 や 外 交 上 の 秘 密 に 関 する 事 項 でその 存 在 が 知 られると 国 の 利 益 に 反 するもの であり 省 ごとの 判 断 で 指 定 される 特 別 管 理 秘 密 や 秘 密 取 扱 者 適 格 性 確 認 制 度 秘 密 保 全 研 修 制 度 の 導 入 を 盛 り 込 んでいる 内 閣 情 報 官 を 長 とし 政 府 全 体 の 情 報 保 全 の 中 核 機 関 となる カウン ターインテリジェンス センター の 設 置 も 予 定 されている 秘 密 保 護 の 法 整 備 について 方 針 の 文 言 は 考 え 方 とそれほど 変 わらないが 実 態 としては 二 橋 官 房 副 長 官 ( 事 務 )の 下 で 法 制 化 についての 検 討 が 具 体 的 に 始 められると 報 道 されており ここへきて 法 整 備 への 動 きは 強 まっている 国 会 等 による 政 府 の 情 報 活 動 の 監 視 ( 第 六 の 課 題 )については 主 として 官 僚 サイドによ ってまとめられた 提 言 であるという 性 格 もあ ってか 方 針 では 特 に 言 及 されていない 4. 評 価 と 展 望 日 本 版 NSCとインテリジェンス 機 能 強 化 が 共 倒 れ にならず 今 回 このように 情 報 コミュニティ 内 の 検 討 を 経 た 官 邸 のインテリ ジェンス 機 能 強 化 案 がまとめられたことは それ 自 体 評 価 されるべきであろう 考 え 方 に 前 後 して 発 表 された 国 家 安 全 保 障 に 関 す る 官 邸 機 能 強 化 会 議 の 報 告 書 は 政 策 部 門 と 情 報 部 門 の 連 接 に 言 及 しており 考 え 方 の 段 階 では 政 策 部 門 の 側 の 結 節 点 として 日 本 版 NSCが 想 定 されていたものとみられ る 16 日 本 版 NSC 創 設 が 見 送 られたにも 関 わ らず インテリジェンス 機 能 強 化 の 方 針 が 継 続 されたことは 戦 略 なくして 情 報 なし と いった 紋 切 り 型 に 決 別 する 意 味 を 持 つ 内 容 面 でも 上 述 した 三 つのボトルネッ ク の 解 消 に 力 点 がおかれており 適 切 な 方 向 感 にある 特 に 政 府 内 のインフォメーシ ョンを 付 き 合 せたナショナル インテリジェ ンスとして 情 報 評 価 書 が 策 定 されること になったことは 注 目 すべき 第 一 歩 である しかも 情 報 評 価 書 の 策 定 に 各 情 報 機 関 の 代 表 が 出 席 する 合 同 情 報 会 議 を 組 み 込 んだ ことは 英 国 の 合 同 情 報 委 員 会 のような 緩 や かな 調 整 を 可 能 にする 仕 組 みとして 評 価 でき る 17 更 に 情 報 評 価 書 等 のオール ソース アナリシスの 成 果 は 情 報 コミュニティ 内 で 共 有 されることになっており この 通 り 機 能 す れば 各 情 報 機 関 が 情 報 を 提 供 しても どう 加 工 されて 首 脳 に 上 げられるか 分 からないと いう 猜 疑 心 は 生 じにくくなる 情 報 コミュニティ 内 での 情 報 共 有 について も オール ソース アナリシスの 成 果 だけ でなく 情 報 集 約 の 過 程 で 各 情 報 機 関 が 提 供 した 情 報 を 各 情 報 機 関 にフィードバックする ことが 情 報 の 保 全 にも 十 分 配 慮 しつつニー ド トゥ ノウの 原 則 に 基 づいて という 条 16 http://www.kantei.go.jp/jp/singi/anzen/inde x.html 17 英 国 のインテリジェンス 体 制 については 北 岡 元 英 国 の 情 報 体 制 - 委 員 会 による 取 り 纏 めが 機 能 する 条 件 IIPS Policy Paper 283J, 2002 年 1 月 6

件 つきながら 明 記 されており 狙 い 通 り 機 能 すれば 円 滑 な 情 報 共 有 への 突 破 口 になりうる だろう 言 うまでもないことだが こうした 枠 組 み がうまく 機 能 するかどうかは かなりの 部 分 運 用 次 第 で 決 まってくる まず 各 情 報 機 関 が 情 報 をどれだけ 内 閣 情 報 分 析 官 に 提 供 する かである 省 庁 間 のセクショナリズムの 壁 は 高 く しかも 皮 肉 なことに 今 回 の 検 討 過 程 は 特 に 対 外 人 的 情 報 収 集 機 関 をめぐって 内 調 と 外 務 省 の 関 係 をかえって 悪 化 させた 面 も ある 各 情 報 機 関 がきちんと 情 報 提 供 してい るか 人 事 交 流 が 進 んでいるか きちんとモ ニタリングし 時 に 介 入 することが 官 邸 首 脳 (おそらくは 内 閣 官 房 長 官 )には 求 められる 各 情 報 機 関 が 情 報 提 供 する 意 義 を 見 出 すた めには 内 閣 情 報 分 析 官 が 作 り 出 すナショナ ル インテリジェンスが 質 の 高 い 有 益 なも のであることが 不 可 欠 である せっかく 情 報 をつき 合 わせてもこの 程 度 かというレベルの ものしか 出 てこなければ 各 情 報 機 関 からの 情 報 提 供 は 先 細 っていくであろうし そもそ もせっかく 情 報 を 官 邸 に 集 約 する 意 味 がない その 意 味 では 内 閣 情 報 分 析 官 に どれだけ 適 材 をあてられるかが 鍵 になる 18 また 当 初 5 人 の 内 閣 情 報 分 析 官 が 置 かれるとのこと であるが 英 国 合 同 情 報 委 員 会 の 下 に 置 かれ ている 評 価 スタッフが 40 名 であることと 比 較 してあまりに 少 なく 内 閣 情 報 分 析 官 があ る 程 度 機 能 することを 確 認 でき 次 第 できる だけ 早 く 増 員 すべきであろう 18 北 岡 元 氏 ( 政 策 研 究 大 学 院 大 学 教 授 )は 分 析 官 には 個 別 の 専 門 性 をもつ 人 物 よりも 様 々なインテリジェンスをバランスよく 評 価 しつつコンセンサスを 作 り 出 せる 人 物 が 必 要 と 指 摘 している 北 岡 元 我 が 国 と 情 報 月 刊 自 由 民 主 2007 年 7 月 号 また 各 情 報 機 関 が 提 供 した 情 報 やナショ ナル インテリジェンスが 各 情 報 機 関 に 本 当 にフィードバックされるかどうかも この 枠 組 みが 機 能 するかどうかを 左 右 する これま で 見 ることができなかった 他 の 情 報 機 関 の 情 報 をかなりの 程 度 利 用 できるようになれば 各 情 報 機 関 とも 自 ら 情 報 を 出 すメリットを 感 じるようになるはずだからである この 点 に ついては 内 閣 情 報 分 析 官 連 絡 責 任 者 連 絡 担 当 官 を 配 下 に 置 くことになる 内 閣 情 報 官 に 一 義 的 な 責 任 がある これまで 内 閣 情 報 官 ( 及 び 内 閣 情 報 調 査 室 )については 警 察 の 指 定 席 という 色 眼 鏡 で 見 られてきた 内 閣 情 報 官 には 新 しい 枠 組 みを 公 平 に 運 用 し そ うした 通 念 を 行 動 で 覆 していくことが 求 めら れる この 点 についても 適 宜 官 邸 首 脳 がモ ニタリングする 必 要 がある 内 調 の 中 立 性 に 対 する 不 信 感 が 障 害 になり 続 ける 場 合 合 同 情 報 会 議 と 内 閣 情 報 分 析 官 による 情 報 評 価 書 の 作 成 過 程 を 内 調 から 切 り 離 して 運 用 してい く 等 更 なる 仕 切 り 直 しも 要 請 されよう 対 外 人 的 情 報 収 集 については その 扱 いが 情 報 コミュニティの 亀 裂 を 深 めることのない よう 特 に 注 意 が 必 要 である 先 に 見 たように 方 針 においては 総 論 賛 成 具 体 論 曖 昧 の 書 きぶりに 落 ち 着 いた 政 治 的 にハードル の 高 いヒュミント 機 関 創 設 は 後 回 しでよいと した PHP 提 言 と 似 たような 線 に 収 まった 形 であるが 実 践 的 なロードマップ 的 観 点 から というより 検 討 過 程 における 対 立 の 痛 みわ けの 結 果 そうなったものである 潜 在 的 には 人 的 情 報 収 集 の 主 導 権 を 確 保 すべく 個 々の 情 報 機 関 がバラバラに 自 らの 人 的 情 報 収 集 機 能 強 化 に 走 り 出 す 可 能 性 を 秘 めており その ことが 集 約 や 共 有 にも 悪 影 響 を 及 ぼすおそ れがある こうした 動 きについても 官 邸 首 7

脳 が 第 三 者 的 な 観 点 で 監 視 抑 制 する 必 要 が ある 秘 密 保 護 の 法 制 化 についても 慎 重 に 進 め ていく 必 要 がある 情 報 保 全 に 敏 感 な 福 田 首 相 や 町 村 官 房 長 官 の 意 向 が 働 いているとの 報 道 もあるが( 朝 日 新 聞 2008 年 2 月 15 日 ) 知 る 権 利 や 報 道 の 自 由 との 関 連 でメディアを 中 心 に 強 い 反 発 を 招 き 政 局 イシューになっ てしまう 可 能 性 もある 法 制 化 自 体 を 目 的 化 することなく 確 実 に 実 効 性 のある 保 全 体 制 を 確 立 していくことを 目 指 すべきであろう 方 針 や カウンターインテリジェンス 機 能 の 強 化 に 関 する 基 本 方 針 に 挙 げられてい る 措 置 を 着 実 に 実 行 するだけでも 相 当 な 効 果 が 期 待 できる 以 上 のように 方 針 で 示 された 官 邸 のイ ンテリジェンス 機 能 強 化 策 が 実 を 結 ぶかにつ いては 相 当 程 度 官 邸 首 脳 ( 官 房 長 官 や 事 務 の 官 房 副 長 官 場 合 によっては 首 相 )が 情 報 機 関 同 士 のセクショナリズムを 抑 え イ ンテリジェンス コミュニティの 実 効 性 を 高 めていくためにコミットする 必 要 がある その 上 で 総 理 を 含 む 官 邸 首 脳 自 身 にも インテリジェンスを 的 確 に 受 け 止 め 使 いこ なしていく 能 力 が 求 められる 小 谷 賢 氏 の 日 本 軍 のインテリジェンス が 活 写 したように たとえ 適 切 なインテリジェンスが 生 産 されて いても 政 策 部 門 が 無 視 してしまえば 何 らの 価 値 も 生 まれない 19 情 報 部 門 が 上 げてくる インテリジェンスの 内 容 を 政 策 部 門 が 左 右 することを 避 けるべきことは 論 をまたないが 情 報 の 政 治 化 は 決 定 的 なインテリジェ ンスを 看 過 したり つまみ 食 いしたりという 形 でも 起 こりうる また インテリジェンス 19 小 谷 賢 日 本 軍 のインテリジェンス ( 講 談 社 2007 年 ) は 万 能 というわけではなく( 例 えば 金 正 日 の 死 後 北 朝 鮮 がどうなるかについて シナリオ 予 測 は 可 能 だろうが 確 たることは 誰 にも 言 えない) どこまで 何 をインテリジェンスに 期 待 できるのか 冷 めた 認 識 も 必 要 である その 意 味 では PHP 提 言 を 含 む 諸 提 言 では 触 れていないが 国 家 の 最 高 指 導 者 になる 人 物 がいかにインテリジェンス リテラシーを 身 につけていくかが 最 大 の 課 題 かもしれない さしあたり 首 相 候 補 や 高 級 内 閣 官 僚 ( 内 閣 官 房 副 長 官 内 閣 危 機 管 理 監 内 閣 官 房 副 長 官 補 等 )になる 人 材 には 何 らかの 形 でイン テリジェンスと 接 点 を 持 つキャリアを 重 ねる ことが 望 まれる インテリジェンス リテラシーを 高 める 上 で 最 も 有 益 と 思 われるのは どのようなイン テリジェンスに 基 づいてどのような 決 定 が 下 され どのような 結 果 に 終 わったかという 過 去 の 教 訓 に 学 ぶことである 残 念 ながら 戦 後 の 日 本 については そうした 点 を 明 らかにし てくれるような 形 で 公 文 書 保 存 が 行 なわれて おらず また 情 報 開 示 の 在 り 方 にも 問 題 が 多 い 政 府 の 情 報 活 動 の 監 視 を 行 っていく 上 で は 情 報 評 価 書 や 内 閣 情 報 官 等 のブリーフィ ング 内 容 を 含 む 体 系 だった 公 文 書 保 存 や 秘 匿 の 必 要 性 と 両 立 する 効 率 的 な 情 報 開 示 が 必 要 ではないか 幸 いなことに 福 田 首 相 は 公 文 書 保 存 に 熱 心 な 稀 に 見 る 政 治 家 である 短 期 的 に 効 果 の 出 る 話 ではないが 長 期 的 なイン テリジェンス 強 化 にとって 不 可 欠 の 要 素 と 考 える 5. 結 語 今 回 の 方 針 について メディアの 反 応 は 比 較 的 低 調 であった 日 本 版 CIA や 日 本 版 8

MI6 の 創 設 と 銘 打 てる 派 手 な 内 容 がなかっ たためかもしれない しかし そのことは 方 針 が 取 り 組 もうとしている 課 題 が 重 要 ではない とうことを 意 味 しない ナショナ ル インテリジェンスを 生 産 する 実 効 性 の あるインテリジェンス コミュニティを 創 り 出 すことは 人 口 減 少 や 経 済 力 の 相 対 的 低 下 にも 関 わらず 日 本 が 賢 明 かつ 能 動 的 に 国 際 社 会 で 生 きていくことを 可 能 にする 不 可 欠 の 条 件 である 情 報 組 織 関 係 者 は まずは 方 針 の 枠 組 みに 添 って 回 って 上 がって 漏 れない 政 府 全 体 の 情 報 体 制 の 構 築 を 目 指 すべきであろう もちろん セクショナリ ズムの 弊 風 を 当 事 者 間 で 乗 り 越 えることは 容 易 ではない 官 邸 首 脳 には 善 意 の 第 三 者 と して 適 宜 介 入 し 相 互 不 信 を 解 いていく 責 任 がある CPHP Research Institute, Inc 2008 9