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参 考 様 式 再 就 者 から 依 頼 等 を 受 けた 場 合 の 届 出 公 平 委 員 会 委 員 長 様 年 月 日 地 方 公 務 員 法 ( 昭 和 25 年 法 律 第 261 号 ) 第 38 条 の2 第 7 項 規 定 に 基 づき 下 記 のとおり 届 出 を します この

係 に 提 出 する 2 財 形 担 当 係 は 前 項 の 規 定 による 財 形 貯 蓄 等 の 申 込 みがあった 場 合 には 当 該 申 込 みの 内 容 を 点 検 し 財 形 貯 蓄 等 の 契 約 の 要 件 ( 第 6 条 に 規 定 する 基 準 を 含 む )を 満 たしている

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第 8 条 本 協 議 会 における 研 修 は 以 下 のとおりとする (1) 座 学 研 修 農 業 講 座 や 先 進 農 家 視 察 など 農 業 経 営 基 礎 講 座 やその 他 担 い 手 のための 研 修 会 等 への 参 加 など 年 24 回 程 度 とする (2) 実 務 研

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6 構 造 等 コンクリートブロック 造 平 屋 建 て4 戸 長 屋 16 棟 64 戸 建 築 年 1 戸 当 床 面 積 棟 数 住 戸 改 善 後 床 面 積 昭 和 42 年 36.00m m2 昭 和 43 年 36.50m m2 昭 和 44 年 36.

/ 5 ページ 身 近 な 普 通 名 詞 を 覚 えさせ 絵 カードや 言 葉 絵 本 などを 使 い 身 近 な 生 活 に 関 わる 固 有 名 詞 をマッチングさせ 集 合 名 詞 の 概 念 を 身 に 付 けさせ 普 通 名 詞 の 絵 カードや 字 単 語 カードを 見 本 に 従 っ

とする (1) 多 重 債 務 や 過 剰 債 務 を 抱 え 返 済 が 困 難 になっている 人 (2) 債 務 整 理 を 法 律 専 門 家 に 依 頼 した 直 後 や 債 務 整 理 途 上 の 人 (3) 収 入 よりも 生 活 費 が 多 くお 金 が 不 足 がちで 借 金 に 頼

本 日 の 内 容 1. ゲートウェイシステムにより 提 出 する 電 子 ファイル 2. ゲートウェイシステムによる 提 出 方 法 3. 電 子 データとeCTDの 関 係 4. 提 出 形 式 提 出 方 法 に 係 るQ&A 2

2 立 候 補 するには 次 に 掲 げる 条 件 を 満 たしていることとする (1) 理 事 又 は 評 議 員 2 名 以 上 の 推 薦 があること (2) 連 続 5 年 以 上 本 学 会 の 正 会 員 で 会 費 を 完 納 していること (3) 選 考 が 行 われる 前 年 の1

1 年 女 子 保 健 体 育 生 徒 は 主 体 的 に 授 業 に 取 り 組 んでいる しかし 周 りが 動 かないと 動 けない 場 面 が 見 られる 体 育 係 が 声 掛 けをしているが 今 後 は 体 育 係 の 声 掛 けがなくても 動 けるようにしていく 運 動 が 苦 手 な

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1 総 合 設 計 一 定 規 模 以 上 の 敷 地 面 積 及 び 一 定 割 合 以 上 の 空 地 を 有 する 建 築 計 画 について 特 定 行 政 庁 の 許 可 により 容 積 率 斜 線 制 限 などの 制 限 を 緩 和 する 制 度 である 建 築 敷 地 の 共 同 化 や

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Transcription:

フォーカシングになじみがない 初 心 セラピス ト 同 士 のセラピスト フォーカシング セラピスト フォーカシング レシピを 用 いて 伊 藤 研 一 (1)ことの 始 まり ことの 始 まりは 私 にとって 衝 撃 としかいいようのない 発 表 であった ニューヨーク 市 郊 外 で 開 催 された 第 2 回 フォーカシング 指 向 心 理 療 法 国 際 会 議 での Hirano Ikemi(2011)による 発 表 である フォーカシングに なじみのない 心 理 臨 床 家 が 集 まった 午 前 午 後 一 日 のワークショップでセラ 注 ピスト フォーカシング の 研 修 会 を 行 ない, 参 加 者 同 士 が 組 になってセ ラピスト フォーカシングのフォーカサー(フォーカシングする 人 )とリ スナー( 聴 き 手 )を 経 験 した その 結 果,99 パーセントの 参 加 者 が 勉 強 になった,97 パーセントが 仕 事 に 役 に 立 つ と 回 答 した,というの である 本 当 か!? というのがはじめの 率 直 な 感 想 であった しかし,スライ ドに 映 し 出 される 参 加 者 による 自 由 記 述 の 感 想 を 見 ると,まさにフォーカ シング 的 なプロセスが 生 じていることが 見 てとれる フォーカシングを 身 につけるのはたやすくはないというのがそれまでの 私 の 実 感 であった まず, 二 十 数 年 前, 自 分 自 身 の 一 番 最 初 のフォーカシ ング 経 験 でつまづいた フォーカシングを 日 本 に 紹 介 した 第 一 人 者 による 143

ガイドでフォーカシングしたにもかかわらず, 途 中 でプロセスが 進 まなく なり,ガイドが 進 まないね やめよう と 言 い, 中 断 したのである 自 分 は フォーカシングに 向 かない と 思 った その 後 10 年 近 くたって, アン ワイザー コーネル(1996)の 著 書 に 接 して, ああ,これならで きそうだし, 自 分 が 自 然 にやっていることにも 近 い と 思 って 再 びとりく みはじめた 途 中, 米 国 のフォーカシング インスティテュート 公 認 の (もちろん 日 本 の)トレーニングを 約 一 年 間 受 けてフォーカシング 協 会 認 定 トレーナーの 資 格 を 取 得 した フォーカシングに 本 腰 を 入 れて 取 り 組 み 始 めてから 数 年 がたっている 一 日 の 研 修 でそんなに 簡 単 にフォーカサ ーやリスナーができるはずがあろうか? というのが 発 表 を 聞 き 終 わって も 疑 問 として 残 った しかし,そんなことを 言 っていられなくなる 事 態 が 生 じた 翌 年 に 学 習 院 大 学 で 開 かれる 学 会 のワークショップの 一 つのコースでセラピスト フ ォーカシングの 研 修 会 を 筆 者 が 引 き 受 けることになったのである 前 述 の 平 野 氏 から 日 本 版 マニュアルを 掲 載 した 論 文 ( 平 野 2012)があると 聞 き, 送 ってもらい, 自 分 が 研 修 会 を 行 なうために, 自 分 が, 使 いやすいものを 作 る 作 業 にとりかかった (2)セラピスト フォーカシング レシピ 作 成 過 程 送 ってもらったマニュアルは, 実 施 する 際 に 使 いやすいように 手 順 が 順 番 にならんでいた フォーカシングを 初 めて 経 験 するフォーカサー,リス ナーに 安 心 できるマニュアルを 作 ろうとしたと 推 測 された ただ, 今 回 の 場 合, 私 がフォーカシング 習 得 過 程 で 難 渋 した 経 験 を 活 かしたいと 考 え, フォーカシングで 何 が 一 番 重 要 かを 最 初 に 記 述 してから, 実 際 のフォーカ シングのやり 方 に 触 れたいと 考 えた また, 手 順 を 順 番 に 記 述 するのでは なく,いくつかのフォーカシング スキルを 並 べ, 順 番 ではなく, 必 要 に 応 じてどれかを 試 してみるという 形 にした 初 心 者 はどれを 使 うか 迷 った り, 困 ったりすることが 想 像 されたが, 逆 に ものは 試 し で 使 ってみて 144

考 える 工 夫 の 余 地 がフォーカサー,リスナー 両 方 に 残 ることを 優 先 し た そうすると マニュアル という 表 現 より, 味 をみてから,いろ いろな 調 味 料 を 加 える レシピ の 方 がふさわしいと 考 えて, セラピス ト フォーカシング レシピ と 名 付 けた まず,できあがったものを 知 り 合 いの 臨 床 歴 30 年 の 女 性 臨 床 心 理 士 に 試 してみた フォーカシングは 未 経 験 である 実 際 に 試 してみてわかった ことは1フォーカシングで 生 じる 身 体 感 覚,すなわちフェルト センスを ケースと 関 連 づけて,いわば 解 釈 したくなる2 初 めてでも ケース を 思 い 浮 かべるとかなりはっきりとフェルト センスが 生 じる,であった 1については 心 理 臨 床 家 に 特 有 の 傾 向 といえそうなので, 注 意 書 きを 添 え ることとした また,2について,フォーカシング トレーナー 資 格 を 持 つ 私 がリスナーを 行 なったとはいえ,レシピに 忠 実 に 行 なった 結 果 である ので, 一 日 のワークショップで 参 加 者 同 士 のフォーカシング セッション が 可 能 になる 実 感 を 得 た その 後,まだケースを 担 当 していないが,ロール プレイング 実 習 を 経 験 した 修 士 1 年 生 に 実 施 して,さらに 改 善 を 加 えた その 後, 学 会 のワー クショップに 実 施 して, 参 加 者 28 名 中 27 名 の 肯 定 的 な 感 想 を 得 た (3)フォーカシング 初 心 者 の 心 理 臨 床 家 のためのセラピスト フォーカシ ング レシピ 以 下 にワークショップで 使 用 したレシピと,その 個 々の 項 目 に 関 する 意 図 について 説 明 を 加 えた 表 を 示 す 内 容 Ⅰ 前 提 1. 基 本 はセルフ ガイドで (1)フォーカサーは 自 分 のフェルト センス(か らだの 感 じ)を 頼 りにします リスナーを 頼 りに 意 図 フォーカシングが, 145

するのではありません リスナーはあなたのフォ ーカシングをそっと 手 伝 ってくれる 人 です (2)フォーカサーはところどころで, 自 分 の 中 に 起 こっていることを 話 しましょう リスナーは 原 則 としてフォーカサーのことばを 繰 り 返 す( 反 射 )だけにしましょう (Ex. ~な 感 じがある んですね ) 沈 黙 はフォーカシング 中 には 多 いの が 普 通 です でもあまりに 長 くなって 気 になった ら,リスナーは 今 どんな 感 じですか? と 聞 い てみましょう (3)フォーカサーがリスナーに, 下 記 のスキルの うちどれかを 提 案 してください 手 伝 ってく ださい と 求 めるのは, 大 いに 結 構 です その 場 合 には,リスナーは 下 記 のスキルのどれかを 試 み てみましょう フォーカサーはそれを 受 け 入 れる 必 要 はありません 自 分 のフェルト センスに 合 わない 場 合 には,そのように 伝 えましょう 2. いちばん 大 事 なスキルは,からだの 感 じと 一 緒 にいること からだの 感 じ が 出 て きて,その 感 じに 関 心 を 向 けながら 一 定 の 時 間 過 ごしたら,それで OK! 変 化 や 気 づきが 生 じる 必 要 はありません あくまでもフォーカ サーとフェルト セ ンスとのやりとりで あって,リスナーと のやりとりではない ことを 強 調 リスナーの 主 要 な 役 割 はフォーカサーの ことばを 繰 り 返 すこ とである フォーカサーが 主 役 であって,リスナー にフォーカシングを 進 めやすいように 手 伝 ってもらう フォーカシングで 重 要 なことを 明 示 変 化 や 気 づきは 目 的 で はなく, 時 に 生 じる 結 果 である Ⅱ. セラピスト フォーカシング(フォーカサー がこころの 中 でいうセリフ,あるいはリスナーが 必 要 に 応 じて 使 うセリフは 斜 体 にしました セリ フは 適 当 に 変 えてもかまいません) 途 中, 何 度 もこのレシピに 戻 ってかまいません リスナーにプロセスを 全 部 わかってもらう 必 要 はありません 目 は 開 けてもつぶっても, 開 けたりつぶったり 146

してもかまいません 自 分 にとってからだの 感 じ に 注 目 しやすいように 工 夫 してみてください 1. 気 になる,あるいは 困 っているケースを 一 つ セラピスト フォー 思 い 浮 かべましょう ケースが 思 いつかないとき カシングがスーパー には 職 場, 気 になる 同 僚, 先 輩,スーパーバイザ ビジョンと 違 うこと ーでもかまいません リスナーに 差 し 支 えない を 強 調 範 囲 でごく 簡 単 に,どんなことを 選 んだか 伝 えま しょう (Ex. うつ 病 の 成 人 のケースです) スーパービジョンではないので,ごく 簡 単 に 説 明 することが 重 要 です 説 明 に 時 間 が 取 られると フォーカシングの 時 間 が 短 くなってしまいます 2. 選 んだケースを 思 い 浮 かべると, 身 体 のどの あたりに,どんな 感 じが 出 てくるでしょうか や さしく 注 意 を 向 けましょう 3. いくつか 感 じが 出 てきたときには 一 つを 選 ん で,セラピスト フォーカシングを 進 めましょう 以 下 の スキル を 手 探 りで 使 ってみる( 役 に 立 スキル は 柔 軟 に てば OK 役 に 立 たなくても この 場 合 は 役 に 立 使 う 解 釈 をするの たなかった というデータを 得 られるので OK) ではないが, 解 釈 が クライエントとからだの 感 じを 結 びつけて 解 釈 浮 かんできたら,そ するのではありません からだの 感 じを 感 じ 続 け れをからだの 感 じと ることが 大 切 です それでも 解 釈 めいたことが 浮 照 らし 合 わせてみる かんできたら ~( 解 釈 )と 思 ってみたらからだ の 感 じはどうなるかな と 問 いかけてみましょう もっともよく 使 うスキル 使 用 頻 度 の 高 いスキ ルを 明 示 (1) 一 緒 にいる: この 感 じと 一 緒 にいてみよう この 感 じに 関 心 を 持 ちながらしばらくそのまま でいてみよう この 感 じの 動 きにまかせてみよ う (2) 認 めてあげる: そこにそんな 感 じがあるの はわかっているよ ~な 感 じなんだね 147

時 に 応 じて 使 うスキル 使 用 頻 度 の 高 くない スキルを 明 示 (3) 描 写 する& 照 らし 合 わせる 描 写 する: その 感 じをことばやイメージで 表 現 することができる かな & 照 らし 合 わせる そのことば(あるい はイメージ)がその 感 じにぴったりかな それと も 少 し 違 うかな (4)ほどよい 間 合 いを 取 る フェルト センスが 強 すぎて 苦 痛 が 強 かったり, 圧 倒 されそうなとき 目 を 開 けて 伸 びをする, 解 除 動 作 をする フェルト センスが 動 作 を 使 う:( 肩 や 胸,お 腹 がきつい 場 合 ): 深 呼 強 すぎるときの 工 夫 吸 する / ゆっくり 肩 をあげたり, 下 げたり, 肩 を 後 ろに 引 いたりする イメージを 使 う: 感 じを 容 器 ( 壺, 箱, 部 屋 )に 入 れてみる / 何 かで 包 む フェルト センスが 感 じにくいとき 感 じがかすかな 場 合,それはそれで 良 いと 思 いま しょう 無 理 に 近 づこうとしないこと 関 連 することがらを 思 いだす: この 感 じはなじ フェルトセンスが 弱 みのある 感 じかな?それとも 目 新 しい 感 じか すぎるときの 工 夫 な? このケースでこのような 感 じになるのは どんなときだろう? 似 たような 感 じになった ときがほかにもあったかな? (5) 思 いやる: 感 じに なにかこちらに 伝 えたい のかな なにかして 欲 しがっているのかな と 聞 いてみる 時 間 前 に 一 区 切 りついたと 思 ったら,そのことを リスナーに 伝 えて, 終 わりましょう 終 了 時 間 5 分 前 くらいに あと 5 分 ですよ と お 知 らせします フォーカサーは 終 わる 準 備 をし ましょう (5 分 は 目 安 です 5 分 より 前 に 終 わっ ても, 少 し 長 くなってもかまいません) 一 区 切 り フォーカシングを 終 えるのはフォーカサ ーである リスナー や 時 間 に 気 を 遣 う 必 148

つく 前 だとしたら また 今 度 じっくりつきあうか 要 はない らね 出 てきてくれてありがとう など 声 をか けてみましょう 4. シェアリング フォーカサーは, 自 フォーカサーとリスナーで 5 分 程 度, 差 し 支 えな 分 の 中 に 生 じたこと い 範 囲 でシェアリングしましょう についてすべてリス ナー(オブザーバ ー)に 話 す 必 要 はな い (3) 本 論 文 の 目 的 ワークショップ 参 加 者 のほとんどは 現 場 に 出 て 心 理 療 法 を 数 年 間 行 なっ ている 心 理 臨 床 家 であった 今 回 は,ケースを 担 当 している 臨 床 心 理 学 を 専 門 とする 修 士 2 年 生 を 対 象 にセラピスト フォーカシングを 行 ない, 初 心 セラピストにとってのセラピスト フォーカシング レシピおよびセラ ピスト フォーカシング 自 体 の 有 効 性 を 検 討 する (1) 参 加 者 : 大 学 院 修 士 2 年 生 18 名 ( 男 性 5 名, 女 性 13 名 ) (2) 手 続 き: 集 中 講 義 の 約 2 時 間 を 使 って 行 なった まず, 筆 者 自 身 がセ ラピスト フォーカシングを 行 なっている DVD をセラピスト フォーカ シング レシピと 対 応 させながら 説 明 した その 後,3 名 ずつでグループ を 作 り, 一 人 がフォーカサー,もう 一 人 がリスナー, 三 人 目 がオブザーバ ーで,1 セッションは 約 20 分 である 全 員 がフォーカサー 体 験 をした 後, 1フォーカサーとしての 体 験 2リスナーとしての 体 験 3スーパービジョン との 違 い,について A4 一 枚 に 自 由 記 述 形 式 で 回 答 してもらった 149

(1)フォーカサーとしての 体 験 表 2 に 示 す 参 加 者 A B C D E F G H J 感 想 胃 を 締 めつけるような 痛 みに, 責 任 感 と 名 前 をつけたら, 痛 みが 重 みへと 変 化 した 言 語 化 できないざわざわした 感 覚 が 次 から 次 へとわき 出 てきて 圧 迫 感 が 強 くなり, 深 く 呼 吸 ができなくなり, 苦 しくなった 怖 い とリスナーに 伝 えたところ, 急 に 深 く 息 を 吸 うことが できるようになり, 苦 しくなくなりました 自 分 で こんな 感 じ と 言 葉 にしてみて,それをリスナーに 返 してもらうと, 少 し 違 う 気 がして,もっとピッタリ 来 る 言 葉 を 探 す 作 業 を 繰 り 返 して,ピッタリ 来 ることばを 見 つけると 視 界 が 明 るくなった 胸 がつまって 息 が 止 まる 感 じがした 肩 に 小 さな 痛 みを 感 じた 無 力 感 という 言 葉 がひらめいた さらに 期 待 感 責 任 感 という 言 葉 も 出 てきた 責 任 感 は 無 力 感 と 期 待 感 の 和 または 積 である 気 がした 自 分 に 合 っている と 感 じた 快 適 とは 言 い 難 いが,その 不 快 な 状 態 に 向 かい 合 えた 怒 りの 感 情 が 湧 いた その 後, 焦 りや 不 全 感 も 感 じた 自 分 の 中 にある 感 情 や 葛 藤 を 確 認 していって,それが 整 理 され た こういうものがこうあったんだな という 気 持 ちになっ た 不 安 とひとくくりにしていた 感 情 がどのような 動 きをして いたのか,また 胸 のあたりのある 感 覚 に 触 れることができた 150

I K L M N O P Q R 喉 のあたりが 熱 くなった それが 下 がってきておなかのあたり でジワーッと 薄 くなった 最 終 的 にはすっきりしなかった 喉 のつまりと 背 中 全 体 に 粘 着 のあるどろっとしたものがまとわ りついている 感 じがした 胸 のあたりが 温 かくなり,その 温 かさがどんどん 増 して 熱 いく らいになった お 腹 やその 下 の 腿 あたりまで 広 がった 不 快 で はなかった わからない と 思 ったら, 喉 のあたりがつまる 感 じ, 吐 き 出 しそうな 嫌 な 感 じがあった それが 肩 の 辺 り, 背 中 の 寒 さにひ ろがり, 落 ち 着 いた すごく 苦 しい 感 じがあったが,この 気 持 ちがどこから 来 るかと 思 ったら 爽 快 感 があった 身 体 が 実 際 に 動 いてしまう( 前 屈 みになったり, 手 を 強 く 握 っ たり)ことが 印 象 的 だった 身 体 感 覚 に 目 を 向 けていると 連 想 が 広 がった 静 かな 森 の 中 で 独 白 している 感 じ 心 を 落 ち 着 かせて,フェルト センスを 感 じることができなか った プレイ 場 面 での 子 どもが 浮 かび, こちらを 向 いてかまって 欲 しい 感 覚 を 感 じた (2)リスナーとしての 経 験 表 3 に 示 す 参 加 者 A B C D 感 想 つい 質 問 をしたくなった 出 てくる 言 葉 に 質 問 したくなった 質 問 や 解 釈 をしてしまいそうになってしまうときがあった どういうスタンスで 聞 けばよいのかはかりかねた 151

E F G H J I K L M N O P Q R 反 射 を 繰 り 返 すと 次 第 にフォーカサーの 内 省 が 深 まった リスナーをして この 感 じが 意 味 ある 沈 黙 なんだな と 感 じる ことができた 反 射 をするだけだったが,フォーカサーの 感 情 やからだの 感 じ を 流 れで 追 えた ただ 寄 り 添 っているだけで 十 分 にフォーカサーが 自 分 の 感 じに 気 づいていくのがわかった どこまで 質 問 をして 良 いのか,しばらく 沈 黙 を 待 つだけでいい のかと 考 えてしまった フェルト センスの 流 れについて 質 問 したくなった リスナーも 共 に 感 じるという 姿 勢 を 大 事 にしたいと 思 った 質 問 が 多 すぎたなと 反 省 声 かけのタイミングの 難 しさを 感 じた 質 問 したい 気 持 ちが 湧 き 上 がり,フォーカサーと 一 緒 にいる 感 じになれなかった ただ 反 射 するというのは 簡 単 なようで 難 しかった フォーカサーの 発 した 言 葉 をそのまま 返 すことで 場 がマイルド になる 気 がした 思 わず 質 問 を 投 げかけそうになったが 我 慢 した リスナー 側 から 何 か 言 いたくなることが 多 々あった 気 になる 点 や 聞 いてみたいことがいろいろ 浮 かんでしまって, 聞 いてみたい 気 分 にさせられた (3)スーパービジョンとの 違 い 表 4 に 示 す 参 加 者 A B 感 想 自 分 で 気 づくという 点 が 一 番 違 う 自 分 にしっくりなじみ 受 け 入 れやすくなる 一 番 の 違 いは 自 分 で 気 づくこと 納 得 できてすんなり 受 け 入 れ られた 152

C D E F G H J I K L M N O P Q R 自 分 でみつけられること 自 分 で 見 つけると 愛 着 も 感 じられる し, 達 成 感 がある フォーカシングは 能 動 的 なので, 自 分 でわからなくなると 止 ま ってしまうが,フォーカシングで 得 たアイデアは 自 分 のものと してしっくり 来 る 自 分 で 納 得 いく 形 でケースの 意 味 づけができるが,あくまで 主 観 的 である 自 分 で 気 づいて 自 分 で 味 わえる 自 分 のペースでできるため, 欠 点 があっても 受 け 入 れやすい フォーカシングでクライエントの 気 持 ちに 気 づくと,うれしい 気 持 ちになった 自 分 自 身 で 気 持 ちの 動 きや 変 化 に 気 づけた 安 心 して 自 分 の 感 覚 と 向 かい 合 えた もやっとした 感 じが 残 ると,SV だと 何 とかしなければ と なるが,フォーカシングでは すっきりしない 部 分 もあるよ な と 思 えた セラピーの 場 で 感 じた 違 和 感 をていねいに 扱 える クライエン トに 抱 いていた 気 持 ちがあたたかくなった SV では 自 分 で 考 える 余 裕 がない 状 態 で 指 摘 されることがある が,フォーカシングでは 自 分 で 考 える 余 裕 が 生 まれる ゆっくりと 自 分 のペースで ストン とくる SV は こじあけられる という 感 じだが,フォーカシングは 自 分 で 鍵 を 見 つける という 感 じ ケースを 感 覚 的 に 体 験 することで 言 葉 にできないけれど 何 か 気 になる という 姿 勢 が 育 まれる のびのびとケースについて 語 れる 客 観 的 指 標 としての 妥 当 性 に 疑 問 フォーカサーのあるがままを 表 出 できる しかし, 焦 点 が 情 動 だけになっている ケースに 対 して 感 じた 違 和 感 を 知 的 にだけでなく 心 情 的 に 理 解 できる SV で 示 されたアドバイスや 対 応 策 についても 深 く 理 解 できる 153

(1)フォーカサーとしての 経 験 参 加 者 A から C,3 名 については,フォーカシング 過 程 ににおける 変 化, フェルト シフトが 生 じていることがうかがわれる 平 野 (2012)にある ようにそれが 見 立 ての 変 化 にまで 結 びついたかどうかは 記 述 が 無 くて わからない しかし,フォーカシング 自 体, 初 めてでしかも 心 理 臨 床 経 験 の 浅 いセラピストに 短 時 間 でこのような 経 験 がもたらされたことは 意 味 深 い また,D から O までの 12 名 は,フェルト シフトが 生 じたかどうかは 定 かではないが, 少 なくともフェルト センスが 感 じられて,それと 一 緒 にいる 時 間 を 過 ごせたようである このことは 筆 者 がフォーカシング 経 験 において,もっとも 重 要 と 考 えていることである P から R まで 3 名 はフェルト センスが 感 じにくかったか,フェル ト センスからイメージに 流 れてしまったとみられる E にも 感 想 の 後 半 部 分 は 知 性 化 の 傾 向 が 見 受 けられる これは 通 常 のフォーカシングでも 生 じることであり, 初 めてのフォーカシング 経 験 でこのようになることは 自 然 であろう (2)リスナーとしての 経 験 参 加 者 E,F,G,H の 4 名 は,ほとんど 反 射 しかしないことがフォー カサーにとって 意 味 があることを 経 験 した しかし, 残 りの 14 名 は 質 問 をしたくなったり, 何 か 働 きかけたくなったりして, 居 心 地 の 良 くない 思 いをしている これは 同 様 に 平 野 (2012)の 論 文 でも 報 告 されていること であり,フォーカシングに 馴 染 みのない 参 加 者 にとっては 当 然 の 反 応 であ る 表 1 の 前 提 1 (1)(2)を 強 調 して 伝 えることが 重 要 であろう 154

(3)スーパービジョンとの 違 い 参 加 者 A から O までと R,15 名 はセラピスト フォーカシングの 経 験 をスーパービジョンより 肯 定 的 に 捉 えている P と Q,2 名 は 長 所 と 欠 点 を 併 記 している P と Q は フォーカサーの 体 験 として,フェルト センスが 感 じにくかったり,イメージに 流 れてしまったり,フェルト セ ンスと 十 分 に 一 緒 にいる ことが 難 しかったことが 関 係 していると 考 え られる これらを 整 理 して 捉 えてみよう セラピストフォーカシングの 特 徴 とし て,1 自 分 で 気 づく2 主 観 的 経 験 である,の 二 つがあげられる 1は,さ らに(i) 納 得 できる(ii) 主 体 性 ( 能 動 性 )が 保 たれる,2は,(i) 感 情 や 感 覚 をともなった 経 験 (ii) 客 観 的 に 妥 当 性 が 疑 問,につながる P と Q には2 (ii)が 感 じられたのであろう 伊 藤 山 中 (2005)でも 触 れたように,スーパービジョンとセラピス ト フォーカシングは 相 補 的 なものであり, 特 に 初 心 の 間 は 両 方 がお 互 い にかみ 合 うと,セラピーにとってより 有 益 性 が 高 まると 期 待 される (4)セラピスト フォーカシングの 入 りやすさ フォーカシングになじみがない 初 心 セラピストにとっても,フォーカシ ング レシピによるセラピスト フォーカシングが 可 能 であり, 有 用 でも あることが 示 されたといえよう このことには 二 つの 要 因 が 関 係 していると 思 われる 一 つは 心 理 臨 床 家 はフォーカシングをする 能 力,いわゆるフォーカシン グ アビリティが 高 いことである フォーカシング アビリティは,ロー ルシャッハテストにおいて, 良 質 の M 反 応 が 出 せる 資 質 とつながってい るといわれるが,これは 感 情 移 入 能 力 といってもいいだろう 心 理 臨 床 を 実 践 したり, 心 理 臨 床 を 志 したりする 人 が 感 情 移 入 への 指 向 性 が 高 い ことは 当 然 である 第 二 は, セラピスト フォーカシングが, 気 がかりを 思 い 浮 かべる 通 常 のフォーカシングより, 行 ないやすいことである セラピストにとって, 155

気 になるクライエント は, 相 当 にフェルト センスを 活 性 化 する(だ からこそ 気 になる ) 存 在 であり,フェルト センスも 比 較 的 はっきり していて,( 強 すぎて 苦 痛 が 大 きすぎる 場 合 はあっても), 捉 えやすく 取 り 組 みやすい (5)セラピスト フォーカシング レシピ 授 業 や 研 修 会 などで 手 探 りでセラピスト フォーカシング レシピを 行 ない, 修 正 してきたが, 一 応, 私 にとっては 使 いやすい 形 になってきた これからもさまざまな 機 会 にこのレシピを 使 って, 研 修 参 加 者 の 特 徴 に 合 わせた 修 正 を 行 なっていきたいと 考 えている しかし,これはあくまで 私 にとって 使 いやすいレシピである ジェ ンドリンやアン ワイザー コーネル,ヒンターコッフ 等 々,それぞれに よってフォーカシングの 強 調 点 は 異 なる 同 じように,セラピスト フォ ーカシングを 伝 えようとするフォーカシング 指 向 心 理 療 法 家 それぞれが 自 身 が 使 いやすいマニュアル レシピを 作 る 参 考 にこの 論 文 がなればうれし い 限 りである 注 セラピスト フォーカシングは, 吉 良 (2002)が 創 始 した 方 法 で,セラピス ト 自 身 が 担 当 しているケースを 思 い 浮 かべて 行 なうフォーカシングである その 効 果 として1ケースとほどよい 間 合 いがとれてセラピストにゆとりが 生 じる2ク ライエントからの 非 言 語 的 メッセージを 感 じ 取 り, 治 療 者 クライエント 関 係 に ついて 気 づきがもたらされる( 伊 藤 山 中,2005),ことが 期 待 される A W コーネル(1996) フォーカシング 入 門 マニュアル ( 村 瀬 孝 雄 監 訳 ) 金 剛 出 版 Cornell, A.W.(1989), The Focusing:Student s Manual. Focusing Resources, Berkeley. 平 野 智 子 (2012) フォーカシングに 馴 染 みがない 心 理 臨 床 家 のためのセラピス ト フォーカシング マニュアルの 作 成 関 西 大 学 臨 床 心 理 専 門 職 大 学 院 紀 要 第 2 号,97 107 156

Hirano, T. & Ikemi, A.(2011) Developping a Self-Help Manual of Focusing for Therapists Second International Conference On Focusing-Oriented Psychotherapies, 31. 伊 藤 研 一 山 中 扶 佐 子 (2005) セラピスト フォーカシングの 過 程 と 効 果 学 習 院 大 学 人 文 科 学 研 究 所 人 文 4.165 176 吉 良 安 之 (2002) フォーカシングを 用 いたセラピスト 自 身 の 体 験 の 吟 味 セラピ スト フォーカシング 法 の 検 討 心 理 臨 床 学 研 究 20(2),97 107 謝 辞 1 これまで 私 は,フォーカシングをすでに 習 得 したフォーカサーのリスナー やガイドをすることには 力 を 注 いでいましたが,フォーカシングを 一 から 教 える ことは 苦 手 意 識 があり,なるべく 避 けていました 自 分 の 経 験 から 難 しいし, 面 倒 だ と 感 じていたからです それが 平 野 智 子 氏, 池 見 陽 教 授 の 発 表 を 聞 いて, 文 字 通 り 目 からウロコが 落 ちました さらに 平 野 氏 は 私 の 求 めに 応 じて 快 く, 迅 速 に 論 文 の 抜 刷 を 送 ってくれました 心 から 感 謝 しております その 後,セラピ スト フォーカシングの 研 修 の 依 頼 があると, 今 度 の 参 加 者 の 反 応 はどうだろ うか? とわくわくしながら 引 き 受 けるようになりました 両 氏 のおかげです 謝 辞 2 本 研 究 は 学 習 院 大 学 人 文 科 学 研 究 所 共 同 研 究 プロジェクト 初 心 セラピス トにおけるセラピスト フォーカシングとスーパービジョンの 関 連 性 予 算 の 支 援 を 受 けました ここに 記 して 感 謝 の 意 を 表 します 157