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自 信 過 剰 が 男 性 を 競 争 させる 水 谷 徳 子 奥 平 寛 子 木 成 勇 介 大 竹 文 雄 * 要 旨 本 稿 では なぜ 男 性 は 女 性 と 比 べて 自 身 の 成 果 のみに 依 存 した 報 酬 体 系 よりも 他 人 の 成 果 にも 依 存 する 報 酬 体 系 を 好 むのかについて 日 本 人 学 生 を 対 象 に 実 験 を 行 うことで 原 因 の 解 明 を 試 みる Niederele and Vesterlund (2007)による 先 行 研 究 では 競 争 への 嗜 好 と 自 信 過 剰 の 度 合 いにおける 男 女 差 が 原 因 とされていたが 本 稿 はこれらの 要 因 に 加 え 危 険 回 避 度 とフィードバック 回 避 度 ( 結 果 を 知 らされることを 嫌 う 度 合 い)が 報 酬 体 系 の 選 択 に 与 える 影 響 を 明 示 的 に 取 り 扱 う 分 析 の 結 果 はつぎのとおりである (1) 男 女 でパフォ ーマンスの 差 はないが 女 性 より 男 性 のほうが 競 争 的 報 酬 体 系 を 選 択 する 確 率 が 高 い (2) そのトーナメント 参 入 の 男 女 差 の 大 部 分 は 男 性 が 女 性 よりも 自 信 過 剰 であることに 起 因 する (3)アンケート 調 査 から 計 測 した 危 険 回 避 度 やフィードバック 回 避 度 時 間 選 好 率 は 競 争 的 報 酬 体 系 選 択 の 男 女 差 に 対 して 説 明 力 がほとんどない (4) 男 性 のほうが 女 性 より 競 争 を 好 むためであるという 説 明 は 限 定 的 であることが 明 らかとなった また 男 女 構 成 比 は 自 信 過 剰 に 影 響 を 与 える 男 性 は 女 性 がグループにいると 自 信 過 剰 になり 女 性 は 男 性 がグループにいないと 自 信 過 剰 になる JEL classification : C9, J33, J16, L0 実 験 実 施 にあたり 村 島 吉 世 子 さん 中 西 貴 美 子 さんをはじめ 多 くの 方 々に 多 大 なご 協 力 を 頂 いた ここに 記 して 感 謝 申 し 上 げたい fge008mn@mail2.econ.osaka-u.ac.jp ege002oh@mail2.econ.osaka-u.ac.jp dg005ky@mail2.econ.osaka-u.ac.jp * ohtake@iser.osaka-u.ac.jp - 1 -

1.はじめに 男 性 に 比 べて 上 層 部 や 競 争 的 地 位 に 女 性 は 少 ない(Bertrand and Hallock [2001]) たと え 男 女 で 能 力 が 同 等 であったとしても 競 争 的 環 境 に 参 入 する 確 率 が 男 女 で 異 なるとした ら それはなぜだろうか この 疑 問 に Niederle and Vesterlund (2007)は 4つの 要 因 を 提 示 する 第 1は 競 争 への 嗜 好 の 差 である 将 来 の 予 想 に 対 して 女 性 は 心 理 的 費 用 を 予 想 して 競 争 を 拒 むが 男 性 は 心 理 的 便 益 を 予 想 して 競 争 にひきつけられる つまり 女 性 より 男 性 のほうが 競 争 を 好 むために 競 争 的 環 境 を 選 択 する 傾 向 に 違 いがあると 説 明 する 第 2の 要 因 は 自 信 過 剰 の 男 女 差 である 心 理 学 の 文 脈 では 相 対 的 なパフォーマンスに ついては 男 女 ともに 自 信 過 剰 であり 女 性 より 男 性 のほうが 自 信 過 剰 であることが 知 られ ている(Lichtenstein, Fischhoff and Phillips [1982], Beyer [1990], Beyer and Bowden [1997]) 第 3の 要 因 は 危 険 回 避 度 の 男 女 差 である 競 争 的 環 境 への 参 入 において リス ク 態 度 における 潜 在 的 な 男 女 差 は 報 酬 体 系 に 影 響 を 与 える そのため 男 性 より 女 性 のほ うが 危 険 回 避 的 ならば 女 性 は 競 争 的 環 境 を 選 択 しない 第 4の 要 因 はフィードバック 回 避 度 の 男 女 差 である 心 理 学 では 男 女 でフィードバックに 対 して 反 応 が 異 なることが 示 唆 されている(Roberts and Nolen-Hoeksema [1989]) よって 女 性 のほうがフィードバッ ク 回 避 的 ならば 女 性 は 競 争 的 環 境 を 選 択 しないと 考 えられる Niederle and Vesterlund (2007)は アメリカの 学 生 を 対 象 に 男 性 2 人 女 性 2 人 を1グ ループとして 足 し 算 タスクに 対 して 報 酬 体 系 を 実 験 前 に 選 択 させる 場 合 と 実 験 後 に 選 択 させる 場 合 の 両 方 を 用 いて 上 述 の4つの 要 因 が 競 争 的 報 酬 体 系 の 選 択 の 男 女 差 に 与 え る 影 響 を 識 別 した 報 酬 体 系 は 自 分 の 成 果 のみに 依 存 した 非 競 争 的 報 酬 体 系 ( 歩 合 制 ) と 他 人 の 成 果 にも 依 存 する 競 争 的 報 酬 体 系 (トーナメント 制 )の2 種 類 が 用 意 されている 彼 女 らの 分 析 によると 73%の 男 性 が 競 争 的 報 酬 体 系 を 好 むのに 対 し 女 性 は 35%しか 競 争 的 報 酬 体 系 を 選 択 しない この 競 争 的 報 酬 体 系 選 択 の 男 女 差 の 約 27%は 女 性 より 男 性 のほうが 自 信 過 剰 であることで 説 明 できる また 女 性 よりも 男 性 のほうが 競 争 的 報 酬 体 系 を 好 むために 男 性 は 競 争 的 報 酬 体 系 を 選 択 する つまり 彼 女 らの 研 究 では 競 争 的 環 境 選 択 の 男 女 差 は 上 述 の4つの 要 因 のうち 自 信 過 剰 と 競 争 への 嗜 好 で 説 明 され リスク 回 避 度 やフィードバック 回 避 度 は 説 明 力 を 持 たないという 結 果 が 得 られている 本 研 究 では Niederle and Vesterlund (2007)と 同 様 の 経 済 実 験 を 日 本 人 学 生 を 対 象 に しておこなう 彼 女 らの 実 験 設 計 とは 以 下 の2 点 で 異 なる 第 1に グループの 男 女 構 成 比 である もし 男 性 のほうが 女 性 よりも 能 力 があると 予 測 しているのならば 競 争 相 手 の 性 別 が 自 信 過 剰 に 影 響 を 与 えるかもしれない そこで 我 々は 男 性 2 人 女 性 2 人 だけでは なく さまざまな 男 女 比 率 のグループで 実 験 をおこなう こうすることで 男 女 構 成 比 が 自 信 過 剰 に 与 える 影 響 を 明 らかにする 第 2に 危 険 回 避 度 やフィードバック 回 避 度 の 計 測 である 競 争 的 環 境 参 入 の 意 思 決 定 の 際 に リスク 回 避 度 やフィードバック 回 避 度 は 重 要 な 役 割 を 果 たす 可 能 性 が 高 い 本 研 究 では Niederle and Vesterlund (2007)で 直 接 計 測 されていなかったリスク 回 避 度 やフィードバック 回 避 度 をアンケート 調 査 で 質 問 すること - 2 -

により 計 測 する そして 計 測 したリスク 回 避 度 やフィードバック 回 避 度 をコントロー ルした 上 で 競 争 に 対 する 嗜 好 や 自 信 過 剰 が 競 争 的 環 境 参 入 に 対 する 決 定 にどのように 影 響 を 与 えているか 明 らかにする 本 研 究 は Niederle and Vesterlund (2007) の 問 題 点 を 改 善 し 日 本 において 経 済 実 験 を 再 現 して 比 較 分 析 すると 言 う 意 味 で Niederle and Vesterlund (2007)の 補 完 的 研 究 である 分 析 により 以 下 の 結 果 が 得 られた (1) 男 女 でパフォーマンスの 差 はないが 女 性 より 男 性 のほうが 競 争 的 報 酬 体 系 (トーナメント 制 報 酬 体 系 )を 選 択 する 確 率 が 高 い (2)そ のトーナメント 参 入 の 男 女 差 の 大 部 分 は 男 性 が 女 性 よりも 自 信 過 剰 であることに 起 因 す る (3)アンケート 調 査 から 計 測 した 危 険 回 避 度 やフィードバック 回 避 度 時 間 選 好 率 は 競 争 的 報 酬 体 系 選 択 の 男 女 差 に 対 して 説 明 力 がほとんどない (4)また 男 性 のほうが 女 性 より 競 争 を 好 むためであるという 説 明 は 限 定 的 である また 男 女 構 成 比 は 自 信 過 剰 に 影 響 を 与 える 男 性 は 女 性 がグループにいると 自 信 過 剰 になり 女 性 は 男 性 がグループに いないと 自 信 過 剰 になる 論 文 の 構 成 は 以 下 の 通 りである 次 節 では 実 験 の 概 要 を 説 明 する 第 3 節 では 実 験 の 結 果 を 利 用 し パフォーマンスに 男 女 差 があるのか トーナメント 参 入 に 男 女 差 がある のか トーナメント 参 入 の 男 女 差 はパフォーマンスに 男 女 差 によるのかを 確 認 する 第 4 節 では トーナメント 参 入 の 男 女 差 の 要 因 を 分 析 する 最 後 に 第 5 節 で 全 体 をまとめる 2. 実 験 の 概 要 本 研 究 では 被 験 者 に4つのタスクを 解 かせる 実 験 をおこなう それぞれのタスクは 計 算 問 題 への 回 答 や 報 酬 体 系 の 選 択 である 実 験 は 大 阪 大 学 社 会 経 済 研 究 所 において 11 月 12 日 14 日 15 日 の3 日 間 で6セッションおこなった 各 セッションには 20 人 (= 1グループ 当 たり4 人 5グループ)の 被 験 者 が 参 加 した 6セッションすべてで 30 グ ループ( 男 性 60 人 女 性 60 人 )が 実 験 に 参 加 した セッション1からセッション5に 参 加 した5グループの 男 女 構 成 は 1 男 性 4 人 女 性 0 人 2 男 性 3 人 女 性 1 人 3 男 性 2 人 女 性 2 人 4 男 性 1 人 女 性 3 人 5 男 性 0 人 女 性 5 人 である セッション6におけるグループの 男 女 構 成 は 男 性 2 人 女 性 2 人 のみである Niederle and Vesterlund (2007) では 被 験 者 を 横 一 列 に 着 席 させているため 被 験 者 はグ ループ 内 の 他 のメンバーや 性 別 を 確 認 することができる そのため 競 争 相 手 のパフォー マンスがよさそうかどうか 分 かると 競 争 への 嗜 好 に 影 響 する 可 能 性 がある 他 の 競 争 相 手 の 見 かけの 効 果 によって 競 争 への 嗜 好 が 変 化 する 可 能 性 をコントロールするため 本 研 究 の 実 験 では 被 験 者 をランダムに 着 席 させ 被 験 者 には 自 分 のグループの 男 女 構 成 だけを 知 らせている 計 算 問 題 計 算 問 題 をおこなうタスクでは 被 験 者 はコンピュータ 上 で2 桁 の 数 字 を 足 し 合 わせる 計 - 3 -

算 問 題 を 解 く 被 験 者 は 計 算 機 を 使 用 してはいけないが 配 布 したメモ 用 紙 と 鉛 筆 は 自 由 に 使 用 してもよい 2 桁 の 数 字 はランダムに 出 題 される それぞれの 問 題 は 以 下 のよう に 出 題 され 被 験 者 は 空 欄 に 合 計 を 入 力 する 回 答 入 力 45 32 68 19 75 被 験 者 はコンピュータ 上 で 回 答 を 入 力 し 次 の 問 題 へ 進 むと 前 の 回 答 の 正 否 が 同 時 に 表 示 される 累 計 問 題 数 と 累 計 正 解 数 は コンピュータのスクリーンに 常 に 表 示 されている 1つのタスクの 制 限 時 間 は5 分 で 被 験 者 は 制 限 時 間 内 にできるだけ 多 くの 問 題 を 解 く 報 酬 体 系 と 各 タスクについては 以 下 の 通 りである 報 酬 体 系 それぞれのタスクの 賞 金 は グループ 内 の 順 位 は 関 係 ない 歩 合 制 と グループ 内 の 順 位 に よって 賞 金 額 が 異 なるトーナメント 制 のどちらかの 報 酬 体 系 に 基 づいて 計 算 される 1つ のグループの 人 数 は4 人 である 被 験 者 は 誰 が 自 分 のグループのメンバーなのか 誰 が どのグループなのかは 知 ることができない 歩 合 制 グループ 内 の 順 位 に 関 わらず すべての 人 が 正 解 1 問 につき 50 円 受 け 取 ることができる トーナメント 制 グループの 中 で 一 番 正 解 数 の 多 かった 人 1だけが 正 解 1 問 につき 200 円 受 け 取 ることがで きる グループの 中 で 一 番 正 解 数 が 多 かった 人 以 外 は 賞 金 を 受 け 取 ることができない Niederle and Vesterlund (2007) は 歩 合 制 よりもトーナメント 制 の 下 で 被 験 者 が 平 均 的 により 多 く 正 答 したことを 示 している 彼 女 らも 指 摘 するとおりこの 効 果 は 報 酬 体 系 が 努 力 インセンティブを 上 昇 させる 効 果 と タスクの 順 番 (タスク1 歩 合 制 タスク2トー ナメント 制 )による 学 習 効 果 によって 成 績 が 上 昇 する 効 果 の2つによって 構 成 されると 考 えられる そこで 本 研 究 は セッション1からセッション5では タスク1の 報 酬 体 系 を 歩 合 制 タスク2の 報 酬 体 系 をトーナメント 制 とし セッション6では タスク1の 報 酬 体 系 をトーナメント 制 タスク2の 報 酬 体 系 を 歩 合 制 とする セッション1-5とセッシ ョン6の 差 を 利 用 することにより 学 習 効 果 の 有 無 を 確 認 することが 可 能 となる タスク3 被 験 者 は 計 算 問 題 をおこなう 前 に 歩 合 制 とトーナメント 制 のどちらで 賞 金 を 支 払 ってほ しいかを 選 択 する もし 被 験 者 がトーナメント 制 を 選 んだなら タスク3 以 前 におこなっ 1 グループ 内 で 一 番 正 解 数 が 多 かった 人 が2 人 いた 場 合 は 2 人 とも1 位 としている - 4 -

たトーナメント 制 (セッション1-5ではタスク2 セッション6ではタスク1)のタス クにおいてグループの 他 のメンバーの 正 答 数 よりその 被 験 者 のタスク3の 正 答 数 が 多 か った 場 合 のときにだけ 正 解 1 問 につき 200 円 受 け 取 ることができる つまり タスク3 でトーナメント 制 を 選 択 した 被 験 者 の 正 答 数 は タスク3の 成 績 ではなく それ 以 前 のト ーナメント 制 のタスクにおけるグループの 他 のメンバーの 成 績 と 比 較 される タスク4 タスク4についての 説 明 は タスク4の 直 前 におこなう 被 験 者 は このタスクでは 計 算 問 題 をしなくてもよい このタスクでは 歩 合 制 でおこなったタスク(セッション1 5 ではタスク1 セッション6ではタスク2)について 歩 合 制 とトーナメント 制 のどちら で 賞 金 を 支 払 ってほしいかを 選 択 する 予 想 問 題 タスク4 終 了 後 に 被 験 者 はタスク1とタスク2のグループ 内 の 順 位 (1 位 ~4 位 )を 予 想 する 1 問 正 解 につき 100 円 受 け 取 ることができる アンケート 予 想 問 題 終 了 後 に 被 験 者 はアンケートに 回 答 する アンケートの 質 問 項 目 は 危 険 回 避 度 やフィードバック 回 避 度 自 信 過 剰 時 間 選 好 率 に 関 する 質 問 のほか 被 験 者 やその 家 族 の 属 性 に 関 する 質 問 である 実 験 の 賞 金 について すべての 被 験 者 は 参 加 報 酬 として 2000 円 受 け 取 る この 参 加 報 酬 とは 別 に それぞれのタ スクにおける 成 績 に 基 づいて 賞 金 が 支 払 われる 各 タスクの 賞 金 額 は タスクごとの 報 酬 体 系 に 基 づいて 計 算 される 実 際 に 支 払 われる 賞 金 は 4つのタスクの 賞 金 額 の 中 からラ ンダムに1つを 選 択 し 賞 金 として 支 払 われる さらに 順 位 予 想 の 正 解 数 に 応 じて 賞 金 を 受 け 取 ることができる 賞 金 額 = 2000 円 ( 参 加 報 酬 )+ 順 位 予 想 の 賞 金 額 +4つのタスクからランダムに 選 んだ1つのタスクの 賞 金 額 平 均 賞 金 額 は 3246 円 であった 3. 実 験 結 果 3.A. 男 女 でパフォーマンスに 差 があるか?セッション1-セッション5 図 1には セッション1からセッション5の 歩 合 制 (panel(a))とトーナメント 制 (panel (B))の 正 答 数 の 累 積 密 度 分 布 を 示 す - 5 -

図 1 CDF of Number of Correctly Solved Problems: Session 1-5 (A) Piece Rate (B) Tournam ent 0.2.4.6.8 1 Women Men 0.2.4.6.8 1 Women Men 0 10 20 30 40 50 60 0 10 20 30 40 50 60 歩 合 制 トーナメント 制 どちらの 場 合 も 男 女 の 分 布 は 似 通 っている 歩 合 制 での 男 性 の 平 均 正 答 数 は 17.16 問 で 女 性 の 平 均 正 答 数 は 16.8 問 である t 検 定 の 結 果 歩 合 制 におい てパフォーマンスに 男 女 差 がないという 帰 無 仮 説 は 棄 却 されない(p 値 =0.3972) トーナメ ント 制 では 男 性 の 平 均 正 答 数 は 18.36 問 で 女 性 の 平 均 正 答 数 は 16.84 問 である t 検 定 の 結 果 トーナメント 制 においてパフォーマンスに 男 女 差 がないという 帰 無 仮 説 は 棄 却 さ れない(p 値 =0.1411) Mann-Whitney test による 男 女 の 分 布 の 差 の 検 定 においても 歩 合 制 でもトーナメント 制 でも 男 女 の 正 答 数 の 分 布 に 差 はない セッション1からセッショ ン5でのパフォーマンスについては Niederle and Vesterlund (2007)と 同 様 に 男 女 差 は 確 認 されない Niederle and Vesterlund(2007)では 男 女 ともに 歩 合 制 よりトーナメント 制 の 成 績 の ほうが 有 意 によい 本 研 究 では 男 性 においては 歩 合 制 よりトーナメント 制 の 成 績 が 有 意 によいが 女 性 では 歩 合 制 とトーナメント 制 の 正 答 数 に 有 意 な 差 は 確 認 されない 歩 合 制 とトーナメント 制 のパフォーマンスの 分 布 の 差 の 検 定 (Wilcoxon matched-pairs signed-rank test)においても 男 性 では 歩 合 制 とトーナメント 制 の 正 答 数 の 分 布 は 異 なる が 女 性 では 両 者 の 分 布 が 同 じである 歩 合 制 からトーナメント 制 の 成 績 の 上 昇 度 は 男 性 の 方 が 有 意 に 高 い(p 値 =0.0379) Niederle and Vesterlund(2007)では 成 績 の 上 昇 度 の 男 女 差 は 確 認 されていない 3.B.トーナメントへの 参 入 に 男 女 差 は 存 在 するか(タスク3の 選 択 )? - 6 -

セッション 全 体 で 男 性 の 43%がトーナメント 制 を 選 択 したのに 対 し 女 性 18%だけが トーナメント 制 を 選 択 する 本 稿 で Niederle and Vesterlund(2007)と 同 様 に 男 性 2 人 女 性 2 人 のみのグループでおこなったセッション6では 男 性 の 60% 女 性 の 20%だけがト ーナメントを 選 択 する 日 本 においても 女 性 より 男 性 でトーナメント 制 を 選 択 する 確 率 が 高 い しかし この 日 本 におけるトーナメント 選 択 確 率 は Niederle and Vesterlund(2007) と 比 較 して 低 い 彼 女 らの 分 析 では 男 性 の 73% 女 性 の 35%がトーナメントを 選 択 する 日 本 人 はアメリカ 人 ほど 競 争 的 報 酬 体 系 を 選 択 しないことが 示 唆 される 3.C.トーナメント 参 入 の 男 女 差 は パフォーマンスの 男 女 差 によるのか? 3.B.で 観 察 されたトーナメント 制 の 選 択 確 率 の 男 女 差 は パフォーマンスの 男 女 差 に よるものなのであろうか それとも 被 験 者 が 男 女 差 を 正 確 に 予 測 しているからだろうか 表 1:タスク1とタスク2の 成 績 別 タスク3におけるトーナメント 選 択 確 率 平 均 値 の 差 の 検 定 :セッション1-5 正 答 数 平 均 値 タスク3での 報 酬 体 系 選 択 歩 合 (task1) トーナメント(task2) トーナメン サンプル 数 ト- 歩 合 女 性 歩 合 16.293 16.195-0.098 41 [0.848] [0.901] [0.490] トーナメント 19.111 19.778 0.667 9 [3.607] [2.618] [1.915] 男 性 歩 合 15.433 16.267 0.833 30 [0.861] [0.893] [0.559] トーナメント 19.750 21.500 1.750 20 [2.053] [2.235] [0.458] 男 性 - 女 性 歩 合 -0.859 0.072 0.931 30 vs. 41 ( 上 二 段 の 差 検 定 ) [1.236] [1.302] [0.746] トーナメント 0.639 1.722 1.083 20 vs. 9 [3.892] [3.778] [1.432] 括 弧 内 は 標 準 誤 差 まず タスク3における 報 酬 体 系 の 選 択 を 所 与 としたときに タスク1とタスク2の 男 女 のパフォーマンスに 特 徴 はあるのか 確 認 する 表 1には セッション1からセッション5 におけるタスク3で 選 択 した 報 酬 体 系 ごとの 平 均 正 答 数 を 男 女 別 に 示 している タスク3 でトーナメント 制 を 選 択 する 人 は タスク1の 歩 合 制 での 正 答 数 よりタスク2のトーナメ ント 制 の 正 答 数 が 高 い 傾 向 にある Niederle and Vesterlund(2007)と 同 様 に タスク3 で 選 択 した 報 酬 体 系 を 所 与 とすると 男 女 のパフォーマンスに 有 意 な 差 は 確 認 されない 女 性 より 男 性 がトーナメント 制 を 選 択 する 確 率 が 高 いのは 過 去 のパフォーマンスによる ものではないと 考 えられる - 7 -

表 2:タスク3におけるトーナメント 選 択 確 率 のプロビット 推 定 被 説 明 変 数 :トーナメント 選 択 =1 セッション1-5 女 性 ダミー -0.221 [0.101] トーナメント 正 答 数 0.023 [0.009] トーナメント 正 答 数 - 0.010 歩 合 正 答 数 [0.018] 対 数 尤 度 -52.920 1 段 目 : 係 数 の 限 界 効 果 2 段 目 : 標 準 誤 差 限 界 効 果 は 男 性 トーナメントの 成 績 =21 問 歩 合 の 成 績 =19 問 で 評 価 表 2には タスク3におけるトーナメント 制 選 択 確 率 のプロビット 推 定 の 結 果 を 示 す 女 性 ダミーは 有 意 に 負 の 値 が 推 定 されている タスク1 タスク2の 成 績 を 所 与 としたと き 女 性 は 有 意 にトーナメント 制 を 選 択 する 確 率 が 低 い しかし Niederle and Vesterlund (2007)とは 異 なり トーナメント 制 の 成 績 は 有 意 にタスク3でトーナメント 制 を 選 択 す る 確 率 に 正 の 影 響 を 与 える 以 上 表 1 2より トーナメント 選 択 者 が 男 性 で 多 いのは パフォーマンスの 違 いによるものでないことが 観 察 された 次 に トーナメント 選 択 の 男 女 差 が 成 績 予 測 の 正 確 性 の 男 女 差 に 起 因 するのかを 確 認 する 図 2には タスク2(panel A)とタスク3(panel B)の 成 績 四 分 位 別 のタスク3 でのトーナメント 選 択 割 合 を 示 す 成 績 予 測 に 関 しては 男 女 ともに 不 正 確 であるが ど の 成 績 四 分 位 別 を 見 ても 女 性 より 男 性 のほうでトーナメント 選 択 割 合 が 高 い 女 性 では トーナメントへ 過 小 参 入 男 性 では 過 大 参 入 である 可 能 性 が 高 い 図 2 (A) - 8 -

Proportion of Participants Selecting Tournament for Task3 Conditional on Task 2 Perform ance Quartile.1.2.3.4.5.6 Women Men 0 1 2 3 4 1=Worst quartile 4=Best (B) Proportion of Participants Selecting Tournament for Task 3 Conditional on Task 3 Performance.1.2.3.4.5.6 Women Men 1 2 3 4 1=Worst quartile 4=Best それでは トーナメント 参 入 の 差 の 大 きさはどの 程 度 の 賞 金 額 に 値 するのだろうか ト - 9 -

ーナメントで1 位 となる 正 答 数 ( 過 剰 過 少 参 入 の 分 岐 点 )を 予 測 するため 1 男 女 区 別 なしでランダムに 被 験 者 をグルーピングする 2ランダムなグルーピングの 中 でトーナメ ント 制 の 下 で1 位 となる 場 合 に1 それ 以 下 となる 場 合 に0をとる 変 数 (random_win)を 作 成 する 3random_win が1となる 確 率 をプロビットモデルで 推 定 する 1~3の 結 果 を 表 3に 示 している 本 研 究 のトーナメント 選 択 と 歩 合 制 が 無 差 別 になる 損 益 分 岐 点 は 18 問 であり Niederle and Vesterlund(2007)の 13 問 より 多 い 表 3:ランダムに 発 生 させたグループで1 位 となる 確 率 のプロビット 推 定 からの 予 測 値 正 答 数 1 位 となる 確 率 期 待 トーナメント 賞 金 歩 合 賞 金 17 0.17 581.09 850 18 0.24 860.33 900 19 0.32 1214.77 950 トーナメント 制 (タスク2)の 正 答 数 が 19 問 以 上 であるならば その 被 験 者 は 約 32%か それ 以 上 の 確 率 でトーナメント 制 の 勝 者 となる パフォーマンスコストを 無 視 し パフォ ーマンスの 分 布 を 知 っていて タスク3でも 同 じパフォーマンスを 維 持 すると 仮 定 すると トーナメント 参 入 の 決 定 は 32%(あるいはそれ 以 上 )の 確 率 で 200 円 受 け 取 るか 確 実 に 50 円 受 け 取 るかのギャンブルである 正 答 数 が 19 問 の 被 験 者 にとって 32%の 確 率 で 3800 円 ( 期 待 トーナメント 賞 金 1214.77 円 ) 受 け 取 るか 確 実 に 950 円 受 け 取 るかの 選 択 である 表 4には 過 大 過 小 参 入 の 男 女 差 と 期 待 コストを 計 算 した 結 果 を 示 す 正 答 数 が 19 問 以 上 の 被 験 者 のうち 9/12 人 の 女 性 と 9/21 人 の 男 性 がトーナメントを 選 択 すべきで あるがトーナメントを 選 択 していない 同 様 に 正 答 数 が 17 問 以 下 の 被 験 者 がトーナメント 制 の 勝 者 となる 確 率 は 17%かそれ 以 下 である 正 答 数 が 17 問 の 被 験 者 にとっては 17%の 確 率 で 3400 円 ( 期 待 トーナメント 賞 金 581.09 円 ) 受 け 取 るか 確 実 に 850 円 受 け 取 るかの 選 択 である 正 答 数 が 17 問 以 下 の 被 験 者 のうち 6/37 人 の 女 性 と 8/25 人 の 男 性 がトーナメントを 選 択 すべきではないがト ーナメントを 選 択 している 以 上 より 女 性 は 男 性 より 過 小 参 入 の 割 合 が 大 きく 男 性 は 女 性 よりも 過 剰 参 入 の 割 合 が 大 きい 過 小 参 入 の 期 待 費 用 の 平 均 は 男 性 より 女 性 で 高 く 過 剰 参 入 の 期 待 費 用 総 額 は 女 性 より 男 性 のほうが 高 いといえる - 10 -

表 4:タスク3における Over-entry と Under-entry の 期 待 費 用 Calculation based on Task2-Performance Task3-Performance 女 性 男 性 女 性 男 性 Under-entry (19 問 以 上 正 答 ) トーナメントを 選 択 すべき 人 数 12 21 13 23 うちトーナメントを 選 択 しなかった 人 数 9 9 8 11 Under-entryの 期 待 費 用 総 額 \ 31,649 \ 29,700 \ 30,000 \ 34,200 Under-entryの 期 待 費 用 平 均 \ 3,517 \ 3,300 \ 3,750 \ 3,109 Over-entry(17 問 以 下 正 答 ) トーナメントを 選 択 すべきでない 人 数 37 25 32 25 うちトーナメントを 選 択 した 人 数 6 8 4 7 Over-entryの 期 待 費 用 総 額 Over-entryの 期 待 費 用 平 均 総 期 待 費 用 \ \ 4,450 742 \36,099 \ \ 5,134 642 \34,834 \ \ 2,914 729 \32,914 \ \ 4,725 675 \38,925 4.トーナメント 参 入 の 男 女 差 の 説 明 前 節 より トーナメント 選 択 確 率 に 関 して 女 性 より 男 性 でトーナメント 選 択 確 率 が 高 いことがわかった そしてその 男 女 差 はタスク1とタスク2のパフォーマンスの 男 女 差 に よるものではなく 成 績 予 測 能 力 の 差 によるものである 具 体 的 には 男 性 ではトーナメ ントへの 過 剰 参 入 女 性 では 過 小 参 入 の 割 合 が 高 いことが 明 らかとなった 本 節 では トーナメント 参 入 の 男 女 差 の 原 因 を 説 明 することを 目 的 とする A 小 節 では トーナメント 参 入 の 男 女 差 を 男 性 の 自 信 過 剰 が 原 因 であるかどうかを 検 証 する B 小 節 で は 報 酬 体 系 選 択 の 男 女 差 が 自 信 過 剰 や 危 険 回 避 度 フィードバック 回 避 度 などの 要 因 の 男 女 差 によるものなのかをタスク4を 利 用 して 分 析 する C 小 節 では 自 信 過 剰 や 危 険 回 避 度 フィードバック 回 避 度 などの 要 因 で 説 明 されなかったトーナメント 参 入 の 男 女 差 は 競 争 に 対 する 嗜 好 によるものなのかを 検 証 する 4.A. 男 性 は 女 性 よりも 自 信 過 剰 だから トーナメント 参 入 に 男 女 差 があるのか タスク4の 後 被 験 者 にタスク1とタスク2の 順 位 を 予 想 してもらった 被 験 者 は 予 想 順 位 が 正 解 だと1 問 につき 100 円 受 け 取 ることができる トーナメント 制 の 順 位 予 想 分 布 ( 表 5)を 見 ると 男 性 の 40%がグループ 内 で1 位 であると 予 想 しているのに 対 し 女 性 の 20%だけが1 位 であると 予 想 している 平 均 値 の 差 の 検 定 の 結 果 男 性 のトーナメント 制 では 有 意 に 実 際 の 順 位 より 予 想 順 位 のほうがよい 男 女 とも 自 信 過 剰 であるが 男 性 の 方 が 女 性 より 自 信 過 剰 であることが 観 察 される また 女 性 の 予 測 のほうがより 正 確 であ る - 11 -

表 5:トーナメント 制 の 順 位 予 想 分 布 (Session1-5) 男 性 女 性 予 想 順 位 うち 間 違 い 予 想 順 位 うち 間 違 い 1:Best 20 13 10 5 2 16 13 15 9 3 8 6 16 12 4:Worst 6 3 9 4 合 計 50 35 50 30 予 想 トーナメント 順 位 を 被 説 明 変 数 とした Ordered Probit 推 定 の 結 果 を 表 6に 示 す 2 列 目 を 見 ると 女 性 ダミーの 係 数 は 有 意 性 は 低 い(p 値 =0.109)が 正 の 値 で 推 定 されてい る タスク1とタスク2の 成 績 を 所 与 とすると 女 性 は 男 性 よりも 自 分 の 成 績 に 自 信 がな い また 本 研 究 では 1 男 性 4 人 女 性 0 人 2 男 性 3 人 女 性 1 人 3 男 性 2 人 女 性 2 人 4 男 性 1 人 女 性 3 人 5 男 性 0 人 女 性 5 人 の5つのパターンの 男 女 構 成 で 実 験 をおこなっ た 被 験 者 には 自 分 のグループの 男 女 構 成 だけを 知 らせている この 男 女 構 成 の 情 報 が 自 信 過 剰 に 影 響 を 与 えているかもしれない 表 6の3~5 列 目 では グループの 男 女 構 成 をコントロールした 結 果 を 示 している グループの 男 女 構 成 ダミーは 有 意 に 推 定 されてい る グループ 構 成 は 自 信 過 剰 に 影 響 を 与 える 女 性 だけのグループでは 最 も 予 想 順 位 が 高 くなり 男 性 だけのグループでは 最 も 予 想 順 位 が 低 くなる さらに 男 性 2 人 女 性 2 人 お よび 男 性 1 人 女 性 3 人 のグループの 女 性 は 同 じグループの 男 性 と 比 較 して 予 想 順 位 が 低 くなる( 自 信 過 小 となる) 表 6: 予 想 トーナメント 順 位 に 関 する Ordered Probit 推 定 (セッション1-5) 被 説 明 変 数 :タスク2での 順 位 予 想 1 2 3 4 5 6 no cluster clustering clustering 女 性 ダミー 0.506 ** 0.367 *** 0.717 ** 0.717 *** 0.448 *** 0.423 * [0.218] [0.228] [0.326] [0.142] [0.102] [0.232] トーナメント 正 答 数 -0.101 ** -0.112 *** -0.112 *** -0.113 *** -0.108 *** [0.024] [0.026] [0.018] [0.017] [0.025] トーナメント 正 答 数 - -0.167-0.185 *** -0.185 *** -0.187 *** -0.164 *** 歩 合 正 答 数 [0.039] [0.041] [0.047] [0.049] [0.039] 男 4 女 0グループダミー 1.074 ** 1.074 *** 0.811 *** [0.498] [0.143] [0.054] 男 3 女 1グループダミー 0.605 0.605 *** 0.406 *** [0.437] [0.111] [0.022] 男 2 女 2グループダミー 0.534 0.534 *** 0.171 *** [0.392] [0.073] [0.078] 男 1 女 3グループダミー 0.901 ** 0.901 *** 0.610 *** [0.380] [0.056] [0.057] 男 2 女 2グループダミー 0.451 *** 女 性 ダミー [0.054] 男 1 女 3グループダミー 0.306 *** 女 性 ダミー [0.082] 自 信 過 剰 ( 健 康 1) -0.419 [0.274] サンプル 数 100 100 100 100 100 100 1 段 目 : 係 数 の 推 定 値 2 段 目 : 標 準 誤 差 男 女 構 成 グループダミーのベースライン: 男 0 女 4のグループ - 12 -

パフォーマンスを 所 与 としたときに 男 性 がよりトーナメントに 参 入 することは 男 性 が より 自 信 過 剰 であることで 説 明 されるのだろうか タスク2(トーナメント)の 予 想 順 位 別 トーナメント(タスク3)の 選 択 確 率 を 図 3に 示 す 順 位 予 想 はある 程 度 トーナメント 選 択 と 相 関 があることが 観 察 される また 全 体 的 に 男 性 は 女 性 よりも 自 信 過 剰 である タスク2(トーナメント)を1 位 と 予 想 した 人 に 限 ると 男 性 よりも 女 性 でトーナメント 選 択 確 率 が 低 い したがって トーナメント 選 択 の 男 女 差 は 自 信 過 剰 ( 予 想 順 位 )によっ て 説 明 できると 考 えられる 図 3 Proportion Selecting the Tournament for Task 3 Conditional on Guessed Rank.1.2.3.4.5.6 Women Men 1 2 3 4 1= Best R ank q uartile 4=W orst R ank 表 7(section1-6)はタスク3におけるトーナメント 選 択 確 率 のプロビット 推 定 の 結 果 を 示 している 第 3-B 列 を 見 ると 自 信 過 剰 (トーナメント 予 想 順 位 )をコントロールした 後 でも 男 女 のトーナメント 選 択 確 率 に 有 意 な 差 が 確 認 される しかし 推 定 値 の 大 きさ は 自 信 過 剰 が 大 きな 説 明 要 因 でないことを 示 唆 する 表 7:タスク3におけるトーナメント 選 択 確 率 のプロビット 分 析 被 説 明 変 数 :トーナメント 選 択 =1 (A)セッション1-5 (B)セッション1-6 1-A 2-A 3-A 1-B 2-B 3-B 女 性 ダミー -0.220 ** -0.202 ** -0.186-0.250 *** -0.234 *** -0.225 ** [0.088] [0.092] [0.115] [0.081] [0.086] [0.098] トーナメント 正 答 数 0.022 ** 0.012 0.019 ** 0.013 [0.008] [0.009] [0.008] [0.008] トーナメント 正 答 数 - 0.010-0.012 0.004-0.006 歩 合 正 答 数 [0.017] [0.017] [0.004] [0.017] トーナメント 予 想 順 位 -0.200 *** -0.132 ** [0.072] [0.060] フィードバック 回 避 度 -0.132 ** [0.060] 1 段 目 : 係 数 の 限 界 効 果 2 段 目 : 標 準 誤 差 限 界 効 果 は 男 性 トーナメントの 成 績 =18 問 歩 合 の 成 績 =17 問 トーナメント 予 想 順 位 =1 位 で 評 価 - 13 -

以 上 の 結 果 より 男 性 は 女 性 よりも 自 信 過 剰 であり 女 性 は 男 性 よりも 自 信 がないこと がわかった またトーナメント 選 択 の 男 女 差 は 自 信 過 剰 の 男 女 差 によって 説 明 できる し かし 自 信 過 剰 は 大 きな 説 明 要 因 ではないことが 示 唆 された 4.B.なぜ 男 性 のほうが 女 性 よりトーナメントを 選 択 するのか?-そのほかの 要 因 - それでは トーナメント 選 択 確 率 の 男 女 差 は 自 信 過 剰 以 外 のほかの 要 因 によって 説 明 されるのだろうか 本 小 節 では タスク4を 利 用 して 報 酬 体 系 選 択 後 にタスクをする 可 能 性 と 関 係 がないときにトーナメント 参 入 に 男 女 差 が 観 察 されるか 確 認 する タスク4では タスク1( 歩 合 制 )の 成 績 に 関 して 女 性 は 23%だけがトーナメントを 選 択 するのに 対 し 男 性 の 40%がトーナメントを 選 択 する(セッション 1-5) 報 酬 体 系 の 選 択 がその 後 に 行 うタスクと 関 係 しないときでさえ トーナメント 参 入 に 男 女 差 がある パフォーマンスやタスク1( 歩 合 制 )の 成 績 の 予 想 を 所 与 としたときでも この 男 女 差 は 観 察 されるだろうか 予 想 をコントロールすることによって トーナメント 参 入 の 男 女 差 が 自 信 過 剰 によって 説 明 されるのか それとも 危 険 回 避 度 やフィードバック 回 避 度 によっ て 説 明 されるのか 確 認 することができる 表 8:タスク1とタスク2の 成 績 別 タスク4におけるトーナメント 選 択 確 率 平 均 値 の 差 の 検 定 :セッション1-5 タスク4で 正 答 数 平 均 値 の 報 酬 体 トーナメン 系 選 択 歩 合 (task1) トーナメント(task2) ト- 歩 合 サンプル 数 女 性 歩 合 15.027 15.622-0.595 37 [0.569] [0.553] [0.889] トーナメント 21.846 20.308 1.538 13 [2.884] [2.890] [0.889] 男 性 歩 合 14.677 16.355-1.677 31 [0.861] [0.913] [0.446] トーナメント 21.211 21.632-0.421 19 [1.962] [2.306] [0.681] 括 弧 内 は 標 準 誤 差 表 8は タスク1とタスク2の 成 績 別 にタスク4のトーナメント 選 択 確 率 の 平 均 値 を 示 したものである Niederle and Vesterlund(2006)では 女 性 では 平 均 値 に 差 はなかったが 本 稿 では 男 女 ともにタスク4で 歩 合 制 を 選 択 した 人 よりトーナメント 制 を 選 択 した 人 の ほうが 歩 合 制 (タスク1)の 正 答 数 の 平 均 値 は 高 い - 14 -

図 4 Proportion of Participants who Select Tournament for Task4 0.2.4.6.8 Women Men 0.2.4.6.8 Women Men 1 2 3 4 1=Worst quartile 4=Best Conditional on Task-1 Performance Quartile 1 2 3 4 1=Best Rank 4=W orst Rank Conditional on Guessed Piece-Rate Rank 図 4( 左 )は タスク1( 歩 合 制 )のパフォーマンスを 所 与 としたときのタスク4のト ーナメント 選 択 割 合 を 示 している パフォーマンスを 所 与 としたとき 第 2 四 分 位 で 男 女 差 が 強 く 確 認 される 以 上 より Niederle and Vesterlund(2007)ほど 明 確 な 男 女 差 では ないが タスク4でのトーナメント 選 択 の 男 女 差 はパフォーマンスの 男 女 差 によるものだ と 考 えられる 自 信 過 剰 の 影 響 と 危 険 回 避 度 フィードバック 回 避 度 の 影 響 を 識 別 するた めに 歩 合 制 (タスク1)の 順 位 予 想 を 利 用 する 図 4( 右 )には 予 想 順 位 ( 歩 合 制 )ご とのトーナメント 選 択 確 率 を 示 す タスク3の 場 合 とは 異 なり タスク4でのトーナメン ト 選 択 の 男 女 差 はかなり 小 さい 男 女 ともにより 自 信 のある 人 がよりトーナメントを 選 択 している 表 9には タスク4におけるトーナメント 選 択 確 率 のプロビット 推 定 の 結 果 を 示 す パフォーマンスを 所 与 とすると(2 列 目 ) 女 性 ダミーは 統 計 的 に 有 意 に 負 で 推 定 さ れている 自 信 過 剰 危 険 回 避 度 フィードバック 回 避 度 の 要 因 においても 男 女 差 がある ことを 示 唆 している タスク1での 成 績 と 予 想 順 位 両 方 を 所 与 とした 場 合 (3 列 目 ) 女 性 ダミーの 推 定 値 は 統 計 的 に 有 意 ではない 自 信 過 剰 の 変 数 ( 予 想 順 位 )をコントロールし たときに 男 女 差 がなくなることは タスク4のトーナメント 選 択 における 男 女 差 の 大 部 分 は 自 信 過 剰 の 男 女 差 で 説 明 されることを 意 味 する また 危 険 回 避 度 やフィードバック 回 避 度 は 説 明 力 を 持 たない 可 能 性 を 示 唆 している - 15 -

表 9:タスク4におけるトーナメント 選 択 確 率 のプロビット 推 定 セッション1-6 被 説 明 変 数 :トーナメント 選 択 =1 女 性 ダミー -0.167-0.177-0.056 [0.084] [0.076] [0.097] 歩 合 制 正 答 数 0.051 0.020 [0.013] [0.010] 歩 合 予 想 順 位 -0.309 [0.061] 対 数 尤 度 -72.97707-59.719-43.663 1 段 目 : 係 数 の 限 界 効 果 2 段 目 : 標 準 誤 差 限 界 効 果 は 男 性 歩 合 の 成 績 =19 問 歩 合 予 想 順 位 =1 位 で 評 価 本 研 究 では Niederle and Vesterlund(2007)で 直 接 計 測 されていなかったフィードバ ック 回 避 度 や 危 険 回 避 度 について アンケートによって 質 問 している セッション1-5 についてそれらの 変 数 をコントロールし タスク4におけるトーナメント 選 択 確 率 のプロ ビット 推 定 の 結 果 が 表 10 の4~7 列 目 である フィードバック 回 避 度 や 危 険 回 避 度 をコン トロールしても 自 信 過 剰 ( 予 想 順 位 )は 統 計 的 に 有 意 である 女 性 ダミーは 統 計 的 に 有 意 な 値 に 推 定 されておらず タスク4での 報 酬 体 系 選 択 に 男 女 差 はない これは 競 争 への 嗜 好 で 説 明 できる 可 能 性 を 示 唆 している 表 10:タスク4におけるトーナメント 選 択 確 率 のプロビット 推 定 (セッション1-5) 被 説 明 変 数 :タスク4でのトーナメント 選 択 確 率 (=1) 1 2 3 4 5 6 7 女 性 ダミー -0.120-0.116 0.020-0.003 0.028 0.087 0.002 [0.093] [0.112] [0.086] [0.097] [0.113] [0.113] [0.100] 歩 合 制 正 答 数 0.056 *** 0.027 ** 0.034 ** 0.039 ** 0.048 ** 0.039 *** [0.015] [0.012] [0.013] [0.016] [0.021] [0.015] 歩 合 予 想 順 位 -0.352 *** -0.346 *** -0.383 *** -0.420 *** -0.351 *** [0.079] [0.080] [0.096] [0.102] [0.082] フィードバック 回 避 度 0.165 * 0.254 ** 0.302 ** 0.186 ** [0.092] [0.120] [0.134] [0.100] 絶 対 的 危 険 回 避 度 -25.124 * (200 円 ) [13.216] 絶 対 的 危 険 回 避 度 -351.959 (2000 円 ) [214.66] 降 水 確 率 -0.004 * [0.002] サンプル 数 100 100 100 93 93 93 100 1 段 目 : 係 数 の 限 界 効 果 2 段 目 : 標 準 誤 差 限 界 効 果 は 男 性 歩 合 の 成 績 =19 問 歩 合 予 想 順 位 =1 位 で 評 価 4.C.なぜ 男 性 のほうが 女 性 よりトーナメントを 選 択 するのか?- 競 争 への 嗜 好 - タスク3 タスク4では 歩 合 制 かトーナメント 制 の 報 酬 体 系 の 選 択 をする タスク3 では 報 酬 体 系 を 選 択 した 後 に 実 際 のタスク( 計 算 問 題 )を 行 う 一 方 タスク4では 既 に 行 ったタスク1( 歩 合 制 )について 報 酬 体 系 の 選 択 を 行 う タスク3における 報 酬 体 - 16 -

系 選 択 の 要 因 は 自 信 過 剰 危 険 回 避 度 フィードバック 回 避 度 競 争 への 嗜 好 (preference) である タスク4における 報 酬 体 系 選 択 の 要 因 は 自 信 過 剰 危 険 回 避 度 フィードバッ ク 回 避 度 である したがってタスク3とタスク4の 結 果 を 比 較 することで トーナメント 選 択 の 男 女 差 が 競 争 への 嗜 好 によって 説 明 されるか 確 認 することができる 図 5は 予 想 順 位 を 所 与 としたときのトーナメント 選 択 割 合 ( 左 :タスク3 右 :タスク 4)である 右 の 図 は 女 性 より 男 性 のほうがトーナメント 制 報 酬 体 系 を 好 むためにトー ナメント 選 択 が 男 性 で 多 いことを 示 している しかし 左 の 図 は タスク3でのトーナメ ント 選 択 男 女 差 に 対 する 競 争 に 対 する 嗜 好 の 説 明 力 は 限 定 的 であることを 示 唆 する 図 5 Proportion Selecting the Tournament for Task 3 Conditional on Guessed Tournament Rank Proportion Selecting the Tournament for Task4 Conditional on Guessed Piece-Rate Rank 0.1.2.3.4.5.6 7.8 Women Men 0.2.4.6.8 Women Men 1 2 3 4 1=Best Rank 4=W orst Rank 1 2 3 4 1=Best Rank 4=Worst Rank 表 11 は タスク3におけるトーナメント 選 択 確 率 のプロビット 推 定 の 結 果 である 1~ 4 列 目 は Niederle and Vesterlund(2007)の 分 析 を 再 現 した 結 果 であり 5~6 列 目 は Niederle and Vesterlund(2007)で 直 接 計 測 されていなかったフィードバック 回 避 度 や 危 険 回 避 度 などをアンケートからのデータにより 捉 えた 分 析 結 果 である 女 性 ダミーの 有 意 性 は 不 安 定 であり 競 争 への 嗜 好 の 男 女 差 は 限 定 的 であると 考 えられる - 17 -

表 11:タスク3におけるトーナメント 選 択 確 率 のプロビット 推 定 (セッション1-5) 被 説 明 変 数 :トーナメント 選 択 =1 Niederle and Vesterlund (2007) の 再 現 選 好 パラメータのコントロール 1 2 3 4 5 6 女 性 ダミー -0.220 ** -0.202 ** -0.186-0.151-0.190-0.260 * [0.088] [0.092] [0.115] [0.110] [0.120] [0.143] トーナメント 正 答 数 0.022 ** 0.012 0.001 0.003 0.007 [0.008] [0.009] [0.007] [0.008] [0.010] トーナメント 正 答 数 - 0.010-0.012 0.025 0.019 0.023 歩 合 正 答 数 [0.017] [0.017] [0.017] [0.018] [0.022] トーナメント 予 想 順 位 -0.200 *** -0.072-0.060-0.037 [0.072] [0.053] [0.056] [0.072] タスク4での 選 択 0.555 *** 0.537 *** 0.533 *** (トーナメント=1) [0.119] [0.132] [0.144] フィードバック 回 避 度 0.088 0.189 [0.103] [0.137] 絶 対 的 危 険 回 避 度 -2.355-10.356 (200 円 ) [11.037] [14.921] 時 間 選 好 率 -0.024 (90 日 後 に1 万 円 ) [0.034] 双 曲 割 引 ダミー 0.052 [0.175] 1 段 目 : 係 数 の 限 界 効 果 2 段 目 : 標 準 誤 差 限 界 効 果 は 男 性 トーナメントの 成 績 =18 問 歩 合 の 成 績 =17 問 トーナメント 予 想 順 位 =1 位 で 評 価 以 上 より タスク4でのトーナメント 選 択 の 男 女 差 はパフォーマンスの 男 女 差 によるも のであることがわかった ただし タスク4のトーナメント 選 択 確 率 の 男 女 差 のほとんど は 自 信 過 剰 の 男 女 差 によって 説 明 される パフォーマンスの 男 女 差 の 影 響 は 小 さい また トーナメント 参 入 が 男 性 で 多 いのは 女 性 より 男 性 のほうがトーナメント 制 報 酬 体 系 を 好 むから という 説 明 は 限 定 的 であることがわかった 5.おわりに 本 稿 では Niederle and Vesterlund(2007)と 同 様 の 経 済 実 験 を 行 い 上 層 部 や 競 争 的 地 位 に 女 性 が 少 ないという 労 働 市 場 の 差 が パフォーマンスの 男 女 差 によるものなのか 競 争 に 対 する 嗜 好 の 男 女 差 によるものなのかを 確 認 した Niederle and Vesterlund(2007)で 直 接 計 測 されていなかった 危 険 回 避 度 やフィードバ ック 回 避 度 に 関 してアンケート 調 査 を 用 いることでそれらの 要 因 を 捉 えたこと 男 女 構 成 比 が 自 信 過 剰 に 与 える 影 響 を 明 らかにしたことに 特 徴 がある 分 析 の 結 果 (1) 男 女 でパフォーマンスの 差 はないが 女 性 より 男 性 のほうが 競 争 的 報 酬 体 系 (トーナメント 制 報 酬 体 系 )を 選 択 する 確 率 が 高 い (2)そのトーナメント 参 入 の 男 女 差 の 大 部 分 は 男 性 が 女 性 よりも 自 信 過 剰 であることに 起 因 する (3) 男 女 構 成 比 は 自 信 過 剰 に 影 響 を 与 える 競 争 相 手 の 性 別 が 自 信 過 剰 に 影 響 を 与 えている (4)アンケー ト 調 査 から 計 測 した 危 険 回 避 度 やフィードバック 回 避 度 時 間 選 好 率 は 競 争 的 報 酬 体 系 選 択 の 男 女 差 に 対 して 説 明 力 がほとんどない (5)また 男 性 のほうが 女 性 より 競 争 を 好 むためであるという 説 明 は 限 定 的 であることが 明 らかとなった - 18 -

参 考 文 献 Bertrand, Marianne and Kevin F. Hallock (2001) The gander gap in top corporate jobs, Industrial and Labor Relations Review, LV Beyer, Sylvia (1990) Gender Differences in the Accuracy of Self-Evaluations of Performance, Journal of Personality and Social Psychology, LIX, pp960-970. Beyer, Sylvia and Edward M. Bowden (1997) Gender Differences in Self-Perceptions: Convergent Evidence From Three Measures of Accuracy and Bias, Personality and Social Psychology Bulletein, XXⅢ, pp157-172. Lichtenstein, Sarah, Baruch Fischhoff, and Lawrence Phillips (1982) Calibration and Probabilities: The State of the Art to 1980, in Judgment Under Uncertainty: Heuristics and Biases, Daniel Kahneman, Paul Slovic and Amos Tversky, eds., (Cambridge University Press) Niederle, Muriel and Lise Vesterlund (2007) Do Women Shy Away From Competition? Do Men Compete Too Much? Vol.122, No.3, pp1067-1101. - 19 -