韓 日 接 触 の 痕 跡 としてのことわざ 1. 異 文 化 接 触 の 痕 跡 文 化 と 文 化 とが 接 触 するとき その 接 触 がどのようなものであっても 何 かそ の 痕 跡 を 残 すものである その 痕 跡 の 大 部 分 はすぐに 消 えてしまうであろうが 長 く 残 るものもある 韓 国 と 日 本 は 狭 い 海 を 隔 てた 隣 国 として 同 じ 漢 字 文 化 圏 に 属 する 国 として 古 くから 密 接 な 関 係 を 持 ってきた それは 両 国 の 文 化 や 風 俗 の 様 々な 面 に 痕 跡 を 残 している 江 戸 時 代 の 日 本 と 李 朝 時 代 の 韓 国 は どちらも 鎖 国 政 策 を 取 り 外 部 世 界 との 接 触 を 絶 ってきた そのため 日 本 と 韓 国 の 国 家 的 接 触 はほとんどなかったので あるが 唯 一 の 例 外 があった 江 戸 時 代 に 12 回 にわたって 日 本 に 派 遣 された 朝 鮮 通 信 使 である 秀 吉 による 武 力 侵 略 の 後 始 末 として 再 開 された 最 後 の 12 回 目 の 通 信 使 は 双 方 の 財 政 的 な 理 由 により 対 馬 に 留 め 置 かれたが それ 以 外 は 対 馬 から 江 戸 まで 陸 路 海 路 の 旅 をした 数 百 人 規 模 の 使 節 であり 陸 路 を 行 く 場 合 には 笛 太 鼓 の 鳴 り 物 入 りで 行 列 した 一 生 に 一 度 見 られるかどうかの 大 イベントで 沿 道 は 見 物 客 が 殺 到 したと 伝 えられている この 朝 鮮 通 信 使 の 行 列 が 唐 子 踊 り や 唐 人 踊 り という 民 族 芸 能 として 日 本 の 各 地 にその 痕 跡 を 残 している 韓 国 に 残 った 日 本 伝 来 のものはと 言 えば 代 表 的 なものに 花 札 がある 韓 国 では 화투 ファトゥ とかあるいは 方 言 で ファト と 言 い 漢 字 では 花 闘 と 書 く ファトゥ は 老 若 男 女 の 区 別 なく 楽 しめる 家 庭 的 ともいえるほ ど 健 全 な 娯 楽 として 韓 国 社 会 に 定 着 している その 代 り 麻 雀 はやくざの 遊 び という 不 健 全 なイメージがあり 日 本 とはまるで 逆 であることが 興 味 深 い ほ とんどの 韓 国 人 はこの ファトゥ が 日 本 から 伝 わったものであることを 知 ら ない これが 日 本 統 治 時 代 に 韓 国 社 会 に 入 ったことは 明 らであるが ほとんど
84 の 韓 国 人 は 韓 国 の 伝 統 的 な 遊 びだと 思 っている 筆 者 も 日 本 に 来 るまでそう 思 い 込 んでいた 人 と 人 文 化 と 文 化 の 接 触 が 言 語 言 葉 にその 痕 跡 を 残 すこともある 日 本 の 地 名 の 奈 良 が 韓 国 語 の 나라 ナラ と 同 語 源 であり 百 済 からの 帰 化 人 たちが 持 ち 込 んだものであると 推 定 されることはよく 知 られた 例 である 比 較 的 新 しい 例 を 挙 げると 自 転 車 のことを 俗 語 で チャリンコ と 言 う チ ャリンコ は 一 般 的 でなくても ママチャリ ( 婦 人 用 自 転 車 )はよく 使 われる ママが 乗 るチャリンコ の 略 である この チャリンコ については 異 説 が あるが おそらく 韓 国 語 の 자전거 自 転 車 チャジョンゴ に 由 来 すると 考 えられる 在 日 韓 国 人 が 使 っていた 韓 国 語 が 日 本 人 社 会 でも 使 われるようにな った 例 であろう 逆 に 日 本 統 治 時 代 に 日 本 語 から 韓 国 語 に 入 った 言 葉 は 数 え 切 れないほど 多 い 筆 者 の 故 郷 である 全 羅 南 道 の 羅 州 (나주 ナジュ)は 玉 ねぎがよく 取 れる 玉 ねぎを 韓 国 語 で 양파 ヤンパ と 言 うが これは 比 較 的 新 しい 語 で 20 年 ほど 前 までは 다마네기 タマネンギ と 言 っていた 同 じように 벤토 ベン トー ( 弁 当 ) 와리바시 ワリバシ ( 割 り 箸 ) 요지 ヨージ ( 楊 枝 )なども 日 常 語 としてそのまま 使 われていた 日 本 語 に 由 来 するこのような 語 は 戦 後 国 語 醇 化 運 動 の 対 象 となり 次 第 に 純 粋 の 韓 国 語 に 置 き 換 えられていくのであ るが 오뎅 オデン 우동 ウドン のようにほぼ 完 全 に 韓 国 語 化 して 定 着 し てしまった 語 もある 羅 州 はまた ナシの 産 地 としても 有 名 である 나주배 ナジュベ つまり ナジュのナシ といって 韓 国 で 最 もおいしい 梨 の 取 れるところで 実 は 筆 者 の 家 もナシの 栽 培 農 家 である ナジュベの 品 種 名 は 신고 シンゴ あるい は 신고배 シンゴベ と 言 うが これは 漢 字 で 書 くと 新 高 と 書 くこと 日 本 ではこれを ニイタカ と 読 み ニイタカナシ は 高 知 県 の 名 産 である ことを 最 近 まで 知 らずにいた 日 本 語 の 新 高 (ニイタカ) が 韓 国 語 読 みさ れて 韓 国 語 になっているわけである 調 べてみると ニイタカナシ という のは 新 潟 県 の 品 種 と 高 知 県 の 品 種 を 交 配 させて 作 った 改 良 種 だそうで それで ニイタカナシ と 呼 ぶようになったのだそうである そのことを 父 に 話 した ところ 父 もそのことは 知 らなかったが 他 にも 조지로 チョジロ とか 이마무라 イマムラ とかいう 韓 国 語 ではない 名 前 の 品 種 があるということ を 話 してくれた 長 十 郎 や 今 村 などの 日 本 の 品 種 名 が 使 われているの
韓 日 接 触 の 痕 跡 としてのことわざ 85 である このように 平 和 的 であろうとなかろうと 人 と 人 文 化 と 文 化 が 接 触 する ときには 言 語 や 風 俗 習 慣 の 中 にその 痕 跡 が 残 るものである 言 語 の 一 部 とし てのことわざにも 文 化 接 触 が 反 映 される 欧 米 に 共 通 のことわざが 多 いのはそ のためである 日 本 と 韓 国 のことわざの 中 にも 両 文 化 の 接 触 の 痕 跡 が 残 されて いるのではないか と 予 測 される 2.ことわざ 研 究 ことわざの 定 義 は 難 しく ことわざ 研 究 の 最 も 難 しい 課 題 の 一 つとなってい るが とりあえず 昔 から 人 々の 間 で 言 い 伝 えられ 日 常 の 言 語 生 活 で 使 われて きた 主 として 作 者 不 明 の 教 訓 や 風 刺 を 含 んだ 簡 潔 で 口 調 のいい 慣 用 的 表 現 としておくことにする 韓 国 ではことわざを ソクタム 俗 談 と 言 う ことわざ 研 究 にも 様 々な 分 野 がある まず 各 地 に 伝 わることわざを 収 集 し その 意 味 を 記 述 し 分 類 整 理 する ことわざ 収 集 がある ことわざ 辞 典 の 編 纂 はその 産 物 である 次 に 収 集 されたことわざの 意 味 用 法 や 形 式 を 分 析 し ことわざとは 何 か ことわざの 特 質 はどのようなものであるかを 研 究 する こ とわざ 分 析 がある これがことわざ 研 究 の 中 心 を 占 める また 文 献 を 調 査 することによってことわざの 由 来 出 自 を 明 らかにし 語 り 伝 えられるうちに 生 じた 形 式 や 意 味 の 変 化 をたどる 歴 史 的 研 究 がある さらに ことわざは 比 較 の 対 象 にもなる 異 なる 文 化 のことわざを 比 較 対 照 することによって そ の 異 同 を 明 らかにしようとする 比 較 ことわざ 研 究 がある また 最 近 では 既 存 のことわざを 対 象 とするのではなく 新 しいことわざを 創 り 出 す 試 みを 通 じてことわざの 特 質 の 一 端 を 明 らかにしようとする 創 作 ことわざ の 活 動 も 注 目 されている 3. 韓 国 と 日 本 の 主 要 ことわざの 比 較 孔 泰 瑢 編 韓 国 の 故 事 ことわざ 辞 典 には 3,000 件 弱 の 故 事 ことわざが 収 録 されているが そのほとんどに 日 本 語 の 類 句 を 与 えている つまり 尐 なくと も 意 味 内 容 に 関 する 限 り 韓 国 と 日 本 のことわざは 極 めて 共 通 性 が 高 い しかし ことわざには 文 化 の 違 いを 超 えた 共 通 性 があることはよく 知 られていることで あり また 上 記 の 辞 典 の 見 出 しことわざや 類 句 ことわざの 中 にはあまり 知 ら れていないものも 数 多 く 含 まれているので 日 本 と 韓 国 のことわざに 意 味 的 に
86 共 通 したものがあること 自 体 は 特 に 注 目 すべきことではない そこで 比 較 的 よく 知 られていることわざ 1) に 絞 って 日 本 のことわざと 意 味 的 な 面 ばかりで はなく 表 現 形 式 においても 類 似 した 韓 国 のことわざを 取 り 上 げ 日 本 のことわ ざとの 関 係 を 検 討 してみよう まず 次 のようなことわざがある ( ) 内 は 韓 国 語 から 日 本 語 への 直 訳 内 は 対 応 する 日 本 のことわざである( 以 下 同 じ) (1)궁지에 든 쥐가 고양이를 문다( 窮 地 に 入 った 鼠 が 猫 を 噛 む) 窮 鼠 猫 を 噛 む 塩 鉄 論 궁하면 통한다( 窮 すれば 通 じる) 窮 すれば 通 ず 易 経 귀 막고 방울 도둑질한다( 耳 を 覆 って 鈴 盗 む) 耳 を 掩 うて 鐘 を 盗 む 呂 氏 春 秋 낙숫물이 댓돌을 뚫는다( 雤 垂 れが 土 台 石 を 穿 つ) 雤 だれ 石 を 穿 つ 漢 書 달도 차면 기운다( 月 も 満 ちれば 欠 ける) 満 ちればかく 史 記 등잔 밑이 어둡다( 灯 台 の 下 が 暗 い) 灯 台 下 暗 し 마른 하늘에 날벼락( 晴 れた 空 に 雷 ) 青 天 の 霹 靂 陸 游 の 詩 맑은 물에 고기 안 논다( 清 い 水 に 魚 は 遊 ばない) 水 清 ければ 魚 棲 まず 漢 書 백 번 듣는 것이 한 번 보는 것만 못하다( 百 回 聞 くのが 一 回 見 るのに 及 ばな い) 百 聞 は 一 見 に 如 かず 漢 書 범 굴에 들어가야 범을 잡는다( 虎 の 穴 に 入 って 行 ってこそ 虎 を 捕 まえる) 虎 穴 に 入 らずんば 虎 児 を 得 ず 後 漢 書 사람은 죽으면 이름을 남기고 범은 죽으면 가죽을 남긴다( 人 は 死 ねば 名 を 残 し 虎 は 死 ねば 皮 を 残 す) 虎 は 死 して 皮 を 留 め 人 は 死 して 名 を 残 す 唐 草 八 家 文 삼십육계에 줄행랑이 으뜸( 三 十 六 計 に 逃 げるのが 一 番 ) 三 十 六 計 逃 ぐるに 如 かず 南 斉 書 우물 안 개구리( 井 戸 の 中 のカエル) 井 の 中 の 蛙 荘 子 웃음 속에 칼이 있다( 笑 いの 中 に 刀 がある) 笑 中 に 刀 あり 旧 唐 書 좋은 약은 입에 쓰다( 良 い 薬 は 口 に 苦 い) 良 薬 は 口 に 苦 し 韓 非 子 천리길도 한 걸음부터( 千 里 の 道 も 一 歩 から) 千 里 の 道 も 一 歩 から 老 子 큰 방죽도 개미구멍으로 무너진다( 大 きい 堤 も 蟻 の 穴 から 崩 れる) 大 きな 堤 も 蟻 の 一 穴 から 韓 非 子 티끌 모아 태산( 塵 集 めて 泰 山 ) 塵 も 積 れば 山 となる 大 智 度 論
韓 日 接 触 の 痕 跡 としてのことわざ 87 これらは 意 味 においても 形 式 においてもほとんど 韓 日 共 通 のものである そ れもそのはずで これらの 故 事 ことわざは 中 国 の 古 典 に 由 来 するものである このような 中 国 起 源 のことわざについては どの 文 献 に 最 初 に 現 れたのかがほ とんどのものについて 明 らかにされている 日 本 で 出 版 されていることわざ 辞 典 はその 点 非 常 に 親 切 で 3,000 から 5,000 個 ぐらいのことわざを 集 めた 中 規 模 の 辞 典 であれば たいていそのような 出 典 の 情 報 が 与 えられている 上 に 掲 げたそれぞれのことわざの 末 尾 の 内 に 出 典 を 示 した これら 以 外 にもこ のような 中 国 起 源 のことわざや 四 字 成 語 故 事 成 語 が 数 多 く 日 本 と 韓 国 のこと わざの 中 に 入 り 込 んでいる 主 要 なことわざの 中 にはそれほど 多 くないけれど も 大 規 模 な 故 事 ことわざ 辞 典 ではこの 種 の 例 が 極 めて 多 くなる これらは 韓 国 と 日 本 が 共 に 漢 字 文 化 圏 の 中 でそれぞれの 文 化 を 発 達 させてきたことがこ とわざの 中 にも 反 映 されていることを 示 す 例 であり 日 韓 両 言 語 のことわざの 成 り 立 ちや 特 徴 を 考 える 上 でたいへん 重 要 なものであるが 日 本 と 韓 国 の 接 触 を 直 接 的 に 反 映 するものであるとは 言 えない よく 中 国 文 化 は 朝 鮮 を 経 由 して 日 本 に 伝 わったと 言 われる ことわざについ てもそのような 例 があったかもしれない 中 国 起 源 のことわざが 一 旦 朝 鮮 に 入 りそれが 日 本 に 伝 わったということは 可 能 性 としては 考 えられる 例 えば 奈 良 時 代 以 前 に 主 に 百 済 から 多 くの 人 々が 日 本 に 渡 ってきているが そうした 渡 来 人 が 使 っていた 中 国 起 源 の 故 事 ことわざが 日 本 のことわざとして 取 り 込 まれることになった ということは 十 分 に 考 えられる しかし 漢 籍 から 直 接 日 本 に 入 ったものと 朝 鮮 を 経 由 して 入 ったものとを 文 献 的 証 拠 に 基 づいて 区 別 することはほとんど 不 可 能 である 次 のようなことわざも 韓 日 共 通 のものである (2) 구르는 돌에는 이끼가 끼지 않는다( 転 がる 石 に 苔 がつかない) 転 がる 石 には 苔 が 生 えぬ < A rolling stone gathers no moss. 무소식이 희소식( 無 消 息 が 喜 消 息 ) 便 りのないのはよい 便 り < No news is good news. 물에 빠진 놈 지푸라기라도 잡는다( 水 に 溺 れる 者 は 藁 でもつかむ) 溺 れる 者 は 藁 をもつかむ < A drowning man will catch at a straw. 일석이조( 一 石 二 鳥 ) 一 石 二 鳥 < To kill two birds with one stone.
88 토끼 둘을 잡으려다가 하나도 못 잡는다( 二 羽 の 兎 を 捕 まえようとして 一 羽 も 捕 まえられない) 二 兎 を 追 う 者 一 兎 をも 得 ず < If you run after two hares, you will catch neither. 하늘은 스스로 돕는 자를 돕는다.( 天 は 自 ら 助 けるものを 助 ける) 天 は 自 ら 助 ける 者 を 助 く < Heaven helps those who help themselves. これらのことわざが 形 式 と 意 味 の 両 面 において 日 韓 で 共 通 性 を 持 つ 理 由 は 西 洋 起 源 のものであると 推 定 されるからである 明 治 以 降 ( 韓 国 においては 開 化 期 以 降 ) 日 本 も 韓 国 も 近 代 化 のために 英 語 を 重 要 視 し その 教 育 に 大 いに 力 を 注 いできた その 過 程 で 慣 用 句 の 一 部 としてことわざが 取 り 入 れられるこ とになったのである 日 本 においてはその 受 容 の 過 程 に 関 する 詳 細 な 文 献 的 研 究 がなされている 2) 韓 国 ではこの 種 の 調 査 研 究 はほとんど 行 われていない のが 実 情 であるが 上 に 掲 げた 例 については 日 本 と 同 様 西 洋 のことわざが 取 り 入 れられたものであることは 間 違 いないであろう ただし これらのことわざが 日 本 と 韓 国 に 独 立 に 取 り 入 れられたのかどうか は 明 らかではない その 可 能 性 が 高 いと 思 われるが 当 時 の 韓 日 関 係 を 考 える と まず 日 本 語 に 入 った 西 洋 のことわざが 日 本 語 を 通 じて 韓 国 語 に 入 ったとい う 可 能 性 も 否 定 できない 英 語 の 表 現 を 自 国 語 に 取 り 入 れるのに 日 本 は 韓 国 に 二 三 十 年 先 んじており 日 本 語 を 学 んだ 韓 国 人 が 多 かったことを 考 えれば そ の 可 能 性 は 捨 てきれない 特 に 일석이조 ( 一 石 二 鳥 )は 日 本 語 韓 国 語 ともに 四 字 成 語 として 翻 訳 されているので 独 立 に 受 容 されたものとは 考 えに くい 証 明 は 難 しいが 初 出 の 例 を 探 し その 文 献 や 著 者 について 情 報 が 得 ら れれば 独 立 に 入 ったものか 日 本 を 経 由 して 入 ったものか 凡 その 推 測 ができる のではないかと 思 われる 日 本 を 経 由 して 韓 国 に 移 入 されたということが 確 か められれば それも 韓 日 接 触 の 痕 跡 ということになる 意 味 と 形 式 が 共 に 共 通 するもので 共 通 の 起 源 が 確 かめられていないものもか なりある (3) 가까운 남이 먼 일가보다 낫다( 近 い 他 人 が 遠 い 一 家 よりましだ) 遠 い 親 戚 よ り 近 くの 他 人 가는 손님은 뒤꼭지가 예쁘다( 帰 るお 客 は 後 ろ 姿 が 美 しい) 客 と 白 鷺 は 立 っ たが 見 事
韓 日 接 触 の 痕 跡 としてのことわざ 89 개도 닷새가 되면 주인을 안다( 犬 も 五 日 飼 えば 主 人 を 見 分 ける) 恩 を 忘 れ てはならない 犬 は 三 日 飼 えば 三 年 恩 を 忘 れぬ 고생 끝에 낙이 온다( 苦 労 の 末 に 楽 が 来 る) 苦 は 楽 の 種 고양이가 발톱을 감춘다( 猫 が 足 の 爪 を 隠 す) 能 ある 鷹 は 爪 を 隠 す 고추는 작아도 맵다( 唐 辛 子 は 小 さくても 辛 い) 山 椒 は 小 粒 でもぴりりと 辛 い 곡식 이삭은 잘 될수록 고개를 숙인다( 稲 穂 は 実 るほど 頭 を 下 げる) 実 るほ ど 頭 を 垂 れる 稲 穂 かな 기르던 개에게 다리를 물렸다( 飼 い 犬 に 手 をかまれた) 飼 い 犬 に 手 を 噛 まれ る 나는 새도 떨어뜨린다( 飛 ぶ 鳥 も 落 とす) 飛 ぶ 鳥 を 落 とす 勢 い 놓친 고기가 더 크다( 逃 がした 魚 がもっと 大 きい) 逃 がした 魚 は 大 きい 누워서 침 뱉기(あお 向 きに 寝 て 唾 を 吐 く)/하늘 보고 침 뱉기( 天 を 仰 いで 唾 吐 き) 天 を 仰 いで 唾 する 단솥에 물 붓기( 焼 けた 釜 に 水 を 注 ぐ) 何 の 効 果 もない 焼 け 石 に 水 도마에 오른 고기(まな 板 に 登 った 魚 ) まな 板 の 鯉 俎 上 の 魚 (そじょうの うお) 도토리 키재기(どんぐりの 背 比 べ) ドングリの 背 比 べ 돌다리도 두들겨 보고 건너라( 石 橋 も 叩 いてみて 渡 れ) 石 橋 も 叩 いて 渡 る 모래 위에 쌓은 성( 砂 の 上 に 築 いた 城 ) 砂 上 の 楼 閣 모르는 게 약이다( 知 らないことが 薬 だ) 知 らぬが 仏 물 밖에 난 고기( 水 の 外 に 出 た 魚 ) 陸 にあがった 河 童 바늘 구멍으로 하늘 보기( 針 の 穴 から 天 覗 き) 葦 の 髄 から 天 井 覗 く 비 온 뒤에 땅이 굳어진다( 雤 降 ってから 地 が 固 まる) 雤 降 って 地 固 まる 사공이 많으면 배가 산으로 올라간다( 船 頭 が 多 ければ 舟 が 山 へ 登 る) 船 頭 多 くして 船 山 に 登 る 새우 미끼로 잉어 낚는다( 海 老 の 餌 で 鯉 を 釣 る) 海 老 で 鯛 を 釣 る 세 살 버릇 여든까지 간다( 三 歳 の 時 の 癖 八 十 歳 まで 続 く) 三 つ 子 の 魂 百 ま で 쇠 귀에 경 읽기( 牛 の 耳 に 経 を 読 む) 馬 の 耳 に 念 仏 / 牛 に 経 文 / 犬 に 念 仏 猫 に 経 썩어도 준치( 腐 ってもヒラ) 腐 っても 鯛 아이 싸움이 어른 싸움 된다( 子 供 のけんかが 大 人 のけんかになる) 子 供 の 喧 嘩 に 親 が 出 る 얕은 내도 깊게 건너라( 浅 い 川 も 深 く 渡 れ) 浅 い 川 も 深 く 渡 れ 원숭이도 나무에서 떨어질 때가 있다( 猿 も 木 から 落 ちる 時 がある) 猿 も 木 から 落 ちる
90 젊어 고생은 사서도 한다( 若 いときの 苦 労 は 買 ってでもする) 若 いときの 苦 労 は 買 うてもせよ 죽은 자식 나이 세기( 死 んだ 子 の 年 を 数 える) 死 んだ 子 の 年 を 数 える 중이 미우면 가사도 밉다( 僧 が 憎 ければ 袈 裟 も 憎 い) 坊 主 憎 けりゃ 袈 裟 まで 憎 い 털어서 먼지 안 나는 사람 없다(はたいてほこりの 出 ない 人 はいない) たた けば 埃 の 出 る 하면 된다(やればできる) なせばなる 한번 엎지른 물은 다시 주워 담지 못한다( 一 度 こぼした 水 は 再 びすくうこと ができない) 覆 水 盆 に 返 らず これらのことわざについては これまでのところ 共 通 の 起 源 は 見 つかってい ない まだ 知 られていない 共 通 の 起 源 があるのかもしれないし どちらかのこ とわざが 他 方 に 取 り 入 れられたのかも 知 れない 後 者 であるとすれば それは 民 衆 レベルでの 韓 日 関 係 の 産 物 である 韓 国 のことわざに 関 する 歴 史 的 研 究 は ほとんどなされていないため このような 問 題 に 対 して 現 状 では 何 も 答 えるこ とができない 韓 国 ことわざ 研 究 韓 日 比 較 ことわざ 研 究 の 今 後 の 重 要 課 題 の 一 つである (1)や(2)のことわざとは 異 なり これらのことわざについては これま でのところ 共 通 の 起 源 は 見 つかっていない まだ 知 られていない 共 通 の 起 源 が あるのかもしれないし どちらかのことわざが 他 方 に 取 り 入 れられたのかも 知 れない あるいは 偶 然 の 一 致 であるという 可 能 性 もある しかしながら こ のようなことわざに 関 する 以 上 のような 問 題 に 対 して 現 状 では 何 も 答 えるこ とができない その 最 も 大 きな 理 由 は 韓 国 のことわざに 関 する 歴 史 的 研 究 が 不 十 分 であるためである 韓 日 比 較 ことわざ 研 究 の 今 後 の 重 要 課 題 の 一 つであ る 異 なる 文 化 のことわざが 意 味 においても 表 現 形 式 においても 偶 然 似 てい るということはそれほど 珍 しいことではない たとえば エジプトのことわざ に 船 頭 が 二 人 いると 船 が 沈 む ということわざがあるそうであるが (3)に 挙 げた 船 頭 多 くして 船 山 に 登 る と 同 じ 意 味 であり 表 現 も 非 常 に 似 ている しかし 日 本 や 韓 国 のことわざがエジプトに 伝 わった あるいはその 逆 にエジ プトのことわざが 伝 わったとは 考 えられにくいため おそらく 偶 然 の 一 致 であ ると 考 えられる
韓 日 接 触 の 痕 跡 としてのことわざ 91 しかし (3)のようなことわざはやはり 何 か 理 由 があって 日 本 と 韓 国 でよ く 似 たことわざが 使 われていると 考 えるのが 自 然 であろう つまり 日 本 のこ とわざが 韓 国 に 伝 わったか 逆 に 韓 国 のことわざが 日 本 に 伝 わったと 考 えるの が 自 然 であろう しかし それを 証 明 するのは 容 易 なことではない 伝 わった 時 期 伝 わった 方 向 について 様 々な 可 能 性 が 考 えられるが 最 も 可 能 性 が 大 きく また 運 が 良 ければ 証 明 することができるかも 知 れないと 筆 者 が 考 えているのは (3)のことわざの 中 に 日 本 統 治 時 代 に 日 本 から 韓 国 に 入 っ たものがあるのではないかという 可 能 性 である 先 述 のように 日 本 統 治 時 代 に 数 多 くの 日 本 語 が 韓 国 語 の 中 に 取 り 込 まれ その 多 くは 現 在 完 全 に 韓 国 語 の 一 部 となってしまっている それほど 大 規 模 で 深 い 接 触 であったことから すれば 日 本 統 治 期 に 日 本 のことわざが 韓 国 に 入 ったとしても 不 思 議 ではない ただし このように 問 題 を 絞 ったとしてもそれを 証 明 するのは 大 変 な 作 業 と なる まず (3)のことわざが 日 本 統 治 期 以 前 から 日 本 にあったことを 確 かめ なければならない これは 比 較 的 簡 単 にできるのではないかと 思 われる 日 本 ではことわざの 来 歴 についてかなり 詳 しく 調 査 が 行 われていて 大 部 分 のこ とわざについて 出 典 や 初 出 の 文 献 が 明 らかにされているからである 問 題 は 次 の 段 階 である (3)のことわざが 日 本 統 治 期 以 前 には 韓 国 で 知 ら れていなかったこと 用 いられていなかったこと そして その 初 出 の 例 が 日 本 統 治 期 以 降 であることを 確 かめなければならない これが 大 変 な 仕 事 になる と 思 われる 残 念 ながら 韓 国 においてはことわざの 歴 史 的 な 研 究 が 乏 しく 来 歴 のわからないものが 非 常 に 多 いためである 1 つのことわざについて 調 べ るだけでも 膨 大 な 量 の 文 献 を 調 査 しなければならないであろう 幸 い 最 近 は 古 い 文 献 のコーパス 化 が 進 められているので 作 業 はかなりスピードアップ できると 思 われるが それでも 一 朝 一 夕 にできる 仕 事 ではない 多 大 な 労 力 と 時 間 を 要 すると 考 えられる このような 例 はことわざ 以 外 の 慣 用 表 現 にも 見 られる 例 えば 太 陽 が 出 て いるのに 雤 が 降 るような 天 気 を 指 して 日 本 語 では 狐 の 嫁 入 り と 言 う こ れに 対 する 韓 国 語 の 一 般 的 な 表 現 は 호랑이가 장가 가는 날 ( 虎 が 結 婚 する 日 )であるが その 他 に 여우가 시집 가는 날 ( 狐 が 嫁 入 りする 日 )という 表 現 もある 後 の 表 現 が 元 々 韓 国 語 にあったものなのか 日 本 語 から 入 ったもの なのか あるいはその 他 の 理 由 があって 日 韓 で 共 通 の 表 現 が 用 いられているの か 明 らかではない
92 表 現 形 式 の 類 似 性 にこだわらなければ 日 韓 で 共 通 することわざはいくらも 挙 げることができる 次 はその 一 部 である 3) (4) 가랑잎이 솔잎더러 바스락거린다고 한다(カシワの 葉 が 松 葉 に 向 かってかさかさ と 音 を 出 すという) 目 くそ 鼻 くそを 笑 う 갖바치 내일 모레( 革 靴 屋 の 明 後 日 ) 紺 屋 の 明 後 日 / 医 者 の 只 今 개도 닷새가 되면 주인을 안다( 犬 も 五 日 飼 えば 主 人 を 見 分 ける) 犬 は 三 日 飼 えば 三 年 恩 を 忘 れぬ 고양이 앞에 쥐( 猫 の 前 のネズミ) 蛇 に 睨 まれた 蛙 고추는 작아도 맵다( 唐 辛 子 は 小 さくても 辛 い) 山 椒 は 小 粒 でピリリと 辛 い 고자쟁이가 먼저 죽는다( 告 げ 口 屋 が 先 に 死 ぬ) 人 を 謀 れば 謀 られる 국에 덴 놈 물보고도 분다( 汁 にやけどをした 者 が 水 を 見 ても 吹 く) 羹 に 懲 りて 膾 を 吹 く 글 못한 놈 붓 고른다( 文 章 の 下 手 な 者 が 筆 を 選 ぶ) 弘 法 筆 を 選 ばす/ 下 手 の 道 具 調 べ 긁어 부스럼( 掻 いてできた 腫 れ 物 ) 藪 をつついて 蛇 を 出 す 금강산도 식후경( 金 剛 山 も 食 後 の 景 色 ) 花 より 団 子 급히 먹는 밥이 목이 멘다( 急 いで 食 べるご 飯 は 喉 につかえる) 急 いては 事 をし 損 じる 기는 놈 위에 나는 놈 있다( 這 う 者 の 上 に 飛 ぶ 者 がいる) 上 には 上 がある 남의 떡이 커 보인다( 人 の 餅 が 大 きく 見 える) 人 の 物 は 自 分 のよりよくみえ るものだ 隣 の 花 は 赤 い 낮말은 새가 듣고 밤말은 쥐가 듣는다( 昼 の 話 は 鳥 が 聞 き 夜 の 話 は 鼠 が 聞 く) 壁 に 耳 あり 障 子 に 目 あり 냉수 먹고 이 쑤시기( 冷 水 を 飲 んで 歯 をほじくる) 武 士 は 食 わねど 高 楊 枝 더위 먹은 소 달만 보아도 헐떡인다( 暑 気 当 たりした 牛 は 月 を 見 るだけでもあ えぐ) 蛇 に 噛 まれて 朽 ち 縄 に 怖 ず 도둑맞고 사립문 고친다( 泥 棒 に 盗 まれて 竹 の 門 を 繕 う) 泥 棒 を 捕 らえて 縄 をなう 독 안에 든 쥐( 甕 に 入 った 鼠 ) 袋 の 中 の 鼠 돈만 있으면 귀신도 부릴 수 있다( 金 さえあれば 鬼 神 をも 思 いどおりに 使 え る) 地 獄 の 沙 汰 も 金 次 第 / 金 が 万 事 の 世 の 中 들으면 병이요 안 들으면 약이다( 聞 けば 病 気 聞 かねば 薬 ) 知 らぬが 仏 딸이 셋이면 문을 열어 놓고 잔다( 娘 が 三 人 いれば 門 を 開 けて 寝 る) 娘 が 多 いと 財 産 がなくなる 娘 三 人 持 てば 身 代 潰 す
韓 日 接 触 の 痕 跡 としてのことわざ 93 먹을 가까이 하면 검어진다( 墨 を 近 づけると 黒 くなる) 朱 に 交 われば 赤 くな る 며느리가 미우면 손자까지 밉다( 嫁 が 憎 いと 孫 まで 憎 い) 坊 主 憎 けりゃ 袈 裟 まで 憎 い 모난 돌이 정 맞는다( 角 ばった 石 がのみで 打 たれる) 出 る 杭 は 打 たれる 모르는 게 약이다( 知 らないことが 薬 だ) 知 らぬが 仏 못된 나무에 열매만 많다( 育 ちの 悪 い 木 に 実 ばかりが 多 い) 貧 乏 人 の 子 だく さん 무쇠도 갈면 바늘 된다( 鉄 も 磨 けば 針 になる) 石 の 上 にも 三 年 물 밖에 난 고기( 水 の 外 に 出 た 魚 ) 陸 にあがった 河 童 물은 건너보아야 알고 사람은 지내 보아야 안다.( 水 は 渡 ってみなければ 分 か らず 人 は 交 わってみなければ 分 からない) 馬 には 乗 ってみよ 人 には 添 うてみ よ 믿는 도끼에 발등 찍힌다( 信 じてた 斧 に 足 の 甲 を 切 られる) 飼 い 犬 に 手 をか まれる 밑 빠진 독에 물 붓기( 底 の 抜 けた 甕 に 水 を 注 ぐ) 焼 け 石 に 水 범 없는 골에는 토끼가 스승이라( 虎 のいない 洞 では 兎 が 先 生 だ) 鳥 なき 里 の 蝙 蝠 부부싸움은 칼로 물 베기( 夫 婦 げんかは 刀 で 水 を 切 るようなもの) 夫 婦 喧 嘩 は 犬 も 食 わない 새발의 피( 鳥 の 足 の 血 ) ごく 僅 かなこと 雀 の 涙 서투른 무당이 장구만 나무란다( 未 熟 な 巫 女 が 太 鼓 ばかりけなす) 下 手 の 道 具 調 べ 선무당이 사람 죽인다( 未 熟 な 巫 女 が 人 を 殺 す) 生 兵 法 は 大 怪 我 のもと 설마가 사람 죽인다(まさかが 人 を 殺 す) 一 寸 来 いに 油 断 するな 섶을 지고 불로 들어가려 한다( 枯 れ 草 を 背 負 って 火 に 入 ろうとする) 飛 ん で 火 に 入 る 夏 の 虫 서당 개 삼년이면 풍월을 읊는다( 書 堂 の 犬 三 年 で 風 月 を 詠 む) 門 前 の 小 僧 習 わぬ 経 を 読 む 소 잃고 외양간 고친다( 牛 を 失 くして 牛 小 屋 を 直 す) 泥 棒 を 捕 えて 縄 をな う 쇠똥에 미끄러져 개똥에 코 박은 셈이다( 牛 の 糞 に 滑 って 犬 の 糞 に 鼻 を 突 っ 込 んだようなものだ) 泣 き 面 に 蜂 숯이 검정 나무란다( 炭 が 黒 をとがめる) 目 くそ 鼻 くを 笑 う 아는 길도 물어 가라( 知 っている 道 も 尋 ねて 行 け) 念 には 念 を 入 れよ 아니 땐 굴뚝에 연기 날까( 焚 かぬ 煙 突 から 煙 が 上 がろうか) 火 のない 所 に 煙 は 立 たぬ
94 열 번 찍어 안 넘어가는 나무 없다( 十 回 切 りつけられて 倒 れない 木 はない) なせばなる 오는 정이 있어야 가는 정이 있다( 来 る 情 があってこそ 行 く 情 がある) 魚 心 あれば 水 心 옷이 날개라( 衣 服 が 翼 だ) 身 なりで 人 の 値 打 ちが 変 わる 馬 子 にも 衣 装 의사가 제 병 못 고친다( 医 者 が 自 分 の 病 気 を 治 せない) 医 者 の 不 養 生 / 紺 屋 の 白 袴 자라 보고 놀란 가슴 소댕 보고 놀란다(スッポンを 見 て 驚 いた 者 が 釜 の 蓋 を 見 て 驚 く) 蛇 にかまれて 朽 ち 縄 に 怖 ず 잘 되면 충신이요 못 되면 역적이라( 成 功 すれば 忠 臣 で 失 敗 すれば 逆 賊 だ) 勝 てば 官 軍 負 ければ 賊 軍 제 똥 구린 줄 모른다( 自 分 の 糞 の 臭 いのは 知 らない) 息 の 臭 いは 主 知 ら ず 쥐구멍에도 볕들 날이 있다( 鼠 の 穴 にも 陽 の 差 す 日 がある) 待 てば 海 路 の 日 和 あり 지렁이도 밟으면 꿈틀한다(ミミズも 踏 めば 身 をよじる) 一 寸 の 虫 にも 五 分 の 魂 쭈그렁 밤송이 삼 년 간다(しわになった 栗 は 三 年 もつ) 病 上 手 に 死 に 下 手 키 크고 싱겁지 않은 사람 없다( 背 が 高 くてつまらなくない 人 はいない) 大 男 総 身 に 知 恵 が 回 りかね 하룻강아지 범 무서운 줄 모른다( 生 まれたての 子 犬 虎 の 怖 さを 知 らぬ) 鷲 の 巣 を 鼠 が 狙 う 항우도 낙상할 때가 있다( 項 羽 も 転 んで 怪 我 をすることがある) 猿 も 木 から 落 ちる/ 河 童 の 川 流 れ 헌 짚신도 짝이 있다( 古 ワラジにも 対 がある) 破 れ 鍋 に 綴 じ 蓋 호랑이도 제 말 하면 온다( 虎 も 自 分 の 話 をすればやって 来 る) 噂 をすれば 影 が 差 す 庶 民 の 知 恵 としてのことわざには 文 化 の 違 いを 超 えた 普 遍 的 な 部 分 が 大 きい から 韓 国 と 日 本 のことわざに 尐 なくとも 意 味 の 上 で 共 通 するものが 数 多 くあ ったとしても 不 思 議 ではない そのほとんどはそれぞれの 文 化 の 中 で 独 立 に 創 りだされたものであろうが (4)のように 意 味 は 同 じであるが 表 現 形 式 が 異 な るということわざも 接 触 の 影 響 で 生 まれた 可 能 性 がないわけではない 意 味 だけを 借 りて 表 現 を 作 るということも 考 えられるからである 日 本 のことわざ に 暖 簾 に 腕 押 し 糠 に 釘 豆 腐 にかすがい あるいは 医 者 の 不 養 生
韓 日 接 触 の 痕 跡 としてのことわざ 95 紺 屋 の 白 袴 大 工 の 掘 っ 立 て かごかきかごに 乗 らず のように 意 味 は 同 じであるけれども 表 現 が 異 なることわざがある これらは 独 立 に 作 られたと 考 えるよりも どれかが 最 初 に 作 られそれが 手 本 になって 表 現 を 変 えたこと わざが 作 られたと 考 える 方 が 自 然 である 同 じことが 日 本 と 韓 国 の 間 で 起 こ った 可 能 性 も 否 定 できない しかし それを 証 明 するのは 一 層 難 しいことであ ろう 4.おわりに 以 上 に 見 たように 韓 国 と 日 本 には 互 いによく 似 たことわざが 数 多 く 用 いら れている しかし そのことは 一 般 にあまり 知 られていない 数 年 前 から 明 治 大 学 で 行 われている 口 承 文 芸 の 講 義 に 筆 者 も 参 加 し 韓 国 のことわざの 紹 介 を 行 っているが 授 業 後 に 学 生 に 感 想 を 書 いてもらうと 韓 国 に 日 本 と 同 じこ とわざがあることを 知 って 驚 きました と 回 答 が 尐 なくない これは 韓 国 で も 同 じである 筆 者 自 身 日 本 語 を 習 う 過 程 で 同 じことわざが 日 本 にあること を 知 って 驚 いたことが 後 にことわざ 比 較 を 研 究 テーマとするようになったき っかけである ことわざ 研 究 の 分 野 では もちろん 韓 国 と 日 本 に 類 似 のことわざがあるこ とはよく 知 られている しかし その 類 似 性 が 韓 日 両 文 化 の 接 触 の 痕 跡 である かもしれないという 視 点 から 考 えてみることはこれまでになかったようである その 理 由 は 一 つには 両 文 化 が 共 に 漢 字 文 化 圏 の 中 で 成 長 発 展 し 中 国 の 古 典 に 共 通 の 起 源 を 持 つことわざを 数 多 く 作 り 出 してきたためであり また 一 つ には ことわざには 文 化 の 枞 を 超 えた 普 遍 的 な 面 があることが 知 られていたた めである しかしながら 上 に 見 たように そのどちらども 解 釈 しがたい 類 似 のことわざが 韓 国 と 日 本 とで 用 いられているのである そうした 事 例 が 果 たし て 接 触 の 痕 跡 であったのかどうかを 確 かめることは 多 大 な 労 力 と 時 間 を 要 す るであろうが 韓 日 ことわざ 研 究 の 重 要 な 課 題 である 比 較 ことわざ 研 究 は 異 なる 文 化 のことわざを 比 較 対 照 することによってその 特 異 性 と 共 通 性 を 明 らかにすることを 目 的 にしているのであるが どちらかと 言 えば 相 違 点 に 焦 点 が 合 わされ 共 通 点 は 背 景 になる 傾 向 がある しかし 特 異 性 と 共 通 性 は 表 裏 一 体 のものである そのどちらに 焦 点 を 合 わせて 考 えるか によって 比 較 結 果 の 持 つ 意 味 が 大 きく 変 わってくる 韓 国 と 日 本 のことわざ には 形 式 面 においても 意 味 用 法 の 面 においても 様 々な 相 違 点 が 見 られるこ
96 とは 確 かである それを 記 述 し 分 析 することが 韓 日 比 較 ことわざ 研 究 の 重 要 な 課 題 である しかし 共 通 点 の 観 点 から 見 れば 上 の 例 からわかるように 韓 国 と 日 本 のことわざは 尐 なくとも 意 味 内 容 の 点 においてほとんど 同 質 であると いっても 過 言 ではない 単 純 に 共 通 の 起 源 やことわざの 普 遍 性 では 解 釈 でき ない 同 質 性 共 通 性 が 感 じられるのである ことわざは 民 衆 の 知 恵 の 結 晶 である そのことわざに 高 度 な 共 通 性 が 見 られ るということは 民 衆 の 意 識 価 値 観 が 高 度 に 共 通 していることを 意 味 する 国 際 関 係 国 際 交 流 とは 国 と 国 との 関 係 交 流 を 意 味 するものではない 人 と 人 との 関 係 であり 交 流 である しかも 特 殊 な 人 ではなく 一 般 の 人 同 士 の 関 係 交 流 が 基 本 である 韓 国 と 日 本 との 過 去 の 関 係 を 考 えるにも 将 来 の 関 係 を 考 えるにも ことわざ 比 較 から 推 測 される 民 衆 の 意 識 価 値 観 の 共 通 性 は 重 要 な 視 点 になると 考 えられる 最 後 に 韓 国 と 日 本 におけることわざという 言 語 表 現 の 現 状 について 筆 者 が 感 じていることを 述 べておきたい 日 本 では 古 い 伝 統 的 価 値 観 が 急 速 に 色 あせつつある 大 きな 流 れの 中 で こ とわざも 古 臭 いものとして 忘 れられようとしていると 言 われる 特 に 若 い 世 代 のことわざ 離 れが 甚 だしく ことわざはもはやクイズ 番 組 の 素 材 にしかなら ないと 言 う 人 もいる 極 端 な 言 い 方 をすれば 日 本 は 反 ことわざ 社 会 にな ってしまっているような 感 じがする それに 対 して 韓 国 ではどうかと 言 えば やはりある 程 度 日 本 と 同 様 にことわざ 離 れの 傾 向 が 見 られるけれども まだま だ 親 ことわざ 社 会 であり 続 けていると 言 っても 間 違 いではない 筆 者 の 直 感 的 印 象 であるが 日 本 に 比 べればことわざを 聞 く 機 会 ははるかに 多 く こと わざに 対 する 抵 抗 感 もない 子 供 が 使 うことはないにしても 大 学 生 ともなれ ば 結 構 ことわざを 交 えて 話 すことが 多 い このようなことわざに 対 する 韓 日 の 温 度 差 を 確 かめるために ことわざがど の 程 度 知 られているか ことわざの 認 知 度 調 査 を 韓 国 と 日 本 で 二 度 にわたって 行 った 4) その 結 果 高 齢 者 層 については 認 知 度 にそれほど 韓 日 差 はないけれ ども 若 年 層 に 関 しては 韓 国 の 方 が 日 本 より 若 干 認 知 度 が 高 いということが わかった その 理 由 として 考 えられることが 二 つある 一 つは 韓 国 でも 核 家 族 化 が 急 激 に 進 んだとは 言 え まだ 子 供 たちは 周 囲 の 老 人 たちの 話 を 聞 く 機 会 が 日 本 に 比 べてはるかに 多 いという 事 実 である もう 一 つは コンピュータの 普 及 である PC へのハングル 入 力 を 練 習 するためのソフトが 何 種 類 も 開 発 さ
韓 日 接 触 の 痕 跡 としてのことわざ 97 れているが そのどれにも 短 文 例 としてことわざが 用 いられているのである したがって 中 高 生 のほとんどが キーボード 入 力 の 練 習 を 通 じて 尐 なくと も 表 現 としてのことわざには 触 れているのである 若 年 層 におけることわざの 認 知 度 の 日 韓 差 として 現 れていると 考 えられる かつて 日 本 ではカルタ 遊 びを 通 じて 子 供 たちがことわざを 覚 えたと 言 う 先 述 のように 日 本 統 治 時 代 に 花 札 が 韓 国 に 入 り 現 在 それが 完 全 に 韓 国 社 会 に 根 を 下 ろしているのであるが 子 供 の 遊 びのカルタは 韓 国 に 入 らなかった そのことを 筆 者 は 残 念 に 思 っていたのだが 現 在 韓 国 の 子 供 たちはカルタに 代 わることわざ 学 習 の 手 段 を 与 えられているのである この 手 段 がもし 日 本 に 導 入 されれば クイズ 番 組 よりもはるかに 効 果 的 に 反 ことわざ 社 会 を 親 ことわざ 社 会 に 転 換 できるのではないかと 考 えられる 注 1) PS リストの 上 位 1,000 位 程 度 のものに 限 った PS リストに 関 しては 鄭 (2007) を 参 照 2) 例 えば 北 村 (2003)などがある 北 村 によれば (2)に 挙 げたことわざ 以 外 にも 時 は 金 なり (< Time is money.) 艱 難 汝 を 玉 にす (< Adversity makes man wise.) 大 山 鳴 動 して 鼠 一 匹 鉄 は 熱 いうちに 打 て (< Strike while the iron is hot.)などが 西 洋 から 伝 来 したことを 論 証 している 時 は 金 なり は 韓 国 では 시간이 금/돈이다 ( 時 間 は 金 (かね/きん)だ)といいよく 知 られてはいるが ことわざよりも 格 言 として 意 識 されている 艱 難 汝 を 玉 にす に 当 たることわざ は 韓 国 語 にはないようである 大 山 鳴 動 して 鼠 一 匹 に 当 たる 韓 国 のことわざは 태산명동에 서 일필 ( 泰 山 鳴 動 に 鼠 一 匹 )である これはイソップ 寓 話 を 介 し て 伝 わったものとされている 鉄 は 熱 いうちに 打 て は 韓 国 語 で 강철도 뜨거울 때 때려라 ( 鋼 鉄 も 熱 いうちに 打 て)と 訳 されているが ことわざとしてはほとん ど 知 られていない 3) 形 式 的 な 類 似 性 は 段 階 的 であり (3)と(4)の 違 いは 明 確 ではない 4) 調 査 の 方 法 及 び 結 果 の 詳 細 については 鄭 (2007 2009)を 参 照
98 参 考 文 献 北 村 孝 一 (2003) ことわざの 謎 歴 史 に 埋 もれたルーツ 光 文 社 新 書 孔 泰 瑢 編 (1987) 韓 国 の 故 事 ことわざ 辞 典 角 川 書 店 (2007) 日 本 と 韓 国 のことわざの 比 較 研 究 ことわざスペクトルと 比 較 こと わざ 学 ( 名 古 屋 大 学 大 学 院 国 際 言 語 文 化 研 究 科 博 士 学 位 論 文 ) (2008) 比 較 ことわざ 学 の 可 能 性 言 語 文 化 論 集 第 29 巻 2 号 pp.433-447 (2009a) 日 本 のことわざの 認 知 度 について 言 語 文 化 論 集 第 30 巻 1 号 pp. 181-196 (2009b) ハングル 入 力 練 習 PC 教 材 言 語 文 化 論 集 第 31 巻 1 号 pp.10 7-120 (2009c) 日 本 と 韓 国 のことわざ 比 較 国 文 学 解 釈 と 鑑 賞 2009 年 12 月 号 至 文 堂 pp.155-165