254 中 村 健 壽 福 岡 欣 治 社, 銀 行 と 小 売 業 各 76 社, 化 学 67 社 等 )であった. 2. 2. 調 査 内 容 調 査 内 容 は, 秘 書 部 門 の 有 無 とその 概 要 のほか, 秘 書 の 業 務 内 容, 自 律 性 や 多 様 性 など 職 務 の

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18 国立高等専門学校機構

国立研究開発法人土木研究所の役職員の報酬・給与等について

2 役 員 の 報 酬 等 の 支 給 状 況 平 成 27 年 度 年 間 報 酬 等 の 総 額 就 任 退 任 の 状 況 役 名 報 酬 ( 給 与 ) 賞 与 その 他 ( 内 容 ) 就 任 退 任 2,142 ( 地 域 手 当 ) 17,205 11,580 3,311 4 月 1

(5) 給 与 制 度 の 総 合 的 見 直 しの 実 施 状 況 について 概 要 の 給 与 制 度 の 総 合 的 見 直 しにおいては 俸 給 表 の 水 準 の 平 均 2の 引 き 下 げ 及 び 地 域 手 当 の 支 給 割 合 の 見 直 し 等 に 取 り 組 むとされている

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検 討 検 討 の 進 め 方 検 討 状 況 簡 易 収 支 の 世 帯 からサンプリング 世 帯 名 作 成 事 務 の 廃 止 4 5 必 要 な 世 帯 数 の 確 保 が 可 能 か 簡 易 収 支 を 実 施 している 民 間 事 業 者 との 連 絡 等 に 伴 う 事 務 の 複 雑

公表表紙

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Ⅰ 調 査 の 概 要 1 目 的 義 務 教 育 の 機 会 均 等 その 水 準 の 維 持 向 上 の 観 点 から 的 な 児 童 生 徒 の 学 力 や 学 習 状 況 を 把 握 分 析 し 教 育 施 策 の 成 果 課 題 を 検 証 し その 改 善 を 図 るもに 学 校 におけ

m07 北見工業大学 様式①

調査結果の概要

Microsoft PowerPoint - 報告書(概要).ppt

公 的 年 金 制 度 について 制 度 の 持 続 可 能 性 を 高 め 将 来 の 世 代 の 給 付 水 準 の 確 保 等 を 図 るため 持 続 可 能 な 社 会 保 障 制 度 の 確 立 を 図 るための 改 革 の 推 進 に 関 する 法 律 に 基 づく 社 会 経 済 情

職 員 の 平 均 給 与 月 額 初 任 給 等 の 状 況 (1) 職 員 の 平 均 年 齢 平 均 給 料 月 額 及 び 平 均 給 与 月 額 の 状 況 ( 平 成 年 月 1 日 現 在 ) 1 一 般 行 政 職 福 岡 県 技 能 労 務 職 歳 1,19,98 9,9 歳 8,

2 役 員 の 報 酬 等 の 支 給 状 況 役 名 法 人 の 長 理 事 理 事 ( 非 常 勤 ) 平 成 25 年 度 年 間 報 酬 等 の 総 額 就 任 退 任 の 状 況 報 酬 ( 給 与 ) 賞 与 その 他 ( 内 容 ) 就 任 退 任 16,936 10,654 4,36

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Microsoft Word - 通達(参考).doc

Microsoft Word - A6001A.doc

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(2)大学・学部・研究科等の理念・目的が、大学構成員(教職員および学生)に周知され、社会に公表されているか

学校法人日本医科大学利益相反マネジメント規程

預 金 を 確 保 しつつ 資 金 調 達 手 段 も 確 保 する 収 益 性 を 示 す 指 標 として 営 業 利 益 率 を 採 用 し 営 業 利 益 率 の 目 安 となる 数 値 を 公 表 する 株 主 の 皆 様 への 還 元 については 持 続 的 な 成 長 による 配 当 可

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●電力自由化推進法案

社会保険加入促進計画に盛込むべき内容

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平成16年年金制度改正 ~年金の昔・今・未来を考える~

( 別 紙 ) 以 下 法 とあるのは 改 正 法 第 5 条 の 規 定 による 改 正 後 の 健 康 保 険 法 を 指 す ( 施 行 期 日 は 平 成 28 年 4 月 1 日 ) 1. 標 準 報 酬 月 額 の 等 級 区 分 の 追 加 について 問 1 法 改 正 により 追 加

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(6) 事 務 局 職 場 積 立 NISAの 運 営 に 係 る 以 下 の 事 務 等 を 担 当 する 事 業 主 等 の 組 織 ( 当 該 事 務 を 代 行 する 組 織 を 含 む )をいう イ 利 用 者 からの 諸 届 出 受 付 事 務 ロ 利 用 者 への 諸 連 絡 事 務

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代 議 員 会 決 議 内 容 についてお 知 らせします さる3 月 4 日 当 基 金 の 代 議 員 会 を 開 催 し 次 の 議 案 が 審 議 され 可 決 承 認 されました 第 1 号 議 案 : 財 政 再 計 算 について ( 概 要 ) 確 定 給 付 企 業 年 金 法 第

●幼児教育振興法案

学校教育法等の一部を改正する法律の施行に伴う文部科学省関係省令の整備に関する省令等について(通知)

説 明 内 容 料 金 の 算 定 期 間 と 請 求 の 単 位 について 分 散 検 針 制 日 程 等 別 料 金 料 金 の 算 定 期 間 と 支 払 義 務 発 生 日 日 程 等 別 料 金 の 請 求 スケジュール 料 金 のお 支 払 い 方 法 その 他 各 種 料 金 支 払

(5) 給 与 制 度 の 総 合 的 見 直 しの 実 施 状 況 概 要 国 の 給 与 制 度 の 総 合 的 見 直 しにおいては 俸 給 表 の 水 準 の 平 均 2の 引 下 げ 及 び 地 域 手 当 の 支 給 割 合 の 見 直 し 等 に 取 り 組 むとされている 総 合 的

市 の 人 口 密 度 は 5,000 人 を 超 え 図 4 人 口 密 度 ( 単 位 : 人 /k m2) に 次 いで 高 くなっている 0 5,000 10,000 15,000 首 都 圏 に 立 地 する 政 令 指 定 都 市 では 都 内 に 通 勤 通 学 する 人 口 が 多

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波佐見町の給与・定員管理等について

Ⅱ. 公 表 方 法 等 について( ガイドラインの 要 旨 ) 1. 趣 旨 国 立 大 学 法 人 等 の 役 員 の 報 酬 等 及 び 職 員 の 給 与 の 水 準 に 関 する 情 報 を, 国 民 及 び 関 係 者 に 分 かりやすく 提 供 するもの 2. 公 表 されるべき 事

(4) 給 与 制 度 の 総 合 的 見 直 しの 実 施 状 況 について 概 要 国 の 給 与 制 度 の 総 合 的 見 直 しにおいては 俸 給 表 の 水 準 の 平 均 2の 引 下 げ 及 び 地 域 手 当 の 支 給 割 合 の 見 直 し 等 に 取 り 組 むとされている.

退職手当とは

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16 日本学生支援機構

(3) 調 査 の 進 め 方 2 月 28 日 2 月 28 日 ~6 月 30 日 平 成 25 年 9 月 サウンディング 型 市 場 調 査 について 公 表 松 戸 市 から 基 本 的 な 土 地 情 報 サウンディングの 実 施 活 用 意 向 アイデアのある 民 間 事 業 者 と

財政再計算結果_色変更.indd


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老発第    第 号

(2) 支 状 況 保 育 所 ( 定 員 60 人 以 上 ) 支 状 況 は 次 とおりです 1 総 入 構 成 比 は 割 合 が88.1% 活 動 外 入 が2.1% 特 別 入 が9.8%でした 2 構 成 比 は 運 営 費 入 が80.1% 経 常 経 費 補 助 金 入 が17.8%

った 場 合 など 監 事 の 任 務 懈 怠 の 場 合 は その 程 度 に 応 じて 業 績 勘 案 率 を 減 算 する (8) 役 員 の 法 人 に 対 する 特 段 の 貢 献 が 認 められる 場 合 は その 程 度 に 応 じて 業 績 勘 案 率 を 加 算 することができる

別紙3

資料2 利用者負担(保育費用)

Microsoft PowerPoint - 経営事項審査.ppt

(4) ラスパイレス 指 数 の 状 況 H H H5.4.1 ( 参 考 値 ) 97.1 H H H H5.4.1 H H5.4.1 ( 参 考

80 鹿児島大学

70 愛媛大学


容 積 率 制 限 の 概 要 1 容 積 率 制 限 の 目 的 地 域 で 行 われる 各 種 の 社 会 経 済 活 動 の 総 量 を 誘 導 することにより 建 築 物 と 道 路 等 の 公 共 施 設 とのバランスを 確 保 することを 目 的 として 行 われており 市 街 地 環

2 1.ヒアリング 対 象 (1) 対 象 範 囲 分 類 年 金 医 療 保 険 雇 用 保 険 税 備 考 厚 生 年 金 の 資 格 喪 失 国 民 年 金 の 加 入 老 齢 給 付 裁 定 請 求 など 健 康 保 険 の 資 格 喪 失 国 民 健 康 保 険 の 加 入 健 康 保 険

4 教 科 に 関 する 調 査 結 果 の 概 況 校 種 学 年 小 学 校 2 年 生 3 年 生 4 年 生 5 年 生 6 年 生 教 科 平 均 到 達 度 目 標 値 差 達 成 率 国 語 77.8% 68.9% 8.9% 79.3% 算 数 92.0% 76.7% 15.3% 94

スライド 1

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技 能 労 務 職 平 均 年 齢 歳,7 平 均 給 料 月 額 歳 7,,8, 歳,9,57, 7,7 7,9 9,5 - (8,85) (5,) 類 似 団 体 5. 歳 9,8 9, 85, ( 注 ) 平 均 給 料 月 額 とは 平 成 5 年 月 日 現 在 における

セルフメディケーション推進のための一般用医薬品等に関する所得控除制度の創設(個別要望事項:HP掲載用)

頸 がん 予 防 措 置 の 実 施 の 推 進 のために 講 ずる 具 体 的 な 施 策 等 について 定 めることにより 子 宮 頸 がんの 確 実 な 予 防 を 図 ることを 目 的 とする ( 定 義 ) 第 二 条 この 法 律 において 子 宮 頸 がん 予 防 措 置 とは 子 宮

Taro-H19退職金(修正版).jtd

2 役 員 の 報 酬 等 の 支 給 状 況 平 成 26 年 度 年 間 報 酬 等 の 総 額 就 任 退 任 の 状 況 役 名 報 酬 ( 給 与 ) 賞 与 その 他 ( 内 容 ) 就 任 退 任 法 人 の 長 副 理 事 長 A 理 事 16,638 10,332 4,446 1,

私 達 が 調 査 手 法 を 研 究 した 背 景 リクルートワークス 研 究 所 ワーキングパーソン 調 査 (2000 年 ~ 隔 年 実 施 ) 首 都 圏 在 住 の18~59 歳 で 働 く 個 人 6,500 人 ( )を 対 象 に 就 業 実 態 意 識 を 調 査 調 査 実 施

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Microsoft Word - 目次.doc

1 総 合 設 計 一 定 規 模 以 上 の 敷 地 面 積 及 び 一 定 割 合 以 上 の 空 地 を 有 する 建 築 計 画 について 特 定 行 政 庁 の 許 可 により 容 積 率 斜 線 制 限 などの 制 限 を 緩 和 する 制 度 である 建 築 敷 地 の 共 同 化 や

1 林 地 台 帳 整 備 マニュアル( 案 )について 林 地 台 帳 整 備 マニュアル( 案 )の 構 成 構 成 記 載 内 容 第 1 章 はじめに 本 マニュアルの 目 的 記 載 内 容 について 説 明 しています 第 2 章 第 3 章 第 4 章 第 5 章 第 6 章 林 地

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Ⅰ 平成14年度の状況

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労働時間と休日は、労働条件のもっとも基本的なものの一つです

は 固 定 流 動 及 び 繰 延 に 区 分 することとし 減 価 償 却 を 行 うべき 固 定 の 取 得 又 は 改 良 に 充 てるための 補 助 金 等 の 交 付 を 受 けた 場 合 にお いては その 交 付 を 受 けた 金 額 に 相 当 する 額 を 長 期 前 受 金 とし


PowerPoint プレゼンテーション

職 員 の 平 均 給 与 月 額 初 任 給 等 の 状 況 (1) 職 員 の 平 均 年 齢 平 均 給 料 月 額 及 び 平 均 給 与 月 額 の 状 況 (5 年 4 月 1 日 現 在 ) 1 一 般 行 政 職 区 類 団 府 分 似 体 平 均 年 齢

Microsoft Word - 国民年金の加入納付状況H25

スライド 1

別 紙

Microsoft Word - 19年度(行個)答申第94号.doc

(Microsoft Word - \220\340\226\276\217\221.doc)

2 一 般 行 政 職 給 料 表 の 状 況 ( 平 成 23 年 4 月 1 日 現 在 ) 1 号 給 の 給 料 月 額 最 高 号 給 の 給 料 月 額 1 級 2 級 3 級 4 級 5 級 ( 単 位 : ) 6 級 7 級 8 級 135, , ,900 2

職 員 の 平 均 給 与 月 額 初 任 給 等 の 状 況 () 職 員 の 平 均 年 齢 平 均 給 料 月 額 及 び 平 均 給 与 月 額 の 状 況 ( 年 月 日 現 在 ) 一 般 行 政 職 平 均 給 与 月 額 平 均 年 齢 平 均 給 料 月 額 平 均 給 与 月 額

Ⅰ 元 請 負 人 を 社 会 保 険 等 加 入 建 設 業 者 に 限 定 平 成 28 年 10 月 1 日 以 降 に 入 札 公 告 指 名 通 知 随 意 契 約 のための 見 積 依 頼 を 行 う 工 事 から 以 下 に 定 める 届 出 の 義 務 ( 以 下 届 出 義 務 と

一 般 行 政 職 給 料 表 の 状 況 (4 年 4 月 日 現 在 ) ( 単 位 : ) 級 級 級 4 級 5 級 号 給 の 給 料 月 額 5, 85,,9,9 89, 最 高 号 給 の 給 料 月 額 4,7 7,8 54,7 88, 4, ( 注 ) 給 料 月 額 は 給 与

2 役 員 の 報 酬 等 の 支 給 状 況 平 成 27 年 度 年 間 報 酬 等 の 総 額 就 任 退 任 の 状 況 役 名 報 酬 ( 給 与 ) 賞 与 その 他 ( 内 容 ) 就 任 退 任 法 人 の 長 A 18,248 11,166 4, ,066 6,42

4 承 認 コミュニティ 組 織 は 市 長 若 しくはその 委 任 を 受 けた 者 又 は 監 査 委 員 の 監 査 に 応 じなければ ならない ( 状 況 報 告 ) 第 7 条 承 認 コミュニティ 組 織 は 市 長 が 必 要 と 認 めるときは 交 付 金 事 業 の 遂 行 の

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川 崎 医 療 福 祉 学 会 誌 Vol. 20 No. 1 2010 253 258 短 報 電 子 メールの 利 用 が 秘 書 業 務 に 及 ぼす 影 響 秘 書 課 員 と 責 任 者 の 回 答 による 分 析 中 村 健 壽 * 1 福 岡 欣 治 * 1 1. 研 究 の 背 景 と 目 的 香 西 1) が 指 摘 しているように,パーソナルコン ピュータ(パソコン)に 代 表 されるオフィスにおけ る 情 報 機 器 の 利 用 は,この30 年 間 の 間 に 大 きく 進 展 し, 業 務 の 具 体 的 な 内 容 は 大 きく 変 化 した.そし て,とりわけ1990 年 代 からのインターネットの 普 及 は, 個 々のオフィス 内 での 業 務 にとどまらず, 職 場 組 織 の 内 外 におけるコミュニケーションおよび 情 報 収 集 の 様 相 を 大 きく 変 化 させた. 中 でも 電 子 メール は, 個 人 間 のコミュニケーション ツールとして 広 く 普 及 しており, 現 在 では 非 常 に 多 くの 人 々が 仕 事 上 の 連 絡 に 電 子 メールを 利 用 する 状 況 となってい る. 電 子 メールの 職 場 でのコミュニケーションへの 影 響 に 関 しては,ちょうどその 黎 明 期 から 普 及 期 にか けて, 橋 元 他 2), 北 垣 3), 井 上 三 浦 橋 本 4) ら の 研 究 が 報 告 されてきた.そして,2000 年 代 に 入 る と, 秘 書 業 務 あるいはビジネス 実 務 の 観 点 からの 分 析 も 報 告 されてきている 5,6).たとえば 大 島 他 5) は 1999 年 に 電 子 メールの 定 着 した44 社 46オフィスに 調 査 票 を 配 布 し, 男 女 の 勤 労 者 における 電 子 メール の 利 用 が 仕 事 のスタイルに 及 ぼす 影 響 を 報 告 して いる. 電 子 メールはメモや 電 話 FAXなどの 減 少 によって 仕 事 の 効 率 化 に 貢 献 し, 連 絡 相 手 や 収 集 す る 情 報 の 範 囲 の 拡 大 が 生 じていることを 指 摘 してい る.また 北 垣 6) は, 日 系 および 外 資 系 企 業 計 32 社 39 名 へのヒアリング 調 査 を 通 じて, 秘 書 の 情 報 伝 達 機 能 に 対 する 電 子 メールの 影 響 を 考 察 し, 上 司 とのス ムーズな 情 報 交 換 や 海 外 との 時 差 を 気 にしないやり とりに 電 子 メールが 活 用 されていること 等 を 報 告 し ている. ただし, 大 島 他 5) の 調 査 は 秘 書 ではなくオフィ スワーカー 一 般 に 焦 点 を 当 てたものであり,また 北 垣 6) も 含 めて, 秘 書 業 務 を 組 織 として 担 当 する 部 署,あるいはその 責 任 者 にまで 対 象 を 広 げて 研 究 し たものは 報 告 されていないようである. 秘 書 自 身 の 業 務 における 電 子 メールの 影 響 を 量 的 に 把 握 したも のは 報 告 されていない.また, 日 本 企 業 の 秘 書 は 多 くの 場 合 秘 書 室 秘 書 課 等 の 秘 書 業 務 担 当 部 門 に 所 属 しているため,その 部 門 を 統 括 する 責 任 者 から 業 務 全 体 を 俯 瞰 した 情 報 を 得 ることも 有 意 義 であると 考 えられる. 本 研 究 では, 企 業 における 秘 書 業 務 担 当 部 門 の 責 任 者 とそこで 働 く 秘 書 ( 以 下 それぞれ 責 任 者 秘 書 課 員 と 表 記 )を 対 象 とした 全 国 規 模 の 調 査 7) から, 電 子 メールの 利 用 状 況 ならびに 電 子 メールの 利 用 による 秘 書 業 務 への 影 響 に 関 する, 秘 書 課 員 および 責 任 者 の 回 答 を 分 析 する. 企 業 の 秘 書 業 務 担 当 部 門 における 電 子 メール 利 用 の 実 態 と, 秘 書 課 員 および 直 属 上 司 にあたる 秘 書 業 務 担 当 部 門 の 責 任 者 が 電 子 メール 利 用 に 対 してどのような 認 識 を 持 っているのか,そして 秘 書 課 員 と 責 任 者 の 認 識 は どのように 対 応 あるいはズレを 生 じているのか,を 検 討 する. 2. 調 査 方 法 調 査 全 体 の 枠 組 み 等 は 福 岡 中 村 7) において 報 告 済 みのため,ここでは 本 研 究 での 分 析 に 直 接 関 係 す る 事 柄 について 記 述 する. 2. 1. 調 査 対 象 会 社 四 季 報 2004 年 3 集 ( 夏 号,CD-ROM)よ り, 企 業 の 経 営 規 模 を 勘 案 して 合 計 1000 社 ( 資 本 金 100 億 円 以 上 かつ 従 業 員 数 300 名 以 上 825 社,その 他 企 業 175 社 )を 抽 出 し,これらの 企 業 における 秘 書 業 務 担 当 部 門 の 責 任 者 とそのもとで 勤 務 する 秘 書 を 調 査 対 象 者 とした. 調 査 票 の 不 着 分 を 除 き, 実 際 に 調 査 が 可 能 であったのは 計 998 社 ( 東 証 一 部 833 社, 東 証 二 部 31 社,ジャスダック25 社 等 ; 電 気 機 器 94 * 1 川 崎 医 療 福 祉 大 学 医 療 福 祉 マネジメント 学 部 医 療 秘 書 学 科 ( 連 絡 先 ) 中 村 健 壽 701-0193 倉 敷 市 松 島 288 川 崎 医 療 福 祉 大 学 E-Mail:nakamura@mw.kawasaki-m.ac.jp 253

254 中 村 健 壽 福 岡 欣 治 社, 銀 行 と 小 売 業 各 76 社, 化 学 67 社 等 )であった. 2. 2. 調 査 内 容 調 査 内 容 は, 秘 書 部 門 の 有 無 とその 概 要 のほか, 秘 書 の 業 務 内 容, 自 律 性 や 多 様 性 など 職 務 の 質 的 特 徴,ストレスなどをも 含 むものであったが, 本 研 究 では 特 に 電 子 メールの 利 用 に 焦 点 をあてた 項 目 につ いて 分 析 した. 具 体 的 な 調 査 内 容 は 以 下 のとおりで ある. (1) 秘 書 業 務 における 電 子 メール 導 入 時 期 秘 書 課 員 責 任 者 とも, 回 答 者 の 勤 務 する 職 場 で 電 子 メールが 秘 書 業 務 に 使 われ 始 めた 時 期 がいつであるかについてたずねた. (2) 仕 事 上 の 送 受 信 メール 数 秘 書 課 員 責 任 者 とも, 回 答 者 自 身 が 仕 事 上 で 送 受 信 するメールの 本 数 を, 総 数 および 社 内 メール, 社 外 メール 別 にたずねた. (3) 担 当 上 役 宛 メールの 扱 い 秘 書 課 員 のうち, を 担 当 して 秘 書 業 務 をおこなっている 人 を 対 象 に, 上 役 宛 社 内 および 社 外 メールの 扱 い( 秘 書 が 開 封 して いるか 上 役 が 開 封 しているか),およびその 扱 いが 会 社 の 方 針 か 否 かをたずねた. (4) 電 子 メールの 秘 書 業 務 への 影 響 電 子 メールの 利 用 が 秘 書 業 務 にどのような 影 響 を 与 えているかについて, 計 11 項 目 を 設 けてそれぞれ4 段 階 (1.あてはまらない,2.や やあてはまる,3.かなりあてはまる,4.とても あてはまる)でたずねた.なお, 秘 書 課 員 に は 自 らの 秘 書 業 務 について, 責 任 者 には 自 身 でなく 秘 書 の 業 務 に 対 する 認 識 という 形 でた ずねた. (5) その 他 基 本 的 な 個 人 属 性 としての 性 別, 年 齢, 秘 書 業 務 の 経 験 年 数, 業 務 形 態 等 に 関 する 設 問 の 回 答 を 分 析 対 象 とした. 2. 3. 実 施 方 法 各 企 業 における 秘 書 業 務 担 当 部 門 の 責 任 者 宛 に 責 任 者 用 1 部 秘 書 課 員 用 2 部 の 調 査 票 を 送 付 し, 責 任 者 用 は 本 人 が, 秘 書 課 員 用 は 業 務 の 習 熟 度 を 考 慮 し 原 則 として 勤 務 年 数 2 年 以 上 の 秘 書 課 員 が,それぞれ 無 記 名 で 回 答 するよう 依 頼 した( 経 験 年 数 の 短 い 秘 書 課 員 のみで 組 織 が 構 成 される 可 能 性 もあることから, 分 析 上 は2 年 未 満 の 人 も 含 め た). 調 査 の 実 施 時 期 は2004 年 11 12 月 であり, 有 効 回 答 者 は 秘 書 課 員 が121 社 177 名 ( 男 性 11 名 と 女 性 166 名, 平 均 年 齢 32.8 歳 (SD=6.42)), 責 任 者 が 114 社 114 名 ( 男 性 109 名 と 女 性 5 名, 平 均 年 齢 48.5 歳 (SD=6.29))であった. 回 答 企 業 のうち 責 任 者 と 秘 書 の 少 なくとも 一 方 から 回 答 の 得 られた 企 業 は156 社 であり, 送 付 企 業 数 を 母 数 とした 回 収 率 は 15.6%であった. 回 答 企 業 に 業 種 等 の 偏 りはなく, 企 業 規 模 のみ 若 干 大 きかった. 本 研 究 においては, 質 問 内 容 の 多 くが 組 織 での 電 子 メールの 扱 いに 関 するものであることから, 秘 書 課 員 と 責 任 者 の 双 方 から 回 答 の 得 られた79 社 のデー タ( 複 数 の 秘 書 課 員 から 回 答 が 得 られた 場 合 に 性 別 や 勤 務 年 数 等 の 属 性 から 代 表 的 と 考 えられる1 名 を 抽 出 し, 責 任 者 1 名 の 回 答 と 対 応 づけたマッチング データ 7) )について 分 析 した.なお, 一 部 の 項 目 に 記 入 不 備 があった 場 合 は, 当 該 項 目 の 分 析 ごとに 除 去 した. 従 って, 分 析 により 対 象 者 数 が 若 干 異 なっ ている. 3. 結 果 3. 1. 秘 書 業 務 における 電 子 メール 導 入 時 期 秘 書 課 員 と 責 任 者 の 回 答 をそれぞれ 表 1に 示 す. 両 者 の 回 答 で 明 らかに 違 うのは 導 入 されているが 時 期 は 不 明 という 回 答 が 秘 書 課 員 で 多 く 責 任 者 で は 少 ないことである.ただし, 導 入 されていな い 企 業 は 皆 無 であり,1995 1998 年 頃 に 相 次 いで 秘 書 業 務 に 電 子 メールが 導 入 されたことが 見 て 取 れ る. 回 答 が 極 端 に 少 なかった2001 年 以 降 の 導 入 分 をそ の 直 前 の 時 期 (1999 00 年 )のカテゴリーと 合 わ せ,また 導 入 されているが 時 期 は 不 明 の 回 答 を 除 き, 1994 年 以 前 1995 96 年 1997 98 年 1999 年 以 降 の4カテゴリーとしたうえで 秘 書 課 員 と 責 任 者 の 回 答 の 関 連 性 を 調 べた.その 結 果,クロス 表 の 直 接 確 率 計 算 ではp=.016, 各 カテゴ リーに1 4 点 をあて 間 隔 尺 度 とみなして 相 関 係 数 を 算 出 するとr=.50,p<.001であり, 秘 書 課 員 と 責 任 者 の 回 答 はある 程 度 対 応 していた( 導 入 され ているが 時 期 は 不 明 のカテゴリーを 含 めても, 直 接 確 率 計 算 でp=.035の 関 連 性 が 認 められた). 3. 2. 仕 事 上 の 送 受 信 メール 数 秘 書 課 員 と 責 任 者 それぞれの 送 受 信 メール 数 (1 日 あたり)の 平 均 値 と 標 準 偏 差 を 表 2に 示 す.メー ル 送 受 信 数 はほぼ 同 様 であり, 平 均 値 で 総 数 が 約 25 通,うち 社 内 メールが20 通 程 度, 社 外 メールが5 通 程 度 であった. なお, 秘 書 課 員 のメール 本 数 について, 業 務 形 態 による 差 異 があるかどうかを 調 べたところ, 特 定 上 役 を 含 む 秘 書 ( 特 定 の 上 役 の 専 属 として 秘 書 業 務 を 遂 行 している 秘 書,ならびに 特 定 の 上 役 に ついて 秘 書 業 務 をおこなうとともに 秘 書 課 において グループ 秘 書 としての 内 容 別 業 務 も 兼 任 している 秘

電 子 メールの 利 用 が 秘 書 業 務 に 及 ぼす 影 響 255 表 1 電 子 メールの 秘 書 業 務 への 導 入 時 期 導 入 時 期 秘 書 課 員 責 任 者 度 数 % 度 数 % 1994 年 以 前 8 10.1 12 15.2 1995-96 年 12 15.2 22 27.8 1997-98 年 17 21.5 20 25.3 1999-00 年 7 8.9 11 13.9 2001-02 年 4 5.1 1 1.3 2003 年 以 降 0 0.0 1 1.3 導 入 されているが 時 期 は 不 明 30 38.0 10 12.7 導 入 されていない 0 0.0 0 0.0 欠 損 値 1 1.3 2 2.5 合 計 79 100 79 100 表 2 電 子 メール 送 受 信 数 (1 日 あたり) 指 標 秘 書 課 員 責 任 者 Mean SD Mean SD t 値 送 受 信 メール 総 数 25.21 23.46 24.99 21.83 0.10 n.s. 社 内 メール 20.71 19.75 19.59 18.80 0.25 n.s. 社 外 メール 5.03 7.59 5.37 4.98 0.55 n.s. 書 )では, 秘 書 課 での 内 容 別 業 務 のみを 担 当 する 秘 書 等 に 比 べると,メール 総 数 および 社 内 メールの 本 数 が 多 かった( 表 3). 3. 3. 担 当 上 役 宛 メールの 扱 い を 含 む 秘 書 課 員 における, 上 役 宛 メールの 扱 いとその 方 針 についての 集 計 結 果 を 表 4に 示 す. 開 封 方 法 については, 秘 書 が 送 信 者 や 件 名 にもとづいて 一 部 を 開 封 するという 回 答 は 相 対 的 に 少 なく,すべてを 秘 書 または 上 役 が 開 封 すると いう 回 答 が 多 かった.また,その 開 封 方 針 は 秘 書 の 希 望 ではなく 上 役 個 人 の 意 向 または 会 社 の 方 針 によ るという 回 答 であった. なお, 開 封 方 法, 開 封 方 針 ともに 社 外 メールと 社 内 メールに 関 する 回 答 は 似 通 っている 一 方 (クロス 表 の 直 接 確 率 計 算 でいずれもp<.001), 開 封 方 法 と 方 針 との 間 には 社 外 メール 社 内 メールともに 関 連 性 がみられなかった( 直 接 確 率 計 算 でいずれも p>.10). 3. 4. 電 子 メールの 秘 書 業 務 への 影 響 電 子 メールの 利 用 が 秘 書 業 務 に 及 ぼす 影 響 につい てたずねた11 項 目 のそれぞれについて, 秘 書 課 員 と 責 任 者 による 回 答 の 平 均 値 を 算 出 して 比 較 するとと もに, 両 者 の 回 答 の 関 連 性 を 相 関 係 数 とクロス 集 計 表 による 直 接 確 率 計 算 の2 通 りで 検 討 した( 表 5).その 結 果, 対 応 のあるt 検 定 による 平 均 値 の 比 較 では, 有 意 差 のある 項 目 はみられなかった(1 項 目 のみ10% 水 準 の 傾 向 差 あり). 秘 書 課 員 と 責 任 者 の 回 答 は 平 均 値 レベルでは 差 がないと 言 える. 得 点 の 上 位 3つはともに 社 内 他 部 署 との 連 絡 がス ムーズになる ( 平 均 値 は 秘 書 課 員 が3.47, 責 任 者 が3.34), 社 外 との 連 絡 がスムーズになる ( 同 3.27と3.25), FAXの 量 が 少 なくなる ( 同 3.02 と3.23)であり,その 順 位 も 同 一 であった.なお, 用 意 したいずれの 項 目 も 平 均 値 が2.0を 下 回 るもの はなかったが, 担 当 上 役 への 情 報, 担 当 上 役 から の 情 報 が, 秘 書 を 介 さずにやりとりされる という 項 目 への 回 答 は, 秘 書 課 員 責 任 者 ともに 平 均 値 が 低 かった.また 打 合 せの 時 間 が 少 なくなる も 同 様 であった. 他 方, 秘 書 課 員 と 責 任 者 による 回 答 の 関 連 性 につ いては, 相 関 係 数 に 有 意 ないし 有 意 傾 向 のものはな く, 直 接 確 率 計 算 でも1 項 目 が10% 水 準 での 有 意 傾 向 を 示 すにとどまった. 各 組 織 単 位 でみたとき, 秘 書 課 員 とその 直 属 上 司 にあたる 秘 書 業 務 担 当 部 門 の 責 任 者 の, 電 子 メールが 秘 書 業 務 に 与 える 影 響 につ いての 認 識 はまったく 似 ていない,と 言 うことがで きる. なお, 秘 書 課 員 の 回 答 について, 業 務 形 態 による 比 較 をおこなったところ, 上 司 との 連 絡 がスムーズになる と 社 外 との 連 絡 がスムーズになる の2 項 目 で, 付 き 業 務 を 含 む 秘 書 の 方 がそうでない 秘 書 より 得 点 が 高 い,という 差 異 が 認 められた( 対 応 のあるt 検 定 : 前 者 はt(18)=2.50, p<.05, 後 者 はt(74)=2.92, p<.01). 4. 考 察 と 展 望 4. 1. 調 査 結 果 のまとめと 考 察

256 中 村 健 壽 福 岡 欣 治 表 3 秘 書 課 員 の 業 務 形 態 別 にみたメール 送 受 信 数 指 標 業 務 形 態 N Mean SD カテゴリー Mean SD t 値 送 受 信 メー の 個 人 16 29.07 26.90 ル 総 数 付 きのみ 28.11 24.57 の 個 人 48 27.79 24.04 を 含 む 付 き+ 内 容 別 3.95 秘 書 課 での 内 容 8 12.63 10.81 p<.001 別 業 務 のみ 11.93 10.14 を 含 まな 上 記 以 外 6 11.00 10.10 い の 個 人 社 内 メール 16 22.88 22.69 付 きのみ 23.14 20.70 の 個 人 47 23.23 20.2424 を 含 む 付 き+ 内 容 別 4.49 秘 書 課 での 内 容 8 7.13 5.38 p<.001 別 業 務 のみ 8.92 6.49 を 含 まな 上 記 以 外 5 11.80 7.66 い の 個 人 社 外 メール 16 6.19 5.49 付 きのみ 5.25 7.28 の 個 人 付 き+ 内 容 別 秘 書 課 での 内 容 別 業 務 のみ 47 4.94 7.82 8 5.50 11.65 上 記 以 外 5 1.40 2.07 を 含 む を 含 まな い 3.92 9.22 0.57 n.s. 表 4 上 役 宛 メールの 開 封 方 法 と 方 針 指 標 カテゴリー 社 外 メール 社 内 メール 度 数 % 度 数 % 開 封 すべて 秘 書 ( 回 答 者 自 身 )が 開 封 19 29.7 27 42.2 秘 書 が 送 信 者 や 件 名 から 一 部 を 開 封 11 17.2 8 12.5 すべて 上 役 が 開 封 ( 秘 書 は 開 封 しない) 34 53.1 13 20.3 すべて 上 役 が 開 封 するが 秘 書 にも 同 送 される ( 選 択 肢 なし) 16 25.0 方 針 会 社 の 方 針 である 16 25.0 17 26.6 上 役 個 人 の 意 向 である 48 75.0 46 71.9 秘 書 ( 回 答 者 自 身 )の 希 望 による 0 0.0 1 1.6 本 研 究 では, 企 業 での 秘 書 業 務 における 電 子 メー ル 利 用 の 実 態,および 電 子 メールの 利 用 による 秘 書 業 務 への 影 響 について 検 討 した. (1) 電 子 メール 利 用 の 実 態 について 電 子 メールは,1990 年 代 の 半 ばから 後 半 に かけて, 秘 書 業 務 に 導 入 された.2000 年 前 後 には 大 半 の 企 業 において 秘 書 業 務 に 電 子 メー ルが 取 り 入 れられている.これは 社 会 におけ るインターネットの 普 及 8) と 軌 を 一 にするも のであり, 企 業 秘 書 を 対 象 とした 北 垣 6) の 報 告 とも 一 致 している. 仕 事 上 の 電 子 メール 総 受 信 数 は1 日 あたり 平 均 で 約 25 通 であり, を 含 む 秘 書 の 方 が 特 に 社 内 メールを 多 く 利 用 して いた. 秘 書 課 としてのいわゆるグループ 業 務 に 比 べて, 上 役 の 業 務 を 個 人 として 補 佐 する 場 合 の 方 が, 秘 書 自 身 が 社 内 各 部 署 との 接 点 になりやすいと 考 えられる. 付 き 秘 書 の 場 合, 上 役 宛 のメール を 自 ら 開 封 する 場 合 がある. 上 役 宛 メールの 開 封 については, 秘 書 がイニシャティブをと るのではなく, 主 に 上 役 個 人 の 意 向 によっ て, 秘 書 に 開 封 の 任 がゆだねられるかどうか が 決 まっているようである.これには, 上 役 自 身 のリテラシー 能 力 やメール コミュニケー ションへの 積 極 性 も 関 係 していると 思 われ る. (2) 電 子 メールの 利 用 が 秘 書 業 務 に 与 える 影 響 に ついて 電 子 メールの 利 用 による 秘 書 業 務 への 影 響 としては, 主 に 社 内 他 部 署 および 社 外 との 連 絡 がスムーズになる ことが 秘 書 課 員 と 責 任 者 に 共 通 して 認 識 されていた( 上 司 との 連 絡 の 円 滑 化 については,これらに 比 べるとや や 得 点 が 低 かった). 他 方 秘 書 を 介 さない 情 報 のやりとり の 得 点 が 低 かったことは,

電 子 メールの 利 用 が 秘 書 業 務 に 及 ぼす 影 響 257 項 目 内 容 ( 一 部 略 ) 上 司 との 連 絡 がスムーズに なる 社 内 他 部 署 との 連 絡 がス ムーズになる 社 外 との 連 絡 がスムーズに なる Mean SD Mean SD 2.60 1.16 2.52 0.96 0.08 n.s. -.04 n.s. 3.47 0.69 3.34 0.57 1.39 n.s..05 p=.068 3.27 0.80 3.25 0.69 0.44 n.s..16 n.s. 電 話 の 回 数 が 少 なくなる 2.53 1.02 2.73 0.88 1.18 n.s..12 n.s. 電 話 の 取 り 次 ぎによる 仕 事 の 中 断 が 少 なくなる 2.34 1.03 2.48 0.94 0.78 n.s..11 n.s. FAXの 量 が 少 なくなる 3.02 0.88 3.23 0.75 1.52 n.s..23 n.s. 手 書 きメモの 作 成 や 受 け 取 りが 少 なくなる 書 類 (コピーなど)の 量 が 少 なくなる 表 5 電 子 メールの 秘 書 業 務 への 影 響 : 秘 書 課 員 と 責 任 者 の 回 答 秘 書 課 員 責 任 者 t 検 定 相 関 係 数 (n.s.) クロス 集 計 時 直 接 確 率 計 算 2.69 0.96 2.75 0.80 0.50 n.s..20 n.s. 2.44 0.97 2.17 1.02 1.69 p<.10.15 n.s. 打 合 せの 時 間 が 少 なくなる 2.00 0.76 2.17 0.85 0.89 n.s. -.09 n.s. 担 当 上 役 への 情 報 担 当 上 役 からの 情 報 が 秘 書 を 介 2.05 0.93 2.03 0.82 0.35 n.s. -.05 n.s. さずにやりとりされる 全 体 として 秘 書 業 務 の 遂 行 がスムーズになる 2.91 0.85 2.89 0.80 0.51 n.s..15 n.s. 電 子 メールの 導 入 が 情 報 伝 達 の 仲 介 役 として の 秘 書 の 役 割 を 低 下 させるものではない,と いう 認 識 がなされていることの 反 映 であると 考 えられる.なお, 付 きの 業 務 を 経 験 している 秘 書 ほど 上 司 および 社 外 との 連 絡 が 円 滑 化 すると 回 答 している 点 は, 本 調 査 に おける 秘 書 課 員 の 回 答 が 現 実 の 秘 書 業 務 場 面 を 適 切 に 反 映 していることの 現 れとして 解 釈 することもできよう. (3) 電 子 メール 利 用 の 影 響 に 関 する 秘 書 課 員 の 回 答 と 責 任 者 の 回 答 との 関 係 今 回 のデータで, 電 子 メールの 利 用 が 秘 書 業 務 に 与 える 影 響 について, 秘 書 課 員 と 責 任 者 の 回 答 は, 平 均 値 のレベルでは 同 等 であっ た.しかしながら, 秘 書 課 員 と 直 属 上 司 であ る 責 任 者 の 回 答 を 組 織 単 位 で 対 応 づけようと したとき, 両 者 には 何 ら 有 意 な 関 連 性 が 認 め られなかった.これはたとえば, 秘 書 業 務 に 電 子 メールが 良 い 影 響 を 与 えている,と 認 識 している 責 任 者 のもとで 働 く 秘 書 課 員 が, 必 ずしも 電 子 メールが 秘 書 業 務 に 影 響 している とは 回 答 していない,という 状 態 であると 言 える.このことが 生 じる 理 由 は 責 任 者 と 秘 書 課 員 の 双 方 にあり 得 るが, 電 子 メールの 導 入 時 期 に 関 する 回 答 では 秘 書 課 員 と 責 任 者 の 回 答 が 相 互 に 関 係 していたことと 合 わせて 解 釈 すれば, 責 任 者 が 秘 書 課 員 の 業 務 の 質 的 な 側 面 を 十 分 には 理 解 していない,という 可 能 性 が 考 えられる. 福 岡 中 村 9) が 先 行 研 究 をふ まえて 指 摘 しているように, 日 本 の 企 業 秘 書 においては, 秘 書 としての 業 務 経 験 を 積 んだ 人 が 秘 書 業 務 担 当 部 門 の 責 任 者 になる,とい うキャリアパスがほとんど 存 在 しない. 従 っ て, 電 子 メールの 業 務 への 影 響 に 関 しては, 責 任 者 よりも 秘 書 課 員 の 回 答 の 方 がより 実 態 を 反 映 している,と 推 測 することができる. もちろん,この 解 釈 の 妥 当 性 については, 今 後 の 研 究 でも 改 めて 確 認 していかねばならな い. 4. 2. 展 望 と 今 後 の 課 題 本 研 究 では, 日 本 の 企 業 秘 書 における 電 子 メール 導 入 の 状 況 とその 業 務 に 対 する 影 響 に 関 する 調 査 結 果 を 報 告 した. 電 子 メールのみならずインターネッ トはもはや 社 会 の 一 部 であり, 導 入 が 進 んでい る という 状 態 は 過 去 のものである.しかしなが ら, 電 子 メールの 導 入 が 業 務 にいかなる 影 響 を 与 え, 秘 書 業 務 を 変 化 させているかという 点 について は 十 分 検 討 されたとは 言 えず,むしろ 導 入 それ 自 体 が 一 段 落 している 現 時 点 でこそ, 業 務 の 質 的 な 変 化 へと 踏 み 込 んだ 分 析 をおこなうべきであろう. 特 に, 秘 書 課 員 と 責 任 者 の 回 答 が 平 均 値 レベルで は 同 等 であるにもかかわらず 両 者 の 関 連 性 が 乏 しい という 結 果 は, 秘 書 業 務 担 当 部 門 の 責 任 者 が 現 在 以 上 に 部 下 である 秘 書 課 員 の 職 務 状 況 を 理 解 すること の 必 要 性 を 示 唆 している.この 問 題 を 掘 り 下 げてい くことは, 秘 書 課 員 の 職 務 に 対 するモチベーション

258 中 村 健 壽 福 岡 欣 治 や 満 足 感 の 向 上 を 促 し, 個 々の 秘 書 課 員 のみならず 秘 書 業 務 担 当 部 門 における 秘 書 業 務 の 効 率 的 な 遂 行 にもつながる 可 能 性 がある. 本 研 究 の 問 題 点 としては, 調 査 自 体 の 回 収 率 の 低 さとともに, 電 子 メール 利 用 の 秘 書 業 務 に 対 する 質 的 な 影 響 について 必 ずしも 網 羅 的 に 項 目 を 整 備 でき ているわけではない,という 点 が 指 摘 できる. 後 者 については,たとえば 電 子 メールのもつ 欠 点 や 導 入 に 伴 うデメリット(たとえば 大 島 他 5) を 参 照 )につ いては 本 研 究 では 対 象 外 であった. 調 査 方 法 と 指 標 の 拡 張 改 善 によって,より 精 緻 な 検 討 をおこなう 余 地 があるといえる. 調 査 の 実 施 にあたり, 平 成 16 年 度 静 岡 文 化 芸 術 大 学 文 化 政 策 学 部 長 特 別 研 究 費 の 助 成 を 受 けました.ご 多 忙 の 中, 調 査 にご 協 力 くださいました 各 企 業 における 秘 書 業 務 担 当 部 門 の 責 任 者 ならびに 秘 書 課 員 の 皆 様 方 に 対 し, 厚 く 御 礼 申 し 上 げます. 文 献 1) 香 西 真 弓 :PC 導 入 による 秘 書 業 務 の 変 容 インタビュー 調 査 を 中 心 に. 自 由 が 丘 産 能 短 期 大 学 紀 要, 42, 127-134, 2009. 2) 橋 元 良 明, 吉 井 博 明, 三 上 俊 治, 水 野 博 介, 石 井 健 一, 平 林 紀 子, 中 村 功, 是 永 論, 見 城 武 秀, 福 田 充 : 企 業 における 電 子 メイル システムの 実 態 事 例 研 究. 東 京 大 学 社 会 情 報 研 究 所 調 査 研 究 紀 要, 3, 1-70, 2003. 3) 北 垣 日 出 子 : 電 子 メールの 導 入 と 秘 書 職 の 現 状 オフィスのネットワーク 化. 日 本 橋 女 学 館 短 期 大 学 紀 要, 8, 35-51, 1995. 4) 井 上 理, 三 浦 仁, 橋 本 岳 : 社 内 電 子 メールの 活 用 がコミュニケーション 行 動 に 及 ぼす 影 響 について. 日 本 社 会 心 理 学 会 第 38 回 大 会 発 表 論 文 集, 268-269, 1997. 5) 大 島 武, 村 田 雅 之, 西 野 伸 一 郎 : 電 子 メールがオフィスワーカーのワーキングスタイルに 与 える 影 響.ビジネス 実 務 論 集, 18, 1-16, 2000. 6) 北 垣 日 出 子 : 電 子 メールの 普 及 による 秘 書 の 情 報 伝 達 活 動 への 影 響.ビジネス 実 務 論 集, 21, 11-24, 2003. 7) 福 岡 欣 治, 中 村 健 壽 : 企 業 組 織 における 秘 書 機 能 の 二 重 構 造 性 調 査 の 概 要 と 秘 書 組 織 の 特 徴. 静 岡 文 化 芸 術 大 学 研 究 紀 要, 6, 83-90, 2005. 8) 日 本 インターネット 協 会 :インターネット 白 書 2001. 初 版,インプレス, 東 京, 2001. 9) 福 岡 欣 治, 中 村 健 壽 : 企 業 秘 書 における 職 務 の 多 様 性, 自 律 性 がワーク モチベーションとメンタルヘルスに 及 ぼす 影 響 秘 書 課 員 と 責 任 者 による 認 識 の 相 違 に 着 目 して.ビジネス 実 務 論 集, 28, 65-74, 2010. ( 平 成 22 年 5 月 10 日 受 理 ) Effects of Email Use on Secretarial Working Practices in Japanese Companies: From the Viewpoints of Secretaries and Their Bosses Kenju NAKAMURA and Yoshiharu FUKUOKA (Accepted May 10, 2010) Key words:business secretaries,e-mail,secretarial working practices,bosses Correspondence to:kenju NAKAMURA Department of Medical Secretarial Arts Faculty of Health and Welfare Services Administration Kawasaki University of Medical Welfare Kurashiki,701-0193,Japan E-Mail:nakamura@mw.kawasaki-m.ac.jp (Kawasaki Medical Welfare Journal Vol.20, No.1, 2010 253 258)