1.1 丹 生 都 比 売 神 社 和 歌 山 県 伊 都 郡 かつらぎ 町 上 天 野 の 丹 生 都 比 売 神 社 の 元 の 祭 神 は 丹 生 高 野 明 神 で 創 建 の 時 期 は 明 らかではないが 空 海 の 高 野 山 開 山 よりずっと 以 前 に 土 着 の 神 ( 天 野



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表紙

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6 構 造 等 コンクリートブロック 造 平 屋 建 て4 戸 長 屋 16 棟 64 戸 建 築 年 1 戸 当 床 面 積 棟 数 住 戸 改 善 後 床 面 積 昭 和 42 年 36.00m m2 昭 和 43 年 36.50m m2 昭 和 44 年 36.

16 日本学生支援機構

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丹 生 都 比 売 神 社 所 蔵 国 宝 銀 銅 蛭 巻 太 刀 拵 と 太 刀 の 復 元 による 鎌 倉 時 代 初 期 の 作 刀 技 術 の 実 証 的 再 現 研 究 代 表 研 究 者 : 星 野 欣 也 ( 東 京 農 業 大 学 ) 共 同 研 究 者 : 上 野 修 路 ( 中 世 工 芸 研 究 製 作 者 ) 松 田 次 泰 ( 刀 匠 ) 要 旨 本 研 究 の 対 象 とした 国 宝 の 太 刀 拵 (たちこしらえ)( 刀 身 は 欠 失 )は 永 く 東 京 国 立 博 物 館 に 委 託 管 理 されてきたが その 部 品 構 成 や 装 飾 金 具 などに 関 する 詳 細 な 研 究 は 行 わ れてきていない 共 同 研 究 者 の 上 野 修 路 は 以 前 に 現 物 に 接 して 寸 法 を 含 む 部 品 の 詳 細 を 計 測 観 察 する 機 会 を 得 ていたが 今 回 その 情 報 に 基 づき 拵 の 当 初 の 姿 を 復 元 するこ とによってこの 太 刀 の 製 作 技 法 とその 特 徴 を 実 証 的 に 再 現 記 録 することに 挑 戦 した そ して 鞘 柄 の 木 地 の 選 択 と 加 工 銅 板 の 蛭 巻 加 工 と 鍍 銀 漆 塗 り 仕 上 げ 各 種 金 具 の 製 作 と 鍍 金 など 全 てを 手 作 業 で 行 い それらの 製 作 技 法 を 確 認 することに 成 功 した 一 方 この 太 刀 の 刀 身 は 現 存 していないが 拵 の 実 測 結 果 からそれに 見 合 う 刀 身 の 木 型 を 作 り これを 基 に 共 同 研 究 者 の 刀 匠 松 田 次 泰 が 刀 身 を 製 作 した 平 安 後 期 ~ 鎌 倉 初 期 の 太 刀 の 特 徴 である 細 身 で 優 雅 な 姿 と 沸 でき(にえでき) の 美 しい 刃 紋 を 再 現 する ことに 成 功 し 同 時 代 の 刀 身 製 作 技 法 を 実 証 的 に 推 察 特 定 することができた 国 宝 太 刀 の 拵 およびその 刀 身 をほぼ 完 全 に 復 元 製 作 したことにより 同 時 代 の 拵 と 刀 に 関 わる 金 工 ならびに 鍛 冶 技 法 を 実 証 的 に 解 明 し 記 録 することができた 1. 研 究 目 的 と 対 象 とする 太 刀 ( 拵 )の 由 来 現 在 国 宝 に 指 定 されている 刀 剣 122 件 のうち 鎌 倉 時 代 の 作 品 は 87 件 を 占 め 1) 姿 形 のみならず 細 部 の 美 術 的 価 値 も 最 高 とされるものが 少 なくない しかし これを 再 現 することは 甚 だ 困 難 であり 江 戸 時 代 以 来 多 くの 刀 匠 や 鞘 師 が 挑 戦 してはいるが 真 に 迫 る 姿 に 再 現 している 例 は 殆 どない 今 回 熟 達 した 中 世 工 芸 研 究 製 作 者 上 野 修 路 およ び 刀 匠 松 田 次 泰 を 共 同 研 究 者 として 丹 生 都 比 売 (にうつひめ) 神 社 所 蔵 で 国 宝 指 定 の 拵 とその 太 刀 を 対 象 とし これらを 忠 実 に 復 元 製 作 することによって 鎌 倉 時 代 初 期 の 金 工 と 作 刀 の 技 法 を 実 証 的 に 再 現 確 認 し それを 記 録 に 留 めて 日 本 古 来 の 技 術 を 伝 承 する ことを 目 的 とした 今 回 の 復 元 に 先 立 ち 平 成 23 年 に 上 野 修 路 松 田 次 泰 は 丹 生 都 比 売 神 社 を 訪 れ 上 野 が 以 前 に 復 元 していた 獅 子 造 鱗 文 兵 庫 鎖 太 刀 拵 (ししづくり うろこもん ひょうごく さり たちこしらえ)( 原 物 は 同 社 所 蔵 )の 摸 作 品 を 持 参 して 同 社 宮 司 ( 丹 生 晃 市 氏 )に 詳 しく 説 明 を 行 い 今 回 対 象 とする 太 刀 拵 を 忠 実 に 復 元 することについて 了 解 を 得 た なお 以 下 本 研 究 の 記 述 で 刀 剣 に 関 する 用 語 は 日 本 刀 の 鑑 賞 基 礎 知 識 2) に 基 づい ている - 65 -

1.1 丹 生 都 比 売 神 社 和 歌 山 県 伊 都 郡 かつらぎ 町 上 天 野 の 丹 生 都 比 売 神 社 の 元 の 祭 神 は 丹 生 高 野 明 神 で 創 建 の 時 期 は 明 らかではないが 空 海 の 高 野 山 開 山 よりずっと 以 前 に 土 着 の 神 ( 天 野 社 ) として 祀 られていたとされる 3) 11 世 紀 の 高 野 山 初 代 検 校 雅 真 の 頃 には 御 室 仁 和 寺 の 支 配 下 となり 大 師 信 仰 の 隆 盛 に 伴 い 院 政 期 以 後 院 や 摂 関 家 などの 高 野 山 参 詣 が 行 われ 仁 和 寺 による 天 野 社 の 整 備 が 行 われた 高 野 山 が 権 門 寺 院 としての 勢 力 を 拡 大 すると 天 野 社 は 各 地 の 高 野 山 領 荘 園 に 勧 請 され 中 世 を 通 じて 権 力 と 勢 力 を 保 持 し た 高 野 山 による 天 野 社 支 配 が 定 まった 弘 安 年 間 (1278~88)の 蒙 古 襲 来 に 際 して 天 野 社 が 行 った 夷 狄 退 散 の 祈 祷 の 功 績 が 認 められ 朝 廷 と 幕 府 から 近 木 荘 ( 大 阪 府 貝 塚 市 ) が 寄 進 された この 神 社 の 現 在 の 祭 神 は 丹 生 都 比 売 大 神 (にうつひめのおおかみ) 高 野 御 子 大 神 (た かのみこのおおかみ) そして 鎌 倉 時 代 に 行 勝 上 人 により 敦 賀 の 気 比 ( 筍 飯 ) 神 宮 から 勧 請 された 大 食 津 比 売 大 神 (おおげつひめのおおかみ) 広 島 の 厳 島 神 社 から 勧 請 された 市 杵 島 比 売 大 神 (いちきしまひめのおおかみ)の 4 神 とされている 並 び 立 つ 四 つの 社 殿 は 北 条 政 子 が 寄 進 し 室 町 時 代 に 再 建 されたとされている これら 祭 神 の 人 物 の 特 定 や 神 社 名 の 由 来 については 多 くの 研 究 があり 諸 説 がある なお この 神 社 は 古 くは 高 野 山 金 剛 峯 寺 と 一 体 であったが 明 治 時 代 の 神 仏 分 離 政 策 によって 独 立 した しかし 現 在 これら 両 者 は 共 に 世 界 文 化 遺 産 として 登 録 されている 1.2 国 宝 銀 銅 蛭 巻 太 刀 拵 (ぎんどうひるまき たちこしらえ)の 伝 承 および 現 状 4) 神 社 が 発 行 した 書 籍 に 鎌 倉 幕 府 は 弘 安 3 年 (1280 年 ) 諸 国 の 寺 社 に 異 国 降 伏 の 祈 祷 を 依 頼 した という 高 野 春 秋 編 年 輯 録 : 弘 安 3 年 2 月 条 と 1293 年 に 発 行 された 太 政 官 牒 興 山 寺 文 書 が 引 用 されており それらによれば 弘 安 4 年 (1281 年 )4 月 天 野 社 の 四 社 明 神 のうちの 蟻 通 神 (ありとおしのかみ: 大 食 都 比 売 大 神 の 別 名 ) の 託 宣 があり 諸 国 の 神 々は 議 定 つまり 会 議 を 行 って 国 中 の 神 々に 蒙 古 軍 と 戦 う こと そしてその 中 でも 天 野 大 明 神 が 第 一 陣 として 出 陣 することを 決 めたと 記 されてい る さらに 明 神 の 進 発 は 廿 八 日 丑 刻 と 定 められ それ 以 前 の 21 日 までに 神 々は 武 装 を 整 えること そして 進 発 に 際 しては 瑞 相 が 現 れて 来 る 六 七 月 中 本 朝 は 安 全 と 成 るべし という 託 宣 が 出 たとされる その 後 実 際 に 無 数 の 異 国 賊 船 が 海 上 に 現 れると 人 々は 顔 色 を 変 え 度 を 失 ったが この 託 宣 のことを 知 らされると 皆 随 喜 し 激 しく 戦 って 戦 争 に 勝 利 した このあと 関 東 (= 鎌 倉 幕 府 )からは 天 野 社 に 対 しそ の 功 績 を 愛 でて 弓 箭 御 剱 幣 帛 などが 贈 られたという 現 在 この 神 社 に 伝 承 されている 国 宝 の 銀 銅 蛭 巻 太 刀 拵 ( 写 真 -1 図 -1)をはじめと する 太 刀 は この 時 に 幕 府 から 奉 献 されたものである 可 能 性 が 高 く この 太 刀 拵 はその 姿 から 平 安 時 代 後 期 そしてこの 他 に 5 口 ある 兵 庫 鎖 (ひょうごくさり) 太 刀 拵 (いずれも 重 要 文 化 財 )は 鎌 倉 時 代 後 期 の 製 作 と 評 定 されている - 66 -

写 真 -1 国 宝 銀 銅 蛭 巻 太 刀 拵 4) 図 -1 同 太 刀 拵 の 部 分 名 称 ( 現 物 では 帯 執 と 七 ツ 金 が 欠 失 している) 5) この 太 刀 拵 の 現 状 について 小 笠 原 は 丹 生 都 比 売 神 社 伝 来 の 太 刀 外 装 類 中 唯 一 の 国 宝 指 定 のもので 堅 牢 さと 優 美 さを 兼 備 している 鍍 銀 をした 帯 状 の 山 銅 板 (やま がねいた)を 鞘 (さや) 柄 (つか)ともに 蛭 巻 にし その 透 き 間 を 黒 漆 で 埋 め 冑 金 (か ぶとがね) 足 金 物 (あしかなもの) 責 金 (せめがね) 石 突 (いしずき) 及 び 俵 鋲 (たわらび ょう)などすべての 金 具 は 花 菱 亀 甲 紋 (はなびしきっこうもん)を 鋤 出 彫 (すきだしほり)し 鍍 金 (ときん 金 メッキ)をしている 鍔 ( 鐔 つば)も 鍍 金 地 で 木 瓜 形 となり 縁 (ふち) には 同 様 の 花 菱 亀 甲 紋 を 刻 している 現 在 では 蛭 巻 き 板 の 銀 鍍 金 地 が 黒 色 を 呈 して 黒 と 金 の 調 和 がとれたものとなっているが 制 作 当 時 は 総 体 に 金 と 銀 に 輝 く 華 麗 な 太 刀 拵 であったに 違 いない 柄 頭 (つかがしら)が 大 きく 張 り( 冑 金 が 石 突 に 比 べてかなり 大 き い) 足 金 物 あたりの 反 りが 強 く 鞘 先 に 向 かって 反 りが 浅 い 姿 となる この 姿 は 平 安 時 代 の 太 刀 姿 に 合 致 するもので 制 作 時 期 を 平 安 時 代 末 期 とする 根 拠 としている しか し 足 金 物 の 形 は 瓶 子 形 (へいしがた)と 称 し 二 本 の 腹 帯 形 (はるびがた)を 合 猪 目 (あ わせいのめ)を 透 かして 一 つにしてあり この 形 は 平 安 末 期 からあるとしても 鎌 倉 時 代 に 多 い したがって この 太 刀 の 製 作 年 代 はある 程 度 幅 をもたせて 考 察 したほうがよいと 考 える 現 在 この 太 刀 には 帯 執 (おびとり)と 七 ツ 金 が 欠 失 しているが 同 神 社 の 他 の 作 品 同 様 に 兵 庫 鎖 が 付 いていたとみられる しかし 古 来 から 衛 府 太 刀 (えふたち) 飾 剣 (かざりたち)には 冑 金 に 懸 緒 (かけお)と 手 抜 緒 (てぬきのお) 足 金 物 には 帯 執 緒 と 七 ッ 金 (ななつがね)が 付 き 一 方 黒 漆 太 刀 (こくしつたち) 糸 巻 太 刀 には 冑 金 に 猿 手 (さ るで) 足 金 物 には 太 鼓 金 (たいこがね)の 付 いた 帯 執 韋 (おびとりがわ)が 付 くのが 一 般 で ある と 述 べられていることも 参 考 にする 必 要 があろう なお この 太 刀 拵 については 東 京 国 立 博 物 館 の 特 別 展 (2005 年 開 催 )に 昭 和 12 年 (1937) 制 作 の 模 造 作 品 ( 愛 知 県 在 住 の 甲 冑 師 三 浦 助 市, 同 博 物 館 所 蔵 )が 展 示 されてい た 6) この 作 品 は 原 物 と 比 較 して 鞘 の 反 りが 浅 く 国 宝 銀 銅 蛭 巻 太 刀 拵 の 優 美 な 姿 が 見 られず 違 和 感 を 覚 えるものであった - 67 -

2. 復 元 方 法 2.1 拵 上 野 が 昭 和 60 年 頃 に 東 京 国 立 博 物 館 において 現 物 の 細 部 を 計 測 した 数 値 および 当 時 撮 影 した 数 多 くの 写 真 から 実 物 大 の 図 面 を 起 こした ただし この 時 は 限 られた 時 間 内 に 簡 単 な 計 測 具 を 用 い すべて1 人 でしかも 計 器 が 直 接 触 れないような 測 り 方 であった ため 1 mm 以 下 ではあるが 若 干 の 誤 差 が 生 じている 可 能 性 がある 太 刀 拵 には 柄 先 端 から 鞘 末 端 にかけて 冑 金 をはじめとする 多 くの 金 工 品 が 付 属 し ている これらの 各 部 品 は 拵 の 形 状 に 合 わせた 曲 面 と 曲 線 で 構 成 され すべてに 花 菱 亀 甲 文 が 彫 刻 され そして 地 の 部 分 には 微 細 な 魚 子 (ななこ)が 刻 まれており 全 体 に 鍍 金 が 施 されている 10 個 ないし 2 個 連 続 している 俵 鋲 には 同 じ 花 菱 亀 甲 紋 が 彫 刻 さ れているが 紋 様 が 画 一 的 ではなくすべて 微 妙 に 異 なっており その 復 元 には 一 段 と 集 中 力 をこめた 緻 密 な 作 業 が 必 要 であった なお 原 物 では 欠 落 している 目 釘 の 座 帯 執 韋 七 ッ 金 を 新 たに 製 作 して 補 い 完 全 な 姿 の 復 元 を 目 指 した 2.2 拵 の 素 材 と 部 品 構 成 および 用 具 類 柄 鞘 の 下 地 木 材 : 乾 燥 させた 朴 (ほう)の 木 金 具 と 蛭 巻 板 の 材 料 : 素 銅 (すあか) 蛭 巻 下 地 材 と 漆 : 牛 生 革 黒 漆 金 具 表 面 処 理 材 料 : 金 銀 水 銀 金 具 類 : 冑 金 猿 手 俵 鋲 目 釘 の 座 縁 金 物 帽 額 形 猪 目 透 鍔 (もこうがた いのめすかしつば) 大 切 羽 (おおせっぱ) 口 金 物 一 の 足 二 の 足 七 ツ 金 責 金 石 突 用 具 類 : 小 型 の 鑿 錐 鏨 金 工 用 錐 鑢 キサゲ 彫 刻 刀 カンナ 小 槌 バーナー ヤニ 台 など 2.3 太 刀 ( 刀 身 )の 素 材 と 用 具 類 素 材 : 玉 鋼 ( 靖 国 たたら 鉄 ) 鍛 錬 用 具 : 鞴 火 床 金 敷 スプリングハンマー 手 鎚 大 鎚, テコ 棒 切 りタガネ 玉 箸 平 箸 箱 箸 あてびし U 字 台 炭 かき 焼 柄 粘 土 汁 藁 灰 成 形 仕 上 げ 用 具 : 万 力 せん 鋤 鑢 銘 切 りタガネ 小 鎚 銘 切 り 台 焼 き 入 れ 用 具 : 置 き 土 塗 り 台 練 り 板 ヘラ 水 槽 - 68 -

3. 拵 と 太 刀 の 復 元 製 作 3.1 拵 の 製 作 工 程 と 各 部 位 ( 写 真 -2 ~14 参 照 ) 拵 の 諸 工 作 はすべて 手 作 業 で 上 野 が 単 独 で 行 った 金 具 素 材 の 銅 については 前 述 のように 山 銅 との 説 もあ るが 入 手 の 安 易 さを 優 先 考 慮 して 素 銅 を 採 用 した 金 具 の 表 面 に 施 す 鍍 金 は 中 世 の 金 工 品 と 同 様 に 水 銀 を 用 いる 金 アマルガム 法 を 採 用 した 柄 と 鞘 の 蛭 巻 材 は 箔 鍍 銀 法 写 真 -2 ( 水 銀 で 銀 箔 を 焼 き 付 ける 技 法 )によって 鍍 銀 した 兜 金 猿 手 目 釘 の 座 (1) 金 具 の 製 作 1 地 金 なまし 金 具 の 大 きさに 合 わせて 地 板 を 切 断 し 加 熱 して 軟 化 させる 2 絞 り 写 真 -3 足 金 物 軟 らかくなった 地 板 を 鎚 で 叩 いて 延 ばす 丸 い 凹 みが 彫 られた 木 床 に 地 板 を 小 鎚 で 叩 いて 打 ち 無 地 の 金 具 素 形 物 を 作 る 3 打 ち 抜 き 金 具 をヤニ 台 に 固 定 し 穴 や 透 かし 部 分 は 切 鏨 あるいは 金 工 用 錐 を 用 いて 打 ち 抜 くか 穿 孔 する 4 鑢 掛 け 鎚 打 打 ち 抜 きなどによって 加 工 された 金 具 に 鑢 をかけ 正 確 な 寸 法 に 整 える この 段 階 で 鐔 は 本 体 と 大 切 羽 との 組 み 合 わせを 調 整 する 各 金 具 はその 表 面 をキサゲによって 研 削 し 形 を 整 えて 形 状 を 仕 上 げる 5 炭 研 ぎ 金 具 の 表 面 を 丹 念 に 炭 研 ぎして 研 磨 し 鑢 目 を 消 して 無 地 金 具 に 仕 上 げる 6 けがき 金 具 表 面 に けがき 針 または 墨 ( 細 筆 )に より 彫 刻 の 文 様 を 描 く 7 彫 金 無 地 金 具 をヤニ 台 に 固 定 し 花 菱 亀 甲 紋 などを 彫 り 地 の 部 分 は 微 細 な 鏨 を 用 い 多 数 の 魚 子 を 打 って 地 紋 とする 写 真 -4 鍔 写 真 -5 縁 金 物 と 口 金 物 写 真 -6 七 ツ 金 写 真 -7 鍍 金 前 の 俵 鋲 - 69 -

写 真 -8 花 菱 亀 甲 紋 の 彫 刻 ( 鍍 金 前 ) 8 鍍 金 (アマルガム 法 )および 鍍 銀 ( 箔 鍍 銀 法 ) 彫 刻 を 施 した 各 金 具 には 鍍 金 を そして 蛭 巻 材 には 仮 組 み 立 て 後 に 鍍 銀 を 施 す (2) 鞘 柄 下 地 の 製 作 と 刀 身 との 整 合 調 整 原 寸 大 図 面 をもとに 朴 板 に 刀 身 外 形 線 を 写 し 刀 身 形 状 の 木 型 を 作 る これに 合 わせて 製 作 された 刀 身 を 鞘 に 納 めて 当 たり を 調 べ 鞘 と 刀 身 両 者 に 微 小 な 修 正 を 加 え 整 合 をとった 上 で 目 釘 穴 をあける (3) 仮 組 み 立 て 柄 と 鞘 の 下 地 に 巻 くための 生 革 と 蛭 巻 地 板 を 整 え 完 成 した 金 具 を 試 装 着 する (4) 柄 鞘 下 地 に 生 革 を 巻 いた 上 に 鍍 銀 銅 板 2 枚 を 表 裏 同 時 に 正 確 に 巻 きつける (5) 蛭 巻 板 間 の 隙 間 に 黒 漆 を 塗 り 込 み 乾 燥 させる (6) 柄 に 俵 鋲 ( 裏 表 ) 猿 手 を 装 着 目 釘 座 を 施 して 完 成 する この 太 刀 拵 の 復 元 にあたっ て 最 も 配 慮 したことは この 拵 の 特 徴 であ る 蛭 巻 を 原 物 のとおりに 忠 実 に 再 現 する ことであった 鞘 柄 に 施 された 巻 数 銅 板 の 幅 間 隔 などはもちろんのこと 徐 々 に 幅 が 狭 くなる 鞘 に 巻 き 締 めるに 従 って 生 じる 歪 みを 修 正 しながら 作 業 を 進 める ことに 苦 労 があった とくに 鞘 の 朴 材 木 地 は 非 常 に 薄 く 光 が 透 けるほどで 強 い 力 を 与 えると 破 損 する 恐 れがあったので わず かに 湿 らせた 牛 の 生 皮 を 慎 重 に 巻 き これ に 重 ねて 鍍 銀 した 銅 板 を 緩 みのないよう に 注 意 深 く 巻 き 締 めた 写 真 -9 鍔 と 一 の 足 の 仮 組 み 立 て 写 真 -10 鞘 用 の 蛭 巻 銅 板 の 成 形 写 真 -11 2 枚 の 蛭 巻 銅 板 写 真 -12 柄 部 分 の 仮 組 み 立 て 状 況 写 真 -13 鍔 と 鞘 部 分 の 仮 組 み 立 て 状 況 写 真 -14 鞘 部 の 仮 組 み 立 て 状 況 - 70 -

博 物 館 展 示 や 写 真 などで 原 物 を 見 ると 帯 状 の 1 枚 の 金 属 板 を 単 純 に 巻 いてあるよう に 思 えるが 実 際 には 柄 鞘 の 表 裏 から 2 枚 の 銅 板 を 平 行 して 同 時 に 巻 くことで 規 則 正 しく 数 mm の 間 隔 を 置 きながら 巻 けることが 解 明 された もし 片 側 から1 枚 の 金 属 板 を 巻 くとすれば 隙 間 の 間 隔 はずっと 大 きくなってしまう 完 成 した 太 刀 拵 は 全 身 が 鈍 い 銀 色 の 光 沢 の 中 に まばゆい 金 色 の 金 具 が 配 置 され 芸 術 的 にも 極 めて 新 鮮 な 印 象 となった 700 年 以 上 前 の 人 々は 金 銀 に 輝 く 太 刀 拵 に 計 り 知 れない 驚 きと 崇 高 な 思 いを 抱 いたものと 推 察 できる 以 上 の 工 程 により 国 宝 の 拵 とほぼ 完 全 に 一 致 した 形 状 と 装 具 の 拵 を 再 現 することが できた( 写 真 -15) 写 真 -15 復 元 した 銀 銅 蛭 巻 太 刀 拵 ( 巻 末 に 拡 大 写 真 ) 3.2 太 刀 の 製 作 工 程 (1) 試 作 短 刀 表 面 の 顕 微 鏡 組 織 観 察 刀 の 良 否 は 切 れ 味 や 強 度 靱 性 だけではなく とくに 美 術 刀 剣 ではその 姿 ( 形 状 ) とともに 表 面 の 美 しさが 重 要 な 要 件 となる そして 後 者 については 刃 紋 とその 近 傍 だ けではなく 折 り 返 し 鍛 練 による 地 肌 ( 杢 目 板 目 柾 目 まさめ など)についてもそ の 美 しさが 評 価 の 対 象 となる この 地 肌 については 鋼 中 に 含 まれる 微 細 な 非 金 属 介 在 物 あるいは 鉄 酸 化 物 などの 細 かさや 分 布 状 態 に 依 存 するものであり 主 として 作 刀 中 の 鍛 錬 の 仕 方 によって 左 右 される 一 方 刃 紋 部 分 を 中 心 とする 外 観 状 態 は 刀 の 良 否 を 評 価 する 最 も 重 要 な 要 素 の 一 つとなるが その 現 れ 方 は 鋼 本 来 の 性 質 ( 含 有 C 量 や 不 純 物 組 成 など)と 鍛 錬 方 法 を 背 負 った 上 での 最 終 工 程 である 焼 入 れ 作 業 によって 具 現 化 す るものである そこで 刀 表 面 の 肉 眼 観 察 では 刃 紋 とその 近 傍 部 分 が 沸 出 来 (にえでき) か あ るいは 匂 出 来 (においでき) かと 称 される 外 観 状 態 によって 作 風 の 相 異 と 刀 の 出 来 栄 えが 評 価 される 名 刀 とされるものには 沸 出 来 のものが 多 く さらにその 上 に 映 り(うつり) といわれる 一 種 の 明 るさ があるものが 最 上 とされている これらの 外 観 は 基 本 的 には 光 反 射 の 散 乱 とその 強 弱 に 依 存 して 生 ずるものではあるが その 現 れ 方 は 大 変 微 妙 であり そこに 繊 細 な 美 的 価 値 を 見 出 すことが 日 本 刀 独 自 の 特 色 と 言 えよう この 外 観 の 差 異 が 微 妙 であることは 可 視 光 線 波 長 範 囲 の 光 反 射 の 状 態 に 関 係 する 要 因 が 多 岐 に 渉 っていることによっている すなわち 刀 自 身 については とくに 刃 紋 部 分 表 面 が 複 雑 な 混 合 組 織 になっていること その 組 織 中 の 硬 軟 各 部 分 が 研 磨 作 業 によっ て 極 めて 微 細 な 表 面 凹 凸 を 形 成 すること そして 結 晶 粒 子 の 粗 さも 関 係 することなど - 71 -

それら 全 てが 光 の 反 射 と 散 乱 状 態 ひいては 色 や 光 沢 の 相 異 に 影 響 を 与 える また 刀 の 観 賞 の 場 合 本 来 は 蝋 燭 の 光 またはそれに 似 た 古 い 裸 電 球 のやや 黄 色 い 光 を 用 いることが 通 例 になっており 天 然 の 白 色 光 では 上 記 のような 微 妙 な 外 観 の 相 異 は 判 別 しにくく このことからもわかるように 入 射 光 の 性 質 も 関 係 している したがって 外 観 の 感 覚 的 相 異 の 科 学 的 原 因 を 単 純 に 特 定 することは 難 しいが 大 き な 要 因 の 一 つとして 刀 表 面 の 顕 微 鏡 組 織 を 観 察 しておくことは 重 要 な 意 義 があると 考 えられた しかし 対 象 とする 刀 身 は 長 大 で 顕 微 鏡 観 察 が 技 術 的 に 難 しいこと また 研 ぎ 師 によって 研 磨 仕 上 げした 表 面 をエッチングなどで 汚 染 したくないことの 2 理 由 に より 作 刀 に 先 だって 同 じ 材 料 同 じ 技 法 で 事 前 試 作 した 短 刀 表 面 の 顕 微 鏡 組 織 を 観 察 して 参 考 にすることにした この 短 刀 の 仕 上 げ 表 面 は 美 的 要 素 も 充 分 高 く その 組 織 を 観 察 することは 本 番 の 刀 を 製 作 する 上 で 貴 重 な 情 報 になると 判 断 された この 観 察 は JFE テクノリサーチ( 株 ) 千 葉 事 業 所 の 研 究 員 の 指 導 下 で 行 なわれた 短 刀 表 面 の 肉 眼 観 察 で 代 表 的 と 思 われた 箇 所 の 表 面 を 研 磨 し エッチングした 後 峰 部 から 刃 先 部 に 渉 る 刀 幅 全 体 に 渉 って 表 面 のマクロおよびミクロ 組 織 を 観 察 した マク ロ 組 織 と 各 部 分 のミクロ 組 織 を 写 真 -16~20 に 示 す 刀 表 面 部 の 皮 鉄 (かわがね)は 共 析 鋼 に 近 い 約 0.7% C の 組 成 を 有 しているため 焼 入 れ 処 理 により 刃 先 部 分 は 急 速 冷 却 と 低 温 ( 約 180 ) 焼 き 戻 しによって 生 じた tempered martensite 組 織 そして 刃 紋 部 はそれが 混 合 した 急 速 冷 却 組 織 から 成 っている 峰 部 分 は 緩 速 冷 却 による pearlite + ferrite 組 織 となり その 中 間 部 分 は 各 位 置 での 冷 却 速 度 に 対 応 した 変 態 組 織 になって いる 峰 近 傍 および 刃 紋 付 近 を 含 む 中 間 部 の 組 織 には 微 細 な ferrite 組 織 の 混 在 が 認 め られたが その 存 在 が 映 り を 生 ずる 一 つの 原 因 と 考 えられており 注 目 された 復 元 する 刀 についてもこの 組 織 の 再 現 を 目 標 とするべきことが 確 かめられた 写 真 -16 試 作 した 短 刀 22 mm ( 峰 部 ) 写 真 -17 短 刀 幅 方 向 表 面 のマクロ 組 織 ( 刃 先 部 ) 写 真 -18 A 部 写 真 -19 B 部 写 真 -20 C 部 (pearlite + ferrite) (martensite + qusai-martensite) (tempered martensite) - 72 -

(2) 太 刀 の 復 元 作 業 本 来 は 刀 を 製 作 した 後 にそれに 適 合 する 鞘 を 作 るのが 常 道 であるが 今 回 は 国 宝 の 拵 を 復 元 することを 優 先 し その 鞘 に 納 まる 刀 ( 実 物 は 欠 失 )を 作 るという 逆 の 工 程 にな った したがって 予 め 鞘 に 納 まる 形 の 木 製 太 刀 を 作 り これと 同 形 状 の 太 刀 を 寸 分 違 わず(1 mm 以 下 の 精 度 で) 作 ることが 要 請 された しかし このことは 刀 の 製 作 とい う 立 場 からは 技 術 的 に 非 常 な 難 題 であり 一 部 工 程 では 通 常 と 異 なる 特 別 の 注 意 を 払 う ことが 必 要 になった 以 下 にその 工 程 を 記 録 する 1 素 材 の 準 備 : 素 材 : 鋼 : 通 称 靖 国 たたら 製 の 玉 鋼 ( 約 1.4 wt% C); 2.3 kg 木 炭 : 岩 手 県 産 の 松 炭 ; 鉈 で 切 断 し 約 30 mm 角 に なるように 整 える 藁 灰 : 火 床 (ほど) 脇 で 藁 を 燃 やして 灰 にする 粘 土 汁 : 粘 土 を 水 で 溶 き 甕 に 入 れて 火 床 脇 に 準 備 する 2 下 鍛 え : 皮 鉄 になる 玉 鋼 を 火 床 で 赤 めて 打 ち 延 ばす これを 数 個 作 り テコ 棒 の 先 に 乗 せてまとめる ベト( 粘 土 汁 )を 掛 け わら 灰 をまぶし 加 熱 する 適 温 になったら 取 り 出 してスプリング ハンマーで 打 ち 固 める この 塊 りをさらに 加 熱 し 手 鍛 造 で 打 ち 延 ばし 鏨 で 切 れ 目 を 入 れて 折 り 返 し 鍛 造 する これを 5 回 繰 り 返 す 写 真 -21 下 鍛 え 写 真 -22 切 れ 目 入 れ 3 上 鍛 え : 次 いで この 塊 り 2 個 を 合 わせて 加 熱 折 り 返 し 手 鍛 造 を 5 回 繰 り 返 す( 上 鍛 え) 一 方 心 鉄 (しんがね)は 含 有 C 量 の 少 ない 大 割 下 (おおわりした たたらの 鉧 けら の 一 部 )を 6 回 折 り 返 して 鍛 える 心 鉄 の 重 さは 刀 身 全 体 の 約 1/3 とする 写 真 -23 折 り 曲 げる 4 甲 伏 せ : 皮 鉄 を 加 熱 して U 字 型 に 曲 げる 5 造 り 込 み : 心 鉄 を 皮 鉄 に 挟 み 込 んで 鍛 接 し 一 体 化 する 6 素 延 べ : 皮 鉄 と 心 鉄 が 一 体 化 した 鋼 塊 を 加 熱 鍛 造 して 棒 状 に 打 ち 延 ばし 刀 の 粗 い 形 状 を 作 る 写 真 -24 折 り 返 す - 73 -

写 真 -25 素 延 べ 状 態 写 真 -26 火 造 りと 反 りつけ 写 真 -27 木 型 に 合 わせて 形 状 を 整 える( 上 と 右 ) 7 火 造 り : 素 延 べした 鋼 棒 を 加 熱 鍛 造 し 刀 の 姿 に 打 ち 延 ばして 行 く 同 時 に 刀 の 断 面 を 蛤 貝 状 の 曲 線 とし 峰 から 約 1/3 の 場 所 に 鎬 線 (しの ぎせん)ができるように 形 作 る また 鋒 (きっさき)の 形 状 を 整 える 8 反 りつけ : 刃 の 部 分 を 叩 いて 薄 くし 全 体 の 反 りを 出 して 太 刀 の 姿 にする.この 際 峰 (みね)の 曲 線 が 望 む 姿 の 懸 垂 線 になるように 仕 上 げて 行 く 一 般 には 後 の 焼 き 入 れ 工 程 で 大 きな 反 りが 出 るため この 段 階 では 最 終 の 反 り 姿 の 5~6 割 に 留 めておくのだが 松 田 刀 匠 は 最 終 形 状 を 確 実 に 望 む 姿 にするため この 段 階 で 9 割 の 反 りまで 成 形 し 焼 き 入 れ 工 程 では 大 きな 反 りを 出 さない 技 法 をとった 9 焼 き 鈍 し :これまでの 工 程 で 刀 の 内 部 に 残 存 している 応 力 を 緩 和 除 去 するため 姿 が 整 った 太 刀 を 火 床 に 入 れ 均 等 に 低 温 加 熱 した 後 大 量 の 藁 灰 に 挿 入 し 長 時 間 放 置 徐 冷 する 10 空 打 ち : 焼 き 鈍 し 後 の 太 刀 を 冷 間 で 叩 き 締 める( 冷 間 加 工 硬 化 ) 11 生 仕 上 げ : 主 に 鑢 を 用 いて 全 体 の 姿 を 整 える 12 土 置 き : 焼 刃 土 ( 木 節 粘 土 大 村 砥 石 木 炭 の 粉 を 約 1 : 2 : 3 の 割 合 で 混 合 ) を 水 で 練 り 藁 灰 で 油 分 や 汚 れを 除 去 した 刀 身 表 面 に ヘラを 用 い 望 ましい 刃 紋 ができるように 部 分 的 に 厚 みを 変 えて 乗 せる 13 焼 入 れ : 火 色 が 見 やすい 夜 間 に 行 い 適 温 まで 加 熱 した 刀 身 を 水 中 に 投 入 し 急 冷 する この 時 反 りがでることを 極 力 抑 制 するように 配 慮 14 刃 紋 の 確 認 : 焼 入 れ 後 一 部 の 表 面 を 丸 砥 石 で 磨 き 刃 紋 のできを 確 かめる 15 焼 き 戻 し : 刀 身 を 炭 火 にかざして 加 熱 ( 約 180 )し 焼 き 入 れで 生 じた 内 部 残 留 応 力 を 緩 和 する 16 茎 の 仕 上 げ: 茎 (なかご) 部 を 鑢 で 整 形 し 刀 身 全 体 の 姿 を 完 成 させる 17 鍛 冶 押 し : 刀 匠 が 峰 部 刃 部 を 研 磨 し 最 終 的 な 姿 にする その 後 研 師 に 研 磨 を 依 頼 する 18 銘 切 り : 銘 切 タガネで 茎 (なかご) 部 に 製 作 年 月 日 刀 匠 銘 などを 刻 む - 74 -

この 時 代 の 太 刀 の 名 品 は 国 宝 や 重 要 文 化 財 に 指 定 され 現 存 しているが その 特 徴 とし て 腰 反 り 高 く 刃 紋 は 直 刃 (すぐは) 調 に 小 乱 れ 小 板 目 の 地 肌 に 映 りが 立 つなどとさ れている また 太 刀 の 先 端 は 三 角 形 に 尖 ったカマス 鋒 となっていることが 特 徴 の 一 つ であり そのことは 松 崎 天 神 縁 起 7) ( 応 長 元 年 :1311 年 )の 中 に 国 司 の 播 磨 守 有 忠 がカマス 鋒 の 黄 金 作 太 刀 を 鑑 賞 している 姿 が 描 写 されていることでも 知 られている また 平 安 時 代 作 と 伝 えられている 大 宰 府 天 満 宮 所 蔵 の 毛 抜 形 太 刀 もカマス 鋒 になっ ている 一 方 今 回 完 成 した 太 刀 は 刃 長 727 mm 反 りが 18 mm と 細 身 で カマス 鋒 鎬 造 り 庵 棟 (いおりむね) 細 身 で 腰 反 り 高 く 踏 張 りがあり 茎 (なかご)が 強 く 反 った 平 安 時 代 の 優 美 な 姿 となった また 地 鉄 は 小 板 目 に 杢 目 (もくめ)が 交 じり 地 沸 (じ にえ)がつき 乱 映 り(みだれうつり)が 立 ち 刃 紋 は 直 刃 に 小 乱 れ 小 丁 字 (こみだれこち ょうじ)を 交 え 足 (あし)や 葉 (よう)が 入 って 沸 (にえ)がつよく 総 じて 平 安 時 代 後 期 の 山 城 物 の 作 風 とすることができた この 刀 について 泰 文 堂 川 島 貴 敏 氏 は 腰 で 強 く 反 り 踏 ん 張 りがあり 先 へ 行 って 俯 き 心 となった 平 安 末 期 の 三 条 五 条 などの 古 山 城 物 の 姿 を 呈 し 鋒 は 平 安 末 期 か ら 鎌 倉 初 期 にかけて 見 られるふくらが 直 線 状 になったいわゆるカマス 鋒 となっている 地 鉄 は 小 板 目 基 調 に 杢 目 が 混 じり 処 々 僅 かに 柾 がかかり 地 沸 微 塵 (じにえみじん) がついて 平 安 末 期 の 太 刀 に 見 られる 沸 えの 強 い 段 刃 風 の 二 重 刃 が 刃 紋 に 沿 って 現 れ その 上 に 粟 田 口 物 によく 見 られる 小 さな 地 班 状 (じふじょう)の 映 りがあり 春 霞 を 思 わ せる 風 情 がある 鎺 (はばき) 元 にある 生 ぶ 刃 と 平 安 当 時 の 健 全 なカマス 鋒 から 現 代 刀 であると 思 い 当 たるが 刀 身 上 の 地 鉄 や 二 重 刃 粟 田 口 特 有 の 映 りなど 現 在 の 刀 匠 で は 再 現 できないと 思 われていたものを 現 実 に 目 にすると 現 代 刀 に 対 する 認 識 を 新 たに せざるを 得 ない と 高 く 評 価 している 写 真 -28 完 成 した 太 刀 ( 巻 末 に 拡 大 写 真 ) 写 真 -29 ハバキの 付 近 写 真 -30 鋒 の 付 近 完 成 した 拵 は 細 身 で 内 側 空 間 にはほとんど 余 裕 がないため 刀 との 整 合 が 心 配 された が 両 者 の 微 細 な 修 正 で 支 障 なく 納 まり それぞれの 技 術 が 卓 越 したものであることが 実 証 された - 75 -

まとめ 復 元 製 作 の 計 画 段 階 から 共 同 研 究 者 とたびたび 打 ち 合 わせ 作 業 の 状 況 確 認 と 討 論 を 行 いながら 実 務 を 進 行 した その 結 果 拵 とともに 刀 身 ( 現 在 は 欠 失 )も 蘇 らせ 国 宝 太 刀 本 来 の 姿 を 再 現 すると 同 時 に その 製 作 技 法 を 確 認 することができた この 太 刀 は 元 寇 の 外 敵 調 伏 にこの 神 社 の 大 きな 貢 献 があったことを 愛 でて 幕 府 から 献 納 されたものと 推 察 され 当 時 他 に 類 を 見 ない 金 属 光 沢 の 豪 壮 にして 華 麗 な 最 高 レ ベルの 外 装 を 整 え この 中 に 入 る 刀 も 一 級 品 のものであった 可 能 性 が 高 い 今 回 復 元 さ れた 拵 と 刀 身 は ともに 当 初 の 姿 を 髣 髴 させる 出 来 栄 えとなり その 製 作 過 程 を 体 験 す ることによって 当 時 の 高 い 太 刀 製 作 技 術 を 実 証 的 に 再 現 し 記 録 することができた 謝 辞 本 研 究 の 一 部 は 公 益 財 団 法 人 JFE 21 世 紀 財 団 の 研 究 助 成 費 によって 遂 行 された また 試 作 した 短 刀 の 顕 微 鏡 組 織 観 察 は JFEテクノリサーチ( 株 ) 千 葉 事 業 所 の ご 好 意 によって 行 われた ここに 付 記 し 深 く 感 謝 の 意 を 表 します 参 考 文 献 1: 文 部 科 学 省 HP 国 宝 重 要 文 化 財 の 調 査 指 定 の 推 進 表 92 国 宝 重 要 文 化 財 の 時 代 別 件 数 2: 用 語 解 説 日 本 刀 の 鑑 賞 基 礎 知 識 小 笠 原 信 夫 1989 年 至 文 堂 3: 丹 生 都 比 売 神 社 高 野 山 開 創 前 からの 土 着 神 加 地 宏 江 日 本 の 国 宝 040 週 刊 朝 日 百 科 1997 年 朝 日 新 聞 社 4: 丹 生 氏 と 高 野 山 モンゴル 襲 来 と 天 野 社 ; 高 木 徳 郎 ( 和 歌 山 県 立 博 物 館 学 芸 員 ) 丹 生 都 比 売 神 社 史 : 丹 生 都 比 売 神 社 史 編 纂 委 員 会 平 成 21 年 宗 教 法 人 丹 生 都 比 売 神 社 5: 銀 銅 蛭 巻 太 刀 拵 堅 牢 優 美 な 蛭 巻 の 逸 品 小 笠 原 信 夫 日 本 の 国 宝 040 週 刊 朝 日 百 科 1997 年 朝 日 新 聞 社 6: 特 別 展 模 写 模 造 と 日 本 美 術 -うつす まなぶ つたえる- 図 録 平 成 17 年 東 京 国 立 博 物 館 7: 松 崎 天 神 縁 起 続 日 本 の 絵 巻 22 1992 年 中 央 公 論 社 - 76 -

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