第 68 回 国 際 経 済 協 力 セミナー 国 際 機 関 職 員 の 育 ち 方 - 元 ジュネーブ 日 本 政 府 代 表 部 人 事 担 当 職 員 の 視 点 - 本 田 英 章 氏 人 事 院 給 与 局 生 涯 設 計 課 雇 用 専 門 官 草 案 作 成 : 安 藤 恵 利 子 小 幡 珠 理 清 野 夏 実 坂 下 希 紗 良 高 橋 美 森 竹 下 知 里 福 田 悠 香 向 井 悠 理 文 責 : 斎 藤 実 由 貴 今 回 人 事 院 給 与 局 生 涯 設 計 課 の 本 田 英 章 氏 にお 越 しいただき 国 際 機 関 職 員 の 育 ち 方 元 ジュネーブ 日 本 政 府 代 表 部 人 事 担 当 職 員 の 視 点 というテーマで 講 演 を 行 っ ていただいた 講 演 では 本 田 氏 の 自 己 紹 介 から 始 まり 国 際 機 関 の 概 況 やそこで 働 く 人 々 国 際 機 関 で 働 くという 選 択 肢 はどういったものかなど 国 際 公 務 員 としての 働 き 方 とはどういうものなのか というように 展 開 された 1
ご 経 歴 2005 年 に 大 阪 大 学 法 学 部 を 卒 業 後 国 家 公 務 員 として 人 事 院 に 入 る 厚 生 労 働 省 へ の 出 向 などを 経 て 2012 年 から 3 年 間 スイスジュネーブの 国 際 機 関 日 本 政 府 代 表 部 で 人 事 担 当 として 勤 務 された そこでは 現 在 非 常 に 少 ない 国 際 機 関 で 働 く 日 本 人 をどのよ うに 増 やしていくかについて 各 国 際 機 関 人 事 部 と 相 談 採 用 の 後 押 しとなるような 支 援 JPO 制 度 のジュネーブ 国 際 機 関 への 運 用 といった 業 務 をされていた 国 際 機 関 の 概 況 国 際 機 関 と 聞 くと すぐに UN が 一 番 先 に 思 いつき その 後 に UNICEF WFP など 有 名 な 機 関 や 話 題 に 上 がりやすい 機 関 が 挙 げられるだろう これに 日 本 に 置 ける 国 際 機 関 の 知 名 度 に 表 れている しかし 実 際 は UN ファミリーとそれ 以 外 の NGO に 近 いような 団 体 も 含 めると それぞれ 規 模 も 分 野 も 様 々で 多 岐 にわたる その 数 世 界 で 100 以 上 だ その 活 躍 の 場 も 例 えば 飢 餓 について 議 場 で 話 し 合 う 場 もあれば 実 際 に 戦 地 などに 赴 いて 弱 い 立 場 の 子 供 や 女 性 を 助 ける 活 動 を 第 一 線 でしている 団 体 も ある ジュネーブに 本 部 が 置 かれている 機 関 では 例 えば WTO などは 経 済 を 勉 強 している 方 は 馴 染 みがあるのではないか また なかなか 学 生 には 馴 染 みがないかもしれないが 国 際 電 気 連 合 (ITU)や 世 界 知 的 所 有 権 機 関 (WIPO)などもある 実 際 に 国 際 機 関 の 表 などを 見 てみるとその 数 に 驚 くとともに ぼんやりとしたイメージがはっきりしたも のになるはずだ そして 国 際 機 関 はそれぞれの 長 がいて 事 務 局 がいて その 下 にスタッフがいる 構 造 になっていて 各 機 関 が 独 立 した 組 織 として 存 在 しており 独 自 の 財 源 を 持 つ 就 職 活 動 という 面 からみると それぞれが 一 種 の 企 業 のようなものとして 捉 えられる 各 機 関 の 詳 細 については 外 務 省 国 際 機 関 リンク 一 覧 を 見 てみることをお 勧 めしたい (http://www.mofa-irc.go.jp/link/link.html) 国 際 機 関 で 働 く 人 々 国 際 機 関 で 働 く 人 に 関 して その 門 の 狭 さから スーパーマンのような 完 璧 な 人 間 と いうイメージを 抱 いて 敬 遠 しやすいのではないだろうか しかし 実 際 に 人 事 担 当 であ る 本 田 氏 が 接 した 人 々は 人 間 味 に 溢 れたごく 普 通 の 人 が 多 かった 現 在 国 際 機 関 で 働 いている 日 本 人 は 約 800 人 であり ポストの 変 動 が 激 しいためあ くまで 目 安 ではあるが これは 職 員 全 体 の 2 3%と 言 われている 日 本 はその 拠 出 金 の 多 さや 地 理 的 配 分 を 考 慮 すると 現 在 より 2 3 倍 の 職 員 がいるべきだと 言 われて いる 2
国 際 機 関 で 働 くという 選 択 肢 国 際 機 関 とは 外 資 系 企 業 や NGO などの 数 ある 国 際 的 に 活 躍 する 仕 事 の 中 の 一 つの 選 択 肢 である 必 ずしも 安 定 した 職 業 ではなく 特 に 採 用 の 面 では 日 本 の 雇 用 慣 行 と は 大 きく 異 なる 日 本 では 企 業 が 職 員 の 育 成 を 行 い 長 く 会 社 に 勤 めてもらう 前 提 で 大 学 出 たての 新 人 を 採 用 する しかし 国 際 機 関 は 基 本 的 に 応 募 するポストに 関 連 する 仕 事 の 経 験 が 最 低 二 年 間 ある 人 を 1-2 年 間 の 有 期 契 約 で 中 途 採 用 する このような 国 際 機 関 で 働 くということは キャリアプランを 十 分 に 計 画 した 上 で 就 職 活 動 を 一 生 続 け ていく 覚 悟 が 必 要 である 1 動 機 の 明 確 化 まず 国 際 機 関 で 何 を 成 し 遂 げたいのかということを 考 える 必 要 がある キャリ アプランを 考 えるうえで 国 際 機 関 を 目 指 したきっかけを 思 い 出 すことは 重 要 であ る 例 えば 子 供 を 救 いたいという 明 確 な 目 的 や ワークライフバランスを 大 切 に しながら 働 きたいなど どんな 目 標 でもかまわないが これが 国 際 機 関 で 働 く 際 の 厳 しい 就 職 活 動 で 芯 となるものである 次 に 自 分 がやりたいことは 国 際 機 関 でないと 達 成 できないことかということを 検 討 する というのも 自 分 のやりたいことは 国 際 機 関 に 入 らずとも NGO などででき る 場 合 もあり また 30 歳 くらいまでの 準 備 期 間 に 自 分 の 目 標 が 変 化 して 国 際 機 関 に 入 る 必 要 がなくなる 可 能 性 もあるからだ そして 一 番 大 事 なのは 自 分 がやろうとしていることが 自 分 の 好 きなことかどう かということだ 国 際 機 関 では 基 本 すべてのポストが 公 募 であり 高 い 専 門 性 が 求 められる そのためあれもこれもと 広 く 仕 事 をすることはできず 自 分 で これを やる! と 決 めた 分 野 に 専 念 することになる だから 国 際 機 関 に 入 るためにやりた くもない 仕 事 をするというのは 望 ましくなく 好 きな 分 野 の 仕 事 をして その 結 果 国 際 機 関 につながるというのが 望 ましい 2 情 報 収 集 の 実 施 インターネットが 発 達 した 現 代 では 昔 よりも 情 報 が 得 やすくなっており ウェ ブサイトを 利 用 することで 様 々な 情 報 収 集 が 可 能 である 日 本 政 府 では 外 務 省 国 際 機 関 人 事 センターのサイトや Facebook などで 情 報 公 開 を 行 っている また 国 連 フォーラム UN careers や 各 国 際 機 関 のサイト 国 際 広 報 センター 個 人 のブログ なども 参 考 になる 書 籍 では 中 央 公 論 新 社 から 出 版 されている 赤 阪 清 隆 氏 の 国 際 機 関 で 見 た 世 界 のエリート の 正 体 がおすすめである また 駐 日 事 務 所 や 外 務 省 などが 開 催 している 各 種 説 明 会 にも 積 極 的 に 参 加 する ことが 望 ましい 多 くの 学 生 は 国 際 公 務 員 に 対 して すごい 人 たちであるというイ メージを 抱 いていると 思 われるが 実 際 に 働 いている 人 たちに 会 うことで そこま 3
で 自 分 に 遠 い 存 在 ではないのだと 思 えるようになるだろう また 国 際 機 関 でのイン ターンも 仕 事 の 進 め 方 やそこで 働 いている 人 と 直 に 接 することができる 機 会 であ り 将 来 の 採 用 への 足 がかりになることもあるので 積 極 的 に 申 し 込 むのがよい 3 計 画 的 な 準 備 アドバイスとしては JPO 派 遣 を 国 際 機 関 で 働 くための 足 がかりとしてほしいと いうことだった 応 募 資 格 は 35 歳 以 下 修 士 号 取 得 高 度 な 英 語 力 職 務 経 験 2 年 以 上 である JPO 派 遣 採 用 を 中 期 的 目 標 に 掲 げ 外 大 生 にはまず 語 学 力 およ び 専 門 性 の 向 上 を 目 指 してほしい 語 学 力 はあるに 越 したことはない 年 々JPO 派 遣 の 採 用 倍 率 は 低 下 しており 昨 年 一 昨 年 を 例 に 挙 げると 10 倍 を 切 っているの で 自 分 には 無 理 だと 諦 めず 果 敢 に 挑 戦 してほしい 質 疑 応 答 Q. 大 学 生 の 間 に 国 際 機 関 と 接 点 を 持 つ 方 法 はあるか? A. 学 部 生 ではなかなか 厳 しい 院 生 なら 半 年 のインターンシップに 参 加 すると 良 い 学 部 生 でも 駐 日 事 務 所 でのインターンが 探 せばあるかもしれない Q. 国 際 機 関 でインターンをするには 欧 米 の 大 学 に 行 かねばならないのか? A. 必 ずしも 日 本 にいることがダメというわけではない しかしながら 国 際 機 関 と 接 点 を 持 つために 最 も 有 効 なインターンを 行 う 場 合 は 一 定 期 間 継 続 して 働 く 必 要 が あるので インターン 先 に 近 いほうが 有 利 なのは 事 実 Q. 国 際 機 関 職 員 は どのような 専 門 分 野 で Ph.D.を 取 得 しているのか? A. 働 きたい 国 際 機 関 と 関 連 のある 分 野 が 望 ましい 人 道 関 係 なら 人 道 や 難 民 保 健 関 係 なら 公 衆 衛 生 等 ILO なら 労 働 法 や 労 働 経 済 等 その 分 野 で 専 門 的 に 働 くことに なるので 自 分 のやりたいことを 曲 げる 必 要 はない Q. JPO 試 験 において 合 格 の 決 定 打 となる 項 目 能 力 とは? A. 合 格 者 は 人 柄 としては 本 当 に 普 通 の 人 重 要 なのは 経 歴 の 段 階 でどれだけ 国 際 機 関 の 仕 事 に 近 いかどうか 国 際 機 関 で 働 く 意 思 が 強 く たとえば NGO 青 年 海 外 協 力 隊 国 際 機 関 でのインターン 経 験 等 があり 専 門 分 野 に 筋 が 通 っていることが 望 ましい また 英 語 力 も 必 要 英 語 を 流 暢 に 話 す( 意 見 を 主 張 できる) 能 力 や 英 語 で 仕 事 ができる( 議 事 録 等 を 作 成 できる) 文 章 力 が 求 められる なお 英 語 力 が あまり 高 くなくとも 強 烈 な 専 門 性 のある 人 (たとえば 特 定 の 専 門 分 野 の 第 一 人 者 4
など)であれば その 専 門 性 で 英 語 力 をカバーできることもがあるが JPO の 段 階 ではそれほど 専 門 性 が 高 い 人 はいないので やはり 英 語 力 が 重 要 Q. なぜ 人 事 に 特 化 した 職 業 を 選 んだのか? A. 人 と 関 わること 人 を 支 援 することが 好 きだから とはいえ 人 事 院 には 幅 広 いさ まざまな 分 野 の 仕 事 が 存 在 しており 国 際 機 関 職 員 のように 特 定 の 分 野 の 専 門 家 という 感 じではない Q. ジュネーブでは 何 語 で 仕 事 をしていたのか またその 言 語 は 大 学 時 代 に 学 んだこと があったか? A. 大 学 時 代 の 第 二 外 国 語 はドイツ 語 ジュネーブはフランス 語 圏 だが 国 際 機 関 と 仕 事 をするときは 英 語 を 使 用 日 常 生 活 など フランス 語 ができたほうが 良 い 場 面 は ある まとめ 氏 は 自 身 のこれまでの 短 いスパンでの 様 々な 経 験 キャリアに 関 し 毎 回 が 新 入 社 員 のようなもの 全 て 何 かの 役 にたつだろうと 思 い 何 事 も 勉 強 と 思 って 取 り 組 んでい る と 述 べた また 講 演 を 終 えるに 際 し もし 国 際 公 務 員 に 興 味 があるならば ま ず 自 分 でインターネットで 調 べてみてほしい 主 体 的 なキャリアプランを 立 てるために は 自 ら 積 極 的 な 情 報 収 集 が 重 要 と 学 生 にアドバイスをした 講 演 は 全 体 を 通 して 話 の 途 中 でも 質 問 が 度 々 飛 び 出 し インタラクティブであった 5