小 学 校 家 庭 科 にみる 現 代 家 族 と 生 活 (3) 浅 井 由 美 はじめに 豊 かな 社 会 では モノやカネが 豊 富 で ほし いものがすぐ 手 に 入 るといわれている そして モノやカネをもつことが 幸 福 とはかぎらなくな っている 内 閣 府 の 国 民 生 活 に 関 する 世 論 調 査 によ れば 物 の 豊 かさ よりも 心 の 豊 かさ を 重 視 する 傾 向 が 1980 年 代 から 高 まっている 物 質 的 にある 程 度 豊 かになったので これか らは 心 の 豊 かさやゆとりのある 生 活 をすること に 重 きをおきたい 人 は 60% 前 後 を 推 移 し 2013 年 調 査 では 61.8%であった 心 の 豊 かさやゆとりのある 生 活 の 実 現 の ために モノやカネ 以 上 に 注 目 されたのがトキ 時 間 である 拙 稿 小 学 校 家 庭 科 にみる 現 代 家 族 と 生 活 (2) においては 時 間 の 側 面 から 小 学 校 家 庭 科 における 家 族 や 生 活 を 考 察 した 多 忙 な 現 代 人 にとって 文 字 通 り 時 は 金 な り ときにはお 金 以 上 に 貴 重 だが 時 間 を お 金 で 買 いたい という 発 想 は お 金 がなけれ ばうまれところが 家 庭 科 では 衣 食 住 の モノが 多 く 取 り 扱 われ トキとともにカネの 扱 いも 少 キャッシュレス 化 によって お 金 の 価 値 を 実 感 できる 機 会 が 減 っている 悪 質 商 法 の 被 害 や 多 重 債 務 による 一 家 離 散 など 豊 かな 社 会 ゆえ の 消 費 者 問 題 金 銭 問 題 が 増 えている また 豊 かさの 一 方 で 失 業 や 非 正 規 雇 用 ひ とり 親 家 庭 の 増 加 などによる 新 たな 貧 困 もう まれている とくに 子 どもの 貧 困 率 は 16.3% ( 厚 生 労 働 省 調 査 2012 年 )と 高 い 経 済 協 力 開 発 機 構 が 2010 年 にまとめた 加 盟 34 か 国 の 子 どもの 貧 困 率 順 位 で 日 本 の 15.7%(2009 年 ) はワースト 10 位 であった 親 の 経 済 格 差 が 子 どもの 学 力 格 差 希 望 格 差 にも 影 響 する 時 代 カネについて どのような 教 育 がなされているのだろうか 本 稿 では お 金 の 側 面 から 小 学 校 家 庭 科 における 家 族 と 生 活 をとらえたい 1 家 庭 科 学 習 指 導 要 領 における お 金 小 学 校 学 習 指 導 要 領 第 2 章 第 8 節 家 庭 におい て お 金 は 主 に 内 容 D 身 近 な 消 費 生 活 と 環 境 で 取 り 扱 われている お 金 の 使 い 方 には 消 費 する 貯 蓄 する 贈 与 する 投 資 する などがあるが 小 学 校 家 庭 科 においては 消 費 が 中 心 となっている 家 庭 科 の 学 習 指 導 要 領 には (1) 物 や 金 銭 の 使 い 方 と 買 い 方 について 次 の 事 項 を 指 導 す る ア 物 や 金 銭 の 大 切 さに 気 付 き 計 画 的 な 使 い 方 を 考 えること イ 身 近 な 物 の 選 び 方 買 い 方 を 考 え 適 切 に 購 入 すること と 記 され ている 家 庭 は 利 潤 追 求 の 組 織 ではないので 基 礎 基 本 が 中 心 であろう 小 学 校 家 庭 科 で 投 資 に ふれないのは 理 解 できる しかし 家 庭 科 の 学 習 指 導 要 領 には 貯 蓄 や 贈 与 の 記 述 も これは 現 代 の 家 庭 が 生 産 の 機 能 を 失 って 単 なる 消 費 の 場 となったことを 示 しているのだ ろう そこで 家 庭 のお 金 の 問 題 も 消 費 生 活 の 問 題 として 扱 われていると 考 えられる 消 費 するには 労 働 の 対 価 として 収 入 を 得 な ければならないが 家 庭 科 の 学 習 指 導 要 領 は 労 働 賃 金 物 価 をめぐる 問 題 には 言 及 してい ア 物 や 金 銭 の 大 切 さに 気 付 き について 小 学 校 学 習 指 導 要 領 解 説 家 庭 編 ( 以 下 解 説 と 記 す) は 家 庭 で 扱 う 金 銭 は 家 族 が 働 1 45
くことによって 得 られた 限 りあるものであり 物 や 金 銭 が 自 分 と 家 族 の 生 活 を 支 えていること から それらを 有 効 に 使 うことの 重 要 性 に 気 付 くようにする としている 1) 小 学 校 家 庭 科 で は 収 入 は 所 与 のものとして 収 入 を 有 効 に 計 画 的 に 使 う( 支 出 する) ことを 教 えようとしている さらに 学 習 指 導 要 領 は 消 費 生 活 を 環 境 問 題 と 関 連 づけて (2) 環 境 に 配 慮 した 生 活 の 工 夫 について 次 の 事 項 を 指 導 する ア 自 分 の 生 活 と 身 近 な 環 境 とのかかわりに 気 付 き 物 の 使 い 方 などを 工 夫 できること としている これについて 解 説 は 現 代 の 消 費 生 活 が 環 境 と 深 くかかわっていることから 消 費 生 活 と 環 境 に 関 する 学 習 を 統 合 して 1 つにまとめ ている これにより 衣 食 住 など 他 の 内 容 との 関 連 を 明 確 にし 物 や 金 銭 の 活 用 の 視 点 から 生 活 を 見 つめ 限 りある 物 や 金 銭 が 大 切 であるこ とに 気 付 くことができるようにしている とし ている 2) ここで 学 習 指 導 要 領 は 日 本 の 伝 統 的 家 族 で 重 んじられてきた 質 素 倹 約 などは 説 いてい ケチではなくエコ を 強 調 するところ は 現 代 の 家 庭 が 豊 かであることを 示 している またそれだけ 家 庭 にとって 環 境 問 題 は 重 要 に なっているともいえる ただし それほど 重 要 な 環 境 問 題 とは 個 々 の 家 庭 や 個 々の 国 で 解 決 できることではなく 国 際 的 に 取 り 組 むべきことだろう 環 境 問 題 で なくても 私 たちの 消 費 生 活 は 国 際 化 が 進 展 し ている たとえば 食 料 自 給 率 はカロリーベー スで 39% 生 産 額 ベースで 65%にとどまる (2013 年 ) 家 庭 の 食 生 活 も 国 際 的 な 問 題 であ る 現 代 の 消 費 生 活 が 深 くかかわっているのは 環 境 問 題 だけではところが 家 庭 科 の 学 習 指 導 要 領 は 消 費 生 活 の 国 際 化 をはじめ 環 境 以 外 のものとのかかわりを 見 ようとはしてい 消 費 のためには 情 報 を 収 集 するので 消 費 は 国 境 を 超 える 情 報 化 の 問 題 にも 関 連 する また 家 計 の 3 大 支 出 は 住 居 費 教 育 費 老 後 費 用 である しかし 指 導 要 領 は 情 報 化 住 宅 や 年 金 子 どもにとって 身 近 な 教 育 にもふ れてい 家 庭 生 活 の 消 費 の 面 を 切 り 取 り 環 境 問 題 にのみ 関 連 づけて 考 えようとしている 解 説 は 自 分 の 生 活 が 身 近 な 環 境 に 与 え る 影 響 に 気 付 き 主 体 的 に 生 活 を 工 夫 できる 消 費 者 としての 素 地 を 育 てることを 意 図 してい る としているが 3) 主 体 的 に 生 活 を 工 夫 で きる 消 費 者 とは 社 会 の 多 くの 問 題 を 視 野 の 外 において 環 境 問 題 だけに 配 慮 する 人 だろう か 消 費 者 が 王 様 といわれながら 実 際 にはそ うではないことを 反 映 しているようだ 2 家 庭 科 教 科 書 の 中 の お 金 小 学 校 家 庭 科 の 教 科 書 は 学 習 指 導 要 領 にし たがって 消 費 を 中 心 に 書 いている 東 京 書 籍 の 教 科 書 は 4) 考 えよう 買 い 物 と 暮 らし に 6 ページを 開 隆 堂 の 教 科 書 は 5) じょう ずに 使 おう 物 やお 金 に 4 ページを 割 いている 東 京 書 籍 教 科 書 は わたしたちは 健 康 で 楽 しい 毎 日 を 送 るためにいろいろな 物 を 買 い そ れを 使 って 暮 らしています ( 中 略 ) 物 を 買 うために 必 要 なお 金 は 多 くの 場 合 家 族 が 働 いて 得 ています とし 開 隆 堂 教 科 書 は わたしたちは 学 習 や 生 活 のために 物 を 買 っ て 生 活 しています 物 を 買 う 時 のお 金 は 多 く の 場 合 家 族 が 働 いて 得 た 収 入 です としてい る どちらの 教 科 書 も 家 族 が 働 いて 収 入 を 得 る イラストを 入 れ 限 りあるお 金 を 大 切 に と 述 べている しかし それ 以 上 お 金 を 得 ること にふみこんでい 家 族 の 労 働 者 としての 側 面 を 書 いてい 開 隆 堂 教 科 書 は じょうずに 使 おう 物 やお 金 で 物 やお 金 の 使 い 方 買 い 物 のしかたの みについて 記 述 している 別 に 環 境 を 考 え たエコライフを 工 夫 しよう を 設 定 しているの 2 46
で 限 りある 地 球 の 資 源 という 表 現 やエコ マーク 入 りのノートのイラストを 入 れるにとど まり 消 費 生 活 に 集 中 している 一 方 東 京 書 籍 教 科 書 は 環 境 のことも 考 えた 買 い 物 として 消 費 と 環 境 を 一 緒 に 扱 っている 開 隆 堂 教 科 書 では わたしたちの 生 活 とお 金 というイラストにおいて 働 いて 収 入 を 得 る 生 活 のために 使 う の 二 つの 枠 の 間 に 現 金 と 通 帳 を 入 れ いろいろなところにお 金 を 使 っているんだね としている ここでは 働 いて 得 た 収 入 で 消 費 していることはわかるが 家 計 の 収 入 構 成 も 支 出 構 成 も 単 純 化 されすぎて いる 開 隆 堂 教 科 書 も 東 京 書 籍 教 科 書 も イラスト でモノだけでなくサービスも 購 入 していること を 示 しているが 東 京 書 籍 のイラストはさらに 詳 しく 多 くのことを 示 唆 している 東 京 書 籍 は 何 かを 買 うために 貯 金 お みやげやプレゼント という 語 句 を 文 中 に 入 れ お 祝 いや 香 典 を 連 想 させるイラストを 載 せるこ とで 貯 蓄 や 贈 与 にふれている ただし 家 庭 の 貯 蓄 の 目 的 は 何 かを 買 うた めだけでは 貯 蓄 の 目 的 としては 病 気 や 不 時 の 災 害 への 備 え 子 どもの 教 育 資 金 老 後 の 生 活 資 金 などが 多 いが 消 費 生 活 のなかでお 金 を 扱 えば 貯 蓄 については 語 りにくい かしこい 買 い 物 ( 東 京 書 籍 ) じょうず な 買 い 物 ( 開 隆 堂 ) とは 必 要 性 や 目 的 予 算 等 を 考 え 計 画 を 立 て 品 質 のよいものを 選 び 買 い ふり 返 る(いわゆる Plan-Do-See もし くは Plan-Do-Check-Action)ことである そ して その 際 環 境 に 配 慮 することである どちらの 教 科 書 も 時 代 を 反 映 して 通 信 販 売 やプリペイドカードを 登 場 させ 無 店 舗 販 売 キャッシュレス 化 の 便 利 さと 注 意 点 を 書 いてい る 家 計 にとっては お 金 を 大 切 に 計 画 的 に 使 う ことと 無 店 舗 販 売 やキャッシュレス 化 などへ の 対 応 環 境 への 配 慮 だけが 大 事 だろうか また 経 済 的 合 理 性 からいえば 教 科 書 で 作 ろ うとしている 布 の 袋 より 100 円 ショップで 買 う エコバックのほうが 安 くて 品 質 も 良 いのでは ないだろうか じょうずな 買 い 物 のしかた として 本 当 に 必 要 か 考 えよう と 教 えなが ら 実 際 の 家 庭 では 使 いそうもないものを 環 境 に 配 慮 したリフォームと 称 して 作 るのは 矛 盾 している 材 料 費 を 考 えれば お 金 を 大 切 にし ていることにもなら 家 庭 科 の 学 習 指 導 要 領 は 教 科 の 目 標 として 家 庭 生 活 を 大 切 にする 心 情 をはぐくみ 家 族 の 一 員 として 生 活 をよりよくしようとする 実 践 的 な 態 度 を 育 てる している 合 理 的 でなくて も 計 画 的 でなくても 家 族 を 大 切 にする 家 族 が 幸 せなお 金 の 使 い 方 もある 合 理 的 計 画 的 に お 金 を 使 っても 生 活 がよりよくならないこと もある このようなお 金 に 関 する 感 覚 は 本 来 は 家 庭 で 養 われるものだろう かしこい 買 い 物 じ ょうずな 買 い 物 は それぞれの 家 庭 によって 違 う それを 小 学 校 家 庭 科 で 教 えようとするの は それを 伝 承 する 機 能 が 家 庭 から 失 われつ つあるということだろう しかし 家 庭 科 教 科 書 もまた 収 入 は 所 与 のも のとし 物 の 選 び 方 買 い 方 などのハウツーにと どまり 金 銭 感 覚 を 育 てる 内 容 にはなっていな い 3 生 活 者 としての 視 点 の 欠 如 これらの 問 題 は 家 庭 科 が 家 庭 の 中 だけ 消 費 者 側 の 視 点 だけに 自 らを 限 定 していること からうまれている 東 京 書 籍 新 しい 家 庭 教 師 用 指 導 書 には 商 店 街 のイラストの 説 明 において 乳 児 や 葬 儀 のイラストは 人 は 揺 りかごから 墓 場 まで 消 費 者 である ことを 表 している とある 6) 私 たちは 確 かに 消 費 者 であるが 消 費 者 とし てのみ 一 生 涯 を 過 ごすわけでは 教 科 書 も 働 いて 収 入 を 得 る イラストを 載 せ 物 を 買 うために 必 要 なお 金 は 多 くの 場 合 家 族 が 3 47
働 いて 得 ています と 書 いている 多 くの 人 が 消 費 者 でありつつ 別 の 面 では 労 働 して 収 入 を 得 ている 生 活 者 である ところが 教 科 書 は 生 産 活 動 から 排 除 されア ンペイドワーク( 家 事 育 児 介 護 等 )をする 専 業 主 婦 の 視 点 で 書 かれている 収 入 は 所 与 の ものとし それを じょうず に 使 う やり くり きりもり にとどまっている 家 族 のために 収 入 を 得 ようと 長 時 間 労 働 をし て 家 族 との 時 間 を 削 っている 親 もいる わた したちは お 金 で 何 かを 得 ることも 何 かを 失 う こともある お 金 によって 家 庭 生 活 が 危 機 に 陥 ることも 一 家 離 散 になることもある どのように 働 き 収 入 を 得 るか その 収 入 をど のように 使 うかは 揺 りかごから 墓 場 まで の 人 生 にかかわる 問 題 である お 金 は 家 庭 科 がいう 計 画 的 な じょうずな かしこい 使 い 方 よりも 重 いテーマであろう 日 本 では 親 が 子 どもにお 金 の 心 配 をさせな いことが 多 い 親 からのお 小 遣 いも 海 外 の 育 児 書 にあるように 家 事 の 分 担 の 対 価 として 与 えるということは 少 お 金 について 深 く 考 えさせないことが 若 者 の 経 済 的 自 立 を 阻 むこ とにもなっているのではないだろうか また 環 境 を 考 えるとき 大 量 生 産 大 量 販 売 大 量 消 費 大 量 廃 棄 が 問 題 となるが 多 くの 消 費 者 は 別 の 面 では 生 産 や 販 売 を 行 って 生 活 している 消 費 者 側 の 論 理 と 生 産 者 側 の 論 理 は 対 立 することもある ここに 消 費 者 問 題 や 環 境 問 題 労 働 問 題 の 複 雑 さがある 消 費 も 環 境 も 含 めて 私 たちの 生 活 は 国 際 化 している 東 京 書 籍 教 科 書 には タイ 家 庭 料 理 店 のイラストや 外 国 人 親 子 を 食 卓 に 招 く 写 真 がありながら 生 活 の 国 際 化 についての 文 章 は 家 庭 科 は 一 部 の 環 境 問 題 には 目 を 向 けて も 広 く 社 会 の 中 で 生 活 をみつめ 考 えようとは してい 解 説 のいう 家 庭 生 活 を 総 合 的 にとらえ る 視 点 や 7) 持 続 可 能 な 社 会 の 構 築 など 社 会 の 変 化 に 対 応 して 主 体 的 に 生 きる 消 費 者 と しての 態 度 を 育 成 する 視 点 は 8) 社 会 から 家 庭 を 切 り 離 して 成 り 立 つのだろうか 4 家 族 と 贈 与 家 庭 科 教 科 書 では 祖 父 母 と 思 われる 高 齢 者 のイラストや 写 真 が 散 見 される 教 科 書 は 核 家 族 だけでなく 3 世 代 同 居 の 拡 大 家 族 も 積 極 的 に 表 現 しようとしている 東 京 書 籍 教 科 書 が 祖 母 と 思 われる 高 齢 女 性 が 昔 の 人 の 知 恵 を 披 露 するイラストを 載 せ ている しかし 全 体 的 に 見 れば 教 科 書 の 高 齢 者 像 は 存 在 感 が 薄 く 尊 敬 の 対 象 として 描 か れてい 老 化 ではなく 加 齢 という 表 現 がつかわれるよ うに 現 代 の 高 齢 者 の 多 くは 教 科 書 の 中 の 高 齢 者 より 生 き 生 きと 生 活 している とくに 小 学 生 の 祖 父 母 は 高 学 歴 が 多 く 新 しい 高 齢 者 像 をつくっている 前 稿 で 述 べたが 高 齢 者 は 自 由 時 間 の 多 い 時 間 持 ち である 超 高 齢 社 会 では 高 齢 者 の 時 間 資 源 は 膨 大 で 無 視 することはできし かし 家 庭 科 教 科 書 は 高 齢 者 の 時 間 にふれ てい 時 間 だけでなくお 金 も 持 っている 金 時 (キントキ) 持 ち の 高 齢 者 も 少 なくないが 家 庭 科 教 科 書 は 高 齢 者 の お 金 にもふれてい 少 子 化 のため 現 代 の 子 どもは 共 働 きの 父 母 双 方 の 祖 父 母 の 六 つの 財 布 をもっていると いわれる 晩 婚 未 婚 のオジやオバを 含 めると もっと 財 布 は 増 え 多 くの 財 布 から 少 ない 子 ど もにモノやカネが 一 方 向 に 移 転 される 経 済 財 の 双 方 向 移 転 ( 交 換 )に 対 して 一 方 向 の 移 転 を 贈 与 とよぶ 家 族 は 贈 与 経 済 の 重 要 な 分 野 である 少 子 化 が 進 むと 以 前 よりも 高 価 な 学 習 机 や ランドセル 雛 人 形 などが 売 れる 日 本 百 貨 店 協 会 が 提 唱 する 孫 の 日 は 祖 父 母 のお 金 に 目 をつけたものだ 教 育 資 金 贈 与 の 非 課 税 措 置 を 利 用 した 祖 父 母 から 孫 への 教 育 費 援 助 も 増 えている 教 育 4 48
資 金 贈 与 信 託 は 2014 年 6 月 末 までに 5000 億 円 を 突 破 したという 家 庭 科 は 代 金 を 支 払 って 消 費 する 交 換 経 済 ばかりを 扱 って 贈 与 経 済 を 扱 っていし かし 解 説 が 指 導 例 に 挙 げる 調 理 実 習 や 被 服 実 習 の 材 料 を 購 入 すること( 交 換 )より 親 からの 教 育 費 やお 小 遣 い 祖 父 母 からのお 年 玉 や 教 育 費 援 助 などの 贈 与 のほうが 子 ど もにとって 身 近 ではないだろうか 核 家 族 であっても 経 済 的 にみれば 新 しい タイプの 拡 大 家 族 のなかで 現 代 の 子 どもは 育 っている 豊 かな 平 成 拡 大 家 族 では モノ カネ トキを 贈 与 しあうことで 消 費 生 活 の 水 準 も 高 くなっている このような 豊 かな 家 族 とは 対 照 的 に 父 はリ ストラで 失 業 中 母 はパートタイム 就 労 子 ど もはフリータ 安 定 した 収 入 は 祖 父 母 の 年 金 だ けという 新 しい 貧 困 もうまれている 必 要 な 消 費 もできない 貧 困 家 庭 や これまで 聖 域 といわれた 子 どもの 塾 や 習 い 事 等 の 教 育 費 も 節 約 せざるをえない 家 庭 もでてきている 子 どもは 家 庭 の 中 だけで 育 ち 生 活 しているの では 社 会 的 贈 与 としての 児 童 手 当 や 医 療 費 助 成 等 子 どものいる 家 庭 に 給 付 されるお 金 も 知 っておくべきではないだろうか また 子 どもも 募 金 活 動 やボランティアを 行 う(モノ カネ トキを 贈 与 する)ことがある 人 と 人 との 絆 は 直 接 的 にはお 金 にならないが 絆 からお 金 がうまれることがある お 金 は 絆 や 一 体 感 をつくることもあれば 人 間 関 係 をこわすこともある たとえば 孫 のた めの 教 育 資 金 贈 与 は 孫 のためになる 場 合 も ならない 場 合 もある 交 換 経 済 に 失 敗 があるよ うに 贈 与 経 済 にも 失 敗 がある 生 活 者 として 家 庭 のお 金 を 考 えれば 消 費 と 環 境 以 外 にも 大 切 なことがある お 金 に 関 する 教 育 は 家 庭 でも 家 庭 科 の 授 業 でも もっと 深 める 必 要 があると 考 える 注 1) 文 部 科 学 省 小 学 校 学 習 指 導 要 領 解 説 家 庭 編 東 洋 館 2008, p.50. 2) 同 上, p.49. 3) 同 上. 4) 小 学 校 家 庭 科 教 科 書 新 しい 家 庭 5 6 東 京 書 籍 2011. 5) 小 学 校 家 庭 科 教 科 書 わたしたちの 家 庭 科 5 6 開 隆 堂 2011. 6) 新 しい 家 庭 編 集 委 員 会 東 京 書 籍 新 しい 家 庭 5 6 教 師 用 指 導 書 指 導 編 2011, p.62. 7) 文 部 科 学 省 小 学 校 学 習 指 導 要 領 解 説 家 庭 編 東 洋 館 2008, p.4. 8) 同 上, p.7. 5 49