3 診 断 1Morley( test 斜 角 筋 三 角 部 での 圧 迫, 放 散 痛 があれば 陽 性 ),Adson, test Eden test,halstead,wright test,allen test ( test 頭 骨 動 脈 の 消 失 す れば 陽 性 ),Roos 3



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3 診 断 1Morley( test 斜 角 筋 三 角 部 での 圧 迫, 放 散 痛 があれば 陽 性 ),Adson, test Eden test,halstead,wright test,allen test ( test 頭 骨 動 脈 の 消 失 す れば 陽 性 ),Roos 3 分 間 挙 上 負 荷 試 験 ( 疼 痛 やしびれ,だるさなどが 出 現 す れば 陽 性 ) 2 指 尖 脈 波 (1テストを 行 った 際 の 脈 波 の 低 下 や 消 失 の 状 態 を 検 査 ) 3サーモグラフィ( 冷 負 荷 を 行 い,1テストの 肢 位 を 保 持 させ, 皮 膚 温 の 回 復 状 態 を 調 べる Roos 3 分 間 挙 上 負 荷 試 験 では, 試 験 前 後 の 皮 膚 温 の 差 を 検 討 する) 4 血 管 造 影 5 肋 鎖 間 隙 撮 影 ( 第 1 肋 骨 と 鎖 骨 との 間 隙 の 狭 小 化 や, 第 1 肋 骨 の 形 態 変 化 を みる) ( 以 上 につき, 資 料 4 肩 関 節 Clinic 116~119 頁, 資 料 5 標 準 整 形 外 科 学 ( 第 9 版 ) 743,734 頁 ) 4 治 療 保 存 療 法 観 血 的 療 法 頚 肋 切 除 術, 斜 角 筋 切 断 術, 第 1 肋 骨 切 除 術 など ( 以 上 につき, 資 料 4 肩 関 節 Clinic 118 頁 ) - 2 -

第 2 腕 神 経 叢 損 傷 1 定 義 概 念 腕 神 経 叢 は,C5~C8の 脊 髄 神 経 前 枝 の 全 部 およびTh1の 前 枝 の 大 部 分 からつくられる( 資 料 6 分 冊 解 剖 学 アトラスⅢ 70,71 頁 ) 2 原 因 症 状 原 因 腕 神 経 叢 損 傷 は,ほとんどがオートバイによる 交 通 事 故 で, 上 肢 が 不 自 然 な 肢 位 で 投 げ 飛 ばされたり, 頭 頚 部 や 肩 甲 部 に 牽 引 力 が 加 わって 損 傷 されるもの である 鎖 骨 や 上 腕 骨 などの 骨 折 や, 鎖 骨 下 動 脈 損 傷 を 合 併 しやすい( 資 料 5 標 準 整 形 外 科 学 ( 第 9 版 ) 756,757 頁 ) なお, 胸 郭 出 口 症 候 群 によっても 起 こるとされている( 資 料 1 南 山 堂 医 学 大 事 典 2677 頁 ) ( 神 経 損 傷 形 態 - 資 料 7 参 照 ) ア 神 経 根 引 き 抜 き 損 傷 脊 髄 神 経 根 が 脊 髄 から 引 きちぎられ, 硬 膜 外 に 引 き 抜 かれたもの イ 断 裂 神 経 が 脊 髄 より 末 梢 で 損 傷 されたもの ウ 症 状 軸 索 損 傷 神 経 外 周 の 連 続 性 は 保 持 され, 軸 索 のみが 損 傷 されているもの 頚 部 が 伸 展 し, 肩 甲 部 が 下 方 に 牽 引 されると 上 位 型 麻 痺 が 起 こり, 肩 の 外 転, 肘 の 屈 曲, 前 腕 の 回 外 が 障 害 される 上 肢 が 挙 上 位 のまま 牽 引 力 をうけると 下 位 型 麻 痺 となり, 手 指 の 麻 痺 が 生 じ る( 資 料 5 標 準 整 形 外 科 学 ( 第 9 版 ) 757 頁 ) 資 料 1 南 山 堂 医 学 大 事 典 腕 神 経 叢 麻 痺 より ( 麻 痺 のパターン) 1 第 5,6 神 経 根 または 上 神 経 幹 の 麻 痺 による 上 位 型 2 第 8 神 経 根 と 第 1 胸 髄 神 経 根 または 下 神 経 幹 の 麻 痺 による 下 位 型 3 全 体 が 麻 痺 する 麻 痺 型 3 診 断 MRI 脊 髄 造 影 - 3 -

ミエログラフィー( 引 き 抜 き 損 傷 であれば, 造 影 剤 が 漏 出 する) 軸 索 反 射 ヒスタミン 皮 下 注 射 ヒスタミンを 神 経 支 配 領 域 に 皮 下 注 射 して,その 部 位 に 発 赤 腫 脹 が 生 じれば, 引 き 抜 き 損 傷 ではなく,より 遠 位 の 損 傷 である( 腕 神 経 叢 を 形 成 する 脊 髄 神 経 では, 神 経 根 部 にはまだ 交 感 神 経 成 分 は 存 在 しないことから, 理 論 上, 引 き 抜 き 損 傷 によって 交 感 神 経 の 機 能 障 害 はないから ) 4 治 療 神 経 根 引 き 抜 き 損 傷 の 場 合 たとえ 神 経 根 を 元 来 の 位 置 に 復 しても 中 枢 神 経 の 損 傷 であるため 神 経 回 復 は 望 めないから, 神 経 移 植 術, 筋 移 植 術 で 対 処 する また, 肩 の 挙 上 再 建, 肘 の 屈 曲 再 建 を 行 う 神 経 根 引 き 抜 き 損 傷 でない 場 合 神 経 修 復 の 効 果 が 期 待 できるため, 損 傷 形 態 により, 神 経 剥 離 術, 神 経 縫 合 術, 神 経 移 植 術 が 選 択 される ( 以 上 につき, 資 料 5 標 準 整 形 外 科 学 ( 第 9 版 ) 758 頁 ) 第 3 交 通 事 故 損 害 賠 償 における 争 点 1 胸 郭 出 口 症 候 群 (1) 交 通 事 故 との 因 果 関 係 (2) 素 因, 心 因 性 減 額 が 争 点 とされることが 多 い ( 参 考 判 例 ) 1 最 高 裁 平 成 8 年 10 月 29 日 判 決 2 大 阪 地 裁 平 成 4 年 6 月 18 日 判 決 3 大 分 地 裁 平 成 3 年 8 月 30 日 判 決 4 大 阪 高 裁 平 成 12 年 7 月 13 日 判 決 5 福 岡 地 裁 平 成 12 年 3 月 17 日 判 決 6 札 幌 地 裁 平 成 13 年 7 月 17 日 判 決 7 東 京 地 裁 平 成 16 年 3 月 23 日 判 決 - 4 -

2 腕 神 経 叢 損 傷 上 肢 の 用 廃 ないし 機 能 障 害 を 伴 う 腕 神 経 叢 損 傷 ( 腕 神 経 叢 麻 痺 麻 痺 )につい ては 腕 神 経 叢 損 傷 の 存 在 自 体 が 争 いとならないことが 多 いが, 疼 痛,しびれ 頭 の 神 経 症 状 については, 腕 神 経 叢 損 傷 の 存 在 自 体 が 争 われ, 他 覚 的 所 見 が 欠 如 を 理 由 にその 存 在 が 認 定 されず14 級 どまりの 認 定 となっている 判 例 が 散 見 さ れる ( 参 考 判 例 ) 8 名 古 屋 地 裁 平 成 14 年 9 月 13 日 判 決 9 京 都 地 裁 平 成 16 年 3 月 31 日 判 決 - 5 -

1 最 高 裁 平 成 8 年 10 月 29 日 判 決 ( 首 なが 判 決 ) < 概 要 > 被 害 者 30 歳 女 性 後 遺 障 害 等 級 併 合 8 級 ( 胸 郭 出 口 症 候 群 につき,12 級 ) 労 働 能 力 喪 失 率 及 び 喪 失 期 間 45%,10 年 間 30 歳 主 婦 兼 家 業 手 伝 いが 乗 用 車 運 転 中 追 突 され, 胸 郭 出 口 症 候 群,バレリュー 症 候 群 等 から 併 合 8 級 後 遺 障 害 を 残 した 事 案 (バレリュー 症 候 群 の 疾 患 は9 級, 左 胸 郭 出 口 症 候 群 の 疾 患 は12 級, 左 肩 拘 縮 の 疾 患 は12 級, 眼 症 状 は2 級 で 併 合 8 級 と 認 定 ) 第 1 審, 第 2 審 は, 首 が 長 いことを 身 体 的 素 因 とし, 過 失 相 殺 の 類 推 適 用 で4 割 の 素 因 減 額 を 適 用 したが( 労 働 能 力 喪 失 率 45%, 喪 失 期 間 10 年 と 判 断 ), 最 高 裁 は 通 常 の 体 質 と 異 なる 特 徴 を 有 していても, 賠 償 額 を 定 めるに 当 たり 斟 酌 するこ とはできないと 判 示 し, 高 裁 に 差 し 戻 した < 判 旨 > 被 害 者 に 対 する 加 害 行 為 と 加 害 行 為 前 から 存 在 した 被 害 者 の 疾 患 とが 共 に 原 因 と なって 損 害 が 発 生 した 場 合 において, 当 該 疾 患 の 能 様, 程 度 などに 照 らし, 加 害 者 に 損 害 の 全 部 を 賠 償 させるのが 公 平 を 失 するときは, 裁 判 所 は, 損 害 賠 償 の 額 を 定 めるに 当 たり, 民 法 722 条 2 項 の 規 定 を 類 推 適 用 して, 被 害 者 の 疾 患 を 斟 酌 する ことができることは, 当 裁 判 所 の 判 例 ( 最 高 裁 昭 和 63 年 オ 第 1094 号 平 成 4 年 6 月 25 日 第 一 小 法 廷 判 決 民 集 46 巻 4 号 400 頁 )とするところである しかしながら, 被 害 者 が 平 均 的 な 体 格 ないし 通 常 の 体 質 と 異 なる 身 体 的 特 徴 を 有 していたとしても, それが 疾 患 に 当 たらない 場 合 には, 特 段 の 事 情 の 存 しない 限 り, 被 害 者 の 右 身 体 的 特 徴 を 損 害 賠 償 の 額 を 定 めるに 当 たり 斟 酌 することはできないと 解 すべきである けだし, 人 の 体 格 ないし 体 質 は,すべての 人 が 均 一 同 質 なものということはでき ないものであり, 極 端 な 肥 満 など 通 常 人 の 平 均 値 から 著 しくかけ 離 れた 身 体 的 特 徴 を 有 する 者 が, 転 倒 などにより 重 大 な 傷 害 を 被 りかねないことから 日 常 生 活 におい て 通 常 人 に 比 べてより 慎 重 な 行 動 をとることが 求 められるような 場 合 は 格 別,その 程 度 に 至 らない 身 体 的 特 徴 は, 個 々 人 の 個 体 差 の 範 囲 として 当 然 にその 存 在 が 予 定 されているものというべきだからである これを 本 件 についてみるに, 上 告 人 の 身 体 的 特 徴 は 首 が 長 くこれに 伴 う 多 少 の 頸 椎 不 安 定 症 があるということであり,これが 疾 患 に 当 たらないことはもちろん,こ のような 身 体 的 特 徴 を 有 する 者 が 一 般 的 に 負 傷 しやすいものとして 慎 重 な 行 動 を 要 - 6 -

請 されているといった 事 情 は 認 められないから, 前 記 特 段 の 事 情 が 存 するというこ とはできず, 右 身 体 的 特 徴 と 本 件 事 故 による 加 害 行 為 とが 競 合 して 上 告 人 の 右 傷 害 が 発 生 し, 又 は 右 身 体 的 特 徴 が 被 害 者 の 損 害 の 拡 大 に 寄 与 していたとしても,これ を 損 害 賠 償 の 額 を 定 めるに 当 たり 斟 酌 するのは 相 当 でない 2 大 阪 地 裁 平 成 4 年 6 月 18 日 判 決 < 概 要 > 被 害 者 後 遺 障 害 等 級 45 歳 男 子 12 級 労 働 能 力 喪 失 率 及 び 喪 失 期 間 22 年 間 14% 外 傷 性 頸 椎 症, 腰 部 捻 挫, 両 上 肢 不 全 麻 痺 及 び 胸 郭 出 口 症 候 群 等 の 傷 害 で12 級 12 号 相 当 の 後 遺 障 害 を 残 す45 歳 男 子,タクシー 運 転 手 兼 アルバイト 収 入 を 得 る 者 の 事 案 で,センサス 男 子 同 年 齢 平 均 を 基 礎 に22 年 間 14%の 喪 失 率 で 逸 失 利 益 を 認 めた 事 例 判 決 の 詳 細 は 明 らかではないが, 右 上 肢 はほぼ 機 能 不 全 であったものの,その 医 学 的 機 序 ないし 他 覚 的 所 見 が 認 定 されず, 因 果 関 係 が 否 定 されたものと 考 えられる < 判 旨 > ( 事 故 日 時 昭 和 60 年 10 月 26 日 午 前 0 時 ころ) 反 訴 原 告 は, 本 件 事 故 により, 外 傷 性 頸 椎 症, 腰 部 捻 挫, 両 上 肢 不 全 麻 痺 及 び 胸 郭 出 口 症 候 群 等 の 傷 害 を 負 い, 左 記 の 入 通 院 をしたが, 昭 和 62 年 10 月 8 日, 大 阪 市 立 城 北 市 民 病 院 ( 以 下 城 北 市 民 病 院 という ) において, 頭 痛, 頸 背 部 痛, 左 上 肢 機 能 完 全 不 能, 病 的 反 射 出 現, 左 上 肢 全 体 知 覚 鈍 麻, 左 三 角 筋, 同 上 腕 二 頭 筋, 同 三 頭 筋 及 び 前 腕 筋 の 各 筋 力 喪 失 の 各 後 遺 障 害 につき 症 状 固 定 の 診 断 を 受 け た その 後, 反 訴 原 告 は, 右 上 肢 の 症 状 が 悪 化 し, 左 記 の 入 通 院 をしたが, 昭 和 63 年 11 月 2 日, 城 北 市 民 病 院 において, 右 上 肢 機 能 不 能 に 近 い, 頭 痛, 頸 部 痛, 背 部 痛, 握 力 喪 失, 右 尺 骨 神 経 領 域 知 覚 鈍 麻 の 各 後 遺 障 害 につき, 症 状 固 定 の 診 断 を 受 けた 前 記 認 定 のとおり, 本 件 事 故 と 相 当 因 果 関 係 のある 後 遺 障 害 の 内 容 程 度 に 照 ら せば, 経 験 則 上, 反 訴 原 告 は, 症 状 固 定 時 において,その 労 働 能 力 を14パーセン ト 減 殺 されていたものと 認 めるのが 相 当 である - 7 -

3 大 分 地 裁 平 成 3 年 8 月 30 日 判 決 < 概 要 > 被 害 者 後 遺 障 害 等 級 36 歳 女 子 12 級 労 働 能 力 喪 失 率 及 び 喪 失 期 間 14% 67 歳 まで 素 因 減 額 50% 主 婦 の 傍 ら20 年 来 美 容 師 として 稼 働 する36 歳 女 子 が 頸 椎 捻 挫 等 を 受 傷 後 に, 外 傷 性 胸 郭 出 口 症 候 群 と 診 断 され,12 級 相 当 を 請 求 する 事 案 ( 機 能 障 害 または 神 経 症 状 )で, 右 症 状 は 手 を 上 げる 職 種 に 多 く 発 症 する 一 種 の 職 業 病 的 なもので あること, 第 1 肋 骨 切 除 術 後 の 斜 角 筋 部 での 癒 着 も 後 遺 障 害 の 原 因 となっているこ とから, 本 件 事 故 との 寄 与 度 を5 割 と 認 めた 事 例 被 告 は, 事 故 当 初 に 約 1 週 間 の 通 院 加 療, 事 故 から 約 4か 月 後 には 当 院 は 治 癒 となるとの 診 断 がなされたことから, 後 遺 障 害 と 事 故 との 因 果 関 係 も 争 った < 判 旨 > < 相 当 因 果 関 係 についての 判 断 > ( 事 故 日 時 昭 和 61 年 1 月 9 日 午 前 10 時 30 分 ころ,) 証 拠 ( 略 )によれば, 本 件 事 故 の 態 様 は, 時 速 約 20キロメートルで 走 行 する 原 告 の 原 付 の 後 輪 に, 時 速 約 15キロメートルで 走 行 する 被 告 の 原 付 の 前 輪 が 左 側 からほぼ 直 角 に 衝 突 したものであり,この 事 故 により 原 告 は, 衝 突 地 点 から 約 4 3メートル 走 行 したところ で 左 側 に 倒 れ, 左 肩 及 び 左 腕 付 近 を 直 接 道 路 に 打 ちつける 形 で 転 倒 した 原 告 は, 本 件 事 故 直 後 に 大 分 中 村 病 院 で, 左 手 打 撲 擦 過 傷, 左 肩 打 撲 により 約 1 週 間 の 通 院 加 療 を 要 するとの 診 断 を 受 け, ( 昭 和 61 年 )5 月 20 日, 同 病 院 の 医 師 から 当 院 は 治 癒 となる との 診 断 を 受 けた しかしその 後 も, 原 告 は, 左 肩 や 左 上 腕 から 左 手 指 にかけてのしびれや 疼 痛 に 悩 まされたことから, 大 分 赤 十 字 病 院 において 診 察 を 受 けたところ, 外 傷 性 頸 部 症 候 群 により 反 射 性, 二 次 性 に 胸 郭 出 口 症 候 群 を 生 じたとして, 外 傷 性 胸 郭 出 口 症 候 群 の 傷 病 名 により, 2 度 入 院 し,その 間 2 回 に 亘 り 左 胸 郭 出 口 部 分 の 外 科 的 手 術 を 受 けた 多 くの 場 合, 頚 椎 を 捻 挫 してこれが 長 引 く 場 合 は, 頸 椎 の 椎 間 板 に 障 害 を 残 す 頸 椎 椎 間 板 ヘルニアと 胸 郭 出 口 症 候 群 との2 通 りの 疾 患 が 考 えられるが, 二 次 性 ( 外 傷 性 )に 生 じて,しびれ 等 の 神 経 症 状 を 残 すのは, 前 者 でなく 後 者 の 場 合 が 殆 どで ある 外 傷 性 頸 部 症 候 群 から 二 次 性 ( 外 傷 性 ) 胸 郭 出 口 症 候 群 が 生 じる 臨 床 例 は, 交 通 事 - 8 -

故 に 関 連 して 多 く 見 られるものの,その 発 生 機 序 は 判 然 とせず, 症 状 は 手 のしびれ や 脱 力 感 が 代 表 的 なものである 本 件 事 故 の 態 様 が 原 告 車 の 後 輪 に 対 して 被 告 車 が 左 側 からほぼ 直 角 の 形 で 衝 突 し たというものであるから, 原 告 は, 左 後 ろ 側 面 に 加 重 を 受 けて,その 衝 撃 により 左 側 に 転 倒 したものであり,このような 衝 突 と 転 倒 の 形 態 及 び 前 認 定 の 双 方 のスピー ドからすれば, 当 然 その 頸 椎 部 にも 異 常 な 荷 重 を 受 けて 頸 椎 捻 挫 の 傷 害 を 負 ったで あろうし,その 部 分 に 何 らかの 障 害 が 残 ったとしても 不 思 議 ではない さらに, 原 告 は, 左 肩 及 び 左 腕 付 近 を 直 接 路 面 に 打 ちつける 形 で 転 倒 しているのであるから, 左 肩 及 び 左 腕 全 体 に 何 らかの 障 害 を 残 したとしても, これまた 不 自 然 とは 言 えない 確 かに, 大 分 中 村 病 院 や 大 分 中 央 外 科 病 院 の 各 診 断 に 照 らして 見 る 限 り, 原 告 の 受 傷 は, 通 院 加 療 か 若 しくは 短 期 の 入 通 院 でも 治 癒 可 能 な 程 度 の 傷 害 であったと 言 え なくはないし, 従 って, 本 件 事 故 と 前 認 定 の 後 遺 障 害 との 間 に 相 当 因 果 関 係 はない と 言 えるかもしれない しかしながら, 原 告 は, 右 両 病 院 の 治 療 を 受 けた 後 も, 依 然 として 左 肩 や 左 上 腕 から 左 手 指 にかけてのしびれや 疼 痛 に 悩 まされていたことは 明 らかであるから, 本 件 事 故 以 外 にその 原 因 が 他 に 明 確 に 存 在 し,かつそれが 唯 一 の 原 因 であることを 立 証 しない 限 り, 右 両 病 院 の 各 診 断 のみをもっては, 本 件 事 故 と 前 認 定 の 後 遺 障 害 との 間 の 相 当 因 果 関 係 を 全 面 的 に 否 定 することはできないとい うべきである 従 って, 本 件 事 故 による 原 告 の 後 遺 障 害 は, 前 認 定 の 昭 和 62 年 9 月 29 日 時 点 における 他 覚 症 状 にみられる 症 状 を 措 いて 他 になく, 症 状 固 定 日 も 右 同 日 とするのに 何 ら 不 合 理 な 点 はないというべきであるから,これを 後 遺 障 害 別 等 級 表 に 照 らして 考 えると, 一 応 12 級 の6 号 又 は12 号 に 該 当 するものと 解 するの が 相 当 である < 素 因 減 額 について> この 疾 患 は,ピアノを 弾 くなどの 手 を 上 げて 行 う 動 作 を 継 続 したり, 或 いは,コ ンピーターやパソコンの 仕 事 とか,キーパンチャーや 電 話 交 換 手 などの 手 を 使 う 職 業 によって 誘 発 されやすく, 若 い 女 性 や 中 年 の 女 性 に 比 較 的 多 く 見 られるが, 同 じ 仕 事 をした 人 でも 罹 患 する 人 としない 人 があること, 原 告 は, 中 学 卒 業 以 来 約 20 年 近 くにわたって 美 容 師 の 仕 事 に 従 事 してきたものであるが, 一 般 的 に 言 って, 美 容 師 の 仕 事 も 右 疾 患 を 誘 発 する 職 業 の 一 形 態 である 原 告 の 胸 郭 出 口 症 候 群 が, 外 傷 性, 二 次 性 に 生 じたとはいっても, 本 件 事 故 前 約 20 年 近 くにわたって 原 告 が 従 事 していた 美 容 師 の 仕 事 と 全 く 無 関 係 と 言 えるかど うかが 問 題 となる しかし,この 点 については, 本 件 全 証 拠 によっても, 肯 定 否 定 いずれの 資 料 もこれを 見 出 すことはできないのである さらに, 原 告 には, 前 認 定 - 9 -

の 後 遺 障 害 の 内 容 である 他 覚 症 状 が 認 められるが,これらの 後 遺 障 害 は, 総 合 的 に いえば, 左 腕 神 経 叢 不 全 麻 痺 の 状 態 であり,その 原 因 の 一 部 には, 第 1 肋 骨 切 除 と いう 手 術 後 の 前, 中 斜 角 筋 部 での 癒 着 があり, 再 度 癒 着 剥 離 などの 手 術 を 行 わない 限 り, 原 告 の 愁 訴 の 改 善 は 望 めないというのである そうだとすると, 昭 和 62 年 9 月 29 日 時 点 で 発 現 している 後 遺 障 害 の 全 部 を 本 件 事 故 に 係 らしめるということ は 相 当 でないというべく,むしろ, 前 認 定 の 原 告 の 治 療 経 過 に 鑑 みて, 右 後 遺 障 害 は, 本 件 事 故 に 起 因 して 発 症 している 部 分 のほかに, 美 容 師 の 仕 事 に 関 係 して 発 症 している 部 分 と, 第 1 肋 骨 切 除 の 手 術 に 関 連 して 現 に 残 存 している 部 分 ( 手 術 後 の 前 中 斜 角 筋 部 での 癒 着 がその 原 因 の 一 部 をなしている,と 認 定 されている)とに よって 組 成 された 複 合 的 な 病 態 と 考 えるのが 相 当 である そして, 本 件 事 案 の 内 容 や 事 故 態 様, 治 療 経 過, 後 遺 症 の 部 位, 程 度, 原 告 の 職 業 や 年 齢 性 別 その 他 諸 般 の 事 情 を 斟 酌 すると, 昭 和 62 年 9 月 29 日 現 在 の 後 遺 障 害 のうち, 本 件 事 故 がその 発 症 に 寄 与 している 割 合 は,50%であると 解 するのが 相 当 である 5 大 阪 高 裁 平 成 12 年 7 月 13 日 判 決 被 害 者 30 歳 男 子 後 遺 障 害 等 級 12 級 労 働 能 力 喪 失 率 及 び 喪 失 期 間 14% 10 年 間 素 因 減 額 5 割 < 判 旨 > 大 阪 市 立 大 学 医 学 部 整 形 外 科 教 授 山 野 慶 樹 医 師 は, 第 一 審 原 告 を 診 察 して, 頚 椎 運 動 ( 自 動 ) 前 屈 40 度 後 屈 35 度, 頚 椎 軸 圧 痛 なし,スパーリングテスト 左 右 共 圧 迫 による 疼 痛 なし, 右 頚 部 僧 帽 筋 上 部 筋 繊 維 肩 甲 部 に 圧 痛 あり, 腕 神 経 叢 部 には 左 右 とも 圧 痛 なし, 右 上 腕 内 側 部 の 叩 打 で 右 肩 に 痛 みがひびく, 右 前 腕 屈 筋 筋 腹 に 叩 打 痛 あり, 右 手 根 管 部 に 叩 打 痛 なし, 両 上 肢 関 節 には 肩 関 節 を 含 め 他 動 運 動 制 限 は 認 めない, 筋 肉 について 右 僧 帽 筋 上 部 筋 繊 維 にわずかの 萎 縮 あり 等 の 診 察 所 見 を 得, 右 頚 部 肩 甲 部 痛 については, 受 傷 直 後 からみられ, 現 在 も 訴 えており, 外 傷 性 頚 部 症 候 群 によるもので, 受 傷 後 暫 くして 外 傷 性 頚 部 症 候 群 に 伴 いやすいバレ ーリュウ 症 候 群 様 の 症 状 があったこと, 右 僧 帽 筋 の 筋 電 図 では 脱 神 経 電 位 ははっき りしないが, 異 常 所 見 が 見 られたこと,やや 萎 縮 していることから,これが 残 存 し ていると 考 え, 後 遺 障 害 は 右 頚 部 肩 甲 部 に 頑 固 な 疼 痛 及 び 右 上 肢 の 知 覚 障 害 を 残 す ものに 該 当 すると 鑑 定 した - 10 -

また, 同 教 授 は, 第 一 審 原 告 の 右 上 肢 自 動 運 動 障 害 について, 外 傷 性 頚 部 症 候 群 に 伴 いやすい 胸 郭 出 口 症 候 群 が 出 た 可 能 性 が 考 えられる 通 常 は 外 傷 性 頚 部 症 候 群 の 軽 快 と 共 に 消 退 する 事 実, 第 一 審 原 告 も 一 時 期 に 比 べよく 回 復 したと 述 べて いる と 指 摘 している( 山 野 鑑 定 ) 山 野 鑑 定 によれば, 第 一 審 原 告 の 後 遺 障 害 は, 右 頚 部 肩 甲 部 に 頑 固 な 疼 痛 及 び 右 上 肢 の 知 覚 障 害 を 残 すものに 該 当 することが 認 められるから,12 級 12 号 に 相 当 する 障 害 というべきである 前 記 認 定 の 第 一 審 原 告 の 症 状 固 定 時 ( 平 成 6 年 3 月 30 日 )の 症 状, 後 遺 症 の 程 度, 年 齢, 職 業, 症 状 の 今 後 の 見 通 しなどを 総 合 考 慮 すると, 第 一 審 原 告 は 後 遺 障 害 により 労 働 能 力 を14% 喪 失 し, 労 働 能 力 喪 失 期 間 は 症 状 固 定 時 から10 年 間 と するのが 相 当 である 前 記 認 定 のとおり 第 一 審 原 告 は333 万 9156 円 の 年 収 が 認 められるからホフ マン 式 により 中 間 利 息 を 控 除 すると 逸 失 利 益 は357 万 0626 円 ( 円 未 満 切 捨 ) となる 6 札 幌 地 裁 平 成 13 年 7 月 17 日 判 決 < 概 要 > 被 害 者 19 歳 男 子 労 働 能 力 喪 失 率 及 び 喪 失 期 間 60% 67 歳 まで 素 因, 心 因 性 減 額 20~50% ( 左 上 肢 の 用 廃 ) 普 通 貨 物 車 を 運 転 中 の19 歳 男 子 専 門 学 校 生 が 乗 用 車 に 追 突 され, 左 上 肢 の 用 を 廃 した 状 態 となったとする 事 案 ( 事 故 日 時 ろ ) 平 成 7 年 1 月 11 日 午 前 9 時 40 分 こ 原 告 は, 1 上 肢 の 用 廃 ( 5 級 ), 頚 から 背 部 にかけての 頑 固 な 神 経 症 状 ( 12 級 ) を 主 張 ( 損 害 保 険 料 率 認 定 は14 級 10 号 ) 診 断 名 はバレリュー 症 候 群, 胸 郭 出 口 症 候 群, 高 次 脳 機 能 障 害 等 あり, 検 査 でも 器 質 的 異 常 が 認 められていないが, 脳 の 機 能 に 影 響 を 与 え 完 全 に 麻 痺 するに 至 っ た と 本 件 事 故 と 左 上 肢 麻 痺 の 相 当 因 果 関 係 を 認 めた 1 上 肢 の 用 を 全 廃 した 状 態 で, 保 険 会 社 に 入 社 年 収 200 万 円 を 得 ていることで センサス 同 学 歴 平 均 を 基 礎 に 60%の 労 働 能 力 を 喪 失 した と 認 めた 原 告 がパチンコをした 際, 左 手 でダイヤルを 押 さえ, 両 手 でドル 箱 を 持 ち 上 げる - 11 -

のを 目 撃 されるなど, 原 告 の 素 因, 心 因 性, 原 告 が 左 上 肢 を 使 用 しなかったこと が 相 当 に 影 響 していると 損 害 費 目 ごとに20~50%の 減 額 を 適 用 した ( 治 療 費, 入 院 雑 費 20%, 休 業 損 害, 入 通 院 慰 謝 料 30%, 逸 失 利 益, 後 遺 症 慰 謝 料 50% ) < 判 旨 > < 鑑 定 結 果 > 原 告 は, 本 件 訴 訟 において 採 用 された 鑑 定 のために, 旭 川 医 科 大 学 医 学 部 附 属 病 院 で, 平 成 12 年 5 月 17 日, 同 年 6 月 14 日, 同 年 8 月 23 日 に, 検 査 を 受 けた その 結 果 は 次 のとおりであった ( 鑑 定 の 結 果,( 証 拠 略 ) まず, 左 上 肢 の 状 態 は, 肩 甲 帯 以 下 が 下 垂 した 姿 勢 であり, 上 腕, 前 腕 とも 右 上 肢 より 細 かった 左 手 掌 は 右 よりやや 紫 がかった 皮 膚 色 調 を 呈 し,わずかに 浮 腫 状 であったが, 色 調 については 左 右 差 のない 日 もあった 左 上 肢 の 神 経 学 的 所 見 は, 1 知 覚 については, 触 覚 低 下 領 域 を 認 めた ただし,その 領 域 は, 特 定 の 神 経 根, 末 梢 神 経 に 限 局 した 分 布 パターンではなかった 痛 覚 低 下 領 域 があった 温 覚 低 下 は 軽 度 であり, 冷 覚 低 下, 振 動 覚 低 下 はなかった 触 覚 閾 値 は 若 干 上 昇 が 認 められ た 総 合 的 評 価 として, 知 覚 障 害 があるが, 軽 度 と 診 断 された 2 運 動 については, 左 肩, 左 肘, 左 手 関 節, 左 手 指 運 動 は 全 く 認 められなかった 左 手 の 握 力 は0キロク ラムであった 肩 関 節 に 他 動 的 可 動 域 制 限 があり, 軽 度 の 拘 縮 を 認 めた 肘 関 節, 手 関 節, 指 関 節 には 他 動 的 可 動 域 制 限 はなかった 3 反 射 については, 腱 反 射 は 正 常 範 囲 内 であり, 病 的 反 射 は 認 められなかった 4 筋 萎 縮 については, 限 局 的 萎 縮 はなく, 筋 萎 縮 は 存 在 するものの 程 度 としては 軽 度 であった 5ライトテストの 結 果 は 陽 性 であり, 胸 郭 出 口 症 候 群 と 診 断 された 画 像 及 び 検 査 所 見 は, 単 純 X 線,MRIは 正 常 であり, 頸 髄 や 腕 神 経 叢 周 辺 に 病 変 は 認 められなかった 筋 電 図 も 正 常 であり, 筋 の 脱 神 経 所 見 は 認 められなかった 神 経 伝 導 速 度 に 遅 延 は 認 めなかった 末 梢 神 経 の 運 動 神 経 成 分 については 明 らかな 変 性 は 存 在 しなかった サーモグラフィでは 皮 膚 温 低 下 が 見 られた 体 性 感 覚 誘 発 電 位 検 査 では 明 らかな 左 右 差 はなかった 磁 気 刺 激 運 動 誘 発 電 位 検 査 では, 明 瞭 な 誘 発 筋 電 図 が 認 められ, 大 脳 運 動 野 から 筋 に 至 る 運 動 経 路 において 重 大 な 損 傷 はな いと 判 断 された すなわち, 随 意 的 運 動 が 全 く 見 られない 筋 においても, 末 梢 神 経 を 電 気 刺 激 した 場 合, 大 脳 運 動 野 を 磁 気 刺 激 した 場 合 に,いずれも 良 好 な 筋 収 縮 が 認 められ, 明 らかな 神 経 断 裂 や 変 性 を 主 体 とする 病 変 は 認 められなかった < 左 上 肢 麻 痺 以 外 についての 判 断 > - 12 -

まず, 原 告 の 現 在 の 症 状 のうち 左 上 肢 の 運 動 麻 痺 を 除 くもの, すなわち, 頸 部 痛, 背 部 痛, 左 上 肢 のしびれ, 腫 れ 等 の 神 経 症 状 について, 検 討 する 胸 郭 出 口 症 候 群 とは, 上 肢 を 支 配 する 神 経 血 管 束 が 第 一 肋 骨 を 床, 鎖 骨 を 天 井 と する 胸 郭 出 口 で 圧 迫 を 受 けて 起 こる 疼 痛 又 は 感 覚 異 常 を 主 症 状 とする 症 候 群 であ り, 自 覚 症 状 は 疼 痛,しびれ, 知 覚 鈍 麻, 筋 力 減 弱, 冷 感 蒼 白 等 の 血 管 症 状 であ るとされていること, 一 般 的 な 発 生 因 子 として 交 通 外 傷 があげられていることが 認 められる これらの 事 実 に 鑑 定 の 結 果 を 総 合 すると, 原 告 は 本 件 事 故 により 頸 部 捻 挫 及 び 外 傷 性 胸 郭 出 口 症 候 群 の 傷 害 を 受 け, この 傷 害 を 原 因 として, 現 在 に 至 るまで 頸 部 痛, 背 部 痛, 左 腕 のしびれ, 腫 れ 等 の 症 状 が 続 いていることが 認 められる この 後 遺 障 害 の 程 度 は, 前 記 (1)の 認 定 事 実 によれば, 局 部 に 神 経 症 状 を 残 す ものに 相 当 すると 認 められる < 左 上 肢 の 運 動 麻 痺 についての 判 断 > 次 に, 原 告 の 症 状 のうち, 左 上 肢 の 運 動 麻 痺 について, 検 討 する 原 告 の 左 上 肢 の 症 状 は, 本 件 事 故 直 後 はなかったが, 事 故 の 約 2 日 後 から 症 状 ( 左 腕, 左 手 の 痛 み,むくみ,しびれ)が 発 現 し,その 後 は 消 失 したこと,ところが, 事 故 から 約 8か 月 経 過 したころから, 左 腕 をまっすぐに 挙 げられない,しびれ 感 が ある 等 の 症 状 が 現 れ, 症 状 は 悪 化 し, 事 故 から 約 1 年 経 過 した 後 ( 札 医 大 病 院 で 診 察 を 受 けたころ)には, 挙 上 は 不 能 となり, 握 力 も 低 下 したこと,さらに 事 故 から 2 年 を 経 過 した 平 成 9 年 3 月 21 日 ころ には, 左 上 肢 は 完 全 に 麻 痺 し, 全 く 動 か なくなり, 握 力 も0キロク ラムとなったこと,その 後 症 状 に 変 化 はないことが 認 められ る そこで, 左 上 肢 の 運 動 麻 痺 の 原 因 を 検 討 する 前 記 (1)の 認 定 事 実 (とくに,オ) 及 び 鑑 定 の 結 果 によれば, 原 告 の 筋 電 図 は 正 常 であり, 大 脳 から 左 上 肢 に 至 る 神 経 の 伝 達 を 障 害 するような 所 見 は 認 められな いし,その 他 の 検 査 によっても, 器 質 的 な 異 常 が 認 められるような 所 見 は 認 められ ない 左 腕 神 経 叢 麻 痺 を 支 持 するような 所 見 も, 頸 髄 や 腕 神 経 叢 周 辺 の 病 変 も 認 め られない したがって, 左 上 肢 の 運 動 麻 痺 の 原 因 が, 左 上 肢 の 神 経 に 関 する 器 質 的 な 異 常 であるとは 認 められない 原 告 は, 左 上 肢 の 運 動 麻 痺 の 原 因 を 左 胸 郭 出 口 症 候 群 によるものと 主 張 する し かし, 以 上 で 述 べたとおり, 原 告 の 左 上 肢 には 神 経 の 伝 達 が 切 断 あるいは 障 害 され るような 器 質 的 な 異 常 は 認 められないし, 原 告 の 前 記 (1)の 認 定 事 実 (とくに, オ) 及 び 証 拠 ( 略 ), ( 鑑 定 の 結 果 )によれば, 胸 郭 出 口 症 候 群 によっては, 原 告 - 13 -

に 見 られるような 左 上 肢 の 完 全 な 運 動 麻 痺 の 症 状 は 発 現 しないことも 認 められる したがって, 左 胸 郭 出 口 症 候 群 が 左 腕 の 運 動 麻 痺 の 原 因 であると 認 めることはでき ない 左 上 肢 の 運 動 麻 痺 の 原 因 等 について, 鑑 定 の 結 果 によれば, 鑑 定 人 は, 鑑 定 結 果 報 告 書 において, 傷 病 名 を 高 次 脳 機 能 障 害 としたうえで,その 原 因 を 上 肢 を 運 動 するために 意 志 ( 命 令 )を 発 動 しても 脳 の 運 動 野 神 経 細 胞 にそれが 伝 わらない という, さらに 高 次 の 脳 機 能 が 障 害 されているとしか 言 いようがない と 記 載 し, これを 心 因 性 と 呼 ぶべきかどうかは 言 及 できない とし, 事 故 との 因 果 関 係 に ついては, 交 通 事 故 直 後 には 現 在 のような 顕 著 な 運 動 麻 痺 は 無 かったことから, 事 故 が 契 機 となり, 時 間 を 経 過 してから 運 動 麻 痺 の 原 因 となる 高 次 脳 機 能 障 害 が 二 次 的 に 発 症 したものと 推 察 される とし, このような 二 次 的 病 態 については 何 らかの 本 人 の 素 因 が 関 与 しうる としている 原 告 の 左 上 肢 の 運 動 麻 痺 は, 本 件 事 故 の 前 には 全 くなかったところ, 本 件 事 故 の 直 後 には 発 現 していなかったが ( 左 上 肢 のしびれ, 腫 れ 等 の 症 状 は 発 現 していた ), 約 8か 月 を 経 過 したころに 発 現 し,その 後 症 状 が 悪 化 していったこと, 平 成 9 年 3 月 21 日 ころには 完 全 に 麻 痺 したことは 前 記 のとおりである 本 件 事 故 発 生 後 に, 原 告 が 左 上 肢 に 影 響 を 受 けるような 傷 害 等 を 負 った 事 実 は 何 ら 認 めることができな い 原 告 の 症 状 発 現 をもたらした 要 因 としては, 本 件 事 故 による 傷 害 のほかには 考 えることが 困 難 である これらを 総 合 して 考 えると, 本 件 事 故 を 契 機 として, 本 件 事 故 が 原 告 の 脳 の 機 能 に 影 響 を 与 え, 脳 から 運 動 の 指 示 をすることが 完 全 にはできなくなり,この 症 状 が 良 くなったり, 悪 くなったりしながら, 平 成 9 年 3 月 21 日 ころには, 完 全 に 麻 痺 するに 至 り,このような 経 過 によって, 原 告 の 左 上 肢 の 運 動 麻 痺 が 発 現 した,と 推 認 される したがって, 原 告 の 左 上 肢 の 運 動 麻 痺 の 症 状 は, 本 件 事 故 によるもの, すなわち, 本 件 事 故 と 因 果 関 係 があると 認 めるのが 相 当 である < 素 因, 心 因 性 等 による 減 額 > 前 示 のとおり, 原 告 の 左 上 肢 の 運 動 麻 痺 という 症 状, 後 遺 障 害 には, 原 告 の 素 因 あるいは 心 因 性 によるもの,さらに 原 告 が 左 上 肢 を 長 期 間 にわたって 使 用 していな いことが 相 当 に 作 用 していることが 認 められる そうすると, 損 害 の 公 平 な 負 担 の 観 点 から, 被 告 が 原 告 に 対 して 損 害 賠 償 すべき 金 額 の 認 定 に 当 たって,この 点 を 考 慮 し, 損 害 額 を 減 額 すべきである ア 治 療 費 308 万 7,820 円 原 告 に 対 する 恒 心 堂 整 形 外 科 医 院, 札 幌 医 科 大 学 医 学 部 付 属 病 院, 北 海 道 大 学 医 - 14 -

学 部 付 属 病 院 での 治 療 は, 左 上 肢 の 運 動 麻 痺 に 関 するものが 含 まれていることを 考 慮 して,20%を 控 除 する イ 入 院 雑 費 16 万 0,160 円 アと 同 様 に20%を 控 除 する ウ 休 業 損 害 378 万 2,800 円 症 状 固 定 の 日 まで 仕 事 ができなくなったのは, 左 上 肢 の 運 動 麻 痺 による 部 分 が 影 響 していることを 考 慮 して,30%を 控 除 する エ 後 遺 障 害 による 逸 失 利 益 2,891 万 5,178 円 後 遺 障 害 のうち 左 上 肢 の 運 動 麻 痺 については, 原 告 の 素 因 あるいは 心 因 性 による ものが 影 響 しているから,50%を 控 除 する オ 入 通 院 慰 謝 料 175 万 円 ウと 同 様 に30%を 控 除 する カ 後 遺 障 害 慰 謝 料 650 万 円 エと 同 様 に50%を 控 除 する 7 東 京 地 裁 平 成 16 年 3 月 23 日 判 決 < 判 旨 > 被 害 者 38 歳 女 子 後 遺 障 害 等 級 併 合 6 級 ( 上 肢 等 の 麻 痺 については12 級 ) 労 働 能 力 喪 失 率 及 び 喪 失 期 間 35% 5 年 間 ( 2) 右 上 肢 等 の 麻 痺 などについて 20% 60 歳 まで 14% 67 歳 まで 原 告 は, 頭 痛, 頭 頸 部 から 上 腕 の 強 い 運 動 制 限, 疼 痛, 運 動 痛, 右 上 肢 尺 側 を 中 心 とした 麻 痺, 錯 感 覚, 知 覚 障 害 の 後 遺 障 害 が 残 存 しており, 上 記 後 遺 障 害 は,そ の 疼 痛 の 頻 度, 強 度, 持 続 時 間 からすれば 神 経 系 統 の 機 能 又 は 精 神 に 障 害 を 残 し, 軽 易 な 労 務 以 外 の 労 務 に 服 することができないものとして, 少 なくとも 等 級 表 7 級 4 号 に 該 当 する 旨 主 張 するので, 以 下, 検 討 する 小 森 鑑 定 の 要 旨 は 右 上 肢 の 症 状 につき 原 告 が 本 件 事 故 によって 確 実 に 受 傷 したものは 局 所 の 疼 痛 が 中 心 の 頸 椎 捻 挫 程 度 の 受 傷 内 容 であったものが 胸 郭 出 口 症 候 群 を 併 発 し その 後 長 期 間 経 過 した 後 に 肩 関 節 の 関 節 拘 縮 をきたした 結 果 現 在 訴 えているような 多 彩 な 症 状 を 呈 する 様 になったとの 経 過 が 想 定 でき この 可 - 15 -

能 性 は 極 めて 高 いものであると 判 断 できる ( 証 拠 略 )と 検 討 を 加 えた 上 受 傷 と 直 接 的 に 関 連 のある 症 状 だけを 考 えた 場 合 現 状 で 訴 えている 症 状 の 中 で 頸 部 か ら 肩 周 辺 の 痛 みは 受 傷 と 直 接 的 な 因 果 関 係 がある 症 状 として 問 題 はな く 遺 残 している 症 状 は 頸 部 痛 や 背 部 痛 などの 局 所 の 疼 痛 だけが 後 遺 障 害 ということにな り これらは 画 像 所 見 など 客 観 的 に 裏 付 けられている 症 状 ではないから 同 14 級 10 号 とするのが 妥 当 ということになる とする そして 原 告 の 訴 えや 診 察 時 の 所 見 から 考 えれば 胸 郭 出 口 症 候 群 の 関 与 は 極 めて 確 率 の 高 いものである 肩 甲 部 痛 や 上 肢 シビレなどの 症 状 の 診 断 は その 診 断 に 医 学 的 根 拠 がある 症 状 として 問 題 ない 事 になる このような 考 えれば 後 遺 障 害 等 級 としては 局 所 に 頑 固 な 疼 痛 が 遺 存 しているとして 同 12 級 12 号 とするのが 妥 当 である 本 件 における 原 告 の 現 状 の 右 上 肢 の 症 状 は, 本 件 事 故 直 後 には 認 められず, 早 く とも 事 故 後 4か 月 以 上 経 過 した 後 から 出 現 してきた 症 状 であることが 認 められる 原 告 の 右 上 肢 に 神 経 障 害 が 存 在 していることは 認 め 難 い 以 上 によれば, 原 告 には, 等 級 表 7 級 4 号 に 該 当 する 後 遺 障 害 は 認 められないも のの, 現 在 においても 肩 甲 部 痛 上 肢 シビレのほか 多 彩 な 後 遺 障 害 を 訴 えており,そ の 症 状 は, 胸 郭 出 口 症 候 群 が 関 与 している 可 能 性 が 高 いものと 推 認 できる( 小 森 鑑 定,フジ 虎 ノ 門 病 院 の 大 田 快 児 医 師 の 意 見 書 ( 証 拠 略 ), 以 下 大 田 意 見 書 と いう ) ところで, 同 12 級 12 号 の 局 部 にがん 固 な 神 経 症 状 を 残 すもの とは, 労 働 には 通 常 は 差 し 支 えないが, 医 学 的 に 証 明 しうる 神 経 系 統 の 機 能 又 は 精 神 の 障 害 を 残 すもの をいい, 神 経 障 害 が, 医 学 的 に 証 明 しえた 場 合 に 認 定 されるものであ るところ, 後 遺 障 害 診 断 書 にある 原 告 の 主 訴 及 びその 経 過, 小 森 鑑 定 及 び 大 田 意 見 書 によれば, 原 告 の 肩 甲 部 痛 上 肢 シビレなどの 症 状 は, 神 経 障 害 として 医 学 的 に 証 明 しえた 場 合 に 該 当 するから, 局 所 に 頑 固 な 疼 痛 が 遺 残 しているものとして, 同 1 2 級 12 号 の 後 遺 障 害 を 認 めるのが 妥 当 である 8 名 古 屋 地 裁 平 成 14 年 9 月 13 日 判 決 < 判 旨 > 次 に 原 告 が 頸 部 神 経 系 障 害 として 主 張 する 左 上 下 肢 等 の 神 経 障 害 については 上 記 1ないし5に 判 示 したところによれば 本 件 鑑 定 結 果 も 指 摘 するとおり 原 告 の 場 合 受 傷 は 頭 部 顔 面 挫 傷 両 上 腕 挫 創 ( 上 腕 筋 挫 傷 ) 右 肩 関 節 挫 傷 下 顎 骨 骨 折 であり 後 頭 部 打 撲 等 はないこと 受 傷 後 神 田 病 院 入 院 時 の 症 状 及 び 退 院 後 平 - 16 -

成 8 年 2 月 ころまでの 症 状 は 頭 痛 上 腕 痛 上 腕 の 脱 力 感 筋 力 低 下 やしびれ 感 程 度 であったこと 神 経 支 配 に 一 致 した 知 覚 障 害 や 筋 力 低 下 は 認 められていないこ と 自 覚 症 状 のみで 他 覚 的 に 神 経 学 的 検 査 で 納 得 できる 所 見 がないこと MRI 検 査 レントゲン 検 査 の 結 果 では 頸 椎 症 性 変 化 はC6-7 椎 間 に 見 られるのみで これに 比 して 左 上 肢 C3~C7 領 域 にあるとされる 痺 れの 範 囲 は 広 すぎること M RI 検 査 レントゲン 検 査 の 結 果 では 大 きな 椎 間 板 ヘルニア 突 出 はないし 脊 髄 損 傷 神 経 根 損 傷 を 来 すほどの 経 年 性 変 化 も 見 られないこと 受 傷 時 及 び 入 院 後 も 腕 神 経 叢 損 傷 を 思 わせる 神 経 所 見 はないことが 認 められるのであって これらの 諸 点 に 照 らすと 本 件 鑑 定 結 果 の 述 べるとおり 原 告 には 脊 髄 神 経 性 障 害 ないし 頸 部 神 経 系 障 害 として 肯 認 し 得 るものはなく 肯 認 できる 身 体 障 害 は 左 上 腕 筋 挫 傷 に 伴 う 異 常 感 覚 ( 痺 れ 感 )と 軽 度 の 筋 力 低 下 の 限 度 であるものと 認 めるのが 相 当 で ある 後 遺 障 害 については 本 件 鑑 定 結 果 にあるとおり 自 覚 症 状 のみであって 他 覚 的 な 神 経 学 的 検 査 等 による 所 見 がないこと 並 びに その 感 覚 異 常 及 び 筋 力 低 下 の 程 度 は 軽 度 であることに 鑑 み その 後 遺 障 害 の 程 度 は 自 賠 法 施 行 令 別 表 の 後 遺 障 害 等 級 14 級 10 号 局 部 に 神 経 症 状 を 残 すもの に 該 当 するものと 認 めるのが 相 当 であり これを 超 える 後 遺 障 害 があるものと 認 めるに 足 りる 証 拠 はない 9 京 都 地 裁 平 成 16 年 3 月 31 日 判 決 < 概 要 > 原 告 は, 右 上 半 身 の 筋 萎 縮 腫 脹 不 全 麻 痺 筋 力 低 下 右 肩 関 節 の 変 位 ( 廃 用 性 筋 萎 縮 ) 等 の 症 状 が 生 じ 原 告 が 丸 太 町 病 院 を 受 診 したところ 筋 電 図 検 査 の 結 果 で 神 経 損 傷 が 判 明 し 上 記 の 各 症 状 は 本 件 事 故 の 際 に 右 腕 が 引 っ 張 られた ことにより 神 経 が 脊 髄 から 引 き 抜 かれ 右 腕 神 経 叢 が 損 傷 したことによるものであ ると 診 断 された として, 右 腕 神 経 叢 損 傷 に 起 因 する 神 経 障 害 筋 萎 縮 肩 関 節 変 位 等 により 肉 体 的 労 働 のみならず 書 記 的 事 務 能 力 も 相 当 減 退 した 状 態 にあ り 特 に 軽 易 な 労 務 以 外 の 労 務 に 服 することができない 状 態 にある この 後 遺 障 害 は 後 遺 障 害 等 級 3 級 3 号 に 該 当 する( 仮 にそうでないとしても 同 5 級 2 号 に 該 当 する ) と 主 張 したが, 否 定 された < 判 旨 > 上 記 認 定 によると 本 件 事 故 発 生 当 日 ( 平 成 7 年 8 月 31 日 )における 原 告 の 訴 えは 頭 痛 及 び 背 部 痛 等 というものであり また 頸 部 レントゲン 検 査 の 結 果 で 異 - 17 -

常 所 見 がなかった 上 神 経 学 的 な 異 常 所 見 も 全 く 認 められなかったというのであり しかも 事 故 発 生 から 約 1 週 間 後 に 行 われた 血 液 検 査 の 結 果 で 炎 症 所 見 を 示 すデ ータがなく その 時 点 で 頸 部 の 炎 症 症 状 が 既 に 消 退 したものと 考 えられたことから 早 くもリハビリテーション( 頸 部 介 達 牽 引 )が 開 始 されたというのであるから 本 件 事 故 による 原 告 の 受 傷 は 軽 微 な 頸 椎 捻 挫 ないし 外 傷 性 頸 部 症 候 群 にすぎなかった ものと 認 められる これに 対 し 原 告 は 本 件 事 故 により 右 腕 神 経 叢 損 傷 を 受 傷 したと 主 張 するが 仮 に 原 告 が 真 実 本 件 事 故 により 右 腕 神 経 叢 損 傷 を 受 傷 したのだとすれば 原 告 には 本 件 事 故 発 生 直 後 に 神 経 学 的 異 常 所 見 が 認 められたはずであり また 筋 力 低 下 も 比 較 的 短 期 間 のうちに 生 じたものと 考 えられるにもかかわらず 上 記 認 定 によると 少 なくとも 平 成 10 年 4 月 ころまでの 間 原 告 には 一 貫 して 神 経 学 的 異 常 所 見 がみ られず また MMTの 結 果 も 正 常 であったというのであるから たとえ 原 告 が その 後 右 腕 神 経 叢 損 傷 (あるいはその 疑 い)と 診 断 されたとしても それが 本 件 事 故 と 因 果 関 係 を 有 するものではないことは 明 らかである なお 上 記 診 断 が 適 切 なものであったか 否 かの 点 は 上 記 判 断 を 左 右 しない 以 上 - 18 -