Economic Report 公 営 地 下 鉄 の 建 設 資 金 と 収 益 状 況 ネットワーク 拡 大 から 収 益 向 上 へ 2012 年 5 月 17 日 全 14 頁 金 融 調 査 部 中 里 幸 聖 [ 要 約 ] わが 国 の 地 下 鉄 は 地 方 公 営 企 業 として 運 営 されている 場 合 がほとんどであり 札 幌 市 仙 台 市 東 京 都 横 浜 市 名 古 屋 市 京 都 市 大 阪 市 神 戸 市 福 岡 市 の 9 つの 地 方 公 共 団 体 が 地 下 鉄 事 業 を 行 っているが 経 営 のあり 方 に 関 する 議 論 や 経 営 改 善 の 取 組 み 等 が 行 われている 公 営 地 下 鉄 の 建 設 改 良 費 は 1970 年 代 後 半 まで 増 加 基 調 で その 後 増 減 を 繰 り 返 しつつ 1996 年 度 に 3,798 億 円 と 最 大 となった 2001 年 度 以 降 は 減 少 基 調 となり 2010 年 度 は 1,599 億 円 とな っている 地 下 鉄 は 建 設 費 が 巨 額 であるが 大 都 市 における 基 本 的 な 社 会 資 本 と 位 置 付 けられており 補 助 金 が 投 入 されてきた 補 助 金 以 外 の 建 設 資 金 は 借 入 れ 企 業 債 当 該 地 方 公 共 団 体 からの 出 資 金 等 によって 調 達 し 最 終 的 には 旅 客 運 輸 収 益 などの 収 入 により 手 当 てすることとなる 資 本 費 負 担 の 大 小 が 利 益 水 準 に 大 きく 影 響 しているといえ 新 規 開 業 路 線 の 比 率 が 多 いほど 資 本 費 負 担 がかかる 傾 向 があるといえる 2010 年 度 の 営 業 利 益 率 ( 対 営 業 収 支 )は 大 阪 市 名 古 屋 市 などが 2 割 を 超 えるが 京 都 市 は 赤 字 となっている 累 積 欠 損 金 は 依 然 高 水 準 といえ 9 事 業 体 計 では 2010 年 度 で 2 兆 9 億 円 となっており 営 業 収 益 の 3.97 倍 である 個 別 でみると 大 阪 市 が 2008 年 度 に 累 積 欠 損 金 を 一 掃 し 東 京 都 も 着 実 に 累 積 欠 損 金 残 高 を 減 らしてきている 札 幌 市 仙 台 市 名 古 屋 市 なども 営 業 収 益 対 比 ではやや 増 加 あるいはあまり 変 化 がないが 絶 対 額 は 減 少 している 収 益 面 からは 早 急 な 対 策 が 必 要 な 公 営 地 下 鉄 があるが 大 都 市 の 基 本 的 インフラとしての 地 下 鉄 の 公 益 性 を 考 えれば 収 益 性 だけで 全 てを 判 断 して 良 いとは 思 わない ただし 収 益 性 の 面 から みてさらなる 改 善 を 目 指 すのは 当 然 であり その 一 環 として 経 営 のあり 方 に 関 する 議 論 もなされ るべきであろう 株 式 会 社 大 和 総 研 丸 の 内 オフィス 100-6756 東 京 都 千 代 田 区 丸 の 内 一 丁 目 9 番 1 号 グラントウキョウノースタワー このレポートは 投 資 勧 誘 を 意 図 して 提 供 するものではありません このレポートの 掲 載 情 報 は 信 頼 できると 考 えられる 情 報 源 から 作 成 しておりますが その 正 確 性 完 全 性 を 保 証 する ものではありません また 記 載 された 意 見 や 予 測 等 は 作 成 時 点 のものであり 今 後 予 告 なく 変 更 されることがあります 大 和 総 研 の 親 会 社 である 大 和 総 研 ホールディングスと 大 和 証 券 は 大 和 証 券 グループ 本 社 を 親 会 社 とする 大 和 証 券 グループの 会 社 です 内 容 に 関 する 一 切 の 権 利 は 大 和 総 研 にあります 無 断 での 複 製 転 載 転 送 等 はご 遠 慮 ください
2 / 14 近 代 的 な 大 都 市 における 公 共 交 通 として 地 下 鉄 は 重 要 な 位 置 を 占 めている わが 国 の 地 下 鉄 は 公 営 企 業 として 運 営 されている 場 合 がほとんどであるが 1 大 阪 市 営 地 下 鉄 の 民 営 化 が 昨 年 の 市 長 選 挙 の 争 点 の 一 つになるなど 経 営 のあり 方 に 関 する 議 論 や 経 営 改 善 の 取 組 み 等 が 行 われている 本 稿 では 地 方 公 営 企 業 とし て 運 営 されている 地 下 鉄 について 各 事 業 体 の 資 金 調 達 及 び 収 益 状 況 を 概 観 分 析 し 今 後 のあり 方 等 に 関 する 議 論 への 貢 献 をはかる 1. 着 実 に 充 実 してきた 公 営 地 下 鉄 地 方 公 営 企 業 として 地 下 鉄 を 運 営 してい るのは9 団 体 人 口 規 模 に 比 して 地 下 鉄 利 用 者 数 が 伸 び る 余 地 は 大 いにある 地 下 鉄 営 業 キロは 半 世 紀 で 約 21 倍 わが 国 で 地 下 鉄 事 業 を 運 営 している 地 方 公 営 企 業 は 札 幌 市 仙 台 市 東 京 都 横 浜 市 名 古 屋 市 京 都 市 大 阪 市 神 戸 市 福 岡 市 の 9 つの 地 方 公 共 団 体 の 各 交 通 局 である( 図 表 1 以 下 図 表 1 関 連 以 外 の 部 分 では 基 本 的 に 地 下 鉄 事 業 の みを 対 象 とし 公 営 地 下 鉄 と 記 述 する 地 下 鉄 事 業 以 外 について 触 れる 場 合 はその 旨 記 述 する) 福 岡 市 を 除 いて 戦 前 に 設 立 され いずれも 路 面 電 車 を 当 初 の 事 業 としていたが 現 在 も 路 面 電 車 事 業 を 継 続 しているのは 札 幌 市 と 東 京 都 のみである また 札 幌 市 と 福 岡 市 を 除 いて バス 事 業 も 運 営 している なお 札 幌 市 は 2004 年 にバス 事 業 を 民 間 事 業 者 に 事 業 譲 渡 している 公 営 地 下 鉄 の 1 日 平 均 乗 車 人 員 は 仙 台 市 の 15 万 人 から 東 京 都 の 233 万 人 まで 幅 広 い 図 表 1の(A)/(B)は 地 下 鉄 の 1 日 平 均 乗 車 人 員 を 拠 点 都 市 行 政 区 内 の 人 口 規 模 と 比 較 したものであり 大 阪 市 は 0.83 名 古 屋 市 は 0.51 となって いる 三 大 都 市 の 中 では 東 京 都 は 0.26 と 低 くなっているが 同 じく 東 京 都 区 部 で 展 開 している 東 京 メトロの 0.71 と 合 計 すれば 0.97 となり 人 口 規 模 と 比 較 し て かなりの 利 用 割 合 となっているといえよう 一 方 三 大 都 市 以 外 の 都 市 は 仙 台 市 の 0.14 から 札 幌 市 の 0.29 までの 間 にある 他 の 交 通 機 関 との 競 合 状 況 や 地 下 鉄 の 利 便 性 の 状 況 などが 影 響 していると 考 えられ また 三 大 都 市 圏 ( 特 に 東 京 圏 )は 周 辺 地 域 の 人 口 が 多 いことも 大 きく 影 響 しているが 人 口 規 模 から 考 えれ ば 名 古 屋 市 も 含 めてまだまだ 地 下 鉄 利 用 は 伸 びる 余 地 があるといえよう 約 半 世 紀 前 の 1960 年 度 に 公 営 地 下 鉄 が 営 業 していたのは 東 京 都 名 古 屋 市 大 阪 市 の 三 大 都 市 であり 営 業 キロ 数 は 計 25.9km であった 半 世 紀 後 の 2010 年 度 には 前 述 の 9 都 市 で 計 540km と 約 21 倍 の 営 業 キロ 数 となっており 公 営 地 下 鉄 の ネットワークが 充 実 してきたことがわかる 1 社 団 法 人 日 本 地 下 鉄 協 会 編 集 世 界 の 地 下 鉄 151 都 市 のメトロガイド (ぎょうせい 2010 年 )によると 地 下 鉄 の 定 義 に 確 立 したものはなく 原 則 として 以 下 の 基 準 により 選 定 したものを 地 下 鉄 として 収 録 として 5 つの 基 準 を 挙 げている そのうち 地 元 で 地 下 鉄 と 認 識 されているもの と 地 下 空 間 があっても 一 般 に 地 下 鉄 と 認 識 さ れていないもの という 部 分 が 現 実 的 な 判 断 基 準 となるであろう 本 稿 では 交 通 分 野 における 地 方 公 営 企 業 という 観 点 で 地 下 鉄 を 取 上 げており 都 市 高 速 鉄 道 を 運 営 している 事 業 者 を 記 述 することとしている 従 って 東 京 メトロは 参 考 程 度 の 記 述 とし 埼 玉 高 速 鉄 道 線 りんかい 線 ( 東 京 ) みなとみらい 線 ( 横 浜 ) アストラムライン( 広 島 )は 対 象 外 と している
3 / 14 図 表 1 地 下 鉄 を 運 営 している 交 通 局 の 概 況 事 業 者 札 幌 市 仙 台 市 東 京 都 横 浜 市 名 古 屋 市 設 立 年 1 1927 年 ( 昭 和 2) 1926 年 ( 大 正 15) 1911 年 ( 明 治 44) 1921 年 ( 大 正 10) 1922 年 ( 大 正 11) 設 立 時 の 事 業 路 面 電 車 路 面 電 車 路 面 電 車 電 気 供 給 事 業 路 面 電 車 路 面 電 車 主 要 事 業 運 営 期 間 地 下 鉄 1971 年 ~ 1987 年 ~ 1960 年 ~ 1972 年 ~ 1957 年 ~ バス 1930~2004 年 1942 年 ~ 1924 年 ~ 1928 年 ~ 1930 年 ~ 路 面 電 車 1927 年 ~ 1926~1976 年 1911 年 ~ 1921~1972 年 1922~1974 年 主 な 事 業 内 容 地 下 鉄 地 下 鉄 地 下 鉄 バス 地 下 鉄 地 下 鉄 (2012 年 初 現 在 ) 路 面 電 車 バス 都 電 ( 荒 川 線 ) バス バス 新 交 通 システム モノレール 発 電 職 員 数 2 634 944 6,117 1,995 4,056 地 下 鉄 営 業 キロ 48.0 14.8 109.0 53.4 93.3 地 下 鉄 路 線 数 3 1 4 2 6 1 日 平 均 乗 車 人 員 3 地 下 鉄 (A) 56 万 人 15 万 人 233 万 人 58 万 人 116 万 人 バス - 11 万 人 55 万 人 32 万 人 32 万 人 路 面 電 車 2 万 人 - 5 万 人 - - (A)/(B) 0.29 0.14 0.26 0.16 0.51 人 口 (B) 4 191 万 人 105 万 人 895 万 人 369 万 人 226 万 人 [ 参 考 ] 事 業 者 京 都 市 大 阪 市 神 戸 市 福 岡 市 東 京 メトロ 設 立 年 1912 年 ( 明 治 45) 1903 年 ( 明 治 36) 1917 年 ( 大 正 6) 1981 年 ( 昭 和 56) 2004 年 5 設 立 時 の 事 業 路 面 電 車 路 面 電 車 路 面 電 車 発 電 配 電 地 下 鉄 地 下 鉄 主 要 事 業 運 営 期 間 地 下 鉄 1981 年 ~ 1933 年 ~ 1977 年 ~ 1981 年 ~ 1927 年 ~ バス 1928 年 ~ 1927 年 ~ 1930 年 ~ - - 路 面 電 車 1912~1978 年 1903~1969 年 1917~1971 年 - - 主 な 事 業 内 容 地 下 鉄 地 下 鉄 地 下 鉄 地 下 鉄 地 下 鉄 (2012 年 初 現 在 ) バス 新 交 通 システム バス 関 連 事 業 バス 職 員 数 2 1,179 6,819 1,134 560 8,482 地 下 鉄 営 業 キロ 31.2 129.9 30.6 29.8 195.1 地 下 鉄 路 線 数 2 8 2 3 9 1 日 平 均 乗 車 人 員 3 地 下 鉄 (A) 33 万 人 222 万 人 29 万 人 35 万 人 631 万 人 バス 31 万 人 22 万 人 19 万 人 - - (A)/(B) 0.22 0.83 0.19 0.24 0.71 人 口 (B) 4 147 万 人 267 万 人 154 万 人 146 万 人 895 万 人 1: 交 通 局 の 設 立 年 それ 以 前 から 実 施 されている 事 業 を 買 収 したケースもあるが ここでは 事 業 買 収 以 前 の 開 業 年 は 省 略 2: 各 交 通 局 は 総 務 省 平 成 22 年 度 地 方 公 営 企 業 年 鑑 における 給 与 に 関 する 調 より バス 事 業 等 の 職 員 も 含 めた 人 数 東 京 メトロは 同 社 有 価 証 券 報 告 書 より2011 年 3 月 31 日 現 在 3:2010 年 度 数 値 は 四 捨 五 入 なお 上 表 の 数 値 とは 別 に 東 京 都 の 新 交 通 システムは6 万 人 モノレールは0.3 万 人 大 阪 市 の 新 交 通 システムは7 万 人 4:2010 年 国 勢 調 査 ( 人 口 速 報 集 計 結 果 )より 拠 点 都 市 行 政 区 内 の 人 口 東 京 都 は 特 別 区 部 の 人 口 数 値 は 四 捨 五 入 5: 前 身 の 帝 都 高 速 度 交 通 営 団 は1941 年 さらに 前 身 の 東 京 地 下 鉄 道 株 式 会 社 は1920 年 設 立 ( 出 所 ) 総 務 省 地 方 公 営 企 業 年 鑑 国 勢 調 査 各 地 方 公 共 団 体 統 計 書 各 交 通 局 Web サイト 東 京 メトロ Web サイト 有 価 証 券 報 告 書 より 大 和 総 研 作 成 輸 送 人 員 は 半 世 紀 で 約 11 倍 公 営 地 下 鉄 の 年 間 輸 送 人 員 は 1960 年 度 の 約 2 億 5 千 万 人 から 2010 年 度 には 約 29 億 人 と 半 世 紀 で 約 11 倍 になった( 図 表 2) 2 都 市 別 の 公 営 地 下 鉄 の 年 間 輸 送 2 ただし 都 営 地 下 鉄 の 営 業 開 始 は 1960 年 12 月 4 日 である なお 1960 年 の 東 京 都 区 部 名 古 屋 市 大 阪 市 の 3 都 市 計 の 人 口 は 約 1,291 万 人 であるが 2010 年 の 9 都 市 計 は 約 2,501 万 人 であり 地 下 鉄 所 在 都 市 の 人 口 は 約 1.94 倍 となった 計 算 になる さらに 地 下 鉄 所 在 都 市 の 周 辺 地 域 の 人 口 も 増 加 していることを 考 慮 する 必 要 があるが いずれにしても 公 営 地 下 鉄 の 利 用 が 拡 がっているとはいえよう なお 日 本 の 総 人 口 は 1960 年 の 約 9,430 万 人 ( 復 帰 前 の 沖 縄 県 含 む)から 2010 年
4 / 14 人 員 では 2007 年 度 までは 大 阪 市 が 一 番 多 かったが 2008 年 度 に 東 京 都 が 大 阪 市 を 上 回 り 2010 年 度 では 東 京 都 が 年 間 約 8 億 4,870 万 人 で 1 位 大 阪 市 が 約 8 億 1,110 万 人 で 2 位 となっている 大 阪 市 は 1990 年 度 には 年 間 10 億 人 の 大 台 を 超 え たが その 後 は 減 少 基 調 となっている 札 幌 市 と 仙 台 市 も 1990 年 代 がピークとな り 札 幌 市 は 約 2 億 2,930 万 人 から 2 千 万 人 程 減 少 した 水 準 で 横 ばい 仙 台 市 は 約 6,100 万 人 から 減 少 基 調 となっている 神 戸 市 は 2000 年 代 前 半 にピーク 後 に 横 ばい 東 京 都 と 名 古 屋 市 は 2000 年 代 後 半 にピーク 後 横 ばい 横 浜 市 京 都 市 福 岡 市 は 増 加 基 調 が 続 いている 図 表 2 公 営 地 下 鉄 の 年 間 輸 送 人 員 ( 百 万 人 ) ( 百 万 人 ) 2,936.2 1,200 3,000 札 幌 市 2,833.2 2,787.8 2,902.7 仙 台 市 2,908.6 2,903.8 2,663.7 東 京 都 2,524.1 横 浜 市 2,620.8 1,000 名 古 屋 市 2,500 京 都 市 1,004.9 大 阪 市 853.0 848.7 神 戸 市 800 2,070.1 福 岡 市 9 事 業 体 計 ( 右 目 盛 ) 811.1 2,000 1,735.8 600 1,430.0 1,500 400 1,022.2 427.5 421.6 1,000 231.4 229.3 210.0 512.4 200 500 204.9 255.8 127.1 108.4 67.9 120.5 106.8 104.4 22.6 57.4 11.4 47.6 50.8 61.0 54.4 0 1.8 16.5 0 1960 1965 1970 1975 1980 1985 1990 1995 2000 2005 2006 2007 2008 2009 2010 ( 年 度 ) 2. 公 営 地 下 鉄 の 建 設 費 はピークアウト 適 切 な 資 金 規 模 へ (1) 建 設 改 良 費 と 建 設 費 補 助 金 は 2000 年 代 には 減 少 基 調 へ 地 下 鉄 の 建 設 改 良 費 は1996 年 度 に 最 大 と なった 後 減 少 基 調 地 下 鉄 は 建 設 費 が 巨 額 であるが 3 大 都 市 における 基 本 的 な 社 会 資 本 と 位 置 付 け られており 補 助 金 が 投 入 されてきた 建 設 改 良 費 ( 固 定 資 産 の 新 規 取 得 又 は 増 改 築 等 に 要 する 経 費 )は 1970 年 代 後 半 まで 増 加 基 調 で その 後 増 減 を 繰 り 返 しつ つ 1996 年 度 に 3,798 億 円 と 最 大 となった 1997 年 度 1998 年 度 は 前 年 比 減 少 す の 約 1 億 2,806 万 人 となり 約 1.36 倍 となっている 3 総 務 省 地 方 公 営 企 業 年 鑑 によると 公 営 地 下 鉄 の 1km 当 たり 建 設 費 は 2006~2010 年 度 に 開 業 した 路 線 の 場 合 194.8 億 円 と 算 出 されている なお 約 40 年 前 の 1966~1970 年 度 に 開 業 した 路 線 の 場 合 は 44.7 億 円 と 算 出 されている
5 / 14 るが 2000 年 度 2001 年 度 と 再 び 前 年 比 増 加 した 後 は 減 少 基 調 となり 2010 年 度 は 1,599 億 円 となっている( 図 表 3) 補 助 対 象 建 設 費 の 一 定 割 合 を 国 と 地 方 公 共 団 体 で 補 助 する 制 度 となっているため 4 補 助 金 は 建 設 改 良 費 の 増 減 トレンドを 追 うような 形 で 増 減 し 2010 年 度 は 384 億 円 となっている なお 1989 年 度 は 2,889 億 円 となっており 前 後 の 年 度 に 比 べて 突 出 した 値 となっているが 補 助 金 を 分 割 交 付 していたものを 見 直 すこととなり この 時 に 一 括 して 繰 出 したことによる 図 表 3 公 営 地 下 鉄 の 建 設 改 良 費 と 建 設 費 補 助 金 ( 億 円 ) 5,000 4,500 旅 客 運 輸 収 益 4,000 3,500 2,889 3,798 3,000 2,500 建 設 改 良 費 2,000 1,500 建 設 費 補 助 金 1,599 1,000 うち 地 方 384 500 うち 国 0 1965 1966 1967 1968 1969 1970 1971 1972 1973 1974 1975 1976 1977 1978 1979 1980 1981 1982 1983 1984 1985 1986 1987 1988 1989 1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 ( 年 度 ) (2) 企 業 債 の 収 支 は 償 還 が 進 む 補 助 金 以 外 の 建 設 資 金 は 借 入 れ 企 業 債 当 該 地 方 公 共 団 体 からの 出 資 金 等 によって 調 達 し 最 終 的 には 旅 客 運 輸 収 益 などの 収 入 により 手 当 てすることとな る 従 って 公 営 地 下 鉄 の 収 益 力 が 重 要 となるが まずは 近 年 の 企 業 債 の 収 支 状 況 をみてみる 企 業 債 による 調 達 は 2008 年 度 が 直 近 のピ ーク 9 事 業 体 計 では 2008 年 度 に 2,819 億 円 を 企 業 債 により 調 達 しているのが 直 近 のピークで 2010 年 度 は 1,833 億 円 となっている( 図 表 4) 個 別 にみると 大 阪 市 が 2005 年 度 に 652 億 円 東 京 都 が 2010 年 度 に 529 億 円 調 達 しているのが 相 対 的 に 大 きい 4 地 下 鉄 建 設 費 補 助 制 度 は 1962 年 度 に 創 設 され 当 初 は 利 差 補 給 方 式 であったが 1967 年 度 より 補 助 対 象 建 設 費 の 10.5% を 国 が 5 年 分 割 補 助 することとなった その 後 補 助 割 合 が 何 度 か 引 き 上 げられ 地 方 公 共 団 体 も 補 助 する 制 度 となり 現 在 の 補 助 率 は 国 と 地 方 公 共 団 体 とあわせて 70%となっている
6 / 14 図 表 4 公 営 地 下 鉄 の 企 業 債 収 入 ( 億 円 ) ( 億 円 ) 700 3,500 652 600 2,819 3,000 札 幌 市 500 529 2,500 仙 台 市 東 京 都 400 1,833 2,000 横 浜 市 名 古 屋 市 300 1,500 京 都 市 大 阪 市 200 1,000 神 戸 市 100 500 福 岡 市 9 事 業 体 計 ( 右 目 盛 ) 0 0 企 業 債 の 返 済 は 着 実 に 進 んでいる 企 業 債 収 入 と 企 業 債 償 還 金 の 差 である 企 業 債 収 支 をみると 9 事 業 体 計 では 2005 年 度 以 降 はマイナス 状 態 ( 償 還 超 )が 続 いており 2010 年 度 は 1,540 億 円 である( 図 表 5) 企 業 債 の 返 済 は 着 実 に 進 んでいるといえよう 個 別 にみると 大 阪 市 が 2005 年 度 は 162 億 円 のプラスであったが その 後 はマイナスに 転 じてい る 横 浜 市 は 2007 年 度 の 50 億 円 まではプラスであったが その 後 はマイナスに 転 じている 一 方 仙 台 市 は 2006 年 度 以 降 プラスとなっており 2010 年 度 は 15 億 円 のプラスとなっている 仙 台 市 では 2015 年 度 開 業 を 目 標 に 東 西 線 が 建 設 中 で あり その 影 響 と 推 測 される 図 表 5 公 営 地 下 鉄 の 企 業 債 収 支 ( 億 円 ) ( 億 円 ) 200 600 162 100 0 50 42 15 300 0 札 幌 市 仙 台 市 東 京 都 -100-300 横 浜 市 -200-600 名 古 屋 市 京 都 市 -300-900 大 阪 市 神 戸 市 -400-1,200 福 岡 市 -500-1,540-1,500 9 事 業 体 計 ( 右 目 盛 ) -600-1,800
7 / 14 (3) 企 業 債 残 高 も 着 実 に 減 少 へ 企 業 債 残 高 も 着 実 に 減 少 企 業 債 の 残 高 は 9 事 業 体 計 で 2005 年 度 の 4 兆 3,012 億 円 から 2010 年 度 の 3 兆 7,243 億 円 へと 着 実 に 減 少 してきている( 図 表 6) 個 別 では 2005 年 度 に 大 阪 市 が 7,931 億 円 と 最 も 多 かったが その 後 減 少 して 2009 年 度 には 名 古 屋 市 を 下 回 り 2010 年 度 は 6,326 億 円 となった なお 名 古 屋 市 は 2010 年 度 6,576 億 円 であ る 一 方 仙 台 市 の 残 高 は 2010 年 度 で 1,315 億 円 と 最 も 少 ないが ここ 数 年 増 加 基 調 にある 前 述 の 通 り 東 西 線 建 設 の 影 響 が 表 れていると 考 えられる 図 表 6 公 営 地 下 鉄 の 企 業 債 残 高 ( 億 円 ) ( 億 円 ) 8,000 7,931 44,000 7,000 6,000 43,012 6,576 6,326 43,000 42,000 札 幌 市 仙 台 市 東 京 都 5,000 41,000 横 浜 市 名 古 屋 市 4,000 40,000 京 都 市 大 阪 市 3,000 39,000 神 戸 市 福 岡 市 2,000 38,000 9 事 業 体 計 ( 右 目 盛 ) 1,000 1,315 37,243 37,000 図 表 7 公 営 地 下 鉄 の 企 業 債 残 高 対 営 業 収 益 倍 率 ( 倍 ) 18 17.93 16 16.05 14 12 10 8 8.74 7.38 12.07 札 幌 市 仙 台 市 東 京 都 横 浜 市 名 古 屋 市 京 都 市 大 阪 市 神 戸 市 福 岡 市 9 事 業 体 計 6 4 5.33 4.26 4.21
8 / 14 企 業 債 残 高 の 営 業 収 益 に 対 する 倍 率 も 低 下 企 業 債 返 済 の 原 資 の 基 軸 となる 営 業 収 益 ( 売 上 高 に 相 当 )に 対 する 倍 率 でみる と 9 事 業 体 計 では 2005 年 度 の 8.74 倍 から 2010 年 度 の 7.38 倍 に 低 下 している( 図 表 7) 2005 年 度 で 最 も 企 業 債 残 高 が 大 きかった 大 阪 市 は 営 業 収 益 との 対 比 で は 5.33 倍 と 2005 年 度 では 最 も 低 く 2010 年 度 も 4.26 倍 と 東 京 都 の 4.21 倍 に 次 いで 低 い 一 方 企 業 債 残 高 の 絶 対 額 では 9 事 業 体 の 中 位 ほどである 京 都 市 が 営 業 収 益 との 対 比 では 2005 年 度 17.93 倍 低 下 しつつあるものの 2010 年 度 も 16.05 倍 と 相 対 的 に 水 準 が 高 い 3. 公 営 地 下 鉄 の 収 益 は 全 体 として 改 善 傾 向 (1) 営 業 収 益 は 伸 び 悩 んでいるが 利 益 率 は 改 善 傾 向 営 業 収 益 規 模 は 大 阪 市 東 京 都 名 古 屋 市 の 順 公 営 地 下 鉄 の 営 業 収 益 は 世 界 的 金 融 危 機 や 東 日 本 大 震 災 等 による 影 響 なども あり 2010 年 度 で 9 事 業 体 計 5,046 億 円 と ピークの 2008 年 度 5,167 億 円 からや や 低 い 水 準 となっている( 図 表 8) 2010 年 度 時 点 での 営 業 収 益 は 大 阪 市 の 1,486 億 円 東 京 都 の 1,302 億 円 が 千 億 円 を 超 えており 以 下 名 古 屋 市 札 幌 市 横 浜 市 京 都 市 福 岡 市 神 戸 市 となり 一 番 収 益 規 模 が 小 さい 仙 台 市 が 109 億 円 となっている 営 業 収 益 に 占 める 運 輸 収 益 の 比 率 が 札 幌 市 と 福 岡 市 は 100% 一 番 低 い 仙 台 市 で 92.8%(2010 年 度 )であるので 旅 客 動 向 が 各 事 業 体 の 営 業 収 益 を ほぼ 左 右 するといってよいであろう 従 って 各 事 業 体 の 利 益 向 上 は 旅 客 増 加 策 と 経 費 節 減 努 力 あるいは 収 益 効 率 性 によるといえる 図 表 8 公 営 地 下 鉄 の 営 業 収 益 ( 億 円 ) 札 幌 市 393 395 393 390 374 375 仙 台 市 123 122 120 117 112 109 東 京 都 1,218 1,244 1,322 1,340 1,322 1,302 横 浜 市 309 317 330 368 369 373 名 古 屋 市 762 761 762 762 741 738 京 都 市 210 222 226 232 231 234 大 阪 市 1,489 1,508 1,538 1,528 1,500 1,486 神 戸 市 191 192 193 199 199 201 福 岡 市 225 229 231 232 224 228 9 事 業 体 計 4,920 4,990 5,114 5,167 5,072 5,046 図 表 9 公 営 地 下 鉄 の 営 業 利 益 率 ( 対 営 業 収 益 ) 札 幌 市 16.3% 18.3% 18.8% 17.0% 15.4% 16.1% 仙 台 市 22.4% 19.7% 20.1% 19.6% 14.4% 12.6% 東 京 都 6.1% 10.6% 15.1% 16.2% 15.6% 13.1% 横 浜 市 13.4% 12.9% 12.7% 13.2% 16.6% 17.1% 名 古 屋 市 15.2% 18.8% 19.5% 19.8% 21.5% 20.7% 京 都 市 -40.9% -32.4% -29.6% -26.3% -12.4% -6.2% 大 阪 市 22.7% 24.3% 23.6% 25.5% 26.6% 25.1% 神 戸 市 -3.1% 0.5% 1.8% 5.4% 5.7% 7.7% 福 岡 市 -6.5% 2.1% 4.5% 5.3% 2.2% 6.4% 9 事 業 体 計 11.3% 14.3% 15.6% 16.6% 17.5% 16.8%
9 / 14 図 表 10 公 営 地 下 鉄 の 純 利 益 率 ( 対 営 業 収 益 ) 札 幌 市 -3.4% 0.9% 3.5% 5.8% 7.5% 11.3% 仙 台 市 -12.0% -11.0% -3.2% 11.7% 16.9% 22.8% 東 京 都 -3.2% 2.1% 8.3% 15.2% 9.3% 7.2% 横 浜 市 -16.6% -13.9% -9.8% -5.8% 0.4% 2.7% 名 古 屋 市 -41.9% -6.6% -2.4% 2.3% 5.5% 5.4% 京 都 市 -89.4% -75.7% -70.3% -62.2% -65.1% -38.7% 大 阪 市 14.0% 14.8% 15.3% 8.7% 19.7% 16.5% 神 戸 市 -21.4% -17.1% -15.3% -7.2% -6.7% -3.1% 福 岡 市 -20.2% -10.6% -8.7% -2.7% -5.5% -1.0% 9 事 業 体 計 -10.2% -1.6% 1.9% 4.0% 6.6% 7.1% 営 業 利 益 率 は 上 昇 基 調 純 利 益 率 も 年 々 改 善 しているが 福 岡 市 神 戸 市 京 都 市 が 赤 字 公 営 地 下 鉄 の 営 業 利 益 率 ( 対 営 業 収 益 )は 5 9 事 業 体 計 で 2010 年 度 は 16.8%と 前 年 より 若 干 低 下 したが 上 昇 基 調 にあるといえる( 図 表 9) 2010 年 度 では 大 阪 市 の 25.1% 名 古 屋 市 の 20.7%が 20%を 超 え 以 下 横 浜 市 札 幌 市 東 京 都 仙 台 市 神 戸 市 福 岡 市 の 順 となっており 京 都 市 は 6.2%と 赤 字 になって いる 純 利 益 率 ( 対 営 業 収 益 )では 9 事 業 体 計 では 2005 年 度 は 10.2%と 赤 字 であ ったが 営 業 利 益 率 と 同 様 に 年 々 改 善 し 2010 年 度 は 7.1%の 黒 字 になっている ( 図 表 10) 2010 年 度 では 仙 台 市 の 22.8%が 最 も 高 く 大 阪 市 札 幌 市 東 京 都 名 古 屋 市 横 浜 市 の 順 となっており 福 岡 市 1.0% 神 戸 市 3.1% 京 都 市 38.7%と 赤 字 になっている 前 述 したように 地 下 鉄 は 建 設 費 が 巨 額 であるため 資 本 費 ( 減 価 償 却 費 及 び 支 払 利 息 など 金 融 費 用 ) 負 担 がかかるが 古 く 開 業 した 路 線 ほど 企 業 債 や 借 入 金 の 返 済 が 進 んで 支 払 利 息 が 減 少 し 減 価 償 却 も 進 んでいるということが 通 常 である さらに 高 度 成 長 期 時 代 の 地 価 高 騰 や 既 に 都 市 化 した 後 に 工 事 する 場 合 の 諸 費 用 な どの 影 響 もあり 建 設 単 価 は 新 しい 時 代 ほど 高 くなってきた 傾 向 がある 別 の 見 方 をすれば 新 規 開 業 路 線 の 比 率 が 多 いほど 資 本 費 負 担 がかかる 傾 向 があるとい えよう 一 方 建 設 費 に 関 する 補 助 金 とは 別 に 他 会 計 から 運 営 に 関 連 する 補 助 金 などが 投 入 されている 場 合 もあり 6 これらが 営 業 利 益 率 及 び 純 利 益 率 の 水 準 に 影 響 している ( 2) 主 な 経 費 では 減 価 償 却 費 の 影 響 が 大 きい 以 下 では 主 な 経 費 である 人 件 費 減 価 償 却 費 支 払 利 息 についてみることと する 地 下 鉄 の 人 件 費 比 率 はバス 事 業 より 低 い まず 人 件 費 であるが 地 方 公 営 企 業 が 実 施 する 交 通 事 業 としては 地 下 鉄 はバ スに 比 べて 相 対 的 に 人 件 費 の 比 率 が 低 い 本 稿 の 対 象 としている 公 営 地 下 鉄 事 業 体 のうち 札 幌 市 と 福 岡 市 を 除 く 7 事 業 体 がバス 事 業 も 実 施 しており バス 事 業 5 地 方 公 営 企 業 の 決 算 では 営 業 利 益 という 項 目 がないので 本 稿 では 営 業 収 益 と 営 業 費 用 の 差 を 営 業 利 益 としている 6 地 下 鉄 事 業 については 特 別 会 計 を 設 けて 区 分 経 理 されている 地 方 公 営 企 業 法 第 十 七 条 の 二 には 次 に 掲 げる 地 方 公 営 企 業 の 経 費 で 政 令 で 定 めるものは 地 方 公 共 団 体 の 一 般 会 計 又 は 他 の 特 別 会 計 において 出 資 長 期 の 貸 付 け 負 担 金 の 支 出 その 他 の 方 法 により 負 担 するものとする として 一 その 性 質 上 当 該 地 方 公 営 企 業 の 経 営 に 伴 う 収 入 をもつて 充 てることが 適 当 でない 経 費 二 当 該 地 方 公 営 企 業 の 性 質 上 能 率 的 な 経 営 を 行 なつてもなおその 経 営 に 伴 う 収 入 のみを もつて 充 てることが 客 観 的 に 困 難 であると 認 められる 経 費 としている
10 / 14 の 営 業 収 益 に 対 する 人 件 費 の 比 率 は 7 事 業 体 計 で 62.1%であるのに 対 し 地 下 鉄 事 業 では 7 事 業 体 計 で 28.5%である(バス 事 業 と 地 下 鉄 事 業 はそれぞれ 特 別 会 計 として 区 分 経 理 されている 以 下 では これまでと 同 様 に 再 び 地 下 鉄 事 業 のみに ついて 記 述 する) 人 件 費 比 率 は 低 下 基 調 9 事 業 体 計 での 人 件 費 比 率 ( 対 営 業 収 益 )は 2005 年 度 に 31.1%であったが 低 下 基 調 にあり 2010 年 度 には 27.1%となっている( 図 表 11) 2010 年 度 では 札 幌 市 の 14.6%が 最 も 低 く 福 岡 市 横 浜 市 京 都 市 仙 台 市 東 京 都 神 戸 市 名 古 屋 市 の 順 に 高 くなり 大 阪 市 の 32.6%が 最 も 高 い 図 表 11 公 営 地 下 鉄 の 人 件 費 比 率 ( 対 営 業 収 益 ) 札 幌 市 22.1% 18.5% 16.6% 16.1% 14.8% 14.6% 仙 台 市 22.4% 23.9% 23.6% 22.9% 26.0% 25.0% 東 京 都 29.2% 28.5% 25.5% 25.1% 24.9% 25.4% 横 浜 市 29.7% 27.5% 26.2% 22.2% 23.1% 21.7% 名 古 屋 市 33.9% 31.8% 31.7% 31.2% 31.1% 31.6% 京 都 市 26.9% 25.3% 24.9% 24.2% 24.0% 22.8% 大 阪 市 36.8% 35.2% 34.3% 33.0% 32.7% 32.6% 神 戸 市 30.0% 29.8% 30.4% 27.9% 28.8% 27.7% 福 岡 市 22.1% 22.9% 22.1% 21.6% 22.1% 21.5% 9 事 業 体 計 31.1% 29.7% 28.4% 27.3% 27.3% 27.1% 減 価 償 却 費 比 率 も 低 下 基 調 だが ややペー スは 小 さい 9 事 業 体 計 での 減 価 償 却 費 比 率 ( 対 営 業 収 益 )は 2005 年 度 に 34.6%であったが 低 下 基 調 にあり 2010 年 度 には 32.6%となっている( 図 表 12) 京 都 市 札 幌 市 仙 台 市 などが 近 年 上 昇 しており 人 件 費 に 比 べると 全 体 の 低 下 ペースが 小 さ い 2010 年 度 では 大 阪 市 の 25.5%が 最 も 低 く 名 古 屋 市 東 京 都 仙 台 市 札 幌 市 福 岡 市 神 戸 市 横 浜 市 の 順 に 高 くなり 京 都 市 の 55.0%が 最 も 高 い 図 表 12 公 営 地 下 鉄 の 減 価 償 却 費 比 率 ( 対 営 業 収 益 ) 札 幌 市 34.5% 34.2% 35.2% 36.2% 37.9% 37.3% 仙 台 市 31.1% 31.3% 31.0% 29.4% 32.4% 34.9% 東 京 都 39.2% 35.7% 33.5% 32.3% 32.7% 32.7% 横 浜 市 41.2% 42.7% 41.2% 49.0% 45.6% 43.4% 名 古 屋 市 32.6% 31.1% 30.3% 30.0% 28.0% 26.1% 京 都 市 50.7% 46.0% 46.4% 45.7% 57.6% 55.0% 大 阪 市 23.5% 24.4% 26.9% 26.0% 25.6% 25.5% 神 戸 市 50.9% 47.6% 45.4% 42.7% 43.3% 42.5% 福 岡 市 53.7% 44.7% 43.3% 42.3% 44.8% 41.7% 9 事 業 体 計 34.6% 33.1% 33.1% 33.0% 33. 3% 32.6% 支 払 利 息 比 率 は 減 価 償 却 費 人 件 費 より 低 下 ペースが 大 きい 9 事 業 体 計 での 支 払 利 息 比 率 ( 対 営 業 収 益 )は 2005 年 度 に 29.3%であったが 低 下 基 調 にあり 2010 年 度 には 18.5%となっている( 図 表 13) 各 事 業 体 とも 低 下 基 調 となっており 減 価 償 却 費 人 件 費 と 比 べて 低 下 ペースが 大 きい 2010 年 度 では 東 京 都 の 11.2%が 最 も 低 く 大 阪 市 仙 台 市 神 戸 市 名 古 屋 市 札 幌 市 福 岡 市 横 浜 市 の 順 に 高 くなり 京 都 市 の 44.8%が 最 も 高 い
11 / 14 図 表 13 公 営 地 下 鉄 の 支 払 利 息 比 率 ( 対 営 業 収 益 ) 札 幌 市 42.3% 38.8% 36.7% 31.2% 27.9% 25.3% 仙 台 市 44.4% 41.5% 39.7% 28.6% 22.2% 20.4% 東 京 都 19.9% 18.4% 16.1% 13.9% 12.5% 11.2% 横 浜 市 49.9% 46.2% 42.1% 38.3% 33.9% 29.4% 名 古 屋 市 33.9% 31.8% 29.9% 26.6% 24.5% 22.2% 京 都 市 60.8% 55.6% 53.4% 47.7% 51.7% 44.8% 大 阪 市 17.3% 16.3% 16.2% 14.1% 13.3% 12.8% 神 戸 市 36.8% 34.3% 32.5% 25.9% 23.4% 21.2% 福 岡 市 49.0% 44.4% 41.4% 32.9% 29.9% 26.9% 9 事 業 体 計 29.3% 27.2% 25.4% 22.0% 20.4% 18.5% 資 本 費 負 担 が 利 益 水 準 に 影 響 京 都 市 は 資 本 費 負 担 が 大 きいことが 赤 字 の 大 きな 要 因 であり 逆 に 大 阪 市 は 資 本 費 負 担 が 小 さくなっていることが 利 益 に 貢 献 しているといえ 他 の 事 業 体 でも 資 本 費 負 担 の 大 小 が 利 益 水 準 に 大 きく 影 響 しているといえよう なお 資 本 費 負 担 との 関 係 で 各 公 営 地 下 鉄 の 最 新 開 業 路 線 を 示 したのが 図 表 14である また 何 度 か 触 れているように 仙 台 市 は 2015 年 度 開 業 を 目 指 して 東 西 線 を 建 設 中 である 大 阪 市 福 岡 市 も 具 体 的 な 延 伸 計 画 があるが 着 工 の 是 非 も 含 めて 検 討 されることとなろう その 他 にも 運 輸 省 時 代 の 運 輸 政 策 審 議 会 答 申 などで 計 画 された 路 線 が 存 在 するが 具 体 的 な 検 討 には 至 っていないようであ る 図 表 14 各 公 営 地 下 鉄 の 最 新 開 業 路 線 最 新 開 業 区 間 距 離 (km) 比 率 ( ) 路 線 開 業 年 月 日 備 考 札 幌 市 宮 の 沢 - 琴 似 2.8 5.8% 東 西 線 1999 年 2 月 25 日 仙 台 市 八 乙 女 - 泉 中 央 1.2 8.1% 南 北 線 1992 年 7 月 15 日 東 西 線 建 設 中 2015 年 度 開 業 予 定 東 京 都 都 庁 前 - 国 立 競 技 場 25.7 23.6% 大 江 戸 線 2000 年 12 月 12 日 横 浜 市 日 吉 - 中 山 13.0 24.3% グリーンライン 2008 年 3 月 30 日 名 古 屋 市 野 並 - 徳 重 4.2 4.5% 桜 通 線 2011 年 3 月 27 日 京 都 市 二 条 - 太 秦 天 神 川 2.4 7.7% 東 西 線 2008 年 1 月 16 日 大 阪 市 井 高 野 - 今 里 11.9 9.2% 今 里 筋 線 2006 年 12 月 24 日 今 里 筋 線 延 伸 計 画 神 戸 市 三 宮 花 時 計 前 - 新 長 田 7.9 25.8% 海 岸 線 2001 年 7 月 7 日 福 岡 市 橋 本 - 天 神 南 12.0 40.3% 七 隈 線 2005 年 2 月 3 日 七 隈 線 延 伸 計 画 全 営 業 キロ 数 に 占 める 最 新 開 業 区 間 の 比 率 ( 出 所 ) 国 土 交 通 省 鉄 道 要 覧 地 下 鉄 空 港 アクセス 鉄 道 等 開 業 一 覧 各 交 通 局 Web サイトより 大 和 総 研 作 成 ( 3) 営 業 外 収 益 としての 補 助 金 が 利 益 を 下 支 え 補 助 金 比 率 は 全 体 と して 低 下 基 調 だが 仙 台 市 などは 上 昇 基 調 建 設 費 に 関 する 補 助 金 とは 別 に 営 業 外 収 益 としての 補 助 金 が 投 入 されている 9 事 業 体 計 での 補 助 金 比 率 ( 対 営 業 収 益 )は 2005 年 度 の 12.1%から 低 下 基 調 にあ り 2010 年 度 は 9.5%であった( 図 表 15) 個 別 では 東 西 線 建 設 を 進 めてい る 仙 台 市 が 大 幅 に 上 昇 基 調 にあり 京 都 市 も 若 干 上 昇 傾 向 大 阪 市 もやや 上 昇 気 味 となっている 2010 年 度 の 補 助 金 比 率 ( 対 営 業 収 益 )は 東 京 都 の 5.3%が 最 も 低 く 大 阪 市 名 古 屋 市 神 戸 市 京 都 市 横 浜 市 福 岡 市 札 幌 市 の 順 に 高 くなり 仙 台 市 の 30.5%が 最 も 高 い なお 営 業 外 収 益 の 補 助 金 は 国 庫 都 道 府 県 他 会 計 のいずれもあり 得 るが 各 公 営 地 下 鉄 とも 他 会 計 からの 補 助 金 が 大 半 を 占 める
12 / 14 図 表 15 公 営 地 下 鉄 の 営 業 外 収 益 としての 補 助 金 比 率 ( 対 営 業 収 益 ) 札 幌 市 21.8% 21.1% 20.5% 19.1% 19.1% 19.1% 仙 台 市 10.0% 11.0% 16.3% 20.7% 24.7% 30.5% 東 京 都 11.6% 11.1% 9.7% 8.6% 6.6% 5.3% 横 浜 市 18.5% 18.6% 18.1% 17.3% 16.2% 15.0% 名 古 屋 市 7.6% 7.2% 8.1% 8.7% 8.7% 7.4% 京 都 市 13.1% 13.0% 12.5% 12.0% 13.5% 14.8% 大 阪 市 6.8% 5.9% 6.3% 6.8% 6.9% 6.6% 神 戸 市 18.1% 16.7% 15.2% 13.5% 10.9% 10.0% 福 岡 市 35.6% 32.0% 28.7% 25.0% 22.5% 18.3% 9 事 業 体 計 12.1% 11.5% 11.2% 10.8% 10.2% 9.5% 補 助 金 を 除 いても 黒 字 であるのは 大 阪 市 と 東 京 都 図 表 16は 営 業 外 収 益 としての 補 助 金 が 仮 になかったものとして 純 利 益 率 ( 対 営 業 収 益 )を 算 出 してみたものである 9 事 業 体 計 でみると 赤 字 率 は 縮 小 して いるものの 2010 年 度 においても 2.4%の 純 赤 字 率 ということになる 2005 年 度 以 降 で 補 助 金 を 除 いても 純 利 益 黒 字 を 出 し 続 けていたのは 大 阪 市 のみという ことになり 2010 年 度 は 10.0%の 純 利 益 率 ( 対 営 業 収 益 )であった 東 京 都 も 2008 年 度 から 黒 字 に 転 じ 2010 年 度 は 1.9%の 純 利 益 率 ( 対 営 業 収 益 )であった 図 表 16 公 営 地 下 鉄 の 営 業 外 収 益 としての 補 助 金 を 除 いたベースでの 純 利 益 率 ( 対 営 業 収 益 ) 20% 10% 0% -10% -20% -30% -40% -50% -60% -70% -22.4% -13.1% -9.3% -6.9% 1.9% -3.6% -2.4% 10.0% 札 幌 市 仙 台 市 東 京 都 横 浜 市 名 古 屋 市 京 都 市 大 阪 市 神 戸 市 福 岡 市 9 事 業 体 計 -80% -90% -100% -110%
13 / 14 (4) 累 積 欠 損 金 は 全 体 では 減 少 しているが 事 業 体 で 明 暗 分 かれる 地 下 鉄 は 累 積 欠 損 金 を 抱 えていることが 通 常 地 下 鉄 は 建 設 費 が 巨 額 であるが 故 に 地 下 鉄 運 営 に 伴 う 社 会 的 経 済 的 便 益 が 大 きいと 考 えられる 大 都 市 に 建 設 されるのが 基 本 である 従 って 人 口 集 積 地 域 で 事 業 運 営 されることとなり 潜 在 的 な 収 益 力 は 大 きいといえる 逆 にいえば 潜 在 的 な 収 益 力 が 想 定 できない 地 域 に 地 下 鉄 を 建 設 するのは 望 ましくなく おそ らくそうした 地 域 に 建 設 された 地 下 鉄 はないと 推 測 される しかしながら 想 定 ほどには 収 益 力 が 顕 在 化 しない 場 合 もあり 得 るし 建 設 費 が 想 定 以 上 にかかる 場 合 もある そうした 想 定 と 異 なる 状 況 にはならなくても 建 設 費 用 に 伴 う 資 本 費 負 担 が 大 きいため 地 下 鉄 は 開 業 から 長 期 にわたって 累 積 欠 損 金 を 抱 えているこ とが 通 常 である 図 表 17 公 営 地 下 鉄 の 累 積 欠 損 金 ( 億 円 ) 札 幌 市 3,416 3,412 3,399 3,376 3,348 3,306 仙 台 市 1,082 1,096 1,100 1,086 1,067 1,042 東 京 都 4,772 4,746 4,636 4,433 4,309 4,215 横 浜 市 2,349 2,393 2,426 2,447 2,446 2,436 名 古 屋 市 3,135 3,185 3,204 3,186 3,145 3,105 京 都 市 2,572 2,740 2,899 3,043 3,193 3,284 大 阪 市 492 268 34 - - - 神 戸 市 1,120 1,153 1,182 1,196 1,210 1,216 福 岡 市 1,341 1,365 1,385 1,391 1,403 1,406 9 事 業 体 計 20,279 20,358 20,263 20,158 20,121 20,009 図 表 18 公 営 地 下 鉄 の 累 積 欠 損 金 比 率 ( 対 営 業 収 益 ) ( 倍 ) 15 14 13 12 11 10 9 8 7 6 5 4 3 2 1 0 12.24 0.33 4.12 14.02 9.57 8.81 6.53 6.17 6.05 4.21 3.97 3.24 札 幌 市 仙 台 市 東 京 都 横 浜 市 名 古 屋 市 京 都 市 大 阪 市 神 戸 市 福 岡 市 9 事 業 体 計
14 / 14 大 阪 市 は2008 年 度 に 累 積 欠 損 金 を 一 掃 わが 国 の 公 営 地 下 鉄 では 補 助 金 投 入 の 効 果 もあり 近 年 では 純 利 益 の 黒 字 を 実 現 している 事 業 体 が 多 くなってきている しかし 累 積 欠 損 金 は 依 然 高 水 準 と いえ 9 事 業 体 計 では 2010 年 度 で 2 兆 9 億 円 となっており 営 業 収 益 の 3.97 倍 で ある( 図 表 17 18) 個 別 でみると 大 阪 市 が 2008 年 度 に 累 積 欠 損 金 を 一 掃 し 東 京 都 も 着 実 に 残 高 を 減 らしており 2010 年 度 には 累 積 欠 損 金 4,215 億 円 で 営 業 収 益 の 3.24 倍 の 水 準 となっている その 他 の 公 営 地 下 鉄 における 累 積 欠 損 金 と 営 業 収 益 の 倍 率 は 名 古 屋 市 が 4.21 倍 であり 神 戸 市 福 岡 市 横 浜 市 札 幌 市 仙 台 市 の 順 に 高 くなり 京 都 市 は 14.02 倍 となっている 京 都 市 は 赤 字 が 続 いていたため 累 積 欠 損 金 は 2005 年 度 の 2,572 億 円 から 2010 年 度 の 3,284 億 円 へと 拡 大 している 赤 字 幅 は 減 少 しているものの 営 業 利 益 も 赤 字 となっており 京 都 市 市 営 地 下 鉄 の 収 益 向 上 は 喫 緊 の 課 題 である 4.おわりに 本 稿 では わが 国 の 公 営 地 下 鉄 の 拡 張 とそれに 伴 う 建 設 費 の 動 向 建 設 資 金 と しての 補 助 金 及 び 企 業 債 の 状 況 等 について 概 観 してきた さらにその 企 業 債 返 済 の 原 資 の 基 軸 となる 収 益 状 況 を 公 営 地 下 鉄 全 体 及 び 各 公 営 地 下 鉄 事 業 者 について 分 析 した 全 体 として 資 本 費 負 担 が 大 きいものの 一 部 事 業 者 を 除 いて 収 益 構 造 は 改 善 傾 向 にあるといえる ただし 補 助 金 に 依 存 している 側 面 もみられ さ らなる 収 益 及 び 効 率 性 向 上 策 が 期 待 される 大 阪 市 では 2008 年 度 には 累 積 欠 損 金 が 一 掃 されており 東 京 都 も 着 実 に 累 積 欠 損 金 残 高 を 減 らしてきている 札 幌 市 仙 台 市 名 古 屋 市 なども 営 業 収 益 対 比 で はやや 増 加 あるいはあまり 変 化 がないが 絶 対 額 は 減 少 している 京 都 など 収 益 面 からは 早 急 な 対 策 が 必 要 な 公 営 地 下 鉄 があるが 大 都 市 の 基 本 的 インフラとし ての 地 下 鉄 の 公 益 性 を 考 えれば 収 益 性 だけで 全 てを 判 断 して 良 いとは 思 わない ただし 収 益 性 の 面 からみてさらなる 改 善 を 目 指 すのは 当 然 であり その 一 環 と して 経 営 のあり 方 に 関 する 議 論 もなされるべきであろう 公 営 地 下 鉄 が 運 営 されている 大 都 市 は 人 口 減 少 高 齢 化 の 影 響 は 地 方 圏 より は 相 対 的 に 小 さいと 推 測 されるが 今 のうちから 対 策 を 進 めておくべきである また 新 規 路 線 によるネットワークを 大 幅 に 拡 充 してきた 地 下 鉄 も 今 後 は 更 新 需 要 が 増 加 していくことは 間 違 いない こうした 社 会 構 造 変 化 や 更 新 需 要 増 加 を 踏 まえ 収 益 性 公 益 性 を 総 合 的 に 判 断 して より 良 い 方 向 性 を 見 出 していくこ とに 資 する 経 営 のあり 方 に 関 する 議 論 が 望 まれる